(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167614
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】光検出装置および光検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/04 20060101AFI20241127BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241127BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20241127BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20241127BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20241127BHJP
【FI】
G01J1/04 B
G01N21/17 E
G01J1/02 S
H01L31/02 B
H01L31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083812
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上平 祥嗣
【テーマコード(参考)】
2G059
2G065
5F149
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB05
2G059CC09
2G059EE02
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ02
2G059KK01
2G065AA03
2G065AA04
2G065AA15
2G065AB02
2G065AB04
2G065BA01
2G065BB25
5F149AA01
5F149BA30
5F149EA02
5F149JA06
5F149JA12
5F149JA13
5F149JA20
5F149XB02
5F149XB05
(57)【要約】
【課題】光検出装置において、検出構造体と封止部材とが界面剥離することを抑制することである。
【解決手段】光検出装置50は、基板2上に設けられた第1光学センサ3、第2光学センサ4と、第1光学センサ3、第2光学センサ4上に設けられた第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6と、基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、および、第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6の上方の全体を覆うように形成された透光性の膜体7と、基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6、および、膜体7を封止する透光性の封止部材8とを備える。膜体7は、封止部材8よりも吸湿性が低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた光学センサと、
前記光学センサ上に設けられた光学フィルタと、
前記基板、前記光学センサ、および、前記光学フィルタの上方の全体を覆うように形成された透光性の膜体と、
前記基板、前記光学センサ、前記光学フィルタ、および、前記膜体を封止する透光性の封止部材とを備え、
前記膜体は、前記封止部材よりも吸湿性が低い、光検出装置。
【請求項2】
前記膜体は、上面が平坦化された形状である、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記膜体は、上面が研磨されることにより上面が平坦化された形状である、請求項1または請求項2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記膜体は、酸化膜よりなる、請求項1または請求項2に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記膜体は、膜厚が前記光学フィルタの厚みよりも厚い、請求項1または請求項2に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記光学センサは、第1光学センサと第2光学センサとを含み、
前記光学フィルタは、前記第1光学センサ上に設けられた第1光学フィルタと、前記第2光学センサ上に設けられた第2光学フィルタとを含み、
前記膜体は、前記基板、前記第1光学センサ、前記第2光学センサ、前記第1光学フィルタ、および、前記第2光学フィルタの上方の全体を覆うように形成され、
前記封止部材は、前記基板、前記第1光学センサ、前記第2光学センサ、前記第1光学フィルタ、前記第2光学フィルタ、および、前記膜体を封止する、請求項1または請求項2に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記第1光学センサは、前記基板の表面に設けられ、前記フロントウインドウで反射した赤外光を受光し、受光した光に応じて雨を検出するレインセンサであり、
前記第2光学センサは、前記基板の表面に設けられ、前記フロントウインドウの外部から内部に入射した光を受光し、受光した光に応じて照度を検出する照度センサである、請求項6に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記第1光学フィルタは、前記第1光学センサへの可視光の入射を抑制し、
前記第2光学フィルタは、前記第2光学センサへの赤外光の入射を抑制する、請求項6に記載の光検出装置。
【請求項9】
