IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図1
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図2
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図3
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図4
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図5
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図6
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図7
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図8
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図9
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図10
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図11
  • -輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167641
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20241127BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083853
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 偉
(72)【発明者】
【氏名】手島 久典
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐樹
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC42
5L050CC42
(57)【要約】
【課題】輸送サービスの輸送計画に関して、要求閾値を満たさないKPIに関する因果関係を考慮した改正済み輸送計画を生成すること。
【解決手段】所定の輸送サービスに関する既存の輸送計画を示す既存輸送計画情報と、既存輸送計画情報に対する性能指標を示すKPIを含む輸送サービスKPI情報と、輸送サービスに関連する統計情報とを格納する記憶部と、既存輸送計画情報及び輸送サービスKPI情報に基づいて、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定する不整合KPI特定部と、不整合KPI及び統計情報を解析し、不整合KPIと統計情報から抽出した統計情報のサブセットにおける関連変数との因果関係を判定する因果関係判定部と、既存輸送計画情報と、判定した因果関係とを用いて、不整合KPIが要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成する輸送計画生成部を含む輸送計画管理装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送計画管理装置であって、
プロセッサとメモリと記憶部とを備え、
前記記憶部は、
所定の輸送サービスに関する既存の輸送計画を示す既存輸送計画情報と、
前記既存輸送計画情報に対する性能指標を示すKPIを含む輸送サービスKPI情報と、
前記輸送サービスに関連する統計情報とを含み、
前記メモリは、
前記既存輸送計画情報及び前記輸送サービスKPI情報に基づいて、前記KPIの内、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定する不整合KPI特定部と、
前記不整合KPI及び前記統計情報を解析し、前記不整合KPIと前記統計情報から抽出した統計情報のサブセットにおける関連変数との因果関係を判定する因果関係判定部と、
前記既存輸送計画情報と、判定した前記因果関係とを用いて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成する輸送計画生成部、
として前記プロセッサを機能させるための処理命令を含むことを特徴とする輸送計画管理装置。
【請求項2】
前記不整合KPIの影響範囲に基づいて、前記統計情報の検索範囲を規定する次元パラメータの入力をユーザから受け付け、
前記統計情報の中から、前記次元パラメータに規定される前記検索範囲に対応する前記統計情報のサブセットを抽出する情報抽出部と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の輸送計画管理装置。
【請求項3】
前記次元パラメータは、
前記不整合KPIの時間的範囲を規定する時間パラメータ、前記不整合KPIの空間的範囲を規定する位置パラメータ、前記不整合KPIの対象物範囲を規定する車両パラメータ及び前記不整合KPIの対象物範囲を規定する特徴パラメータの内のいずれか一方を含む、
ことを特徴とする、請求項2に記載の輸送計画管理装置。
【請求項4】
前記不整合KPIと因果関係にあると判定した前記関連変数のそれぞれについて、前記不整合KPIに対する影響度を計算し、
前記関連変数の内、計算した前記影響度が所定の影響度基準を満たす主要変数を特定し、
特定した前記主要変数に基づいて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成する仮説推論部、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の輸送計画管理装置。
【請求項5】
生成した前記不整合仮説情報に基づいて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすようにするための、前記主要変数に対する推奨の変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成する動作判定部と、
前記変数変更動作を実施した場合の前記不整合KPIの変化量を計算するKPI変化計算部と、
を有する改正提案部を更に含むことを特徴とする、請求項4に記載の輸送計画管理装置。
【請求項6】
前記輸送計画生成部は、
前記不整合KPI及び前記主要変数の因果関係を示す因果関係図と、前記不整合仮説情報と、前記変数変更動作情報と、前記変数変更動作を実施した場合の前記不整合KPIの変化量を出力し、
前記変数変更動作を承認する承認入力を受け付けた場合、前記変数変更動作を前記既存輸送計画情報に対して反映させることで、前記改正済み輸送計画情報を生成する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の輸送計画管理装置。
【請求項7】
前記統計情報は、
前記輸送サービスが提供される地域における既存インフラを示すインフラ情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する地図情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する天気情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する人口情報
前記輸送サービスが提供される地域に関する住民移動情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する税金情報、
前記輸送サービスにおいて利用される車両の編成を示す車両編成情報、
前記輸送サービスを利用する旅客の移動履歴を示す旅客移動情報、及び
前記輸送サービスに対する顧客満足度を示す顧客満足情報を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の輸送計画管理装置。
【請求項8】
輸送計画管理装置においてコンピュータソフトウエアによって実施される輸送計画管理方法であって、
輸送計画管理装置は、
プロセッサと、
プログラム命令を格納するメモリと、
記憶部とを備え、
前記記憶部は、
所定の輸送サービスに関する既存の輸送計画を示す既存輸送計画情報と、
前記既存輸送計画情報に対する性能指標を示すKPIを含む輸送サービスKPI情報と、
前記輸送サービスに関連する統計情報とを含み、
前記メモリに格納されている前記プログラム命令は、
前記既存輸送計画情報及び前記輸送サービスKPI情報に基づいて、前記KPIの内、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定する工程と、
前記不整合KPIの時間的範囲を規定する時間パラメータ、前記不整合KPIの空間的範囲を規定する位置パラメータ及び前記不整合KPIの対象物範囲を規定する特徴パラメータのいずれか一つを含む次元パラメータを設定する工程と、
前記統計情報の中から、前記次元パラメータに規定される範囲に対応する統計情報のサブセットを抽出する工程と、
前記不整合KPI及び前記統計情報のサブセットを解析し、前記不整合KPIと前記統計情報のサブセットにおける関連変数との因果関係を判定する工程と、
前記不整合KPIと因果関係にあると判定した前記関連変数のそれぞれについて、前記不整合KPIに対する影響度を計算する工程と、
前記関連変数の内、計算した前記影響度が所定の影響度基準を満たす主要変数を特定する工程と、
特定した前記主要変数に基づいて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成する工程と、
生成した前記不整合仮説情報に基づいて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすようにするための、前記主要変数に対する推奨の変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成する工程と、
前記変数変更動作を実施した場合の前記不整合KPIの変化量を計算する工程と、
前記不整合KPI及び前記主要変数の因果関係を示す因果関係図と、前記不整合仮説情報と、前記変数変更動作情報と、前記変数変更動作を実施した場合の前記不整合KPIの変化量をユーザに出力する工程と、
前記変数変更動作を承認する承認入力を受け付けた場合、前記変数変更動作を前記既存輸送計画情報に対して反映させることで、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成する工程と、
を前記プロセッサに実行させることを特徴とする輸送計画管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送計画管理装置及び輸送計画管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送サービスにおいて、輸送計画は、運用費用や需要を考慮しつつ、輸送ネットワークにおける列車やバス等の出発及び到着時間を管理するために用いられている。従来では、輸送計画の作成は、輸送ネットワークのインフラや乗客のニーズを考慮しながら輸送業者によって手動で行われてきた。
【0003】
近年では、サステナブルな社会を実現するため、鉄道会社やバス会社等の輸送業者は、輸送サービスの需要の変動や環境への影響を考慮した上で、輸送を効率良く行うための柔軟な輸送計画を策定することが求められている。
輸送計画自体は、従来から、列車やバス等の移動体の移動を管理するために用いられている。例えば、輸送計画に従って列車を制御する自動運転制御装置として、特開2019-092347号公報(特許文献1)が存在する。
