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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167673
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両及び車両間給電システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/14 20190101AFI20241127BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241127BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241127BHJP
   B60L 53/62 20190101ALI20241127BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241127BHJP
【FI】
B60L53/14
H02J7/00 P
H02J7/00 B
B60L50/60
B60L53/62
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083902
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英明
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA07
5G503DA13
5G503FA06
5G503GD04
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC05
5H125BC21
5H125BE01
5H125DD02
5H125EE23
(57)【要約】
【課題】従来の車両間給電システムでは、複数台の受電車両に対して車両間の送受電が実施し難いという課題がある。
【解決手段】
本発明の車両10では、ケーブル等を介して接続された複数台の車両10間にて電力を送電し、あるいは、電力を受電する車両間給電システム11が構築される。そして、車両制御部33が、自車両に必要な電力量を算出し、その算出結果を用いて自車両のバッテリ31のSOCと対比することで、自車両が送電車両10Aか、あるいは、受電車両10Bに該当するかを判定する。この車両10により、複数台の受電車両10Bが存在する場合には、車両制御部33が、受電車両10Bの優先順位を判定することで、実際の充電の必要性に応じて車両10間にて送受電が実行される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から他車両への電力の送電が可能または前記他車両から前記自車両への電力の受電が可能な車両であって、
前記自車両に必要な電力量を算出する電力量算出部と、
前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記他車両から前記自車両への電力の受電が必要か否かを判断する受電要否判断部と、
前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記自車両から前記他車両への電力の送電が可能か否かを判断する送電可否判断部と、
前記自車両と接続された前記他車両から前記電力量算出部の算出結果を受信し、少なくとも前記自車両及び前記他車両の中から受電を必要とする優先順位または受電電力量を判定する送電判定部と、を備え、
前記送電判定部は、前記自車両及び前記他車両の中の少なくとも2台以上から電力の受電の要求があった場合には、それぞれの前記電力量算出部の算出結果を対比して優先順位を判定することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記電力量算出部の算出結果には、前記他車両への送電可能電力量が含まれ、
前記送電判定部は、前記自車両及び前記他車両の前記送電可能電力量を積算して、受電の要求を受けた前記自車両または前記他車両が受電する前記受電電力量を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記電力量算出部は、少なくとも前記自車両に記憶された将来スケジュールデータまたは過去の走行履歴から推測される予測スケジュールデータを用いて、前記自車両の必要な前記電力量を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記自車両及び複数の前記他車両は、外部充電装置を介して接続されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
外部充電装置を介して接続された複数の車両間において、お互いに電力の送電または電力の受電が可能な車両間給電システムであって、
前記外部充電装置は、
前記車両毎に必要な電力量を算出する電力量算出部と、
前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記車両毎に受電が必要か否かを判断する受電要否判断部と、
前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記車両毎に電力の送電が可能か否かを判断する送電可否判断部と、
少なくとも前記車両の中から受電を行う優先順位または受電を行う受電電力量を判定する送電判定部と、を備え、
