IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナホーム株式会社の特許一覧

特開2024-167612建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム
<>
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図1
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図2
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図3
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図4
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図5
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図6
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図7
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図8
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図9
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図10
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図11
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図12
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図13
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図14
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図15
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図16
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図17
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図18
  • 特開-建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167612
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241127BHJP
   G06Q 30/02 20230101ALI20241127BHJP
   G06Q 30/015 20230101ALI20241127BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20241127BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20241127BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20241127BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q30/02
G06Q30/015
G06Q10/00
F24F11/46
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083810
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
【テーマコード(参考)】
3L260
5L010
5L030
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3L260BA41
3L260BA75
3L260CA11
3L260CA32
3L260CB70
3L260CB78
3L260DA20
3L260EA08
3L260EA19
3L260GA16
5L010AA02
5L030BB08
5L049AA02
5L049BB08
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】 断熱リフォーム後の電気機器の消費電力の削減効果を正確に予測して、断熱リフォームを提案することが可能な方法を提供する。
【解決手段】 電気機器1が設置されている建物Bのリフォームを提案するための方法である。この方法は、建物Bがある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、単位時間ごとの電気機器1の消費電力量とを取得する工程と、取得された外気条件と消費電力量とに基づいて、単位時間ごとの電気機器1が処理した第1熱量を計算する工程と、断熱リフォーム前の第1熱損失量と、断熱リフォーム後の第2熱損失量とを計算する工程と、第1熱量、第1熱損失量及び第2熱損失量に基づいて、断熱リフォーム後に電気機器1が処理する第2熱量を計算する工程と、第1熱量及び第2熱量に基づいて、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果に関する情報を提供する工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器又は給湯器を含む電気機器が設置されている建物のリフォームを、前記建物のユーザーに提案するための方法であって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得工程と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する第1計算工程と、
前記建物の断熱リフォームのプランを決定する決定工程と、
前記断熱リフォーム前の前記建物の熱損失量である第1熱損失量と、前記断熱リフォーム後の前記建物の熱損失量である第2熱損失量とを計算する第2計算工程と、
前記第1熱量、前記第1熱損失量及び前記第2熱損失量に基づいて、前記断熱リフォーム後に前記電気機器が処理する熱量である第2熱量を計算する第3計算工程と、
前記第1熱量及び前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後における前記電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報を、前記ユーザーに提供する提供工程とを含む、
建物のリフォーム提案方法。
【請求項2】
前記提供工程は、前記情報として、前記第1熱量、前記第2熱量、及び、前記第1熱量と前記第2熱量との差の少なくとも1つを提供する、請求項1に記載の建物のリフォーム提案方法。
【請求項3】
前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後の前記電気機器の消費電力量を計算する第4計算工程をさらに含み、
前記提供工程は、前記情報として、前記断熱リフォーム前の前記消費電力量である第1消費電力量、前記断熱リフォーム後の前記消費電力量である第2消費電力量、及び、前記第1消費電力量と前記第2消費電力量との差の少なくとも1つを提供する、請求項1に記載の建物のリフォーム提案方法。
【請求項4】
前記期間は、前記地域の最寒日又は最暑日を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の建物のリフォーム提案方法。
【請求項5】
空調機器又は給湯器を含む電気機器が設置されている建物のリフォームを、前記建物のユーザーに提案するためのシステムであって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得部と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する第1計算部と、
前記建物の断熱リフォームのプランを決定する決定部と、
前記断熱リフォーム前の前記建物の熱損失量である第1熱損失量と、前記断熱リフォーム後の前記建物の熱損失量である第2熱損失量とを計算する第2計算部と、
前記第1熱量、前記第1熱損失量及び前記第2熱損失量に基づいて、前記断熱リフォーム後に前記電気機器が処理する熱量である第2熱量を計算する第3計算部と、
前記第1熱量及び前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後における前記電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報を、前記ユーザーに提供する提供部とを含む、
建物のリフォーム提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のリフォーム提案方法及びリフォーム提案システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物のリフォームを提案するための方法が種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-166483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リフォームの一例には、建物の断熱性能を向上させるための断熱リフォームが挙げられる。この断熱リフォームの目的には、例えば、建物に設けられた空気調和機の消費電力量の削減が含まれる。したがって、建物のユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案するには、その断熱リフォームによる消費電力の削減効果を正確に予測して提示することが重要である。
