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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167675
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/124 20210101AFI20241127BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241127BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20241127BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20241127BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241127BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20241127BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241127BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241127BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241127BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241127BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20241127BHJP
【FI】
H01M50/124
H01M50/105
H01M50/184 C
H01M50/178
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/647
H01M50/204 401H
H01M50/211
H01M50/291
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083907
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 正規
【テーマコード(参考)】
5H011
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC10
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF02
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA33
5H040AS07
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY10
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】ガス溜まり部における亀裂の発生を抑制する。
【解決手段】二次電池Aは、可撓性を有する外装体20内に蓄電要素11を収容したセル10と、変位規制部材35と、を備え、外装体20は、外装体20の外周縁部を封止する熱溶着部22と、蓄電要素11を収容する蓄電要素収容部27と、蓄電要素11を構成する電解液の相転移によって発生した気化ガスを貯留するガス溜まり部28と、を有し、熱溶着部22のうちガス溜まり部28に隣接する領域が、変位規制部材35によって、蓄電要素収容部27に対する相対変位を規制されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する外装体内に蓄電要素を収容したセルと、
変位規制部材と、を備え、
前記外装体は、
前記外装体の外周縁部を封止する熱溶着部と、
前記蓄電要素を収容する蓄電要素収容部と、
前記蓄電要素を構成する電解液の相転移によって発生した気化ガスを貯留するガス溜まり部と、を有し、
前記熱溶着部のうち前記ガス溜まり部に隣接する領域が、前記変位規制部材によって、前記蓄電要素収容部に対する相対変位を規制されている二次電池。
【請求項2】
前記熱溶着部のうち前記変位規制部材によって前記相対変位を規制された変位規制対象部が、前記蓄電要素収容部との間で前記ガス溜まり部を挟む位置に配置されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記外装体の外周縁が、方形をなしており、
前記外装体の外周縁部を構成する4つの辺部のうち第1の前記辺部においては、前記蓄電要素に接続したタブが前記外装体の外部へ突出しており、
前記変位規制対象部が、前記4つの辺部のうち前記第1の辺部とは反対側の第2の前記辺部に配置されている請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記変位規制対象部が、前記第2の辺部の長さ方向における少なくとも両端部に配置されている請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記変位規制対象部が、前記第2の辺部の長さ方向における全領域に亘って配置されている請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記変位規制対象部が、前記4つの辺部のうち前記第1の辺部を除いた3つの前記辺部に配置されている請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