前記送電判定部は、少なくとも2台以上の前記車両に対して電力の受電が必要であると判断した場合には、前記電力量算出部の算出結果に基づいて受電を行う前記車両の優先順位を判定することを特徴とする車両間給電システム。
【請求項6】
前記電力量算出部の算出結果には、送電可能電力量が含まれ、
前記送電判定部は、複数の前記車両から前記送電可能電力量を積算して、受電を行う前記車両への前記受電電力量を判定することを特徴とする請求項5に記載の車両間給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び車両間給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両の電力量が不足している場合には、車両外部から電力の供給を受け、また、自車両の電力量に余裕がある場合には、車両外部に余剰の電力を供給する車両を用いた電力供給システムが開示されている。
【0003】
上記電力供給システムは、送電線等で電気的に接続されていない物理的に離れた場所に、電磁波等を媒介として電力を送電することが可能なシステムである。車両に搭載された車両電源装置は、主に、アンテナ、発振/整流回路及び制御部、を備える。同様に、道路に設置される路側電源装置は、主に、アンテナ、発振/整流回路及び制御部、を備える。
【0004】
車両の車両電源装置では、制御部が、所定の時間間隔毎にバッテリの残存容量を調べ、あるいは、バッテリ電圧センサからバッテリ電圧が所定値よりも下がったことを知らせる信号を受信することで、バッテリの残存容量が不足していることを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-210843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電力供給システムでは、上記車両電源装置は、回生エネルギを回収し、バッテリへと送電することで、走行時に余剰電力を蓄えることが出来る。そして、車両電源装置は、路側電源装置へと余剰電力を送電することが出来る。ここで、余剰電力を車両外部へと送電する場合には、上記送電後に、自車両が電力不足に陥らないように送電量を決めて送電する必要がある。
【0007】
しかしながら、上記車両電源装置は、単純に、走行時に回収した回生エネルギを余剰電力とする構成であり、その後、自車両の移動等にて消費する電力量を考慮していない。その結果、車両電源装置から路側電源装置へと余剰電力を送電することで、自車両が、電力不足に陥る恐れがあるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、充電を要求する複数台の車両が存在する場合に、送電側の車両の送電電力量を把握しつつ、緊急を有する車両の受電を優先させる車両及び車両間給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態である車両は、自車両から他車両への電力の送電が可能または前記他車両から前記自車両への電力の受電が可能な車両であって、前記自車両に必要な電力量を算出する電力量算出部と、前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記他車両から前記自車両への電力の受電が必要か否かを判断する受電要否判断部と、前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記自車両から前記他車両への電力の送電が可能か否かを判断する送電可否判断部と、前記自車両と接続された前記他車両から前記電力量算出部の算出結果を受信し、少なくとも前記自車両及び前記他車両の中から受電を必要とする優先順位または受電電力量を判定する送電判定部と、を備え、前記送電判定部は、前記自車両及び前記他車両の中の少なくとも2台以上から電力の受電の要求があった場合には、それぞれの前記電力量算出部の算出結果を対比して優先順位を判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の実施形態である車両間給システムは、外部充電装置を介して接続された複数の車両間において、お互いに電力の送電または電力の受電が可能な車両間給電システムであって、前記外部充電装置は、前記車両毎に必要な電力量を算出する電力量算出部と、前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記車両毎に受電が必要か否かを判断する受電要否判断部と、前記電力量算出部の算出結果に基づいて、前記車両毎に電力の送電が可能か否かを判断する送電可否判断部と、少なくとも前記車両の中から受電を行う優先順位または受電を行う受電電力量を判定する送電判定部と、を備え、前記送電判定部は、少なくとも2台以上の前記車両に対して電力の受電が必要であると判断した場合には、前記電力量算出部の算出結果に基づいて受電を行う前記車両の優先順位を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態である車両では、ケーブル等を介して接続された複数台の車両間にて電力を送電し、あるいは、電力を受電する車両間給電システムが構築される。そして、車両制御部が、自車両に必要な電力量を算出し、その算出結果を用いて自車両のバッテリのSOCと対比することで、自車両が送電車両か、あるいは、受電車両に該当するかを判定する。この車両により、複数台の受電車両が存在する場合には、車両制御部が、受電車両の優先順位を判定することで、実際の充電の必要性に応じて車両間にて送受電が実行される。
【0012】
