IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日進ゴム株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社佐野商会の特許一覧

特開2024-167650樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法
<>
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図1
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図2
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図3
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図4
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図5
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図6
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図7
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図8
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図9
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図10
  • 特開-樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167650
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】樹脂製パレット及びその製造方法並びにドラム缶の移送方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/32 20060101AFI20241127BHJP
   B65D 19/24 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B65D19/32 G
B65D19/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083869
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】592160607
【氏名又は名称】日進ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505090595
【氏名又は名称】株式会社佐野商会
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】和氣 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 則夫
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063BA05
3E063CA01
3E063CA22
3E063EE01
3E063EE03
(57)【要約】
【課題】
ドラム缶を積載して移送する場合に、ドラム缶が倒れにくくすることができる樹脂製パレットを提供する。
【解決手段】
上面側に複数の滑り止め部材20を備えた樹脂製パレット10において、その上面に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶100の底部チャイム102に接触している又は底部チャイム102からの距離が20mm以下である滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき3個以上となるように前記滑り止め部材20を配するようにした。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に複数の滑り止め部材を備えた樹脂製パレットであって、
その上面に基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が20mm以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるように前記滑り止め部材が配された
ことを特徴とする樹脂製パレット。
【請求項2】
その上面に基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに下方から接触している滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき2個以上となるようにされた請求項1記載の樹脂製パレット。
【請求項3】
前記滑り止め部材は、樹脂製パレットの上面から突出して設けられ、
樹脂製パレットの上面に対する前記滑り止め部材の突出高さが1mm以上5mm以下である請求項1記載の樹脂製パレット。
【請求項4】
その上面に基準ドラム缶を3缶均等配置で積載した際にも、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が20mm以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるようにされた請求項1記載の樹脂製パレット。
【請求項5】
前記滑り止め部材の個数が、12個以上、70個以下である請求項1記載の樹脂製パレット。
【請求項6】
請求項1~4いずれか記載の樹脂製パレットを用いてドラム缶を移送するドラム缶の移送方法。
【請求項7】
上面側に複数の滑り止め部材を備えた樹脂製パレットの製造方法であって、
所定の寸法を有する基準ドラム缶を定める基準ドラム缶決定工程と、
樹脂製パレットの上面に基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が20mm以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるように前記滑り止め部材の配置を決定する滑り止め配置決定工程と
を経ることを特徴とする樹脂製パレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製パレットに関する。本発明はまた、この樹脂製パレットの製造方法と、この樹脂製パレットを用いたドラム缶の移送方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫等で荷役作業を行う際には、パレットを使用することが一般的となっている。パレットの側面には、フォークリフトやハンドリフトの爪を差し込むための差込口が設けられている。荷物をパレットの上面に載置しておくことによって、フォークリフトやハンドリフトを用いた荷役作業を効率的に行うことが可能になる。