複数の前記セルと、前記セルよりも剛性の高い複数の冷却プレートとが交互に積層して配置され、
前記変位規制部材が、前記熱溶着部と前記冷却プレートとの隙間を埋めるように配置されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記変位規制部材が、前記外装体を冷却する機能を有している請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外装材内に、正極と負極を積層した電極群と、非水電解液とを収容した二次電池が開示されている。外装材の外周縁部は、ヒートシール部によってシールされているため、外装材内でガスが発生したときに、外装材の内圧が上昇し、外装材が破裂することが懸念される。この対策として特許文献1の二次電池は、外装材のうちヒートシール機の内側に、ガス溜まり部を設け、内圧上昇にともなってガス溜まり部を膨らませるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-015713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外装材のうちガス溜まり部を構成する部位は、ヒートシール部に比べると変形し易い部位である。そのため、上記の二次電池を車両に搭載した場合、走行中に外装材が振動して、ガス溜まり部が変形を繰り返すと、ガス溜まり部において亀裂が生じる虞がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ガス溜まり部における亀裂の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の二次電池は、
可撓性を有する外装体内に蓄電要素を収容したセルと、
変位規制部材と、を備え、
前記外装体は、
前記外装体の外周縁部を封止する熱溶着部と、
前記蓄電要素を収容する蓄電要素収容部と、
前記蓄電要素を構成する電解液の相転移によって発生した気化ガスを貯留するガス溜まり部と、を有し、
前記熱溶着部のうち前記ガス溜まり部に隣接する領域が、前記変位規制部材によって、前記蓄電要素収容部に対する相対変位を規制されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ガス溜まり部における亀裂の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の二次電池を模式的にあらわした側面図
図2】セルの斜視図
図3】セルの正面図
図4】蓄電要素の斜視図
図5】積層電極体の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい形態例を示す。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
【0010】
(1)本開示の二次電池は、可撓性を有する外装体内に蓄電要素を収容したセルと、変位規制部材と、を備え、前記外装体は、前記外装体の外周縁部を封止する熱溶着部と、前記蓄電要素を収容する蓄電要素収容部と、前記蓄電要素を構成する電解液の相転移によって発生した気化ガスを貯留するガス溜まり部と、を有し、前記熱溶着部のうち前記ガス溜まり部に隣接する領域が、前記変位規制部材によって、前記蓄電要素収容部に対する相対変位を規制されている。この構成によれば、外装体が振動を受けたときに、蓄電要素収容部に対するガス溜まり部の相対変位が抑制される。これにより、振動に起因するガス溜まり部の変形も抑制されるので、ガス溜まり部における亀裂の発生を抑制できる。
【0011】
(2)(1)において、前記熱溶着部のうち前記変位規制部材によって前記相対変位を規制された変位規制対象部が、前記蓄電要素収容部との間で前記ガス溜まり部を挟む位置に配置されている。この構成によれば、蓄電要素収容部に対するガス溜まり部の相対変位を、効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)(2)において、前記外装体の外周縁が、方形をなしており、前記外装体の外周縁部を構成する4つの辺部のうち第1の前記辺部においては、前記蓄電要素に接続したタブが前記外装体の外部へ突出しており、前記変位規制対象部が、前記4つの辺部のうち前記第1の辺部とは反対側の第2の前記辺部に配置されている。この構成によれば、変位抑制部材がタブと干渉することを回避できる。
【0013】
(4)(3)において、前記変位規制対象部が、前記第2の辺部の長さ方向における少なくとも両端部に配置されている。この構成によれば、第2の辺部の相対変位を効果的に抑制することができる。
【0014】
(5)(4)において、前記変位規制対象部が、前記第2の辺部の長さ方向における全領域に亘って配置されている。この構成によれば、第2の辺部の相対変位を、より効果的に抑制することができる。
