(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167639
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電圧監視装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20241127BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20241127BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20241127BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241127BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241127BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241127BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/3835
G01R19/00 M
H02J7/02 H
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083851
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】桑原 唯
【テーマコード(参考)】
2G035
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G035AA04
2G035AB03
2G035AC01
2G035AC14
2G035AD23
2G035AD28
2G035AD45
2G216AA09
2G216AB01
2G216BB16
2G216CB55
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA07
5G503DA08
5G503EA02
5G503EA09
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】複数の電池監視用LSIを使用する場合であっても、複数の電池セルの電圧を精度よく検出して、電圧監視に対する信頼性を担保可能とする。
【解決手段】このバッテリ11の電圧監視装置15は、直列に接続されバッテリ11を構成する複数の電池セル14の電圧を監視するための装置であって、複数の電池セル14のうち所定数の電池セル14a1~14a7からなる第一電池セル群14aに属する電池セル14a1~14a7の電圧を検出する第一電圧検出部17と、複数の電池セル14のうち第一電池セル群14aに属さない所定数の電池セル14b1~14b7からなる第二電池セル群14bに属する電池セル14b1~141b7の電圧を検出する第二電圧検出部18とを備え、第一電池セル群14aに属する所定の電池セルである校正用電池セル14a1の電圧が、第一電圧検出部17と第二電圧検出部18とでそれぞれ検出可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続されバッテリを構成する複数の電池セルの電圧を監視するための装置であって、
前記複数の電池セルのうち所定数の電池セルからなる第一電池セル群に属する電池セルの電圧を検出する第一電圧検出部と、
前記複数の電池セルのうち前記第一電池セル群に属さない所定数の電池セルからなる第二電池セル群に属する電池セルの電圧を検出する第二電圧検出部とを備え、
前記第一電池セル群に属する所定の前記電池セルである校正用電池セルの電圧が、前記第一電圧検出部と前記第二電圧検出部とでそれぞれ検出可能に構成されている、バッテリの電圧監視装置。
【請求項2】
前記電池セルの電圧検出値を校正可能な電圧校正部をさらに備え、
前記電圧校正部は、前記第一電圧検出部で得た前記校正用電池セルの電圧検出値と、前記第二電圧検出部で得た前記校正用電池セルの電圧検出値との差に基づいて、前記何れか一方の電圧検出部で得た電圧検出値を校正する請求項1に記載の電圧監視装置。
【請求項3】
