(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167610
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/52 20060101AFI20241127BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241127BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241127BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B41J2/52
B41J2/01 201
G03G15/00 303
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083808
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰太
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智哉
【テーマコード(参考)】
2C056
2H270
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB58
2C056EC72
2C056FA10
2H270KA01
2H270LB01
2H270MA07
2H270MB14
2H270MB15
2H270MB39
2H270ZC03
2H270ZC04
5C077MP08
5C077PP15
5C077PP32
5C077PP33
5C077PQ08
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】ユーザ所望の濃度を得る。
【解決手段】プリンタの制御部は、調整値がインクの量を多くする方向の値である場合、X以上の範囲(最大入力値(1023)を含む範囲)の入力値に対応する出力値について、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値が最大出力値(1023)を超えるとき、最大出力値(1023)と決定する一方、上記範囲よりも小さい中間入力値(1~X)に対応する出力値については、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)と決定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、
画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、
前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最大入力値が示す前記記録材の量は前記最小入力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最大出力値が示す前記記録材の量は前記最小出力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を多くする方向の値である場合、
前記最大入力値を含む範囲の入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値が前記最大出力値を超えるとき、前記最大出力値と決定し、
前記範囲よりも小さい前記中間入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値と決定することを特徴とする、記録装置。
【請求項2】
記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、
画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、
前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最小入力値が示す前記記録材の量は前記最大入力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最小出力値が示す前記記録材の量は前記最大出力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を多くする方向の値である場合、
前記最小入力値を含む範囲の前記入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値が前記最小出力値未満のとき、前記最小出力値と決定し、
前記範囲よりも大きい前記中間入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値と決定することを特徴とする、記録装置。
【請求項3】
記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、
画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、
前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最大入力値が示す前記記録材の量は前記最小入力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最大出力値が示す前記記録材の量は前記最小出力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を少なくする方向の値である場合、
前記中間入力値の少なくともいずれかに対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値よりも大きい値と決定することを特徴とする、記録装置。
【請求項4】
記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、