【0004】
特許文献1には、「自動運転制御装置は、作成部104と、算出部101と、制御部105と、を備える。作成部は、所定区間における列車の目標速度を含む走行計画を作成する。算出部は、所定区間の空気抵抗及び路線条件の少なくとも一方に基づいて、所定区間における列車の走行速度が目標速度となる列車の加速度を算出する。制御部は、算出される列車の加速度に従って、所定区間における列車の加速及び減速を制御する。」技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-092347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の自動運転制御装置は、空気抵抗や路線条件に基づいて、列車の走行速度が走行計画に規定される目標速度になるように列車の加速及び減速を制御する。
特許文献1に記載の自動運転制御装置によれば、列車の乗り心地や省エネ効果を向上させることができるとされている。
【0007】
ところで、輸送サービスにおいて用いられる輸送計画の性能を評価する方法として、重要業績評価指標(Key Performance Indicators;以下「KPI」)に基づく手段が用いられることがある。これらのKPIは、例えば所定の輸送計画の運用費用、予想収入、環境への影響、エネルギー効率等の様々な要素に関して、輸送サービスの性能を指し示す定量的な指標である。輸送計画における特定のKPIが所定の要求閾値を満たさない場合、当該KPIが要求閾値を満たすように輸送計画を改正することが望ましい。
【0008】
しかし、従来のKPIに基づく評価手段では、要求閾値を満たさないKPIを特定することができるものの、当該KPIが要求閾値を満たさない理由は不明であるため、当該KPIが要求閾値を満たすように輸送計画をどのように改正すべきかとの判断が難しい。特に、輸送サービスのような、輸送行程の本数、混雑度、旅客の待ち時間等の数多くの変数が関係している複雑な状況の場合、これらの変数とKPIの間に存在する因果関係を理解して、既存の輸送計画を適正に改正するためには、多くの専門知識が必要となり、輸送計画を管理するユーザへの負担が大きい。
【0009】
特許文献1に記載の手段によれば、エネルギー効率等の特定の性能指標を考慮した輸送計画を用いて列車を制御することができるものの、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながら、KPIを向上させるための具体的な改正内容を提案する手段が記載されていない。
【0010】
そこで、本開示は、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながら、KPIが要求閾値を満たさない理由を解析した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成することが可能な輸送計画管理手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の輸送計画管理装置の一つは、プロセッサとメモリと記憶部とを備え、前記記憶部は、所定の輸送サービスに関する既存の輸送計画を示す既存輸送計画情報と、前記既存輸送計画情報に対する性能指標を示すKPIを含む輸送サービスKPI情報と、前記輸送サービスに関連する統計情報とを含み、前記メモリは、前記既存輸送計画情報及び前記輸送サービスKPI情報に基づいて、前記KPIの内、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定する不整合KPI特定部と、前記不整合KPI及び前記統計情報を解析し、前記不整合KPIと前記統計情報から抽出した統計情報のサブセットにおける関連変数との因果関係を判定する因果関係判定部と、前記既存輸送計画情報と、判定した前記因果関係とを用いて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成する輸送計画生成部として前記プロセッサを機能させるための処理命令を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながら、KPIが要求閾値を満たさない理由を解析した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成することが可能な輸送計画管理手段を提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステムを示す図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理システムの構成の一例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理装置に含まれる機能部及びデータベースの論理的構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理方法の全体の流れについて説明する。
図5図5は、本開示の実施形態に係る因果関係判定処理の流れの一例を示す図である。
図6図6は、本開示の実施形態に係る因果関係解析処理の流れの一例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施形態に係る輸送計画生成処理の流れの一例を示す図である。
図8図8は、本開示の実施形態に係る時間パラメータLを次元パラメータとして設定する場合の一例を示す図である。
図9図9は、本開示の実施形態に係る車両パラメータMを次元パラメータとして設定する場合の一例を示す図である。
図10図10は、本開示の実施形態に係る駅パラメータNを次元パラメータとして設定する場合の一例を示す図である。
図11図11は、本開示の実施形態に係る因果関係図の一例を示す図である。
図12図12は、本開示の実施形態に係る次元パラメータ設定インターフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、本開示において様々な要素又は構成要素を説明するのに用いられる場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素と区別するためにのみ用いられる。したがって、以下で論述する第1の要素又は構成要素は、本発明概念の教示から逸脱することなく第2の要素又は構成要素と呼ぶこともできる。
【0015】
次に、図1を参照して、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステム100について説明する。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。コンピュータシステム100の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ102、メモリ104、端末インターフェース112、ストレージインタフェース113、I/O(入出力)デバイスインタフェース114、及びネットワークインターフェース115を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス106、I/Oバス108、バスインターフェースユニット109、及びI/Oバスインターフェースユニット110を介して、相互的に接続されてもよい。
【0016】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102と総称される1つ又は複数の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)102A及び102Bを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム100は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム100は単一のCPUシステムであってもよい。各プロセッサ102は、メモリ104に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。
【0017】
ある実施形態では、メモリ104は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。メモリ104は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ104は、輸送計画管理アプリケーション150を格納していてもよい。ある実施形態では、輸送計画管理アプリケーション150は、後述する機能をプロセッサ102上で実行する命令又は記述を含んでもよい。
【0018】
ある実施形態では、輸送計画管理アプリケーション150は、プロセッサベースのシステムの代わりに、又はプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、及び/又は他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、輸送計画管理アプリケーション150は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、又は他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット109、プロセッサ102、又はコンピュータシステム100の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0019】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102、メモリ104、表示システム124、及びI/Oバスインターフェースユニット110間の通信を行うバスインターフェースユニット109を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット110は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス108と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット110は、I/Oバス108を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインタフェースユニット112,113,114、及び115と通信してもよい。
【0020】
表示システム124は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置126に提供することができる。また、コンピュータシステム100は、データを収集し、プロセッサ102に当該データを提供するように構成された1つ又は複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。
【0021】
例えば、コンピュータシステム100は、心拍数データやストレスレベルデータ等を収集するバイオメトリックセンサ、湿度データ、温度データ、圧力データ等を収集する環境センサ、及び加速度データ、運動データ等を収集するモーションセンサ等を含んでもよい。これ以外のタイプのセンサも使用可能である。表示システム124は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置126に接続されてもよい。
【0022】