【0003】
パレットは、木製のものが広く普及している。しかし、木製のパレットには、腐りやすいという欠点がある。また、表面がささくれ立った状態になりやすいという欠点もある。このため、近年は、樹脂製のパレットも普及し始めている。ところが、樹脂製のパレットは、木製のパレットと比較して表面が滑らかな傾向がある。このため、パレットに載せた荷物がパレットの上面に対して滑りやすいという問題があった。
【0004】
この点、特許文献1の図1には、その上面の略全面に滑り止めシート4が貼着された運搬用パレット1が記載されている。この滑り止めシート4は、シリコーン混和物から形成されており、荷物の荷重により変形し、荷物の表面にあるミクロの凹凸に馴染んで、荷物を固定する(滑りにくくする)ことができるとされている。しかし、このようにパレット1の上面全体に滑り止めシート4を設けるようにすると、荷物の荷重が滑り止めシート4に対して分散してかかるため、例えば、滑り止めシートの表面や荷物の底部等に液状物(水、油、樹脂エマルジョン等)が付着している場合等に、十分な滑り止め効果が得られないおそれがあった。
【0005】
一方、特許文献2の図1(b)には、その上面に滑り止め材4をスポット状に装着した合成樹脂製のパレット1が記載されている。この滑り止め材4は、同文献の段落0015に記載のように、パレット1の上面よりもわずかに(0.7mm)高くなっている。パレット1の上面に荷物を載せると、荷物の荷重がスポット状の滑り止め材4に対して集中的にかかるため、荷物の底部を滑り止め材4に密着させやすくなる。このため、例えば、滑り止め材4の表面や荷物の底部等に液状物が付着している場合であっても、滑り止めシートに比べれば、荷物が滑りにくくすることができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-081268号公報
【特許文献2】特開平10-077038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、樹脂製パレットは、ドラム缶の移送にもよく用いられている。ドラム缶は、底部面積に対して高さがあるため、パレットに積載して移送している際に、衝撃やパレットの傾き等によって、パレット上で倒れるおそれがある。ところが、特許文献2の図1(b)に記載のパレット1では、ドラム缶の倒れやすさに対する工夫等は特になされていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ドラム缶を積載して移送する場合に、ドラム缶が倒れにくくすることができる樹脂製パレットを提供するものである。また、この樹脂製パレットの製造方法と、この樹脂製パレットを用いたドラム缶の移送方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
上面側に複数の滑り止め部材を備えた樹脂製パレットであって、
その上面に基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が20mm以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるように前記滑り止め部材が配された
ことを特徴とする樹脂製パレット
を提供することによって解決される。
【0010】
ここで、「基準ドラム缶」とは、JIS Z1600に準拠し、クロージングリングの外径(D4)が約613mmであり、底部チャイムの外径(D3)が約580mmであり、底部チャイムの内径が約567mmであるドラム缶のことをいう。また、「4缶均等配置」とは、後掲の図4に示すように、4缶の基準ドラム缶が、平面視略正方格子状に外接した状態で、かつ、樹脂製パレットを前後左右に4等分割した各区画に各基準ドラム缶が1つずつ収まる状態で、樹脂製パレットの略中央に配された配置のことをいう。さらに、「底部チャイムからの距離」とは、滑り止め部材が底部チャイムの外側にある場合には、底部チャイムの外壁からの距離を意味するものとし、滑り止め部材が底部チャイムの内側にある場合には、底部チャイムの内壁からの距離を意味するものとする。
【0011】
パレットには、ドラム缶(特に、JIS Z1600に準拠するドラム缶)を最大4缶積載できることが一般的であるため、4缶均等配置は、ドラム缶を積載する際に最も使用頻度が高い配置と考えられる。そして、ドラム缶の底部には、通常、底部チャイムと呼ばれるリング状の脚部が設けられている。本発明に係る樹脂製パレットでは、樹脂製パレットの上面にドラム缶を積載した際に、ドラム缶の底部チャイムに接触している又は20mm以下の距離で近接している滑り止め部材が、各ドラム缶につき3個以上となるようにしている。これにより、ドラム缶がパレット上で大きく滑ったり倒れたりしにくくすることができる。
【0012】
ところで、底部チャイムに滑り止め部材が接触している場合だけでなく、所定距離以下で近接している場合であってもドラム缶が倒れにくくすることができる理由は、以下の通りである。すなわち、パレット上でドラム缶が倒れる場合のパターンとしては、まず何らかの衝撃やパレットの傾き等によってパレット上でドラム缶が滑り、滑って移動したことによってドラム缶に勢いが付いて倒れるというパターンが典型的であるところ、底部チャイムに近接している滑り止め部材は、パレット上でドラム缶がわずかに滑った段階で底部チャイムに接触することができ、ドラム缶に勢いが付く前にドラム缶の移動を止めることができるからである。
【0013】
本発明に係る樹脂製パレットは、その上面に基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに下方から接触している(すなわち、底部チャイムがその上に乗っている)滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき2個以上となるようにすることが好ましい。これにより、パレット上でドラム缶がより滑りにくくすることができ、その結果、ドラム缶がより倒れにくくすることができる。
【0014】