画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、
前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最小入力値が示す前記記録材の量は前記最大入力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最小出力値が示す前記記録材の量は前記最大出力値が示す前記記録材の量よりも多く、
前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を少なくする方向の値である場合、
前記中間入力値の少なくともいずれかに対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値よりも小さい値と決定することを特徴とする、記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を少なくする方向の値である場合、
前記入力値に対して前記調整値に応じた係数を乗じることで前記出力値を導出し、
複数の前記中間入力値に対する前記係数は互いに異なることを特徴とする、請求項3又は4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を少なくする方向の値である場合、
前記入力値に対して前記調整値に応じた所定係数を乗じることで導出した出力値と、前記入力値に対して変動係数を乗じることで導出した前記出力値との、平均を前記出力値として決定し、
前記所定係数は、全ての前記入力値に共通し、
前記変動係数は複数の前記中間入力値において互いに異なることを特徴とする、請求項3又は4に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記画像の画素値を前記記録材の濃度に対応した濃度値に変換する第1変換処理と、
前記濃度値を前記記録材の量を示すデータに変換する第2変換処理と、を実行し、
前記第1変換処理の後、前記第2変換処理の前に、前記調整処理を行い、
前記調整処理において、前記濃度値の出力値を決定し、
前記第2変換処理において、前記濃度値の出力値を前記記録材の量を示すデータに変換することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記画像の画素値を前記記録材の濃度に対応した濃度値に変換する第1変換処理と、
前記濃度値を前記記録材の量を示すデータに変換する第2変換処理と、を実行し、
前記第1変換処理において、前記記録材の色毎の前記画素値の出力値を前記調整処理で決定し、当該出力値を前記濃度値に変換することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、同一の画像データに基づく前記記録処理で使用される前記記録材の量が互いに異なる複数の記録モードのいずれか1つに基づいて、前記調整処理及び前記記録処理を実行可能であり、
前記複数の記録モードに共通のテーブルであって、前記入力値と前記出力値との対応関係を示すテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記複数の記録モードのいずれにおいても、前記調整処理において、前記共通のテーブルに基づいて前記出力値を決定することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、記録媒体の種類が互いに異なる複数の記録モードのいずれか1つに基づいて、前記調整処理及び前記記録処理を実行可能であり、
前記複数の記録モード毎に個別のテーブルであって、前記入力値と前記出力値との対応関係を示すテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記複数の記録モードのそれぞれにおいて、前記調整処理において、前記個別のテーブルに基づいて前記出力値を決定することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、記録解像度が互いに異なる複数の記録モードのいずれか1つに基づいて、前記調整処理及び前記記録処理を実行可能であり、
前記複数の記録モード毎に個別のテーブルであって、前記入力値と前記出力値との対応関係を示すテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記複数の記録モードのそれぞれにおいて、前記調整処理において、前記個別のテーブルに基づいて前記出力値を決定することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材の量を調整可能な記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザの入力に応じて調整値を設定し、調整値に応じて画像データの濃度(記録材の量)を調整することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調整値が記録材の量を多くする方向の値である場合、調整前階調値(入力値)の最大値を含む範囲で、調整後階調値(出力値)が最大値を超えることがある。この場合の処理について、特許文献1には記載がない。この場合に調整処理を行わないと、ユーザ所望の濃度を得ることができない。
【0005】
調整値が記録材の量を少なくする方向の値である場合、調整前階調値(入力値)について一律に調整値に応じて調整し、調整後階調値(出力値)を得ると、中間濃度(階調値の最小値と最大値との間の値に対応する濃度)が低くなり過ぎて、ユーザ所望の濃度を得ることができない。
【0006】