【0015】
(6)(3)~(5)において、前記変位規制対象部が、前記4つの辺部のうち前記第1の辺部を除いた3つの前記辺部に配置されている。この構成によれば、振動に起因するガス溜まり部の亀裂発生を、さらに効果的に抑制できる。
【0016】
(7)(1)~(5)において、複数の前記セルと、前記セルよりも剛性の高い複数の冷却プレートとが交互に積層して配置され、前記変位規制部材が、前記熱溶着部と前記冷却プレートとの隙間を埋めるように配置されている。この構成によれば、変位規制部材を蓄電要素収容部に接触させなくても、冷却プレートの剛性を利用することよって、蓄電要素収容部に対する変位規制対象部の相対変位を規制することができる。
【0017】
(8)(1)~(5)において、前記変位規制部材が、前記外装体を冷却する機能を有している。この構成によれば、セルを効果的に冷却することができる。
【0018】
[実施形態1]
本開示を具体化した実施形態1を、図1図5を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施形態1において、前後の方向については、図1,2,4,5におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、図1~5におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、図2~5におけるR方向を右方と定義する。
【0019】
本実施形態1のラミネート型の二次電池Aは、車両に搭載されるものであり、複数のセル10と、複数の冷却プレート30と、変位規制部材35とを備えている。セル10は、全体として、上下方向の高さ寸法及び左右方向の幅寸法に対して、前後方向の厚さ寸法が小さい偏平な形状をなす。図1に示すように、複数のセル10は、前後方向に間隔を空けて並列するように配置されている。冷却プレート30も、セル10と同様、上下方向の高さ寸法及び左右方向の幅寸法に対して、前後方向の厚さ寸法が小さい偏平な形状をなす。複数の冷却プレート30は、隣り合うセル10の間に配置されている。
【0020】
複数のセル10と複数の冷却プレート30は、互いに接触した状態で前後方向に交互に積層されるように配置されている。複数の冷却プレート30は、図示しない固定部材によって、一定間隔を空けた状態で連結されている。セル10は、図示しない支持部材によって、冷却プレート30の間から落下しないように支持されている。冷却プレート30の内部には、冷媒を流動させるための冷媒流動空間31が形成されている。冷却プレート30に供給された冷媒は、冷媒流動空間31を通過する過程で、セル10の熱を奪うことによって、セル10の蓄電要素11を冷却する。
【0021】
セル10は、蓄電要素11を外装体20内に収容して構成されている。蓄電要素11は、積層電極体12と、タブ18と、電解液(図示省略)とを有する。積層電極体12は、図5に示すように、複数枚の正極板13と複数枚の負極板14を、複数枚のシート状のセパレータ15を交互に挟んで前後方向に積層して構成されている。正極板13の右側縁部と負極板14の左側縁部とには、夫々、スラリーが塗布されない未塗工部からなる接続片16が形成されている。負極板14と正極板13は、夫々の接続片16が左右方向において互いに反対側に位置するように積層されている。積層電極体12のうちセパレータ15を挟んで積層されている部位を、電極積層部17と定義する。
【0022】
タブ18は、上下方向に細長い板状をなす金属製の部材である。一対のタブ18は、板厚方向を前後方向に向けて左右の接続片16の前面に固着されている。接続片16とタブ18は、電極積層部17の左右両側縁に沿うように配置されている。タブ18の上端部は、接続片16の上端よりも上方へ突出している。接続片16とタブ18とを前後に重ねた積層接続部19の前後方向の厚さ寸法は、電極積層部17の前後方向の厚さ寸法よりも小さい。
【0023】
外装体20は、長方形をなす2枚のラミネートシート21の外周縁部を熱溶着することによって構成されている。ラミネートシート21は、アルミニウム製のシート状基材(図示省略)と、シート状基材の内面に重ね合わせたポリプロピレン(PP)等からなるシール材(図示省略)とを有する。2枚のラミネートシート21は、シール材を相手側のラミネートシート21と対向させる向きにして、電極積層部17の全体と、接続片16の全体と、タブ18のうち接続片16に接続されている部位とを、前後方向に挟むように配置されている。シート状基材とシール材は、いずれも、外力の付与によって変形し得るので、外装体20は可撓性を有している。
【0024】
外装体20(一対のラミネートシート21)の外周縁部には、全周に亘って熱溶着部22が形成されている。二次電池Aを前方から視た正面視において、熱溶着部22は、電極積層部17の全体を全周に亘って囲むように配置されている。図3における想像線は、熱溶着部22の内周縁を示す。ラミネートシート21の外周縁部は、上下左右の4つの辺部23,24,25L,25Rによって構成されている。4つの辺部23,24,25L,25Rのうち上辺部23(第1の辺部)の左右両端部においては、一対のタブ18が熱溶着部22を貫通して外装体20の上方へ突出している。熱溶着部22の前面と冷却プレート30の後面との間、及び熱溶着部22の後面と冷却プレート30の前面との間には、後述する変位規制部材35を収容するための収容空間32が確保されている。
