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特開2024-167643高甘味度甘味料含有飲料および高甘味度甘味料含有飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167643
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】高甘味度甘味料含有飲料および高甘味度甘味料含有飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/60 20060101AFI20241127BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241127BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20241127BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20241127BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20241127BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241127BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20241127BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20241127BHJP
【FI】
A23L2/00 C
A23L2/60
A23L2/00 B
A23L2/68
A23L2/54
A23L2/56
A23L27/00 101A
A23L27/30 C
A23L27/30 A
A23L27/30 Z
A23L27/00 F
A23L27/00 Z
A23L27/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083857
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】虻川 慧
(72)【発明者】
【氏名】岡 慶太
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB04
4B047LB06
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE01
4B047LE10
4B047LF07
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG09
4B047LG14
4B047LG17
4B047LG20
4B047LG32
4B047LP14
4B047LP18
4B117LC03
4B117LC14
4B117LE10
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK11
4B117LL01
4B117LL02
4B117LL09
4B117LP18
(57)【要約】
【課題】高甘味度甘味料含有飲料における砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立できる技術を提供する。
【解決手段】本発明の高甘味度甘味料含有飲料は、γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbである、高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項2】
γ-デカラクトンとマルトールとを含み、当該γ-デカラクトンの含有量(ppb)に対する当該マルトールの含有量(ppb)の比(マルトール/γ-デカラクトン)が10~10000である、高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項3】
前記γ-デカラクトンの含有量が、10~700ppbである、請求項2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項4】
前記高甘味度甘味料が、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウムおよびスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項5】
甘味度が2.5~12である、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項6】
酸味料をさらに含む、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項7】
炭酸ガスをさらに含む、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項8】
糖、および乳の中から選ばれる1種または2種を含まない、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項9】
容器詰めされた、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項10】
高甘味度甘味料を配合し、γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbとなるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法。
【請求項11】
高甘味度甘味料を配合し、γ-デカラクトンの含有量(ppb)とマルトールの含有量(ppb)の比が10~10000となるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高甘味度甘味料含有飲料および高甘味度甘味料含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高甘味度甘味料は、ショ糖の数百倍から数千倍の甘味度を有する甘味料として知られる。高甘味度甘味料は、低カロリーであるため、消費者の健康志向等に応える点から、広く飲料に用いられている。しかし、甘味料として、高甘味度甘味料を用いた場合、ショ糖と比較して、味の厚みが不足し物足りなさを感じたり、甘味の残存性、不快な後味等が感じられる傾向があった。そのため、高甘味度甘味料を用いた飲料の味質・呈味を改善するための研究開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステビア抽出物が有する特有の甘味の雑味や甘味が長く口の中に残るといった問題を解消する点から、マルトール等のスイートフレーバー1質量部に対して、ステビア抽出物を200~6000質量部の割合で含有する、甘味を有する経口用または口腔用組成物が開示されている。また、特許文献2には、アスパルテームに、マルトール等のフレーバーを併用することで、アスパルテームの呈味を改善する方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、ペリルアルデヒドの含有量が100ppb以上である飲料について、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させる飲料の香味向上方法であって、γ-デカラクトンの含有量を5ppb以上とする工程を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-135687号公報
