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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167635
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241127BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20241127BHJP
   B64U 101/30 20230101ALN20241127BHJP
   B64U 101/26 20230101ALN20241127BHJP
【FI】
G08B17/00 G
B64U20/87
G08B17/00 K
B64U101:30
B64U101:26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083845
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽造
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA10
5G405CA46
5G405CA53
5G405CA60
5G405FA16
5G405FA30
(57)【要約】
【課題】無人飛行体を用いる検査において、無人飛行体を操作する作業者を支援することができる検査システムを得る。
【解決手段】検査システム(100)は、検査対象機器の検査を行うための検査器が搭載された無人飛行体(2)と、無人飛行体(2)が検査対象機器まで直線経路で到達するような誘導経路を生成する誘導部(1)と、を有し、誘導部(1)は、検査対象機器に向けてレーザー光線を照射するレーザー照射部(10)を備え、無人飛行体(2)は、レーザー光線を受光する第1受光体(201)と、第1受光体(201)の周りに設けられている複数の第2受光体(202)と、レーザー光線が、各第2受光体(202)のいずれかで受光された場合、受光した当該第2受光体(202)と第1受光体(201)との位置関係に基づいて、無人飛行体(2)の飛行方向を制御する制御部(22)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象機器の検査を行うための検査器が搭載された無人飛行体と、
前記無人飛行体が前記検査対象機器まで直線経路で到達するような誘導経路を生成する誘導部と、
を有し、
前記誘導部は、
前記検査対象機器に向けて可視領域のレーザー光線を照射するレーザー照射部
を備え、
前記無人飛行体は、
前記レーザー照射部からの前記レーザー光線を受光可能な位置に設けられている第1受光体と、
前記第1受光体の周りを囲むように設けられている複数の第2受光体と、
前記レーザー光線が、各前記第2受光体のいずれかで受光された場合、受光した当該第2受光体と前記第1受光体との位置関係に基づいて、前記第1受光体で前記レーザー光線が受光されるように、前記無人飛行体の飛行方向を制御する制御部と、
を備える、検査システム。
【請求項2】
前記レーザー照射部は、
主レーザー光線を照射する1つの主レーザー照射部と、
前記主レーザー照射部の周りを囲むように設けられ、前記無人飛行体の飛行の妨げとなる障害物の存在を確認するための副レーザー光線を、前記主レーザー光線の周囲で照射する複数の副レーザー照射部と
を備えて構成されている、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記誘導部は、更に、
前記レーザー光線の照射方向と同じ方向を照射する測距センサと、
前記無人飛行体と前記検査対象機器との間の距離である遠近距離に基づいて、前記無人飛行体の飛行を制御する遠近距離制御部と
を備え、
前記測距センサは、当該測距センサから前記検査対象機器までの距離を、想定到達距離として予め計測し、
前記遠近距離制御部は、前記無人飛行体が前記検査対象機器に向かって飛行しているときに前記測距センサによって計測される計測距離と、前記想定到達距離とに基づいて、前記遠近距離を算出し、当該遠近距離に基づいて、前記無人飛行体の飛行を制御する、
請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記検査対象機器は、室内空間の高所に設けられている感知器である、
請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項5】
前記誘導部は、室内空間の床面に取り外し可能且つ移設可能に設置することができるシート部材で構成された本体部を備え、
前記レーザー照射部は、前記レーザー光線の照射方向を調整することができるように、前記本体部に取り付けられている、
請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項6】
