(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167636
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/58 20100101AFI20241127BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L33/58
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083846
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田辺 麻衣子
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA14
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CB03
5F142CD02
5F142CD18
5F142CD44
5F142CD47
5F142CE06
5F142CE16
5F142CG05
5F142CG24
5F142CG43
5F142DA02
5F142DA14
5F142DA73
5F142DB12
5F142DB16
5F142DB18
5F142DB24
5F142FA16
5F142FA46
5F142FA48
5F142HA03
(57)【要約】
【課題】光の損失を低減させかつ出射光の狭角化を達成可能な発光装置を提供する。
【解決手段】
本発明の発光装置は、直方体の形状を有し、下面にカソード並びにアノードからなる一対の素子電極が形成された素子電極面及び前記素子電極面に対向する上面に光出射面を有する発光素子と、前記発光素子の前記光出射面上に配されかつ、前記光出射面と対向する面と反対の面に互いに離隔した複数の光出射領域を有する透光性部材と、各々が上方から見て前記複数の光出射領域の各々と重なるように形成されかつ上方に凸の複数の凸レンズ部を有する光学構造体と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体の形状を有し、下面にカソード並びにアノードからなる一対の素子電極が形成された素子電極面及び前記素子電極面に対向する上面に光出射面を有する発光素子と、
前記発光素子の前記光出射面上に配されかつ、前記光出射面と対向する面と反対の面に互いに離隔した複数の光出射領域を有する透光性部材と、
各々が上方から見て前記複数の光出射領域の各々と重なるように形成されかつ上方に凸の複数の凸レンズ部を有する光学構造体と、を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記集光部材は、前記発光素子の前記光出射面を覆う矩形の上面形状を有する基部及び各々が前記基部の上面から上方に延在しかつ上方に向けて窄んでいる形状を有する複数の錐台部を有する光誘導部からなり、前記複数の錐台部の各々の上面が前記光出射領域であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基部の上面の前記光誘導部が形成されている領域を格子状の等分線で等分割した矩形領域が、それぞれ前記複数の錐台部の各々の底面であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光学構造体の前記複数のレンズ部は、楕円半球又は放物面半球の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記光学構造体の前記複数のレンズ部の各々の光軸上に前記複数のレンズ部の各々に対応する前記複数の光出射領域の各々の中心が配されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子の前記光出射面と前記集光部材の前記光出射面に対向する面との間に波長変換部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記波長変換部材は、蛍光体を含有したセラミック板又は樹脂層であることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子の側面、前記複数の錐台部の各々の側面を被覆する光反射性の被覆部材を有することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項9】
前記複数の錐台部の各々の側面を被覆する光学多層膜を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光素子の前記一対の素子電極とそれぞれ電気的に接合する一対の基板電極を有するシリコンからなる装置基板を有し、