前記電圧校正部は、前記第一及び第二電圧検出部で得た前記校正用電池セルの電圧検出値のうち大きい方の検出値に合わせて、小さい方の検出値を校正する請求項2に記載の電圧監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧監視装置に関し、特にバッテリを構成する二次電池セルの電圧を監視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池とも呼ばれるバッテリの長寿命化、安全性の確保等を目的として、バッテリの状態を管理するBMS(バッテリ管理システム)と呼ばれる機器が用いられている。BMSは、主にバッテリ全体の電圧、電流、温度などを監視すると共に、バッテリを構成する電池セルそれぞれの電圧を監視している。
【0003】
ここで、各電池セルの電圧は、主に電池監視用のLSIによって検出される。例えば特許文献1には、電池監視用の半導体装置である電池監視LSIの複数の端子と、各電池セルの低電位側及び高電位側とをそれぞれ接続することで、各電池セルの電圧を検出可能とする電池監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の電圧監視装置においては、バッテリの充電状態を適切に管理する観点から、バッテリを構成する各電池セルの電圧を、mVオーダー、場合によってはμVオーダーの精度で測定する必要がある。その一方で、電池監視用LSIにより電圧の監視(検出)が可能な電池セルの数は、数個から十数個程度であるため、高出力化などの要望により、バッテリを構成する電池セルの数が多い場合、使用する電池監視用LSIの数を増やす必要が生じる。しかしながら、電池監視用LSIの電圧測定精度には個体差が不可避的に存在するため、例えば複数の電池監視用LSIのうちある一つの電池監視用LSIに内在する電圧値の測定誤差(真実の値と、測定値として表示される値との差)と、他の電池監視用LSIに内在する電圧値の測定誤差とが、無視できない程度に大きく異なる場合が起こり得る。これでは、電圧監視に対する信頼性が損なわれる結果を招きかねない。
【0006】
以上の事情に鑑み、本明細書では、複数の電池監視用LSIを使用する場合であっても、複数の電池セルの電圧を精度よく検出して、電圧監視に対する信頼性を担保可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係る電圧監視装置によって達成される。すなわち、この電圧監視装置は、直列に接続されバッテリを構成する複数の電池セルの電圧を監視するための装置であって、複数の電池セルのうち所定数の電池セルからなる第一電池セル群に属する電池セルの電圧を検出する第一電圧検出部と、複数の電池セルのうち第一電池セル群に属さない所定数の電池セルからなる第二電池セル群に属する電池セルの電圧を検出する第二電圧検出部とを備え、第一電池セル群に属する所定の電池セルである校正用電池セルの電圧が、第一電圧検出部と第二電圧検出部とでそれぞれ検出可能に構成されている点をもって特徴付けられる。
【0008】
なお、ここでいう「第一電池セル群」に属する電池セルの数である「所定数」と、「第二電池セル群」に属する電池セルの数である「所定数」とは同じであっても異なっていてもよい。要は、表現上同じであるが、数の同異を問わない。
【0009】
このように、本発明に係る電圧監視装置では、バッテリを構成する複数の電池セルを二つ又はそれ以上のグループ(電池セル群)に分けた場合に、第一電池セル群に属する電池セルを校正用電池セルとし、この校正用電池セルの電圧を、第一電池セル群に属する電池セルの電圧を検出する第一電圧検出部と第二電池セル群に属する電池セルの電圧を検出する第二電圧検出部とでそれぞれ検出可能とした。このように、二つの電圧検出部で共通の電池セル(校正用電池セル)の電圧をそれぞれ検出可能とすることよって、検出結果に基づき、各電圧検出部の測定性能を相対的に評価することができる。相対的に評価できれば、相対評価に基づいて各電圧検出部で得た一方又は双方の電圧検出値を適正に校正することが可能となる。よって、各電圧検出部の個体差を反映した電圧監視を図ることができ、これにより全ての電池セルの電圧を精度よく監視して、電圧監視に対する信頼性を担保することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る電圧監視装置は、電池セルの電圧検出値を校正可能な電圧校正部をさらに備えてもよい。また、この場合、電圧校正部は、第一電圧検出部で得た校正用電池セルの電圧検出値と、第二電圧検出部で得た校正用電池セルの電圧検出値との差に基づいて、何れか一方の電圧検出部で得た電圧検出値を校正してもよい。
