(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167677
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】密封装置及び密封構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/447 20060101AFI20241127BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20241127BHJP
F16J 15/3256 20160101ALI20241127BHJP
【FI】
F16J15/447
F16J15/3232 201
F16J15/3256
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083909
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌範
【テーマコード(参考)】
3J006
3J042
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE16
3J006AE30
3J006AE34
3J006AE41
3J006AE42
3J006AE46
3J006CA01
3J042AA09
3J042AA12
3J042CA05
3J042CA10
3J042DA10
3J043AA16
3J043CA05
3J043CB13
3J043DA06
3J043DA20
3J043HA01
3J043HA04
(57)【要約】
【課題】低トルク化の要請に応えるとともに、泥水等の異物の侵入の抑制しつつ、ラビリンスシール内に侵入したグリースを速やかに内部空間に排出することができる密封装置及び密封構造を提供する。
【解決手段】環状空間Sの端部に装着される密封装置22であって、外側部材に装着される第1部材23と、内側部材に装着される第2部材43とを備え、前記第1部材は、第1円輪部27と、該第1円輪部の径方向の内側の端部27aから径方向の内側に突出して延びる突条部33A,33Bとを有し、前記第2部材は、第2円輪部45と、該第2円輪部よりも軸方向の前記環状空間側に位置して径方向に平行に延びて、前記突条部と隙間を介して軸方向に重なる堰部49とを有し、前記突条部は、前記堰部と軸方向に対向する面が径方向の内側に向けて広がるように傾斜した傾斜面33Aa,33Baであり、前記堰部との間に隙間による第1ラビリンスシールR1を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封装置であって、
前記外側部材に装着される第1部材と、前記内側部材に装着される第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記外側部材の内周面よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部と、該第1円輪部の径方向の内側の端部から径方向の内側に突出して延びる突条部とを有し、
前記第2部材は、前記第1円輪部よりも軸方向において前記環状空間の反対側に位置する第2円輪部と、該第2円輪部よりも軸方向の前記環状空間側に位置して径方向に平行に延びてまたは前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びて、前記突条部と隙間を介して軸方向に重なる堰部とを有し、
前記突条部は、前記堰部と軸方向に対向する面が径方向の内側に向けて広がるように傾斜した傾斜面であり、前記堰部との間に隙間による第1ラビリンスシールを形成することを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1部材は、第1突出部と開口溝部とをさらに備え、
前記第1突出部は、軸方向において前記環状空間とは反対側に突出して形成され、
前記開口溝部は、前記第1突出部の外周面である外周壁面と、該外周壁面と径方向に対向し且つ該外周壁面よりも径方向の外側に位置する内周壁面と、該内周壁面と前記外周壁面とを接続する溝底とにより軸方向に開口した凹状に設けられ、
前記第2部材は、軸方向に延びて前記開口溝部内に非接触に配される円筒部と、該円筒部の端部から径方向に延びて前記第1突出部と軸方向に対向する第3円輪部とをさらに備え、
前記開口溝部と前記円筒部との間及び前記第3円輪部と前記第1突出部との間には、連続した隙間による第2ラビリンスシールが形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記内側部材は、連続して拡径して前記外側部材の軸方向の一方面と対向するフランジ部を有し、
前記フランジ部は、前記外側部材の前記内周面よりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部を有し、
前記第1部材及び第2部材は、前記環状空間における前記フランジ部側の端部に装着され、
前記第1部材は、第1突出部と開口溝部とをさらに備え、
前記第1突出部は、軸方向において前記環状空間とは反対側に突出して形成され、
前記開口溝部は、前記第1突出部の外周面である外周壁面と、該外周壁面と径方向に対向し且つ該外周壁面よりも径方向の外側に位置する内周壁面と、該内周壁面と前記外周壁面とを接続する溝底とにより軸方向に開口した凹状に設けられ、
前記段差部に装着される第3部材をさらに備え、
前記第3部材は、軸方向に延びて前記開口溝部内に非接触に配される円筒部と、該円筒部の端部から径方向に延びて前記第1突出部と軸方向に対向する第3円輪部と、前記円筒部よりも径方向の内側に位置し、軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びる傾斜部とを備え、
前記開口溝部と前記円筒部との間及び前記第3円輪部と前記第1突出部との間には、連続した隙間による第2ラビリンスシールが形成されることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1部材は、前記突条部を一対備えており、
