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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167666
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A61L2/18 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083893
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】五島 大輔
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058DD07
4C058DD16
4C058JJ06
4C058JJ24
(57)【要約】
【課題】オゾン濃度センサを使用せずに浴室内のオゾン濃度を推定することができる除菌装置を提供すること。
【解決手段】オゾン水を生成するオゾンユニット(20)と、このオゾンユニット(20)の運転を制御する制御手段(18)を備え、浴室(1)内に生成したオゾン水を噴出して除菌を行う除菌装置(30)において、制御手段(18)は、オゾンユニット(20)の単位時間当たりのオゾン生成量と運転開始から現在までの運転時間により算出される浴室(1)のオゾン量と、浴室(1)の容積とに基づいて浴室(1)の現在のオゾン濃度を推定し、このオゾン濃度が予め設定された安全基準濃度に到達した場合には、オゾンユニット(20)の運転を停止させると共にオゾンユニット(20)の運転を禁止する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン水を生成するオゾンユニットと、このオゾンユニットの運転を制御する制御手段を備え、浴室内に生成したオゾン水を噴出して除菌を行う除菌装置において、
前記制御手段は、前記オゾンユニットの単位時間当たりのオゾン生成量と運転開始から現在までの運転時間により算出される前記浴室のオゾン量と、前記浴室の容積とに基づいて前記浴室の現在のオゾン濃度を推定し、このオゾン濃度が予め設定された安全基準濃度に到達した場合には、前記オゾンユニットの運転を停止させると共に前記オゾンユニットの運転を禁止することを特徴とする除菌装置。
【請求項2】
前記制御手段は、オゾンの自然分解を加味して前記オゾンユニットの運転開始から所定時間毎に前記浴室の現在のオゾン濃度を推定するように構成され、
この現在のオゾン濃度は、前記オゾンユニットの単位時間当たりのオゾン生成量と、現在から所定時間前にオゾン濃度が推定されたときの前記浴室のオゾン量と、自然分解による所定時間当たりのオゾン減少率と、前記浴室の容積とに基づいて推定されることを特徴とする請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記オゾンユニットの運転を禁止した場合に、所定時間毎に行う前記浴室の現在のオゾン濃度の推定を継続し、少なくとも推定したオゾン濃度が前記安全基準濃度よりも低下するまで、前記オゾンユニットの運転の禁止を継続することを特徴とする請求項2に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌作用を有するオゾン水を浴室内に噴出することによって除菌を行う除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室内の除菌、脱臭、カビ抑制等を行うために、例えば特許文献1,2のように、オゾンガスを浴室内に吹き出す除菌運転を行う浴室の空調装置が知られている。除菌運転では、生成したオゾンガスを、浴室内から吸い込んだ空気と共に浴室内に吹き出す。また、特許文献1では、加熱した空気と共にオゾンガスを吹き出すことによって除菌等の効果を高めるように構成されている。
【0003】
オゾンガスは、その強力な酸化力によって除菌等が可能であると共に、短時間で自然に分解されて酸素になり、残留しないので扱い易い。しかし、空気中のオゾン分子が接触した対象にのみ作用するので、浴室内のオゾン濃度が低い場合には効果が限定的になる。
【0004】