基板上に光学センサを設ける工程と、
前記光学センサ上に光学フィルタを設ける工程と、
前記基板、前記光学センサ、および、前記光学フィルタの上方の全体を覆うように透光性の膜体を設ける工程と、
前記膜体の上面を平坦化する工程と、
前記基板、前記光学センサ、前記光学フィルタ、および、前記膜体を封止する透光性の封止部材を設ける工程とを備え、
前記膜体は、前記封止部材よりも吸湿性が低い、光検出装置の製造方法。
【請求項10】
前記膜体の上面を平坦化する工程においては、前記膜体の上面を研磨する、請求項9に記載の光検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置および光検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両において、受光素子を有する光センサが半導体基板上に設けられた光センサ装置が開示されている。特許文献1の光センサ装置では、半導体基板上において、例えばレインセンサ、日射センサ、および、照度センサのような光センサが形成され、半導体基板および光センサを含む検出構造体が、樹脂によって覆われることにより封止された構成例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、半導体基板に設けられた光センサを含む検出構造体が、樹脂で覆われることにより封止される構成の従来の光センサ装置においては、次のような問題が生じる場合がある。
【0005】
光センサ装置は、光センサが受光する光の経路の透光性を担保する必要があるので、例えば透光性の樹脂製の封止部材によって検出構造体を封止する場合には、封止部材の強度を高めたり、封止部材の吸湿性を抑制したりするためのフィラーが封止部材に添加されていないのが一般的である。これにより、従来の光検出装置では、封止部材の内部に水分が溜まったり、封止部材が変形したりすることにより、検出構造体と封止部材とが界面剥離しやすいという問題があった。
【0006】
そして、光検出装置では、光センサの受光面側に光学フィルタを設ける場合があり、その場合には、光センサの受光面側に段差が生じやすい。このような段差が生じると、その段差部分に樹脂を封止する際に気泡が生じたり、製造時に生じたフォトレジストなどの残渣等の異物が溜まったり、封止部材が吸湿したことに応じて生じる水分が溜まったりする。これにより、光学フィルタを設けた光検出装置では、光センサの受光面側の段差部分における気泡、異物、または水分の存在によって、検出構造体と、封止部材とがより一層界面剥離しやすくなるおそれがあった。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、光検出装置において、検出構造体と封止部材とが界面剥離することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従う光検出装置は、基板と、基板上に設けられた光学センサと、光学センサ上に設けられた光学フィルタと、基板、光学センサ、および、光学フィルタの上方の全体を覆うように形成された透光性の膜体と、基板、光学センサ、光学フィルタ、および、膜体を封止する透光性の封止部材とを備え、膜体は、封止部材よりも吸湿性が低い。
【0009】
本開示の他の局面に従う光検出装置の製造方法は、基板上に光学センサを設ける工程と、光学センサ上に光学フィルタを設ける工程と、基板、光学センサ、および、光学フィルタの上方の全体を覆うように透光性の膜体を設ける工程と、膜体の上面を平坦化する工程と、基板、光学センサ、光学フィルタ、および、膜体を封止する透光性の封止部材を設ける工程とを備え、膜体は、封止部材よりも吸湿性が低い。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光検出装置において、検出構造体と、封止部材とが界面剥離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る光検出装置の設置例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る光検出装置における複合センサ体の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る光検出装置の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
<光検出装置50の設置例>
図1は、実施の形態に係る光検出装置50の設置例を示す図である。
図1の例では、車両100の側面図が示されている。
図1においては、例えば自動車のような車両100におけるガラス製のフロントウインドウ60の内側に光検出装置50が設置された構成が示されている。
【0014】
光検出装置50は、
図2に示すような1つの半導体基板である基板2において、複数種類の光センサが設けられた複合センサ体10を含む。
【0015】
[光検出装置50における複合センサ体10の構成例]
図2は、実施の形態に係る光検出装置50における複合センサ体10の構成を示す断面図である。複合センサ体10は、ベース部材としてのベース基板1、半導体基板としての基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6、膜体7、および、封止部材8を含む。
【0016】
ベース基板1は、たとえば樹脂製の基板よりなり、複合センサ体10のベース部材として複合センサ体10の底部に設けられる。ベース基板1上には、基板2が設けられている。基板2は、ベース基板1上に設けられた半導体よりなる基板である。
【0017】
基板2の表面側においては、第1光学センサ3を設ける凹部を構成する第1センサ領域30と、第2光学センサ4を設ける凹部を構成する第2センサ領域40とが形成されている。