一対の前記突条部は、前記堰部を介して軸方向に対向していることを特徴とする密封装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1円輪部は、前記第2円輪部に摺接するシールリップを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項3において、
前記第1部材は、前記外側部材の軸方向の面に沿って径方向に延びる第4円輪部と、該第4円輪部から軸方向の前記環状空間の反対側に突出し、外周面が前記外側部材の外周面よりも径方向の外側に位置する第2突出部とをさらに備え、
前記第2突出部は、内周面が前記開口溝部の前記内周壁面であり、
前記円筒部は、径方向において前記第1突出部と前記第2突出部との間に配されることを特徴とする密封装置。
【請求項7】
相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封部材を備えた密封構造であって、
前記内側部材は、外周面から径方向の外側に突出した第1堰部と、基部から連続して拡径して前記外側部材の軸方向の一方面と軸方向に対向するフランジ部と、該フランジ部において前記外側部材の内周面よりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部と、該段差部の軸方向の前記環状空間側の端部から径方向の外側に突出した第2堰部と、前記段差部よりも径方向の外側に位置して軸方向の前記環状空間側に突出するフランジ側突出部とを有し、
前記密封部材は、前記外側部材の前記内周面よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部と、該第1円輪部の径方向の内側の端部から径方向の内側に突出して延びる突条部と、軸方向の前記フランジ部側に突出して前記フランジ側突出部の内周面に対向する第1突出部と、前記フランジ側突出部を介して前記第1突出部の外周面と径方向に対向する第2突出部とを有し、
前記突条部は、一対形成されて前記第1堰部を介して軸方向に互いに対向しており、前記第1堰部と対向する軸方向の面が径方向の内側に向けて広がるように傾斜した傾斜面であり、前記第1堰部と協働して第1ラビリンスシールを形成し、
前記第1突出部、前記第2突出部、前記フランジ側突出部により連続した第2ラビリンスシールが形成されていることを特徴とする密封構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記密封部材は、前記第1円輪部の一部から軸方向の前記フランジ部側に拡径して延びて前記フランジ部に摺接するシールリップをさらに備えることを特徴とする密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封装置及び密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車輪の軸受装置には、外部空間からの泥水やダスト等の異物の侵入や上述の環状空間内に充填されたグリースの漏出を抑制するために、上述のような外側部材と内側部材との間の環状空間の両端部を密封する密封装置が装着されている。下記特許文献1、2では、環状空間内に充填されたグリースが密封装置外に漏出することを抑制するために、隙間によるラビリンスシールが構成されている。また、下記特許文献3では、環状空間内に充填されたグリースが密封装置内に侵入することを抑制するために、環状空間側に隙間によるラビリンスシールが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭47-040186号公報
【特許文献2】実開昭56-117164号公報
【特許文献3】特開2018-141472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、内側リップ(5)と凹溝(2)とが小隙間(S1)によってラビリンス効果を発揮してグリースの漏出を抑制している。また、特許文献2では、くし歯状に形成されたラビリンス部(13)の先端が回転軸(1)外周とわずかな隙間を形成することで、グリースがラビリンス部(13)を通り抜けることが抑制される。また、特許文献3・
図7では、カバーリップ(9e1)とスリンガ傾斜部(10d)との間にラビリンス構造が構成されることで、グリースの漏出を抑制している。このように特許文献1~3では、ラビリンスシールによってグリースの漏出を抑制しているが、ラビリンスシール内に侵入したグリースをスムーズに環状空間側に排出する構造の要請がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低トルク化の要請に応えるとともに、泥水等の異物の侵入の抑制しつつ、ラビリンスシール内に侵入したグリースを速やかに内部空間に排出することができる密封装置及び密封構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の密封装置は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封装置であって、前記外側部材に装着される第1部材と、前記内側部材に装着される第2部材とを備え、前記第1部材は、前記外側部材の内周面よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部と、該第1円輪部の径方向の内側の端部から径方向の内側に突出して延びる突条部とを有し、前記第2部材は、前記第1円輪部よりも軸方向において前記環状空間の反対側に位置する第2円輪部と、該第2円輪部よりも軸方向の前記環状空間側に位置して径方向に平行に延びてまたは前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びて、前記突条部と隙間を介して軸方向に重なる堰部とを有し、前記突条部は、前記堰部と軸方向に対向する面が径方向の内側に向けて広がるように傾斜した傾斜面であり、前記堰部との間に隙間による第1ラビリンスシールを形成することを特徴とする。