【0005】
上記の削減効果は、例えば、予め想定された標準的な生活パターン・気象条件に基づくシミュレーションによって、ある程度予測することが可能である。しかしながら、ユーザーの生活パターン、空気調和機の設定温度、建物内部の発熱、及び、日射の入り方などは様々であるため、これらの個別条件を踏まえた消費電力の削減効果を正確に予測することは困難である。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、断熱リフォーム後の電気機器の消費電力の削減効果を正確に予測して、断熱リフォームを提案することが可能な方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空調機器又は給湯器を含む電気機器が設置されている建物のリフォームを、前記建物のユーザーに提案するための方法であって、前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得工程と、取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する第1計算工程と、前記建物の断熱リフォームのプランを決定する決定工程と、前記断熱リフォーム前の前記建物の熱損失量である第1熱損失量と、前記断熱リフォーム後の前記建物の熱損失量である第2熱損失量とを計算する第2計算工程と、前記第1熱量、前記第1熱損失量及び前記第2熱損失量に基づいて、前記断熱リフォーム後に前記電気機器が処理する熱量である第2熱量を計算する第3計算工程と、前記第1熱量及び前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後における前記電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報を、前記ユーザーに提供する提供工程とを含む、建物のリフォーム提案方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建物のリフォーム提案方法は、上記の工程を採用することで、断熱リフォーム後の電気機器の消費電力の削減効果を正確に予測して、断熱リフォームを提案することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電気機器が設置された建物の一例を概念的に示す断面図である。
図2】建物のリフォーム提案システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】電気機器の仕様に関する情報の一例を示す図である。
図4】建物の仕様に関する情報の一例を示す図である。
図5】複数の建材の候補断熱仕様の一例を示す図である。
図6】建物のリフォーム提案方法の処理手順を示すフローチャートである。
図7】建物のある地域の外気条件、及び、電気機器の消費電力量の一部を示す図である。
図8】第1計算工程の処理手順を示すフローチャートである。
図9】暖房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。
図10】冷房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。
図11図7に示した外気条件及び消費電力量と、暖房時の補正成績係数とを示す図である。
図12図11に示した外気条件、消費電力量及び暖房時の補正成績係数と、第1熱量とを示す図である。
図13】建物の断熱リフォームのプランを決定するための画面が出力された表示装置を示す図である。
図14】第1熱損失量及び第2熱損失量を説明する図である。
図15図12に示した外気条件、消費電力量、暖房時の補正成績係数及び第1熱量と、第2熱量とを示す図である。
図16】断熱リフォーム後における電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報が出力された表示装置を示す図である。
図17】本発明の他の実施形態の建物のリフォーム提案方法の処理手順を示すフローチャートである。
図18図15に示した外気条件、断熱リフォーム前の消費電力量、暖房時の補正成績係数、第1熱量及び第2熱量と、断熱リフォーム後の消費電力量とを示す図である。
図19】本発明の他の実施形態の断熱リフォーム後における電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報が出力された表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態の建物のリフォーム提案方法(以下、「提案方法」ということがある。)では、電気機器が設置されている建物のリフォームが、建物のユーザーに提案される。本実施形態では、建物リフォームとして、断熱リフォームが提案される。
【0012】
本実施形態の電気機器には、ヒートポンプ式のものが採用されるが、特に限定されるわけではなく、例えば、ヒートポンプ式以外のものであってもよい。電気機器には、例えば、空調機器又は給湯器が含まれる。また、リフォームが提案されるユーザーには、例えば、建物Bの所有者、大家、及び、管理会社等が含まれる。
【0013】
[建物]
図1は、電気機器1が設置された建物Bの一例を概念的に示す断面図である。建物Bは、例えば、住宅やビル等である場合が例示される。また、本実施形態の建物Bは、工業化住宅として構成されている。なお、建物Bは、本実施形態のような工業化住宅に限定されるわけではない。
【0014】
建物Bの内部には、複数の室2が設けられている。これらの室2には、例えば、居室(リビングルーム)2Aと寝室2Bとが含まれる。これらの室2は、複数の建材3によって構成(区画)されている。建材(部位)3には、例えば、天井4、外壁5、床(1階の床)6及び開口部7が含まれる。これらの建材3は、建物Bの熱的境界になる外皮8として構成される。
【0015】
本実施形態のように、建物Bが工業化住宅として構成されている場合には、建物Bの仕様(商品)ごとに、各建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7など)の断熱仕様(初期断熱仕様)が予め定められている。断熱仕様は、例えば、熱貫流率(W/(m2・K))や熱損失量(W/K)等で特定される。これらの熱貫流率や熱損失量の値が小さい建材3ほど、断熱性能が優れている。本実施形態の断熱リフォームは、複数の建材3のうち少なくとも1つの建材3について、現在の断熱仕様(初期断熱仕様)よりも高い断熱性能を発揮しうる建材に変更される。
【0016】
[空調機器(電気機器)]
本実施形態の空調機器9には、ヒートポンプ式のものが採用される。空調機器9の一例としては、空気調和機10などが挙げられる。空気調和機10は、例えば、一般的な家庭用のセパレート型エアコンで構成されている。空気調和機10は、室内機10Aと、建物Bの外部に設置された室外機(図示省略)とをセットとして含んでいる。
【0017】
[給湯器(電気機器)]
給湯器20には、ヒートポンプ式のものが採用される。給湯器20の一例としては、温水暖房機器(例えば、床暖房装置、温水ルームヒーター及びパネルヒーターなど)が挙げられる。このような給湯器20は、従来と同様に、貯湯ユニット20Aと、ヒートポンプユニット(図示省略)とをセットとして含んでいる。
【0018】
[ヒートポンプ式以外の電気機器]
ヒートポンプ式以外の電気機器には、例えば、電気ストーブや、電気式床暖房装置等が挙げられる。これらの電気機器は、後述の成績係数(COP)が常に「1」となる。
【0019】
ところで、建物Bの断熱リフォームの目的には、例えば、電気機器1(空気調和機10等)の消費電力量の削減が含まれる。したがって、建物Bのユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案するには、その断熱リフォームによる消費電力の削減効果を正確に予測して提示することが重要である。
【0020】
消費電力の削減効果は、例えば、予め想定された標準的な生活パターン・気象条件に基づくシミュレーションによって、ある程度予測することが可能である。しかしながら、建物Bのユーザーの生活パターン、空気調和機10の設定温度、建物内部の発熱、及び、日射の入り方などは様々であるため、これらの個別条件を踏まえた消費電力の削減効果を正確に予測することは困難である。
【0021】
[建物のリフォーム提案方法(第1実施形態)]
本実施形態の提案方法では、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力の削減効果が正確に予測される。そして、予測された削減効果に基づいて、断熱リフォームの提案が行われる。本実施形態では、消費電力の削減効果が予測される電気機器1として、ヒートポンプ式の電気機器1である空気調和機10である場合が例示される。
【0022】
本実施形態のように、建物Bに複数の室2が設けられている場合には、これらの少なくとも1つの室2を対象に、断熱リフォームが提案されうる。各室2の断熱リフォームが提案される場合には、それらの室2に設けられた空気調和機10のそれぞれの消費電力の削減効果が予測される。なお、1台の空気調和機(図示省略)で複数の室2を空調する全館空調システムが設けられた建物Bでは、その空気調和機の消費電力の削減効果が予測される。
【0023】
[建物のリフォーム提案システム]
本実施形態の提案方法では、建物のリフォーム提案システム(以下、「提案システム」ということがある。)が用いられる。図2は、建物のリフォーム提案システム11の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
本実施形態の提案システム11は、入力装置12と、表示装置13と、演算処理装置14(コンピュータ15)とを有している。さらに、本実施形態の提案システム11には、電力取得装置16が接続されている。これらの装置の集合体により、図1に示した電気機器1が設置されている建物Bのリフォームを提案する機能を発揮可能な提案システム11が構成されうる。