【0018】
基板2の第1センサ領域30内には、第1光学センサ3が設けられている。第1光学センサ3は、例えば雨滴等の雨を検出するレインセンサである。第1光学センサ3は、図示を省略する受光素子およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含む。第1光学センサ3の受光素子は、フォトダイオードにより構成されている。第1光学センサ3として設けられたレインセンサは、発光装置91から発光され、フロントウインドウ60で反射した赤外光を受光することに応じて、雨滴を含む雨を検出することが可能である。
【0019】
基板2における第2センサ領域40内には、第2光学センサ4が設けられている。第2光学センサ4は、車両100の前方における一部の方向から受光した光に応じて照度を検出する前方照度センサである。第2光学センサ4は、図示を省略する受光素子およびASICを含む。第2光学センサ4の受光素子は、フォトダイオードにより構成されている。第2光学センサ4として設けられた前方照度センサは、車両100の前方における一部の方向から受光する可視光の照度を検出するセンサである。第2光学センサ4は、フロントエンドセンサと呼ばれる場合がある。
【0020】
基板2の表面と、第1光学センサ3の表面(受光面)と、第2光学センサ4の表面(受光面)とは、平坦化されて段差がなくフラットな面が形成される面一状態である。
【0021】
図2において、第1光学センサ3の上面側である受光面側には、第1光学フィルタ5が設けられている。第1光学フィルタ5は、例えば可視光を透過させずに赤外光を透過させる光学フィルタである。第1光学フィルタ5により、第1光学センサ3として設けられたレインセンサへの赤外光以外の可視光等の光の入射が抑制される。
【0022】
図2において、第2光学センサ4の上面側である受光面側には、第2光学フィルタ6が設けられている。第2光学フィルタ6は、例えば赤外光を透過させずに可視光を透過させる光学フィルタである。第2光学フィルタ6により、第2光学センサ4として設けられた前方照度センサへの可視光以外の赤外光等の光の入射が抑制される。
【0023】
図2において、基板2、第1光学フィルタ5、および、第2光学フィルタ6の表面側の上方の全体を覆うように、膜体7が形成されている。膜体7は、透光性を有する酸化ケイ素よりなる。具体的に膜体7は、二酸化ケイ素により構成されている。
図2において、膜体7の表面である上面70は、複合センサ体10の製造時において、研磨されて平坦化されており、段差がほぼないフラットな状態とされている。膜体7の厚さ(膜厚)は、第1光学フィルタ5の厚さ、および、第2光学フィルタ6の厚さよりも厚い。
【0024】
図2において、ベース基板1の上方と、基板2の側方と、膜体7の上方および側方とには、これらを封止する封止部材8が設けられる。これにより、ベース基板1、基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6、および、膜体7は、封止部材8により封止される。封止部材8は、透光性を有する樹脂製の部材であり、複合センサ体10の外部から入射する赤外光および可視光等の光を透過させる。封止部材8は、封止部材8の強度を高めたり、封止部材8の吸湿性を抑制したりするためのフィラーが添加されていない。その理由は、光検出装置50に用いる封止部材8としての透光性を担保するためである。
【0025】
前述したように、基板2、第1光学フィルタ5、および、第2光学フィルタ6の表面側の上方の全体が、膜体7により覆われている。膜体7は、酸化ケイ素よりなるものであり、膜体7の上方および側方に形成される樹脂製の封止部材8と比べて吸湿性が低い。
【0026】
図1に示すように、フロントウインドウ60は、車両100の水平方向に対して予め定められた角度で傾斜している。光検出装置50は、箱形状の筐体の内部において、複合センサ体10の他に、
図2に示す発光装置91およびレンズ等の部品が設けられている。複合センサ体10は、光検出装置50の筐体の内部における底面に設けられる。光検出装置50は、
図2に示す複合センサ体10における第1光学センサ3の受光面および第2光学センサ4の受光面がフロントウインドウ60に対向するように、フロントウインドウ60の内側に取付けられる。これにより、
図1に示すように、光検出装置50は、フロントウインドウ60と同様の角度で水平方向に対して傾斜した状態でフロントウインドウ60の内側に取付けられる。
【0027】
図2においては、フロントウインドウ60を一点鎖線で示すことにより、フロントウインドウ60と、複合センサ体10とが対向する位置関係が示されている。ただし、
図2においては、複合センサ体10の構成を明確に示すために、実際には水平方向に対して傾斜しているフロントウインドウ60が水平方向に延在する態様で示されている。
【0028】
第1光学センサ3がレインセンサである場合には、赤外光である光L1が、発光装置91から発光され、破線矢印で示すようにフロントウインドウ60に向かって進む。図示を省略するが、光L1は、フロントウインドウ60で反射する。フロントウインドウ60で反射した光L1は、破線矢印で示すように、封止部材8、膜体7、および、第1光学フィルタ5を透過して第1光学センサ3に入射することが可能である。
【0029】
図示を省略するが、光検出装置50では、発光装置91で発光した赤外光を、フロントウインドウ60で反射させて光学的に誘導し、第1光学フィルタ5を経て第1光学センサ3に入射させるための光学素子としてのレンズを備える。
【0030】