一方、上水又は加熱した上水を浴室内に噴出させるミスト機能を備えた浴室の空調装置が知られている。例えば特許文献3のように、熱源機で加熱された温水との熱交換により上水を加熱してミストノズルから高温のミストを噴出させる。
【0005】
このミスト機能を備えた浴室の空調装置は、上水に塩素が含まれていること利用して、上水に通電して生成される次亜塩素酸を含んだ電解水を生成する電解水ユニットを備えている。そして、この電解水を浴室内にミストとして噴出させて、次亜塩素酸の殺菌作用により浴室内のカビ等の発生や増殖を抑制する除菌運転を行う。カビが発生する浴室の壁面や床に殺菌作用のあるミストが付着するので、カビ抑制効果が高められる。そこで、次亜塩素酸よりも酸化力が強力なオゾンガスを溶解させたオゾン水を生成して浴室に噴出させることにより、除菌性能を向上させることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-58155号公報
【特許文献2】特開2002-333158号公報
【特許文献3】特開2018-82795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オゾンガスは、その強い酸化力のため、空気中における濃度が高くなるほど人体に悪い影響を与えてしまう。そのため、浴室の空調装置から除菌運転中には浴室への入室を控えるように注意喚起をすることはできるが、浴室には入室可能である。一般的には、空気中のオゾン濃度について、人体に影響がない許容濃度が設定されているので、空調装置がオゾン濃度を検知して除菌運転を停止させることが考えられる。しかし、オゾン濃度を検知するオゾン濃度センサを装備させると製造コストが上昇するため、特許文献1,2のような空調設備には、オゾン濃度センサは装備されていない。
【0008】
そこで、オゾンガスによって人体に影響がないようにするため、特許文献1では間欠的にオゾンガスを生成するように構成され、一定時間オゾンガスを生成した後は所定時間オゾンガス生成を禁止して、オゾン濃度が過剰に上昇しないようにしている。一方、特許文献2では、オゾン濃度を検知せずに、オゾンガスの生成を停止した後は換気ファンを作動させて換気を行うようにしている。
【0009】
浴室内にオゾン水を噴出する場合でも、オゾンガスは水に溶け易くはないので、オゾン水からオゾンガスが空気中に放出され、浴室内のオゾン濃度が上昇する。また、ミストは気化し易く、オゾン水の蒸発に伴いオゾンガスが放出される。
【0010】
ここで、除菌運転を行う空調装置が設置される浴室の大きさは様々であり、小さい浴室ほど容易にオゾン濃度が上昇するので、許容濃度を超えてしまう虞がある。また、手動で除菌運転を繰り返し実行させることにより許容濃度を超える虞もある。そのため、製造コストを抑制しながら浴室内のオゾン濃度を容易に検知する技術が求められている。
【0011】
そこで、本発明は、浴室内にオゾン水を噴出させる除菌運転を行う除菌装置であって、オゾン濃度センサを使用せずに浴室内のオゾン濃度を推定することができる除菌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の除菌装置は、オゾン水を生成するオゾンユニットと、このオゾンユニットの運転を制御する制御手段を備え、浴室内に生成したオゾン水を噴出して除菌を行う除菌装置において、前記制御手段は、前記オゾンユニットの単位時間当たりのオゾン生成量と運転開始から現在までの運転時間により算出される前記浴室のオゾン量と、前記浴室の容積とに基づいて前記浴室の現在のオゾン濃度を推定し、このオゾン濃度が予め設定された安全基準濃度に到達した場合には、前記オゾンユニットの運転を停止させると共に前記オゾンユニットの運転を禁止することを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、除菌装置は、オゾンユニットによって生成した殺菌作用のあるオゾン水を浴室内に噴出させて、浴室内の除菌を行う。このオゾンユニットの運転を制御する除菌装置の制御手段は、オゾンユニットの単位時間当たりのオゾン生成量とその運転時間により算出されるオゾン量と、浴室の容積とに基づいて、浴室の現在のオゾン濃度を推定する。そして、推定したオゾン濃度が安全基準濃度に達すると、浴室のオゾン濃度がこれ以上高くならないように行う安全動作として、オゾンユニットの運転を停止し、このオゾンユニットの運転を禁止する。従って、オゾン濃度センサを使用せずに浴室の現在のオゾン濃度を推定することができ、オゾン濃度が上がり続けて人体に影響がある濃度になることを防止できる。