【0011】
このように電圧校正部をさらに設けて、この電圧校正部により、各電圧検出部で得た校正用電池セルの電圧検出値の差に基づいて、何れか一方の電圧検出部で得た電圧検出値を校正することにより、迅速にかつ効果的に電圧検出値を校正することができる。この場合、校正対象ではない側の電圧検出部で得た電圧検出値が基準となるので、例えば三つ以上の電圧検出部を必要とする場合においても、同様の構成で全ての電池セルの電圧検出値を適正にかつ容易に校正することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る電圧監視装置において、電圧校正部は、第一及び第二電圧検出部で得た校正用電池セルの電圧検出値のうち大きい方の検出値に合わせて、小さい方の検出値を校正してもよい。
【0013】
電池セルの本来の電圧監視の目的は、各電池セルの過充電又は過放電を避けることにある。特に、過充電は電池セルの劣化ひいては破損に直結するため、優先的に回避すべき事態である。以上の事情に鑑みた場合、共通の電池セルに対して異なる電圧検出値が得られた場合、大きい方の検出値に合わせて、小さい方の検出値を校正することが望ましい。このように校正すれば、各電圧検出部の個体差を反映して各電池セルの電圧を標準化できると共に、各電池セルの電圧を全体的に大きめに評価することになるため、各電池セルの過充電を回避して、電池セルの劣化ひいては破損を防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る電圧監視装置において、第二電圧検出部と、校正用電池セルとの間に第一切替え回路が配設され、第一切替え回路の切替え動作により、第二電圧検出部と校正用電池セルとの接続状態と切断状態とを切替え可能に構成されてもよい。
【0015】
このように切替え回路を設けることにより、第一電圧検出部による校正用電池セルの電圧検出動作と、第二電圧検出部による校正用電池セルの電圧検出動作を容易に切り替えることができる。よって、両検出部による校正用電池セルの電圧検出動作が被る事態を回避して適正に各電圧検出部による校正用電池セルの電圧検出を適正に実施することが可能となる。
【0016】
また、第一切替え回路が配設される場合、本発明に係る電圧監視装置において、第二電圧検出部と、第二電池セル群に属する所定の電池セルとの間に第二切替え回路が配設され、第一及び第二切替え回路の切替え動作により、第二電圧検出部に対して校正用電池セルが接続され、かつ所定の電池セルが切断された状態と、第二電圧検出部に対して校正用電池セルが切断され、かつ所定の電池セルが接続された状態とを切替え可能に構成されてもよい。
【0017】
このように切替え回路を設けることによって、第二電圧検出部の電圧検出用の端子を、第二電池セル群に属する電池セルの電圧検出と、第一電池セル群に属する校正用電池セルの電圧検出の双方に使用することができる。よって、第二電圧検出部に設けられた電圧検出用端子を効率よく使用して、極力多くの電池セルの電圧を検出しつつも校正用電池セルの電圧を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る電圧監視装置によれば、複数の電池監視用LSIを使用する場合であっても、バッテリを構成する複数の電池セルの電圧を精度よく検出して、電圧監視に対する信頼性を担保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電圧監視装置を備えたバッテリシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す電圧監視装置の構成を概念的に説明するための図である。
【
図3】
図1に示す電圧監視装置の各電圧検出部と、バッテリの各電池セルとの接続状態を示す図で、校正用電池セルの電圧を第一電圧検出部で検出可能に接続した状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す電圧監視装置の各電圧検出部と、バッテリの各電池セルとの接続状態を示す図で、校正用電池セルの電圧を第二電圧検出部で検出可能に接続した状態を示す図である。
【
図5】