前記装置基板の内部において、前記一対の基板電極は、前記発光素子と逆極性になるように形成されたp型不純物拡散領域及びp型不純物拡散領域を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の発光素子を光源として用いた発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板上に実装された発光素子と、基板及び発光素子を覆いかつ発光素子領域に形成されたレンズ部を有する樹脂層と、樹脂層上のレンズ部外周を囲む反射板を有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等の表示装置の光源としてLEDを光源とした発光装置を用いる場合、HUD内においては、当該発光装置から出射した光を偏向させる光学系が内蔵される。この場合、発光装置から出射される光は、後段の光学系を小型化させるために狭い角度範囲で出射されるのが好ましい。
【0006】
しかし、特許文献1のような発光装置を光源として用いる場合、発光素子から出射した光が基板を覆う樹脂層に迷光として入射し、光の損失が大きくなる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、光の損失を低減させかつ出射光の狭角化を達成可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光装置は、直方体の形状を有し、下面にカソード並びにアノードからなる一対の素子電極が形成された素子電極面及び前記素子電極面に対向する上面に光出射面を有する発光素子と、前記発光素子の前記光出射面上に配されかつ、前記光出射面と対向する面と反対の面に互いに離隔した複数の光出射領域を有する透光性部材と、各々が上方から見て前記複数の光出射領域の各々と重なるように形成されかつ上方に凸の複数の凸レンズ部を有する光学構造体と、を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係る発光装置の上面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る発光装置の断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る発光装置の集光部材の上面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る発光装置の集光部材及び光学構造体の断面拡大図である。
【
図5】本発明の比較例に係る発光装置の断面図である。
【
図6】本発明の比較例に係る発光装置の出射光の配光特性を示す図である。
【
図7】本発明の実施例に係る発光装置の出射光の配光特性を示す図である。
【
図8】本発明の変形例1に係る集光部材及び光学構造体の断面拡大図である。
【
図9】本発明の変形例2に係る発光装置の断面図である。
【
図10】本発明の変形例3に係る発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0011】
図1及び
図2を参照しつつ、実施例1に係る発光装置100の構成について説明する。
図1は、実施例1に係る発光装置1の上面図である。また、
図2は、
図1に示した発光装置1のA-A線に沿った断面図である。また、
図3は、発光装置1の集光部材70の上面図である。また、
図4は、発光装置1の集光部材70並びに光学構造体80の断面拡大図、及び光学構造体80からの出射光を示す図である。
【0012】
(発光装置)
発光装置1は、キャビティを有する基板10と、基板10のキャビティ内に配された発光素子20と、発光素子20の上面上に配された波長変換部材50と、波長変換部材50上に配された集光部材70と、集光部材70上に配された複数のレンズ部81を有する光学構造体80と、を有する。また、発光装置1は、基板10のキャビティ内に充填され、発光素子20の側面から波長変換部材50の側面を経て、少なくとも集光部材70の側面まで被覆する被覆部材90を備える。
【0013】
(基板)
基板10は、上面形状が矩形の窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなる絶縁性の基板である。基板10は、平板部及び平板部上面の外縁に沿って上方に延伸する壁部からなるキャビティが形成されている。
【0014】
なお、基板10は、上方に開口された凹部を有するように一体的に成形されてもよいし、平板及び当該平板の外縁に沿った枠形状を有する枠体を接合するように形成されてもよい。また、基板10は、セラミック以外の樹脂材等の絶縁性材料を用いてもよい。
【0015】
また、基板10は、
図2に示すように、キャビティ底面に基板10の外部から発光素子20に給電可能な金属からなる一対の基板電極12、13を備える。例えば、配線電極は、貫通電極等を介して基板10の外部まで導通するように形成されている。