【0014】
請求項2の発明の除菌装置は、請求項1の発明において、前記制御手段は、オゾンの自然分解を加味して前記オゾンユニットの運転開始から所定時間毎に前記浴室の現在のオゾン濃度を推定するように構成され、この現在のオゾン濃度は、前記オゾンユニットの単位時間当たりのオゾン生成量と、現在から所定時間前にオゾン濃度が推定されたときの前記浴室のオゾン量と、自然分解による所定時間当たりのオゾン減少率と、前記浴室の容積とに基づいて推定されることを特徴としている。
上記構成によれば、制御手段は、自然分解によるオゾン量減少を加味して所定時間毎に浴室の現在のオゾン濃度を推定する。従って、浴室のオゾン濃度を一層正確に推定することができる。また、所定時間前、即ち前回推定したオゾン濃度を利用して簡単な計算で現在のオゾン濃度を推定するので、制御手段の計算負荷を軽減することができる。
【0015】
請求項3の発明の除菌装置は、請求項2の発明において、前記制御手段は、前記オゾンユニットの運転を禁止した場合に、所定時間毎に行う前記浴室の現在のオゾン濃度の推定を継続し、少なくとも推定したオゾン濃度が前記安全基準濃度よりも低下するまで、前記オゾンユニットの運転の禁止を継続することを特徴としている。
上記構成によれば、制御手段は、自然分解によって浴室内のオゾン量が減少して、少なくとも安全基準濃度未満になるまでオゾンユニットにオゾンを生成させないので、浴室内のオゾン濃度が人体に影響がある濃度まで上昇することを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の除菌装置によれば、オゾン濃度センサを使用せずに浴室内のオゾン濃度を推定することができ、浴室内のオゾン濃度が人体に影響がある濃度まで上がり続けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る除菌装置を装備した浴室の構成図である。
図2】本発明の実施例に係る除菌装置の構成図である。
図3】除菌運転制御のフローチャートの1例である。
図4】除菌運転制御のフローチャートの他の例である。
図5】浴室のオゾン濃度推移の1例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0019】
最初に浴室の構成について、図1に基づいて説明する。
浴室1には、温水が供給される浴槽2、カラン3、シャワー4が装備されている。これらに上水を加熱した温水を供給するために、給湯装置5が屋外に配設されている。給湯装置5は、浴槽2との間で、この浴槽2の湯水を循環させながら加熱する追焚機能を備えていてもよい。また、給湯装置5が浴室1以外の給湯、暖房を行うように構成されていてもよい。
【0020】
浴室1の天井には、天井カセットタイプの浴室暖房装置10が配設されている。この浴室暖房装置10は、給湯装置5との間で循環通路6を介して循環させる湯水の熱を利用して、矢印A1のように浴室1から吸気した空気を加熱し、矢印A2で示すように送風して浴室1を暖房する暖房運転を行う。また、浴室暖房装置10は、浴室1から吸気した空気を排気口11から屋外に排出して浴室1を換気する換気運転を行う。このとき排出された空気と同量の空気が、浴室1の不図示のドア等に設けられた通気口から浴室1内に供給される。浴室暖房装置10は、暖房運転と換気運転を同時に行って浴室1内を乾燥させる乾燥運転を行うこともできる。
【0021】
浴室暖房装置10には、複数のミストノズル12とミストユニット13と、これらを接続するミスト水通路14が装備されている。ミストユニット13は、循環通路6を流通する高温水を利用して、上水道に接続された給水通路7から供給される上水を加熱し、複数のミストノズル12から噴出させるミスト運転を行う。この浴室暖房装置10の暖房運転、換気運転、ミスト運転の操作等のために、操作リモコン15aが浴室1の壁に設置され、操作リモコン15bが浴室1に隣接する例えば脱衣室の壁に設置されている。
【0022】
