(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167619
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】キャップドライバ
(51)【国際特許分類】
B25B 13/50 20060101AFI20241127BHJP
B25B 13/48 20060101ALI20241127BHJP
B25B 13/02 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B25B13/50 E
B25B13/48 D
B25B13/02 L
B25B13/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083821
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】311004865
【氏名又は名称】旭産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【弁理士】
【氏名又は名称】冨所 剛
(72)【発明者】
【氏名】知久 直人
(57)【要約】
【課題】本発明は、既存のキャップドライバとは異なる機構によって、バルブキャップの着脱作業を容易にするキャップドライバを提供することを目的とする。
【解決手段】タイヤバルブのバルブステムとの着脱を行うための工具を差し込む工具差込部を有するバルブキャップを係合対象として、バルブキャップに回転トルクを付与してバルブステムに対する着脱を行うためのキャップドライバであり、凸部と、ガイド部と、を備える。凸部は、バルブキャップの着脱を行う際に、工具差込部に係合される。ガイド部は、凸部を包囲するように形成されており、バルブキャップの着脱を行う際に、バルブキャップに被せられて、工具差込部を凸部までガイドできるように形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤバルブのバルブステムとの着脱を行うための工具を差し込む工具差込部を有するバルブキャップを係合対象として、前記バルブキャップに回転トルクを付与して前記バルブステムに対する着脱を行うためのキャップドライバであって、
前記バルブキャップの着脱を行う際に、前記工具差込部に係合される凸部と、
前記凸部を包囲するように形成されており、前記バルブキャップの着脱を行う際に、前記バルブキャップに被せられて、前記凸部を前記工具差込部までガイドできるように形成されたガイド部と、
を備えることを特徴とする、キャップドライバ。
【請求項2】
前記ガイド部が前記バルブキャップに被せられた状態において、前記バルブキャップを前記ガイド部に保持する、保持構造を備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のキャップドライバ。
【請求項3】
前記保持構造は、
前記バルブキャップの側面を押圧して保持する弾性体である
ことを特徴とする、請求項2に記載のキャップドライバ。
【請求項4】
前記ガイド部の内壁は、円筒状に形成され、
前記弾性体は、前記ガイド部の内壁に沿って設けられたOリングである
ことを特徴とする、請求項3に記載のキャップドライバ。
【請求項5】
前記ガイド部は、
前記ガイド部の外壁に対し、前記外壁の周方向に延びて基端と先端とが繋がらない溝状に形成された、嵌合部と、
前記ガイド部の前記外壁から内壁の一部を切り欠くように形成され、前記嵌合部の基端または先端の少なくとも一方と繋がっている切欠部と、
を備え、
前記弾性体は、変形リングであって、
前記変形リングは、
前記嵌合部と嵌合するように前記周方向に延びて、基端と先端とが繋がらないように形成された、固定部と、
前記固定部の先端から延びる係止部と、
を備え、
前記固定部が前記嵌合部に嵌合することで、前記変形リングが前記ガイド部に固定されるとともに、前記係止部が、前記切欠部に収容されて、前記ガイド部の前記内壁より内側に張り出す
ことを特徴とする、請求項3に記載のキャップドライバ。
【請求項6】
前記凸部を備えるシャフトと、
前記ガイド部を備えるキャップガイドと、
を備え、
前記凸部は、前記シャフトの先端から、前記キャップドライバの軸方向に延びて、前記ガイド部の内壁で形成された穴部に突出する
ことを特徴とする、請求項1に記載のキャップドライバ。
【請求項7】
前記シャフトの先端部の外周面にねじ溝が形成されており、
前記キャップガイドは、前記ねじ溝に対応する形状を有する螺合部を備え、
前記螺合部は、前記キャップガイドの後端から前記軸方向に延びて、前記穴部と、中心軸が一致するように繋がっており、
前記螺合部が前記ねじ溝に締結されることによって、前記凸部が前記穴部に突出する
ことを特徴とする、請求項6に記載のキャップドライバ。
【請求項8】