本発明の目的は、ユーザ所望の濃度を得ることができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点によれば、記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最大入力値が示す前記記録材の量は前記最小入力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最大出力値が示す前記記録材の量は前記最小出力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を多くする方向の値である場合、前記最大入力値を含む範囲の入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値が前記最大出力値を超えるとき、前記最大出力値と決定し、前記範囲よりも小さい前記中間入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値と決定することを特徴とする、記録装置が提供される。
【0008】
本発明の第2観点によれば、記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最小入力値が示す前記記録材の量は前記最大入力値が示す前記記録材の量よりも多く、 前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最小出力値が示す前記記録材の量は前記最大出力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を多くする方向の値である場合、前記最小入力値を含む範囲の前記入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値が前記最小出力値未満のとき、前記最小出力値と決定し、前記範囲よりも大きい前記中間入力値に対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値と決定することを特徴とする、記録装置が提供される。
【0009】
本発明の第3観点によれば、記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最大入力値が示す前記記録材の量は前記最小入力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最大出力値が示す前記記録材の量は前記最小出力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を少なくする方向の値である場合、前記中間入力値の少なくともいずれかに対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値よりも大きい値と決定することを特徴とする、記録装置が提供される。
【0010】
本発明の第4観点によれば、記録媒体に対して記録材により画像の記録を行う記録部と、画像データに基づく単位画素当たりの前記記録材の量を示す入力値と、調整値とに基づいて、出力値を決定する調整処理と、前記出力値に応じた量の前記記録材により前記記録部に前記記録を行わせる記録処理と、を実行する制御部と、を備え、前記入力値は、最小入力値と、最大入力値と、前記最小入力値と前記最大入力値との間の中間入力値とからなり、前記最小入力値が示す前記記録材の量は前記最大入力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記出力値は、最小出力値と、最大出力値と、前記最小出力値と前記最大出力値との間の中間出力値とからなり、前記最小出力値が示す前記記録材の量は前記最大出力値が示す前記記録材の量よりも多く、前記制御部は、前記調整処理において、前記調整値が前記記録材の量を少なくする方向の値である場合、前記中間入力値の少なくともいずれかに対応する出力値について、前記入力値と前記調整値とに基づいて導出した出力値よりも小さい値と決定することを特徴とする、記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタ1の平面図である。
【
図2】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】プリンタ1のディスプレイ71に表示されるインク量の調整値入力画面を示す模式図である。
【
図4】プリンタ1のCPU91が実行する記録プログラムを示すフロー図である。
【
図5】インク量を多くする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図6】インク量を少なくする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図7】本発明の第2実施形態におけるインク量を少なくする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図8】本発明の第3実施形態におけるインク量を少なくする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図9】本発明の第4実施形態におけるインク量を少なくする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図10】本発明の第5実施形態におけるインク量を少なくする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図11】本発明の第6実施形態におけるインク量を少なくする場合のCMYKの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図12】本発明の第7実施形態に係るプリンタのCPUが実行する記録プログラムを示すフロー図である。
【
図13】本発明の第7実施形態におけるインク量を多くする場合のRGBの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図14】本発明の第7実施形態におけるインク量を少なくする場合のRGBの入力値と出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るプリンタ1は、