【0016】
なお、本実施例においては、基板10の壁部内面の上端部に段差部STが設けられている。段差部STは、被覆部材90の光学構造体80の上面への這い上がりを防止する。
【0017】
また、段差部STより上方に延伸する部分は、光学構造体80のレンズ部81の表面を保護するレンズガード部LGである。
【0018】
(発光素子)
発光素子20は、直方体状の形状を有し、青色の光を出射する窒化ガリウム(GaN)系の半導体構造層を有する発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。発光素子20は、
図2に示すように、側面が基板10の凹部の内側面から離隔するように基板10のキャビティの底面に配されている。
【0019】
発光素子20は、透光性の成長基板21の下面に半導体構造層(図示せず)とアノード電極22及びカソード電極23からなる一対の素子電極を備え、成長基板の上面から光を出射するように構成されたフリップチップ接続態様のLED素子である。すなわち、発光素子20の上面は、光を出射する光出射面である。
【0020】
発光素子20のアノード電極22及びカソード電極23は、それぞれ基板10のキャビティ底面に形成された基板電極12、13に金錫合金(Au-Sn)等の素子接合部材30を介して電気的に接続されている。すなわち、発光素子20は、基板10にフリップチップの態様で搭載されており、基板10に形成された配線電極を介して外部から電源供給可能に構成されている通電可能となっている。
【0021】
(波長変換部材)
波長変換部材50は、シリコーン樹脂等の透光性の接着剤40を介して発光素子20の光出射面を覆うように配されている。
【0022】
本実施例においては、波長変換部材50として、セリウム(Ce)を賦活剤としたイットリウムアルミニウムガーネット(Yttrium Aluminum Garnet、YAG:Ce)蛍光体粒子を含有するアルミナ(Al2O3)からなるセラミック材を用いた。波長変換部材50は、光入射面である底面から入射する発光素子20からの青色光の一部を黄色光に変換し、上面から白色光を出射する。
【0023】
なお、波長変換部材50には、ユーロピウム(Eu)を賦活剤としたβサイアロン(β-SiAlON:Eu)蛍光体粒子を含有するガラス材、又はマンガン(Mn)を賦活剤としたケイフッ化カリウム(KSF、K2SiF6:Mn)蛍光体粒子を含有するフッ化カルシウム(CaF2)材などを用いてもよい。
【0024】
β-SiAlON:Euは青色光を緑色光に変換し、K2SiF6:Mnは青色光を赤色光に変換する。それぞれの蛍光体の含有量は、用途に応じて発光素子20の青色光の変換率を任意に設定するように決定すればよい。また、波長変換部材50を複数枚重ねて配置することもできる。なお、発光素子20から出射する光のみを用いる場合には、波長変換部材50を省略することができる。またダミーガラス等を用いることもできる。
【0025】
また、本実施例においては、板状の波長変換部材50を用いて発光素子20の出射光の波長変換を行う場合について説明した。しかし、接着材40、波長変換部材50及び後述の接着剤60に代えて、上記蛍光体粒子を含有した樹脂材料を用いてもよい。この場合、当該蛍光体粒子を含有した樹脂材料によって発光素子20の光出射面と集光部材70の底面を接着させる。
【0026】
(集光部材)
集光部材70は、平坦な底面を有する基部71及び基部71の上面から上方に延伸する複数の錐台部72が一体的に形成された透光性部材である。集光部材70は、下面から入った光を光出射領域72Sに誘導する光誘導部材である。
【0027】
本実施例においては、集光部材70にシリコーン樹脂を用いた。
【0028】
基部71の底面は、シリコーン樹脂等の透光性の接着剤60を介して波長変換部材50の上面を覆うように配されている。すなわち、基部71の底面は、集光部材70の光入射面である。
【0029】
錐台部72は、基部71の上面に配列されている。本実施例においては、錐台部72は、基部71の上面上に3行3列で配列されている。
【0030】
錐台部72は、基部71の光入射面から入射した光を後述する光反射性の被覆部材90によって導光し、上面である光出射領域72Sから光を出射する。すなわち、集光部材70において、錐台部72の各々が光誘導部となっている。
【0031】
また、錐台部72の側面は、底面の外縁から光出射領域72Sの外縁に至るまで、外方に向けて凹状となる円弧状の断面形状を有している。
【0032】
また、
図3に示すように、本実施例において、光出射領域72Sは、円形の上面形状を有している。基部71の上面には、格子状の等分線で等分割した矩形領域ARが画定されており、当該矩形領域AR上にそれぞれ錐台部72が形成されている。また、錐台部72の各々は、矩形領域ARをそれぞれ底面として形成されている。すなわち、錐台部72は、矩形の矩形領域ARをそれぞれ底面とし、円形の光出射領域72Sを上面としている。従って、集光部材70の基部71の上面上に平坦面は存在しない。
