(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167649
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】スイッチング素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241127BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241127BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241127BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 658G
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083868
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】束原 肇
(57)【要約】
【課題】 底部注入領域を有するスイッチング素子を製造する技術において、スイッチング素子の微細化を可能とするとともにチャネル領域への不純物注入を抑制する。
【解決手段】 スイッチング素子の製造方法であって、前記第1n型領域が露出している範囲内の半導体基板の表面に深さが前記第1n型領域の厚さ以下であるトレンチ(14)を形成する工程と、前記トレンチの底面にp型またはn型の不純物を注入することによって前記第2n型領域内に不純物注入領域(38)を形成する工程と、 前記トレンチの底面をエッチングすることによって前記トレンチの底面に前記不純物注入領域が露出するように前記トレンチの深さを増加させる工程、を有する製造方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の製造方法であって、
表面に露出する範囲に第1n型領域(30)が設けられており、前記第1n型領域の下部にp型のボディ領域(34)が設けられており、前記ボディ領域の下部に第2n型領域(36)が設けられた半導体基板を準備する工程と、
前記第1n型領域が露出している範囲内の前記表面に、深さが前記第1n型領域の厚さ以下であるトレンチ(14)を形成する工程と、
前記トレンチの底面にp型またはn型の不純物を注入することによって、前記第2n型領域内に不純物注入領域(38)を形成する工程と、
前記不純物注入領域を形成した後に、前記トレンチの底面をエッチングすることによって前記トレンチの底面に前記不純物注入領域が露出するように前記トレンチの深さを増加させる工程と、
前記トレンチの底面に前記不純物注入領域を露出させた後に、前記トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を形成した後に、前記トレンチ内にゲート電極を形成する工程、
を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング素子の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、トレンチ型ゲート構造を有するスイッチング素子の製造方法が開示されている。この製造方法では、n型のソース領域とp型のボディ領域を有する半導体基板を準備する。この製造方法では、半導体基板の表面にソース領域を貫通してボディ領域に達するトレンチを形成する。次に、トレンチの側面を覆う側壁絶縁膜を形成する。次に、トレンチの底面に不純物を注入して、トレンチの底面の周辺に底部注入領域を形成する。次に、側壁絶縁膜を除去し、トレンチ内にゲート絶縁膜とゲート電極を形成する。トレンチ型ゲート構造を有するスイッチング素子においては、トレンチの側面のうちのボディ領域の範囲は、スイッチング素子の動作時にチャネルが形成される領域(以下、チャネル領域という)である。特許文献1の製造方法では、底部注入領域に対する注入工程において、側壁絶縁膜によってチャネル領域への不純物の注入が抑制される。このため、特許文献1の製造方法によれば、スイッチング素子の特性のばらつきを抑制できる。なお、特許文献1では底部注入領域にn型不純物が注入されるが、底部注入領域にp型不純物が注入される場合もある。この場合でも、チャネル領域への不純物の注入を抑制することで、スイッチング素子の特性のばらつきを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、トレンチの底面に対する不純物注入において、側壁絶縁膜によって注入範囲が制限される。このため、幅が広い底部注入領域を形成するためには、予め幅が広いトレンチを形成しておく必要である。したがって、この技術では、スイッチング素子の微細化が困難である。
【0005】
また、他の製造方法として、トレンチを形成する前に高エネルギーで不純物を注入し、深い位置に底部注入領域を形成する技術が存在する。底部注入領域を形成した後に、半導体基板の表面にトレンチを形成し、トレンチの底面に底部注入領域を露出させる。この製造方法でも、トレンチの底面周辺に底部注入領域が設けられたスイッチング素子を製造できる。しかしながら、この製造方法では、高エネルギーのイオン注入を実施するために特殊なイオン注入装置が必要となる。また、高エネルギーのイオン注入では単位時間当たりに注入可能な不純物量が低いので、イオン注入工程に時間を要する。このため、この製造方法では、スイッチング素子の製造コストが高くなる。
【0006】