【0007】
上記密封装置において、前記第1部材は、第1突出部と開口溝部とをさらに備え、前記第1突出部は、軸方向において前記環状空間とは反対側に突出して形成され、前記開口溝部は、前記第1突出部の外周面である外周壁面と、該外周壁面と径方向に対向し且つ該外周壁面よりも径方向の外側に位置する内周壁面と、該内周壁面と前記外周壁面とを接続する溝底とにより軸方向に開口した凹状に設けられ、前記第2部材は、軸方向に延びて前記開口溝部内に非接触に配される円筒部と、該円筒部の端部から径方向に延びて前記第1突出部と軸方向に対向する第3円輪部とをさらに備え、前記開口溝部と前記円筒部との間及び前記第3円輪部と前記第1突出部との間には、連続した隙間による第2ラビリンスシールが形成されてもよい。
【0008】
また、上記密封装置において、前記内側部材は、連続して拡径して前記外側部材の軸方向の一方面と対向するフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記外側部材の前記内周面よりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部を有し、前記第1部材及び第2部材は、前記環状空間における前記フランジ部側の端部に装着され、前記第1部材は、第1突出部と開口溝部とをさらに備え、前記第1突出部は、軸方向において前記環状空間とは反対側に突出して形成され、前記開口溝部は、前記第1突出部の外周面である外周壁面と、該外周壁面と径方向に対向し且つ該外周壁面よりも径方向の外側に位置する内周壁面と、該内周壁面と前記外周壁面とを接続する溝底とにより軸方向に開口した凹状に設けられ、前記段差部に装着される第3部材をさらに備え、前記第3部材は、軸方向に延びて前記開口溝部内に非接触に配される円筒部と、該円筒部の端部から径方向に延びて前記第1突出部と軸方向に対向する第3円輪部と、前記円筒部よりも径方向の内側に位置し、軸方向の前記環状空間側に向けて径方向の外側に傾斜して延びる傾斜部とを備え、前記開口溝部と前記円筒部との間及び前記第3円輪部と前記第1突出部との間には、連続した隙間による第2ラビリンスシールが形成されてもよい。
【0009】
また、上記密封装置において、前記第1部材は、前記突条部を一対備えており、一対の前記突条部は、前記堰部を介して軸方向に対向してもよい。
【0010】
また、上記密封装置において、前記第1円輪部は、前記第2円輪部に摺接するシールリップを備えてもよい。
【0011】
また、上記密封装置において、前記第1部材は、前記外側部材の軸方向の面に沿って径方向に延びる第4円輪部と、該第4円輪部から軸方向の前記環状空間の反対側に突出し、外周面が前記外側部材の外周面よりも径方向の外側に位置する第2突出部とをさらに備え、前記第2突出部は、内周面が前記開口溝部の前記内周壁面であり、前記円筒部は、径方向において前記第1突出部と前記第2突出部との間に配されてもよい。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の密封構造は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間の端部に装着される密封部材を備えた密封構造であって、前記内側部材は、外周面から径方向の外側に突出した第1堰部と、基部から連続して拡径して前記外側部材の軸方向の一方面と軸方向に対向するフランジ部と、該フランジ部において前記外側部材の内周面よりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部と、該段差部の軸方向の前記環状空間側の端部から径方向の外側に突出した第2堰部と、前記段差部よりも径方向の外側に位置して軸方向の前記環状空間側に突出するフランジ側突出部とを有し、前記密封部材は、前記外側部材の前記内周面よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部と、該第1円輪部の径方向の内側の端部から径方向の内側に突出して延びる突条部と、軸方向の前記フランジ部側に突出して前記フランジ側突出部の内周面に対向する第1突出部と、前記フランジ側突出部を介して前記第1突出部の外周面と径方向に対向する第2突出部とを有し、前記突条部は、一対形成されて前記第1堰部を介して軸方向に互いに対向しており、前記第1堰部と対向する軸方向の面が径方向の内側に向けて広がるように傾斜した傾斜面であり、前記第1堰部と協働して第1ラビリンスシールを形成し、前記第1突出部、前記第2突出部、前記フランジ側突出部により連続した第2ラビリンスシールが形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記密封構造において、前記密封部材は、前記第1円輪部の一部から軸方向の前記フランジ部側に拡径して延びて前記フランジ部に摺接するシールリップをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の密封装置及び密封構造は、上述した構造とされているため、低トルク化の要請に応えるとともに、泥水等の異物の侵入の抑制しつつ、ラビリンスシール内に侵入したグリースを速やかに内部空間に排出することができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】各実施形態に係る密封装置が装着される軸受装置の一例を示す概略的縦断面図である。
【
図2】
図1のX部の拡大図であって、第1実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【
図3】(a)~(c)は
図2のZ1部の変形例を模式的に示す概略的縦断面図、(d)は
図2のZ2部の変形例を模式的に示す概略的縦断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【