前記ガイド部の外壁における前記凸部に対応する位置に、マーク部が形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のキャップドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバルブ等のバルブキャップの着脱に用いられるキャップドライバ、特に、タイヤバルブのバルブステムに取り付けられたバルブキャップの着脱に用いられるキャップドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバルブ等のバルブキャップを着脱する際に、キャップドライバが用いられている。
【0003】
既知のキャップドライバとして、特許文献1には、樹脂製の円筒状部材を備えたキャップドライバが開示されている。この円筒状部材の内周面には、バルブキャップの多角形状の外形部分と係合する係合部が形成されている。円筒状部材をバルブキャップに被せ、係合部をバルブキャップの外周部に係合させた状態で、キャップドライバを軸周りに回転させることによって、バルブキャップをバルブステムに対して容易に着脱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、バルブキャップの着脱作業を容易に行うための機構について鋭意検討を重ねた。その結果、特許文献1に開示されているキャップドライバとは異なる機構を有するキャップドライバに想到した。
【0006】
そこで、本発明は、既存のキャップドライバとは異なる機構によって、バルブキャップの着脱作業を容易にするキャップドライバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のキャップドライバは、(1)タイヤバルブのバルブステムとの着脱を行うための工具を差し込む工具差込部を有するバルブキャップを係合対象として、バルブキャップに回転トルクを付与してバルブステムに対する着脱を行うためのキャップドライバであり、凸部と、ガイド部と、を備える。凸部は、バルブキャップの着脱を行う際に、工具差込部に係合される。ガイド部は、凸部を包囲するように形成されており、バルブキャップの着脱を行う際に、バルブキャップに被せられて、工具差込部を凸部までガイドできるように形成されている。
【0008】
(2)(1)のキャップドライバは、保持構造を備える。保持構造は、ガイド部がバルブキャップに被せられた状態において、バルブキャップをガイド部に保持する。
【0009】
(3)(2)のキャップドライバが備える保持構造は、バルブキャップの側面を押圧して保持する弾性体である。
【0010】
(4)(3)のキャップドライバが備えるガイド部の内壁は、円筒状に形成される。さらに、(3)のキャップドライバが備える弾性体は、ガイド部の内壁に沿って設けられたOリングである。
【0011】
(5)(3)のキャップドライバが備えるガイド部は、嵌合部と、切欠部と、を備える。嵌合部は、ガイド部の外壁に対し、外壁の周方向に延びて基端と先端とが繋がらない溝状に形成されている。切欠部は、ガイド部の外壁から内壁の一部を切り欠くように形成され、嵌合部の基端または先端の少なくとも一方と繋がっている。さらに、(3)のキャップドライバが備える弾性体は、変形リングである。変形リングは、固定部と、係止部と、を備える。固定部は、嵌合部と嵌合するように周方向に延びて、基端と先端とが繋がらないように形成されている。係止部は、固定部の先端から延びている。固定部が嵌合部に嵌合することで、変形リングがガイド部に固定されるとともに、係止部が、切欠部に収容されて、ガイド部の内壁より内側に張り出す。
【0012】
(6)(1)のキャップドライバは、シャフトと、キャップガイドと、を備える。シャフトは、凸部を備える。キャップガイドは、ガイド部を備える。凸部は、シャフトの先端から、キャップドライバの軸方向に延びて、ガイド部の内壁で形成された穴部に突出する。
【0013】
(7)(6)のキャップドライバにおいて、シャフトの先端部の外周面にねじ溝が形成されている。キャップガイドは、ねじ溝に対応する形状を有する螺合部を備える。螺合部は、キャップガイドの後端から軸方向に延びて、穴部と、中心軸が一致するように繋がっている。螺合部がねじ溝に締結されることによって、凸部が穴部に突出する。
【0014】
(8)(1)のキャップドライバにおいて、ガイド部の外壁における凸部に対応する位置に、マーク部が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バルブキャップを着脱する際、工具差込部を備えたバルブキャップにガイド部を被せることによって、凸部を工具差込部までガイドすることができるため、容易に凸部を工具差込部に係合させることができる。したがって、バルブキャップの着脱作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態におけるバルブキャップ100の、XZ平面での断面図である。
【
図2】第1実施形態におけるキャップドライバ1を示す全体外観図である。
【
図3】
図2に示すキャップドライバ1の先端部の、XZ平面での断面図である。