I/Oインタフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インタフェースユニット112は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス116の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス116及びコンピュータシステム100に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム100からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス116を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されたりしてもよい。
【0023】
ストレージインタフェース113は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置117(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置117は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ104の内容は、ストレージ装置117に記憶され、必要に応じてストレージ装置117から読み出されてもよい。I/Oデバイスインタフェース114は、プリンタ、ファックスマシン等の他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース115は、コンピュータシステム100と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク130であってもよい。
【0024】
ある実施形態では、コンピュータシステム100は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム100は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピューター、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0025】
次に、図2を参照して、本開示の実施形態に係る輸送計画管理システムについて説明する。
【0026】
図2は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理システム200の構成の一例を示す図である。輸送計画管理システム200は、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながらKPIが要求閾値を満たさない理由を解析した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成するためのシステムである。図2に示すように、輸送計画管理システム200は、輸送計画管理装置210と、通信ネットワーク250と、ユーザ端末260とからなる。輸送計画管理システム200において、輸送計画管理装置210と、ユーザ端末260とは、通信ネットワーク250を介して互いに接続されてもよい。
【0027】
輸送計画管理装置210は、既存の輸送計画において所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを、当該要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画を生成するための装置であり、図2に示すように、メモリ220、記憶部230、プロセッサ244及び入出力部246を主に含む。
ある実施形態では、輸送計画管理装置210は、図1に示すコンピュータシステム100によって実装されてもよい。
【0028】
メモリ220は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段の機能を実施するための
輸送計画管理アプリケーション150を格納するためのメモリであってもよい。この輸送計画管理アプリケーション150は、図2に示すように、KPI解析部222、因果関係管理部224、改正提案部226及び輸送計画管理部228等のソフトウェアモジュールの機能を実施するための処理命令を含んでもよい。
【0029】
KPI解析部222は、後述する輸送サービス情報DB232に格納される既存輸送計画情報及び輸送サービスKPI情報に基づいて、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定すると共に、特定した不整合KPIに関連する因果関係を判定するための情報(統計情報のサブセット)を輸送サービス情報DB232や地域社会情報DB234から抽出するための機能部である。
なお、KPI解析部222による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0030】
因果関係管理部224は、KPI解析部222によって特定された不整合KPIと、抽出された統計情報のサブセットにおける関連変数との間で存在する因果関係を判定すると共に、不整合KPIが要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成するための機能部である。
なお、因果関係管理部224による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0031】
改正提案部226は、因果関係管理部224によって判定された不整合仮説情報に基づいて、不整合KPIと因果関係にある関連変数に対する推奨の変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成すると共に、当該変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を計算するための機能部である。
なお、改正提案部226による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0032】
輸送計画管理部228は、既存輸送計画情報と、判定した因果関係とを用いて、不整合KPIが要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成するための機能部である。
なお、輸送計画管理部228による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0033】
記憶部230は、本開示の実施形態に係る各種情報を格納するためのデータベース(以下、「DB」)を収容する記憶領域であり、図2に示すように、輸送サービス情報DB232及び地域社会情報DB234を含んでもよい。
【0034】
輸送サービス情報DB232は、輸送サービスに関連する輸送サービス情報を格納するためのデータベースである。輸送サービス情報DB232に格納される輸送サービス情報は、例えば、輸送サービスを運用する輸送会社から取得される情報であってもよい。
地域社会情報DB234は、輸送サービスが提供される地域の社会に関する地域社会情情報を格納するためのデータベースである。地域社会情報DB234は、自治体、行政機関、企業、団体等、任意の第三者から取得されてもよく、社会に設置されているセンサによって取得されてもよい。
なお、図2では、輸送サービス情報DB232及び地域社会情報DB234が輸送計画管理装置210の記憶部230内に格納されている構成を一例として示しているが、実際には、輸送サービス情報DB232や地域社会情報DB234に格納されている情報は、輸送計画管理装置210と通信可能に接続されている外部のサーバ(例えば、輸送会社の所有されているサーバ、自治体のサーバ)に収容され、通信ネットワーク250を介して必要に応じて取得される構成も可能である。
【0035】
プロセッサ244は、メモリ220によって格納される輸送計画管理アプリケーション150の各機能部の機能を規定する処理命令を実施するための処理部である。
【0036】
入出力部246は、輸送計画管理装置210に入力される情報を受け付けると共に、輸送計画管理装置210によって生成される改正済み輸送計画情報等のデータを出力するための機能部である。ある実施形態では、入出力部246は、例えばキーボード、マウス、GUI(Graphical User Interface)を表示するディスプレイ等を含んでもよい。ある実施形態では、入出力部246は、各種情報の入出力を行うGUIをユーザ端末260に提供してもよい。
【0037】
通信ネットワーク250は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、衛星ネットワーク、ケーブルネットワーク、WiFiネットワーク、又はそれらの任意の組み合わせを含むものであってもよい。
【0038】
ユーザ端末260は、輸送計画管理装置210のユーザによって利用可能な端末装置である。ユーザは、ユーザ端末260を用いることで、既存輸送計画情報、輸送サービスKPI情報、後述する次元パラメータ等の情報を入力したり、輸送計画管理装置210によって出力される改正済み輸送計画情報等の情報を確認したりすることができる。一例として、ユーザ端末260は、例えば輸送会社で輸送計画を管理するユーザのスマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、パソコン等を含んでもよく、特に限定されない。
なお、図2では、説明の便宜上、1つのユーザ端末260を含む構成を一例として説明しているが、ユーザ端末260の数は限定されず、複数のユーザ端末260を含む構成も可能である。
【0039】
以上説明した輸送計画管理システム200によれば、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながらKPIが要求閾値を満たさない理由を解析した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成することができる。
【0040】
次に、図3を参照して、本開示の実施形態に係る輸送計画管理装置に含まれる機能部やデータベースの論理的構成について説明する。
【0041】
図3は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理装置210に含まれる機能部及びデータベースの論理的構成を示す図である。
【0042】
上述したように、輸送計画管理装置210は、輸送サービス情報DB232及び地域社会情報DB234との2つのデータベースと、KPI解析部222、因果関係管理部224、改正提案部226及び輸送計画管理部228との4つの機能部を含む。また、輸送サービス情報DB232及び地域社会情報DB234のそれぞれは、従属データベースを含み、KPI解析部222、因果関係管理部224、改正提案部226及び輸送計画管理部228のそれぞれは、従属機能部を含んでもよい。従って、ここでは、各データベース及び機能部に含まれる従属データベース及び従属機能部について説明する。
【0043】
輸送サービス情報DB232は、輸送サービスに関連する輸送サービス情報を格納するためのデータベースであり、図3に示すように、既存輸送計画情報DB401、輸送サービスKPI情報DB402、インフラ情報DB403、車両編成情報DB404、地図情報DB405、天気情報DB407及び旅客移動情報DB406を含んでもよい。上述したように、輸送サービス情報DB232に含まれる各種情報は、例えば輸送サービスを提供する輸送会社から取得されてもよい。
【0044】
既存輸送計画情報DB401は、輸送サービスにおける既存の輸送計画を示す既存輸送計画情報を格納するデータベースである。この既存輸送計画情報は、所定の期間に対して、輸送サービスとして実施される輸送行程を識別する情報、輸送行程を実施するために用いられる車両を識別する情報、輸送行程の出発位置及び到着位置を示す情報、輸送行程の本数、輸送行程の所要時間の情報及び輸送行程の定員数の情報等を含んでもよい。この既存輸送計画情報は、後述するように、不整合KPIを向上させた改正済み輸送計画情報を生成するために用いられ、例えば輸送計画管理装置の利用者(クライアント等)に作成され、入力されてもよい。