【0033】
また、上面視において、錐台部72の底面(矩形領域AR)の中心点と光出射領域72Sの中心点が一致するように形成されている。
【0034】
(光学構造体)
光学構造体80は、
図1及び
図2に示すように、集光部材70の光出射領域72Sの直上に光学的に結合された複数のレンズ部81及び当該複数のレンズ部81を支持する支持部82が一体的に形成されている。本実施例においては、光学構造体80に射出成型等で形成されたシリコーン樹脂を用いた。また、光学構造体80は、例えば、シリコーン樹脂等の透光性の接着剤(図示せず)を用いて光出射領域72S上に接着されている。
【0035】
図4に示すように、本実施例において、複数のレンズ部81の各々は、図中上下方向が長軸となる楕円半球の形状の凸レンズとした。また、支持部82は、複数のレンズ部81の各々の側面の下端部同士を連結するように形成されている。すなわち、レンズ部81の中点Oは、光学構造体80の底面に存在する。
【0036】
また、レンズ部81の中点O(レンズ部81の底面の中心点)と集光部材70の光出射領域72Sの中心点とは、互いに一致する位置に配されている。言い換えれば、光学構造体80の複数のレンズ部81の各々の光軸上に対応する複数の光出射領域72Sの各々の中心が配されている。
【0037】
これにより、
図4に示すように、レンズ部81の中点Oから入射した光LM1は、発光装置1に対して略垂直方向に出射される。また、集光部材70の光出射領域72Sの外端からレンズ部81に入射した光LM2は、やや斜方出射となるが、集光作用が得られる。
【0038】
なお、集光部材70の光出射領域72Sの直径φTは、レンズ部81の底面の直径φLに対して、(1/4)φL<φT<(1/2)φLとなるように形成されることが好ましい。
【0039】
具体的には、集光部材70の光出射領域72Sの外端からレンズ部81に入射した光LM2の斜方出射角を抑制するために、光出射領域72Sの直径φTは、レンズ部81の底面の直径φLの1/2未満であることが好ましい。
【0040】
また、錐台部72内での光の損失低減のため、光出射領域72Sの直径φTは、レンズ部81の底面の直径φLの1/4を超過することが好ましい。
【0041】
また、本実施例においては、光学構造体80の隣り合うレンズ部81の各々が重なり合わない場合について説明したが、隣り合うレンズ部81同士が一部重なり合うように形成されていてもよい。この場合、1のレンズ部81に入射した光が重なり部を介して隣接する他のレンズ部81内に入射する、又は1のレンズ部81から出射した光が隣接する他のレンズ部81内に再入射することのない範囲で重なり部を設けることが好ましい。
【0042】
また、本実施例においては、光学構造体80のレンズ部81が楕円半球である場合について説明したが、レンズ部81は放物面半球形状であってもよい。レンズ部81の形状は、発光装置1の出射光の配光特性、例えば、半値角等によって任意に設計可能である。
【0043】
なお、本実施例において、集光部材70及び光学構造体80には、その他の材料として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いることもできる。また、熱可塑性のアモルファス系フッ素樹脂、熱軟化性のガラス系材料等も用いることができる。熱硬化性樹脂は金型を用いた射出成形等で形成でき、熱可塑性樹脂及びガラス系材料は金型を用いたプレス成形等で形成できる。フッ素樹脂を用いた場合には、集光部材70の表面と光学構造体80のレンズ部81及び当該レンズ部81に続く支持部82の上面を除く表面とをプラズマ処理して接着剤60及び被覆部材90が接着できるように表面改質する。
【0044】
また、光学構造体80は、例えば、透光性の接着剤(図示せず)を用いて光出射領域72S上に接着されている。集光部材70と光学構造体80とが同種材料で形成されている場合、集光部材70と光学構造体80と同種の樹脂を母材とした接着剤を用いることが好ましい。集光部材70と光学構造体80とが異種材料で形成されている場合、集光部材70と光学構造体80と屈折率が略同等(又は近しい)の樹脂を母材とした接着剤を用いることが好ましい。
【0045】
また、集光部材70及び光学構造体80が双方とも熱可塑性樹脂、又はガラス系材料である場合、摩擦溶融接合、熱圧着接合又はレーザ溶着等の直接接合をすることができる。
【0046】
特に、直接接合を行うことにより、光出射領域72Sと光学構造体80との間に光学的な界面を消失させることができ、界面による光損失を低減することが可能となる。
【0047】
(被覆部材)