前記滑り止め部材は、例えば、その上端が樹脂製パレットの上面と略同一の高さとなるように設けることもできるが、本発明に係る樹脂製パレットにおいては、前記滑り止め部材を、樹脂製パレットの上面から突出して設けることが好ましい。これにより、ドラム缶の底部チャイムに滑り止め部材の上面部分が接触した場合(すなわち、滑り止め部材の上に底部チャイムが乗った場合)だけでなく、底部チャイムに滑り止め部材の側面部分が接触した場合であっても、滑り止め効果を発揮することができる。この場合において、樹脂製パレットの上面に対する前記滑り止め部材の突出高さが小さすぎると、上記の効果を得にくくなるおそれがあり、突出高さが大きすぎると、滑り止め部材にドラム缶の底部チャイムが側方から接触した際等に、滑り止め部材が破損したり脱落したりするおそれがある。このため、樹脂製パレットの上面に対する前記滑り止め部材の突出高さは、1mm以上5mm以下とすることが好ましい。
【0015】
ところで、樹脂製パレットでドラム缶を移送する際には、ドラム缶を4缶積載する場合だけでなく、3缶積載する場合も想定される。このため、本発明に係る樹脂製パレットは、その上面に基準ドラム缶を3缶均等配置で積載した際にも、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が20mm以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるようにすることが好ましい。ここで、「3缶均等配置」とは、後掲の図5に示すように、3缶の基準ドラム缶が、各々自身以外の2缶の基準ドラム缶に外接した状態で、略左右対称となるように、樹脂製パレットの略中央に配された配置のことをいう。これにより、ドラム缶を3缶均等配置で積載して移送した場合にも、ドラム缶を倒れにくくすることができる。
【0016】
本発明に係る樹脂製パレットにおいて、滑り止め部材の個数は、12個以上とされる。ただし、滑り止め部材の個数が多すぎると、樹脂製パレットの製造コストや手間がかさむおそれがある。このため、前記滑り止め部材の個数は、70個以下とすることが好ましい。
【0017】
本発明に係る樹脂製パレットは、これを用いてドラム缶を移送するドラム缶の移送方法に用いることができる。本発明に係る樹脂製パレットを用いて移送するドラム缶は、前述した基準ドラム缶に限定されず、任意のドラム缶とすることができる。
【0018】
本発明に係る樹脂製パレットは、
上面側に複数の滑り止め部材を備えた樹脂製パレットの製造方法であって、
所定の寸法を有する基準ドラム缶を定める基準ドラム缶決定工程と、
樹脂製パレットの上面に基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が20mm以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるように前記滑り止め部材の配置を決定する滑り止め配置決定工程と
を経ることを特徴とする樹脂製パレットの製造方法
によって製造することができる。この場合の基準ドラム缶としては、樹脂製パレットの用途等に応じて、任意のドラム缶を選定することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によって、ドラム缶を積載して移送する場合に、ドラム缶が倒れにくくすることができる樹脂製パレットを提供することが可能になる。また、この樹脂製パレットの製造方法と、この樹脂製パレットを用いたドラム缶の移送方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】樹脂製パレットの一例を示す斜視図である。
図2図1の樹脂製パレットの平面図である。
図3図2におけるA-A’部分の拡大図である。
図4図1の樹脂製パレットに、基準ドラム缶を4缶均等配置で積載した状態を模式的に示す図である。
図5図1の樹脂製パレットに、基準ドラム缶を3缶均等配置で積載した状態を模式的に示す図である。
図6図1の樹脂製パレットに、基準ドラム缶を左右2缶均等配置で積載した状態を模式的に示す図である。
図7図1の樹脂製パレットに、基準ドラム缶を前後2缶均等配置で積載した状態を模式的に示す図である。
図8図1の樹脂製パレットに、基準ドラム缶を1缶中央配置で積載した状態を模式的に示す図である。
図9図3におけるB-C部分の拡大図である。
図10図9のS-S断面図である。
図11図9の滑り止め部材を、樹脂製パレットから取り出して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.樹脂製パレット
1.1 概要
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、樹脂製パレット10の一例を示す斜視図である。図2は、図1の樹脂製パレット10の平面図である。図3は、図2におけるA-A’部分の拡大図である。
【0022】
図1に示す樹脂製パレット10は、樹脂製パレット10の上面を形成する天板部11と、樹脂製パレット10の下面(底面)を形成する底板部12と、天板部11及び底板部12の周縁同士を接続する側端面13とを有する略四角板状を為している。この種の樹脂製パレット10は、「平パレット」とも呼ばれる。なお、樹脂製パレット10は、底板部12を有さず、底面(特に、差込口14の下側の面)が解放されたタイプとすることもできる。
【0023】
樹脂製パレット10の側端面13には、フォークリフト(図示省略)やハンドリフト(図示省略)等のリフトの爪を差し込むための差込口14が設けられている。リフトの爪は、通常、左右一対で設けられているため、それを差し込むための差込口14も、通常、1つの側端面13に左右一対で設けられる。樹脂製パレット10は、対向する2面の側端面13を2組(すなわち4面)有しており、その全てに差込口14を設けることもできるが、図1に示した樹脂製パレット10では、1組(対向する2面)の側端面13のみに、差込口14を設けている。以下、樹脂製パレット10における、対向する差込口14同士を結んだ方向(すなわち、差込口14からリフトの爪等を差し込むことができる方向。図1~3及び後掲の図4~11においては、y軸方向。)を、「前後(方向)」と表現することがあり、前後方向に直交し樹脂製パレット10の上面に対して平行な方向(図1~3及び後掲の図4~11においては、x軸方向)を「左右(方向)」と表現することがある。
【0024】
樹脂製パレット10の寸法は、特に限定されない。ただし、樹脂製パレット10が小さすぎると、積載できる荷物の量が少なくなりすぎるおそれがあり、樹脂製パレット10が大きすぎると、樹脂製パレット10の取りまわしがしにくくなるおそれや、樹脂製パレット10が重くなりすぎるおそれがある。このため、樹脂製パレット10の左右幅W図2)は、1100mm以上1400mm以下であることが好ましい。樹脂製パレット10の左右幅Wは、例えば、1200mm以上1300mm以下とすることができる。また、樹脂製パレット10の上下幅W図2)は、1100mm以上1400mm以下であることが好ましい。樹脂製パレット10の上下幅Wは、例えば、1200mm以上1300mm以下とすることができる。本実施形態における樹脂製パレット10は、平面視略正方形状であり、左右幅W及び上下幅Wは共に略1300mmとなっている。樹脂製パレット10は、例えば、左右幅W及び上下幅Wが共に略1200mmの平面視略正方形状とすることもできる。