また、本発明の他の実施形態である車両間給電システムでは、外部充電装置に対して接続された複数台の車両に対して、外部充電装置の制御部は、それぞれ必要な電力量を算出する。そして、外部充電装置の制御部は、その算出結果を用いて自車両のバッテリのSOCと対比することで、接続された複数台の車両を送電車両または受電車両のどちらかへと判定する。この給電システムにより、複数台の受電車両が存在する場合には、外部充電装置の制御部が、受電車両の優先順位を判定することで、実際の充電の必要性に応じて車両間にて送受電が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態である車両間給電システム及び車両間給電システムに用いられる車両を説明する概略図である。
図2】本発明の一実施形態である車両間給電システムの制御方法を説明するフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態である車両間給電システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両10及び車両間給電システム11を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の構成要素には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態の車両間給電システム11の構成及び車両間給電システム11に用いられる車両10の構成を説明する概略図である。図2は、本実施形態の車両間給電システム11の送電車両10Aまたは受電車両10Bを判定するための制御方法を説明するフローチャートである。図3は、本実施形態の車両間給電システム11の制御方法を説明するフローチャートである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の車両間給電システム11は、主に、外部充電装置12と、外部充電装置12に接続する複数台の車両10から構成される。そして、車両10は、自車両から他車両へと電力を送電する送電車両10Aと、他車両から自車両へと電力を受電する受電車両10Bと、を有する。少なくとも2台以上の車両10が、外部充電装置12にケーブルを介して接続され、それぞれの車両10のバッテリ31のSOC(State Of Charge)等に応じて、送電車両10Aとして機能し、あるいは、受電車両10Bとして機能する。
【0017】
尚、以下の説明では、図1に示すように、外部充電装置12に車両X、車両Y、車両Zの3台の車両10がケーブルを介して接続され、車両間給電システム11が実行される場合について説明するが、この場合に限定するものではない。例えば、4台以上の車両10が、外部充電装置12にケーブルを介して接続され、車両間給電システム11が実行される場合でも良い。
【0018】
外部充電装置12は、主に、設備制御部21と、給電部22と、通信装置23と、を備える。そして、本実施形態の外部充電装置12としては、例えば、街中に設けられた充電ステーションや個人住宅や集合住宅に設けられた充電施設である。
【0019】
設備制御部21は、CPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)、ROM(READ ONLY MEMORY)、RAM(RANDOM ACCESS MEMORY)等を有して構成される。そして、設備制御部21は、電力量算出部21A、受電要否判断部21B、送電可否判断部21C、送電判定部21Dを備え、接続された車両10の電力量等を算出する一または複数のプロセッサを有する電子制御ユニット(ECU)である。
【0020】
詳細は後述するが、電力量算出部21Aは、外部充電装置12に接続された車両10に対して、それぞれ今後の走行に必要な電力量を算出する。受電要否判断部21Bは、算出された上記電力量と自車のバッテリ31のSOCとを対比し、他車両からの受電が必要か、否かを判定する。送電可否判断部21Cは、算出された上記電力量と自車のバッテリ31のSOCとを対比し、他車両への送電が可能か、否かを判定すると共に、他車両への送電可能電力量を算出する。送電判定部21Dは、受電要否判断部21B及び送電可否判断部21Cの判定結果を用いて、外部充電装置12に接続された車両10を送電車両10Aまたは受電車両10Bへと判定する。更には、送電判定部21Dは、複数台の受電車両10Bの優先順位を判定すると共に、複数台の送電車両10Aの送電可能電力量の総電力量を算出する。
【0021】
また、設備制御部21は、記憶部21Eを備え、記憶部21Eは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-only Memory)等の不揮発性メモリにて構成される。そして、記憶部21Eには、設備制御部21での演算に必要な各種データや上記一または複数のプロセッサによって実行可能な一または複数のプログラムが記憶される。
【0022】
給電部22は、電力供給源24に接続される。例えば、外部充電装置12が、住宅のガレージ等に配設される場合には、電力供給源24として商用電源が用いられる。そして、充電コネクタ(図示せず)は、ケーブルを介して車両10の給電部22に接続される。給電部22は、電力供給源24から供給される交流電力を直流電力に変換して、充電コネクタ、充電部32を介して車両10のバッテリ31に送電する。
【0023】