被覆部材90は、基板10のキャビティ内に充填された光反射性の被覆部材である。本実施例においては、酸化チタン(TiO2)粒子等の光散乱性粒子を含有するシリコーン樹脂等の透光性の媒質樹脂材料を用いた。光散乱性粒子としては、アルミナ、ジルコニア、シリカの何れか2以上を含む複合セラミック粒子を用いることができる。複合セラミック粒子は粒子自体が高い反射特性を有するので、媒質樹脂材料の屈折率に左右されないので光散乱性粒子として好ましい。
【0048】
被覆部材90は、発光素子20の底面の露出面及び側面から集光部材70の錐台部72の側面に至る領域を被覆している。これにより、発光素子20、波長変換部材50、集光部材70の側面から出射する光を内方へ反射させる。
【0049】
(比較例)
図5は、本発明の比較例に係る発光装置1Aの断面を示す図である。
【0050】
比較例の発光装置1Aは、基板10、発光素子20、波長変換部材50及びそれぞれの接合部材30、40に実施例の発光装置1と同一のものを用いている。
【0051】
比較例の発光装置1Aは、実施例の発光装置1に対して、集光部材70及び光学構造体80が設けられていないものである。また、比較例の発光装置1Aにおいて、基板10の壁部の高さは波長変換部材50の上面と略同等の高さとしている。
【0052】
(比較例と本実施例との配光特性の比較)
図6は、比較例に係る発光装置1Aの出射光の配光特性図を示す。また、
図7は、実施例に係る発光装置1の出射光の配光特性図を示す。
【0053】
図6及び
図7における垂直線は、発光装置1、1Aの光軸方向を示している。また、
図6及び
図7における扇状の範囲は、所定の角度の最大光束量を100%とした際の、光軸方向に対して-90°から+90°の範囲における光束量比を示している。
【0054】
図6に示す通り、比較例に係る発光装置1Aの出射光は、ランバシアン配光とほぼ同等の配光特性が得られた。すなわち、比較例に係る発光装置1Aの出射光は、最大光束量の50%以上となる角度範囲、すなわち半値角が約120°であった。
【0055】
図7に示す通り、実施例に係る発光装置1の出射光は、比較例に係る発光装置1Aよりも狭い角度範囲内に光が出射されていることがわかる。具体的には、実施例に係る発光装置1の出射光の半値角は、約54°であった。
【0056】
また、実施例に係る発光装置1の出射光の光軸に対して54°の範囲内の光束量は、比較例に係る発光装置1Aの出射光の光軸に対して54°の範囲内の光束量に対して約10%増加していた。言い換えれば、実施例に係る発光装置1は、半値角54°の範囲において、発光素子20の出射光の損失を抑制させつつ、発光装置1からの出射光を狭角化させることができる。
【0057】
以上より、実施例の発光装置1によれば、錐台部72によって波長変換部材50の上面から出射した光を光出射領域72Sに集光する集光部材70を有し、かつ当該光出射領域72Sから楕円半球形状のレンズ部81を含む光学構造体80を介して発光装置1外部へ光を出射させる。これにより、実施例の発光装置1は、発光素子20から出射した光の損失を低減させつつ、出射光の狭角化が達成可能となる。
【0058】
(変形例1)
図8は、実施例の発光装置1の集光部材70の変形例1である集光部材70Aの断面図である。
【0059】
なお、集光部材70Aを除く他の構成は、実施例の発光装置1と同様であるため、説明を割愛する。
【0060】
実施例の発光装置1においては、集光部材70の側面を光反射性の樹脂材料からなる被覆部材90で被覆し、光出射領域72Sへ光を導光する場合について説明した。
【0061】
変形例の集光部材70Aは、その側面に酸化ケイ素(SiO2)及び酸化アルミニウム(Al2O3)が繰り返し積層された誘電体多層膜REが形成されている。
【0062】
誘電体多層膜REは、光散乱性粒子を含有した被覆部材90に比べ、光の反射率を大きくすることができる。そのため、集光部材70Aの底面から入射した光を光出射領域72Sへと導光する際に、光の損失を低減することができる。これにより、光学構造体80のレンズ部81から出射する光の光束量を増加させることが可能となる。
【0063】
なお、誘電体多層膜REは、集光部材70の底面及び光出射領域72Sをマスクした後、原子層体積法(Atomic Layer Deposition:ALD)によって形成可能である。
【0064】
また、側面に誘電体多層膜REを形成した集光部材70Aを用いる場合、被覆部材90は、基板10のキャビティ底面から少なくとも波長変換部材50の側面の上端まで充填されていればよい。また、実施例の発光装置1と同様に、集光部材70Aの側面をおおうまで充填されていてもよい。
【0065】
(変形例2)
図9は、実施例の発光装置1の変形例2である発光装置2の断面図である。
【0066】