【0025】
樹脂製パレット10の素材は、常温(23°C)で固体である樹脂であれば特に限定されない。樹脂製パレット10の素材としては、成形の容易さから、熱可塑性樹脂を採用することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)や、塩化ビニル樹脂や、ポリスチレン樹脂や、ABS樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類だけ用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、再生樹脂を用いることもできる。
【0026】
樹脂製パレット10は、図1~3に示すように、その上面側(天板部11の上面)に、複数の滑り止め部材20を備えている。これにより、樹脂製パレット10の上に荷物を積載して移送した際に、その荷物が樹脂製パレット10の上面に対して滑りにくくすることができる。本実施形態における滑り止め部材20は、後で詳しく説明するように、スポット型(ブロック型)であり、シート状やテープ状ではない。これにより、荷物に対して滑り止め部材20が局所的(部分的)に接触するようにし、荷物の荷重(下方向の荷重や、後述するように荷物が滑り止め部材20に対して側方から接触する場合には、左右方向の荷重)が滑り止め部材20に集中的にかかるようにすることができる。したがって、滑り止め部材20による滑り止め効果を高めやすい。
【0027】
樹脂製パレット10における滑り止め部材20の配置は、左右対称(y軸を対称軸とする線対称)とすることが好ましい。本実施形態においては、滑り止め部材20の配置を、左右対称かつ上下対称(x軸を対称軸とする線対称)としている。
【0028】
本実施形態の樹脂製パレット10は、特に、ドラム缶の移送に適している。すなわち、本実施形態の樹脂製パレット10では、樹脂製パレット10の上にドラム缶を積載して移送した際に、ドラム缶が大きく滑ったり倒れたりしにくいように、滑り止め部材20が配されている。以下、滑り止め部材20の配置について詳しく説明する。
【0029】
1.2 滑り止め部材の配置
図4図8は、図1の樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を積載した状態を模式的に示す図である。図4は4缶均等配置で積載した状態を、図5は3缶均等配置で積載した状態を、図6は左右2缶均等配置で積載した状態を、図7は前後2缶均等配置で積載した状態を、図8は1缶中央配置で積載した状態を、それぞれ示している。図4図8において太い破線で示した円は、基準ドラム缶100のクロージングリング101の外縁を示しており、太い実線で示した二重の円は、内側の円が基準ドラム缶100の底部チャイム102の内壁102aを、外側の円が底部チャイム102の外壁102bを、それぞれ示している。
【0030】
ここで、「4缶均等配置」とは、図4に示すように、4缶の基準ドラム缶100が、平面視略正方格子状に外接した状態で(各基準ドラム缶100の平面視中心点を順に結んだ多角形が略正方形となるように外接した状態で)、かつ、樹脂製パレット10を前後左右に4等分割した各区画に各基準ドラム缶100が1つずつ収まる状態で、樹脂製パレット10の略中央(上下方向中央かつ左右方向中央。以下同じ。)に配された配置のことをいう。また、「3缶均等配置」とは、図5に示すように、3缶の基準ドラム缶100が、各々自身以外の2缶の基準ドラム缶100に外接した状態で、略左右対称となるように、樹脂製パレット10の略中央に配された配置のことをいう。さらに、「左右2缶均等配置」とは、図6に示すように、2缶の基準ドラム缶100が、左右方向に並んで外接した状態で、樹脂製パレット10の略中央に配された配置のことをいう。さらにまた、「前後2缶均等配置」とは、図7に示すように、2缶の基準ドラム缶100が、前後方向に並んで外接した状態で、樹脂製パレット10の略中央に配された配置のことをいう。そして、「1缶中央配置」とは、図8に示すように、1缶の基準ドラム缶100が樹脂製パレット10の略中央に配された配置のことをいう。
【0031】
一般に、樹脂製の平パレットには、JIS Z1600に準拠したドラム缶を最大で4缶積載することができる。したがって、図4に示す4缶均等配置に準じたドラム缶配置が、最も使用頻度が高い配置であると考えられる。
【0032】
そこで、図4に示すように、樹脂製パレット10の上面に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶100の底部チャイム102に接触している又は底部チャイム102(の内壁102a又は外壁102b)からの距離Lが所定基準距離L以下である滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき3個以上となるように、樹脂製パレット10の上面に設けられた複数の滑り止め部材20を配置した。これにより、樹脂製パレット10にドラム缶を4缶均等配置で積載して移送した場合に、ドラム缶がパレット上で大きく滑ったり倒れたりしにくくすることができる。底部チャイム102に滑り止め部材20が接触している場合だけでなく、近接している場合であってもドラム缶が倒れにくくすることができる理由は、既に説明した通りである。
【0033】
以下においては、「基準ドラム缶100の底部チャイム102に接触している又は底部チャイム102からの距離Lが所定基準距離L以下である」という条件に合致する滑り止め部材20のことを、その基準ドラム缶100の「近接範囲内にある」滑り止め部材20であると表現することがある。
【0034】
所定基準距離Lとしては、20mm以下の任意の値を採用することができる。所定基準距離Lは小さいほど、ドラム缶の転倒防止効果を高めやすくなる。一方、所定基準距離Lを小さくすると、滑り止め部材20の配置の制約が大きくなる。所定基準距離Lとしては、例えば、20mm、15mm、10mm等の値を採用することができる。本実施形態においては、所定基準距離Lを10mmとしている。
【0035】
樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、近接範囲内にある滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき4個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、6個以上であることがさらに好ましい。ただし、近接範囲内にある滑り止め部材20が多くなりすぎると、樹脂製パレット10全体で用いる滑り止め部材20の個数も多くなり、コストや手間がかさむおそれがある。このため、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、近接範囲内にある滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき10個以下であることが好ましく、8個以下であることがより好ましい。
【0036】
近接範囲内にある滑り止め部材20は、その全てが基準ドラム缶100の底部チャイム102に接触していない状態であってもよいが、積載したドラム缶の安定性をより高めるためには、いくつかの滑り止め部材20の上に底部チャイム102が乗っている状態が好ましい。具体的には、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、基準ドラム缶100の底部チャイム102に下方から接触している滑り止め部材20が、各基準ドラム100缶につき2個以上となることが好ましい。下方から接触している滑り止め部材20にはドラム缶の荷重がかかるため、よりしっかりとした滑り止め効果を得やすい。以下においては、「基準ドラム缶100の底部チャイム102に下方から接触している滑り止め部材20」のことを、その基準ドラム缶100に対して「下方接触状態にある」滑り止め部材20であると表現することがある。
【0037】
樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、下方接触状態となる滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき3個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましく、5個以上であることがさらに好ましい。ただし、下方接触状態となる滑り止め部材20が多くなりすぎると、樹脂製パレット10全体で用いる滑り止め部材20の個数も多くなり、コストや手間がかさむおそれがある。このため、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際に、下方接触状態となる滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき9個以下であることが好ましく、7個以下であることがより好ましい。
【0038】
ところで、4缶均等配置において、基準ドラム缶100同士が外接している部分では、基準ドラム缶100同士が互いに支えあっている状態となっている。このため、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した際には、各基準ドラム缶100の近接範囲内にある滑り止め部材20が、その基準ドラム缶100における他の基準ドラム缶100との2箇所の外接点よりも外側(樹脂製パレット10の中心点から見て外側)の部分に、2個以上配されるようにすることが好ましく、4個以上配されるようにすることがより好ましい。これにより、滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100の外接点よりも外側部分を重点的に支えることができ、ドラム缶をより滑りにくくすることができる。
【0039】
ここまでは、基準ドラム缶100を4缶均等配置で積載した場合について説明した。ただし、樹脂製パレット10には、ドラム缶を4缶積載する場合だけでなく、3缶積載する場合も想定される。そこで、図5に示すように、樹脂製パレット10の上面に基準ドラム缶100を3缶均等配置で積載した際にも、近接範囲内にある滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき3個以上となるようにすることが好ましい。これにより、樹脂製パレット10にドラム缶を3缶積載して移送する場合にも、ドラム缶を滑りにくくすることができる。近接範囲内にある滑り止め部材20は、既に述べた理由により、各基準ドラム缶100につき10個以下であることが好ましく、8個以下であることがより好ましい。
【0040】
同様に、樹脂製パレット10には、ドラム缶を2缶積載する場合や、1缶積載する場合も想定される。そこで、図6~8に示すように、樹脂製パレット10の上面に基準ドラム缶100を、左右2缶均等配置で積載した際や、前後2缶均等配置で積載した際や、1缶中央配置で積載した際にも、それぞれ、近接範囲内にある滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき3個以上となるようにすることが好ましい。これにより、樹脂製パレット10にドラム缶を2缶積載して移送する場合や1缶積載して移送する場合にも、ドラム缶を滑りにくくすることができる。
【0041】
図5に示す3缶均等配置では、3缶のドラム缶が互いに外接して2方向から支え合っているため、各ドラム缶は比較的安定した状態となっている。これに対し、図6に示す左右2缶均等配置や、図7に示す前後2缶均等配置では、ドラム缶同士による支え合いの力は1方向だけであるため、各ドラム缶は比較的不安定な状態となっている。このため、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を、左右2缶均等配置や、前後2缶均等配置で積載した際には、それぞれ、近接範囲内にある滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき4個以上であることがより好ましく、5個以上であることがさらに好ましく、6個以上であることがよりさらに好ましい。また、下方接触状態となる滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。近接範囲内にある滑り止め部材20は、既に述べた理由により、各基準ドラム缶100につき10個以下であることが好ましく、8個以下であることがより好ましい。下方接触状態となる滑り止め部材20は、既に述べた理由により、各基準ドラム缶100につき9個以下であることが好ましく、7個以下であることがより好ましい。
【0042】