図1に示すように、筐体1aと、筐体1aの内部に配置されたヘッド10、キャリッジ2、走査部3、プラテン4、搬送部5及び制御装置9とを備えている。プリンタ1が本発明の「記録装置」に該当し、ヘッド10が本発明の「記録部」に該当する。
【0013】
ヘッド10は、下面に複数のノズル11を有する。キャリッジ2は、ヘッド10を保持する。
【0014】
走査部3は、キャリッジ2を支持する一対のガイド3a,3bと、キャリッジ2に連結されたベルト3cとを含む。ガイド3a,3b及びベルト3cは、紙幅方向に延びている。制御装置9の制御によりキャリッジモータ3M(
図2参照)が駆動されると、ベルト3cが走行し、ガイド3a,3bに沿ってキャリッジ2が紙幅方向に移動する。
【0015】
プラテン4は、キャリッジ2及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン4の上面に、用紙Pが載置される。用紙Pは本発明の「記録媒体」に該当する。
【0016】
搬送部5は、2つのローラ対5a,5bを有する。搬送方向においてローラ対5aとローラ対5bとの間に、ヘッド10、キャリッジ2及びプラテン4が配置されている。制御装置9の制御により搬送モータ5M(
図2参照)が駆動されると、給紙トレイ(図示略)に配置された用紙Pは、ローラ対5a,5bにより搬送方向に搬送され、ヘッド10の下方を通過し、排紙トレイ(図示略)に受容される。
【0017】
紙幅方向及び搬送方向は、鉛直方向と直交すると共に、互いに直交する。
【0018】
制御装置9は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93及びI/F(Interface)94を有する。ROM92には、CPU91が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。I/F94は、外部とのデータの送受信を行う。
【0019】
CPU91は、I/F94が受信した記録指令(画像を示す画像データを含む。)に基づいて、ROM92及びRAM93に記憶されているデータにしたがい、記録プログラムを実行する。
【0020】
記録プログラムは、用紙Pへの画像の記録に係る記録処理を含む。記録処理は、搬送モータ5M(
図2参照)の駆動により用紙Pを搬送方向に所定量搬送させる搬送処理と、キャリッジモータ3M及びドライバIC10D(
図2参照)の駆動によりヘッド10を紙幅方向に移動させながらノズル11から用紙Pに対してインクを吐出させる走査処理とを含む。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。インクは本発明の「記録材」に該当する。
【0021】
記録プログラムは、さらに、記録時に使用される単位画素当たりのインクの量を少なくする方向及び多くする方向のいずれかの方向に調整する調整処理を含む。具体的には、タッチパネル式のディスプレイ71に表示されたインク量の調整値入力画面(
図3参照)においてユーザが指示した調整値が、RAM93に記憶される。CPU91は、RAM93に記憶された調整値と、ROM92に記憶されたテーブルとに基づいて、記録時に使用される単位画素当たりのインクの量を調整する。テーブルは、画像データに基づく単位画素当たりのインクの量を示す入力値と出力値との対応関係を示すものであり、本実施形態ではCMYKの入力値と出力値との対応関係を示すものである。
【0022】
CPU91が本発明の「制御部」に該当する。ROM92が本発明の「記憶部」に該当する。
【0023】
次いで、
図4を参照し、CPU91が実行する記録プログラムについて具体的に説明する。
【0024】
CPU91は、先ず、外部装置100から記録指令を受信したか否かを判断する(S1
:YES)。
【0025】
外部装置100から記録指令を受信していないと判断した場合(S1:NO)、CPU91は、S1の処理を繰り返す。
【0026】
外部装置100から記録指令を受信したと判断した場合(S1:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データが示す画像の色に対応したRGB(レッド、グリーン、ブルー)値を、インクの色に対応したCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)値に変換する(S2:第1変換処理)。RGB値は本発明の「画素値」に該当し、CMYK値は本発明の「濃度値」に該当する。
【0027】
S2の後、CPU91は、RAM93に記憶された情報に基づいて、インク量の調整を行うか否かを判断する(S3)。
【0028】
インク量の調整を行わないと判断した場合(S3:NO)、CPU91は、処理をS5に進める。
【0029】
インク量の調整を行うと判断した場合(S3:YES)、CPU91は、S2で得られたCMYK値を、RAM93に記憶された調整値に基づいて調整する(S4:調整処理)。
【0030】
S4において、CPU91は、ROM92に記憶された上記テーブルを参照し、画像データに基づく単位画素当たりのインクの量を示すCMYKの入力値と、RAM93に記憶された調整値とに基づいて、CMYKの出力値を決定する。CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)毎に、テーブル、入力値及び出力値が設けられる。
【0031】
CMYKの入力値は、
図5及び
図6に示すように、最小入力値(0)と、最大入力値(1023)と、最小入力値と最大入力値との間の中間入力値(1~1022)とからなる。入力値の数値が大きいほど、インクの量が多いことを示す。したがって、最大入力値(1023)が示すインクの量は、最小入力値(0)が示すインクの量よりも多い。
【0032】
CMYKの出力値は、
図5及び
図6に示すように、最小出力値(0)と、最大出力値(1023)と、最小出力値と最大出力値との間の中間出力値(1~1022)とからなる。出力値の数値が大きいほど、インクの量が多いことを示す。したがって、最大出力値(1023)が示すインクの量は、最小出力値(0)が示すインクの量よりも多い。