本明細書では、底部注入領域を有するスイッチング素子を製造する技術であって、スイッチング素子の微細化が可能であり、チャネル領域への不純物注入を容易に抑制できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
スイッチング素子の製造方法であって、半導体基板準備工程と、トレンチ形成工程と、不純物注入工程と、トレンチ深さ増加工程と、ゲート絶縁膜形成工程と、ゲート電極形成工程を有する。前記半導体基板準備工程では、表面に露出する範囲に第1n型領域が設けられており、前記第1n型領域の下部にp型のボディ領域が設けられており、前記ボディ領域の下部に第2n型領域が設けられた半導体基板を準備する。前記トレンチ形成工程では、前記第1n型領域が露出している範囲内の前記表面に、深さが前記第1n型領域の厚さ以下であるトレンチを形成する。前記不純物注入工程では、前記トレンチの底面にp型またはn型の不純物を注入することによって、前記第2n型領域内に不純物注入領域を形成する。前記トレンチ深さ増加工程では、前記不純物注入領域を形成した後に、前記トレンチの底面をエッチングすることによって前記トレンチの底面に前記不純物注入領域が露出するように前記トレンチの深さを増加させる。前記ゲート絶縁膜形成工程では、前記トレンチの底面に前記不純物注入領域を露出させた後に、前記トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜を形成する。前記ゲート電極形成工程では、前記ゲート絶縁膜を形成した後に、前記トレンチ内にゲート電極を形成する。
【0008】
この製造方法では、深さが第1n型領域の厚さ以下であるトレンチを形成し、その後、トレンチの底面に不純物を注入することによって第2n型領域内に不純物注入領域を形成する。不純物注入領域の形成位置は半導体基板の表面に対して深い位置であるが、トレンチが形成されているので、比較的低い注入エネルギーで不純物注入領域を形成できる。また、トレンチの深さが第1n型領域の厚さ以下であるので、ボディ領域内のチャネル領域への不純物の注入が抑制される。不純物注入領域の形成後に、トレンチの底面に不純物注入領域が露出するようにトレンチの深さを増加させる。その後、ゲート絶縁膜とゲート電極を形成することで、トレンチの底部に不純物注入領域を有するゲート構造が完成する。このように、この製造方法によれば、チャネル領域への不純物の注入を抑制でき、スイッチング素子の特性のばらつきを抑制できる。また、この製造方法によれば、比較的低い注入エネルギーで不純物注入領域を形成でき、容易にゲート構造を形成できる。また、この製造方法によれば、トレンチの幅が狭くても不純物注入領域を形成できるので、スイッチング素子を微細化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すスイッチング素子10は、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。スイッチング素子10は、SiC(炭化シリコン)により構成された半導体基板12を有している。なお、半導体基板12が、シリコン等の他の半導体材料により構成されていてもよい。半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ14が設けられている。各トレンチ14の内面は、ゲート絶縁膜16によって覆われている。各トレンチ14内にゲート電極18が配置されている。各ゲート電極18は、ゲート絶縁膜16によって半導体基板12から絶縁されている。半導体基板12の上部に、層間絶縁膜20と上部電極22が設けられている。層間絶縁膜20は、各ゲート電極18の上面を覆っている。上部電極22は、半導体基板12の上面12aと層間絶縁膜20を覆っている。上部電極22は、層間絶縁膜20によって各ゲート電極18から絶縁されている。上部電極22は、層間絶縁膜20が存在しない位置で半導体基板12の上面12aに接している。半導体基板12の下部には、下部電極24が設けられている。下部電極24は、半導体基板12の下面12bに接している。
【0011】
半導体基板12は、複数のソース領域30、複数のコンタクト領域32、ボディ領域34、ドリフト領域36、底部領域38、バッファ領域39、及び、ドレイン領域40を有している。
【0012】
各ソース領域30は、n型不純物濃度が高いn型領域である。トレンチ14の間に挟まれた領域(以下、トレンチ間領域という)のそれぞれに、ソース領域30が配置されている。各トレンチ間領域において、ソース領域30はトレンチ14の側面の上端部と上面12aを含む位置に配置されている。各ソース領域30は、トレンチ14の側面でゲート絶縁膜16に接している。各ソース領域30は、上部電極22にオーミック接触している。
【0013】
各コンタクト領域32は、p型不純物濃度が高いp型領域である。各トレンチ間領域に、コンタクト領域32が配置されている。各コンタクト領域32は、上面12aを含む位置に配置されている。各コンタクト領域32は、上部電極22にオーミック接触している。各コンタクト領域32は、ソース領域30に隣接している。
【0014】
ボディ領域34は、コンタクト領域32よりもp型不純物濃度が低いp型領域である。ボディ領域34は、複数のトレンチ間領域に跨って分布している。ボディ領域34は、ソース領域30及びコンタクト領域32に対して下側から接している。ボディ領域34は、ソース領域30の下側でゲート絶縁膜16に接している。
【0015】