図4~8に示す配置のなかでも、図8の1缶中央配置は、ドラム缶同士による支え合いの力が全く得られないため、ドラム缶が最も不安定になりやすい。このため、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を1缶中央配置で積載した際には、近接範囲内にある滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき6個以上であることがより好ましく、8個以上であることがさらに好ましく、10個以上であることがよりさらに好ましい。また、下方接触状態となる滑り止め部材20が、各基準ドラム缶100につき4個以上であることが好ましく、6個以上であることがより好ましく、8個以上であることがさらに好ましい。近接範囲内にある滑り止め部材20は、既に述べた理由により、各基準ドラム缶100につき20個以下であることが好ましく、15個以下であることがより好ましい。下方接触状態となる滑り止め部材20は、既に述べた理由により、各基準ドラム缶100につき20個以下であることが好ましく、15個以下であることがより好ましい。
【0043】
図1に示す本実施形態の樹脂製パレット10に、基準ドラム缶100を4缶均等配置(図4)で積載した場合、近接範囲内(所定基準距離L:10mm)にある滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき7個であり、下方接触状態となる滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき6個である。また、本実施形態の樹脂製パレット10に、基準ドラム缶100を3缶均等配置(図5)で積載した場合、近接範囲内(所定基準距離L:10mm)にある滑り止め部材20は、上側(y軸方向正側)の1つの基準ドラム缶100については3個であり、下側(y軸方向負側)の2つの基準ドラム缶100については、各基準ドラム缶100につき6個である。また、下方接触状態となる滑り止め部材20は、上側の1つの基準ドラム缶100については0個であり、下側(y軸方向負側)の2つの基準ドラム缶100については、各基準ドラム缶100につき4個である。さらに、本実施形態の樹脂製パレット10に、基準ドラム缶100を左右2缶均等配置(図6)で積載した場合、近接範囲内(所定基準距離L:10mm)にある滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき7個であり、下方接触状態となる滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき6個である。さらにまた、本実施形態の樹脂製パレット10に、基準ドラム缶100を前後2缶均等配置(図7)で積載した場合、近接範囲内(所定基準距離L:10mm)にある滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき6個であり、下方接触状態となる滑り止め部材20は、各基準ドラム缶100につき3個である。そして、本実施形態の樹脂製パレット10に、基準ドラム缶100を1缶中央配置(図8)で積載した場合、近接範囲内(所定基準距離L:10mm)にある滑り止め部材20、及び、下方接触状態となる滑り止め部材20は、共に12個である。
【0044】
一枚の樹脂製パレット10に設けられる滑り止め部材20の個数(総数)は、最少で12個とされる。滑り止め部材20の個数は、30個以上であることが好ましく、40個以上であることがより好ましい。ただし、滑り止め部材20の個数が多すぎると、余分なコストや手間がかかるおそれがある。また、滑り止め部材20をスポット型とし、荷物に対して局所的に接触するようにしたことによるメリットを得にくくなるおそれもある。このため、滑り止め部材20の個数は、100個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましく、70個以下であることがさらに好ましい。図1に示す樹脂製パレット10においては、滑り止め部材20を58個設けている。
【0045】
1.3 滑り止め部材
図9は、図3におけるB-C部分の拡大図である。図10は、図9のS-S断面図である。図11は、図9の滑り止め部材20を、樹脂製パレット10から取り出して示した斜視図である。
【0046】
滑り止め部材20は、その上端が樹脂製パレット10の上面と略同一の高さとなるように設けることもできるが、図10に示すように、樹脂製パレット10の上面から突出して設けることが好ましい。これにより、樹脂製パレット10に積載した荷物が、滑り止め部材20の上に乗った場合だけでなく、滑り止め部材20の側方に接触した場合にも、滑り止め効果を発揮することができる。また、滑り止め部材20の上に荷物が乗った際に、荷物の荷重がより滑り止め部材20に集中しやすくすることができ、滑り止め効果をより高めることもできる。
【0047】
樹脂製パレット10の上面に対する滑り止め部材20の突出高さH図10)は、限定されないが、1mm以上であることが好ましい。これにより、上記の効果を得やすくなる。滑り止め部材20の突出高さHは、1.5mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることがさらに好ましい。ただし、滑り止め部材20の突出高さHが大きすぎると、滑り止め部材20に対して側方から荷物が接触した際に、滑り止め部材20が破損したり脱落したりしやすくなるおそれがある。このため、滑り止め部材20の突出高さHは、5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
滑り止め部材20の形状は、特に限定されない。滑り止め部材20は、例えば、平面視略多角形状や、平面視略角丸多角形状や、平面視略楕円形状や、平面視不定形状とすることができる。多角形としては、矩形、三角形、五角形、六角形等が例示される。また、楕円には、新円が含まれるものとする。本実施形態における滑り止め部材20は、図9に示すように、平面視略角丸長方形状となっている。
【0049】
滑り止め部材20の寸法は、限定されないが、大きすぎると、滑り止め部材20をスポット型としたことのメリットが得られにくくなるおそれがあり、小さすぎると、滑り止め効果を高めにくくなるおそれがある。このため、滑り止め部材20の平面視最大幅W図9)は、20mm以上80mm以下であることが好ましく、30mm以上50mm以下であることがより好ましい。また、滑り止め部材20の平面視面積は、400mm以上1000mm以下であることが好ましく、500mm以上800mm以下であることがより好ましい。本実施形態における滑り止め部材20は、その平面視最大幅Wが略36mmとなっており、その平面視面積が略650mmとなっている。本実施形態の樹脂製パレット10では、これに設けられた複数の滑り止め部材20が、全て略同一の形状と寸法を有しているが、1つの樹脂製パレット10に設けられる複数の滑り止め部材20は、その形状や寸法が互いに異なっていてもよい。
【0050】