図5】
図1のY部の拡大図であって、第3実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【
図7】第5実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【
図8】
図1のY部の拡大図であって、密封構造を模式的に示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態における密封装置22は、相対的に回転する外側部材及び内側部材間に形成された環状空間Sの端部に装着される。密封装置22は、外側部材に装着される第1部材23と、内側部材に装着される第2部材43とを備える。第1部材23は、外側部材の内周面よりも径方向の内側に位置して径方向に延びる第1円輪部27と、第1円輪部27の径方向の内側の端部27aから径方向の内側に突出して延びる突条部33A,33Bとを有する。第2部材43は、第1円輪部27よりも軸方向において環状空間の反対側に位置する第2円輪部45を有する。また、第2部材43は、第2円輪部45よりも軸方向の環状空間S側に位置して径方向に平行に延びてまたは環状空間S側に向けて径方向の外側に傾斜して延びて、突条部33A,33Bと隙間を介して軸方向に重なる堰部49を有する。突条部33A,33Bは、堰部49と軸方向に対向する面が径方向の内側に向けて広がるように傾斜した傾斜面33Aa,33Baであり、堰部49との間に隙間による第1ラビリンスシールR1を形成する。
以下、詳しく説明する。なお、一部の図には他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また、軸Lに沿って車体側に向く側(
図1において右側)を軸方向の一方側、その反対方向である軸Lに沿って車輪側に向く側(
図1において左側)を軸方向の他方側とする。
【0017】
<軸受装置>
図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する軸受装置1を示す。この軸受装置1は、大略的に、上述の外側部材に相当する外輪2と、上述の内側部材に相当する内輪4と、外輪2と内輪4との間に介装される2列の転動体(ボール)13…とを含んで構成される。内輪4は、内輪部材5とハブ輪7とで回転部材として構成され、内輪部材5はハブ輪7の車体側に嵌合一体とされる。ハブ輪7にはドライブシャフト15が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフト15は等速ジョイント16を介して不図示の駆動源(駆動伝達部)に連結される。ドライブシャフト15はナット17によってハブ輪7と一体化され、ハブ輪7のドライブシャフト15からの脱落が防止されている。内輪4(内輪部材5及びハブ輪7)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能な回転部材とされ、外輪2と、内輪4とにより、相対的に回転する2部材が構成され、環状空間Sが形成される。環状空間S内には、2列の転動体13…が、リテーナ14に保持された状態で、外輪2の軌道輪3、内輪部材5及びハブ輪7の軌道輪6,8を転動可能に介装されている。ハブ輪7は、円筒形状のハブ輪本体9と、ハブ輪本体9より立上基部10を介して外径側に延出するフランジ部11とを有し、フランジ部11にボルト12及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。
【0018】
環状空間Sの軸方向に沿った両端部であって、外輪2と内輪部材5との間及び外輪2とハブ輪7との間には、密封装置22,52が装着され、環状空間Sの軸方向に沿った両端部が密封される。これによって、環状空間S内への泥水等の異物の浸入や環状空間S内に充填されている潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が抑制される。次に、環状空間Sの軸方向の一方側の端部に装着される第1実施形態の密封装置22について、
図2を参照しながら説明する。なお、
図2では、上述の軸方向において環状空間の反対側を軸方向の一方側、上述の軸方向の環状空間S側を軸方向の他方側として説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図2に示す密封装置22は、外輪2に装着される第1部材23と内輪部材5に装着される第2部材43とを備えている。第1部材23は、芯体部材24と、シール部材30とを備えている。芯体部材24は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。芯体部材24は、軸方向に延びて外輪2の内周面2bに嵌合される第1円筒部25を備えている。第1円筒部25の外周面の軸方向の一方側には、内径側に凹んだ凹部26が形成されている。芯体部材24は、外輪2の内周面2bよりも内径側に位置し、第1円筒部25の軸方向の他方側の端部から内径側に延びる第1円輪部27を備えている。
【0020】
シール部材30は、ゴム材等の弾性材料によって構成され、シール基部31を介して芯体部材24に固着されている。シール部材30は、シール基部31が芯体部材24の軸方向の一方側の全面を覆っている。さらにシール部材30は、シール基部31が第1円輪部27の内径側の端部27aを回り込んで第1円輪部27の軸方向の他方面における内径側の一部と、第1円筒部25の軸方向の一方側の端部を回り込んで第1円筒部25の凹部26とを覆っている。シール部材30は、シール基部31が第1円輪部27の軸方向の他方面における内径側の一部と第1円筒部25の凹部26とを覆っていることで、芯体部材24から剥離しにくくなっている。
【0021】
また、シール部材30は、第1円筒部25の凹部26を覆っているシール基部31の部分から外径側に突出した環状突部32が形成されている。
図2に示す二点鎖線の環状突部32は、変形前の自然状態における形状を示している。環状突部32が第1円筒部25と外輪2の内周面2bとの間に圧縮状態で介在することによって、泥水等の異物が第1円筒部25と外輪2の内周面2bとの間から環状空間S内に侵入することを抑制することができる。