第1光学センサ3がレインセンサである場合は、フロントウインドウ60に雨滴を含む雨が付着している場合に、フロントウインドウ60に雨滴を含む雨が付着していない場合よりも、フロントウインドウ60で反射する赤外光の光線量が減少することに応じて、検出する赤外光の光線量が低下する。その理由は、フロントウインドウ60に雨滴を含む雨が付着している場合は、フロントウインドウ60に雨滴を含む雨が付着していない場合よりも、フロントウインドウ60から外部に出ていく赤外光の光線量が多くなるという現象が生じるためである。したがって、第1光学センサ3は、フロントウインドウ60で反射した赤外光の光線量を検出することに応じて、降雨状態を検出することが可能である。
【0031】
第2光学センサ4が前方照度センサである場合には、フロントウインドウ60の外側からフロントウインドウ60に入射し、フロントウインドウ60を透過してフロントウインドウ60の内側に出射した可視光である光L2が、破線矢印で示すように、封止部材8、膜体7、および、第2光学フィルタ6を透過して第1光学センサ3に入射することが可能である。
【0032】
第2光学センサ4が前方照度センサである場合に、前方照度センサは、車両100の前方における一部の方向から受光する光の照度を主に検出し、その検出情報が車両100における各種の照明の制御条件を判定するため等に用いられる。
【0033】
光検出装置50では、第1光学センサ3がレインセンサである場合に、第1光学センサ3の受光面側に、第1光学センサ3への可視光の入射を抑制する第1光学フィルタ5が設けられているので、レインセンサが雨の検出に不要な光を受光することが抑制される。さらに、光検出装置50では、第2光学センサ4が前方照度センサである場合に、第2光学センサ4の受光面側に、第2光学センサ4への赤外光の入射を抑制する第2光学フィルタ6が設けられているので、前方照度センサが照度の検出に不要な光を受光することが抑制される。これらの理由により、光検出装置50では、1つの基板2に設けられた複数種類のセンサである第1光学センサ3および第2光学センサ4において、各センサが不要な光を受光することを抑制することができる。
【0034】
以上に説明した構成の光検出装置50における複合センサ体10では、基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6、および、膜体7により、検出構造体が構成されている。そして、このような検出構造体に含まれる構造物が、封止部材8により覆われることにより、封止されている。
【0035】
<光検出装置50の製造方法>
図3は、実施の形態に係る光検出装置50の製造方法を示す図である。
図3においては、光検出装置50の製造方法のうち、複合センサ体10の製造方法が示される。
図3では、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)の順番で、複合センサ体10の製造工程が進む状態が示されている。
【0036】
工程S1は、次のとおりである。
図3(A)のように、ベース基板1の表面上に、半導体基板としての基板2が形成される。基板2の表面側には、エッチング等により、第1の凹部として第1センサ領域30が形成されるとともに、第2の凹部として第2センサ領域40が形成される。
【0037】
工程S2は、次のとおりである。
図3(B)のように、第1センサ領域30内には、第1光学センサ3が形成される。
図3(B)のように、第2センサ領域40内には、第2光学センサ4が形成される。
図3(B)のように、第1光学センサ3および第2光学センサ4は、基板2の表面と、第1光学センサ3の表面(受光面)と、第2光学センサ4の表面(受光面)とが、段差がなくフラットな面が形成される面一状態となるように形成される。
【0038】
工程S3は、次のとおりである。
図3(C)のように、第1光学センサ3の表面(受光面)上には、第1光学センサ3の表面(受光面)を覆う形状の第1光学フィルタ5が形成される。
図3(C)のように、第2光学センサ4の表面(受光面)上には、第2光学センサ4の表面(受光面)を覆う形状の第2光学フィルタ6が形成される。
【0039】
工程S4は、次のとおりである。
図3(D)のように、基板2、第1光学フィルタ5、および、第2光学フィルタ6の表面側の上方の全体を覆うように、膜体7が形成される。膜体7は、透光性を有する酸化ケイ素よりなる。膜体7は、例えば、スパッタリング法による成膜、または、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜により形成される。
【0040】
膜体7の厚さ(膜厚)は、第1光学フィルタ5の厚さ、および、第2光学フィルタ6の厚さよりも厚くすればよい。そのようにすれば、膜体7による第1光学フィルタ5への光干渉、および、膜体7による第2光学フィルタ6への光干渉を抑制することができる。膜体7が透光性を有する酸化ケイ素により構成されることにより、可視光から赤外光までの間の範囲の波長の光を膜体7が透過させることが可能であるので、当該波長の値を考慮すると、例えば、膜体7の厚さを、第1光学フィルタ5の厚さ、および、第2光学フィルタ6の厚さよりも数μm以上厚い値とすることで、膜体7による第1光学フィルタ5への光干渉、および、膜体7による第2光学フィルタ6への光干渉を抑制することができる。
【0041】
工程S5は、次のとおりである。
図3(E)のように、膜体7の表面である上面70が、研磨装置90により研磨される。これにより、複合センサ体10の製造時において、膜体7の表面である上面70は、研磨されて平坦化され、段差がほぼ生じないフラットな状態とされる。研磨装置90としては、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置が用いられる。
【0042】
工程S6は、次のとおりである。
図3(F)のように、ベース基板1の表面側の上方と、基板2の側方と、膜体7の表面側の上方および側方とには、これらを封止する封止部材8が形成される。封止部材8は、透光性を有する樹脂製の部材である。