前記無人飛行体の全体を取り囲むように設けられている複数の第3受光体を更に備え、
前記制御部は、前記副レーザー光線が、各前記第3受光体のいずれかで受光された場合、前記無人飛行体が前記誘導経路から外れたことをあらわす通知を行う、請求項2に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人飛行体を用いて検査対象機器を検査する検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無人飛行体を用いて、高所に設けられている火災感知器、ガス感知器などの感知器を、検査対象機器として検査することが行われてきている。
【0003】
飛行の妨げとなる障害物がある中で無人飛行体を操作する場合、熟練した操作技術が必要になることがある。
【0004】
このことから、検査対象の感知器まで無人飛行体を誘導するシステムが望まれている。
【0005】
無人飛行体を誘導するシステムとして、以下の配送システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る配送システムにおいて、レーザー照射装置が、配送先となる目的地点側に設けられている。一方、レーザー照射装置からのレーザー光線を受光するレーザーレシーバが、無人飛行体側に設けられている。この構成により、無人飛行体は、目的地点側から照射されるレーザー光線を受光することができ、受光状態を監視しながら当該目的地点まで飛行することができる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-52683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のシステムを上記の感知器の検査に適用する場合、感知器側に、レーザー光線を照射する装置を組み込む必要がある。しかしながら、レーザー照射装置を組み込んだ感知器を新たに製造したり、既に設置されている感知器にレーザー照射装置を組み込んだりするのは、費用面及び作業の手間を考慮すると、現実的ではない。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、無人飛行体を用いる検査において、無人飛行体を操作する作業者を支援することができる検査システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る検査システムは、検査対象機器の検査を行うための検査器が搭載された無人飛行体と、無人飛行体が検査対象機器まで直線経路で到達するような誘導経路を生成する誘導部と、を有し、誘導部は、検査対象機器に向けて可視領域のレーザー光線を照射するレーザー照射部を備え、無人飛行体は、レーザー照射部からのレーザー光線を受光可能な位置に設けられている第1受光体と、第1受光体の周りを囲むように設けられている複数の第2受光体と、レーザー光線が、各第2受光体のいずれかで受光された場合、受光した当該第2受光体と第1受光体との位置関係に基づいて、第1受光体でレーザー光線が受光されるように、無人飛行体の飛行方向を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、無人飛行体を用いる検査において、無人飛行体を操作する作業者を支援することができる検査システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1における検査システムの構成を示す図である。
図2図1に示す検査システムの構成例を示すブロック図である。
図3図2に示す第1受光体及び第2受光体の配置例を示す図である。
図4図2に示す第1受光体及び第2受光体を碁盤目状に配置した場合の配置例を示す図である。
図5図1に示す本体部の面積と無人飛行体の機体サイズとを対比する上面図である。
図6図1に示す誘導部の設置方法を説明するための状態例を示す図である。
図7図6の状態から誘導部の位置を移動させた場合の状態例を示す図である。
図8図3に示す受光体の配置例における移動方向テーブルを示す図である。
図9図8に示す移動方向テーブルを用いた移動制御の具体例を示す図である。
図10図2に示す無人飛行体の制御部によって行われる飛行制御の方法を例示するフローチャートである。
図11】本開示の実施の形態2における検査システムの構成を示す図である。
図12図11に示す検査システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の検査システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る検査システムは、無人飛行体を用いて、室内高所に設けられている感知器を検査するシステムである。また、本開示に係る検査システムは、レーザー光線を照射して無人飛行体を感知器まで誘導する誘導部を、床面などに設置することを技術的特徴としている。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における検査システムの構成を示した図である。