【0033】
図5及び
図6において、実線は、調整前(即ち、調整値に基づいて調整される前)の出力値を示す。破線は、調整後(即ち、調整値に基づいて調整された後)の出力値を示す。一点鎖線は、補正後(即ち、調整後の出力値がさらに後述のように補正された後)の出力値を示す。CPU91は、補正後の出力値を、記録処理で用いられる出力値として決定し、S5で吐出データに変換する。
【0034】
図5において、入力値がX未満の範囲では、調整後の出力値と補正後の出力値とが一致する。一方、入力値がX以上かつ最大入力値(1023)以下の範囲では、調整後の出力値は最大出力値(1023)を超え、補正後の出力値は最大出力値(1023)である。
【0035】
つまり、調整値がインクの量を多くする方向の値である場合、CPU91は、
図5に示すように、X以上の範囲(最大入力値(1023)を含む範囲)の入力値に対応する出力値について、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)が最大出力値(1023)を超えるとき、最大出力値(1023)と決定する一方、上記範囲よりも小さい中間入力値(1~X)に対応する出力値については、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)と決定する。換言すると、最大出力値(1023)を超える範囲は最大出力値(1023)に留める一方、中間入力値(1~X)に対応する出力値は調整値に応じて上昇させる。
【0036】
図6において、入力値が最小入力値(0)又は最大入力値(1023)のときは、調整後の出力値と補正後の出力値とが一致する。一方、入力値が中間入力値(1~1022)の範囲では、補正後の出力値が調整後の出力値よりも大きい。
【0037】
つまり、調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、CPU91は、
図6に示すように、中間入力値(1~1022)の少なくともいずれかに対応する出力値について、調整後の出力値(即ち、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)よりも大きい値と決定する。
【0038】
図6において、調整後の出力値は、入力値に対して調整値に応じた所定係数を乗じることで導出される。補正後の出力値は、入力値に対して変動係数を乗じることで導出される。所定係数は、全ての入力値(0~1023)に共通する。一方、変動係数は、複数の中間入力値(1~1022)において互いに異なる。入力値が0に近づくほど、補正後の出力値が調整後の出力値に近づく。
【0039】
S4の後、又は、インク量の調整を行わないと判断した場合(S3:NO)、CPU91は、CMYK値を吐出データに変換する(S5:第2変換処理)。S4の後のS5では、補正後の出力値に応じたCMYK値を、吐出データに変換する。インク量の調整を行わないと判断した(S3:NO)後のS5では、調整前のCMYK値を、吐出データに変換する。吐出データは、1記録周期(用紙P上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙Pがヘッド10に対して相対移動するのに要する時間)毎の、各ノズル11から吐出されるべきインクの体積(大滴、中滴、小滴、ゼロのいずれか)を示す。
【0040】
インク量を少なくする方向の調整が行われた場合、インクの体積が大滴から中滴に変更され、或いは、インクの体積が中滴から小滴に変更されてよい。また、インク量を多くする方向の調整が行われた場合、インクの体積が中滴から大滴に変更され、或いは、インクの体積が小滴から中滴に変更されてよい。
【0041】
S5の後、CPU91は、記録処理を実行する(S6)。記録処理において、CPU91は、搬送モータ5M(
図2参照)を駆動させることで、給紙トレイ(図示略)から用紙Pを搬送させる。用紙Pの先端(搬送方向の下流端)がヘッド10の下方に至った後、CPU91は、搬送モータ5M(
図2参照)の駆動により用紙Pを搬送方向に所定量搬送させる搬送処理と、キャリッジモータ3M及びドライバIC10D(
図2参照)の駆動によりヘッド10を紙幅方向に移動させながらノズル11から用紙Pに対してインクを吐出させる走査処理と、を繰り返し実行する。
【0042】
S4(調整処理)が実行された場合、S6では、CPU91は、S4で決定された出力値に応じた量のインクによりヘッド10に記録を行わせる。
【0043】
S6の後、CPU91は、当該記録プログラムを終了する。
【0044】
なお、CPU91は、複数の記録モードのうちの記録指令が示すいずれか1つに基づいて、S4(調整処理)及び後述のS6(記録処理)を実行可能である。複数の記録モードは、片面記録モード、両面記録モード、光沢紙モード、高画質モード等を含む。
【0045】
片面記録モードは、用紙Pの表面に画像を記録する場合の記録モードである。両面記録モードは、用紙Pの表面及び裏面の両方に画像を記録する場合の記録モードである。片面記録モード及び両面記録モードは、同一の画像データに基づく記録処理で使用されるインクの量が互いに異なり、片面記録モードの方が両面記録モードよりも使用インク量が多い。
【0046】
片面記録モード及び両面記録モードは、普通紙かつ通常画質に対応する記録モードである。通常画質とは、高画質モードの記録解像度よりも低い記録解像度の画質をいう。片面記録モード及び両面記録モードと、光沢紙モードとは、記録の対象となる用紙Pの種類が互いに異なる。片面記録モード及び両面記録モードと、高画質モードとは、記録解像度が互いに異なる。
【0047】
用紙Pの種類や記録解像度に応じて発色が異なるため、用紙Pの種類が互いに異なる場合や記録解像度が互いに異なる場合に共通のテーブルに基づいてS4(調整処理)及び後述のS6(記録処理)を実行すると、ユーザ所望の濃度を得ることができない。そこで、ROM92は、片面記録モード及び両面記録モード(普通紙かつ通常画質に対応する記録モード)に共通の第1テーブルと、光沢紙モードに対応する第2テーブルと、高画質モードに対応する第3テーブルとを記憶している。第1~第3テーブルは、記録モード毎に個別のテーブルである。