【0022】
第1部材23は、第1円輪部27の内径側の端部27aから内径側に突出して延びる一対の突条部である第1突条部33A、第2突条部33Bを備えている。第1突条部33A、第2突条部33Bは、それぞれシール部材30のシール基部31から内径側に突出して形成されており、その断面形状は内径側に向かうにつれて先細る形状となっている。第1突条部33Aは第2部材43の堰部49よりも軸方向の一方側に配され、第2突条部33Bは堰部49よりも軸方向の他方側に配されている。第1突条部33A及び第2突条部33Bは、堰部49を介して軸方向に対向しており、堰部49と軸方向に対向する面である各傾斜面33Aa,33Baが内径側に向けて広がるように傾斜している。第1突条部33Aの傾斜面33Aaは、内径側に向かうにつれて堰部49から離隔するように軸方向の一方側に傾斜している。一方、第2突条部33Bの傾斜面33Baは、内径側に向かうにつれて堰部49から離隔するように軸方向の他方側に傾斜している。シール部材30は、第1突条部33Aと第2突条部33Bとを接続する底部34が形成されている。これにより、第1部材23には、第1突条部33A、第2突条部33B、底部34に囲まれた空間が形成されている。
【0023】
第1部材23は、第1突出部35と開口溝部36とを備えている。第1突出部35は、第1円輪部27の軸方向一方面を覆う部分のシール基部31から軸方向の一方側に突出して形成されている。第1突出部35は、第1円筒部25と径方向に離隔して設けられている。また第1突出部35は、先端部35aが後述する第3円輪部47との間に径方向に延びる隙間を形成する。また、第1突出部35は、内周面35bが軸方向の一方側に延びるにつれて外径側に傾斜した傾斜面となっている。第1突出部35の内周面35bが軸方向の一方側に向かうにつれて外径側に傾斜していることによって、第1突出部35の内周面35bに沿って泥水等の異物を排出しやすくなっている。
【0024】
第1部材23は、第1円筒部25の内周面及び第1円輪部27の軸方向の一方面を覆う部分のシール基部31と第1突出部35とに囲まれた、軸方向の一方側に開口する開口溝部36が形成されている。開口溝部36は、第1突出部35の外周面である外周壁面37と、外周壁面37と径方向に対向し且つ外周壁面37よりも径方向の外側に位置する内周壁面38と、内周壁面38と外周壁面37とを接続する溝底39とにより軸方向に開口した凹状に設けられている。なお、内周壁面38は、第1円筒部25の内周面を覆う部分におけるシール基部31の内周面である。また、溝底39は、内周壁面38と外周壁面37との間における、第1円輪部27の軸方向の一方面を覆うシール基部31の軸方向の一方面である。
【0025】
第2部材43は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。第2部材43は、径方向における外輪2と内輪部材5との間に配される。第2部材43は、内輪部材5の外周面5aに嵌合する軸方向に延びた第2円筒部44を備えている。また、第2部材43は、第2円筒部44の軸方向の一方側の端部から外径側に延びる第2円輪部45を備えている。また、第2部材43は、第2円輪部45の外径側の端部から軸方向の一方側に延びる第3円筒部46を備えている。
【0026】
また、第2部材43は、第2円筒部44の軸方向の他方側の端部から外径側に延びる堰部49を備えている。堰部49は、径方向と略平行に延びており、第1突条部33Aと第2突条部33Bとの間に位置して、第1突条部33Aと第2突条部33Bと隙間を介して軸方向に重なっている。また、堰部49は、底部34との間に隙間を介して径方向に対向している。堰部49は、第1突条部33Aと底部34と第2突条部33Bとの間に隙間による第1ラビリンスシールR1を形成している。
【0027】
密封装置22は、堰部49を有することによって、グリースが内輪部材5の外周面5aを伝って密封装置22の内部に侵入して外部に漏出することを抑制することができる。また、堰部49の軸方向の他方側に設けられている第2突条部33Bにより、堰部49に至るグリースをより抑制することができる。また、堰部49の軸方向の一方側に設けられている第1突条部33Aにより、堰部49に至る泥水等の異物を抑制することができる。
【0028】
第1ラビリンスシールR1は、第1突条部33A、第2突条部33B、堰部49が隙間を介して軸方向に重なっていることによって、蛇行状の複雑な経路となっている。これにより、第1ラビリンスシールR1は、グリースが密封装置22内に侵入することを抑制することができるとともに、環状空間S内に泥水等の異物が侵入することを抑制することができる。また、第1ラビリンスシールR1内にグリースが侵入したとしても、内輪4の回転に伴う遠心力により、第1突条部33A、第2突条部33Bの傾斜面33Aa,33Baによって侵入したグリースが環状空間S側に押し戻される。これにより、密封装置22は、グリースが密封装置22内に侵入して外部に漏出することを抑制することができる。
【0029】
また、第2部材43は、軸方向に延びて開口溝部36内に非接触に配される第4円筒部48と、第4円筒部48の端部から径方向に延びて第1突出部35と軸方向に対向する第3円輪部47とを備えている。第3円輪部47は、第4円筒部48の軸方向の一方側の端部から内径側に延びて、第3円筒部46の軸方向の一方側の端部に接続されている。
【0030】
第4円筒部48は、第1部材23の第1円筒部25と第1突出部35との間に配されており、開口溝部36内に非接触に配されている。開口溝部36と第4円筒部48との間及び第3円輪部47と第1突出部35との間には、連続した隙間による第2ラビリンスシールR2が形成されている。第2ラビリンスシールR2は、内周壁面38と第4円筒部48との間の隙間、溝底39と第4円筒部48との間の隙間、外周壁面37と第4円筒部48との間の隙間、第1突出部35の先端部35aと第3円輪部47との間の隙間が連通して形成されている。さらに第2ラビリンスシールR2は、第1突出部35の内周面35bと第3円筒部46との間の隙間が連通して形成されている。これにより、第2ラビリンスシールR2は、蛇行状の複雑な経路になるとともに、第2ラビリンスシールR2の全体の長さが長くなって、泥水等の異物の侵入を抑制することができる。