【0043】
<実施の形態の変形例>
(1) 前述した膜体7としては、酸化ケイ素が用いられる例を示した。これに限らず、前述した膜体7としては、窒化膜を用いてもよい。
【0044】
(2) 前述した膜体7については、上面70を研磨することにより段差がほぼ生じないフラットな状態とする例を示した。しかし、これに限らず、前述した膜体7としては、複合センサ体10の製造時において上面70に段差がほぼ生じない場合には研磨されなくてもよい。
【0045】
(3) 前述した封止部材8については、透光性を担保するために、封止部材8の強度を高めたり、封止部材8の吸湿性を抑制したりするためのフィラーが添加されていない例を示した。しかし、これに限らず、前述した封止部材8としては、透光性を損なわない範囲内において、封止部材8の強度を高めたり、封止部材8の吸湿性を抑制したりするためのフィラーが添加されたものでもよい。
【0046】
(4) 前述した実施の形態では、複合センサ体10において、基板2に、第2光学センサ4として、前方照度センサを設けた例を示した。しかし、これに限らず、第2光学センサ4としては、前方照度センサの代わりに、周囲照度センサを設けてもよい。周囲照度センサ32は、車両100の周囲から受光した光に応じて照度を検出するセンサである。周囲照度センサ32は、図示を省略する受光素子およびASICを含む。周囲照度センサ32の受光素子は、フォトダイオードにより構成されている。周囲照度センサ32は、車両100の周囲から受光する可視光の照度を主に検出するセンサである。周囲照度センサ32は、ALS(Ambient Light Sensor)と呼ばれる場合がある。周囲照度センサ32の検出情報は、車両100における各種の照明の制御条件を判定するため等に用いられる。第2光学センサ4として、周囲照度センサを設ける場合にも、第2光学フィルタ6は、第2光学センサ4への赤外光の入射を抑制するものを用いる。
【0047】
(5) 前述した実施の形態では、複合センサ体10において、基板2に、2つの光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、2つの光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)が設けられ、その上方の全体を覆うように透光性の膜体7が形成される例を示した。しかし、これに限らず、複合センサ体10においては、基板2に、1つの光学センサ(第1光学センサ3または第2光学センサ4)、および、1つの光学フィルタ(第1光学フィルタ5または第2光学フィルタ6)が設けられ、その上方の全体を覆うように透光性の膜体7が形成されるようにしてもよい。
【0048】
(6) 前述した実施の形態では、複合センサ体10において、基板2に、2つの光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、2つの光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)が設けられ、その上方の全体を覆うように透光性の膜体7が形成される例を示した。このような光学センサとしては、前述したレインセンサと照度センサ(前方照度センサ、周囲照度センサ)との他に、日射センサ等のその他の光センサを用いてもよい。その場合には、日射センサが受光する可視光以外の光に受光を抑制する光学フィルタが日射センサの上方に設けられる。このように、複合センサ体10において基板2に設けるセンサとしては、実施の形態で示した光学センサ以外のセンサであってもよい。
【0049】
<実施の形態の光検出装置50により得られる技術的効果>
(1)
図2等に示すように、光検出装置50では、複合センサ体10において、基板2、光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の上方の全体を覆うように透光性の膜体7が形成されている。これらは、複合センサ体10において、検出構造体に該当する。そして、このような検出構造体が封止部材8により封止されている。複合センサ体10において、光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)を設ける場合に、基板2、光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の上方の全体を覆うように透光性の膜体7が形成されるので、検出構造体の上面70に段差が生じることが抑制される。したがって、膜体7の上面において気泡(例えば封止部材8で封止する際に生じる気泡)、異物(例えば製造時のフォトレジストなどの残渣)、または水分(例えば封止部材8が吸湿したことに応じて生じる水分)が存在することが抑制される。さらに、膜体7は、封止部材8よりも吸湿性が低いので、膜体7の内部に水分が溜まったり、膜体7が変形したりすることを抑制することができる。このように、膜体7が設けられたことにより、光検出装置50においては、検出構造体と封止部材8とが界面剥離する要因が低減されるので、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することを抑制することができる。
【0050】
(2)
図2等に示すように、膜体7は、上面70が平坦化された形状であるので、検出構造体の上面70に段差が生じることがさらに抑制される。したがって、膜体7の上面において気泡、異物、または水分が存在することがさらに抑制される。これにより、光検出装置50において、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することをさらに抑制することができる。
【0051】
(3)