また、本実施形態では、電力供給源24として、車両10のバッテリ31に充電された電力を用いることもできる。給電部22は、車両10から送電された電力を、直接、他の車両10の充電部32へと供給することができる。この場合には、商用電源と異なり、電力の供給量が増大することで、高出力な急速充電が可能となり、充電時間の大幅な短縮も可能となる。
【0024】
通信装置23は、インターネットまたは電話網等のネットワークを通じて車両10やサーバ装置等と通信することが出来る。詳細は後述するが、設備制御部21は、通信装置23を介して車両10から各種情報、例えば、バッテリ31のSOC、将来スケジュール、走行履歴等を取得することで、車両10の将来的に必要となる電力量等を算出する。
【0025】
次に、車両10は、例えば、BEV(Battery Electrical Vehicle)、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)等が採用される。
【0026】
車両10は、バッテリ31を備える。バッテリ31としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池や全固体電池等が用いられる。バッテリ31は、車両10の駆動源であるモータジェネレータ等に電力を供給する。そして、モータジェネレータは、車両10の減速時に発電し、バッテリ31は、モータジェネレータにより生成された電力を充電する。更には、バッテリ31は、蓄積した電力を他の車両10のバッテリ31へと送電可能となる。
【0027】
充電部32は、車両10の充電口(図示せず)を備え、外部充電装置12の充電コネクタと電気的に接続される。充電部32は、バッテリ31と接続し、バッテリ31に流れる充電電流やバッテリ31の電圧を測定する。そして、充電部32は、車両制御部33により制御され、外部充電装置12からバッテリ31へと電力を供給し、あるいは、バッテリ31から外部充電装置12へと電力を送電する。
【0028】
車両制御部33は、CPU、ROM、RAM等を有して構成される。そして、車両制御部33は、駆動装置(図示せず)等を制御するための各種の演算等を実行するための、一または複数のプロセッサを有する電子制御ユニット(ECU)である。また、車両制御部33は、電力量算出部33A、受電要否判断部33B、送電可否判断部33C、送電判定部33Dを備え、車両10の将来的に必要な電力量等を算出する。
【0029】
詳細は後述するが、電力量算出部33Aは、自車両に対して今後の走行に必要な電力量を算出する。受電要否判断部33Bは、算出された上記電力量と自車のバッテリ31のSOCとを対比し、他車両からの受電が必要か、否かを判定する。送電可否判断部33Cは、算出された上記電力量と自車のバッテリ31のSOCとを対比し、他車両への送電が可能か、否かを判定すると共に、送電可能電力量を算出する。送電判定部33Dは、受電要否判断部33B及び送電可否判断部33Cの判定結果を用いて、自車両が送電車両10Aまたは受電車両10Bのどちらに該当するかを判定する。更には、送電判定部33Dは、例えば、外部充電装置12を介して接続された複数台の受電車両10Bの優先順位を判定すると共に、複数台の送電車両10Aの送電可能電力量の総電力量を算出する。
【0030】
また、車両制御部33は、記憶部33Eを備え、記憶部33Eは、例えば、EEPROM等の不揮発性メモリにて構成される。そして、記憶部33Eには、車両制御部33での演算に必要な各種データや上記一または複数のプロセッサによって実行可能な一または複数のプログラムが記憶される。
【0031】
通信装置34は、インターネットまたは電話網等のネットワークを通じて外部充電装置12やサーバ装置等と通信することが出来る。上述したように、外部充電装置12に対して、車両10側の各種情報、例えば、バッテリ31のSOC、将来スケジュール、走行履歴等を送信することが出来る。
【0032】
尚、図1では、外部充電装置12に対して、車両X、車両Y、車両Zの3台の車両10が接続している状況を示す。そして、車両Y及び車両Zの構成は、車両Xの構成と同じとなるため、上述した説明を参照し、ここでは、その説明及び図示を省略する。
【0033】
次に、図2を用いて、外部充電装置12に接続された車両X、車両Y、車両Zが、送電車両10Aに該当するか、受電車両10Bに該当するかを判定する制御方法を説明する。また、受電車両10Bと判定された車両10が複数台ある場合の優先順位の判定方法及び送電車両10Aと判定された車両10の送電可能電力量の算出方法についても説明する。尚、本実施形態の車両間給電システム11では、外部充電装置12は、車両X、車両Y、車両Zのそれぞれに対して上記判定等を行うが、以下の説明では、車両10として説明し、繰り返しの説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、ステップS10では、乗員が車両10に搭乗し、イグニッションスイッチ(図示せず)を押下すると、車両10は、イグニッション・オン状態となる。次に、ステップS11では、乗員が、車両10を外部充電装置12の周辺に停車させ、外部充電装置12の充電コネクタを車両10の充電部32へと接続させる。
【0035】
ステップS12では、外部充電装置12は、通信装置23,34を介して車両10との通信を開始し、車両10の将来スケジュールデータを取得する。ステップS12のYESでは、外部充電装置12は、車両10の記憶部33Eに、車両10の今後の移動行程に関する将来スケジュールデータが保存されている場合には、その将来スケジュールデータを取得し、ステップS14へと移行する。尚、将来スケジュールデータとしては、例えば、現時点から3日後までの車両10の移動行程に関するデータである。また、外部充電装置12は、バッテリ31のSOC、直近の車両10の燃費データ等、後述する電力量の算出に必要なデータも併せて取得する。