【0025】
本実施形態の演算処理装置14(コンピュータ15)は、サーバ(クラウドサーバ)として構成されているが、特に限定されるわけではなく、例えば、パーソナルコンピュータや、携帯情報端末(タブレット型等)で構成されてもよい。
【0026】
[電力取得装置]
電力取得装置16は、図1に示した電気機器1(空気調和機10)の消費電力量を取得するためのものである。この消費電力量は、電気機器1が処理した熱量の計算に用いられる。
【0027】
電力取得装置16は、電気機器1の消費電力量を取得できれば、特に限定されるわけでない。電力取得装置16には、例えば、HEMS(Home Energy Management Service)コントローラや、電力計などが採用される。HEMSでは、電気機器1との通信によって、消費電力量が取得されうる。一方、電力計では、電気機器1の電源プラグと、コンセントとの間に接続されることで、電気機器1の消費電力量が測定されうる。これらのHEMSや電力計等に、演算処理装置14が接続されることで、電気機器1の消費電力量が容易に取得されうる。本実施形態のように、演算処理装置14がクラウドサーバとして構成される場合には、WANなどの通信ネットワークNを介して、電力取得装置16と演算処理装置14とが接続されうる。
【0028】
本実施形態の電力取得装置16では、予め定められた単位時間ごとに、電気機器1の消費電力量が取得されうる。単位時間は、電気機器1が処理した熱量の計算頻度に応じて設定され、例えば、10~60分(本例では、60分)に設定される。
【0029】
[入力装置・表示装置]
図2に示されるように、入力装置12は、例えば、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等が用いられる。表示装置13は、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。
【0030】
[演算処理装置]
演算処理装置14は、各種の演算を行う演算部(CPU)17、データやプログラム等が記憶される記憶部18、及び、作業用メモリ19が含まれている。
【0031】
[記憶部]
記憶部18は、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。記憶部18は、データ部21及びプログラム部22を含んで構成されている。
【0032】
データ部21は、建物Bのリフォームの提案に必要な情報を記憶するためのものである。本実施形態のデータ部21には、外気条件入力部21a、消費電力量入力部21b、電気機器入力部21c、建物仕様入力部21d、候補断熱仕様入力部21e及び決定プラン入力部21fが含まれている。さらに、データ部21には、補正成績係数入力部21g、熱量入力部21h、熱損失量入力部21i及び削減効果入力部21jが含まれている。なお、データ部21は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、その他のデータを記憶するための入力部(図示省略)がさらに含まれてもよい。
【0033】
電気機器入力部21cは、図1に示した電気機器1の仕様に関する情報が、データベース(テーブル)として予め記憶されている。図3は、電気機器1の仕様に関する情報31の一例を示す図である。
【0034】
電気機器1の仕様に関する情報31には、定格暖房能力31a、定格冷房能力31b、最大暖房能力31c、最大冷房能力31d、暖房時の成績係数31e、及び、冷房時の成績係数31fが含まれる。
【0035】
成績係数(COP:Coefficient Of Performance)は、JIS C9612で定められた外気の温度条件(以下、「JIS測定条件」ということがある。)において、電気機器1が定格能力で運転したときのエネルギー消費効率を示したものである。JIS測定条件は、暖房時が7℃であり、冷房時が35℃である。このような成績係数を含む仕様は、例えば、電気機器1のメーカーによって予め定められている。
【0036】
図2に示した建物仕様入力部21dには、図1に示した建物Bの仕様に関する情報が、データベース(テーブル)として予め記憶されている。図4は、建物Bの仕様に関する情報32の一例を示す図である。図4では、建物Bに含まれる複数の室2のうち、リフォーム対象の1つの室2(例えば、居室2A)の仕様が代表して示されている。
【0037】
図4に示されるように、建物の仕様に関する情報32では、リフォーム対象の1つの室2を構成する複数の建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)の仕様がそれぞれ特定される。各建材3の仕様には、例えば、隣接空間32a、面積32b、熱貫流率32c及び温度差係数32dが含まれる。なお、これらの仕様のうち、いずれか一部の仕様が省略されてもよいし、他の仕様が含まれてもよい。
【0038】
隣接空間32aは、複数の建材3のそれぞれについて、建材3を介してリフォーム対象の室2と隣り合う空間である。例えば、天井4の隣接空間32aは、小屋裏である。また、外壁5の隣接空間32aは、外気である。これらの隣接空間32aに応じて、各建材3の温度差係数32dが特定されうる。
【0039】
温度差係数32dは、熱損失量の計算に用いられるパラメータである。隣接空間32aが外気に通じている建材3(例えば、天井4、外壁5及び開口部7)には、温度差係数として1.0が設定されうる。一方、隣接空間32aが床下である建材3(例えば、床6)や、外気に通じない建材(図示省略)には、温度差係数として0.7が設定されうる。熱貫流率32cは、各建材3の現在の断熱仕様である初期断熱仕様(熱貫流率)として特定される。
【0040】
図2に示した候補断熱仕様入力部21eには、図1に示した建物B(リフォーム対象の室2)を構成する複数の建材3について、断熱リフォームのプランの候補となる候補断熱仕様が、データベース(テーブル)として予め記憶されている。図5は、複数の建材3の候補断熱仕様33の一例を示す図である。
【0041】
候補断熱仕様33には、第1候補断熱仕様33a、第2候補断熱仕様33b及び第3候補断熱仕様33cが含まれている。なお、候補断熱仕様33は、このような態様に限定されるわけではなく、これらの一部が省略されてもよいし、他の候補断熱仕様(図示省略)がさらに含まれてもよい。本実施形態では、これらの第1候補断熱仕様33a~第3候補断熱仕様33cのうち、1つの候補断熱仕様33が、断熱リフォームのプランとして決定される。
【0042】
第1候補断熱仕様33a~第3候補断熱仕様33cは、各建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)の熱貫流率34aがそれぞれ設定されている。これらの第1候補断熱仕様33a~第3候補断熱仕様33c間において、少なくとも1つの建材3の熱貫流率34aが互いに異なっている。したがって、第1候補断熱仕様33a~第3候補断熱仕様33cでは、建物B(リフォーム対象の室2)の熱損失量が互いに異なる。本実施形態では、各第1候補断熱仕様33a~第3候補断熱仕様33cについて、断熱リフォームに要するコスト34bがそれぞれ設定されている。
【0043】
図2に示した外気条件入力部21a、消費電力量入力部21b、決定プラン入力部21f、補正成績係数入力部21g、熱量入力部21h、熱損失量入力部21i及び削減効果入力部21jは、提案方法の実行によって取得されたデータ(計算結果)等が記憶される。これらのデータの詳細は、後述される。
【0044】
[プログラム部]
プログラム部22は、提案方法の実行に必要なプログラム(コンピュータプログラム)である。このプログラム部(プログラム)22が、演算部17によって実行されることにより、コンピュータ15を、図1に示した建物Bのリフォームを提案するための特定の手段として機能させることができる。
【0045】
本実施形態のプログラム部22には、取得部22a、第1計算部22b、決定部22c、第2計算部22d、第3計算部22e、第4計算部22f及び提供部22gが含まれている。なお、プログラム部22は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、その他の機能を有するプログラム部(図示省略)がさらに含まれてもよい。これらのプログラム部22の機能の詳細は、後述される。
【0046】
[外気条件及び消費電力量を取得(取得工程)]
図6は、建物のリフォーム提案方法の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の提案方法では、先ず、外気条件と、図1に示した電気機器1の消費電力量とが取得される(取得工程S1)。取得工程S1では、断熱リフォーム前の電気機器1の消費電力量が取得される。
【0047】
本実施形態の取得工程S1では、先ず、図2に示したプログラム部22に含まれる取得部22aが、作業用メモリ19に読み込まれる。取得部22aは、外気条件と、電気機器1の消費電力量とを取得するためのプログラムである。この取得部22aが、演算部17によって実行されることにより、コンピュータ15を、外部条件及び消費電力量を取得するための手段として機能させることができる。
【0048】
外気条件には、図1に示した建物Bがある地域(例えば、大阪府)の外気の温度が含まれる。この外気の温度は、予め定められた期間に取得されたものである。外気条件には、外気の温度に加えて、外気の湿度(相対湿度)がさらに含まれてもよい。
【0049】
気象条件は、建物Bがある地域の外気の温度や湿度が特定されれば、適宜取得されうる。本実施形態では、例えば、気象庁などで提供されている気象データから取得されてもよいし、建物Bがある地域において実測して取得されてもよい。本実施形態の気象条件は、気象データから取得される。
【0050】