【0045】
輸送サービスKPI情報DB402は、既存輸送計画情報DB401に格納される既存輸送計画情報に関するKPIの情報と、各KPIに対する要求閾値を示す情報である。上述したように、これらのKPIは、既存輸送計画情報における様々な要素に関して、輸送サービスの性能を指し示す定量的な指標である。例えば、ある実施形態では、これらのKPIは、輸送計画の運用費用、予想収入、環境への影響、及びエネルギー効率に対する性能指標を含んでもよい。
また、要求閾値は、各KPIについて、求められる性能の範囲を規定する情報である。本開示では、この要求閾値を満たさない(つまり、範囲から逸脱している)KPIは、「不整合KPI」と言う。
一例として、輸送サービスKPI情報DB402は、既存輸送計画情報において「車両使用率=45%」というKPIがあり、当該KPIに対する要求閾値が「60%から70%」の場合、当該KPI要求閾値を満たさない「不整合KPI」として特定される。
【0046】
インフラ情報DB403は、輸送サービスが提供される地域における既存インフラを示すインフラ情報を格納するデータベースである。この既存インフラは、例えば輸送サービスにおいて用いられる線路、駅、車両、電線、改札口等を識別する情報を含んでもよい。
【0047】
車両編成情報DB404は、輸送サービスにおいて用いられる車両(列車やバス等)の編成を示す情報を格納するデータベースである。この車両編成は、例えば、列車において組成した車両を識別する情報、車両の定員数、特定の車両の前後の車両等を含んでもよい。
【0048】
地図情報DB405は、輸送サービスが提供される地域に関する地図情報を格納するデータベースである。この地図情報は、輸送サービスが提供される地域の2次元や3次元の地図、衛星写真、地域の標高に関する情報等を含んでもよい。
【0049】
天気情報406は、輸送サービスが提供される地域に関する天気情報を格納するデータベースである。この天気情報は、輸送サービスが提供される地域の気温、湿度、雨量、積雪量、日照時間等を示す情報を含んでもよい。
【0050】
旅客移動情報DB407は、輸送サービスを利用する旅客の移動履歴を示す旅客移動情報を格納するデータベースである。この旅客移動情報は、例えば、過去に旅客が使用した輸送行程の日時、種類(列車やバス)、出発位置、到着位置、所要時間、待ち時間等の情報を含んでもよい。
【0051】
地域社会情報DB234は、輸送サービスが提供される地域の社会に関する地域社会情報を格納するためのデータベースであり、図3に示すように、人口情報DB411、住民移動情報DB412、輸送手段情報DB413、税金情報DB414、経済情報DB415及び顧客満足度情報DB416を含んでもよい。上述したように、この地域社会情報DB234に格納される各種情報は、自治体、行政機関、企業、団体等、任意の第三者から取得されてもよく、社会に設置されているセンサによって取得されてもよい。
【0052】
人口情報DB411は、輸送サービスが提供される地域の人口を示す人口情報を格納するデータベースである。この人口情報は、例えば、当該地域に居住している人口や、仕事、学校、観光等の目的で当該地域に滞在する流動人口等を示す情報を含んでもよい。
【0053】
住民移動情報DB412は、輸送サービスが提供される地域に居住する住民の移動を示す住民移動情報を格納するデータベースである。この住民移動情報は、例えば、所定の期間にわたって、当該地域に入居した人数に関する情報や、当該地域から転居した人数に関する情報を含んでもよい。
【0054】
輸送手段情報DB413は、所定の地域において提供される輸送手段を示す輸送手段情報を格納するデータベースである。この輸送手段情報は、例えば、所定の地域において提供されるバス、列車、モノレール等のサービス及びそれぞれの利用実績に関する情報を含んでもよい。
【0055】
税金情報DB414は、輸送サービスが提供される地域に居住する住民に関する税金情報を格納するデータベースである。この税金情報は、例えば、当該地域に居住する住民の平均納税額、収入、滞納税金に関する情報を含んでもよい。
【0056】
経済情報DB415は、輸送サービスが提供される地域の経済に関する経済情報を格納するデータベースである。この経済情報は、当該地域における主要の業界、生産情報、雇用率等に関する情報を含んでもよい。
【0057】
顧客満足度情報DB416は、輸送サービスが提供される地域に居住する輸送サービスの顧客の、輸送サービスに対する満足度を示す顧客満足度情報を格納するデータベースである。この顧客満足度情報は、複数の輸送サービスや輸送行程に対する顧客満足度や顧客の移動嗜好(移動時間が短い経路を好む、乗り換えが少ない経路を好む等)に関する情報を含んでもよい。
【0058】
上述した輸送サービス情報DB232及び地域社会情報DB234に格納される各種情報の内、既存輸送計画情報DB401及び輸送サービスKPI情報DB402は、後述するように、既存輸送計画情報において要求閾値を満たさない不整合KPIを特定するために用いられる。
一方、インフラ情報DB403、車両編成情報DB404、地図情報DB405天気情報DB406、旅客移動情報DB407、人口情報DB411、住民移動情報DB412、輸送手段情報DB413、税金情報DB414、経済情報DB415及び顧客満足度情報DB416に格納される各種情報は、特定した不整合KPIに関する因果関係を特定するために用いられる。以下では、インフラ情報DB403、車両編成情報DB404、地図情報DB405天気情報DB406、旅客移動情報DB407、人口情報DB411、住民移動情報DB412、輸送手段情報DB413、税金情報DB414、経済情報DB415及び顧客満足度情報DB416に格納され、因果関係を特定するために用いられる情報は、「統計情報」315と総称する。
【0059】
KPI解析部222は、輸送サービス情報DB232に格納される既存輸送計画情報及び輸送サービスKPI情報に基づいて、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定する不整合KPI特定部421と、特定した不整合KPIに関連する因果関係を判定するための情報(統計情報のサブセット)を統計情報315から抽出する情報抽出部422とを含む。
なお、KPI解析部222による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0060】
因果関係管理部224は、KPI解析部222によって特定された不整合KPIと、抽出された統計情報のサブセットにおける関連変数との間で存在する因果関係を判定する因果関係判定部431と、不整合KPIが要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成する仮説推論部432とを含む。
なお、因果関係管理部224による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0061】
改正提案部226は、因果関係管理部224によって判定された不整合仮説情報に基づいて、不整合KPIと因果関係にある関連変数に対する推奨の変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成する動作判定部441と、当該変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を計算するKPI変化計算部442とを含む。
なお、改正提案部226による動作の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0062】
輸送計画管理部228は、判定した因果関係を示す因果関係図と、不整合仮説情報と、変数変更動作情報と、変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を出力し、ユーザからの入力を受け付ける受付部451と、変数変更動作を承認する承認入力を受け付けた場合、変数変更動作を既存輸送計画情報に対して反映させることで、不整合KPIが要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成する輸送計画生成部452とを含む。
【0063】
図3に示す輸送計画管理装置210によれば、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながらKPIが要求閾値を満たさない理由を解析した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成することができる。
【0064】
次に、図4を参照して、本開示の実施形態に係る輸送計画管理方法の全体の流れについて説明する。
【0065】
図4は、本開示の実施形態に係る輸送計画管理方法400の全体の流れの一例を示す図である。図4に示す輸送計画管理方法400は、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながら要求閾値を満たさないKPIが要求閾値を満たさない理由を導出した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成するための方法であり、図2及び3に示す輸送計画管理装置210の各機能部によって実施される。
【0066】
まず、ステップS402では、KPI解析部222は、輸送サービス情報DB232に格納されている輸送サービス情報と、地域社会情報DB234に格納されている地域社会情報を取得する。上述したように、ここで取得される情報には、不整合KPIを特定するために用いられる既存輸送計画情報及び輸送サービスKPI情報と、因果関係を特定するために用いられる統計情報(例えば、図3に示す統計情報315)とを含む。
なお、ここでは、KPI解析部222が輸送サービス情報及び地域社会情報を全て取得する場合を一例として説明したが、本開示はこれに限定されず、例えば輸送サービス情報及び地域社会情報が遠隔の第三者サーバ等に格納されている場合には、KPI解析部222は、不整合KPIを特定するための既存輸送計画情報及び輸送サービスKPI情報を先に取得し、不整合KPIを特定した後、これらの不整合KPIに関連する統計情報のみをサーバから取得することも可能である。これにより、不整合KPIとの関連度が低い情報を送信する帯域幅を節約することができる。
【0067】
次に、ステップS404では、KPI解析部222の不整合KPI特定部421は、ステップS402で取得した既存輸送計画情報及び輸送サービスKPI情報に基づいて、不整合KPIを特定する。上述したように、輸送サービスKPI情報は、既存輸送計画情報に関するKPIの情報と、各KPIに対する要求閾値を示す情報である。従って、不整合KPI特定部421は、特定の既存輸送計画情報に対応する輸送サービスKPI情報の内、規定されている要求閾値を満たさないKPIを不整合KPIとして特定することができる。一例として、輸送サービスKPI情報において、「車両使用率」とのKPIに対して、「60%から70%」との要求閾値が規定されており、既存輸送計画情報では「車両使用率=45%」の場合、不整合KPI特定部421は、「車両使用率」を不整合KPIとして特定してもよい。
【0068】
次に、ステップS406では、KPI解析部222の情報抽出部422は、不整合KPIの影響範囲に基づいて、統計情報の検索範囲を規定する次元パラメータを規定する入力をユーザから受け付ける。ここでの不整合KPIの影響範囲とは、不整合KPIがどこで、いつからいつまで、何に対して影響を与えているかを特定するための情報である。また、次元パラメータとは、この不整合KPIの影響範囲に基づいて設定され、当該不整合KPIに関連する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から抽出するための検索の最大の範囲を規定する情報である。ある実施形態では、輸送計画管理装置210のユーザは、図12に示し、ユーザ端末260を介して表示される次元パラメータ設定インターフェース1200に対して次元パラメータを設定してもよい。