図1に示す電圧監視装置を用いた電圧検出値の校正方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る電圧監視装置、及びこの電圧監視装置を用いた電圧検出値の校正方法の内容を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリシステム10の全体構成を示している。このバッテリシステム10は、バッテリ11と、バッテリ11の状態を管理するバッテリ管理部12と、外部電源13とを具備する。本実施形態では、モータを動力源とする車両に本発明に係るバッテリシステムを適用する場合を例にとって説明する。なお、ここでいうモータを動力源とする車両には、内燃機関を持たずモータのみを動力源としかつ充放電可能なバッテリ(本実施形態でいえばバッテリ11が相当する)によりモータへの電力供給を行う電気自動車はもちろん、内燃機関とモータをともに動力源としかつ充放電可能なバッテリによりモータへの電力供給を行うハイブリッド車が含まれる。
【0022】
バッテリ11は、複数の電池セル14を直列に接続してなるもので、例えばリチウムイオンバッテリなど車載用に好適な二次電池用の電池セルが適用される。ここで、各電池セル14の起電力(容量)は、100Vオーダー(例えば3~5V)であり、これら複数の電池セル14を直列に接続してなるバッテリ11の起電力は、101~102Vオーダー(例えば101Vオーダーであれば40~50V、102Vオーダーであれば200~300V)である。よって、必要とするバッテリ11の起電力に応じて、複数の電池セル14が直列に数個から数十個の範囲で接続される。
【0023】
バッテリ管理部12は、バッテリ11の状態を監視する監視部15を有する。なお、図示は省略するが、バッテリ管理部12は、必要に応じて、監視部15以外の要素、例えば複数の電池セル14間における電圧の平準化を図るためのセルバランス回路をさらに有してもよい。
【0024】
監視部15は、バッテリ11の状態を監視し、監視した結果に基づき必要と判断した場合には、バッテリシステム10が搭載された車両(図示は省略)のECU16に所定の指令を送信するように構成されている。具体的に、監視部15は、
図2に示すように、その基板に設けられた電圧検出部17,18を含む各種検出部(図示は省略)と、ホストコンピュータとなるMCU19とを有する。そして、監視部15は、電圧検出部17,18を含む各種検出部により、バッテリ11全体の電圧や電流、温度などバッテリ11の状態を示す各種パラメータを取得し、取得した各種パラメータをMCU19で解析し、バッテリ11に何らかの異常が発生していないか判定する。そして、何らかの異常が発生していると判定した場合には、異常の内容に応じた指令をECU16に送信する。また、監視部15は、バッテリ11を構成する複数の電池セル14の電圧、電流など各電池セル14の状態を示すパラメータを取得、解析し、各電池セル14に何らかの異常が発生していないかを判定する。異常が発生していると判断した場合には、異常の内容に応じた指令をECU16に送信する(詳細は後述する)。なお、上述した監視部15によるバッテリ11の監視は主に、バッテリ11の充電時又は放電時において行われるが、バッテリ11の待機時(充電と放電の何れも行っていないとき)に行ってもよい。
【0025】
次に、監視部15の電圧検出部17,18と、バッテリ11の各電池セル14との接続態様を主に
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0026】
監視部15には、複数の電圧検出部17,18が設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、二つの電圧検出部17,18が設けられている。これら電圧検出部17,18は、電圧監視用LSIであって、
図3に示すように、バッテリ11を構成する複数の電池セル14と所定の個数(本実施形態では同じ数)ずつ接続される。
【0027】
ここで、バッテリ11を構成する複数の電池セル14を、二つの電池セル群14a,14bに分けた場合、一方の電池セル群(以後、第一電池セル群14aと称する。)が、第一電圧検出部17と電気的に接続される。また、残りの電池セル群(以後、第二電池セル群14bと称する。)が、第一電圧検出部17とは別個に設けられた第二電圧検出部18と電気的に接続される。
【0028】
詳述すると、第一電圧検出部17は複数の電圧検出用の端子P0~P7(本図示例では8個)を有しており、対象となる所定数(本図示例では7個)の電池セル14(14a1~14a7)の両側に接続される。