【0031】
また、第2部材43は、第3円輪部47の軸方向の一方面に、磁性ゴム製の磁性部50が設けられている。磁性部50は、N極とS極とが周方向に交互に着磁されており、車体に設けられた不図示の磁気センサと対峙するように設けられている。磁性部50は、磁気センサと協働することにより、車輪の回転速度や向き等を検出する磁気エンコーダとしての役割を有する。
【0032】
外輪2に装着されている第1部材23は、内輪4(内輪部材5)に装着されている第2部材43や内輪4に接触する部材を備えておらず、第2部材43は、第1部材23や外輪2に接触する部材を備えていない。このように、密封装置22は、第1部材23と第2部材43とが非接触に対向して設けられていることで、回転トルクの増大を抑制することができる。また、密封装置22は、第2ラビリンスシールR2により、泥水等の異物が侵入することを抑制することができる。また、密封装置22は、第1突出部35と第2円輪部45と第2円筒部44と第1円輪部27の軸方向の一方面を覆うシール基部31と第1突条部33Aの軸方向の一方面とに囲まれた空間部51が形成されている。また、第1突条部33A及び第1ラビリンスシールR1が形成されていることによって、空間部51内に滞留した泥水等の異物が環状空間S内に侵入することを抑制して、第1突出部35の内周面35bに沿って空間部51内から外部空間側に排出することができる。また、第1部材23と第2部材43とが非接触に対向して設けられていることで、泥水等の異物を速やかに外部空間側に排出することができる。また、空間部51内に突出する部材が形成されていないことにより、泥水等の異物が空間部51から排出される際に、スムーズに排出することができる。
【0033】
<第1実施形態の変形例>
次に、
図3(a)~(d)を参照しながら、第1実施形態の密封装置22の各部の変形例について説明する。なお、第1実施形態と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
図3(a)~(c)は、
図2のZ1部の変形例、
図3(d)は、
図2のZ2部の変形例である。
図3(a)の第2部材43は、第2円筒部44の軸方向の他方側の端部から外径側に延びるにつれて軸方向の他方側に傾斜した堰部49Aを備えている。密封装置22が傾斜した堰部49Aを備えることで、内輪4の回転に伴う遠心力によって、グリースが堰部49Aの傾斜に沿って環状空間S側に押し戻され易くなり、グリースが密封装置22内に侵入して外部に漏出することをより抑制することができる。また、堰部49Aは、第1突条部33Aの傾斜面33Aaと略平行に形成されていることによって、よりグリースを環状空間S側に押し戻しやすくなっている。
【0034】
図3(b)の第1部材23は、突条部を一つだけ備えており、第1実施形態における堰部49の軸方向の他方側の第2突条部33Bだけを備えた構成となっている。また、第2部材43は、
図3(a)と同様に外径側に傾斜した堰部49Aを備えている。突条部が第2突条部33Bの1つだけであったとしても、傾斜した堰部49Aとの間に第1ラビリンスシールR1を形成して、グリースが密封装置22内に侵入して外部に漏出することを抑制することができる。
【0035】
また、
図3(c)の第1部材23は、突条部を一つだけ備えており、
図3(b)とは逆に、第1実施形態における堰部49の軸方向の一方側の第1突条部33Aだけを備えた構成となっている。また、第2部材43は、
図3(a)と同様に外径側に傾斜した堰部49Aを備えている。突条部が第1突条部33Aの1つだけであったとしても、泥水等の異物の侵入を抑制することができる。また、第1突条部33Aと傾斜した堰部49Aとにより第1ラビリンスシールR1が形成され、泥水等の異物が環状空間S内に侵入することを抑制することができるとともに、グリースが密封装置22内に侵入して外部に漏出することを抑制することができる。
【0036】
図3(d)の第1部材23は、シール基部31から軸方向の一方側に突出するにつれて外径側に傾斜し、第2部材43の第2円輪部45に摺接するシールリップ40を備えている。これにより、第1円輪部27は、シール基部31を介してシールリップ40を備えている。第2部材43の第2円輪部45にシールリップ40が摺接することで、泥水等の異物のそれ以上の侵入を抑制することができる。なお、
図3(d)の二点鎖線に示すシールリップ40は、変形前の自然状態における形状を示している。
【0037】
<第2実施形態>
次に
図4を参照しながら、第2実施形態における密封装置22Aについて説明する。なお、第1実施形態と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
第1部材23は、外輪2の軸方向の一方面2cに沿って径方向に延びる第4円輪部28と、第4円輪部28から軸方向の一方側に突出し、外周面42aが外輪2の外周面2aよりも外径側に位置する第2突出部42とを備えている。第4円輪部28は、外輪2の内周面2bに嵌合される第1円筒部25の軸方向の一方側の端部から外径側に延びて、外輪2の軸方向の一方面2cに当接する。第4円輪部28の軸方向の他方面の外径側の部分には、軸方向に凹んだ凹部29が設けられている。シール基部31は、第4円輪部28の外径側の端部を回り込んで凹部29に至っている。シール基部31には、凹部29に至っている部分から軸方向の他方側に突出した環状突部32Aが設けられている。二点鎖線で示す環状突部32Aは、変形前の自然状態における形状を示している。環状突部32Aは、外輪2の軸方向の一方面2cと凹部29との間に圧縮状態で介在することにより、外輪2の軸方向の一方面2cと第4円輪部28との間に泥水等の異物の侵入を抑制することができる。