外気条件が取得される期間は、例えば、建物Bのリフォームを依頼された日から、建物Bのリフォームの提案予定日までの期間に応じて適宜設定される。本実施形態の期間は、例えば、1~60日(本例では、30日)に設定される。また、期間は、電気機器1(空気調和機10)の消費電力量を取得する観点より、電気機器1が実際に運転(暖房運転及び冷房運転)している日が含まれるのが好ましい。また、本実施形態の外気条件は、電気機器1の消費電力量と同様に、上記の期間内において、単位時間(例えば、60分)ごとに取得される。
【0051】
図7は、建物Bのある地域の外気条件41、及び、電気機器1の消費電力量42の一部を示す図である。図7には、上記の期間(本例では、30日)のうち、1日分の外気条件41及び消費電力量42が代表して示されている。外気条件41には、温度41A及び相対湿度41Bが含まれている。外気条件41は、単位時間ごとに取得され、図2に示した外気条件入力部21aに記憶される。
【0052】
電気機器1の消費電力量(断熱リフォーム前の消費電力量)42は、外気条件41が取得される期間(本例では、30日)内に取得されたものである。上述したように、消費電力量42は、図1及び図2に示した電力取得装置16によって、単位時間(本例では、60分)ごとに予め取得されている。このため、本実施形態の取得工程S1では、これらの消費電力量42のうち、上記の期間内に取得された消費電力量42が、演算処理装置14に送信される。これにより、演算処理装置14は、上記の期間内において単位時間ごとに、電気機器1の消費電力量42が取得される。消費電力量は、図2に示した消費電力量入力部21bに記憶される。
【0053】
[第1熱量を計算(第1計算工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、単位時間ごとに、電気機器1が処理した熱量である第1熱量が計算される(第1計算工程S2)。本実施形態の第1計算工程S2では、図7に示した外気条件41と、電気機器1の消費電力量42とに基づいて、上記期間の単位時間ごとに、第1熱量が計算される。
【0054】
本実施形態の第1計算工程S2では、先ず、図2に示した外気条件入力部21aに記憶されている外気条件41(図7に示す)、及び、消費電力量入力部21bに記憶されている消費電力量42(図7に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。次に、プログラム部22に含まれる第1計算部22bが、作業用メモリ19に読み込まれる。この第1計算部22bは、外気条件41と消費電力量42とに基づいて、単位時間ごとに、電気機器1が処理した第1熱量を計算するためのプログラムである。この第1計算部22bが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、第1熱量を計算するための手段として機能させることができる。
【0055】
図7に示されるように、外気条件41及び電気機器1の消費電力量42は、上記の期間(本例では、30日)内において、単位時間(本例では、60分)ごとに取得されている。このため、これらの外気条件41及び消費電力量42に基づいて計算される第1熱量も、上記の期間内において、単位時間ごとに計算されうる。
【0056】
第1熱量は、図1に示した電気機器1が実際に処理した熱量(以下、「処理熱量」ということがある。)であれば適宜計算されうる。一般に、処理熱量(処理能力)は、電気機器1の消費電力量42(図7に示す)と、電気機器1の成績係数(図3に示した暖房時の成績係数31e又は冷房時の成績係数31f)とを乗じることで計算されうる。
【0057】
上述したように、図3に示した暖房時の成績係数31e及び冷房時の成績係数31fは、予め定められた外気条件(JIS測定条件)において、電気機器1が定格能力で運転したときのエネルギー消費効率を示したものである。暖房時の成績係数31eは、定格暖房能力31aを、暖房時の定格消費電力(図示省略)で除することで求められる。一方、冷房時の成績係数31fは、定格冷房能力31bを、冷房時の定格消費電力(図示省略)で除することで求められる。
【0058】
電気機器1の実際の暖房能力、冷房能力及び消費電力量は、時々刻々と変化する外気条件41(図7に示す)に左右される傾向がある。このため、実際の成績係数(図示省略)は、JIS測定条件での成績係数(図3に示した暖房時の成績係数31e及び冷房時の成績係数31f)と乖離する場合がある。
【0059】
また、図7に示した外気条件41(外気の温度41Aが低く、かつ、外気の相対湿度41Bが高い条件)によっては、電気機器1の室外機(図示省略)に霜が付く場合がある。このような霜を取り除くための除霜運転(デフロスト運転)が実施されると、暖房運転が一時的に停止され、実際の成績係数(図示省略)が低下し、JIS測定条件での暖房時の成績係数31e(図3に示す)と乖離する。
【0060】
このように、実際の成績係数(図示省略)は、JIS測定条件での成績係数(図3に示した暖房時の成績係数31e及び冷房時の成績係数31f)と乖離する場合がある。したがって、これらの成績係数31e、31fに基づいて、電気機器1が処理した熱量を計算するのは適切ではない場合がある。
【0061】
本実施形態の第1計算工程S2では、時々刻々と変化する外気条件41(図7に示す)に基づいて、電気機器1の成績係数(図3に示した暖房時の成績係数31e又は冷房時の成績係数31f)を補正した補正成績係数(図示省略)が計算される。そして、補正成績係数と、電気機器1が実際に処理した消費電力量42(図7に示す)とに基づいて、第1熱量が計算される。図8は、第1計算工程S2の処理手順を示すフローチャートである。
【0062】
[成績係数を取得]
本実施形態の第1計算工程S2では、先ず、電気機器1の成績係数(図3に示した暖房時の成績係数31e及び冷房時の成績係数31f)が取得される(工程S21)。本実施形態の工程S21では、図2に示した電気機器入力部21cに記憶されている電気機器1の成績係数31e、31fが、作業用メモリ19に読み込まれることで、電気機器1の成績係数31e、31fが取得される。なお、電気機器入力部21cに、電気機器1の成績係数31e、31fが予め記憶されていない場合には、例えば、成績係数31e、31fを入力させるための画面を表示装置13に表示させて、オペレーター等が成績係数31e、31fを直接入力してもよい。
【0063】
[補正成績係数を計算]
次に、本実施形態の第1計算工程S2では、外気条件41(図7に示す)に基づいて、電気機器1の成績係数(図3に示した暖房時の成績係数31e又は冷房時の成績係数31f)を補正した補正成績係数が計算される(工程S22)。本実施形態の工程S22では、暖房時及び冷房時ごとに、補正成績係数が計算される。
【0064】
図9は、暖房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。実線の曲線51では、JIS測定条件(7℃)でのエネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。このような実線の曲線51は、例えば、図3に示した電気機器1の仕様に関する情報31(定格暖房能力31a、最大暖房能力31c、暖房時の成績係数31e及び定格暖房消費電力(図示省略)等)に基づいて適宜特定されうる。本実施形態では、例えば、文献(「第四章 暖冷房設備 第三節 ルームエアコンディショナ」、「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」、[online]、令和3年4月1日、国立研究開発法人建築研究所、[令和5年4月18日検索]、インターネット<URL: https://www.kenken.go.jp/becc/documents/house/4-3_210401_v07.pdf>)に記載の式(5)に、電気機器1の仕様に関する情報と、JIS測定温度(7℃)と、変化させた補正処理暖房負荷Q’T,H,d,tとが代入されることで、補正処理暖房負荷Q’T,H,d,t及び消費電力量EE,H,d,tから実線の曲線51が求められる。なお、JIS測定温度(7℃)は、式(5)の基準入出力関数fH,θを特定する式(6)及び(7)において、外気温度θexに代入される。そして、実線の曲線51で定格能力となるときのエネルギー消費効率C1が、JIS測定条件での暖房時の成績係数(すなわち、図3に示した電気機器1の暖房時の成績係数)31eとして特定される。
【0065】
図9において、一点鎖線の曲線52では、JIS測定条件(7℃)よりも低い外気の温度41A(例えば、2℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。この一点鎖線の曲線52は、適宜特定されうる。本実施形態では、例えば、実線の曲線51を求めるのに用いられた上記文献の式(5)のうち、基準入出力関数fH,θを特定する式(6)及び(7)において、外気温度θexに外気の温度(本例では「2℃」)が代入されることで、一点鎖線の曲線52が取得されうる。
【0066】
そして、一点鎖線の曲線52において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C2が、JIS測定条件での暖房時の成績係数31e(C1)を、外気条件41(外気の温度41A:2℃)で補正した暖房時の補正成績係数37として特定される。このように、JIS測定条件(7℃)よりも外気の温度41Aが低くなる条件下では、JIS測定条件での暖房時の成績係数31e(C1)よりも、暖房時の補正成績係数37(C2)が小さくなり、エネルギー消費効率が悪化する。
【0067】
図9において、破線の曲線53では、JIS測定条件(7℃)よりも高い外気の温度41A(例えば、12℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。この破線の曲線53は、適宜特定されうる。本実施形態では、例えば、実線の曲線51を求めるのに用いられた上記文献の式(5)のうち、基準入出力関数fH,θを特定する式(6)及び(7)において、外気温度θexに外気の温度41A(本例では「12℃」)が代入されることで、破線の曲線53が取得されうる。