図3に示す例では、第一電圧検出部17の端子P0と端子P1がそれぞれ、第一電池セル群14aのうち最も低電位側(
図3でいえば最も下側)に位置する第一電池セル14a1の低電位側と高電位側とに接続されている。また、第一電圧検出部17の端子P1と端子P2がそれぞれ、第一電池セル14a1よりも高電位側(
図3でいえば第一電池セル14a1の上側)に位置する第二電池セル14a2の低電位側と高電位側とに接続され、端子P2と端子P3がそれぞれ、第二電池セル14a2よりも高電位側に位置する第三電池セル14a3の低電位側と高電位側とに接続され、端子P3と端子P4がそれぞれ、第三電池セル14a3よりも高電位側に位置する第四電池セル14a4の低電位側と高電位側とに接続され、端子P4と端子P5がそれぞれ、第四電池セル14a4よりも高電位側に位置する第五電池セル14a5の低電位側と高電位側とに接続され、端子P5と端子P6がそれぞれ、第五電池セル14a5よりも高電位側に位置する第六電池セル14a6の低電位側と高電位側とに接続され、端子P6と端子P7がそれぞれ、第一電池セル群14aのうち最も高電位側に位置する第七電池セル14a7の低電位側と高電位側とに接続されている。
【0029】
また、第二電圧検出部18は複数の電圧検出用の端子P0~P7(本図示例では8個)を有しており、対象となる所定数(本図示例では7個)の電池セル14(14b1~14b7)の両側に接続される。
図3に示す例では、第二電圧検出部18の端子P0と端子P1がそれぞれ第二電池セル群14bのうち最も低電位側に位置する第一電池セル14b1の停電位側と高電位側とに接続されている。また、第二電圧検出部18の端子P1と端子P2がそれぞれ、第一電池セル14b1よりも高電位側に位置する第二電池セル14b2の低電位側と高電位側とに接続され、端子P2と端子P3がそれぞれ、第二電池セル14b2よりも高電位側に位置する第三電池セル14b3の低電位側と高電位側とに接続され、端子P3と端子P4がそれぞれ、第三電池セル14b3よりも高電位側に位置する第四電池セル14b4の低電位側と高電位側とに接続され、端子P4と端子P5がそれぞれ。第四電池セル14b4よりも高電位側に位置する第五電池セル14b5の低電位側と高電位側とに接続され、端子P5と端子P6がそれぞれ、第五電池セル14b5よりも高電位側に位置する第六電池セル14b6の低電位側と高電位側とに接続され、端子P6と端子P7がそれぞれ、第二電池セル群14bのうち最も高電位側に位置する第七電池セル14b7の低電位側と高電位側とに接続されている。
【0030】
以上のように接続された状態において、第一電圧検出部17は、第一電池セル群14aの電池セル14a1~14a7から電力の供給を受けて、すなわちこれら複数の電池セル14a1~14a7を電力源として駆動可能に構成されている。また、第二電圧検出部18は、第二電池セル群14bの電池セル14b1~14b7から電力の供給を受けて、すなわちこれら複数の電池セル14b1~14b7を電力源として駆動可能に構成されている。なお、各電圧検出部17は、外部電源13からの電力供給を受けて駆動可能に構成されてもよく、あるいは内蔵される電源(図示は省略)からの電力供給を受けて駆動可能に構成されてもよい。
【0031】
また、第一電池セル群14aに属する所定の電池セル14、ここでは最も低電位側であり最も第二電池セル群14bに近い第一電池セル14a1の電圧が、第一電圧検出部17だけでなく第二電圧検出部18によっても検出可能に構成されている。この場合、第一電池セル群14aの第一電池セル14a1が本発明に係る校正用電池セルに相当する。
【0032】
本実施形態では、第二電圧検出部18と、校正用電池セルである第一電池セル14a1との間に第一切替え回路20が配設されている。そして、第一切替え回路20の切替え動作により、第二電圧検出部18と第一電池セル14a1との接続状態(
図4を参照)と切断状態(