図2等に示すように、膜体7は、上面70が研磨されることにより上面70が平坦化された形状であるので、検出構造体の上面70に段差が生じることがさらに抑制される。したがって、膜体7の上面70において気泡、異物、または水分が存在することがさらに抑制される。これにより、光検出装置50において、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することをさらに抑制することができる。
【0052】
(4) 膜体7は、酸化膜よりなるので、例えば樹脂よりも吸湿性が低い。これにより、光検出装置50においては、膜体7の内部に水分が溜まったり、膜体7が変形したりすることを抑制することができる。
【0053】
(5)
図2等に示すように、膜体7は、膜厚が光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の厚みよりも厚い。これにより、前述したように、膜体7による光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)への光干渉を抑制することができる。
【0054】
(6)
図2等に示すように、具体的な構成として、光学センサは、第1光学センサ3と第2光学センサ4とを含み、光学フィルタは、第1光学センサ3上に設けられた第1光学フィルタ5と、第2光学センサ4上に設けられた第2光学フィルタ6とを含む。そして、膜体7は、基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、第1光学フィルタ5、および、第2光学フィルタ6の上方の全体を覆うように形成される。さらに、封止部材8が、基板2、第1光学センサ3、第2光学センサ4、第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6、および、膜体7を封止する。このように膜体7が設けられたことにより、光検出装置50においては、2つの光学センサおよび2つの光学フィルタを含む検出構造体と封止部材8とが界面剥離することを抑制することができる。
【0055】
(7) 光検出装置50では、
図2等に示すように、具体的な構成として、第1光学センサ3がレインセンサであり、第2光学センサ4が照度センサ(前方照度センサ、周囲照度センサ)である構成において、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することを抑制することができる。
【0056】
(8) 光検出装置50では、
図2等に示すように、第1光学フィルタ5が第1光学センサ3としてのレインセンサへの可視光の入射を抑制し、第2光学フィルタ6が第2光学センサ4としての照度センサ(前方照度センサ、周囲照度センサ)への赤外光の入射を抑制する構成において、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することを抑制することができる。
【0057】
(9) 光検出装置50の製造方法では、
図3に示すように、基板2、光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の上方の全体を覆うように透光性の膜体(膜体7)を設ける工程(工程S4)の後に、膜体7の上面を平坦化する工程(工程S5)が実行される。複合センサ体10において、このように形成される基板2、光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)、および、膜体(膜体7)が、検出構造体に該当する。そして、このような検出構造体が封止部材8を設ける工程(工程S6)により、封止部材8により封止される。膜体7の上面を平坦化する工程(工程S5)により膜体7の上面が平坦化されるので、検出構造体の上面70に段差が生じることが抑制される。したがって、膜体7の上面70において気泡(例えば封止部材8で封止する際に生じる気泡)、異物(例えば製造時のフォトレジストなどの残渣)、または水分(例えば封止部材8が吸湿したことに応じて生じる水分)が存在することが抑制される。さらに、膜体7は、封止部材8よりも吸湿性が低いので、膜体7の内部に水分が溜まったり、膜体7が変形したりすることを抑制することができる。このように、膜体7が設けられたことにより、光検出装置50においては、検出構造体と封止部材8とが界面剥離する要因が低減されるので、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することを抑制することができる。
【0058】
(10) 光検出装置50の製造方法では、
図3(E)に示すように、膜体7の上面70を平坦化する工程(工程S5)において、膜体7の上面が研磨装置90により研磨されるので、検出構造体の上面70に段差が生じることがさらに抑制される。したがって、膜体7の上面70において気泡、異物、または水分が存在することがさらに抑制される。これにより、光検出装置50において、検出構造体と封止部材8とが界面剥離することをさらに抑制することができる。
【0059】
<付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
[構成1]
基板(基板2)と、
前記基板(基板2)上に設けられた光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)と、
前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)上に設けられた光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)と、
前記基板(基板2)、前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、前記光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の上方の全体を覆うように形成された透光性の膜体(膜体7)と、