【0014】
検査システム100は、施設内に設けられている1つまたは複数の感知器4を検査するシステムである。実施の形態1において、検査システム100は、感知器4を近接位置から撮像して外観を目視により確認する外観検査を行うものとする。これ以外にも、検査システム100は、感知器4の付近で試験的な煙を放出することで、感知器4が正しく作動するかの作動検査を行ってもよい。
【0015】
ここで、感知器4は、検査システム100によって検査される検査対象機器であり、室内空間の高所に設けられている火災感知器またはガス感知器などである。図1において、感知器4は、天井に設けられているとするが、天井付近の側壁面に設けられていてもよい。
【0016】
検査システム100は、誘導部1、無人飛行体2、及びリモートコントローラ3を備えて構成されている。
【0017】
誘導部1は、無人飛行体2が感知器4まで直線経路で到達するような誘導経路を生成する。誘導部1は、本体部13及び複数のレーザー照射部10を備える。
【0018】
本体部13は、感知器4の検査を行う際、室内空間の床面に敷設するシート部材である。本体部13は、軽量なプラスチック製もしくはゴム製で構成されている。このため、作業者は、誘導部1を容易に持ち運ぶことができ、床面から容易に取り外したり、他の場所に移設したりすることができる。
【0019】
本体部13には、複数のレーザー照射部10が取り付けられている。各レーザー照射部10は、照射方向を調整することができるように、本体部13に取り付けられている。
【0020】
複数のレーザー照射部10のうち、本体部13の中心に位置する主レーザー照射部101は、検査対象且つ到達目的の対象である感知器4に向けて、可視領域の主レーザー光線L1を照射する。この主レーザー光線L1は、無人飛行体2を感知器4に向けて飛行させるための誘導用の可視光線として機能する。
【0021】
また、複数のレーザー照射部10のうち、主レーザー照射部101以外の副レーザー照射部102は、主レーザー照射部101の周りを囲むように設けられている。各副レーザー照射部102は、それぞれ可視領域の副レーザー光線L2を照射する。
【0022】
副レーザー光線L2は、無人飛行体2の飛行の妨げとなる障害物の存在を確認するための可視光線である。副レーザー光線L2の使用方法については後述する。
【0023】
実施の形態1において、主レーザー照射部101及び各副レーザー照射部102は、全て同じ向きに照射するように制御される。
【0024】
主レーザー照射部101及び各副レーザー照射部102は、同機種のレーザー照射装置が採用されてもよい。または、主レーザー照射部101が照射する主レーザー光線L1を緑色にし、副レーザー照射部102が照射する副レーザー光線L2を赤色にするなど、色の異なるレーザー光線を照射する構成としてもよい。
【0025】
無人飛行体2は、自律的に水平姿勢を保ちながら飛行する飛行体であり、主レーザー光線L1の照射方向に沿うように、感知器4に向けて飛行する。
【0026】
無人飛行体2の下部には、主レーザー光線L1を受光する受光部20が備えられている。受光部20は、後述するように、複数の受光体によって構成されている。
【0027】
無人飛行体2は、飛行の際、いずれの受光体が主レーザー光線L1を受光しているかを監視することにより、主レーザー光線L1から外れないように水平方向の位置を調整する。
【0028】
また、無人飛行体2の側面には、点灯部24が備えられている。点灯部24の用途については後述する。
【0029】
リモートコントローラ3は、作業者が無人飛行体2を遠隔操作するためのコントローラであり、無線通信を介して、無人飛行体2に指令を送る。実施の形態1においては、リモートコントローラ3は、無人飛行体2に対して主に上方向または下方向の飛行制御を行うものとする。
【0030】
また、リモートコントローラ3は、誘導部1の主レーザー照射部101及び各副レーザー照射部102の照射方向を、作業者の所望する向きとなるように遠隔操作することができる。
【0031】
図2は、図1に示す検査システム100の構成例を示すブロック図である。
【0032】
図2において、無人飛行体2は、上記の受光部20及び点灯部24に加え、通信部21、制御部22、撮像部23、記憶部25、及び自律飛行統制部26を備える。
【0033】
通信部21は、リモートコントローラ3との間で無線通信を行う。通信部21は、リモートコントローラ3から飛行動作に関する指令を受信する。また、通信部21は、撮像部23によって撮像された映像を、リモートコントローラ3に送信する。
【0034】
制御部22は、各種の演算処理を行うとともに、無人飛行体2内の各種ハードウェアを制御する。制御部22は、演算処理装置、主記憶装置、各種ハードウェアを制御するためのインターフェイスを含む構成を有している。
【0035】