ドリフト領域36は、ソース領域30よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。ドリフト領域36は、複数のトレンチ間領域の下部に跨って分布している。ドリフト領域36は、ボディ領域34に対して下側から接している。ドリフト領域36は、ボディ領域34の下側でゲート絶縁膜16に接している。ドリフト領域36は、ボディ領域34によって各ソース領域30から分離されている。
【0016】
各底部領域38は、各トレンチ14の底面を含む位置に配置されている。各底部領域38は、対応するトレンチ14の底面に沿って設けられている。各底部領域38は、対応するトレンチ14の底面においてゲート絶縁膜16に接している。
図1に示す断面では、各底部領域38は、ドリフト領域36によってボディ領域34から分離されている。各底部領域38は、ボディ領域34の電位に接続されていてもよいし、フローティングしていてもよい。各底部領域38がボディ領域34の電位に接続されている場合、各底部領域38は図示しない位置でボディ領域34に接続されている。各底部領域38は、その側面及び底面においてドリフト領域36と接している。
【0017】
バッファ領域39は、ドリフト領域36よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。バッファ領域39は、ドリフト領域36に対して下側から接している。
【0018】
ドレイン領域40は、バッファ領域39よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。ドレイン領域40は、バッファ領域39に対して下側から接している。ドレイン領域40は、下面12bを含む位置に配置されている。ドレイン領域40は、下部電極24に対してオーミック接触している。
【0019】
スイッチング素子10の使用時には、下部電極24に対して上部電極22よりも高い電位が印加される。ゲート電極18にゲート閾値以上の電位を印加すると、ボディ領域34のうちのゲート絶縁膜16に隣接する部分(以下、チャネル領域という)にチャネルが形成される。チャネルによって、各ソース領域30がドリフト領域36に接続される。このため、ソース領域30からチャネル、ドリフト領域36及びバッファ領域39を介してドレイン領域40へ電子が流れる。すなわち、スイッチング素子10がオンする。以上に説明したように、スイッチング素子10がオンすると、チャネル領域に形成されるチャネルを介して電子が流れる。したがって、チャネル領域は、スイッチング素子の特性(特に、チャネル抵抗、ゲート閾値など)に大きく影響する。
【0020】
ゲート電極18の電位をゲート閾値未満の電位まで低下させると、チャネルが消失し、電子の流れが停止する。すなわち、スイッチング素子10がオフする。スイッチング素子10がオフすると、ボディ領域34及び各底部領域38からドリフト領域36に空乏層が広がる。各底部領域38からドリフト領域36に広がる空乏層によって、各トレンチ14の底面近傍における電界集中が抑制される。したがって、スイッチング素子10は高い耐圧を有する。
【0021】
次に、スイッチング素子10の製造方法について説明する。スイッチング素子10は、全体がドリフト領域36によって構成された半導体基板12(すなわち、加工前の半導体基板12)から製造される。
【0022】
まず、半導体基板12に対してエピタキシャル成長、イオン注入等を実施することにより、
図2に示すようにソース領域30、コンタクト領域32、及び、ボディ領域34を形成する。これにより、上面12aに露出する範囲にソース領域30が設けられており、ソース領域30の下部にボディ領域34が設けられており、ボディ領域34の下部にドリフト領域36が設けられた構造が得られる。
【0023】
次に、
図3に示すように、半導体基板12の上部に開口部50aを有するマスク50を形成する。ここでは、ソース領域30の中央部の上部に開口部50aが位置するようにマスク50を形成する。次に、マスク50を介して半導体基板12の上面12aに対して異方性エッチングを実施する。これにより、上面12aのうちのソース領域30が露出している各範囲内にトレンチ14を形成する。ここでは、トレンチ14の深さD1がソース領域30の厚さT1よりも小さくなるようにトレンチ14を形成する。すなわち、トレンチ14がソース領域30を貫通しないようにトレンチ14を形成する。
【0024】
次に、
図4に示すように、マスク50を介して半導体基板12にp型不純物(例えば、アルミニウムイオンなど)を注入する。すなわち、各トレンチ14の底面にp型不純物を注入する。ここでは、p型不純物がボディ領域34を貫通してドリフト領域36内で停止するようにp型不純物を注入することによって、ドリフト領域36の内部に底部領域38を形成する。なお、
図4では底部領域38がボディ領域34から分離されているが、
図5に示すように底部領域38の上端がボディ領域34と重複するように底部領域38が形成されてもよい。
【0025】
次に、
図6に示すように、マスク50を介してトレンチ14の底面に対して異方性エッチングを実施することで、トレンチ14の深さを増加させる。ここでは、トレンチ14がボディ領域34を貫通し、トレンチ14の底面に底部領域38が露出するように、トレンチ14の深さを増加させる。なお、
図4、5のいずれの状態であっても、エッチングによりトレンチ14を深くすることで