【特許文献2】特開平2-276553号公報
【特許文献3】特開2022-63106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、高甘味度甘味料を飲料に用いると、高甘味甘味料由来の後味に残る苦味がより顕著になる傾向に着目した。そこで、高甘味度甘味料含有飲料における砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立することを課題として検討を行ったところ、新たに、γ-デカラクトンおよびマルトールの少なくとも一方を用いつつ、その飲料中での濃度を制御することが有効であることを知見した。一方、特許文献1~3に開示されるような技術は具体的に飲料を飲用したあとに感じられる残る苦味に着目したものではなく、上記課題を解決する点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の高甘味度甘味料含有飲料およびその製造方法が提供される。
【0008】
[1] γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbである、高甘味度甘味料含有飲料。
[2] γ-デカラクトンとマルトールとを含み、当該γ-デカラクトンの含有量(ppb)に対する当該マルトールの含有量(ppb)の比(マルトール/γ-デカラクトン)が10~10000である、高甘味度甘味料含有飲料。
[3] 前記γ-デカラクトンの含有量が、10~700ppbである、[2]に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[4] 前記高甘味度甘味料が、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウムおよびスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[5] 甘味度が2.5~12である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[6] 酸味料をさらに含む、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[7] 炭酸ガスをさらに含む、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[8] 糖、および乳の中から選ばれる1種または2種を含まない、[1]乃至[7]いずれか一つ記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[9] 容器詰めされた、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
[10] 高甘味度甘味料を配合し、γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbとなるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法。
[11] 高甘味度甘味料を配合し、γ-デカラクトンの含有量(ppb)とマルトールの含有量(ppb)の比(マルトール/γ-デカラクトン)が10~10000となるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高甘味度甘味料含有飲料における砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立する技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0011】
本明細書において、飲料のpH、甘味度、糖度、酸度等の物性は、炭酸ガスが除去され、液温20℃での飲料における物性を表す。
【0012】
本明細書において、「甘味度」とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、例えば「甘味料の総覧」(精糖工業会1990年5月発行)、「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(株式会社光琳2003年5月発行)、「飲料用語事典」(株式会社ビバリッジジャパン平成11年6月25日発行)等に記載されている値を採用することができる。なお、記載された甘味度の値に幅がある場合には、その中央値を採用する。例えば、代表的な甘味料の甘味度は、ショ糖1、ブドウ糖0.65、果糖1.5、スクラロース600、アセスルファムカリウム200、アスパルテーム200である。
また、飲料の甘味度は、容器詰め飲料の容器に成分表示されている甘味成分の甘味度と、分析等により特定した甘味成分の含有量をもとに算出することができる。上記方法で算出できない場合は、訓練された味覚官能パネリストが甘味標準水溶液を用いた官能評価を行って、当該飲料と同等の甘味を持つショ糖溶液の濃度を特定し、その濃度を甘味度とすることもできる。
【0013】
<高甘味度甘味料含有飲料>
本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料(以下、「飲料」とも称する。)は、γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbである飲料、または、γ-デカラクトンとマルトールとを含み、当該γ-デカラクトンの含有量(ppb)に対する当該マルトールの含有量(ppb)の比(マルトール/γ-デカラクトン)が10~10000である飲料の少なくとも一方である。
すなわち、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料は、γ-デカラクトン所定量を含むものであって、また、γ-デカラクトンとマルトールを併用する際は、両者を所定の濃度比で用いることによって、飲料を飲んだ時の高甘味度甘味料に由来する後味に残る苦味を低減しつつ、砂糖のような自然な甘さが得られる。
かかる理由の詳細は明らかではないが、γ-デカラクトンおよびマルトールは比較的甘い芳香を呈するものとして知られるが、これらの香りが戻り香として感じられる際に高甘味度甘味料に由来する後味に残る苦味をマスキングしつつ甘味を複雑化させると推測される。その結果、後味に残る苦味が低減できつつ、高甘味度甘味料の人工感を低減して砂糖のような自然な甘味が得られるようになると考えられる。
【0014】
さらに、本実施形態の飲料によれば、高甘味度甘味料による味の厚みの不足によって、酸味料等の酸味が強くなりすぎることを抑制できる。すなわち、本実施形態の飲料が酸味料や炭酸ガスなどの酸味の要因となる成分を含んだとしても、γ-デカラクトン所定量を含み、かつ、γ-デカラクトンとマルトールを併用する際は、両者を所定の濃度比で用いることによって、酸味のマスキング作用を得ることができると考えられる。