【0048】
CPU91は、片面記録モード及び両面記録モードのいずれかが選択された場合、S4において第1テーブルと調整値とに基づいて出力値を決定する。このとき、例えば調整値には、片面記録モード及び両面記録モードのそれぞれに応じた係数が含まれる。CPU91は、光沢紙モードが選択された場合、S4において第2テーブルと調整値とに基づいて出力値を決定する。CPU91は、高画質モードが選択された場合、S4において第3テーブルと調整値とに基づいて出力値を決定する。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態によれば、調整値がインクの量を多くする方向の値である場合、CPU91は、
図5に示すように、X以上の範囲(最大入力値(1023)を含む範囲)の入力値に対応する出力値について、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値が最大出力値(1023)を超えるとき、最大出力値(1023)と決定する一方、上記範囲よりも小さい中間入力値(1~X)に対応する出力値については、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)と決定する。これにより、最大入力値(1023)を含む範囲の入力値に対応する出力値が最大出力値(1023)を超える場合にも、ユーザ所望の濃度を得ることができる。
【0050】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、CPU91は、
図6に示すように、中間入力値(1~1022)の少なくともいずれかに対応する出力値について、調整後の出力値(即ち、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)よりも大きい値と決定する。これにより、中間入力値(1~1022)に対応する出力値が示すインクの量が少なくなり過ぎることが防止され、ユーザ所望の濃度を得ることができる。
【0051】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、補正後の出力値は、入力値に対して変動係数を乗じることで導出される。変動係数は、複数の中間入力値(1~1022)において互いに異なる。これにより、中間入力値(1~1022)において良好な階調性が得られる。
【0052】
CPU91は、RGB値をCMYK値に変換する処理(S2:第1変換処理)の後、CMYK値を吐出データに変換する処理(S5:第2変換処理)の前に、調整処理(S4)を行う。この場合、ROM92に記憶されるテーブルはCMYK各色の入力値と出力値との対応関係を示す一次元テーブルであり、当該テーブルに基づく調整処理は複雑ではないため、高速に調整処理を行うことができる。
【0053】
ROM92は、片面記録モード及び両面記録モードに共通の第1テーブルを記憶している。CPU91は、片面記録モード及び両面記録モードのいずれにおいても、S4において、第1テーブルに基づいて出力値を決定する。この場合、ROM92が片面記録モード及び両面記録モードそれぞれのテーブルを記憶する場合に比べ、ROM92の記憶容量を削減できる。
【0054】
ROM92は、片面記録モード及び両面記録モード(普通紙かつ通常画質に対応する記録モード)に共通の第1テーブルと、光沢紙モードに対応する第2テーブルと、高画質モードに対応する第3テーブルとを記憶している。第1~第3テーブルは、記録モード毎に個別のテーブルである。CPU91は、片面記録モード及び両面記録モードと、光沢紙モードと、高画質モードとのそれぞれにおいて、第1~第3テーブルのうちの対応するテーブルに基づいて出力値を決定する。この場合、用紙Pの種類や記録解像度が互いに異なる記録モードにおいても、ユーザ所望の濃度を得ることができる。
【0055】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0056】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、第1実施形態(
図6参照)では、入力値に対して変動係数を乗じることで導出された出力値(補正後の出力値)が、記録処理で用いられる出力値として決定される。これに対し、第2実施形態(
図7参照)では、入力値に対して所定係数を乗じることで導出された出力値(調整後の出力値)と、入力値に対して変動係数を乗じることで導出された出力値(補正後の出力値)との、平均(
図7中の二点鎖線「平均化」参照)が、記録処理で用いられる出力値として決定される。
【0057】
本実施形態によれば、上記出力値を平均化することで、中間入力値(1~1022)において濃度が高くなり過ぎること(ひいては、多量のインクによって用紙Pが汚れること)を防止できる。
【0058】
<第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。
【0059】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、第1実施形態(
図6参照)では、入力値に対して変動係数を乗じることで導出された出力値(補正後の出力値)が、記録処理で用いられる出力値として決定される。これに対し、第3実施形態(
図8参照)では、入力値に対して調整値に応じた所定係数を乗じることで導出された出力値(調整後の出力値)が閾値Y以上のときは、当該出力値が記録処理で用いられる出力値として決定される一方、当該出力値が閾値Y未満のときは、閾値Yが記録処理で用いられる出力値として決定される(
図8中の「補正後」の一点鎖線参照)。換言すると、出力値について、閾値Yを下回る範囲は閾値Yに留める一方、閾値Y以上の範囲は調整値に応じて上昇させる。