図3を参照)とを切替え可能に構成されている。詳述すると、第一電圧検出部17の端子P0と第一電池セル群14aの第一電池セル14a1の低電位側とが導線C1を介して電気的に接続され、第二電圧検出部18の端子P6と第二電池セル群14bの第七電池セル14b7の低電位側とが導線C2を介して電気的に接続されている場合、導線C2が分岐して導線C1に接続されている。分岐導線C21上には第一切替え回路20を構成するスイッチ20aが配設されており、スイッチ20aの切替え動作により、端子P6と第一電池セル14a1の低電位側との接続状態と切断状態とを切替え可能としている。また、第一電圧検出部17の端子P1と第一電池セル14a1の高電位側とが導線C3を介して電気的に接続され、第二電圧検出部18の端子P7と第二電池セル群14bの第七電池セル14b7の高電位側とが導線C4を介して電気的に接続されている場合、導線C4が分岐して導線C3に接続されている。分岐導線C41上には第一切替え回路20を構成するスイッチ20bが配設されており、スイッチ20bの切替え動作により、端子P7と第一電池セル14a1の高電位側との接続状態と切断状態とを切替え可能としている。
【0033】
また、本実施形態では、第二電圧検出部18と、第二電池セル群14bに属する第七電池セル14b7との間に第二切替え回路21が配設されている。そして、第二切替え回路21の切替え動作により、第二電圧検出部18と第七電池セル14b7との接続状態(
図3を参照)と切断状態(
図4を参照)とを切替え可能に構成されている。詳述すると、第二電圧検出部18の端子P6と第二電池セル群14bの第七電池セル14b7の低電位側とを接続する導線C2上でかつ分岐導線C21よりも第七電池セル14b7に近い側に第二切替え回路21を構成するスイッチ21aが配設されている。そして、スイッチ21aの切替え動作により、端子P6と第七電池セル14b7の低電位側との接続状態と切断状態とを切替え可能としている。また、第二電圧検出部18の端子P7と第二電池セル群14bの第七電池セル14b7の高電位側とを接続する導線C4上でかつ分岐導線C41よりも第七電池セル14b7に近い側に第二切替え回路21を構成するスイッチ21bが配設されている。そして、スイッチ21bの切替え動作により、端子P7と第七電池セル14b7の高電位側との接続状態と切断状態とを切替え可能としている。
【0034】
これら第一及び第二切替え回路20,21の切替え動作は、例えばMCU19により制御される。すなわち、MCU19は、各切替え回路20,21のスイッチ20a,20b,21a,21bの切替え動作を制御可能としており、例えば第二電圧検出部18に対して第一電池セル14a1が切断され、かつ第七電池セル14b7が接続された状態(
図3を参照)と、第二電圧検出部18に対して第一電池セル14a1が接続され、かつ第七電池セル14b7が切断された状態とを切替え可能なように、各切替え回路20,21のスイッチ20a,20b,21a,21bを切替え可能に構成されている。
【0035】
外部電源13は、特定の電池セル14に対して充電用の電力を供給可能に構成される。本実施形態では、外部電源13からの電力が、バッテリ管理部12を介して各電池セル14a1~14a7,14b1~14b7に選択的に供給可能とされている(
図1及び
図2を参照)。上述した各電池セル14への電力供給(充電)は、例えば監視部15のMCU19により実行される。
【0036】
次に、上記構成のバッテリシステム10(監視部15)を用いた本発明に係るバッテリの電圧監視方法の一例を、主に
図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0037】
本実施形態に係るバッテリの電圧監視方法は、第一電圧検出部17で校正用電池セルとなる第一電池セル14a1の電圧を検出するステップS2と、第二電圧検出部18で第一電池セル14a1の電圧を検出するステップS5と、双方の電圧検出部17,18で得た第一電池セル14a1の電圧検出値V1,V2に基づいて、一方の電圧検出値V2を校正するステップS11とを主に備える。なお、本監視方法に係る判定処理は全てMCU19で行う。
【0038】
まず、本実施形態に係る電圧監視方法では、第二電圧検出部18と校正用電池セル(第一電池セル14a1)とが接続状態であるか否かを判定する(ステップS1)。そして、接続状態でないと判定された場合、第一電圧検出部17で第一電池セル14a1の電圧を検出する(ステップS2)。あるいは、ステップS1において、第二電圧検出部18と第一電池セル14a1とが接続状態にあると判定された場合、第一切替え回路20の切替え動作により、第二電圧検出部18と第一電池セル14a1とを切断状態(
図4を参照)に切り替えた後(ステップS3)、第一電圧検出部17で第一電池セル14a1の電圧を検出する(ステップS2)。
【0039】
然る後、第一切替え回路20の切替え動作により、第二電圧検出部18と第一電池セル14a1とを接続状態(