【0068】
そして、破線の曲線53において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C3が、JIS測定条件での暖房時の成績係数31e(C1)を、外気条件41(外気の温度41A:12℃)で補正した暖房時の補正成績係数37として特定される。このように、JIS測定条件(7℃)よりも外気の温度41Aが高くなる条件下では、JIS測定条件での暖房時の成績係数31e(C1)よりも暖房時の補正成績係数37(C3)が大きくなり、エネルギー消費効率が良好となる。
【0069】
図10は、冷房時のエネルギー消費効率と負荷率との関係を示すグラフである。実線の曲線54では、JIS測定条件(35℃)でのエネルギー消費効率と負荷率との関係が示されている。このような実線の曲線54は、例えば、図3に示した電気機器1の仕様に関する情報(定格冷房能力31b、最大冷房能力31d、冷房時の成績係数31f及び定格冷房消費電力(図示省略)等)に基づいて特定されうる。本実施形態では、例えば、上記文献の式(20)に、電気機器1の仕様に関する情報と、JIS測定温度(35℃)と、変化させた補正処理暖房負荷Q’T,C,d,tとが代入されることで、補正処理暖房負荷Q’T,C,d,t及び消費電力量EE,C,d,tから実線の曲線54が求められる。なお、JIS測定温度(35℃)は、式(20)の基準入出力関数fC,θを特定する式(21)及び(22)において、外気温度θexに代入される。そして、実線の曲線54で定格能力となるときのエネルギー消費効率C4が、JIS測定条件での冷房時の成績係数(すなわち、図3に示した電気機器1の冷房時の成績係数)31fとして特定される。
【0070】
図10に示した冷房時の一点鎖線の曲線55及び破線の曲線56は、図9に示した暖房時の一点鎖線の曲線52及び破線の曲線53に対して、外気条件41とエネルギー消費効率との関係が逆転する。
【0071】
図9に示した暖房時の一点鎖線の曲線52では、JIS測定条件(7℃)よりも低い外気の温度41A(2℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。一方、図10に示した冷房時の一点鎖線の曲線55では、JIS測定条件(35℃)よりも高い外気の温度41A(例えば、40℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。これらの一点鎖線の曲線52、55は、JIS測定条件に対する外気条件41の高低の関係が互いに異なるものの、暖房時及び冷房時の双方において、エネルギー消費効率が悪化していることを示している。
【0072】
冷房時の一点鎖線の曲線55は、適宜取得されうる。本実施形態では、例えば、冷房時の実線の曲線54を求めるのに用いられた上記文献の式(20)のうち、基準入出力関数fC,θを特定する式(21)及び(22)において、外気温度θexに外気の温度(本例では「40℃」)が代入されることで、冷房時の一点鎖線の曲線55が取得されうる。このような一点鎖線の曲線55において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C5が、JIS測定条件での冷房時の成績係数31f(C4)を、外気条件41(外気の温度41A:40℃)で補正した冷房時の補正成績係数38として特定される。
【0073】
また、図9に示した暖房時の破線の曲線53では、JIS測定条件(7℃)よりも高い外気の温度(12℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。一方、図10に示した冷房時の破線の曲線56では、JIS測定条件(35℃)よりも低い外気の温度(例えば、30℃)において、エネルギー消費効率と負荷率との関係が示される。これらの破線の曲線53、56は、JIS測定条件に対する外気条件41の高低の関係が互いに異なるものの、暖房時及び冷房時の双方において、エネルギー消費効率が良好であることを示している。
【0074】
冷房時の破線の曲線56は、適宜取得されうる。本実施形態では、例えば、冷房時の実線の曲線54を求めるのに用いられた上記文献の式(20)のうち、基準入出力関数fC,θを特定する式(21)及び(22)において、外気温度θexに外気の温度(本例では「30℃」)が代入されることで、冷房時の破線の曲線56が取得されうる。このような破線の曲線56において、定格能力となるときのエネルギー消費効率C6が、JIS測定条件での冷房時の成績係数31f(C4)を、外気条件41(外気の温度41A:30℃)で補正した冷房時の補正成績係数38として特定される。
【0075】
このように、本実施形態の工程S22では、JIS測定条件(暖房時:7℃、冷房時:35℃)とは異なる外気の温度41A(図7に示す)に基づいて、図3に示した成績係数(暖房時の成績係数31e又は冷房時の成績係数31f)を補正した補正成績係数(図9に示した暖房時の補正成績係数37又は図10に示した冷房時の補正成績係数38)が容易に取得されうる。これにより、実際の外気条件下における既設の電気機器1の成績係数(すなわち、補正成績係数37、38)が取得されうる。
【0076】
本実施形態の工程S22では、上述の手順に従い、図7に示した単位時間(時刻)ごとに、外気条件41(外気の温度41A)に基づいて、暖房時の成績係数31e(図3に示す)を補正した暖房時の補正成績係数37がそれぞれ取得される。図11は、図7に示した外気条件41及び消費電力量42と、暖房時の補正成績係数37とを示す図である。
【0077】
なお、上述したように、除霜運転(デフロスト運転)が実施されると、暖房運転が一時的に停止され、エネルギー消費効率が低下する。このため、除霜運転が実施された単位時間(時刻)では、除霜運転したときの暖房時の補正成績係数37が求められるのが好ましい。本実施形態では、例えば、図9に示した実線の曲線51を求めるのに用いられた上記文献の式(5)のうち、補正処理暖房負荷Q’T,H,d,tを特定するための式(10)において、暖房出力補正係数Caf,Hに「0.77」が代入されることで、除霜運転時の曲線が取得される。そして、除霜運転時の曲線において、定格能力となるときのエネルギー消費効率が、除霜運転したときの暖房時の補正成績係数37として特定される。なお、暖房出力補正係数Caf,Hに代入された「0.77」は、例えば、外気温度が5℃未満かつ相対湿度が80%以上の場合の定数である。したがって、暖房出力補正係数Caf,Hに代入される定数は、外気温度や相対湿度に応じて、適宜設定されうる。暖房時の補正成績係数37及び冷房時の補正成績係数38は、図2に示した補正成績係数入力部21gに記憶される。
【0078】
[第1熱量を計算]
次に、本実施形態の第1計算工程S2では、図11に示した電気機器1の消費電力量42に、補正成績係数(暖房時の補正成績係数37又は冷房時の補正成績係数38)を乗じて、第1熱量が計算される(工程S23)。図12は、図11に示した外気条件41、消費電力量42、及び、暖房時の補正成績係数37と、第1熱量H1とを示す図である。
【0079】
本実施形態の工程S23では、上記の期間(本例では、30日)内の単位時間(60分)ごとに、消費電力量42に、補正成績係数(暖房時の補正成績係数37)が乗じられる。これにより、単位時間ごとに電気機器1が処理した熱量である第1熱量H1が計算される。第1熱量H1は、図2に示した熱量入力部21hに記憶される。
【0080】
本実施形態の第1計算工程S2では、外気条件41に応じて時々刻々と変化する電気機器1の成績係数(暖房時の補正成績係数37)に基づいて、電気機器1の消費電力量42から、電気機器1が処理した第1熱量H1が、単位時間ごとに取得される。このような第1熱量H1は、断熱リフォーム前において、図1に示した建物Bのユーザーの実際の生活パターン等を含む個別条件を踏まえて、電気機器1が実際に処理した熱量として取得されうる。
【0081】
[断熱リフォームのプランを決定(決定工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、建物Bの断熱リフォームのプランが決定される(決定工程S3)。本実施形態の決定工程S3では、予め設定されている複数の候補断熱仕様33(図5に示す)の中から、1又は2以上の候補断熱仕様(断熱リフォームのプラン)33が選択される。
【0082】
本実施形態の決定工程S3では、先ず、図2に示した候補断熱仕様入力部21eに記憶されている複数の候補断熱仕様33(図5に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。次に、プログラム部22に含まれる決定部22cが、作業用メモリ19に読み込まれる。この決定部22cは、建物Bの断熱リフォームのプランを決定するためのプログラムである。この決定部22cが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、断熱リフォームのプランを決定するための手段として機能させることができる。
【0083】
決定工程S3は、建物Bの断熱リフォームのプランを決定できれば、適宜実施されうる。本実施形態では、断熱リフォームのプランを決定するための画面が、表示装置13(図2に示す)に出力される。画面は、表示装置13に表示される態様に限定されるわけではなく、例えば、図1に示した通信ネットワークNを介して、ユーザーが所有する携帯端末の表示装置(図示省略)に表示されてもよい。
【0084】
図13は、建物Bの断熱リフォームのプランを決定するための画面45が出力された表示装置13を示す図である。画面45には、図5に示した複数の候補断熱仕様33(本例では、第1候補断熱仕様33a、第2候補断熱仕様33b及び第3候補断熱仕様33c)が表示されている。これらの候補断熱仕様33のうち、1又は2以上の候補断熱仕様33を選択可能なチェックボックス46が示されている。これらのチェックボックス46の少なくとも1つがチェックされることで、候補断熱仕様33が選択されうる。本実施形態では、第1候補断熱仕様33aが選択(チェック)されているが、このような態様に限定されない。