【0025】
外装体20は、蓄電要素収容部27と、ガス溜まり部28とを有している。蓄電要素収容部27は、電極積層部17の全体と、積層接続部19の全体とを収容する。蓄電要素収容部27内には、電解液が封入されている。セル10のうち蓄電要素収容部27は、図示しない位置決め部材により、冷却プレート30に対して左右方向及び上下方向に位置決めされている。セル10と冷却プレート30が振動しても、蓄電要素収容部27と冷却プレート30は相対変位しないように一体化された状態を維持する。蓄電要素収容部27は発熱量が多いので、冷却プレート30に対して直接、接触している。
【0026】
ガス溜まり部28は、正面視において、蓄電要素収容部27の下方に隣接するように位置している。ガス溜まり部28は、4つの辺部23,24,25L,25Rのうち下辺部24(第2の辺部)に沿うように配置されている。つまり、正面視において、ガス溜まり部28は、蓄電要素収容部27と下辺部24との間に配置されている。ガス溜まり部28の左右方向における形成範囲は、下辺部24の左右方向全長に亘っている。ガス溜まり部28の内部空間は、蓄電要素収容部27の内部空間と連通している。蓄電要素収容部27とガス溜まり部28は、熱溶着部22されていない部位である。
【0027】
電解液から気化ガスが発生しておらず、外装体20の内圧が大気圧に近い状態では、ガス溜まり部28の前後方向の厚さ寸法は、蓄電要素収容部27の前後方向の厚さ寸法よりも小さい。したがって、ガス溜まり部28の前面と冷却プレート30の後面との間、及びガス溜まり部28の後面と冷却プレート30の前面との間には、ガス溜まり部28が膨張することを許容するための膨張許容空間33が確保されている。電解液から気化ガスが発生すると、気化ガスの体積膨張によって外装体20の内圧が上昇し、内圧上昇に伴って、ガス溜まり部28が膨らむように変形するようになっている。
【0028】
上記のようにガス溜まり部28は変形し得るようになっているため、車両の走行中に二次電池Aが振動したときに、ガス溜まり部28が変形を繰り返すと、ガス溜まり部28を構成するラミネートシート21に亀裂が生じる虞がある。この対策として、本実施形態1の二次電池Aは、変位規制部材35を設けている。変位規制部材35は、外装体20の外周縁を構成する4つの辺部23,24,25L,25Rのうち、上辺部23を除いた3つの辺部(下辺部24と、左辺部25Lと、右辺部25R)が、蓄電要素収容部27に対して相対変位することを規制する部材である。変位規制部材35は、図示しない固定部材(接着剤、両面テープ、ボルト締め等)によって、冷却プレート30に固定されている。上記のように、冷却プレート30は、セル10のうち蓄電要素収容部27に対して一体化されているので、変位規制部材35は、冷却プレート30を介すことによって蓄電要素収容部27と一体化されている。
【0029】
図3に示すように、変位規制部材35の正面視形状は、下辺部24と左辺部25Lと右辺部25Rとに沿ってU字形をなすように細長く延びた形状をなしている。図1に示すように、1つのセル10に対して前後一対の変位規制部材35が用いられる。変位規制部材35は、熱溶着部22と冷却プレート30との間の収容空間32内に収容されている。熱溶着部22のうち下辺部24と左辺部25Lと右辺部25Rに形成されている部位を、変位規制対象部29と定義する。一対の変位規制部材35は、変位規制対象部29を、前後両側から挟み付けるように配置されている。変位規制部材35と変位規制対象部29は、接着剤、両面テープ、ボルト締め等によって相対変位しないように固定されている。これにより、変位規制対象部29は、蓄電要素収容部27、冷却プレート30及び変位規制部材35に対して相対変位を規制された状態で一体化されている。外装体20の外周縁部のうち変位規制部材35が接する下辺部24、左辺部25L及び右辺部25Rは、ガス溜まり部28に隣接し、且つ正面視においてガス溜まり部28を包囲している。変位規制部材35は、ガス溜まり部28に対して非接触となるように配置されている。したがって、変位規制部材35を設けても、ガス溜まり部28は膨張することができる。
【0030】
二次電池Aが振動するときには、セル10の蓄電要素収容部27と冷却プレート30とが、一体となって前後方向、上下方向、左右方向に振動する。このとき、変位規制部材35は、変位規制対象部29を挟んだ状態で蓄電要素収容部27及び冷却プレート30と一体となって振動するので、変位規制対象部29(熱溶着部22)が蓄電要素収容部27に対して相対変位することはない。したがって、蓄電要素収容部27とU字形の変位規制対象部29とによって囲まれたガス溜まり部28も、蓄電要素収容部27に対して相対変位することがない。よって、本実施形態1の二次電池Aは、ガス溜まり部28が振動したことに起因して、ガス溜まり部28を構成するラミネートシート21に亀裂が生じる、という虞がない。
【0031】