【
図4】
図2に示すキャップドライバ1の先端部を、白抜きの矢印の方向に見た図である。
【
図5】キャップドライバ1の使用状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態における変形リング46の正面図である。
【
図7】変形リング46が取り付けられたキャップガイド4´を有するキャップドライバ1´の先端部の、XZ平面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、第1実施形態について説明する。
【0018】
<バルブキャップ100の構成>
説明の便宜上、まず、本実施形態におけるキャップドライバ1の係合対象となる、バルブキャップ100の構成を説明する。
図1は、本実施形態におけるバルブキャップ100の、XZ平面での断面図である。なお、X軸方向は、キャップドライバ1及びバルブキャップ100の軸方向に相当し、Y軸方向は、後述する溝部111及び凸部32の幅方向に相当し、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交する方向に相当する。X軸、Y軸及びZ軸の定義は、以降の図においても同様とする。なお、バルブキャップ100は、タイヤバルブのバルブステムに取り付けられるバルブキャップの一例である。
【0019】
図1を参照して、バルブキャップ100は、ヘッド部110と、本体部120と、を備える。ヘッド部110には、バルブキャップ100の着脱を行う際に工具を差し込むための工具差込部(本実施形態では、マイナスドライバの先端形状に対応した幅広の溝部111)が形成されている。本体部120は、側壁外面を周回するように形成されたメッシュ部121(
図1に網目状に示す)と、バルブキャップ100をバルブステム(不図示)に取り付けるためのねじ穴122と、を有する。YZ平面におけるヘッド部110の断面形状としては、多角形状や円形状、十字形状等を採用することができるが、これに限られない。
【0020】
本実施形態のキャップドライバ1の係合対象となるバルブキャップ100の構成は、
図1に示すものに限られず、マイナスドライバの先端形状に対応した溝部111が形成された、種々の構成のバルブキャップを、キャップドライバ1の係合対象とすることができる。したがって、例えば、バルブキャップ100のうちメッシュ部121が省略されたバルブキャップを、キャップドライバ1の係合対象とすることができる。
【0021】
<キャップドライバ1の構成>
次に、本実施形態におけるキャップドライバ1の構成を説明する。
図2は、本実施形態におけるキャップドライバ1を示す全体外観図である。
図3は、
図2に示すキャップドライバ1の先端部の、XZ平面での断面図である。
図4は、
図2に示すキャップドライバ1の先端部を、白抜きの矢印の方向に見た図である。
【0022】
図2を参照して、キャップドライバ1は、作業者が把持するグリップ2と、グリップ2から延びるシャフト3と、シャフト3の先端に装着されたキャップガイド4と、を備える。グリップ2及びシャフト3は、使用時に分離しないよう、着脱不能に固定される。
図3を参照して、シャフト3の先端部には、外周面に形成されたねじ溝31と、先端からX軸方向に延びる凸部32と、を備える。
図4を参照して、凸部32は、バルブキャップ100の溝部111に対応した幅広の扁平形状(マイナスドライバの先端に対応した形状)を有する。凸部32が溝部111に係合した状態で、キャップドライバ1を軸周りに回転させることにより、バルブキャップ100に回転トルクを付与して着脱を行うことができる。
【0023】
グリップ2は、作業者が把持することで、バルブキャップ100に回転トルクをかけやすくして着脱を容易にするために設けられる。グリップ2は、作業者が把持しやすい材質及び形状であることが好ましい。
【0024】
シャフト3は、棒状部材であって、作業者がグリップ2を把持してバルブキャップ100の脱着を行う際に、キャップガイド4を安定的に支持できる強度を有する。シャフト3の材質としては、例えば鉄、ステンレス、アルミ、真鍮等を採用することができるが、これに限られない。また、YZ平面におけるシャフト3の断面形状としては、多角形状や円形状を採用することができるが、これに限られない。
【0025】
キャップガイド4は、キャップガイド4の先端からX軸方向後方に延びる円筒状のガイド部41と、シャフト3に形成されたねじ溝31に対応する形状を有する螺合部42と、を備える。
ガイド部41は、凸部32を包囲するように形成されている。具体的には、螺合部42は、キャップガイド4の後端からX軸方向に延びて、ガイド部41の内壁で形成された円柱状の穴部43と、中心軸が一致するように繋がっている。キャップガイド4が備える螺合部42を、シャフト3のねじ溝31に締結することによって、キャップガイド4がシャフト3に固定されるとともに、シャフト3の先端からX軸方向に延びる凸部32が、キャップガイド4の穴部43に突出する。より具体的には、凸部32は、穴部43の径方向中央(穴部43をX軸方向に見た場合における中央)に突出する。これにより、ガイド部41が凸部32を包囲するように配置された構造となる。