ある実施形態では、次元パラメータは、統計情報に対して実施される検索について、時間的範囲(例えば不整合KPIが何時から何時まで発生したか)を規定する時間パラメータ、空間的範囲(例えば不整合KPIが発生した地理的な位置や座標)を規定する位置パラメータ、対象物範囲を規定する車両パラメータ(例えば、不整合KPIが対象の車両の何車両前から何車両後まで発生しているか)、駅の範囲を規定する駅パラメータ(例えば、不整合KPIが対象の駅の何駅前から何駅後まで発生しているか)及び対象物範囲を規定する特徴情報(例えば、不整合KPIが発生した車両のエネルギー効率等)等を含んでもよい。
なお、次元パラメータは、不整合KPIの影響範囲と同一の範囲を含むように設定してもよいが、不整合KPIと因果関係がある関連変数は、不整合KPIの影響範囲外にも存在する可能性があるため、次元パラメータは、不整合KPIの影響範囲より広い範囲に設定することが望ましい。
ステップS406からステップS412の詳細については、図5を参照して説明する因果関係判定処理500において後述するため、ここではその説明を省略する。
【0069】
次に、ステップS408では、情報抽出部422は、ステップS406で設定された次元パラメータに基づいて、不整合KPIに関する因果関係を判定するための統計情報のサブセットを、ステップS402で取得した統計情報(図3に示す統計情報315)から抽出する。
【0070】
次に、ステップS410では、因果関係管理部224の因果関係判定部431は、ステップS408で抽出した統計情報のサブセットを用いて、不整合KPIに関する因果関係を判定する。ここで、因果関係判定部431は、1つの不整合KPIについて、複数の因果関係を判定してもよい。この因果関係は、不整合KPIと、統計情報における任意のデータ要素(以下、「関連変数」)との間で存在する因果関係であり、不整合KPIが関連変数によって影響される関係や、不整合KPIが関連変数を影響する関係を含む。
【0071】
次に、ステップS412では、因果関係管理部224の因果関係判定部431は、ステップS410で判定した因果関係毎に、精度を計算する。この精度は、特定の因果関係の正確性を示す値であり、因果関係を判定する際に算出される信用度等であってもよい。
【0072】
次に、ステップS414では、因果関係判定部431は、不整合KPI毎に、精度が最も高い因果関係を特定する。これは、特定の不整合KPIを影響する(又は影響される)最も確実な因果関係として、不整合KPIが発生した理由を導出するために用いられる。ある実施形態では、所定の精度閾値を満たす複数の因果関係が存在する場合、これらの複数の因果関係を特定してもよい。
【0073】
次に、ステップS416では、因果関係判定部431は、ステップS404で特定した全ての不整合KPIについて、処理は終了した(精度が最も高い因果関係が特定されているか)を判定する。全ての不整合KPIについて処理が終了していない場合、本処理はステップS406へ戻り、それ以降のステップが対象の不整合KPIについて行われる。一方、全ての不整合KPIについて処理が終了している場合、本処理はステップS418へ進む。
【0074】
次に、ステップS418では、因果関係管理部224の仮説推論部432は、ステップS414で特定した、精度が最も高い因果関係に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成する。
なお、ステップS418~S424の詳細は、図6に示す因果関係解析処理600や、図7に示す輸送計画生成処理700において後述するため、ここではその説明を省略する。
【0075】
次に、ステップS420では、改正提案部226の動作判定部441は、ステップS418で生成した不整合仮説情報に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たすようにするための変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成し、KPI変化計算部442は、当該変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を計算する。
ここでの変数変更動作は、当該不整合KPIと因果関係にある変数に対する推奨の変更を規定する情報である。一例として、「混雑度」との不整合KPIが「列車本数」との関連変数と因果関係にあると判定された場合、動作判定部441は、「列車本数を調整する」ことを推奨する変数変更動作を判定してもよい。
【0076】
次に、ステップS422では、輸送計画管理部228の受付部451は、不整合KPIと関連変数との因果関係を示す因果関係図と、不整合仮説情報と、変数変更動作情報と、変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を出力し、輸送計画管理装置210のユーザに表示し、当該変数変更動作を承認するか否かを示すフィードバックを受け付ける。
【0077】
次に、ステップS424では、輸送計画管理部228の輸送計画生成部452は、ステップS422で出力した変数変更動作を承認する承認入力をユーザから受け付けた場合、変数変更動作を既存輸送計画情報に対して反映させることで、改正済み輸送計画情報を生成する。この改正済み輸送計画情報は、不整合KPIが要求閾値を満たすように、関連変数を調整した輸送計画情報である。
【0078】
図4を参照して説明した輸送計画管理方法400によれば、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIと、当該不整合KPIに関連する統計情報における関連変数との間の因果関係を判定し、当該因果関係に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たさなかった理由を導出することができる。また、このように導出した理由に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たすように、関連変数を調整した改正済み輸送計画情報を生成することが可能となる。
【0079】
次に、図5を参照して、本開示の実施形態に係る因果関係判定処理の流れについて説明する。
【0080】
図5は、本開示の実施形態に係る因果関係判定処理500の流れの一例を示す図である。図5に示す因果関係判定処理500は、統計情報に対する検索範囲を規定する次元パラメータに基づいて、統計情報の中から当該不整合KPIに関連する統計情報のサブセットを抽出し、抽出した統計情報のサブセットにおける関連変数と不整合KPIとの間に存在する因果関係を判定するための処理であり、KPI解析部222の情報抽出部422及び因果関係管理部224の因果関係判定部431によって実施される。
なお、図5では、不整合KPIの影響範囲を時間、車両及び駅に関するパラメータを用いて規定する場合を一例として説明するが、本開示はこれに限定されず、例えば車両のエネルギー効率等、任意の他のパラメータを用いて不整合KPIの影響範囲を規定してもよい。
【0081】
まず、ステップS502では、情報抽出部422は、不整合KPIの影響範囲を判定する。ここで、情報抽出部422は、例えば既存輸送計画情報DB401に格納されている既存輸送計画情報と、輸送サービスKPI情報DB402に格納されているKPI情報に基づいて、上述した輸送計画管理方法400のステップS404で特定した不整合KPIについて、要求閾値から逸脱している時間、車両及び駅の範囲を判定してもよい。一例として、情報抽出部422は、不整合KPIの開始時間、開始車両目、開始駅、終了時間、終了車両目、終了駅等を不整合KPIの影響範囲として判定してもよい。
【0082】
次に、ステップS504では、情報抽出部422は、ステップS504で判定した不整合KPIの影響範囲に基づいて、次元パラメータ及びステップサイズを設定する。ある実施形態では、情報抽出部422は、ステップS504で判定した不整合KPIの影響範囲を、例えば後述する次元パラメータ設定インターフェース1200を介してユーザに表示し、ユーザに調整・確認させた後、次元パラメータ及びステップサイズの値を確定して設定してもよい。
ここでのステップサイズとは、次元パラメータを用いて統計情報を検索する際に、一度に対象要素(後述するl、m、n)を広げる大きさを意味し、次元パラメータ毎に設定されてもよい。原則として、ステップサイズが小さければ小さい程、統計情報のサブセットがより細かに抽出され、より高精度の因果関係判定が可能となるが、処理時間が増加するため、このステップサイズは、因果関係判定の希望の精度及び処理時間を考慮して設定することが望ましい。
【0083】
一例として、ここで、情報抽出部422は、不整合KPIの影響範囲に基づいて、統計情報を検索するための次元パラメータとして、時間の範囲を規定する時間パラメータL(例えば60分)及びそのステップサイズa(例えば3分)と、車両の範囲を規定する車両パラメータM(例えば前後10車両)及びそのステップサイズb(例えば1車両)と、駅の範囲を規定する駅パラメータN(例えば6駅)及びそのステップサイズc(例えば1駅)を設定してもよい。これらの次元パラメータは、統計情報に対して実施される検索の最大の範囲を規定する。
次元パラメータは、不整合KPIの影響範囲と同一の範囲を含むように設定してもよいが、不整合KPIと因果関係がある関連変数は、不整合KPIの影響範囲外にも存在する可能性があるため、時間パラメータL、車両パラメータM及び駅パラメータNは、不整合KPIの影響範囲より広い範囲に設定することが望ましい。
【0084】
次に、ステップS506では、情報抽出部422は、統計情報を検索するための対象要素の値を初期化し、統計情報の検索を開始する。ここでの対象要素は、統計情報における特定のデータを識別する値であり、次元パラメータに基づいて設定されてもよい。例えば、次元パラメータとして、時間パラメータL、車両パラメータM及び駅パラメータNがある場合、情報抽出部422は、特定の時間を識別する対象時間l、特定の車両を識別する対象車両m及び特定の駅を識別する対象駅nを設定してもよい。その後、情報抽出部422は、対象時間l、対象車両m及び対象駅nを「0」に設定し、対象時間l、対象車両m及び対象駅nに対応する情報が統計情報に存在するかを判定する。
【0085】
次に、ステップS508では、情報抽出部422は、統計情報の中から、対象時間l、対象車両m及び対象駅nのいずれかに対応する情報を特定し、統計情報のサブセットとして抽出する。より具体的には、情報抽出部422は、以下の数式1に規定される検索範囲を満たす情報を統計情報のサブセットとして抽出してもよい。
【数1】
一例として、情報抽出部422は、統計情報の中から、時間範囲(l1,l2)の範囲内のタイムスタンプに対応付けられている旅客移動情報を旅客移動情報DB407から取得し、車両範囲(m1,m2)の範囲内の車両の車両編成情報を車両編成情報DB404から取得し、駅範囲(n1,n2)の範囲内の領域に存在する地図情報を地図情報DB405から取得してもよい。このように、不整合KPIの影響範囲に基づいて設定される検索範囲に含まれ、当該不整合KPIと因果関係を有する可能性がある情報を統計情報の中から、統計情報のサブセットとして抽出することができる。
【0086】