【0038】
第1突出部35は、シール基部31から軸方向の一方側に突出して形成されており、第4円輪部28の内径側の一部と、第1円筒部25と、第1円輪部27の外径側の一部と軸方向に重なって設けられている。第1突出部35の外周面は、第1部材23の開口溝部36の外周壁面37となっている。また、第1突出部35の内周面35bは、軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜した傾斜面となっている。また、第1円筒部25の内周面を覆う部分のシール基部31には、軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜した内周面31aが形成されており、この内周面31aは、第1突出部35の内周面35bと略面一になっている。
【0039】
第2突出部42は、第4円輪部28の軸方向の一方面の外径側の一部及び外径側の端部を覆うシール基部31から軸方向の一方側に突出して形成されている。第2突出部42は、第2部材43の第3円輪部47と径方向に重なる位置まで軸方向の一方側に突出して形成されている。第2突出部42の内周面が、第1部材23の開口溝部36の内周壁面38Aとなっている。第2突出部42は、外周面42aが外輪2の外周面2aよりも外径側に位置することにより、外輪2の外周面2aに沿って流れてきた泥水等の異物を堰き止める堰としての役割を有している。また、第2突出部42が軸方向の一方側に突出して形成されていることにより、泥水等の異物が密封装置22A内に侵入することを抑制している。また、第2突出部42が第4円筒部48と隙間を介して径方向に覆っていることにより、より泥水等の異物の侵入を抑制している。
【0040】
第4円輪部28の軸方向の一方面を覆う部分のシール基部31の軸方向の一方面が、開口溝部36の溝底39Aとなっている。第1部材23には、第2突出部42の内周面である内周壁面38Aと、第1突出部35の外周面である外周壁面37と、内周壁面38Aと外周壁面37とを接続する溝底39Aとにより、軸方向の一方側に開口した開口溝部36が形成されている。この開口溝部36内には、第2部材43の第4円筒部48が非接触に配されている。
【0041】
第2部材43は、第3円筒部46が外輪2の軸方向の一方面2cよりも軸方向の一方側に位置するように設けられている。また、第2部材43は、第3円筒部46の軸方向の一方側の端部から外輪2の内周面2bよりも外径側に延びた第3円輪部47を備えている。第3円輪部47の軸方向の一方面には、磁性ゴム製の磁性部50が固着されている。また、第3円輪部47の外径側の端部から軸方向の他方側に延びて第4円筒部48が設けられている。
【0042】
第2ラビリンスシールR2は、内周壁面38Aと第4円筒部48との間の隙間、溝底39Aと第4円筒部48との間の隙間、外周壁面37と第4円筒部48との間の隙間、第1突出部35の先端部35aと第3円輪部47との間の隙間が連通して形成されている。第2ラビリンスシールR2により、泥水等の異物が密封装置22A内に侵入することを抑制することができる。また、密封装置22Aは、第1突出部35の内周面35bと、シール基部31の内周面31aと、第1円輪部27の軸方向の一方面を覆うシール基部31と、第2円筒部44と、第2円輪部45と、第3円筒部46とに囲まれた空間部51Aが形成されている。空間部51Aが形成されていることにより、泥水等の異物が空間部51A内に滞留して、シール基部31の内周面31aと第1突出部35の内周面35bとの傾斜に沿って外部に排出され易くなる。
【0043】
なお、
図4において二点鎖線で示したシールリップ40が、第1円輪部27から軸方向の一方側に突出して形成され、第2円輪部45に摺接してもよい。また、堰部49に代わり、
図4において二点鎖線で示した堰部49Aが、外径側に延びるにつれて軸方向の他方側に傾斜して設けられてよい。
【0044】
<第3実施形態>
次に、
図5を参照しながら、環状空間Sの軸方向の他方側の端部に装着される密封装置52について説明する。なお、
図5では、上述の軸方向の環状空間S側を軸方向の一方側、上述の軸方向において環状空間の反対側を軸方向の他方側として説明する。
【0045】
図5の密封装置52は、
図4の密封装置22Aから磁性部50を外して左右反転した構成となっている。第1部材53は、環状空間Sにおけるフランジ部11側の端部に装着され、芯体部材54とシール部材60とを備えている。芯体部材54は、軸方向に延びて形成され、外輪2の内周面2bに嵌合する第1円筒部55を備えている。また、芯体部材54は、第1円筒部55の軸方向の一方側の端部から内径側に延びる第1円輪部57を備えている。また、芯体部材54は、第1円筒部55の軸方向の他方側の端部から外径側に延びて形成され、外輪2の軸方向の他方面2dに当接する第4円輪部58を備えている。第4円輪部58の軸方向の一方面における外径側の一部は、軸方向に凹んだ凹部59が形成されている。
【0046】
シール部材60は、ゴム材等の弾性材料によって構成され、シール基部61を介して芯体部材54に固着されている。シール部材60は、シール基部61が芯体部材54の軸方向の他方側の全面を覆っている。さらにシール部材60は、シール基部61が第1円輪部57の内径側の端部57aを回り込んで第1円輪部57の軸方向の一方面における内径側の一部と、凹部59とを覆っている。また、凹部59を覆っているシール基部61から軸方向の一方側に突出した環状突部62を備えている。
図5の二点鎖線で示す環状突部62は変形前の自然状態における形状を示している。環状突部62が圧縮状態で介在することにより、外輪2の軸方向の他方面2dと第4円輪部58との間に泥水等の異物が侵入することを抑制することができる。
【0047】