滑り止め部材20を樹脂製パレット10に取り付ける方法は、特に限定されない。滑り止め部材20は、例えば、接着や融着によって樹脂製パレット10に取り付けるようにしてもよい。本実施形態においては、図10に示すように、滑り止め部材20を、滑り止め部21と、圧入部22とを備えたものとし、樹脂製パレット10の天板部11に設けられた圧入用穴部11aに、圧入部22を圧入することによって、滑り止め部材20を樹脂製パレット10に取り付けるようにしている。これにより、接着剤や融着用熱源等を用意しなくとも、圧入するだけで滑り止め部材20を樹脂製パレット10に取り付けることができる。滑り止め部21と圧入部22とは、一体的に成形されており、これにより滑り止め部材20が破損しにくくなっている。
【0051】
圧入部22の先端部(圧入方向奥側の端部)には、掛止部22aを設けている。圧入部22を圧入用穴部11aに圧入すると、この掛止部22aが圧入用穴部11aの奥側に引っ掛かることにより、滑り止め部材20が圧入用穴部11aから抜け出にくくすることができるようになっている。
【0052】
ただし、圧入部22に掛止部22aを設けたとしても、圧入部22が柔らかく簡単に変形してしまうと、圧入部22が圧入用穴部11aから抜け出るおそれがある。このため、圧入部22及び滑り止め部12を含む滑り止め部材20の略全体を適度に硬くすることが好ましい。具体的には、圧入部22及び滑り止め部12を含む滑り止め部材20略全体のJIS-A硬度(以下、単に「滑り止め部材20の硬度」と表現することがある。)を45度以上とすることが好ましい。これにより、パレット20の圧入用穴部11aに圧入された滑り止め部材20がその圧入用穴部11aから抜け出にくくすることができる。滑り止め部材20の硬度は、50度以上とすることがより好ましく、55度以上とすることがさらに好ましく、60度以上とすることがよりさらに好ましい。
【0053】
しかし、滑り止め部材20を硬くしすぎると、パレット20の圧入用穴部11aに対して滑り止め部材20を圧入すること自体が困難になるおそれがある。また、滑り止め部材20の摩擦係数を大きく確保しにくくなるおそれもある。このため、滑り止め部材20の硬度は、通常、80度以下とされる。滑り止め部材20の硬度は、70度以下とすることが好ましく、65度以下とすることがより好ましい。本実施形態の滑り止め部材20の硬度は、約60度となっている。
【0054】
滑り止め部材20の上面(滑り止め部21の上面)には、図9~11に示すように、複数の滑り止め突起20aが形成されている。これにより、荷物の底部や樹脂製パレット10の上面に水や油が付着している場合であっても、その水や油を滑り止め突起20aの隙間に逃し、その水や油が滑り止め突起20aの先端面と荷物の底部との間に入り込みにくくすることができ、滑り止め部材20が優れた滑り止め効果を発揮できるようになっている。
【0055】
ただし、上記の滑り止め効果は、滑り止め突起20aが簡単に倒伏するようでは、安定して発揮することができない。この点、本発明の滑り止め部材20では、図9及び図11に示すように、滑り止め突起20aを平面視V字状に形成しており、その水平断面もV字状を為すようにしている。これにより、滑り止め突起20aを横方向(V字の横幅方向)及び縦方向(V字の縦幅方向)のいずれにも倒れにくくすることができる。加えて、図9~11に示すように、滑り止め突起20aが倒れにくくするための補強部20aを、滑り止め突起20aの付根部を囲った状態に設けている。この補強部20aは、その幅が、下方(z軸負側)に向かって徐々に拡大するように形成されている。これらの工夫によって、滑り止め突起20aが倒れにくくしており、滑り止め突起20aが所望の滑り止め効果を安定して発揮できるようになっている。また、補強部20aは、滑り止め突起20aの付根部にゴミ等が溜まりにくくする機能も発揮する。
【0056】
滑り止め突起20aが形成するV字の開き角度θ(図3)は、0°よりも大きく180°よりも小さければ特に限定されない。しかし、V字の開き角度θが小さすぎると、滑り止め突起20aがV字の横幅方向に倒れやすくなるおそれがある。このため、V字の開き角度θは、30°以上とすることが好ましい。V字の開き角度θは、45°以上とすることがより好ましく、60°以上とすることがさらに好ましく、80°以上とすることが最適である。
【0057】
ただし、滑り止め突起20aが形成するV字の開き角度θを大きくしすぎると、滑り止め突起20aがV字の縦幅方向に倒れやすくなるおそれがある。このため、V字の開き角度θは、150°以下とすることが好ましい。V字の開き角度θは、140°以下とすることがより好ましく、130°以下とすることがさらに好ましく、120°以下とすることが最適である。本実施形態においては、滑り止め突起20aが形成するV字の開き角度θを110°に設定している。
【0058】
さらに、滑り止め突起20aの高さH図10)も、特に限定されない。しかし、滑り止め突起20aを低くしすぎると、荷物と滑り止め部材12との間に水や油が入ったときに、水や油がその隙間を通じて逃げにくくなる。加えて、滑り止め突起20aが僅かに摩耗しただけでなくなってしまう。このため、滑り止め突起20aの高さHは、0.3m以上とすることが好ましい。滑り止め突起20aの高さHは、0.5mm以上とすることがより好ましく、0.7mm以上とすることがさらに好ましい。
【0059】
ただし、滑り止め突起20aを高くしすぎると、滑り止め突起20aに対して側方から荷物が接触した場合に、滑り止め突起20aが破損しやすくなるおそれがある。このため、滑り止め突起20aの高さHは、3mm以下とすることが好ましい。本実施形態においては、滑り止め突起20aの高さHを1~2mmの範囲で設定しており、この高さHの凡そ半分(高さHの0.3~0.7倍の範囲)が補強部20aで補強されるようにしている。
【0060】
滑り止め部21に設ける滑り止め突起20aの個数は、2個以上であれば特に限定されない。しかし、滑り止め突起20aの数が少なすぎると、所望の滑り止め効果が奏されにくくなるおそれがある。このため、滑り止め突起20aの数は、3個以上とすることが好ましい。滑り止め突起20aの数は、4個以上とすることがより好ましい。
【0061】
ただし、滑り止め突起20aの数を多くしすぎると、必然的に、滑り止め部材20の寸法が大きくなり、滑り止め部材20の使い勝手が悪くなるおそれがある。このため、滑り止め突起20aの数は、通常、20個以下とされる。滑り止め突起20aの数は、10個以下であるとより好ましい。本実施形態においては、図9及び図11に示すように、5個の滑り止め突起20aを1列に設けている。滑り止め突起20aは、複数列で設けることもできる。
【0062】