変形例2の発光装置2においては、基板10を用いず、発光素子20のアノード電極22及びカソード電極23を直接外部と電気的に接続させる実装電極とする。すなわち、変形例2の発光装置2は、チップサイズパッケージ型の発光装置である。
【0067】
変形例2の発光装置2は、例えば、ダイシング工程を2回行うことで製造可能である。
【0068】
具体的には、発光素子20がマトリクス状に連続して形成されたウェハ上に、同様に波長変換部材50及び集光部材70がマトリクス状に連続して形成された板状部材を順に接着剤40、60を介して接着した後、第1のダイシングブレードにて第1のダイシング工程を行う。
【0069】
次に、第1のダイシングを行ったウェハ上に、光学構造体80Aがマトリクス状に連続して形成された板状部材を集光部材70上に接着又は接合する。
【0070】
次に、第1のダイシング工程で形成された間隙及び集光部材70の錐台部72間の間隙を充填するように、トランスファーモールド等によって被覆部材90Aを形成する。
【0071】
その後、第1のダイシングブレードよりもブレード幅の小さい第2のダイシングブレードを用いて第2のダイシング工程を行うことにより、変形例2の発光装置2を製造可能である。
【0072】
なお、第1のダイシングブレード及び第2のダイシングブレードのブレード幅は、製造後に発光装置2の側面から漏れ光が生じないようなブレード幅を選定する。
【0073】
(変形例3)
図10は、実施例の発光装置1の変形例3である発光装置3の断面図である。
【0074】
変形例3の発光装置3は、変形例2の発光装置2と同様にチップサイズパッケージ型の発光装置である。変形例3の発光装置3は、平板状の装置基板10A上に発光素子20が接合されている点で変形例2と相違する。
【0075】
装置基板10Aは、例えば、ノンドープシリコン等の絶縁性半導体基板である。装置基板10Aは、外部から発光素子20に給電可能な金属からなる一対の基板電極12、13を備える。また、発光素子20のアノード電極22及びカソード電極23は、それぞれ装置基板10Aに形成された基板電極12A、13Aに金錫合金(Au-Sn)等の素子接合部材30を介して電気的に接続されている。
【0076】
装置基板10A内部の底面の側において、基板電極12Aと接するようにp型不純物拡散領域10Pが形成されている。また、装置基板10A内部の上面の側において、基板電極13Aと接するようにn型不純物拡散領域10Nが形成されている。また、p型不純物拡散領域10Pとn型不純物拡散領域10Nとは、装置基板10A内部で互いに接する(接合する)ように形成されている。
【0077】
すなわち、装置基板10Aの内部において、基板電極12Aと基板電極13Aは、発光素子20と逆極性に接続されたツェナーダイオードZDを介して電気的に接続されている。
【0078】
通常、青色光を出射する窒化ガリウム系の発光素子においては、逆電圧印加保護にためのツェナーダイオードを設けることが好ましい。
【0079】
上記のように、装置基板10A内部にツェナーダイオードZDを形成することにより、チップサイズパッケージ型の発光装置3において、当該発光装置3の外部に別途ツェナーダイオードを設ける必要がなくなる。これにより、例えば、発光装置3の実装密度の向上等の効果が得られる。なお、ツェナーダイオード以外にバリスタ、コンデンサ等を設けることもできる。さらに、発光素子20の発光制御を行うトランジスタ回路を内蔵することもできる。
【0080】
変形例3の発光装置3の製造方法は、基本的には変形例2の発光装置2と同様である。
【0081】
具体的には、装置基板10Aがマトリクス状に連続して形成されたウェハ上に、ダイボンダ等を用いて発光素子20、波長変換部材50及び集光部材70を順にマウントする。
【0082】
次に、光学構造体80Aがマトリクス状に連続して形成された板状部材を集光部材70上に接着又は接合する。
【0083】
次に、装置基板10Aの上面と光学構造体80Aの板状部材の底面の間の間隙を充填するように、光学構造体80Aの一部に設けた孔から硬化前の液状の被覆部材90Aを注入し、その後熱硬化する等によって被覆部材90Aを形成する。
【0084】
その後、ダイシング工程を行い個片化することにより、変形例3の発光装置3を製造可能である。
【0085】
以上のように、記載の実施例は発明の範囲を限定することは意図していない。記載の実施例は、変形例1乃至3のように様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、実施例1の発光装置1の光学構造体部80の周縁部にレンズ体81の高さの枠を設け、当該枠の高さまで被覆部材90が充填された構造とすることができる。また、変形例1において被覆部材90が集光部材70Aの基部71Aの高さまでを覆った構造とすることもできる。このように発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。