次に、ステップS510では、因果関係管理部224は、ステップS508で抽出した統計情報のサブセットと、上述した輸送計画管理方法400のステップS404で特定した不整合KPIとを解析することで、不整合KPIに関する因果関係を判定する。ここでの因果関係とは、不整合KPIと、統計情報における関連変数との間で存在する因果関係であり、不整合KPIが関連変数によって影響される関係や、不整合KPIが関連変数を影響する関係を含む。ここでの関連変数は、統計情報における任意の特徴や属性に関するデータであってもよい。一例として、因果関係管理部224は、「混雑度」との不整合KPIと「列車本数」との関連変数が因果関係にあると判定してもよい。
ここで、統計情報のサブセットと、不整合KPIとを解析し、因果関係を判定する手段として、因果関係を判定するために訓練された機械学習モデルを用いてもよく、ここでは特に限定されない。また、因果関係管理部224は、因果関係を判定する際、対象の不整合KPIと因果関係にある関連変数や、各関連変数の不整合KPIへの影響度を示す因果関係数式を生成してもよい。
【0087】
次に、ステップS512では、因果関係管理部224は、ステップS510で判定した不整合KPIの因果関係の精度を計算する。この精度は、特定の因果関係の正確性を示す値であり、因果関係を判定する際に算出される信用度等であってもよい。ある実施形態では、因果関係管理部224は、因果関係の精度を当該因果関係を判定した際に生成した因果関係数式によって計算してもよい。
【0088】
次に、ステップS514では、因果関係管理部224は、対象時間lが時間パラメータL以上か否かを判定する。対象時間lが時間パラメータL以上の場合、本処理はステップS518へ進む。対象時間lが時間パラメータL以上でない場合、本処理はステップS516へ進む。
【0089】
次に、ステップS516では、因果関係管理部224は、対象時間lに対して、対象時間lのステップサイズaを加算し、ステップS508へ戻る。
【0090】
次に、ステップS518では、因果関係管理部224は、対象車両mが車両パラメータM以上か否かを判定する。対象車両mが車両パラメータM以上の場合、本処理はステップS522へ進む。対象車両mが車両パラメータM以上でない場合、本処理はステップS520へ進む。
【0091】
次に、ステップS520では、因果関係管理部224は、対象車両mに対して、対象車両mのステップサイズbを加算し、ステップS508へ戻る。
【0092】
次に、ステップS522では、因果関係管理部224は、対象駅nが駅パラメータN以上か否かを判定する。対象駅nが駅パラメータN以上の場合、本処理はステップS524へ進む。対象駅nが駅パラメータN以上でない場合、本処理は終了する。
【0093】
次に、ステップS524では、因果関係管理部224は、対象駅nに対して、対象駅nのステップサイズcを加算し、ステップS508へ戻る。
【0094】
図5を参照して因果関係判定処理500では、次元パラメータを用いて統計情報の中から、不整合KPIが発生した時間、位置、及び対象を含む検索範囲に対応し、当該不整合KPIと因果関係を有する可能性がある情報を抽出することができる。その後、このように抽出した情報を不整合KPIと共に解析することで、当該不整合KPIに関する因果関係を判定することができる。後述するように、このように導出した因果関係を用いることで、特定のKPIが要求閾値を満たさなかった理由や、不整合KPIが要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報の生成が可能となる。
【0095】
次に、図6を参照して、本開示の実施形態に係る因果関係解析処理600の流れについて説明する。
【0096】
図6は、本開示の実施形態に係る因果関係解析処理600の流れの一例を示す図である。図6に示す因果関係解析処理600は、上述した因果関係判定部431によって判定される不整合KPIの因果関係を解析し、不整合KPIが要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成すると共に、不整合KPIが要求閾値を満たすように、推奨の変数変更動作を生成するための処理であり、因果関係管理部224及び改正提案部226によって実施される。
【0097】
まず、ステップS602では、因果関係管理部224の仮説推論部432は、上述した因果関係判定部431(輸送計画管理方法400及び因果関係判定処理500参照)によって判定された、不整合KPIと関連変数の間で存在する因果関係の情報を取得する。
【0098】
次に、ステップS604では、仮説推論部432は、因果関係を評価するための精度閾値を設定する。この精度閾値は、判定された因果関係の中から、確実性が高く、不整合仮説情報の作成に用いられる程精度が高い因果関係とそうでないものを区別するための境界線を規定する情報であり、例えば精度値の下限であってもよい。この精度閾値は、例えば輸送計画管理装置210のユーザによって自由に設定されてもよい。ある実施形態では、この精度閾値は、例えば、「70%」であってもよい。
【0099】
次に、ステップS606では、仮説推論部432は、ステップS602で取得した各不整合KPIの因果関係について、ステップS604で設定した精度閾値を満たすか否かを判定する。特定の不整合KPIの因果関係の精度が精度閾値を満たす場合、本処理はステップS608へ進み、不整合KPIの因果関係の精度が精度閾値を満たさない場合、本処理はステップS618へ進む。
【0100】
ステップS618では、不整合KPIの因果関係の精度が精度閾値を満たさない場合、仮説推論部432は、当該不整合KPIについて、確実な因果関係の判定ができなかったため、当該不整合KPIが独立している(つまり、他の変数に影響されない)と判定し、ステップS620へ進む。
【0101】
ステップS608では、仮説推論部432は、精度閾値を満たす不整合KPIの因果関係に関する要素リストを生成する。この要素リストとは、因果関係にある全てのKPIや関連変数を列挙するリストであり、例えば因果関係判定の際に生成される因果関係数式における項に基づいて生成してもよい。一例として、因果関係数式が以下に示す数式2の場合、要素リストは、「Data1、Data2、Data4」となる。
【数2】
【0102】
次に、ステップS610では、仮説推論部432は、ステップS608で生成した要素リストにおけるそれぞれの要素の、不整合KPIへの影響度を計算する。ここでの影響度とは、特定の要素が不整合KPIに対して及ぼす影響の度合いを定量的に示す尺度であり、因果関係を判定した際に生成した因果関係数式によって計算することができる。
また、ある実施形態では、仮説推論部432は、要素リストにある各要素が特定されたデータベース(例えば、図3に示す天気情報DB406、経済情報DB415等)を判定してもよい。
【0103】
次に、ステップS612では、仮説推論部432は、ステップS610で計算した各要素の影響度に基づいて、所定の影響度基準を満たす主要変数を特定する。この影響度基準は、不整合KPIに対して顕著な影響を及ぼした変数とそうでない変数を区別するための境界線を規定する情報であり、例えば影響度の下限であってもよい。この影響度基準は、例えば輸送計画管理装置210のユーザによって自由に設定されてもよい。また、主要変数は、不整合KPIと因果関係がある変数の中から、顕著な影響を及ぼした変数である。
【0104】
次に、ステップS614では、仮説推論部432は、ステップS610で特定した主要変数に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たさなかった理由を示す不整合仮説情報を生成する。ここで、不整合KPIが要求閾値を満たさなかった理由は、自然言語で表現してもよい。
ここで、仮説推論部432は、因果関係判定の際に生成される因果関係数式において、主要変数の不整合KPIに対する関係の極性(正比例か反比例か)に応じて不整合仮説情報を生成してもよい。例えば、KPI1が要求閾値を下回り、主要変数AがKPI1と正比例の場合、仮説推論部432は、「主要変数Aが低いため、KPI1が不整合と判定された」旨を示す文章を不整合仮説情報として生成してもよい。もう一例として、KPI1が要求閾値を下回り、主要変数AがKPI1と反比例の場合、仮説推論部432は、「主要変数Aが高いため、KPI1が不整合と判定された」旨を示す文章を不整合仮説情報として生成してもよい。
また、ある実施形態では、仮説推論部432は、不整合仮説情報を判定するために、既存の仮説推論手法(例えば、仮説推論を行うために訓練した機械学習モデル等)を用いてもよい。
【0105】
次に、ステップS616では、改正提案部226の動作判定部441は、ステップS414で生成した不整合仮説情報に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たすようにするための変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成し、KPI変化計算部442は、当該変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を計算する。ここで、不整合KPIが要求閾値を満たすようにするための変数変更動作が複数存在する場合、動作判定部441は、これらの複数の変数変更動作をユーザに提示する候補として生成してもよい。
【0106】
上述したように、ここでの変数変更動作は、当該不整合KPIと因果関係にある変数に対する推奨の変更を規定する情報であり、ステップS414で生成した不整合仮説情報に基づいて判定することができる。ある実施形態では、動作判定部441は、因果関係判定の際に生成される因果関係数式と、不整合仮説情報を用いることで、不整合KPIが要求閾値を満たすためには、主要変数をどのように変更させる必要があるかを判定してもよい。一例として、「混雑度」との不整合KPIが「列車本数」との主要変数と因果関係にあると判定され、「列車本数が少ないため、混雑度が閾値を満たさないと判定された」との理由を示す不整合仮説情報が判定された場合、動作判定部441は、この不整合仮説情報や、因果関係数式に基づいて、「混雑度」との不整合KPIが要求閾値を満たすように、「列車本数」に対する推奨の変更を示す変数変更動作を判定してもよい。
また、変数変更動作が判定された後、KPI変化計算部442は、当該変数変更動作を実施した場合、不整合KPIがどのように変化するかを示す不整合KPIの変化量を計算する。一例として、KPI変化計算部442は、「1時間当たりの列車本数を1本増やす」との変数変更動作を実施した場合、「運用費用」とのKPIが「+10%」となり、「混雑度」との不整合KPIが「-25%」となることを計算してもよい。
【0107】
次に、ステップS620では、動作判定部441は、ステップS606で精度閾値を満たすと判定した全ての因果関係について、処理は終了した(不整合仮説情報、変数変更動作情報、KPI変化量の情報は生成されている)かを判定する。全ての因果関係について処理が終了していない場合、本処理はステップS606へ戻り、それ以降のステップが未処理の因果関係について行われる。一方、全ての因果関係について処理が終了している場合、本処理は、図7に示す改正済みの輸送計画生成処理700へ進む。
【0108】
図6に示す因果関係解析処理600によれば、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIについて判定された因果関係を解析することで、当該不整合KPIがなぜ要求閾値を満たさなかったかとの理由を示す不整合仮説情報を生成すると共に、不整合KPIが要求閾値を満たすように、不整合KPIに対して顕著な影響を及ぼす主要変数に対する適切な変更を示す変数変更動作情報を生成することができる。
【0109】
次に、図7を参照して、本開示の実施形態に係る輸送計画生成処理について説明する。