【0015】
以下、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料に含まれる各成分について説明する。
【0016】
[高甘味度甘味料]
本実施形態において高甘味度甘味料とは、ショ糖の数百倍から数千倍の甘味度を有する甘味料をいう。
高甘味度甘味料としては、例えば、甘草抽出物、ラカンカ抽出物、ステビア、ソーマチン、グリチルリチン、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、およびこれらの混合物が挙げられる。なかでも、砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立する点から、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウムおよびスクラロースの中から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。また、後味に残る苦味をより顕著に低減する点からは、ステビアであることがより好ましい。
【0017】
また、ステビアに含まれる甘味成分としては、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC、およびズルコサイドA等のステビオール配糖体が知られるが、これらは糖類の置換率が異なり、甘味度も異なる。また、ステビアの規格としては、高純度ステビア(ステビア抽出物)、酵素処理ステビア(α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア)が挙げられるが、いずれもステビオール配糖体を80%以上含むものである。本実施形態の飲料においては、ステビア甘味度や規格によらず、砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立できる。
【0018】
高甘味度甘味料の含有量は、特に限定されず、後述する飲料の甘味度に応じて適宜調整されることが好ましい。
【0019】
[γ-デカラクトン]
γ-デカラクトンは、CAS登録番号706-14-9の有機化合物である。
γ-デカラクトンの含有量は、マルトールと併用される場合と、マルトールと併用されない場合によって調整される。マルトールと併用されない場合、γ-デカラクトンの含有量は、20~700ppbであり、好ましくは40~500ppbであり、より好ましくは60~400ppbである。マルトールと併用される場合、γ-デカラクトンの含有量は、5~700ppbとしてもよく、好ましくは10~700ppbであり、より好ましくは15~500ppbであり、さらに好ましくは50~400ppbである。
γ-デカラクトンの含有量を、上記下限値以上とすることにより、砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立しつつ、酸味が強すぎることを低減できる。
一方、γ-デカラクトンの含有量を、上記上限値以下とすることにより、砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立しつつ、甘味質の良さを向上しやすくなる。
【0020】
[マルトール]
マルトールは、CAS登録番号118-71-8の有機化合物である。本実施形態の飲料において、マルトールはγ-デカラクトンとともに用いられるものである。
この場合、マルトールの含有量は、1~500ppmであることが好ましく、10~300ppmであることがより好ましく、10~200ppmであることがさらに好ましい。
マルトールの含有量を、上記数値範囲とすることにより、砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立しやすくなる。
【0021】
本実施形態において、γ-デカラクトンの含有量(ppb)に対するマルトールの含有量(ppb)の比(マルトール/γ-デカラクトン)が10~10000としてもよく、好ましくは20~5000であり、より好ましくは25~1000であり、さらに好ましくは30~900である。
当該比(マルトール/γ-デカラクトン)を、上記下限値以上とすることにより、砂糖のような自然な甘さをより得やすくなる。
当該比(マルトール/γ-デカラクトン)を、上記上限値以下とすることにより、後味に残る苦味を低減し、酸味が強くなることを抑制できる。
【0022】
本実施形態において、上記のマルトールおよびγ-デカラクトンの濃度は、本発明の効果が損なわれない範囲において、単体または香料やエキス等の混合物を添加する等して、調整することができる。
また、本実施形態の飲料に含まれるマルトールおよびγ-デカラクトンの各濃度は、GC/MS分析により測定することができる。
【0023】
[その他の成分]
本実施形態の飲料においては、本発明の効果が奏される限り、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、高甘味度甘味料以外の甘味料、酸味料、香料、果汁、乳、ビタミン、着色料、食塩、ミネラル、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、および増粘剤などの飲料に通常配合される公知の成分を含有することができる。
ただし、飲料を飲んだ時の高甘味度甘味料に由来する後味に残る苦味を低減しつつ、砂糖のような自然な甘さをより顕著に得る点から、本実施形態の飲料は、糖、および乳の中から選ばれる1種または2種を含まないことが好ましく、糖、および乳のいずれも含まないことがより好ましい。また、本実施形態の飲料は、所望の香味を得る点から、ペリルアルデヒドの含有量を100ppb未満とすることが好ましい。
【0024】
(甘味料)
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類;キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0025】
(酸味料)
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、酢酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸またはそれらの塩類等が挙げられる。
【0026】
次に、本実施形態の飲料の物性、特性などについて説明する。
【0027】
[甘味度]
本実施形態の飲料は、甘味度が2.5以上12以下であることが好ましく、3.0以上11以下であることがより好ましく、3.5以上10以下であることがさらに好ましく、4.0以上9以下であることがことさらに好ましい。
甘味度を上記下限値以上とすることで、高甘味度甘味料に由来する後味の苦みの低減効果をより顕著に得られ、過度な酸味も低減できる。一方、甘味度を上記上限値以下とすることで、砂糖のような自然な甘味が得られやすくなる。
甘味度は、例えば、上述の甘味料、果汁およびその他の各種成分などにより調整することができる。
【0028】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、例えば、糖度0~20°が好ましく、糖度0~10°がより好ましい。