給湯装置5は、例えば燃料の燃焼熱を利用して加熱した温水を供給する燃焼式の熱源機であるが、ヒートポンプ式の熱源機や燃料電池等の発電時の熱を利用する熱源機等であってもよい。図示を省略するが、給湯装置5はポンプを内蔵しており、このポンプによって給湯装置5と浴室暖房装置10の間で循環通路6に湯水を循環させる。
【0023】
次に、浴室暖房装置10とミストユニット13について、図2に基づいて説明する。
浴室暖房装置10は、給湯装置5から供給される温水と浴室1の空気との間で熱交換させるための暖房熱交換器16と、暖房ファン17を備えている。暖房ファン17は、暖房運転の際に暖房熱交換器16に浴室1の空気を送風すると共に、暖房熱交換器16で温められた空気を浴室1に送風する。
【0024】
また、浴室暖房装置10は、浴室1の温度を検知する温度センサ10aと、浴室1の湿度を検知する湿度センサ10bを有する。そして、暖房運転等を制御するために、これらセンサと暖房ファン17と給湯装置5とミストユニット13等に通信可能に接続された制御部18(制御手段)を備えている。また、浴室暖房装置10は、換気運転の際に浴室1の空気を排気口11から屋外に排出するための換気ファン19を備えている。
【0025】
暖房熱交換器16の複数のフィンを備えた伝熱管には、給湯装置5に接続された循環通路6が接続されている。循環通路6には、循環通路6を開閉するための熱動弁6aと、給湯装置5から供給される温水の温度を検知する温水温度センサ6bと、給湯装置5に戻る湯水の温度を検知する温水戻り温度センサ6cが装備されている。これら熱動弁6a、温水温度センサ6b、温水戻り温度センサ6cは、制御部18に通信可能に接続されている。
【0026】
ミストユニット13は、複数のミストノズル12に接続されたミスト水通路14を有し、給水通路7からの上水がミスト水通路14を介してミストノズル12に供給される。複数のミストノズル12は夫々開閉弁を有する。
【0027】
また、ミストユニット13は、オゾンユニット20とミスト熱交換器21とミスト水通路14を開閉する電磁弁22を有する。電磁弁22は、制御部18によって開閉制御され、ミスト噴出時に開放され、ミスト噴出停止時に閉止される。ミスト熱交換器21は、循環通路6から分岐して暖房熱交換器16をバイパスするバイパス通路23の湯水の熱を利用して、ミスト水通路14の上水を加熱する。オゾンユニット20は、ミスト水通路14の上水からオゾン水を生成する。ミスト熱交換器21とオゾンユニット20は、ミスト水通路14に直列に介装されているが、並列に介装されて何れか一方又は両方に上水を供給するために分配弁や複数の開閉弁で構成された分配手段を備えていてもよい。
【0028】
バイパス通路23のミスト熱交換器21よりも上流側には、バイパス通路23の湯水の流量を調整するための流量調整弁24が配設されている。バイパス通路23のミスト熱交換器21より下流側には、ミスト熱交換器21で熱交換をした後の温水の温度を検知する温水戻り温度センサ23aが配設されている。
【0029】
ミスト水通路14のミスト熱交換器21より下流側には、ミストノズル12から噴出する湯水の温度を検知するミスト水温度センサ14aが配設されている。ミストノズル12の開閉弁、ミスト水通路14の電磁弁22、流量調整弁24、ミスト水温度センサ14a,温水戻り温度センサ23a、オゾンユニット20等は、制御部18に通信可能又は駆動制御可能に接続されている。制御部18には、操作リモコン15a,15bが通信可能に接続されている。
【0030】
浴室暖房装置10のオゾンユニット20と、制御部18と、ミストノズル12と、ミスト水通路14によって、浴室1内に殺菌作用を有するオゾン水を噴出する除菌運転を行う除菌装置30が構成されている。オゾンユニット20は、ミスト水通路14を流通する上水に浸漬させる複数の電極を有し、これら複数の電極間に電圧を印加することにより上水の一部を電気分解する。このとき発生するオゾンガスが上水に溶解し、オゾン水が生成される。
【0031】
次に、加熱した上水をミストノズル12から噴出させるミスト運転(温水ミスト運転)について説明する。