【0036】
一方、ステップS12のNOでは、車両10の記憶部33Eに将来スケジュールデータが保存されていない場合には、外部充電装置12は、将来スケジュールデータを取得することなく、ステップS13へと移行する。
【0037】
ステップS13では、外部充電装置12は、通信装置23,34を介して車両10の過去の走行履歴データを取得する。例えば、外部充電装置12は、車両10の記憶部33Eに保存された現時点から1か月前までの車両10の移動行程に関する走行履歴データを取得する。そして、設備制御部21は、上記走行履歴データから車両10が会社への通勤に使用されることや車両10が近所の決まったスーパーマーケットへの買い物に使用されること等、過去の走行履歴データから車両10の走行パターンを推測する。設備制御部21は、推測した走行パターンから曜日や時間に応じた予測スケジュールデータを生成し、記憶部21Eに保存し、ステップS14へと移行する。尚、外部充電装置12は、バッテリ31のSOC、直近の車両10の燃費データ等、後述する電力量の算出に必要なデータも併せて取得する。
【0038】
ステップS14では、設備制御部21は、車両10が現時点から3日後までに必要な電力量を算出する。設備制御部21は、記憶部21Eに予め記憶されたロードマップデータ等を用いて、上記将来スケジュールデータや予測スケジュールデータから、車両10の現時点から3日後まで航続距離を算出し、直近の車両10の燃費データ等を用いて、今後車両10が必要とする電力量を算出する。
【0039】
ステップS15では、設備制御部21は、算出した上記電力量とバッテリ31のSOCとを対比する。ステップS15のYESにて、上記電力量がバッテリ31のSOCより大きい場合には、ステップS16へ移行する。そして、ステップS16では、設備制御部21は、車両10は充電が必要であると判断し、受電車両10Bとして判定し、ステップS17へ移行する。
【0040】
ステップS17では、設備制御部21は、受電車両10Bが複数台存在する場合には、それらの受電車両10Bに対して充電を行うための優先順位を判定する。上述したように、設備制御部21は、車両10毎に電力量がどの程度不足しているかを算出すると共に、現時点から3日後までの航続距離を記憶する。その結果、設備制御部21は、例えば、車両10の直近の走行日程や不足する電力量等を対比しながら、複数台の受電車両10Bに対して上記優先順位を判定する。尚、受電車両10Bが1台の場合には、このステップS17の優先順位の判定は不要となる。
【0041】
一方、ステップS15のNOにて、上記電力量がバッテリ31のSOCより小さい場合には、ステップS18へ移行する。そして、ステップS18では、設備制御部21は、車両10は余剰の電力を有しており、送電車両10Aとして判定し、ステップS19へ移行する。
【0042】
ステップS19では、設備制御部21は、送電車両10Aに対して送電可能電力量を算出する。上述したように、設備制御部21は、上記電力量とバッテリ31のSOCとを対比する際に、上記電力量とバッテリ31のSOCとの差分を送電可能電力量として確定する。
【0043】
上述したように、本実施形態の車両間給電システム11では、外部充電装置12が、接続された車両10に対して受電車両10Bに該当するか、あるいは、送電車両10Aに該当するかを判定する。そして、設備制御部21は、送電車両10Aを判定すると共に、送電可能電力量も算出する。その結果、車両間給電システム11では、送電車両10Aから送電可能電力量以上の電力が受電車両10Bへと送電されることがなく、送電車両10Aが、少なくとも現時点から3日以内の走行時に、電力不足に陥ることが防止される。
【0044】
次に、図3を用いて、外部充電装置12に接続された車両X、車両Y、車両Z間にて実施される車両間給電システム11の制御方法を説明する。尚、以下の説明では、車両X、車両Y、車両Zは、車両10として説明する。
【0045】
図3に示すように、ステップS20では、乗員が車両10に搭乗し、イグニッションスイッチ(図示せず)を押下すると、車両10は、イグニッション・オン状態となる。次に、ステップS21では、乗員が、車両10を外部充電装置12の周辺に停車させ、外部充電装置12の充電コネクタを車両10の充電部32へと接続させる。
【0046】
ステップS22では、図2を用いて上述したように、外部充電装置12の設備制御部21は、接続された車両10のそれぞれについて、受電車両10Bに該当するか、あるいは、送電車両10Aに該当するかを判定する。ステップS22のYESでは、設備制御部21は、外部充電装置12に接続された全ての車両10の中に、受電車両10B及び送電車両10Aの両車両10が含まれると判定した場合には、ステップS23に移行する。
【0047】
ステップS23では、外部充電装置12は、車両間送受電モードを起動し、通信装置23,34を介して各車両10へと通知する。
【0048】
ステップS24では、設備制御部21は、車両10側の送電可能電力量を確定する。図2を用いて上述したように、外部充電装置12は、ステップS19にて、送電車両10Aとして判定された車両10の送電可能電力量を算出する。そして、設備制御部21は、送電車両10Aの送電可能電力量を積算し、車両10側の送電可能電力量の総量を確定する。
【0049】