撮像部23は、感知器4に対して外観検査を行うための検査器であり、具体的には、無人飛行体2の機体前方に搭載されているカメラである。
【0036】
なお、撮像部23は、無人飛行体2の機体上面に設けられた360度カメラであってもよい。このように、機体に360度カメラを設けることにより、無人飛行体2の周囲の映像を同時に取得することができる。
【0037】
記憶部25は、無人飛行体2を飛行させるための制御用パラメータ、後述する移動方向テーブルなどの各種データを記憶する。また、記憶部25は、撮像部23によって撮像された映像データを記録してもよい。
【0038】
自律飛行統制部26は、無人飛行体2が水平姿勢を保ちながら飛行するように制御するモジュールである。自律飛行統制部26は、慣性計測ユニット、制御回路、各回転翼を回転させるための複数のモータを備えている。
【0039】
自律飛行統制部26の制御回路は、加速度、機体の回転角速度、地軸向きの各計測信号を、慣性計測ユニットから取得し、これら各信号に基づいて、各モータの回転速度を制御する。
【0040】
受光部20は、上記のとおり、誘導部1によって照射される主レーザー光線L1を受光する部位であり、第1受光体201と、複数の第2受光体202とによって構成されている。
【0041】
図3は、図2に示す第1受光体201及び複数の第2受光体202の配置例を示す図である。また、図3は、無人飛行体2を下側から視認した場合における、第1受光体201及び複数の第2受光体202の配置例である。
【0042】
第1受光体201は、主レーザー照射部101からの主レーザー光線L1を受光可能なように、無人飛行体2の機体下面の中央に設けられている。各第2受光体202は、第1受光体201の周りを囲むように設けられている。
【0043】
各第2受光体202は、配置されている位置に応じて第2受光体202A~202Hに区別される。実施の形態1において、第2受光体202A~202Hの位置と、無人飛行体2の前後左右との関係は、図3に示すとおりとする。
【0044】
無人飛行体2は、主レーザー光線L1が第1受光体201で受光されているかを監視することにより、主レーザー光線L1に沿って飛行しているか否かを確認することができる。無人飛行体2は、主レーザー光線L1が第1受光体201から外れて第2受光体202A~202Hで受光された場合、第1受光体201で改めて受光されるように、水平方向の位置を調整する。この動作の詳細については、後述する。
【0045】
図4は、図2に示す第1受光体201及び第2受光体202を碁盤目状に配置した場合の配置例を示す図である。図4に示すように、第1受光体201及び第2受光体202を、隙間なく配置してもよい。また、図4の例のように、複数の第1受光体201を有する構成としてもよい。
【0046】
図4の例においては、隣接する複数の受光体で主レーザー光線L1を同時に受光することが考えられる。この場合、制御部22は、各受光体の受光強度を相互に比較し、最も強く受光した受光体を、主レーザー光線L1を受光した受光体として特定する。
【0047】
図2の説明に戻り、点灯部24は、主レーザー光線L1が第1受光体201及び複数の第2受光体202のいずれで受光されているのかを、視覚的に外部に知らせるランプである。点灯部24は、例えば、第1受光体201が主レーザー光線L1を受光している場合は緑色に点灯し、第2受光体202が主レーザー光線L1を受光している場合は赤色に点灯する。また、第1受光体201及び第2受光体202のいずれも主レーザー光線L1を受光していない場合、点灯部24は点灯しないものとする。
【0048】
誘導部1は、上記のレーザー照射部10、本体部13に加え、通信部11及び制御部12を備える。
【0049】
通信部11は、リモートコントローラ3との間で無線通信を行う。通信部11は、リモートコントローラ3から、レーザー照射部10の照射方向に関する指令を受信する。
【0050】
制御部12は、通信部11によって受信された指令に従い、レーザー照射部10の照射方向を調整する。
【0051】
図5は、図1に示す本体部13の面積と無人飛行体2の機体サイズとを対比する上面図である。
【0052】
図5においては、本体部13が敷設される領域を破線で示し、無人飛行体2の機体を実線で示している。
【0053】
また、図5に示されている破線領域は、複数の副レーザー照射部102が同一円周上に配置されている場合の領域として規定される。すなわち、破線領域は、副レーザー照射部102によって囲まれた領域を示すものあり、加えて、無人飛行体2が飛行するにあたって確保すべき領域を示すものでもある。このため、破線領域の面積は、図5に示すように、無人飛行体2の機体サイズより広く設けられている。
【0054】
上記の図5の構成を踏まえ、感知器4の検査を実施する前段階で行われる、誘導部1及び無人飛行体2の設置方法について説明する。
【0055】
図6は、図1に示す誘導部1の設置方法を説明するための状態例を示す図である。
【0056】