図7は、本開示の実施形態に係る輸送計画生成処理700の流れの一例を示す図である。図7に示す輸送計画生成処理700は、因果関係解析処理600において生成された不整合仮説情報や変数変更動作に基づいて改正済み輸送計画を生成するための処理であり、図2に示す輸送計画管理部228によって実施される。
【0110】
まず、ステップS702では、輸送計画管理部228の受付部451は、不整合KPI、因果関係図、不整合仮説情報、変数変更動作及びKPI変化量の情報をKPI解析部222、因果関係管理部224及び改正提案部226から取得する。
【0111】
次に、ステップS704では、受付部451は、輸送計画は自動生成に設定されているか否かを確認する。輸送計画が自動生成に設定されていない場合、本処理はステップS706へ進む。輸送計画が自動生成に設定されている場合、本処理はステップS714へ進む。
【0112】
次に、ステップS706では、受付部451は、不整合KPI、因果関係図、不整合仮説情報、変数変更動作及びKPI変化量の情報を、例えば図2に示す入出力部246を介して、ユーザ端末260に出力し、ユーザに表示する。
【0113】
次に、ステップS708では、受付部451は、ステップS706でユーザ端末260に表示した情報に対するフィードバックを、例えば図2に示す入出力部246を介して、ユーザから受け付ける。このフィードバックは、例えば、ステップS706で表示した変数変更動作を承認する入力や、変数変更動作の修正を指定する入力を含んでもよい。
【0114】
次に、ステップ710では、受付部451は、ステップS708で受け付けたフィードバックにより、変数変更動作が承認されたか否かを判定する。変数変更動作が承認されなかった場合、本処理はステップS712へ進む。変数変更動作が承認された場合、本処理はステップS714へ進む。
【0115】
変数変更動作が承認されなかった場合、ステップS712では、改正提案部226の動作判定部441は、変数変更動作を修正するユーザの入力や、当該不整合KPIについて生成された不整合仮説情報に基づいて、不整合KPIが要求閾値を満たすようにするための新たな変数変更動作を生成し、KPI変化計算部442は、この新たな変数変更動作を実施した場合の不整合KPIの変化量を計算する。その後、本処理はステップS706へ戻る。
【0116】
変数変更動作が承認された場合、ステップS714では、輸送計画生成部452は、承認された変数変更動作を既存輸送計画情報に対して反映させることで、既存の輸送計画において所定の要求閾値を満たさなかった不整合KPIを、要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画を生成する。
一例として、「混雑度」との不整合KPIについて、「列車本数が少ないため、混雑度が閾値を満たさないと判定された」との理由を示す不整合仮説情報が判定された場合、動作判定部441は、この不整合仮説情報や、因果関係数式に基づいて、「混雑度」との不整合KPIが要求閾値を満たすように、「列車本数」を適切に増やす変数変更動作を既存輸送計画情報に対して適用することで改正済み輸送計画を生成してもよい。
【0117】
次に、ステップS716では、輸送計画生成部452は、ステップS714で生成した改正済み輸送計画を、例えば図2に示す入出力部246を介して、ユーザ端末260に出力し、表示する。
【0118】
図7を参照して説明した輸送計画生成処理700によれば、要求閾値を満たさない不整合KPIが要求閾値を満たさない理由を導出した上で、これらのKPIを向上させるための適切な変数変更動作を既存の輸送計画に対して反映させた改正済み輸送計画を生成し、ユーザに提供することができる。
【0119】
次に、図8図10を参照して、本開示の実施形態に係る次元パラメータの概念について説明する。上述したように、本開示の実施形態に係る次元パラメータは、不整合KPIの影響範囲に基づいて設定され、当該不整合KPIに関連する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から抽出するための検索の最大の範囲を規定する情報である。ある実施形態では、次元パラメータは、統計情報に対して実施される検索について、時間的範囲を規定する時間パラメータ、空間的範囲を規定する位置パラメータ、対象物範囲を規定する車両パラメータ、駅の範囲を規定する駅パラメータ及び対象物範囲を規定する特徴情報等を含んでもよい。
このような次元パラメータを用いることで、統計情報の中から、特定の不整合KPIと因果関係が存在する確率が高い情報(統計情報のサブセット)を特定することができる。なお、次元パラメータは、不整合KPIの影響範囲と同一の範囲を含むように設定してもよいが、不整合KPIと因果関係がある関連変数は、不整合KPIの影響範囲外にも存在する可能性があるため、次元パラメータは、不整合KPIの影響範囲より広い範囲に設定することが望ましい。
【0120】
図8図10において、横軸が時間を示し、縦軸が駅を示すグラフを参照して次元パラメータを説明するが、これは、次元パラメータの概念を説明するための例示であり、次元パラメータの種類や応用形態はこれに限定されない。
【0121】
図8は、本開示の実施形態に係る時間パラメータLを次元パラメータとして設定する場合の一例を示す図である。図8において、時間パラメータ「L」は、不整合KPIに関連する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から抽出するための検索の最大の時間的範囲(例えば、60分)であり、「L1」は特定のKPIの不整合が発生した時刻を示し、「L2」は当該KPIの不整合が解消された時刻を示す。「x5」は、当該不整合KPIに対応する時間範囲(つまり、L1からL2までの時間幅)を示す。「M」は、検索対象の車両の最大の範囲を示し、「N」は、検索対象の駅の最大の範囲を示す。「t」は、時間パラメータLに規定される時間範囲を検索するステップサイズ(例えば、5分)を示す。対象時間「l」は、時間パラメータLの範囲に対する検索を実施する際、特定の時刻を識別し、0からLまでの範囲において、ステップサイズtでインクリメントされる整数である。
【0122】
このように、次元パラメータとして時間パラメータLを設定することで、不整合KPIが発生した時間範囲に対応する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から特定し、抽出することができる。また、不整合KPIが発生した時間範囲に対応する情報を、不整合KPIに関する因果関係を判定するために用いることで、不整合KPIに関する高精度の因果関係を判定することが可能となる。
【0123】
図9は、本開示の実施形態に係る車両パラメータMを次元パラメータとして設定する場合の一例を示す図である。図9において、車両パラメータ「M」は、不整合KPIに関連する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から抽出する検索対象の車両の最大の範囲(例えば、前後10車両)であり、「M1」は特定のKPIの不整合が発生した車両を示し、「M2」は当該KPIの不整合が解消された車両を示す。「x5」は、当該不整合KPIに対応する車両の範囲(つまり、M1からM2までの幅)を示す。M1=M2の場合は、不整合KPIが1つの車両のみについて発生したことを示す。「t」は、車両パラメータMに規定される車両範囲を検索するステップサイズ(例えば、1本の車両)を示す。対象車両「m」は、車両パラメータMの範囲に対する検索を実施する際、特定の車両を識別し、0からMまでの範囲において、ステップサイズtでインクリメントされる整数である。
【0124】
このように、次元パラメータとして車両パラメータMを設定することで、不整合KPIが発生した車両の範囲に対応する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から特定し、抽出することができる。また、不整合KPIが発生した車両に対応する情報を、不整合KPIに関する因果関係を判定するために用いることで、不整合KPIに関する高精度の因果関係を判定することが可能となる。
【0125】
図10は、本開示の実施形態に係る駅パラメータNを次元パラメータとして設定する場合の一例を示す図である。図10において、駅パラメータ「N」は、不整合KPIに関連する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から抽出する検索対象の駅の最大の範囲(例えば、前後10駅)であり、「N1」は特定のKPIの不整合が発生した駅を示し、「N2」は当該KPIの不整合が解消された駅を示す。「x5」は、当該不整合KPIに対応する駅の範囲(つまり、N1からN2までの幅)を示す。N1=N2の場合は、不整合KPIが1つの駅のみについて発生したことを示す。「t」は、駅パラメータNに規定される駅範囲を検索するステップサイズ(例えば、1駅)を示す。対象駅「n」は、駅パラメータNの範囲に対する検索を実施する際、特定の駅を識別し、0からNまでの範囲において、ステップサイズtでインクリメントされる整数である。
【0126】
このように、次元パラメータとして駅パラメータNを設定することで、不整合KPIが発生した駅の範囲に対応する情報(統計情報のサブセット)を統計情報から特定し、抽出することができる。また、不整合KPIが発生した駅に対応する情報を、不整合KPIに関する因果関係を判定するために用いることで、不整合KPIに関する高精度の因果関係を判定することが可能となる。
【0127】
次に、図11を参照して、本開示の実施形態に係る因果関係図について説明する。
【0128】
図11は、本開示の実施形態に係る因果関係図1100の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係る因果関係判定部431は、要求閾値を満たさない不整合KPIと、統計情報のサブセットにおける関連変数との因果関係を判定することができる。ある実施形態では、因果関係判定部431は、判定した因果関係を、図11に示すような因果関係図1100として可視化し、ユーザに提供してもよい。
【0129】
図11に示す因果関係図1100は、有向グラフネットワークの形状で、不整合KPIと関連変数との間の因果関係の有無を表現する因果ループ図(Causal Loop Diagram;CLD)である。因果関係図1100では、輸送サービスに関するKPI 1110及び統計情報のサブセットにおける関連変数1120のそれぞれは異なるノードとして表現することができる。また、KPI1110と関連変数1120の間に存在する因果関係は、双方向矢印として表現することができる。
上述したように、これらのKPI 1110は、例えば輸送計画の運用費用、予想収入、環境への影響、及びエネルギー効率等の、輸送サービスKPI情報DB402に格納されているKPIであり、関連変数1120は、輸送サービス情報DB232や地域社会情報DB234から抽出された統計情報のサブセットにおける関連変数である。
【0130】
一例として、因果関係図1100において、「KPIC1」1111は、「KPIP2」、「KPIS2」、「DataB1」及び「DataS4」と接続されていることから、「KPIC1」1111は、「KPIP2」及び「KPIS2」とのKPIと、「DataB1」及び「DataS4」との関連変数との間で因果関係が存在すると言える。ここで、例えば、「KPIC1」1111は、「混雑度」、「KPIP2」は「列車本数」、「KPIS2」は「旅客待ち時間」とのKPIに対応し、「DataB1」は「雨天」、「DataS4」は「居住人口」との関連変数に対応してもよい。
また、この「KPIC1」1111に関する因果関係は、以下に示す数式3のように、因果関係判定部431が因果関係を判定した際に生成した因果関係数式によって表現することができる。