【0085】
本実施形態の決定工程S3では、例えば、複数の候補断熱仕様のうち、建物Bのユーザーの予算内の候補断熱仕様33や、リフォームの営業マン等が推奨する候補断熱仕様33が選択されてもよい。この場合、画面45には、複数の候補断熱仕様33について、各建材3の熱貫流率34aや、断熱リフォームに要するコスト34bが表示されることで、候補断熱仕様33の選択の参考になりうる。選択された候補断熱仕様33(図13では、第1候補断熱仕様33a)は、建物Bの断熱リフォームのプランとして、図2に示した決定プラン入力部21fに記憶される。
【0086】
[第1熱損失量及び第2熱損失量を計算(第2計算工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、断熱リフォーム前の建物Bの熱損失量である第1熱損失量と、断熱リフォーム後の建物Bの熱損失量である第2熱損失量とが計算される(第2計算工程S4)。熱損失量は、建物B(断熱リフォーム対象の室2)からの熱の逃げにくさを示すパラメータであり、その値が小さいほど、断熱性能(省エネルギー性能)が高いこと示す。
【0087】
本実施形態の第2計算工程S4では、先ず、図2に示した建物仕様入力部21dに記憶されている建物Bの仕様に関する情報32(図4に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。さらに、決定プラン入力部21fに記憶されている断熱リフォームのプラン(本例では、第1候補断熱仕様33a)、及び、候補断熱仕様入力部21eに記憶されている複数の候補断熱仕様33(図5に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。
【0088】
次に、本実施形態の第2計算工程S4では、プログラム部22に含まれる第2計算部22dが、作業用メモリ19に読み込まれる。第2計算部22dは、第1熱損失量及び第2熱損失量を計算するためのプログラムである。この第2計算部22dが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、第1熱損失量及び第2熱損失量を計算するための手段として機能させることができる。
【0089】
図14は、第1熱損失量L1及び第2熱損失量L2を説明する図である。図14には、図4に示した建物Bの仕様に関する情報32(隣接空間32a、面積32b、熱貫流率(初期断熱仕様)32c及び温度差係数32d)が示されている。
【0090】
[第1熱損失量を計算]
本実施形態の第2計算工程S4では、先ず、断熱リフォーム前の建物B(リフォーム対象の室2)の熱損失量である第1熱損失量L1が計算される。第1熱損失量L1は、従来の手順に基づいて、適宜計算される。本実施形態では、複数の建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)及び換気47のそれぞれについて、断熱リフォーム前の熱損失量(貫流熱損失)53が足し合わされることで、第1熱損失量L1が計算される。
【0091】
複数の建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)について、断熱リフォーム前の熱損失量(貫流熱損失)53は、面積32bと、温度差係数32dと、断熱リフォーム前の熱貫流率(初期断熱仕様)32cとがそれぞれ乗じられることで計算されうる。一方、換気47の熱損失量53は、リフォーム対象の室2の体積と、換気回数と、換気の熱貫流率32cとが乗じられることで計算される。換気回数は、例えば、0.5回/hに設定される。そして、本実施形態では、建物Bの建材3(天井4、外壁5、床6及び開口部7)及び換気47のそれぞれについて、断熱リフォーム前の熱損失量53が足し合わされることで、第1熱損失量L1が計算される。第1熱損失量L1は、図2に示した熱損失量入力部21iに記憶される。
【0092】
[第2熱損失量を計算]
次に、本実施形態の第2計算工程S4では、断熱リフォーム後の建物Bの熱損失量である第2熱損失量L2が計算される。第2熱損失量L2は、従来の手順に基づいて、適宜計算される。本実施形態では、複数の建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)及び換気47のそれぞれについて、断熱リフォーム後の熱損失量(貫流熱損失)54が足し合わされることで、第2熱損失量L2が計算される。
【0093】
複数の建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)について、断熱リフォーム後の熱損失量(貫流熱損失)54は、面積32bと、温度差係数32dと、断熱リフォーム後の熱貫流率55とがそれぞれ乗じられることで計算されうる。なお、断熱リフォーム後の熱貫流率55は、図5に示した複数の候補断熱仕様33のうち、決定工程S3で決定された断熱リフォームのプラン(本例では、第1候補断熱仕様33a)に対応する候補断熱仕様33の熱貫流率34aで特定される。一方、換気47の熱損失量54は、断熱リフォーム前後で変化はない。このため、換気の熱損失量54は、上述の手順に基づいて計算されうる。
【0094】
そして、本実施形態では、建物Bの建材3(本例では、天井4、外壁5、床6及び開口部7)及び換気47のそれぞれについて、断熱リフォーム後の熱損失量54が足し合わされることで、第2熱損失量L2が計算される。第2熱損失量L2は、図2に示した熱損失量入力部21iに記憶される。
【0095】
[断熱リフォーム後に電気機器が処理する第2熱量を計算(第3計算工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、断熱リフォーム後に電気機器が処理する熱量である第2熱量が計算される(第3計算工程S5)。本実施形態の第3計算工程S5では、図2に示した第1熱量H1と、図14に示した第1熱損失量L1及び第2熱損失量L2とに基づいて、第2熱量が計算される。
【0096】
本実施形態の第3計算工程S5では、先ず、図2に示した熱量入力部21hに記憶されている第1熱量H1(図12に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。さらに、熱損失量入力部21iに記憶されている第1熱損失量L1(図14に示す)及び第2熱損失量L2(図14に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。
【0097】
次に、本実施形態の第3計算工程S5では、プログラム部22に含まれる第3計算部22eが、作業用メモリ19に読み込まれる。第3計算部22eは、断熱リフォーム後に電気機器1が処理する熱量である第2熱量を計算するためのプログラムである。この第3計算部22eが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、第2熱量を計算するための手段として機能させることができる。
【0098】
第2熱量H2は、図12に示した第1熱量H1と、図14に示した第1熱損失量L1及び第2熱損失量L2とに基づいて、適宜計算されうる。電気機器1の熱量は、建物Bの熱損失量に比例して大きくなる。このような観点から、本実施形態では、下記の式に基づいて、第2熱量が計算される。
H2=H1×(L2/L1)
ここで、
H1:第1熱量
H2:第2熱量
L1:第1熱損失量
L2:第2熱損失量
【0099】
上記の式において、L2/L1は、断熱リフォーム後に減少した第2熱損失量L2について、断熱リフォーム前の第1熱損失量L1に対する比率(割合)を示している。この比率L2/L1に、断熱リフォーム前の電気機器1の第1熱量H1が乗じられることで、断熱リフォーム後に減少する電気機器1の第2熱量H2が求められる。
【0100】
このように、本実施形態の第3計算工程S5では、断熱リフォーム前の電気機器1の第1熱量H1と、断熱リフォーム前後の熱損失量の比率L2/L1とに基づいて、断熱リフォーム後の電気機器1の第2熱量H2が計算される。上述したように、第1熱量H1は、図1に示した建物Bのユーザーの実際の生活パターン等に応じて、断熱リフォーム前に電気機器1が実際に処理した熱量である。このような第1熱量H1が用いられることで、建物Bのユーザーの実際の生活パターン等を含む個別条件を踏まえて、断熱リフォーム後に、電気機器1が処理すると予測される第2熱量H2が取得されうる。
【0101】
図15は、図12に示した外気条件41、消費電力量42、暖房時の補正成績係数37及び第1熱量H1と、第2熱量H2とを示す図である。本実施形態では、上記の期間(本例では、30日)内の単位時間(60分)ごとに計算された第1熱量H1に、断熱リフォーム前後の熱損失量の比率L2/L1が乗じられる。これにより、断熱リフォーム後に電気機器1が処理すると予測される第2熱量H2が、単位時間ごとに計算される。第2熱量H2は、図2に示した熱量入力部21hに記憶される。
【0102】
[断熱リフォーム後の消費電力量の削減効果を提供(提供工程)]
次に、本実施形態の提案方法では、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果に関する情報が、ユーザーに提供される(提供工程S6)。消費電力量の削減効果に関する情報は、断熱リフォーム前に電気機器が処理した第1熱量H1(図15に示す)と、断熱リフォーム後の電気機器1が処理する第2熱量H2(図15に示す)とに基づいて提供される。
【0103】