まず、作業者は、作業上都合のよい位置に誘導部1を設置する。図6において、作業者は、誘導部1を感知器4の真下の床面に設置する。
【0057】
そして、作業者は、主レーザー光線L1が検査対象である感知器4を照射するように、リモートコントローラ3を用いて主レーザー照射部101の向きを調整する。
【0058】
なお、上記のとおり、主レーザー光線L1は可視領域の光線である。このため、作業者は、主レーザー光線L1の照射点を目視により追跡しながら、照射点が感知器4に合うようにリモートコントローラ3を操作することができる。
【0059】
また、この主レーザー照射部101の動きに連動して、副レーザー照射部102も主レーザー照射部101の向きと同じ方向を向くように動作する。
【0060】
図6の例の場合、主レーザー光線L1の照射点を感知器4に合わせると、障害物Dにより、1つの副レーザー光線L2が遮られてしまう。すなわち、図6の例の場合、無人飛行体2の飛行の妨げとなる障害物Dが存在するため、このまま無人飛行体2を飛行させると、無人飛行体2が障害物Dと接触するおそれがある。
【0061】
図7は、図6の状態から誘導部1の位置を移動させた場合の状態例を示す図である。
【0062】
作業者は、図7の場所に誘導部1を移設した後、改めて、リモートコントローラ3を用いて、主レーザー光線L1が感知器4に向けて照射されるように、主レーザー照射部101の向きを調整する。
【0063】
この主レーザー照射部101の動きに連動して、副レーザー照射部102も、主レーザー照射部101と同じ方向を向くように動作する。
【0064】
図7の例においては、副レーザー光線L2が障害物Dによって遮られないため、作業者は、飛行経路が確保できたことを確認することができる。
【0065】
このようにして誘導部1の設置が完了した後、作業者は、引き続き、台座5を本体部13の中心部に設置して、その台座5の上に無人飛行体2を設置する。ここで、作業者は、無人飛行体2の設置の際、主レーザー光線L1が第1受光体201で受光されるように、点灯部24の点灯色を確認しつつ無人飛行体2の位置を調整する。
【0066】
無人飛行体2の設置が完了したあと、作業者は、リモートコントローラ3を操作して、無人飛行体2を上方に飛行させる。
【0067】
主レーザー光線L1は、到達目的となる感知器4を指しているため、無人飛行体2は、主レーザー光線L1の照射方向に沿って飛行することにより、感知器4に到達することができる。
【0068】
無人飛行体2の飛行が主レーザー光線L1から外れた場合、無人飛行体2は、自機の水平方向の位置を調整した上で、感知器4に向けて飛行する。このときの無人飛行体2による制御方法について説明する。
【0069】
図8は、図3に示す受光体の配置例における移動方向テーブルを示す図である。
【0070】
図8に示す移動方向テーブルは、第2受光体202A~202Hと移動方向との対応関係が明示されたテーブルである。無人飛行体2の制御部22は、第2受光体202A~202Hのいずれか一つで主レーザー光線L1が受光された場合に、どの方向に移動すべきかを、移動方向テーブルを参照することで特定することができる。
【0071】
この無人飛行体2の移動方向は、第2受光体202A~202Hと、第1受光体201との位置関係、すなわち、図3に示す位置関係に基づいて、予め決められている。
【0072】
図9は、図8に示す移動方向テーブルを用いた移動制御の具体例を示す図である。
【0073】
図9(A)は、第1受光体201が主レーザー光線L1を受光している状態を示しており、無人飛行体2が主レーザー光線L1に沿って正しく飛行している状態を示している。
【0074】
図9(B)は、第2受光体202Cが主レーザー光線L1を受光している状態を示しており、無人飛行体2が主レーザー光線L1から右方向にずれた状態を示している。この場合、制御部22は、第2受光体202Cに対応する移動方向を、移動方向テーブルから抽出する。
【0075】
そして、制御部22は、図9(C)に示すように、抽出結果に基づいて、左方向に無人飛行体2の機体を移動させる。
【0076】
無人飛行体2の機体が左方向に移動することにより、図9(D)に示すように、主レーザー光線L1が第1受光体201によって再び受光されるようになる。このように正常位置に戻った後、無人飛行体2は、左方向への移動を静止する。
【0077】
ここでは、第2受光体202Cを一例にして説明したが、第2受光体202A~202Hのいずれにおいても、同様の動作となる。
【0078】
このように、主レーザー光線L1が、本来の第1受光体201から外れて第2受光体202A~202Hのいずれかで受光された場合、制御部22は、第1受光体201で受光されるように、無人飛行体2の飛行方向を制御する。この制御により、無人飛行体2は、主レーザー光線L1に従って水平方向を調整しながら、到達目的の感知器4まで飛行することができる。
【0079】