図3を参照)に切り替えた後(ステップS4)、第二電圧検出部18で第一電池セル14a1の電圧を検出する(ステップS5)。
【0040】
このようにして第一電圧検出部17と第二電圧検出部18とで第一電池セル14a1の電圧を交互に検出した後、第一電圧検出部17で得た第一電圧検出値V1と、第二電圧検出部18で得た第二電圧検出値V2との差に基づいて一方の電圧検出値の校正の要否を判定する(ステップS6)。具体的には、第一電圧検出値V1と第二電圧検出値V2のうち何れが大きい値であるかを判定した上で、電圧検出値V1,V2の差V1-V2(V1>V2の場合)が予め設定した所定値以上であるか否かを判定する(ステップS6)。そして、差V1-V2が所定値以上と判定した場合、第二電圧検出値V2に対する校正値を設定する(ステップS7)。本実施形態では、差V1-V2をそのまま第二電圧検出値V2の校正値とする。然る後、第二電圧検出部18と各電池セル14a1,14b7との接続状態を、電圧監視用の接続状態(
図3に示す状態)に切り替える(ステップS8)。そして、バッテリ11を構成する全ての電池セル14(14a1~14a7,14b1~14b7)の電圧を対応する電圧検出部17,18で測定する(ステップS9)。
【0041】
ここで、ステップS7において、電圧検出値V2の校正値を設定していた場合、第二電圧検出部18で得た全ての電池セル14(第二電池セル群14bに属する全ての電池セル14b1~14b7)の電圧検出値にステップS7で設定した校正値を加えることで各電圧検出値を校正する(ステップS11)。そして、校正後の電圧検出値が予め設定しておいた所定の数値範囲外であるか否かを判定する(ステップS12)。校正値を設定していない場合、ステップS9で得た電圧検出値が予め設定しておいた所定の数値範囲外であるか否かを判定する。そして、例えば数値範囲の上限値よりも上振れしていると判定した場合、判定対象の電池セル14が過充電状態にあるとみなし、ECU16に判定結果を送信する。あるいは、数値範囲の下限値よりも下振れしていると判定した場合、判定対象の電池セル14が過放電状態にあるとみなし、ECU16に判定結果を送信する(ステップS13)。また、電圧検出値が上記数値範囲内であると判定した場合には、ECU16への送信を行うことなく終了する。以上のようにして、バッテリ11の電圧監視、特に各電池セル14の電圧監視が高精度に実施される。
【0042】
以上述べたように、本実施形態に係る電圧監視装置(監視部15)では、バッテリを構成する複数の電池セル14を二つ又はそれ以上のグループ(ここでは二つの電池セル群14a,14b)に分けた場合に、何れか一方の電池セル群(第一電池セル群14a)に属する所定の電池セル14(ここでは第一電池セル14a1)を校正用電池セルとし、この校正用電池セル14a1の電圧を、各電池セル群14a,14bに属する電池セルの電圧を検出する第一及び第二電圧検出部17,18でそれぞれ検出可能とした。このように、二つの電圧検出部17,18で共通の電池セルである校正用電池セル(第一電池セル14a1)の電圧をそれぞれ検出可能とすることよって、検出結果に基づき、各電圧検出部17,18の測定性能を相対的に評価することができる。相対的に評価できれば、相対評価に基づいて各電圧検出部17,18で得た一方又は双方の電圧検出値V2を適正に校正することが可能となる。よって、各電圧検出部17,18の個体差を反映した電圧監視を図ることができ、これにより全ての電池セル14の電圧を精度よく監視して、電圧監視に対する信頼性を担保することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、監視部15に、電池セル14の電圧検出値V2を校正可能な電圧校正部としてのMCU19をさらに設け、このMCU19で、第一電圧検出部17で得た校正用電池セル14a1の電圧検出値V1と、第二電圧検出部18で得た校正用電池セル14a1の電圧検出値V2との差V1-V2に基づいて、小さい方の電圧検出値(ここでは第二電圧検出値V2)を校正した。このように校正することで、電圧検出値の差V1-V2に基づいて、迅速にかつ効果的に電圧検出値を校正することができる。また、共通の電池セル14a1に対して異なる電圧検出値V1,V2が得られた場合、大きい方の検出値(ここでは第一電圧検出値V1)に合わせて、小さい方の電圧検出値V2を校正することによって、各電圧検出部17,18の個体差を反映して各電池セル14の電圧を標準化できると共に、各電池セル14の電圧を全体的に大きめに評価することになるため、各電池セル14の過充電を回避して、電池セル14の劣化ひいては破損を防止することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る電圧監視装置、及び電圧監視方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0045】