滑り止め突起20aを平面視V字状に形成する場合には、V字状の滑り止め突起20aにおける尖った側(凸側)が樹脂製パレット10の外側を向くように、滑り止め突起20aを樹脂製パレット10に配することが好ましい。すなわち、図3に示すように、樹脂製パレット10の中心点Pから見て、V字状の滑り止め突起20aの尖った側(凸側)が、V字状の滑り止め突起20aの凹んだ側(凹側)よりも遠くなるように、滑り止め突起20aを配することが好ましい。これにより、樹脂製パレット10に積載した荷物が、樹脂製パレット10の外側に向かって滑ることを、より効果的に防止することができる。
【0063】
滑り止め部材20は、通常、弾性材料によって形成される。弾性材料としては、例えば、ゴムや、熱可塑性エラストマー(TPE)や、それらの混合体が挙げられる。
【0064】
ゴムとしては、天然ゴム(NR)のほか、ニトリルブタジエンゴム(NBR)や、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)や、ブタジエンゴム(BR)や、スチレンブタジエンゴム(SBR)や、イソプレンゴム(IR)や、ブチルゴム(IIR)や、クロロプレンゴム(CR)や、アクリルゴム(ACM)や、ウレタンゴム(U)やシリコーンゴム(SI)やフッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムが例示される。ゴムは、1種類だけを用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。ゴム材料には、再生ゴムを利用することもできる。
【0065】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(SBS)や、オレフィン系TPEや、塩化ビニル系TPEや、ウレタン系TPE等が例示される。熱可塑性エラストマーは、1種類だけを用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0066】
ゴムや熱可塑性エラストマーやそれらの混合体には、単体では弾性を有しない熱可塑性樹脂を混合することもできる。これにより、滑り止め部材20の硬度や強度を高めることができる場合がある。単体で弾性を有しない熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル(PVC)や、ポリスチレン(PS)等が例示される。
【0067】
滑り止め部材20には、ドラム缶等の重い荷物が長期間にわたり乗せられたままとなる可能性がある。このため、滑り止め部材20を形成する弾性材料は、ひずみにくい材質であることが好ましい。具体的には、滑り止め部材20を形成する弾性材料は、JIS K 6262に準拠して、70±1°Cで22時間圧縮することによって測定された圧縮永久ひずみ(以下、単に「圧縮永久ひずみ」と表現する場合がある。)が、40%以下であることが好ましい。滑り止め部材20を形成する弾性材料の圧縮永久ひずみは、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。弾性材料の圧縮永久ひずみの下限は、限定されないが、通常0%以上とされる。
【0068】
2.ドラム缶の移送方法
以上で説明した樹脂製パレット10は、これを用いて移送する荷物の種類や形状を特に限定されないが、ドラム缶を移送するドラム缶の移送方法に特に好適に用いることができる。以上においては、滑り止め部材20の配置を明確に説明する必要上、樹脂製パレット10に基準ドラム缶100を積載する場合について詳しく説明してきた。しかし、樹脂製パレット10を用いてドラム缶を移送する場合において、移送されるドラム缶(以下、「被移送ドラム缶」と呼ぶことがある。)は、基準ドラム缶100だけに限定されない。ただし、被移送ドラム缶の寸法が基準ドラム缶100から大きく乖離していると、滑り止め部材20による所望の滑り止め効果が得られにくいおそれがある。
【0069】
このため、被移送ドラム缶のクロージングリングの外径(D4)と、基準ドラム缶100のクロージングリングの外径(D4)との差は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、被移送ドラム缶の底部チャイムの外径(D3)と、基準ドラム缶100の底部チャイムの外径(D3)との差は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。さらに、被移送ドラム缶の底部チャイムの内径と、基準ドラム缶100の底部チャイムの内径との差は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。被移送ドラム缶としては、例えば、JIS Z1600に準拠したドラム缶を採用することができる。
【0070】
樹脂製パレット10を用いて被移送ドラム缶を移送する場合には、被移送ドラム缶を、4缶均等配置(図4)や、3缶均等配置(図5)や、左右2缶均等配置(図6)や、前後2缶均等配置(図7)や、1缶中央配置(図8)で樹脂製パレット10に積載することができる。
【0071】
3.樹脂製パレットの製造方法
樹脂製パレット10は、基準ドラム缶決定工程と、滑り止め配置決定工程とを経ることによって製造(設計)することができる。
【0072】
基準ドラム缶決定工程は、所定の寸法を有する基準ドラム缶を定める工程である。この場合における基準ドラム缶としては、以上で説明した基準ドラム缶100と同一である必要はなく、目的に応じて任意のドラム缶を選定することができる。基準ドラム缶としては、例えば、JIS Z1600に準拠したドラム缶を採用することができる。
【0073】
滑り止め配置決定工程は、樹脂製パレット10の上面に基準ドラム缶を4缶均等配置(図4)で積載した際に、基準ドラム缶の底部チャイムに接触している又は底部チャイムからの距離が所定基準距離L以下である滑り止め部材が、各基準ドラム缶につき3個以上となるように前記滑り止め部材の配置を決定する工程である。これにより、基準ドラム缶決定工程で決定した基準ドラム缶及びこれに類似の寸法を有するドラム缶を、倒れにくい状態で移送することができる樹脂製パレット10を製造(設計)することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 樹脂製パレット
11 天板部
11a 圧入用穴部
12 底板部
13 側端面
14 差込口
20 滑り止め部材
20a 滑り止め突起
20a 補強部
21 滑り止め部
22 圧入部
22a 掛止部
100 基準ドラム缶
101 クロージングリング
102 底部チャイム
102a 内壁
102b 外壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11