図10は、図2に示す無人飛行体2の制御部22によって行われる飛行制御の方法を例示するフローチャートである。なお、制御部22は、図10のフローチャートを繰り返し実行する。
【0080】
制御部22は、ステップS101において、第1受光体201及び第2受光体202A~202Hの中から、主レーザー光線L1を受光している受光体を特定する。
【0081】
制御部22は、ステップS102において、主レーザー光線L1を受光している受光体が第1受光体201であるか否かを判定する。
【0082】
制御部22は、第1受光体201が主レーザー光線L1を受光していると判定する場合、ステップS103において、水平方向の移動を静止する。これにより、無人飛行体2は、真上に飛行するようになる。その後、制御部22は、図10のフローチャートの処理を終了する。
【0083】
一方、ステップS102において、第2受光体202A~202Hのいずれかが主レーザー光線L1を受光していると判定する場合、制御部22は、図8に示す移動方向テーブルを参照する。そして、制御部22は、ステップS104において、受光している第2受光体202に対応した移動方向を、移動方向テーブルから抽出する。
【0084】
制御部22は、ステップS105において、抽出した移動方向に無人飛行体2が飛行するように制御する。制御部22は、ステップS105の後、図10のフローチャートの処理を終了する。
【0085】
なお、図10に示すフローチャートでは、無人飛行体2は、第1受光体201が受光している間は真上に飛行する。このため、主レーザー光線L1による誘導経路が斜め上方を向いているとすると、真上に移動するにつれて、第1受光体201の位置から主レーザー光線L1が外れていき、第2受光体202が主レーザー光線L1を受光するようになる。
【0086】
そして、第2受光体202が受光した後、無人飛行体2は、第1受光体201が受光するまで水平方向に移動し、次いで第1受光体201が受光するようになったら、真上に飛行する。そして、上記のように、無人飛行体2が真上に移動するにつれて、第1受光体201の位置から主レーザー光線L1が外れていき、第2受光体202が受光するようになる。
【0087】
この移動が繰り返し行われることにより、無人飛行体2は、斜め上方に向かって階段状に飛行する。
【0088】
この階段状の飛行を解消するため、制御部22は、初回時の真上方向への移動量と、その後にはじめて水平方向に移動したときの移動量とを用いて勾配を算出し、以降、この勾配を基準に飛行を制御してもよい。この場合においても、飛行進路が外れて第2受光体202で受光されるようになった場合、制御部22は、移動方向テーブルを参照して、第1受光体201で受光されるように位置を調整する。
【0089】
上記の実施の形態1において、誘導部1の主レーザー照射部101及び各副レーザー照射部102は、リモートコントローラ3からの遠隔操作に応じて照射方向の向きを調整している。これに対し、主レーザー照射部101または各副レーザー照射部102を作業者が直接手で把持して動かすことにより、照射方向の向きを調整する構成であってもよい。
【0090】
このように作業者が直接手で動かす構成においても、主レーザー照射部101と各副レーザー照射部102とが連動して同じ向きになるように、機械的な仕組みが組み込まれているものとする。
【0091】
また、実施の形態1において、誘導部1は、主レーザー照射部101及び各副レーザー照射部102を備える構成としているが、主レーザー照射部101のみを備える構成であってもよい。この場合、作業者の目視により、障害物の有無の判断が行われる。
【0092】
また、実施の形態1においては、シート部材によって構成された本体部13を備えるものとして説明したが、態様はこれに限定されない。例えば、主レーザー照射部101と各副レーザー照射部102とを、フレーム、ワイヤーなどで連結させた構成であってもよい。
【0093】
また、主レーザー照射部101からそれぞれ等距離になるように、各副レーザー照射部102を配置できれば、本体部13の無い構成であってもよい。また、上記のように、誘導部1を主レーザー照射部101のみの構成とする場合においても、本体部13は不要になる。
【0094】
実施の形態1のような検査システム100の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0095】
検査システム100は、検査対象機器の検査を行うための撮像部23が搭載された無人飛行体2と、無人飛行体2が検査対象機器まで直線経路で到達するような誘導経路を生成する誘導部1とを有する。
【0096】
誘導部1は、検査対象機器に向けて可視領域のレーザー光線を照射するレーザー照射部10を備える。
【0097】
無人飛行体2は、レーザー照射部10からのレーザー光線を受光可能な位置に設けられている第1受光体201と、第1受光体201の周りを囲むように設けられている複数の第2受光体202とを備える。
【0098】