本実施形態の提供工程S6では、先ず、図2に示した熱量入力部21hに記憶されている第1熱量H1及び第2熱量H2(図15に示す)が、作業用メモリ19に読み込まれる。さらに、プログラム部22に含まれる提供部22gが、作業用メモリ19に読み込まれる。提供部22gは、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果(以下、「消費電力量の削減効果」ということがある。)に関する情報を、建物Bのユーザーに提供するためのプログラムである。この提供部22gが演算部17によって実行されることで、コンピュータ15を、削減効果に関する情報を提供するための手段として機能させることができる。
【0104】
提供工程S6では、消費電力量の削減効果に関する情報を、建物Bのユーザーに提供することができれば、適宜実施されうる。消費電力量の削減効果に関する情報は、表示装置13(図2に示す)に出力される。なお、消費電力量の削減効果に関する情報が表示装置13に出力される態様に限定されるわけではなく、例えば、図1に示した通信ネットワークNを介して、ユーザーが所有する携帯端末の表示装置(図示省略)に表示されてもよい。
【0105】
図16は、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果に関する情報56が出力された表示装置13を示す図である。本実施形態の提供工程S6では、消費電力量の削減効果に関する情報56として、第1熱量H1、第2熱量H2、及び、第1熱量と第2熱量との差D1の少なくとも1つ(本例では、全て)が提供される。第1熱量H1、第2熱量H2、及び、第1熱量と第2熱量との差D1は、上記の期間の単位時間ごとに提供されてもよいし、それらの合計値が提供されてもよい。本実施形態では、1日分の合計値が提供されているが、期間中の合計値であってもよい。
【0106】
本実施形態の提供工程S6では、第1熱量H1が提供されることで、断熱リフォーム前に電気機器1が実際に処理した熱量が、ユーザーに把握されうる。また、第2熱量H2が提供されることで、決定工程S3で決定された断熱リフォームのプラン(本例では、図13に示した第1候補断熱仕様33a)に基づいて、断熱リフォーム後に電気機器1が処理すると予測される熱量が、ユーザーに把握されうる。そして、第1熱量と第2熱量との差D1が提供されることで、断熱リフォーム後に削減可能な電気機器1の熱量が、ユーザーに把握されうる。これらの第1熱量H1及び第2熱量H2は、例えば、図3に示した暖房時の成績係数31eで除されることで、電気機器1の消費電力量が求められることから、第1熱量と第2熱量との差(削減可能な熱量)D1は、消費電力量の削減効果に直接関連している。
【0107】
上述したように、第1熱量H1は、断熱リフォーム前において、図1に示した建物Bのユーザーの実際の生活パターン等を含む個別条件を踏まえて、電気機器1が実際に処理した熱量である。第2熱量H2は、上記の個別条件を踏まえて、断熱リフォーム後に、電気機器1が処理すると予測される熱量である。これらの第1熱量と第2熱量との差D1が求められることで、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果が正確に予測されうる。このような消費電力量の削減効果が、決定された断熱リフォームのプラン(本例では、第1候補断熱仕様33a)とともに提供されることで、建物Bのユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームの提案が可能となる。第1熱量と第2熱量との差D1は、図1に示した削減効果入力部21jに記憶される。
【0108】
本実施形態の提供工程S6では、決定工程S3で決定された一つの断熱リフォームのプラン(本例では、第1候補断熱仕様33a)についての消費電力量の削減効果に関する情報56が提供されたが、このような態様に限定されない。例えば、決定された断熱リフォームのプランとは異なる他のプラン(例えば、図5に示した第2候補断熱仕様33b等)を含めて、消費電力量の削減効果に関する情報56が提供されてもよい。これにより、決定されたプランと、他のプランとの間において、消費電力量の削減効果を比較することが可能となる。
【0109】
電気機器1の暖房時の処理負荷(第1熱量H1)や消費電力量(図示省略)は、1年のうち、図1に示した建物Bがある地域の最寒日において、最も大きくなる傾向がある。このような最寒日において、消費電力量の削減効果に関する情報56を提供するためには、図12に示した外気条件41、消費電力量42及び第1熱量H1が取得される上記の期間に、最寒日が含まれるのが好ましい。これにより、最寒日での消費電力量の削減効果が提供されるため、ユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案することが可能となる。
【0110】
一方、電気機器1の冷房時の処理負荷(第1熱量H1)や消費電力量は、1年のうち、図1に示した建物Bがある地域の最暑日において、最も大きくなる傾向がある。このような最暑日において、消費電力量の削減効果に関する情報56を提供するためには、上記の期間に、最暑日が含まれるのが好ましい。これにより、最暑日での消費電力量の削減効果が提供されるため、ユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案することが可能となる。
【0111】
[断熱リフォームを実施するか否かを判断]
次に、本実施形態の提案方法では、決定されたプランに基づいて、断熱リフォームを実施するか否かが判断される(工程S7)。断熱リフォームを実施するか否かの判断は、例えば、図16に示した消費電力量の削減効果に関する情報56や、断熱リフォームに要するコスト34bに基づいて、建物Bのユーザーによって判断されうる。
【0112】
工程S7において、断熱リフォームを実施すると判断された場合(工程S7で「Yes」)、図1に示した建物B(リフォーム対象の室2)の断熱リフォームが実施される(工程S8)。この断熱リフォームは、決定された断熱リフォームのプラン(図13に示した第1候補断熱仕様33a)に基づいて実施される。このような断熱リフォームにより、所望の消費電力量の削減効果を得ることが可能となる。さらに、図16に示したコスト34bに基づいて、断熱リフォームが実施されるか否かが判断されることで、建物Bのユーザーの予算内での断熱リフォームが可能となる。したがって、ユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームが可能となる。
【0113】
工程S7において、断熱リフォームを実施しないと判断された場合(工程S7で「No」)、断熱リフォームのプラン(図13に示した第1候補断熱仕様33a)が変更され(工程S9)、第2計算工程S4~工程S7が再度実施される。これにより、所望の消費電力量の削減効果を得ることが可能な断熱リフォームの提案が可能となる。
【0114】
[建物のリフォーム提案方法(第2実施形態)]
図16に示されるように、これまでの実施形態では、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果に関する情報56として、第1熱量H1、第2熱量H2、及び、第1熱量と第2熱量との差D1が提供されたが、このような態様に限定されない。例えば、情報56として、断熱リフォーム前の電気機器1の消費電力量である第1消費電力量、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力量である第2消費電力量、及び、第1消費電力量と第2消費電力量との差の少なくとも1つが提供されてもよい。図17は、本発明の他の実施形態の建物のリフォーム提案方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0115】
[断熱リフォーム後の電気機器の消費電力量を計算(第4計算工程)]
次に、この実施形態の提案方法では、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力量が計算される(第4計算工程S10)。この実施形態の消費電力量は、断熱リフォーム後に電気機器1が処理する第2熱量H2(図15に示す)に基づいて計算される。
【0116】
第4計算工程S10では、先ず、図2に示した電気機器入力部21cに記憶されている電気機器1の仕様に関する情報31(図3に示す)と、熱量入力部21hに記憶されている第2熱量H2(図15に示す)とが、作業用メモリ19に読み込まれる。さらに、プログラム部22に含まれる第4計算部22fが作業用メモリ19に読み込まれる。第4計算部22fは、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力量を計算するためのプログラムである。この第4計算部22fが、演算部17によって実行されることにより、コンピュータ15を、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力量を計算するための手段として機能させることができる。
【0117】
断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力量は、断熱リフォーム後に電気機器1が処理する第2熱量H2を用いて適宜計算されうる。この実施形態において、第2熱量H2は、電気機器1(空気調和機)の暖房運転時の熱量である。このため、図3に示した電気機器1の仕様に関する情報31に含まれる暖房時の成績係数31eで、第2熱量H2が除されることで、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力量が計算される。このような消費電力は、図1に示した建物Bのユーザーの実際の生活パターン等を含む個別条件を踏まえて、断熱リフォーム後に、電気機器1が消費すると予測される電力量として取得される。
【0118】