ステップS25では、設備制御部21は、外部電源として電力供給源24の使用が可能か、否かを判断する。ステップS25のYESでは、設備制御部21は、電力供給源24が使用可能であると判定した場合には、ステップS26では、設備制御部21は、外部充電装置12側から送電可能な送電可能電力量を確定する。
【0050】
ステップS27では、設備制御部21は、ステップS24にて確定した車両10側の送電可能電力量とステップS26にて確定した外部充電装置12側の送電可能電力量とを積算し、総合計の送電可能電力量を確定する。
【0051】
ステップS28では、設備制御部21は、複数台の受電車両10Bが存在する場合には、図2のステップS17にて上述したように、受電車両10Bの優先順位を決める。また、設備制御部21は、ステップS26にて算出した総合計の送電可能電力量から受電車両10B毎に分配される受電電力量を算出する。そして、設備制御部21は、各受電車両10Bへ分配される受電電力量から充電所要時間を算出する。
【0052】
その後、設備制御部21は、通信装置23,34を介して車両10と通信し、各車両10に対して、受電車両10Bまたは送電車両10Aのどちらとして判定されたか、また、その際の充電所要時間を通知する。そして、車両10は、ナビゲーション装置のディスプレイ等を利用して、乗員に上記通知内容を伝える。
【0053】
ステップS29では、車両10側にて、乗員が上記ディスプレイに表示された上記通知内容を確認する。ステップS29のYESでは、全ての車両10において、乗員が上記通知内容を承認した場合には、ステップS30に移行する。
【0054】
ステップS30では、設備制御部21は、通信装置23,34を介して車両10と通信し、全ての車両10にて上記通知内容が承認されたことを確認し、車両10間の送受電作業を実施する。その後、ステップS31では、車両10間の送受電作業が終了することで、車両間送受電モードが終了し、設備制御部21は、通信装置23,34を介して車両10と通信し、各車両10に対して、上記終了を通知する。そして、乗員は充電コネクタを車両10から取り外し、車両10を駐車場等へと移動し、駐車させる。そして、乗員は、車両10のイグニッションスイッチを押下すると、車両10は、イグニッション・オフ状態となる。
【0055】
一方、ステップS29のNOでは、全ての車両10の中から少なくとも1台以上が上記通知内容を承認しない場合には、ステップS31に移行する。同様に、ステップS22のNOでは、外部充電装置12に接続された全ての車両10の中に、受電車両10Bまたは送電車両10Aのどちらか一方の車両10が含まれないと判定した場合には、ステップS31に移行する。
【0056】
この場合には、車両10間の送受電作業を実施することなく、乗員は充電コネクタを車両10から取り外し、車両10を駐車場等へと移動し、駐車させる。そして、乗員は、車両10のイグニッションスイッチを押下すると、車両10は、イグニッション・オフ状態となる。
【0057】
上述したように、本実施形態の車両間給電システム11では、外部充電装置12に接続された車両10の中に受電車両10Bと送電車両10Aの両車両10を含むことで、車両10間の送受電作業を実施することが可能となる。そして、車両10間にて電力の送受電作業が可能となることで、高出力での充電作業が可能となり、急速充電による充電所要時間の短縮が可能となる。
【0058】
尚、本実施形態の車両間給電システム11では、複数台の車両10が、外部充電装置12に対して接続され、外部充電装置12の設備制御部21にて、車両10の必要な電力量や受電車両10Bまたは送電車両10Aとしての判定等を実施する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。図1に示すように、各車両10の車両制御部33においても、上述した設備制御部21と同様の制御が可能である。そして、外部充電装置12が、接続された車両10の中から1台のホストとしての車両10を選定し、その車両10にて上述した車両間給電システム11を実施する場合でも良い。
【0059】
また、各車両10が、それぞれ自車両の車両制御部33にて、図2に示す車両10の必要な電力量や受電車両10Bまたは送電車両10Aとしての判定等を実施した後、通信装置23,34を介してその判定結果を外部充電装置12へと送信し、その後、図3のステップS22以降の制御は、設備制御部21にて実施する場合でも良い。
【0060】
また、図3に示すステップS29では、外部充電装置12に対して接続された複数台の車両10の中から1台でも承認が得られない場合には、車両10間の送受電作業が実施されず、車両間給電システム11が終了する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、上記承認の得られない車両10がいる場合には、その承認が得られない車両10から充電コネクタを離脱させた後、ステップS24へと戻り、再度、送電可能電力量の積算からリスタートする場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 車両
10A 送電車両
10B 受電車両
11 車両間給電システム
12 外部充電装置
21 設備制御部
21A 電力量算出部
21B 受電要否判断部
21C 送電可否判断部
21D 送電判定部
21E 記憶部
22 給電部
23 通信装置
24 電力供給源
31 バッテリ
32 充電部
33 車両制御部
33A 電力量算出部
33B 受電要否判断部
33C 送電可否判断部
33D 送電判定部
33E 記憶部
34 通信装置
図1
図2
図3