【0026】
さらに、ガイド部41は、X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の大きさに対応した内径を有する。ここで、「X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の大きさに対応した内径」とは、ガイド部41の内壁がバルブキャップ100の外面に沿って摺動可能となる大きさの内径を指す。より詳細には、「X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の大きさに対応した内径」とは、X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の輪郭形状の重心位置から、該輪郭形状のうち該重心位置から最も離隔した点までの距離よりも、若干大きい内径を指す。例えば、X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の輪郭形状が円形状である場合、ガイド部41は、該円形状の径より若干大きい内径を有する。また、例えば、X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の輪郭形状が正多角形状である場合、ガイド部41は、該正多角形状の重心位置から該正多角形状の頂点までの距離よりも若干大きい内径を有する。
【0027】
一般的なマイナスドライバを用いてバルブステムに対してバルブキャップ100の着脱作業を行う場合、マイナスドライバの先端を溝部111にピンポイントで合わせなければならないため、マイナスドライバの先端を溝部111に係合させることが難しく、バルブキャップ100の着脱作業が困難となる。
一方、本発明に係るキャップドライバ1は、凸部32を包囲するように形成されたガイド部41を備えており、このガイド部41は、X軸方向に見た場合におけるバルブキャップ100の大きさに対応した内径を有する。この構成によれば、バルブキャップ100にガイド部41を被せることで、ガイド部41の内壁をバルブキャップ100の外面に沿わせて摺動させ、凸部32を溝部111までガイドすることができる。これにより、凸部32を溝部111に係合させやすくなり、バルブキャップ100の着脱作業が容易となる。
【0028】
キャップガイド4の材質として、アルミニウムなどの金属や樹脂等を用いることができる。本実施形態では、バルブキャップ100をガイド部41に保持するための保持構造として、ガイド部41の内壁にOリング44を設けているため、剛性に優れた金属性のキャップガイド4を採用している。本実施形態では、Oリング44は、ガイド部41の内壁の、X軸方向先端付近に設けられている。
【0029】
一般的なマイナスドライバを用いてバルブステムからバルブキャップ100を取り外す場合、バルブキャップ100の溝部111にマイナスドライバの先端を差し込み、軸周りに回転させてバルブキャップ100をバルブステムから取り外した後、手を伸ばしてバルブキャップ100を把持してバルブステムから引き抜き、そのままバルブキャップ100を引き寄せる必要がある。しかしながら、この場合、手が滑るなどして、バルブキャップ100を誤って落下させてしまうおそれがある。かかる場合には、落下したバルブキャップ100の探索や回収を行う必要が生じ、作業が煩雑化してしまう。
一方、ガイド部41の内壁のX軸方向先端付近にOリング44を備える構成によれば、バルブキャップ100にガイド部41が被せられた状態において、Oリング44がバルブキャップ100のメッシュ部121に当接して押圧し、バルブキャップ100がガイド部41に保持される。そのため、バルブキャップ100の取り外し作業時(バルブキャップ100を取り外してから引き寄せるまでの間)に、バルブキャップ100がガイド部41(キャップガイド4)から抜け落ちることが抑制される。これにより、バルブキャップ100の落下に伴う作業の煩雑化を抑制することができる。
【0030】
また、一般的なマイナスドライバを用いてバルブステムにバルブキャップ100を取り付ける場合、まずは把持したバルブキャップ100を、手を伸ばしてバルブステムまで到達させ、バルブキャップ100のねじ穴122の下端がバルブステムの上端に重なるように位置合わせを行った後、バルブキャップ100の溝部111にマイナスドライバの先端を差し込んで軸周りに回転させることによって、バルブキャップ100を取り付ける。したがって、バルブキャップ100の取り付け作業中に、手が滑るなどして、バルブキャップ100を誤って落下させてしまうおそれがある。かかる場合には、落下したバルブキャップ100の探索や回収を行う必要が生じ、作業が煩雑化してしまう。