例えば操作リモコン15aの操作によってミスト運転が開始されると、制御部18は給湯装置5にミスト運転のための温水の温度等の情報を送信して給湯装置5を作動させ、循環通路6を介してバイパス通路23に温水を循環させる。また、制御部18は、ミスト水通路14の電磁弁22と複数のミストノズル12の開閉弁を夫々開放して、複数のミストノズル12からミスト熱交換器21で加熱された湯水をミスト状に噴出させる。例えば操作リモコン15aの操作によって、ミスト運転が停止される場合には、制御部18は、流量調整弁24を閉止開度にすると共に電磁弁22とミストノズル12の開閉弁を夫々閉止する。
【0032】
浴室暖房装置10は、熱動弁6aを開けて暖房ファン17を駆動することによって、温水ミスト運転と同時に暖房運転を行うことができる。また、給湯装置5を作動させずに低温のミストをミストノズル12から噴出させるミスト運転(冷水ミスト運転)を行うことができる。その上、オゾン水が有する殺菌作用を利用して除菌、脱臭等を行うために、オゾンユニット20で生成したオゾン水をミストノズル12からミスト状に噴出させる除菌運転を行うことができる。
【0033】
除菌運転は、例えば浴室1の清掃の際に、操作リモコン15bの操作によって開始される。除菌運転中は、浴室1のドアを閉じ、操作リモコン15a,15bの表示、音声によって浴室1への入室を避けるように促す報知を行うことが好ましい。次に、制御部18による除菌運転の制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0034】
除菌運転が開始されると、S1において、ミスト水通路14の電磁弁22と複数のミストノズル12の開閉弁を夫々開放してS2に進む。そしてS2において、オゾンユニット20の運転を開始させてS3に進む。これにより、オゾンユニット20で生成されたオゾン水が、複数のミストノズル12から噴出される。オゾンユニット20では、例えば1秒当たりV[L]のオゾンガスが生成されて上水に溶解し、オゾン水が生成される。生成されたオゾン水のオゾン濃度は例えば1[ppm]程度になり、充分な殺菌作用を有する。
【0035】
S3において、浴室1の現在のオゾン濃度を算出(推定)してS4に進む。複数のミストノズル12から浴室1内にミスト状に噴出されたオゾン水は、浴室1の壁、床等に付着する。噴出されたオゾン水の一部は、殺菌により消費される。一方、オゾンガスは水に溶け易いものではなく、ミストは蒸発し易いので、噴出されたオゾン水からオゾンガスがある程度放出される。従って、除菌運転によって浴室1の空気中のオゾン濃度が上昇する。
【0036】
制御部18は、オゾンユニット20の運転により単位時間当たりに生成されるオゾンガスの量(オゾン生成量V[L/sec])と、運転開始から現在までの運転時間(T[sec])に基づいて、浴室1のオゾン量(V×T[L])を算出する。そして、算出した浴室1のオゾン量を予め設定された浴室1の容積(B[L])で除算して、浴室1の現在のオゾン濃度(V×T/B)を算出(推定)する。このオゾン量は、除菌等で消費されず自然分解もされない場合の最大量なので、これを基に推定されるオゾン濃度は実際のオゾン濃度よりも高くなる。浴室1の容積は、例えば施工時に操作リモコン15a,15bから設定される。
【0037】
次にS4において、S3で推定した浴室1の現在のオゾン濃度が予め設定された安全基準濃度S以上に到達したか否か判定する。安全基準濃度Sは、例えば短時間では人体に悪い影響を与え難いとされる濃度として設定されている0.1[ppm]未満に対して例えば半分の0.05[ppm]に設定されている。S4の判定がNoの場合はオゾン水の噴出を続行し、浴室1のオゾン濃度を推定するためにS3に戻る。
【0038】
S4の判定がYesの場合にはS5に進み、S5においてオゾンユニット20の運転を停止させることによりオゾン水の生成を停止させ、S6に進む。そしてS6において、オゾンユニット20の運転を禁止してS7に進む。オゾンユニット20の運転を禁止することにより、操作リモコン15a,15bから除菌運転の開始操作がなされてもオゾン水が生成されないようにして、浴室1のオゾン濃度がこれ以上に上昇することを防止している。
【0039】