また、無人飛行体2は、制御部22を備える。制御部22は、レーザー光線が各第2受光体202のいずれかで受光された場合、受光した当該第2受光体202と第1受光体201との位置関係に基づいて、第1受光体201でレーザー光線が受光されるように、無人飛行体2の飛行方向を制御する。
【0099】
このため、無人飛行体2は、自律的にレーザー光線に沿って飛行することができ、レーザー光線から外れた場合は、自ら正常位置に戻すことができる。このような自律的な修正を行うことができるため、無人飛行体2を用いる検査において、無人飛行体2を操作する作業者を支援することができる。
【0100】
また、レーザー照射部10は、主レーザー光線L1を照射する1つの主レーザー照射部101と、主レーザー照射部101の周りを囲むように設けられる複数の副レーザー光線L2とによって構成されている。複数の副レーザー照射部102は、無人飛行体2の飛行の妨げとなる障害物Dの存在を確認するための副レーザー光線L2を、主レーザー光線L1の周囲で照射する。
【0101】
このため、検査対象機器まで直線経路で到達するような誘導経路が確保されているかを、事前に確認することができる。
【0102】
また、検査対象機器は、室内空間の高所に設けられている感知器4である。このため、確認のしづらい高所に設けられている感知器4の検査を支援することができる。
【0103】
また、誘導部1は、室内空間の床面に取り外し可能且つ移設可能に設置することができるシート部材で構成された本体部13を備える。レーザー照射部10は、レーザー光線の照射方向を調整することができるように、本体部13に取り付けられている。
【0104】
このため、任意の場所に誘導部1を設置させることができる。また、レーザー照射部10の照射方向を調整することができるため、任意の場所に誘導部1を設置させても、レーザー照射部10は、検査対象機器に向けてレーザー光線を照射することができる。
【0105】
実施の形態2.
実施の形態2では、無人飛行体2と感知器4との間の遠近距離に基づいて、無人飛行体2の移動制御を行う構成を説明する。
【0106】
図11は、本開示の実施の形態2における検査システム100の構成を示す図である。また、図12は、図11に示す検査システム100の構成例を示すブロック図である。
【0107】
実施の形態2において、誘導部1は、測距センサ15を更に備える。測距センサ15は、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)であり、対象物までの距離を計測する。なお、LiDAR以外にも、赤外線、音波などを用いて距離を計測するセンサが採用されてもよい。
【0108】
測距センサ15は、主レーザー照射部101に隣接するように配置される。また、測距センサ15は、リモートコントローラ3からの指令に従い、主レーザー照射部101の動きとともに連動して、主レーザー光線L1の照射方向と同じ方向に、測距用の照射光L3を照射する。
【0109】
また、実施の形態2において、リモートコントローラ3には、図12に示すように遠近距離制御部31が備えられている。
【0110】
遠近距離制御部31は、無人飛行体2と感知器4との間の遠近距離に基づいて、無人飛行体2の飛行を制御する。
【0111】
この測距センサ15及び遠近距離制御部31を設けたこと以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0112】
次に、測距センサ15を用いた無人飛行体2の飛行制御方法について説明する。
【0113】
実施の形態1においては、図6及び図7を用いて説明したとおり、誘導部1を設置する際、作業者は、感知器4に向けて主レーザー光線L1が照射されるように、主レーザー照射部101の向きを調整する。実施の形態2においては、このときに、測距センサ15の照射方向も、主レーザー照射部101の動きに連動して、感知器4を向くように調整される。
【0114】
また、このとき、測距センサ15は、当該測距センサ15の位置から感知器4の位置までの距離を、想定到達距離として予め計測する。通信部11は、測距センサ15によって計測された想定到達距離を、リモートコントローラ3に送信する。
【0115】
リモートコントローラ3内の遠近距離制御部31は、送信された想定到達距離を保持する。
【0116】
その後、作業者は、図7を用いて説明したとおり、台座5を本体部13の中心部に設置し、その台座5の上に無人飛行体2を設置して、無人飛行体2を飛行させる。
【0117】
無人飛行体2は、主レーザー光線L1に沿って飛行する。この無人飛行体2の飛行中、測距センサ15は、当該測距センサ15の位置から無人飛行体2までの距離を、随時計測し続け、リモートコントローラ3に計測距離を送信する。
【0118】
リモートコントローラ3内の遠近距離制御部31は、想定到達距離と計測距離との差分を算出することにより、無人飛行体2と感知器4との間の遠近距離を求める。そして、遠近距離制御部31は、この遠近距離が閾値に達する程度にまで、無人飛行体2が感知器4に近づいた場合、飛行停止指令を、無人飛行体2に送信する。