【数3】
【0131】
図11に示すように、不整合KPIについて判定した因果関係を図11に示すような因果関係図1100として可視化し、ユーザに提供することで、ユーザは、特定のKPIを影響する他のKPIや関連変数を容易に把握することができる。
【0132】
次に、図12を参照して、本開示の実施形態に係る次元パラメータ設定インターフェースについて説明する。
【0133】
図12は、本開示の実施形態に係る次元パラメータ設定インターフェース1200を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段では、因果関係を判定するために用いられる情報(統計情報のサブセット)は、不整合KPIの影響範囲に基づいて設定される次元パラメータに基づいて特定される。これらの次元パラメータは、例えば図12に示す次元パラメータ設定インターフェース1200によってユーザに設定されてもよい。
【0134】
図12に示すように、次元パラメータ設定インターフェース1200は、パラメータ名設定ウインドウ1205、範囲方向設定ウインドウ1210、最大値設定ウインドウ1215、ステップサイズ設定ウインドウ1220、追加・削除ボタン1225及び確定ボタン1230を含んでもよい。
【0135】
パラメータ名設定ウインドウ1205は、次元パラメータの名称を設定するためのインターフェースウインドウである。ある実施形態では、ユーザは、予め用意されている次元パラメータの中から特定の次元パラメータを選択してもよい。ある実施形態では、ユーザは、新規の次元パラメータをカスタムで設定してもよい。一例として、次元パラメータとして、統計情報に対して実施される検索の時間的範囲を規定する「時間」、対象物(対象列車)の範囲を規定する「列車数」、空間的範囲を規定する「駅数」、対象物(対象列車)の範囲を規定するための特徴として「1キロ当たりの消費エネルギー」等を設定してもよい。
【0136】
範囲方向設定ウインドウ1210は、特定の次元パラメータの検索範囲が、対象要素(対象時間、対象駅、対象車両等)の前、後、又は前後を含むべきかを規定するためのインターフェースウインドウである。
【0137】
最大値設定ウインドウ1215は、特定の次元パラメータの検索範囲の最大値を規定するためのインターフェースウインドウである。例えば、図12に示すように、「時間」との次元パラメータの最大値として「60分」を設定してもよく、「列車数」との次元パラメータとして「20本」を設定してもよい。
【0138】
ステップサイズ設定ウインドウ1220は、特定の次元パラメータの最小ステップ値を規定するためのインターフェースウインドウである。原則として、ステップサイズが小さければ小さい程、統計情報のサブセットがより細かに抽出され、より高精度の因果関係判定が可能となるが、処理時間が増加するため、このステップサイズは、因果関係判定の希望の精度及び処理時間を考慮して設定することが望ましい。
【0139】
追加・削除ボタン1225は、新たな次元パラメータを追加したり、既存の次元パラメータを削除したりするためのボタンである。
【0140】
確定ボタン1230は、次元パラメータに関する情報を全て入力した後、確定させ保存させるためのボタンである。
【0141】
以上、図12を参照して説明した次元パラメータ設定インターフェース1200によれば、不整合KPIの影響範囲を示す次元パラメータを設定することができる。また、このように設定した次元パラメータを用いることで、統計情報の中から、特定の不整合KPIに関連する統計情報のサブセットを抽出することができ、高精度の因果関係判定が可能となる。
【0142】
上述したように、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段では、輸送サービスに関する既存の輸送計画において所定の要求閾値を満たさない不整合KPIが特定された場合、不整合KPIと当該不整合KPIを影響する関連変数との因果関係が判定され、判定した因果関係に基づいて、関連変数に対する推奨の変数変更動作が判定される。その後、判定した変数変更動作を既存の輸送計画に対して反映させることで、不整合KPIが要求閾値を満たすように改正した、改正済みの輸送計画を生成することができる。
【0143】
本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段において、不整合KPIに関する因果関係は、輸送サービスに関する情報(例えば、インフラ、車両編成、旅客移動)や、輸送サービスが提供される地域社会に関する情報(例えば、人口、住民移動、税金、経済、顧客満足度)を含む統計情報に基づいて判定される。このように、特定のKPIに対して影響を与える関連変数を、幅広い情報の中から特定することで、特定の不整合KPIを改善させるための様々な変数変更動作をユーザに提案することが可能となり、輸送計画の柔軟性を向上させることができる。
【0144】
また、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段において、不整合KPIに関する因果関係を判定するために用いる情報(統計情報のサブセット)は、統計情報の中から、当該不整合KPIの影響範囲を考慮した検索範囲(時間的範囲、空間的範囲、対象物の範囲)を規定する次元パラメータに基づいて抽出される。このように、全ての統計情報ではなく、特定の不整合KPIに関連する範囲に絞った情報を因果関係の判定に用いることで、処理時間を抑え、コンピューティング資源を節約すると共に、より細かで精度の高い因果関係判定が可能となる。
【0145】
また、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段において、不整合KPIに関する因果関係を判定した後、不整合KPI及び関連変数の因果関係を可視化した因果関係図、不整合KPIを改善させるための様々な変数変更動作、及び当該変数変更動作を採用した場合のKPIの変化量の情報がユーザに出力される。これにより、これらの情報を確認したユーザは、特定の不整合KPIを影響する関連変数、KPIを改善させるための対応策、そしてそれぞれの対策のKPIへの影響を容易に把握することができるため、輸送計画における運用費用、予想収入、環境への影響、エネルギー効率等の様々なKPIを向上させ、輸送サービスの運営の効率化を実現させることができる。
【0146】
このように、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段によれば、輸送サービスの輸送計画に関して、数多くの変数とKPIの因果関係を考慮しながらKPIが要求閾値を満たさない理由を解析した上で、KPIを向上させた改正済み輸送計画を生成することが可能となる。
【0147】
上述したように、本開示の実施形態に係る輸送計画管理手段は、以下の態様を含む。
【0148】
(態様1)
輸送計画管理装置であって、
プロセッサとメモリと記憶部とを備え、
前記記憶部は、
所定の輸送サービスに関する既存の輸送計画を示す既存輸送計画情報と、
前記既存輸送計画情報に対する性能指標を示すKPIを含む輸送サービスKPI情報と、
前記輸送サービスに関連する統計情報とを含み、
前記メモリは、
前記既存輸送計画情報及び前記輸送サービスKPI情報に基づいて、前記KPIの内、所定の要求閾値を満たさない不整合KPIを特定する不整合KPI特定部と、
前記不整合KPI及び前記統計情報を解析し、前記不整合KPIと前記統計情報から抽出した統計情報のサブセットにおける関連変数との因果関係を判定する因果関係判定部と、
前記既存輸送計画情報と、判定した前記因果関係とを用いて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすように改正した改正済み輸送計画情報を生成する輸送計画生成部、
として前記プロセッサを機能させるための処理命令を含むことを特徴とする輸送計画管理装置。
【0149】
(態様2)
前記不整合KPIの影響範囲に基づいて、前記統計情報の検索範囲を規定する次元パラメータの入力をユーザから受け付け、
前記統計情報の中から、前記次元パラメータに規定される前記検索範囲に対応する前記統計情報のサブセットを抽出する情報抽出部と、
を更に含むことを特徴とする、態様1に記載の輸送計画管理装置。
【0150】
(態様3)
前記次元パラメータは、
前記不整合KPIの時間的範囲を規定する時間パラメータ、前記不整合KPIの空間的範囲を規定する位置パラメータ、前記不整合KPIの対象物範囲を規定する車両パラメータ及び前記不整合KPIの対象物範囲を規定する特徴パラメータの内のいずれか一方を含む、
ことを特徴とする、態様2に記載の輸送計画管理装置。
【0151】
(態様4)
前記不整合KPIと因果関係にあると判定した前記関連変数のそれぞれについて、前記不整合KPIに対する影響度を計算し、
前記関連変数の内、計算した前記影響度が所定の影響度基準を満たす主要変数を特定し、
特定した前記主要変数に基づいて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たさない理由を示す不整合仮説情報を生成する仮説推論部、
を更に含むことを特徴とする、態様1乃至3に記載の輸送計画管理装置。
【0152】
(態様5)
生成した前記不整合仮説情報に基づいて、前記不整合KPIが前記要求閾値を満たすようにするための、前記主要変数に対する推奨の変数変更動作を示す変数変更動作情報を生成する動作判定部と、
前記変数変更動作を実施した場合の前記不整合KPIの変化量を計算するKPI変化計算部と、
を有する改正提案部を更に含むことを特徴とする、態様4に記載の輸送計画管理装置。
【0153】
(態様6)
前記輸送計画生成部は、
前記不整合KPI及び前記主要変数の因果関係を示す因果関係図と、前記不整合仮説情報と、前記変数変更動作情報と、前記変数変更動作を実施した場合の前記不整合KPIの変化量を出力し、
前記変数変更動作を承認する承認入力を受け付けた場合、前記変数変更動作を前記既存輸送計画情報に対して反映させることで、前記改正済み輸送計画情報を生成する、
ことを特徴とする、態様5に記載の輸送計画管理装置。
【0154】
(態様7)
前記統計情報は、
前記輸送サービスが提供される地域における既存インフラを示すインフラ情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する地図情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する天気情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する人口情報
前記輸送サービスが提供される地域に関する住民移動情報、
前記輸送サービスが提供される地域に関する税金情報、
前記輸送サービスにおいて利用される車両の編成を示す車両編成情報、
前記輸送サービスを利用する旅客の移動履歴を示す旅客移動情報、及び
前記輸送サービスに対する顧客満足度を示す顧客満足情報を含む、
ことを特徴とする、態様1乃至6に記載の輸送計画管理装置。
【0155】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0156】
150 輸送計画管理アプリケーション
200 輸送計画管理システム
210 輸送計画管理装置
220 メモリ
222 KPI解析部
224 因果関係管理部
226 改正提案部
228 輸送計画管理部
232 輸送サービス情報DB
234 地域社会情報DB
244 プロセッサ
246 入出力部
250 通信ネットワーク
260 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12