一方、ガイド部41の内壁のX軸方向先端付近にOリング44を備える構成によれば、予めバルブキャップ100を穴部43に挿入する(換言すると、ガイド部41をバルブキャップ100に被せる)ことで、Oリング44がバルブキャップ100のメッシュ部121に当接して押圧し、バルブキャップ100がガイド部41に保持される。そのため、バルブキャップ100の取り付け作業時(バルブキャップ100を穴部43に挿入してからバルブステムとの位置合わせを完了させるまでの間)に、バルブキャップ100がガイド部41(キャップガイド4)から抜け落ちることが抑制される。これにより、バルブキャップ100の落下に伴う作業の煩雑化を抑制することができる。
【0031】
さらに、ガイド部41の内壁のX軸方向先端付近にOリング44を備える構成によれば、上述の通り、バルブキャップ100の着脱作業に際してバルブキャップ100がガイド部41に保持されるため、バルブステム付近(例えばタイヤ)を手で触れる必要がなくなる。そのため、バルブキャップ100の着脱作業の際に、バルブステム付近に付着した土や泥によって作業者の手や腕が汚れることを抑制できる。これにより、車両の整備現場において近年高まっている、美化に対するニーズにも対応することができる。そのため、本実施形態におけるキャップドライバ1は、車両の整備現場における車両(特に、オフロード車などの特殊車両)のタイヤのエアバルブに使用されるバルブキャップの着脱に好適に用いられる。
【0032】
なお、本実施形態では、Oリング44がガイド部41の内壁のX軸方向先端付近に設けられており、かつ、バルブキャップ100の着脱時において、Oリング44がバルブキャップ100のメッシュ部121に当接する構成となっている。しかしながら、ガイド部41の内壁におけるOリング44の位置やバルブキャップ100におけるメッシュ部121の有無によらず、バルブキャップ100の着脱作業時において、Oリング44がバルブキャップ100の側面に当接する構成であれば、バルブキャップ100をガイド部41に保持することができるため、上述した効果(バルブキャップ100の着脱作業時におけるバルブキャップ100の落下を抑制する効果)を奏することができる。
なお、バルブキャップ100の着脱作業時における本実施形態の構成(Oリング44がバルブキャップ100のメッシュ部121に当接する構成)によれば、Oリング44がバルブキャップ100を保持する力がより強くなり、バルブキャップ100がキャップガイド4から抜け落ちることを、より確実に抑制することができる。
【0033】
ねじ溝31と螺合部42との締結力が、凸部32と係合したバルブキャップ100を回転させる際にねじ溝31にかかる力よりも弱い場合、バルブキャップ100の着脱時にねじ溝31と螺合部42との締結が弱まり、キャップガイド4がシャフト3と分離して脱落するおそれがある。そのため、ねじ溝31を螺合部42に締結する前に、ねじ溝31及び螺合部42の少なくとも一方に、強い接着力を有する高強度接着剤を塗布することが好ましい。これにより、締結されたねじ溝31及び螺合部42の少なくとも一部が高強度接着剤によって強固に接着固定されるため、キャップガイド4とシャフト3が分離する可能性を低めることができる。高強度接着剤としては、例えばメタルロック(登録商標)等を用いることができるが、これに限られない。
【0034】
上述の通り、バルブキャップ100に回転トルクを付与するためには、シャフト3の凸部32をバルブキャップ100の溝部111と係合させる必要がある。また、上述の通り、シャフト3のねじ溝31は、キャップガイド4の螺合部42と強力に締結される必要がある。すなわち、シャフト3の凸部32及びねじ溝31は、他の部材と擦れ合ったり接触したりする機会が多く、そのため、シャフト3における他の部分と比べて摩耗が生じやすい。したがって、シャフト3の凸部32及びねじ溝31を含む先端部は、シャフト3の他の部分よりも耐摩耗性が高いことが好ましい。
【0035】
例えば、凸部32及びねじ溝31を含むシャフト3の先端部に熱処理を施すことによって、硬度を高め、耐摩耗性を向上させることができる。ただし、シャフト3の凸部32及びねじ溝31の耐摩耗性を高める方法はこれに限られず、例えば、凸部32及びねじ溝31を含むシャフト3の先端部をメッキ等でコーティングしたり、凸部32及びねじ溝31を含むシャフト3の先端部を、シャフト3の他の部分よりも耐摩耗性に優れた材料で構成したりすることもできる。
【0036】
なお、本発明に係るキャップドライバでは、シャフト3のねじ溝31及びキャップガイド4の螺合部42を省略し、シャフト3及びキャップガイド4を一体に構成することもできる。この場合には、少なくとも凸部32の耐摩耗性を、シャフト3の他の部分より高めた構造とすることが好ましい。
【0037】
ガイド部41の外壁には、キャップガイド4をY軸方向に見た場合において凸部32の側面に対応する位置に、マーク部45が形成されている。本実施形態において、マーク部45は、キャップガイド4の両側面(凸部32をY軸方向に挟む位置)に、X軸方向に延びる溝状に形成されている(