例えば電圧検出値V2の校正手段に関し、上記実施形態では、小さい方の電圧検出値V2を大きい方の電圧検出値V1に合わせて校正する場合を例示したが、もちろんこれ以外の手段をとることも可能である。例えば、双方の電圧検出値V1,V2をその中間値に校正してもよい。すなわち、第一電圧検出値V1から電圧検出値の差V1-V2の半分の値を減じた値を校正後の第一電圧検出値V1とし、第二電圧検出値V2に電圧検出値の差V1-V2の半分の値を加えた値を校正後の第二電圧検出値V2としてもよい。あるいは、大きい方の電圧検出値V1を小さい方の電圧検出値V2に合わせて校正(第一電圧検出値V1から電圧検出値の差V1-V2を減じた値を校正後の第一電圧検出値V1とする演算処理)してもよい。要は、第一電圧検出値V1と、第二電圧検出値V2との差に基づいて、何れか一方の電圧検出部17(18)で得た電圧検出値V1(V2)を校正する限りにおいて、その校正手段は任意である。
【0046】
また、上記実施形態では、一つの電池セル14(第一電池セル14a1)を校正用電池セルとし、この電池セル14(第一電池セル14a1)の電圧を第一及び第二電圧検出部17,18で検出した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば複数の電池セル14(例えば第一及び第二電池セル14a1,14a2)を校正用電池セルとし、これら複数の電池セル14a1,14a2の電圧をそれぞれ第一及び第二電圧検出部17,18で検出してもよい。
【0047】
また、校正用電池セルの位置は特に制限されない。例えば最も高電位側の電池セル(第七電池セル14a7)を校正用電池セルとしてもよいし、中間電位側の電池セル(第四電池セル14a4など)を校正用電池セルとしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、二つの電圧検出部17,18を設けると共に、バッテリ11を構成する全ての電池セル14を二つの電池セル群(第一電池セル群14aと第二電池セル群14b)に分けて、各電池セル群14a,14bに属する電池セル14a1~14a7,14b1~14b7の電圧をそれぞれ対応する電圧検出部17,18で検出する場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態をとることも可能である。例えば図示は省略するが、バッテリ11を構成する電池セル14の数が非常に多い場合、三つ以上の電圧検出部を設けると共に、複数の電池セル14を電圧検出部と同数の電池セル群に分けて、各電池セル群に属する電池セルの電圧をそれぞれ対応する三つ以上の電圧検出部で検出してもよい。
【0049】
また、上述した校正処理を含む電圧監視は、電圧監視の開始時にのみ実施してもよいし、監視開始後、所定の時刻の経過ごとに実施してもよい。
【0050】
また、以上の説明では、電気自動車などモータで駆動する車両のモータ駆動用バッテリに本発明を適用した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば駆動用モータ以外の電力負荷先に電力を供給する車載用バッテリに本発明を適用してもよい。あるいは、車載用に限らずバッテリの継続的かつ安定的な駆動が必要とされるバッテリ用途全般に本発明に係る電圧監視装置又は電圧監視方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 バッテリシステム
11 バッテリ
12 バッテリ管理部
13 外部電源
14 電池セル
14a 第一電池セル群
14b 第二電池セル群
15 監視部
16 ECU
17 第一電圧検出部
18 第二電圧検出部
20,21 切替え回路
20a,20b,21a,21b スイッチ
21a,21b スイッチ
C1,C2,C3,C4 導線
C21,C41 分岐導線
P0,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7 端子
V1,V2 電圧検出値