次にS7において、ミスト水通路14の電磁弁22と複数のミストノズル12の開閉弁を夫々閉止してS8に進む。次にS8において、換気ファン19を駆動して予め設定された換気時間の換気運転を行ってS9に進む。そしてS9において、オゾンユニット20の運転禁を解除して除菌運転制御を終了する。換気時間は、浴室1のオゾン濃度が十分に下がるように、例えば換気風量と浴室1の容積に基づいて設定される。尚、オゾン水の噴出と換気運転を交互に所定回数行って、または所定時間経過するまで交互に行って、除菌運転を終了するようにしてもよい。
【0040】
また、制御部18は、自然分解によるオゾン量の減少を加味して浴室1の現在のオゾン濃度を推定することができる。この場合の除菌運転制御について、図4に基づいて説明する。S1,S2は図3と同じなので説明を省略する。
【0041】
ミストノズル12からオゾン水の噴出を開始した後のS13において、オゾンの自然分解を加味して浴室1の現在のオゾン濃度を推定し、S14に進む。このとき、オゾンユニット20の単位時間当たりのオゾン生成量V[L/sec]と運転時間T[sec]から算出される浴室1のオゾン量(V×T)[L]から、運転時間T[sec]の間に自然分解されるオゾン量を減算して浴室1の残存オゾン量を算出し、浴室1の容積B[L]で除算することによって浴室1の現在のオゾン濃度が求められる。しかし、自然分解されるオゾン量は分解前のオゾン量に依存し、運転時間が長くなるほど分解前のオゾン量が多くなると共に分解されるオゾンが増加するので、オゾンの生成と自然分解が同時に進行する除菌運転では、浴室1の残存オゾン量の計算が容易ではない。
【0042】
そこで、浴室1の現在のオゾン量の算出を除菌運転の開始から所定時間Δt[sec]毎に繰り返し行うことにより、浴室1の現在のオゾン濃度の算出を容易にしている。尚、所定時間Δtは、例えば0.1~10[sec]の範囲内で適宜設定される。
【0043】
オゾンガスの減少率は、自然分解により元の量の半分に減少する半減期間を用いて表すことができる。このオゾンガスの半減期間は、一般的に室温では数時間から十数時間である。オゾンガスの半減期間をτ[sec]、浴室1の現在のオゾン量をA、浴室1の現在よりも所定時間前(Δt[sec]前)のオゾン量をAn-1とすると、浴室1の現在のオゾン量Aは、
=V×Δt+An-1×(1/2)(Δt/τ)[L]
のように計算することができる。そして、浴室1の現在のオゾン量Aを浴室1の容積B[L]で除算することにより、所定時間Δt毎に浴室1の現在のオゾン濃度を推定することができる。(1/2)(Δt/τ)は、自然分解によるオゾンガスの減少率に基づいて分解されずに残る所定時間Δt当たりのオゾン残存率に相当する。運転時間T=n×Δt[sec]である。
【0044】
S14において、S13で推定したオゾン濃度が安全基準濃度S以上に到達したか否か判定する。S14の判定がNoの場合にはS13に戻り、このS13のオゾン濃度の推定とS14の判定が所定時間毎に繰り返されることになる。S14の判定がYesの場合にはS15に進む。
【0045】
次にS15において、オゾンユニット20の運転を停止させることによりオゾン水の生成を停止させ、S16に進む。そしてS16において、オゾンユニット20の運転を禁止してS17に進む。次にS17において、ミスト水通路14の電磁弁22と複数のミストノズル12の開閉弁を夫々閉止してS18に進む。
【0046】
S18において、オゾンユニット20の運転を停止した後も、所定時間Δt毎に行う浴室1の現在のオゾン濃度の推定を継続して行い、S19に進む。オゾンユニット20の運転停止によりオゾン水が生成されないので、例えば図5のように浴室1のオゾン濃度は安全基準濃度Sへの到達後には緩やかに低下してゆく。そして、図4のS19において、推定されたオゾン濃度が予め設定された禁止解除濃度未満まで低下したか否か判定する。禁止解除濃度は、少なくとも安全基準濃度Sよりも低濃度に設定され、例えば安全基準濃度Sの40%相当の濃度に設定されている。
【0047】
S19の判定がNoの場合はS18に戻り、このS18のオゾン濃度の推定とS19の判定が所定時間毎に繰り返されることになる。S19の判定がYesの場合にはS20に進み、S20においてオゾンユニット20の運転禁止を解除してS21に進む。例えば図5では、安全基準濃度Sが0.05[ppm]であり、図4のS17で推定されたオゾン濃度が0.02[ppm]未満に低下したら、オゾンユニット20の運転禁止を解除する。
【0048】