図4参照)。ガイド部41の外壁にマーク部45を設けることにより、凸部32の向きを外部から確認することができるため、マーク部45と、バルブキャップ100の溝部111の幅方向と、が重なるようにガイド部41をバルブキャップ100に被せることで、凸部32を溝部111により容易に係合させることができ、バルブキャップ100の着脱作業がより容易となる。マーク部45の形状や形成方法などは、特に限定されず、ガイド部41の外壁における凸部32に対応する位置に形成されていればよい。
【0038】
<バルブキャップ100の着脱方法>
本実施形態におけるキャップドライバ1を用いてバルブキャップ100を着脱する方法について、
図5を参照して以下に説明する。
図5は、キャップドライバ1の使用状態を示す図である。
【0039】
まず、
図5を参照して、バルブステム(不図示)に装着されたバルブキャップ100を取り外す作業について説明する。
まず、作業者は、グリップ2を把持してキャップガイド4をエアバルブ付近に到達させ、キャップガイド4のガイド部41をバルブキャップ100に被せる。そして、キャップガイド4を奥まで差し込んで、軸周りに回して凸部32を回転させながら、溝部111に凸部32を係合させる。ガイド部41をバルブキャップ100に被せることで、ガイド部41の内壁をバルブキャップ100の外面に沿わせて摺動させ、凸部32を溝部111までガイドすることができる。これにより、凸部32を溝部111に係合させやすくなる。ガイド部41をバルブキャップ100に被せる当初に、ガイド部41の外壁に形成されたマーク部45を溝部111の幅方向に一致させておくことによって、より容易に凸部32と溝部111とを係合させることができる。
【0040】
溝部111に凸部32を係合させた後、グリップ2を軸周りに回転させることにより、シャフト3(凸部32)を介してバルブキャップ100に回転トルクが付与され、バルブキャップ100がバルブステムから取り外される。
【0041】
バルブステムからバルブキャップ100を取り外した後、キャップガイド4を手元に引き寄せる。ここで、ガイド部41の内壁のX軸方向先端付近にOリング44が設けられているため、Oリング44がバルブキャップ100のメッシュ部121に当接し、バルブキャップ100は、バルブステムから取り外された後でも、ガイド部41に保持される。そのため、バルブキャップ100を取り外してから手元に引き寄せるまでの間に、バルブキャップ100がキャップガイド4(ガイド部41)から抜け落ちることが抑制される。
【0042】
そして、手元に引き寄せたキャップガイド4から、バルブキャップ100を取り出す。
【0043】
次に、
図5を参照して、バルブキャップ100をバルブステム(不図示)に取り付ける作業について説明する。
【0044】
まず、作業者は、バルブキャップ100を穴部43に挿入する(換言すると、ガイド部41をバルブキャップ100に被せる)。そして、バルブキャップ100をガイド部41の奥まで差し込んで、軸周りに回して溝部111を回転させながら、溝部111に凸部32を係合させる。バルブキャップ100をガイド部41に挿入する当初に、溝部111の幅方向を、ガイド部41の外壁に形成されたマーク部45に一致させておくことによって、より容易に凸部32と溝部111とを係合させることができる。
【0045】
穴部43にバルブキャップ100を挿入して溝部111に凸部32を係合させた後、作業者はグリップ2を把持して、キャップガイド4をバルブステムまで到達させる。ここで、ガイド部41の内壁のX軸方向先端付近にOリング44が設けられているため、Oリング44がバルブキャップ100のメッシュ部121に当接し、バルブキャップ100がガイド部41に保持される。そのため、バルブキャップ100を穴部43に挿入してから、キャップガイド4をバルブステムに到達させるまでの間に、バルブキャップ100がキャップガイド4(ガイド部41)から抜け落ちることが抑制される。
【0046】
キャップガイド4をバルブステムまで到達させた後、グリップ2を軸周りに回転させることにより、シャフト3(凸部32)を介してバルブキャップ100に回転トルクが付与され、バルブキャップ100がバルブステムに取り付けられる。
【0047】
バルブキャップ100を取り付けた後、グリップ2をX軸方向後方に引くことで、バルブキャップ100からキャップガイド4を取り外す。
【0048】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態においては、バルブキャップをガイド部に保持するための保持構造として、弾性体であるOリング44を使用した例を示した。しかしながら、保持構造として用いることができる弾性体は、Oリング44に限られない。第2実施形態では、バルブキャップをガイド部に保持するための保持構造の弾性体として、
図6に示すような形状の変形リング46を使用した場合について、説明する。
図6は、変形リング46の正面図である。
【0049】