図6のようにトレンチ14の底面に底部領域38を露出させることができる。トレンチ14がボディ領域34を貫通するので、トレンチ14の側面にボディ領域34とドリフト領域36が露出する。トレンチ14の側面に露出する範囲のボディ領域34が、上述したチャネル領域となる。トレンチ14を深くした後に、マスク50を除去する。
【0026】
次に、
図7に示すように、トレンチ14の内面を覆うゲート絶縁膜16を形成する。次に、
図8に示すように、トレンチ14内にゲート電極18を形成する。次に、半導体基板12の上部に層間絶縁膜20と上部電極22を形成する。次に、半導体基板12の下面12bにn型不純物をイオン注入することによって、バッファ領域39とドレイン領域40を形成する。次に、半導体基板12の下部に下部電極24を形成する。以上の工程により、
図1に示すスイッチング素子10が完成する。
【0027】
次に、上述した製造方法の利点について説明する。
図9は比較例1の底部領域38の形成工程を示している。
図9では、トレンチ14を形成することなく半導体基板12の上面12aに対してp型不純物を注入して底部領域38を形成する。この場合、p型不純物の注入距離(すなわち、上面12aから底部領域38の形成位置までの距離)が長いので、高いエネルギーでp型不純物を注入する必要がある。これに対し、実施形態の製造方法では、
図4、5に示すように、トレンチ14が形成されている状態でp型不純物の注入を行うので、
図9よりも不純物の注入距離が短い。したがって、
図9よりも低い注入エネルギーで底部領域38を形成することができる。このため、底部領域38を低コストで形成することができる。
【0028】
図10は、比較例2の底部領域38の形成工程を示している。
図10では、ドリフト領域36に達するトレンチ14を形成し、トレンチ14の底面にp型不純物を注入することによって底部領域38を形成している。この方法では、
図10において破線矢印で示すように、マスク50、半導体基板12等において反射、散乱されたp型不純物がボディ領域34の範囲内でトレンチ14の側面に注入される。すなわち、反射、散乱されたp型不純物がチャネル領域に直接注入される。このため、
図10の製造方法では、チャネル領域に多数の結晶欠陥が形成され、チャネル抵抗の上昇、ゲート閾値のばらつき等の問題が生じる。これに対し、
図4、5に示すように、実施形態の製造方法では、p型不純物の注入工程においてトレンチ14の側面にボディ領域34が露出していない。このため、
図4、5において破線矢印で示すように、マスク50、半導体基板12等において反射、散乱されたp型不純物がチャネル領域に直接注入されない。このように、反射、散乱されたp型不純物のチャネル領域への注入が抑制される。したがって、実施形態の製造方法によれば、チャネル抵抗の上昇、ゲート閾値のばらつき等の問題を防止できる。なお、実施形態の製造方法では、底部領域38の形成工程において反射、散乱されたp型不純物がトレンチ14の側面を構成するソース領域30に注入される。しかしながら、ソース領域30のn型不純物濃度は高いので、ソース領域30にp型不純物が注入されてもスイッチング素子10の特性にほとんど影響しない。
【0029】
また、上述したように、実施形態の製造方法では、トレンチ14の側面にp型不純物の注入防止用の保護膜を形成する必要がない。したがって、トレンチ14の幅が狭くても底部領域38に対するp型不純物の注入工程を好適に実施することができる。トレンチ14の幅を狭くすることができるので、スイッチング素子を微細化することができる。このため、この製造方法によれば、高密度に集積化されたスイッチング素子を形成することができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、底部領域38の形成前においてトレンチ14の深さD1がソース領域30の厚さT1よりも小さかった。しかしながら、底部領域38の形成前においてトレンチ14の深さD1がソース領域30の厚さT1と等しくてもよい。この構成でも、底部領域38の形成時にトレンチ14の側面にボディ領域34が露出していないので、チャネル領域へのp型不純物の注入を抑制できる。
【0031】
また、上述した実施形態では、スイッチング素子10がMOSFETであったが、スイッチング素子10がIGBT(すなわち、insulated gate bipolar transistor)であってもよい。
図1においてn型のドレイン領域40をp型のコレクタ領域に置き換えることで、IGBTの構造を得ることができる。IGBTの製造工程でも、上述した実施形態と同様の製造方法を採用することができる。
【0032】
また、上述した実施形態では、底部領域38がp型領域であったが、底部領域38がドリフト領域36よりもn型不純物濃度が高いn型領域であってもよい。
図4、5においてトレンチ14の底面に注入する不純物をn型不純物とすることで、n型の底部領域38を形成することができる。この場合には、チャネル領域へのn型不純物の注入が抑制される。この場合にも、スイッチング素子の特性の変化(すなわち、チャネル抵抗の上昇、ゲート閾値のばらつきの増加など)を抑制することができる。
【0033】
実施例のソース領域30は、第1n型領域の一例である。実施例のドリフト領域36は第2n型領域の一例である。実施例の底部領域38は不純物注入領域の一例である。
【0034】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
12:半導体基板、14:トレンチ、16:ゲート絶縁膜、18:ゲート電極、30:ソース領域、34:ボディ領域、36:ドリフト領域、38:底部領域