糖度(Brix値)は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
また、糖度は、例えば、上記の甘味料、果汁、その他の各種成分の含有量により調整することができる。
【0029】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.10g/100ml以上、0.50g/100ml以下であることが好ましく、0.15g/100ml以上、0.35g/100ml以下であることがより好ましい。酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0030】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.8~4.5であることが好ましく、3.1~4.2であることがより好ましく、3.3~4.0であることがさらに好ましい。これにより、おいしさを良好に保持できる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0031】
[炭酸ガス]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。飲料の炭酸ガス圧(20℃)は特に限定されないが、1.5~5.5ガスボリュームであることが好ましく、2.0~4.5ガスボリュームであることがより好ましい。
炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
なお、本実施形態において、飲料のpH、酸度、および糖度等の物性は、炭酸ガスを公知の方法で除去した状態を意図する。
【0032】
[アルコール]
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0033】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料または積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
容器の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500gがより好ましい。
【0034】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)や、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法などが挙げられる。
【0035】
[飲料の種類]
本実施形態の飲料は、希釈されずにそのまま飲用される飲料であることが好ましい。なかでも、容器を開封しそのまま飲用できる、いわゆるレディ・トゥ・ドリンク(Ready To Drink;RTD)であることが好適である。
【0036】
[販売温度]
本実施形態の飲料は、常温用またはコールド用とすることが好ましい。コールド用とは、飲料の液温を常温よりも低くしたものであり、4~15℃程度に冷却したものを意図する。
【0037】
<高甘味度甘味料含有飲料の製造方法>
本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料の製造方法は、高甘味度甘味料を配合し、γ-デカラクトンの含有量が20~700ppbとなるように調製する工程、または、高甘味度甘味料を配合し、γ-デカラクトンの含有量(ppb)とマルトールの含有量(ppb)の比(マルトール/γ-デカラクトン)が10~10000となるように調製する工程の少なくとも一方を含む。
これにより、砂糖のような自然な甘さを得つつ、後味に残る苦味の低減を両立できる飲料が得られる。
高甘味度甘味料に含まれる各成分および物性などは、上記飲料と同様である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(1)飲料中の香気成分の定量
飲料中のγ-デカラクトン、マルトールの濃度(ppbまたはppm)は、GC/MSを用いて測定した。
具体的には、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法により、以下に示す条件で測定を行った。検量線は標準添加法にて作成し、内部標準物質としてシクロヘキサノールを用いた。
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
定量イオン:マルトール m/z=126
γ-デカラクトン m/z=128
シクロヘキサノール(内標) m/z=82
温度条件:40℃(2分保持)→8℃/分昇温→240℃(10分保持)
キャリアガス流量:He 1ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0041】
(2)飲料の官能評価
飲料について訓練された5名のパネリストによる官能試験を実施した。具体的には、各パネリストが飲料(20℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「後味の苦味」、「酸味の強さ」、「甘味質の良さ」、「砂糖のような自然な甘さ」、「おいしさ」について以下の評価基準に沿って、各コントロール(CTRL)を基準として相対評価を行い、その平均値を算出した。
なお、「甘味質の良さ」は、甘味料由来の雑味(苦味や酸味や渋味など)を含めたトータルでの甘味の質を指しており「後味の苦味」や「酸味の強さ」も含めた甘味料由来の味質のバランスの良さを意味する。
【0042】
・評価基準;「後味の苦味」、「酸味の強さ」、「砂糖のような自然な甘さ」
評点7 とても強い
評点6 強い
評点5 やや強い
評点4 コントロールと同等
評点3 やや弱い
評点2 弱い
評点1 とても弱い
【0043】
・評価基準;「甘味質の良さ」
評点7 とても良い
評点6 良い
評点5 やや良い
評点4 コントロールと同等
評点3 やや良くない
評点2 良くない
評点1 とても良くない
【0044】
・評価基準;「おいしさ」
評点7 とてもおいしい
評点6 おいしい
評点5 ややおいしい
評点4 コントロールと同等
評点3 ややおいしくない
評点2 おいしくない
評点1 とてもおいしくない
【0045】
(3)実施例および比較例
以下の高甘味度甘味料を用い、表1~3の含有量となるように、無水クエン酸、クエン酸三ナトリウムを混合し、さらに炭酸ガスを封入したベース液に、マルトール(maltol)、γ-デカラクトン(gamma-Decalactone)を配合し、表1~3に示す各飲料を調製した。
[高甘味度甘味料]
・酵素処理ステビア;レバウディオGRA-90P
・ステビア抽出物;レバウディオA9-90
・アセスルファムカリウム
・スクラロース
・アスパルテーム
得られた各飲料は、甘味度5.1、pH3.7、糖度0、酸度0.15、2.5ガスボリュームであった。また、各飲料について上記(2)の官能評価を行った結果を表1~3に示す。コントロールは、マルトール(maltol)、γ-デカラクトン(gamma-Decalactone)を含まない各ベース液とした。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】