図6を参照して、変形リング46は、固定部461と、係止部462と、を備える。固定部461は、ガイド部41´(後述)の外壁に形成された嵌合部47(後述)と嵌合するように、ガイド部41´の外壁の周方向に延びており、固定部461の先端461aと基端461bとは繋がっていない。本実施形態において、固定部461は円弧状に形成されている。固定部461の先端461aは、固定部461が形成する円弧の中心Oよりも上方に配置され、固定部461の基端461bは、中心Oと略同じ高さに配置されている。係止部462は、固定部461の先端461aから、Y軸方向に直線状に延びている。
【0050】
変形リング46が取り付けられたキャップガイド4´の構成について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、変形リング46が取り付けられたキャップガイド4´を有するキャップドライバ1´の先端部の、XZ平面での断面図である。
図8は、
図7のA-A矢視図である。
図8において、変形リング46をハッチングで示す。なお、第1実施形態と機能が共通している要素には同一符号を付している。
図7及び
図8を参照して、キャップガイド4´のガイド部41´は、ガイド部41´の外壁に形成された溝状の嵌合部47と、ガイド部41´の外壁から内壁の一部を切り欠くように形成された切欠部48と、を備える。嵌合部47は、ガイド部41´の外壁の周方向に延びており、嵌合部47の先端47aと基端47bとは繋がっていない。本実施形態において、嵌合部47は円弧状に形成されている。嵌合部47の先端47aと基端47bとは、略同じ高さに配置されている。切欠部48は、YZ平面に沿ってスリット状に形成されており、嵌合部47の先端47a及び基端47bと繋がっている。
【0051】
固定部461の先端461aが嵌合部47の先端47aと重なるように、固定部461を嵌合部47に嵌合することにより、変形リング46がガイド部41´に取り付けられて固定されるとともに、係止部462が切欠部48に収容されて、係止部462がガイド部41´の内壁より内側(穴部43)に張り出すように配置される。このとき、固定部461の基端461bは、嵌合部47の内部であって嵌合部47の基端47bと重ならない位置に配置される。これは、固定部461が嵌合部47に対応する形状を有し、かつ、固定部461の周方向長さが嵌合部47の周方向長さよりも短く形成されているためである。
【0052】
ガイド部41´がバルブキャップ100に被せられた状態では、バルブキャップ100の側面によって、係止部462がガイド部41´の外面側に押され、係止部462の基端462bを支点として弾性変形して湾曲するが、その反作用によって、係止部462がバルブキャップ100の側面に当接してバルブキャップ100を押圧する。これにより、係止部462とガイド部41´の内壁とでバルブキャップ100が挟み込まれ、ガイド部41´に保持される。そのため、第1実施形態(ガイド部41にOリング44を設けた場合)と同様に、バルブキャップ100の着脱作業時における、バルブキャップ100の落下を抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、係止部462の先端462aは、固定部461の基端461bと繋がっておらず、基端461bから離隔した位置に配置されている。この構成によれば、係止部462の先端462aが自由端となるため、係止部462の先端462aが固定部461の基端461bと繋がった構成と比べて、バルブキャップ100の側面による外方への押圧に対し、係止部462をより柔軟に弾性変形させることができる。そのため、係止部462の基端462bにかかる負荷が軽減され、変形リング46が破損することが抑制される。
【0054】
変形リング46の材質は、ガイド部41´がバルブキャップ100に被せられた状態において弾性変形し、バルブキャップ100の側面を押圧できる材質であれば、特に限定されない。変形リング46の材質としては、例えば、ばね鋼を用いることができる。また、変形リング46における固定部461は、嵌合部47と嵌合するように、ガイド部41´の外壁の周方向に延びる形状を有すればよく、円弧状に限定されるものではない。
【0055】
(変形例)
上述の実施形態においては、バルブキャップ100をガイド部41に保持するための保持構造の弾性体として、Oリング44や変形リング46が使用されている。しかしながら、前記保持構造の弾性体はこれに限られず、第1実施形態におけるOリング44に代えて、断面が矩形の角リングや、断面がD字形状のDリング等の弾性体を、ガイド部41の内壁に設け、バルブキャップ100の側面を押圧して保持する構造とすることもできる。
【0056】
さらに、前記保持構造として、他の構造を採用することもできる。例えば、キャップガイド4を弾性変形可能な部材で構成することによって、キャップガイド4の内周面がバルブキャップ100の側面を押圧して保持するため、バルブキャップ100がキャップガイド4(ガイド部41)から抜け落ちることを抑制することができる。この構造では、ガイド部41の内径(すなわち穴部43の径)の少なくとも一部をバルブキャップ100より小径に形成することが好ましい。