【0060】
本実施形態によれば、閾値Y未満の出力値を記録処理に適用する場合に比べ、濃度が低くなり過ぎること(ひいては、画像の一部が視認できないこと)を防止できる。
【0061】
<第4実施形態>
続いて、本発明の第4実施形態について説明する。
【0062】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、調整後の出力値が閾値Y以上のとき、第4実施形態(
図9参照)では、第3実施形態(
図8参照)と同様、当該出力値が記録処理で用いられる出力値として決定される。一方、調整後の出力値が閾値Y未満のとき、第3実施形態(
図8参照)では、一律に閾値Yが記録処理で用いられる出力値として決定されるが、第4実施形態(
図9参照)では、最小入力値(0)から入力値A(調整前の出力値が閾値Yとなるときの入力値)までの範囲については、調整前の出力値が、記録処理で用いられる出力値として決定され、入力値Aから入力値B(調整後の出力値が閾値Yとなるときの入力値)までの範囲については、閾値Yが記録処理で用いられる出力値として決定される。
【0063】
本実施形態によれば、第3実施形態に比べ、最小入力値(0)から入力値Aまでの範囲について、調整前の出力値を用いることで、階調性が向上する。
【0064】
<第5実施形態>
続いて、本発明の第5実施形態について説明する。
【0065】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、最小入力値(0)から入力値A(調整前の出力値が閾値Yとなるときの入力値)までの範囲について、第5実施形態(
図10参照)では、第4実施形態(
図9参照)と同様、調整前の出力値が、記録処理で用いられる出力値として決定される。一方、入力値A以上の範囲について、第5実施形態(
図10参照)では、第3実施形態(
図8参照)及び第4実施形態(
図9参照)とは異なり、調整前の出力値に対して係数を乗じることで導出された値が、記録処理で用いられる出力値として決定される。当該係数は、調整後の出力値に係る所定係数よりも小さい値である。したがって、入力値A以上の範囲において、補正後の出力値は調整後の出力値よりも大きい。
【0066】
本実施形態によれば、第3実施形態に比べ、最小入力値(0)から入力値Aまでの範囲について、調整前の出力値を用いることで、階調性が向上する。また、第4実施形態に比べ、入力値Aから入力値Bまでの範囲について、出力値を閾値Yに維持せず上昇させることで、階調性が向上する。
【0067】
<第6実施形態>
続いて、本発明の第6実施形態について説明する。
【0068】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、最小入力値(0)から入力値A(調整前の出力値が閾値Yとなるときの入力値)までの範囲について、第6実施形態(
図11参照)では、第5実施形態(
図10参照)と同様、調整前の出力値が、記録処理で用いられる出力値として決定される。一方、入力値A以上の範囲について、第6実施形態(
図11参照)の補正後の出力値は、全体として、第5実施形態(
図10参照)の補正後の出力値よりも小さく、かつ、調整後の出力値よりも大きい。第6実施形態(
図11参照)において、最大入力値(1023)に対する補正後の出力値は、最大入力値(1023)に対する調整後の出力値と同じである。
【0069】
本実施形態によれば、第3実施形態に比べ、最小入力値(0)から入力値Aまでの範囲について、調整前の出力値を用いることで、階調性が向上する。また、第5実施形態に比べ、入力値A以上の範囲について、出力値を小さくすること(特に、最大入力値(1023)に対し、補正後の出力値が調整後の出力値を超えないようにすること)で、濃度が高くなり過ぎること(ひいては、多量のインクによって用紙Pが汚れること)を防止できる。
【0070】
<第7実施形態>
続いて、本発明の第7実施形態について説明する。
【0071】
第1実施形態(
図4~
図6参照)では、RGB値をCMYK値に変換する処理(S2:第1変換処理)の後、CMYK値を吐出データに変換する処理(S5:第2変換処理)の前に、調整処理(S4)において、CMYK値を調整する。これに対し、第7実施形態(
図12~
図14参照)では、RGB値をCMYK値に変換する処理(S72:第1変換処理)において、RGB値を調整した上で、CMYK値に変換する。第7実施形態において、ROM92は、RGBの入力値と出力値との対応関係を示すテーブルを記憶している。RGB(レッド、グリーン、ブルー)毎に、テーブル、入力値及び出力値が設けられる。
【0072】
RGBの入力値は、
図13及び
図14に示すように、最小入力値(0)と、最大入力値(255)と、最小入力値と最大入力値との間の中間入力値(1~254)とからなる。入力値の数値が大きいほど、インクの量が少ないことを示す。したがって、最小入力値(0)が示すインクの量は、最大入力値(255)が示すインクの量よりも多い。
【0073】
RGBの出力値は、
図13及び
図14に示すように、最小出力値(0)と、最大出力値(255)と、最小出力値と最大出力値との間の中間出力値(1~254)とからなる。出力値の数値が大きいほど、インクの量が少ないことを示す。したがって、最小出力値(0)が示すインクの量は、最大出力値(255)が示すインクの量よりも多い。
【0074】
記録プログラム(
図12参照)において、外部装置100から記録指令を受信したと判断した場合(S1:YES)、CPU91は、第1変換処理(S72)を行う前に、インク量の調整を行うか否かを判断する(S71)。
【0075】
インク量の調整を行うと判断した場合(S71:YES)、CPU91は、第1変換処理(S72)において、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の色毎の出力値を調整処理で決定し、当該出力値をCMYK値に変換する。S72の後、CPU91は、処理をS5に進める。