【0119】
無人飛行体2が感知器4付近で停止した後、作業者がリモートコントローラ3を操作して微調整を行うことにより、無人飛行体2は、感知器4付近の好適な位置まで移動することがきる。
【0120】
なお、実施の形態2においては、リモートコントローラ3が遠近距離制御部31を備えるものとして説明したが、無人飛行体2が遠近距離制御部31を備え、自らの飛行制御を行うようにしてもよい。この場合、無人飛行体2と誘導部1とは、直接無線通信を行うことができるようにする。
【0121】
もしくは、誘導部1が遠近距離制御部31を備え、当該誘導部1が無人飛行体2に対して遠隔制御を行う構成であってもよい。この場合においても、無人飛行体2と誘導部1とは、直接無線通信を行うことができるようにする。
【0122】
また、ここでは、遠近距離が閾値に達した場合に無人飛行体2を停止させるものとしたが、制御の方法はこれに限定されない。例えば、無人飛行体2が感知器4に近づくにつれ、無人飛行体2の飛行速度を徐々に減速させるなどとしてもよい。
【0123】
このような実施の形態2における検査システム100の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0124】
検査システム100は、無人飛行体2と検査対象機器との間の距離である遠近距離に基づいて、無人飛行体2の飛行を制御する遠近距離制御部31を更に備える。また、誘導部1は、レーザー光線の照射方向と同じ方向を照射する測距センサ15を更に備える。
【0125】
測距センサ15は、当該測距センサ15から検査対象機器までの距離を、想定到達距離として予め計測する。
【0126】
遠近距離制御部31は、無人飛行体2が検査対象機器に向かって飛行しているときに測距センサ15によって計測される計測距離と、想定到達距離とに基づいて、遠近距離を算出する。そして、遠近距離制御部31は、遠近距離に基づいて、無人飛行体2の飛行を制御する。
【0127】
このため、無人飛行体2が検査対象機器に近づく際の当該無人飛行体2の飛行動作を制御することができる。この結果、無人飛行体2が、感知器4に衝突してしまうことを未然に防ぐことが可能となる。
【0128】
すなわち、実施の形態2においては、第2受光体202による前後左右の自立的な修正に加え、測距センサ15および遠近距離制御部31による上下方向の接近制御を行うことができる。このため、作業者の誤操作による無人飛行体2と感知器4との衝突を、未然に防ぐことができる。
【0129】
実施の形態3.
実施の形態3においては、無人飛行体2の飛行が、主レーザー光線L1によって示される誘導経路から大幅に外れた場合、この旨を作業者に通知する態様について説明する。
【0130】
実施の形態1及び2においては、無人飛行体2は、機体下面の中央に第1受光体201を備え、第1受光体201の周りを囲むように、各第2受光体202を備えている。実施の形態3においては、複数の受光体をさらに用意し、各回転翼の付近など、無人飛行体2の全体を取り囲む位置に、これらを設ける。このように追加した受光体を、ここでは第3受光体と称する。
【0131】
また、実施の形態3において、無人飛行体2の制御部22は、第3受光体のうちの少なくとも1つが、副レーザー照射部102から照射される副レーザー光線L2を受光した場合、誘導経路から大幅に外れたとして、利用者に通知する。
【0132】
例えば、制御部22は、第3受光体が副レーザー光線L2を受光した場合、点灯部24を赤色且つ高速に点滅させる。また、無人飛行体2は、通信部21を介して、リモートコントローラ3にこの旨を示すメッセージを送信する。リモートコントローラ3は、無人飛行体2からのメッセージを受信した場合、リモートコントローラ3の機体に備えられている点灯部を赤色且つ高速に点滅させる。
【0133】
このように、実施の形態3においては、無人飛行体2の全体を取り囲むように設けられている複数の第3受光体を更に備える。そして、制御部22は、副レーザー光線L2が、各第3受光体のいずれかで受光された場合、無人飛行体2が誘導経路から外れたことをあらわす通知を行う。
【0134】
このため、利用者は、例えば手動により無人飛行体2の進行方向の修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0135】
1 誘導部、2 無人飛行体、3 リモートコントローラ、4 感知器(検査対象機器)、10 レーザー照射部、13 本体部、15 測距センサ、22 制御部、23 撮像部(検査器)、31 遠近距離制御部、100 検査システム、101 主レーザー照射部、102 副レーザー照射部、201 第1受光体、202、202A~202H 第2受光体、D 障害物、L1 主レーザー光線、L2 副レーザー光線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12