【0057】
(変形例)
上述の実施形態では、シャフト3のねじ溝31とキャップガイド4の螺合部42とを螺合させることによって、キャップガイド4がシャフト3に固定されている。しかしながら、キャップガイド4をシャフト3に固定する方法は、これに限られず、例えば溶着やかしめ、溶接、ロウ付け、押圧部材による挟み込み等、種々の既知の固定方法を採用することができる。
【0058】
(変形例)
上述の実施形態において、キャップドライバ1は、シャフト3の一端のみにキャップガイド4を備えた構成を有するが、本発明に係るキャップドライバはこれに限られるものではなく、シャフト3の両端にそれぞれキャップガイド4を備えた構成とすることもできる。この場合、グリップ2は省略される。例えば、シャフト3の一端には、特殊車両のタイヤバルブに適したキャップガイド4を設け、他端には、普通車両のタイヤバルブに適したキャップガイド4を設ける構造とすることができる。
また、本発明に係るキャップドライバは、シャフト3が省略された構成(グリップ2とキャップガイド4からなる構成、または、キャップガイド4のみからなる構成)とすることもできる。この構成においては、キャップガイド4は、X軸方向に突出する凸部32と、凸部32を包囲するように形成されたガイド部41と、を備える。シャフト3が省略された構成とすることにより、キャップドライバが小型化かつ軽量化するため、キャップドライバの持ち運びがより容易となる。なお、キャップドライバにシャフト3を設けることにより、作業者が把持可能な部分(例えばグリップ2)からキャップガイド4までが長尺に形成されるため、エアバルブが奥まった場所に配置された場合であっても、キャップガイド4をエアバルブまで容易に到達させ、バルブキャップ100の着脱を行うことができる。
【0059】
(変形例)
上述の実施形態では、凸部32が、マイナスドライバの先端形状を有している。この凸部32を、バルブキャップ100の工具差込部としてヘッド部分110に形成された溝部111に係合させることによって、バルブキャップ100の着脱を行うことができる。しかしながら、本発明に係るキャップドライバが備える凸部の形状は、マイナスドライバの先端形状に限定されるものではなく、本発明に係るキャップドライバが係合対象とするバルブキャップの工具差込部に対応した形状を有していればよい。したがって、例えば、凸部の形状が、六角レンチの先端形状であってもよい。この場合、この凸部を、バルブキャップの工具差込部としてヘッド部分に形成された、該凸部に対応する形状の穴部(六角レンチの先端形状を有する穴部)に係合させることによって、バルブキャップの着脱を行うことができる。
【0060】
(変形例)
上述の実施形態では、ガイド部41の外壁及び内壁が対応した形状(円筒形状)を有する。しかしながら、ガイド部41の外壁は、意匠的な観点等から、ガイド部41の内壁と異なる形状を有してもよい。
【0061】
(変形例)
上述の第2実施形態においては、係止部462がY軸方向に直線状に延びている。しかしながら、係止部462は、切欠部48に収容された状態において、ガイド部41´の内壁より内側(穴部43)に張り出す構成であれば、形状や長さ等は特に限定されない。
【0062】
(変形例)
上述の第2実施形態においては、切欠部48は、嵌合部47の先端47a及び基端47bと繋がっている。しかしながら、切欠部48は、嵌合部47の先端47a及び基端47bのうち少なくとも一方と繋がっている構成であればよい。この構成であっても、固定部461の先端461aを、嵌合部47の先端47aまたは基端47bのうち切欠部48と繋がっている端部と重なるように配置して、固定部461を嵌合部47に嵌合することにより、変形リング46がガイド部41´に取り付けられて固定されるとともに、係止部462が切欠部48に収容されて、係止部462がガイド部41´の内壁より内側(穴部43)に張り出すように配置される。
【0063】
(変形例)
上述の第2実施形態においては、固定部461が嵌合部47に対応する形状を有し、かつ、固定部461の周方向長さが嵌合部47の周方向長さよりも短く形成されている。しかしながら、固定部461の周方向長さが、嵌合部47の周方向長さと等しくなるように形成されてもよい。この場合、固定部461が嵌合部47に嵌合した嵌合状態において、固定部461の基端461bが嵌合部47の基端47bと重なる。なお、固定部461の周方向長さを嵌合部47の周方向長さよりも短く形成することにより、固定部461の基端461bを嵌合部47内に嵌め込みやすくなるため、固定部461を嵌合部47により容易に嵌合させることができる。
【符号の説明】
【0064】
キャップドライバ 1、1´ シャフト 3 キャップガイド 4、4´ ねじ溝 31 凸部 32 ガイド部 41、41´ 螺合部 42 穴部 43 Oリング 44 変形リング 46 嵌合部 47 切欠部 48 バルブキャップ 100 工具差込部(溝部) 111 固定部 461 係止部 462