前記基板(基板2)、前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、前記光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)、および、前記膜体(膜体7)を封止する透光性の封止部材(封止部材8)とを備え、
前記膜体(膜体7)は、前記封止部材(封止部材8)よりも吸湿性が低い、光検出装置(光検出装置50)。
[構成2]
前記膜体(膜体7)は、上面(上面70)が平坦化された形状である、構成1に記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成3]
前記膜体(膜体7)は、上面(上面70)が研磨されることにより上面が平坦化された形状である、構成1~構成3のいずれかに記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成4]
前記膜体(膜体7)は、酸化膜よりなる、構成1~構成3のいずれかに記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成5]
前記膜体(膜体7)は、膜厚が前記光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の厚みよりも厚い、構成1~構成4のいずれかに記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成6]
前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)は、第1光学センサ(第1光学センサ3)と第2光学センサ(第2光学センサ4)とを含み、
前記光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)は、前記第1光学センサ(第1光学センサ3)上に設けられた第1光学フィルタ(第1光学フィルタ5)と、前記第2光学センサ(第2光学センサ4)上に設けられた第2光学フィルタ(第2光学フィルタ6)とを含み、
前記膜体(膜体7)は、前記基板(基板2)、前記第1光学センサ(第1光学センサ3)、前記第2光学センサ(第2光学センサ4)、前記第1光学フィルタ(第1光学フィルタ5)、および、前記第2光学フィルタ(第2光学フィルタ6)の上方の全体を覆うように形成され、
前記封止部材(封止部材8)は、前記基板(基板2)、前記第1光学センサ(第1光学センサ3)、前記第2光学センサ(第2光学センサ4)、前記第1光学フィルタ(第1光学フィルタ5)、前記第2光学フィルタ(第2光学フィルタ6)、および、前記膜体(膜体7)を封止する、構成1~構成5のいずれかに記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成7]
前記第1光学センサ(第1光学センサ3)は、前記基板(基板2)の表面に設けられ、前記フロントウインドウ(フロントウインドウ60)で反射した赤外光を受光し、受光した光に応じて雨を検出するレインセンサ(レインセンサ)であり、
前記第2光学センサ(第2光学センサ4)は、前記基板(基板2)の表面に設けられ、前記フロントウインドウ(フロントウインドウ60)の外部から内部に入射した光を受光し、受光した光に応じて照度を検出する照度センサ(前方照度センサ、周囲照度センサ)である、構成6に記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成8]
前記第1光学フィルタ(第1光学フィルタ5)は、前記第1光学センサ(第1光学センサ3)への可視光の入射を抑制し、
前記第2光学フィルタ(第2光学フィルタ6)は、前記第2光学センサ(第2光学センサ4)への赤外光の入射を抑制する、構成6に記載の光検出装置(光検出装置50)。
[構成9]
基板上に光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)を設ける工程(工程S2)と、
前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)上に光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)を設ける工程(工程S3)と、
前記基板、前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、および、前記光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)の上方の全体を覆うように透光性の膜体(膜体7)を設ける工程(工程S4)と、
前記膜体(膜体7)の上面を平坦化する工程(工程S5)と、
前記基板、前記光学センサ(第1光学センサ3、第2光学センサ4)、前記光学フィルタ(第1光学フィルタ5、第2光学フィルタ6)、および、前記膜体(膜体7)を封止する透光性の封止部材(封止部材8)を設ける工程(工程S6)とを備え、
前記膜体(膜体7)は、前記封止部材(封止部材8)よりも吸湿性が低い、光検出装置(光検出装置50)の製造方法。
[構成10]
前記膜体(膜体7)の上面(上面70)を平坦化する工程(工程S5)においては、前記膜体(膜体7)の上面を研磨する、構成9に記載の光検出装置(光検出装置50)の製造方法。
【0060】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
2 基板、3 第1光学センサ、4 第2光学センサ、5 第1光学フィルタ、6 第2光学フィルタ、7 膜体、8 封止部材、50 光検出装置、70 上面、S1~S6 工程。