図18は、図15に示した外気条件41、断熱リフォーム前の消費電力量42、暖房時の補正成績係数37、第1熱量H1及び第2熱量H2と、断熱リフォーム後の消費電力量57とを示す図である。この実施形態において、断熱リフォーム後の消費電力量(第2消費電力量)57は、断熱リフォーム前の消費電力量(第1消費電力量)42と同様に、上記の期間内において、単位時間(例えば、60分)ごとに取得される。断熱リフォーム後の消費電力量(第2消費電力量)57は、図2に示した消費電力量入力部21bに記憶される。
【0119】
[断熱リフォーム後の消費電力量の削減効果を提供(提供工程)]
次に、この実施形態の提供工程S6では、消費電力量の削減効果に関する情報56として、断熱リフォーム前の消費電力量である第1消費電力量42、断熱リフォーム後の消費電力量である第2消費電力量57、及び、第1消費電力量と第2消費電力量との差58の少なくとも1つ(本例では、全て)が提供される。第1消費電力量42、第2消費電力量57、及び、第1消費電力量と第2消費電力量との差58は、上記の期間の単位時間ごとに提供されてもよいし、それらの合計値が提供されてもよい。この実施形態では、合計値が提供されている。
【0120】
図19は、本発明の他の実施形態の断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果に関する情報56が出力された表示装置13を示す図である。この実施形態の提供工程S6では、第1消費電力量42が提供されることで、断熱リフォーム前に電気機器1が実際に消費した電力量が、ユーザーに把握されうる。また、第2消費電力量57が提供されることで、決定工程S3で決定された断熱リフォームのプラン(図13に示した第1候補断熱仕様33a)に基づいて、断熱リフォームがされた後に電気機器1が消費すると予測される電力量が、ユーザーに把握されうる。上述したように、第2消費電力量57は、図1に示した建物Bのユーザーの実際の生活パターン等を含む個別条件を踏まえて、断熱リフォーム後に、電気機器1が消費すると予測される電力量として取得される。そして、第1消費電力量と第2消費電力量との差58が提供されることで、断熱リフォーム後における電気機器1の消費電力量の削減効果が正確に予測されうる。このような消費電力量の削減効果が、決定された断熱リフォームのプラン(候補断熱仕様33)とともに提供されることで、建物Bのユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームの提案が可能となる。
【0121】
[建物のリフォーム提案方法(第3実施形態)]
[床暖房装置]
これまでの実施形態では、図1に示した電気機器1(空調機器9)として、空気調和機10が例示されたが、このような態様に限定されるわけではなく、上述の床暖房装置(図示省略)であってもよい。床暖房装置は、例えば、従来と同様に、床暖房ユニット(図示省略)と、室外機(図示省略)とを含んで構成されている。
【0122】
この実施形態において、断熱リフォーム後における床暖房装置(図示省略)の消費電力量の削減効果に関する情報が提供される場合には、図6及び図8に示した処理手順と同様に、取得工程S1~工程S9が実施される。
【0123】
この実施形態の第1計算工程S2では、上述の空気調和機10の暖房時と同様の処理手順に基づいて、床暖房装置の成績係数を補正した補正成績係数が計算され、この補正成績係数が消費電力量で乗じられることで第1熱量H1が計算されうる。また、第2計算工程S4では、断熱リフォーム前の第1熱損失量L1と、断熱リフォーム後の第2熱損失量L2とが計算される。さらに、第3計算工程S5では、第1熱量H1、第1熱損失量L1及び第2熱損失量L2に基づいて、断熱リフォーム後に床暖房装置が処理する第2熱量H2が計算される。そして、提供工程S6では、第1熱量H1及び第2熱量H2に基づいて、断熱リフォーム後における床暖房装置の消費電力量の削減効果に関する情報56(例えば、図16に示す)が提供される。これにより、この実施形態では、断熱リフォーム後の床暖房装置の消費電力の削減効果が正確に提供され、建物Bのユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案することが可能となる。
【0124】
[建物のリフォーム提案方法(第4実施形態)]
[給湯器]
これまでの実施形態では、電気機器1として、空調機器9が例示されたが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、上述の給湯器20であってもよい。
【0125】
この実施形態において、断熱リフォーム後における給湯器20の消費電力量の削減効果に関する情報が提供される場合には、図6及び図8に示した処理手順と同様に、取得工程S1~工程S9が実施される。これにより、この実施形態では、断熱リフォーム後の給湯器20の消費電力の削減効果が正確に提供され、建物Bのユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案することが可能となる。
【0126】
[建物のリフォーム提案方法(第5実施形態)]
これまでの実施形態では、電気機器1として、ヒートポンプ式のものが例示されたが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、上述のヒートポンプ式以外のもの(例えば、電気ストーブや、電気式床暖房装置等)であってもよい。
【0127】
この実施形態において、断熱リフォーム後における電気機器(電気ストーブ等)1の消費電力量の削減効果に関する情報が提供される場合には、図6に示した処理手順と同様に、取得工程S1~工程S9が実施される。なお、ヒートポンプ式以外の電気機器1は、ヒートポンプ式の電気機器1(空調機器9)とは異なり、成績係数が常に「1」となる。このため、この実施形態では、これまでの実施形態のように、時々刻々と変化する外気条件41(図7に示す)に基づいて、電気機器1の成績係数を補正した補正成績係数を計算する必要がない。したがって、この実施形態では、図8に示した処理手順を実施することなく、電気機器1の消費電力量42(図7に示す)から、第1熱量H1(図12に示す)が取得される。
【0128】
この実施形態では、これまでの実施形態と同様に、第1熱量H1、第1熱損失量L1及び第2熱損失量L2に基づいて、断熱リフォーム後に電気機器(電気ストーブ等)1が処理する第2熱量H2が計算される。これにより、断熱リフォーム後の電気機器1の消費電力の削減効果が正確に提供され、建物Bのユーザーにとって納得性の高い断熱リフォームを提案することが可能となる。
【0129】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0130】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0131】
[本発明1]
空調機器又は給湯器を含む電気機器が設置されている建物のリフォームを、前記建物のユーザーに提案するための方法であって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得工程と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する第1計算工程と、
前記建物の断熱リフォームのプランを決定する決定工程と、
前記断熱リフォーム前の前記建物の熱損失量である第1熱損失量と、前記断熱リフォーム後の前記建物の熱損失量である第2熱損失量とを計算する第2計算工程と、
前記第1熱量、前記第1熱損失量及び前記第2熱損失量に基づいて、前記断熱リフォーム後に前記電気機器が処理する熱量である第2熱量を計算する第3計算工程と、
前記第1熱量及び前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後における前記電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報を、前記ユーザーに提供する提供工程とを含む、
建物のリフォーム提案方法。
[本発明2]
前記提供工程は、前記情報として、前記第1熱量、前記第2熱量、及び、前記第1熱量と前記第2熱量との差の少なくとも1つを提供する、本発明1に記載の建物のリフォーム提案方法。
[本発明3]
前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後の前記電気機器の消費電力量を計算する第4計算工程をさらに含み、
前記提供工程は、前記情報として、前記断熱リフォーム前の前記消費電力量である第1消費電力量、前記断熱リフォーム後の前記消費電力量である第2消費電力量、及び、前記第1消費電力量と前記第2消費電力量との差の少なくとも1つを提供する、本発明1又は2に記載の建物のリフォーム提案方法。
[本発明4]
前記期間は、前記地域の最寒日又は最暑日を含む、本発明1ないし3のいずれかに記載の建物のリフォーム提案方法。
[本発明5]
空調機器又は給湯器を含む電気機器が設置されている建物のリフォームを、前記建物のユーザーに提案するためのシステムであって、
前記建物がある地域の予め定められた期間の外気の温度を含む外気条件と、前記期間内の予め定められた単位時間ごとの前記電気機器の消費電力量とを取得する取得部と、
取得された前記外気条件と前記消費電力量とに基づいて、前記単位時間ごとの前記電気機器が処理した熱量である第1熱量を計算する第1計算部と、
前記建物の断熱リフォームのプランを決定する決定部と、
前記断熱リフォーム前の前記建物の熱損失量である第1熱損失量と、前記断熱リフォーム後の前記建物の熱損失量である第2熱損失量とを計算する第2計算部と、
前記第1熱量、前記第1熱損失量及び前記第2熱損失量に基づいて、前記断熱リフォーム後に前記電気機器が処理する熱量である第2熱量を計算する第3計算部と、
前記第1熱量及び前記第2熱量に基づいて、前記断熱リフォーム後における前記電気機器の消費電力量の削減効果に関する情報を、前記ユーザーに提供する提供部とを含む、
建物のリフォーム提案システム。
【符号の説明】
【0132】
B 建物
1 電気機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19