次にS21において除菌運転終了か否か判定する。除菌運転は、例えば除菌運転中にオゾンユニット20の運転禁止回数が所定回数になった場合に終了する。また、除菌運転の開始から所定の運転時間が経過した場合に除菌運転を終了するようにしてもよい。尚、除菌運転中に例えば操作リモコン15bの操作によって除菌運転を中止させることもできる。
【0049】
S21の判定がNoの場合はS1に戻ってオゾン水の噴出を再開し、オゾン濃度が再び安全基準濃度Sに到達したら、オゾンユニット20の運転を停止及び禁止する。S20の判定がYesの場合はS21に進み、S21において予め設定された換気時間の換気運転を行って除菌運転制御を終了する。
【0050】
本発明の作用、効果について説明する。
除菌装置30は、オゾン水を生成するオゾンユニット20と、このオゾンユニット20の運転を制御する制御部18(制御手段)を備え、浴室1内にオゾンユニット20で生成した殺菌作用を有するオゾン水をミスト状に噴出して除菌を行う。制御部18は、オゾンユニット20の単位時間当たりのオゾン生成量V[L/sec]と運転開始から現在までの運転時間T[sec]により算出される浴室1のオゾン量と、浴室1の容積B[L]とに基づいて浴室1の現在のオゾン濃度(V×T/B)を推定する。そして、このオゾン濃度が予め設定された安全基準濃度Sに到達した場合には、制御部18は、浴室1のオゾン濃度がこれ以上高くならないように行う安全動作として、オゾンユニット20の運転を停止させると共にオゾンユニット20の運転を禁止する。従って、オゾン濃度センサを使用せずに浴室1の現在のオゾン濃度を推定することができ、オゾン濃度が上昇し続けて人体に悪い影響がある濃度になることを防止できる。
【0051】
オゾンの自然分解を加味してオゾンユニット20の運転開始から所定時間Δt[sec]毎に浴室1の現在のオゾン濃度を推定するように構成されている場合には、オゾンユニット20の単位時間当たりのオゾン生成量V[L/sec]と、現在から所定時間Δt[sec]前にオゾン濃度が推定されたときの浴室1のオゾン量An-1と、自然分解による所定時間当たりのオゾン減少率に基づくオゾン残存率(1/2)(Δt/τ)と、浴室1の容積B[L]とに基づいて現在のオゾン濃度を推定する。オゾンの自然分解を加味するので、浴室1のオゾン濃度を一層正確に推定することができる。また、所定時間Δt[sec]前、即ち前回推定したオゾン濃度を利用して簡単な計算で現在のオゾン濃度を推定するので、制御部18の計算負荷を軽減することができ、制御部18に高い処理能力が要求されないので除菌装置30の製造コスト増加抑制に寄与する。
【0052】
制御部18は、オゾンユニット20の運転を禁止した場合に、所定時間Δt[sec]毎に行う浴室1の現在のオゾン濃度の推定を継続し、少なくとも推定したオゾン濃度が安全基準濃度Sよりも低下するまで、オゾンユニット20の運転の禁止を継続する。自然分解によって浴室1のオゾン量が減少して少なくとも安全基準濃度S未満になるまでオゾンユニット20にオゾン水を生成させないので、浴室1のオゾン濃度が人体に悪い影響がある濃度まで上がることを防止できる。
【0053】
追焚機能を備えた給湯装置5にオゾンユニット20が装備され、浴槽2の湯水が循環する追焚通路内をオゾンユニット20で生成されたオゾン水により除菌して浴槽2に排出する除菌装置においても、浴室1のオゾン濃度を推定し、安全基準濃度S到達により除菌運転を停止、禁止するように構成することができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0054】
1 :浴室
2 :浴槽
3 :カラン
4 :シャワー
5 :給湯装置
6 :循環通路
7 :給水通路
10 :浴室暖房装置
11 :排気口
12 :ミストノズル
13 :ミストユニット
14 :ミスト水通路
15a,15b:操作リモコン
16 :暖房熱交換器
17 :暖房ファン
18 :制御部(制御手段)
19 :換気ファン
20 :オゾンユニット
21 :ミスト熱交換器
22 :電磁弁
23 :バイパス通路
24 :バイパス開閉弁
30 :除菌装置
図1
図2
図3
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図5