変位規制部材35の内部には、冷媒を流動させるための冷媒流路36が形成されている。変位規制部材35に供給された冷媒は、冷媒流路36を通過する過程で、蓄電要素収容部27から熱溶着部22に伝達された熱を奪う。変位規制部材35によって、セル10の蓄電要素11を間接的に冷却することができる。
【0032】
本実施形態1の二次電池Aは、可撓性を有する外装体20内に蓄電要素11を収容したセル10と、変位規制部材35と、を備えている。外装体20は、外装体20の外周縁部を封止する熱溶着部22と、蓄電要素11を収容する蓄電要素収容部27と、ガス溜まり部28とを有する。ガス溜まり部28は、蓄電要素11を構成する電解液の相転移によって発生した気化ガスを貯留する変形可能な部位である。熱溶着部22のうちガス溜まり部28に隣接する領域(変位規制対象部29)は、変位規制部材35によって、蓄電要素収容部27に対する相対変位を規制されている。
【0033】
この構成によれば、外装体20が振動を受けたときに、蓄電要素収容部27に対するガス溜まり部28の相対変位が抑制されるので、振動に起因するガス溜まり部28の変形も抑制される。これにより、ガス溜まり部28における亀裂の発生を抑制することができる。変位規制部材35はガス溜まり部28に接触しないので、ガス溜まり部28が気化ガスの体積増大に伴って膨らむことに支障を来すことはない。
【0034】
熱溶着部22のうち変位規制部材35によって相対変位を規制された下辺部24の変位規制対象部29は、正面視において、蓄電要素収容部27との間でガス溜まり部28を挟む位置に配置されている。この構成によれば、蓄電要素収容部27に対するガス溜まり部28の相対変位を、効果的に抑制することができる。
【0035】
正面視において、外装体20の外周縁は長方形をなしている。外装体20の外周縁部を構成する4つの辺部23,24,25L,25Rのうち上辺部23(第1の辺部)においては、蓄電要素11に接続した左右一対のタブ18の上端部が外装体20の外部上方へ突出している。変位規制対象部29は、4つの辺部23,24,25L,25Rのうち電要素収容部を挟んで上辺部23とは反対側の下辺部24(第2の辺部)に配置されている。この構成によれば、変位抑制部材がタブ18と干渉することを回避できる。
【0036】
変位規制対象部29は、下辺部24の長さ方向(左右方向)における少なくとも両端部に配置されている。この構成によれば、蓄電要素収容部27に対する下辺部24の相対変位を、効果的に抑制することができる。変位規制対象部29は、下辺部24の長さ方向における全領域に亘って配置されている。この構成によれば、蓄電要素収容部27に対する下辺部24の相対変位を、より効果的に抑制することができる。変位規制対象部29は、4つの辺部23,24,25L,25Rのうち上辺部23を除いた3つの辺部(下辺部24、左辺部25L及び右辺部25R)に配置されている。この構成によれば、振動に起因するガス溜まり部28の亀裂発生を、さらに効果的に抑制できる。
【0037】
複数のセル10と、セル10よりも剛性の高い複数の冷却プレート30とが交互に積層して配置されている。変位規制部材35は、熱溶着部22と冷却プレート30との隙間を埋めるように配置されている。この構成によれば、変位規制部材35を蓄電要素収容部27に接触させなくても、冷却プレート30の剛性を利用することよって、蓄電要素収容部27に対する変位規制対象部29の相対変位を規制することができる。変位規制部材35も、冷却プレート30と同様、セル10(外装体20)を冷却する機能を有している。この構成によれば、冷却プレート30と変位規制部材35とによって、セル10を効果的に冷却することができる。
【0038】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
変位規制部材に保持される変位規制対象部は、熱溶着部に限らず、熱溶着されていないガス溜まり部を含んでいてもよい。換言すると、変位規制部材は、ガス溜まり部に対して接触した状態で配置してもよい。
熱溶着部において変位規制部材に保持される変位規制対象部は、蓄電要素収容部との間でガス溜まり部を挟まない位置に配置してもよい。
変位規制対象部は、4つの辺部のうち第2の辺部以外の3つの辺部のいずれかに沿った熱溶着部に配置してもよい。
変位規制対象部は、第2の辺部の中央部のみに配置してもよく、第2の辺部の両端部のみに配置してもよい。
変位規制部材は、冷却プレートを有しない二次電池にも設けることができる。この場合、複数の変位規制部材同士をボルト締結などによって連結することができる。
変位規制部材が冷却機能を有していなくてもよい。
ラミネートシートのうちガス溜まり部を構成する部位は、熱溶着されている状態から、気化ガスの発生にともなって剥離するようになっていてもよい。
変位規制部材は、下辺部用の部材と、左辺部用の部材と、右辺部用の部材とに3分割したものでもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…セル
11…蓄電要素
18…タブ
20…外装体
22…熱溶着部
23…上辺部(第1の辺部)
24…下辺部(第2の辺部)
25L…左辺部(辺部)
25R…右左辺部(辺部)
27…蓄電要素収容部
28…ガス溜まり部
29…変位規制対象部
30…冷却プレート
35…変位規制部材
図1
図2
図3
図4
図5