【0076】
図13及び
図14において、実線は、調整前(即ち、調整値に基づいて調整される前)の出力値を示す。破線は、調整後(即ち、調整値に基づいて調整された後)の出力値を示す。一点鎖線は、補正後(即ち、調整後の出力値がさらに後述のように補正された後)の出力値を示す。CPU91は、補正後の出力値を、記録処理で用いられる出力値として決定し、S5で吐出データに変換する。
【0077】
図13において、入力値がZ以上の範囲では、調整後の出力値と補正後の出力値とが一致する。一方、入力値が最小入力値(0)以上かつZ未満の範囲では、調整後の出力値は最小出力値(0)未満であり、補正後の出力値は最小出力値(0)である。
【0078】
つまり、調整値がインクの量を多くする方向の値である場合、CPU91は、
図13に示すように、Z未満の範囲(最小入力値(0)を含む範囲)の入力値に対応する出力値について、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)が最小出力値(0)未満のとき、最小出力値(0)と決定する一方、上記範囲よりも大きい中間入力値(Z~254)に対応する出力値については、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)と決定する。換言すると、最小出力値(0)未満の範囲は最小出力値(0)に留める一方、中間入力値(Z~254)に対応する出力値は調整値に応じて下降させる。
【0079】
図14において、入力値が最小入力値(0)又は最大入力値(255)のときは、調整後の出力値と補正後の出力値とが一致する。一方、入力値が中間入力値(1~254)の範囲では、補正後の出力値が調整後の出力値よりも小さい。
【0080】
つまり、調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、CPU91は、
図14に示すように、中間入力値(1~254)の少なくともいずれかに対応する出力値について、調整後の出力値(即ち、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)よりも小さい値と決定する。
【0081】
図14において、調整後の出力値は、入力値に対して調整値に応じた所定係数を乗じることで導出される。補正後の出力値は、入力値に対して変動係数を乗じることで導出される。所定係数は、全ての入力値(0~255)に共通する。一方、変動係数は、複数の中間入力値(1~254)において互いに異なる。入力値が255に近づくほど、補正後の出力値が調整後の出力値に近づく。
【0082】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CMYK値を調整する点とRGB値を調整する点とが異なるものの、第1実施形態と同様の効果が得られる。つまり、調整値がインクの量を多くする方向の値である場合、CPU91は、
図13に示すように、Z未満の範囲(最小入力値(0)を含む範囲)の入力値に対応する出力値について、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値が最小出力値(0)未満のとき、最小出力値(0)と決定する一方、上記範囲よりも大きい中間入力値(Z~254)に対応する出力値については、調整後の出力値(入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)と決定する。これにより、最小入力値(0)を含む範囲の入力値に対応する出力値が最小出力値(0)未満の場合にも、ユーザ所望の濃度を得ることができる。
【0083】
調整値がインクの量を少なくする方向の値である場合、CPU91は、
図14に示すように、中間入力値(1~254)の少なくともいずれかに対応する出力値について、調整後の出力値(即ち、入力値と調整値とに基づいて導出した出力値)よりも小さい値と決定する。これにより、中間入力値(1~254)に対応する出力値が示すインクの量が少なくなり過ぎることが防止され、ユーザ所望の濃度を得ることができる。
【0084】
CPU91は、第1変換処理(S72)において、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の色毎の出力値を調整処理で決定し、当該出力値をCMYK値に変換する。この場合、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の色毎にインクの量を調整することで、良好な階調性が得られる。
【0085】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0086】
上述の実施形態において、制御部は、調整処理で、CMYK値又はRGB値を調整するが、吐出データを調整してもよい。
【0087】
制御部は、
図5等に示すグラフをディスプレイ71に表示させ、グラフを見たユーザが入力したデータに基づいて、出力値を決定してもよい。
【0088】
記録材は、上述の実施形態ではインクであるが、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。また、記録材は、インク等の液体に限定されず、トナー等であってもよい。
【0089】
記録部は、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。また、記録部は、液体吐出方式に限定されず、レーザー方式、熱転写方式等であってもよい。
【0090】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、基板、プラスチック部材等であってもよい。
【0091】
本発明に係る記録装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 プリンタ(記録装置)
10 ヘッド(記録部)
91 CPU(制御部)
92 ROM(記憶部)
P 用紙(記録媒体)