第1部材53は、第1円輪部57の内径側の端部57aから内径側に突出して延びる一対の突条部である第1突条部63A、第2突条部63Bを備えている。第1突条部63A及び第2突条部63Bは、それぞれシール部材60のシール基部61から内径側に突出して形成されている。第1突条部63Aは、堰部79よりも軸方向の他方側、第2突条部63Bは、堰部79よりも軸方向の一方側に配されている。第1突条部63A及び第2突条部63Bは、それぞれ堰部79と軸方向に対向する面である傾斜面63Aa,63Baが内径側に向けて広がるように傾斜している。シール部材60は、第1突条部63Aと第2突条部63Bとを接続する底部64が形成されている。
【0048】
また、第1部材53は、第1突出部65と開口溝部66とを備えている。第1突出部65は、シール基部61から軸方向の他方側に突出して形成されており、第4円輪部58の内径側の一部と、第1円筒部55と、第1円輪部57の外径側の一部と軸方向に重なって設けられている。第1突出部65の外周面は、第1部材53の開口溝部66の外周壁面67となっている。また、第1突出部65の内周面65bは、軸方向の他方側に向けて外径側に傾斜した傾斜面となっている。また、第1円筒部55の内周面を覆う部分のシール基部61には、軸方向の他方側に向けて外径側に傾斜した内周面61aが形成されており、この内周面61aは、第1突出部65の内周面65bと略面一になっている。
【0049】
また、第1部材53は、第4円輪部58から軸方向の他方側に突出し、外周面72aが外輪2の外周面2aよりも外径側に位置する第2突出部72を備えている。第2突出部72は、第4円輪部58の軸方向の他方面における外径側の一部及び外径側の端部を覆うシール基部61から軸方向の他方側に突出して形成されている。第2突出部72は、第2部材73の第3円輪部77と径方向に重なる位置まで軸方向の他方側に突出して形成されている。第2突出部72の内周面は、第1部材53の開口溝部66の内周壁面68となっている。
【0050】
外周壁面67と内周壁面68との間に位置し、第4円輪部58の軸方向の他方面を覆う部分のシール基部61の軸方向の他方面が、開口溝部66の溝底69となっている。第1部材53には、第2突出部72の内周面である内周壁面68と、第1突出部65の外周面である外周壁面67と、内周壁面68と外周壁面67とを接続する溝底69とにより、軸方向の他方側に開口した開口溝部66が形成されている。この開口溝部66内には、第2部材73の第4円筒部78が非接触に配されている。内周壁面68と第4円筒部78との間の隙間、溝底69と第4円筒部78との間の隙間、外周壁面67と第4円筒部78との間の隙間、第1突出部65の先端部65aと第3円輪部77との間の隙間が連通して、第2ラビリンスシールR2が形成されている。
【0051】
第2部材73は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成されている。第2部材73は、環状空間Sにおけるフランジ部11側の端部に装着され、ハブ輪7の外周面7aに嵌合される第2円筒部74を備えている。また、第2部材73は、第2円筒部74の軸方向の他方側の端部から外径側に延びる第2円輪部75と、第2円輪部75の外径側の端部から軸方向の他方側に延びる第3円筒部76とを備えている。また、第2部材73は、第3円筒部76の軸方向の他方側の端部から外径側に延びる第3円輪部77を備えている。第3円輪部77は、フランジ部11の軸方向の一方面11aに当接する。また、第2部材73は、第3円輪部77の外径側の端部から軸方向の一方側に延びて開口溝部66内に非接触に配される第4円筒部78を備えている。
【0052】
また、第2部材73は、第2円筒部74の軸方向の一方側の端部から外径側に延びて、第1突条部63Aと第2突条部63B間に配される堰部79を備えている。これにより、密封装置52は、第1突条部63Aと、底部64と、第2突条部63Bと、堰部79との間の隙間によって形成された第1ラビリンスシールR1が形成されている。なお、第2部材73は、堰部79に代わり、
図5の二点鎖線で示す堰部79Aを備えてもよい。堰部79Aは、第2円筒部74の軸方向の一方側の端部から外径側に延びるにつれて軸方向の一方側に傾斜した形状となっている。
【0053】
密封装置52が環状空間Sの軸方向の他方側の端部に装着されることで、環状空間S内に泥水等の異物が侵入することを抑制するとともに、環状空間S内のグリースが密封装置52内に侵入して外部に漏出することが抑制される。また、第1部材53と第2部材73とが非接触に対向していることによって、回転トルクの増大を抑制することができる。なお、
図5の二点鎖線に示すように、シール基部61から軸方向の他方側に突出するにつれて外径側に傾斜し、第2部材73の第2円輪部75に摺接するシールリップ70が形成されてもよい。
【0054】
また、密封装置52は、第1突出部65の内周面65bと、シール基部61の内周面61aと、第1円輪部57の軸方向の一方面を覆うシール基部61と、第2円筒部74と、第2円輪部75と、第3円筒部76と、第3円輪部77とに囲まれた空間部81が形成されている。空間部81が形成されていることにより、泥水等の異物が空間部81内に滞留して、シール基部61の内周面61aと第1突出部65の内周面65bとの傾斜に沿って外部に排出され易くなる。また、空間部81内に突出する部材が形成されていないことにより、泥水等の異物が空間部81から排出される際に、スムーズに排出することができる。
【0055】
<第4実施形態>
次に
図6を参照しながら第4実施形態に係る密封装置52Aについて説明する。なお、
図5の第3実施形態に係る密封装置52と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
図6の第1部材53は、芯体部材54の第1円筒部55が外輪2の内周面2bから径方向に離隔して配されている。つまり、第1円筒部55が外輪2の内周面2bに嵌合しない構成となっている。第1部材53は、第4円輪部58の外径側の端部から軸方向の一方側に延びて、軸方向と略平行に形成された外輪2の外周面2aに嵌合する第5円筒部56を備えている。第5円筒部56の内周面における軸方向の一方側の一部には、外径側に凹んだ凹部59Aが形成されている。
【0056】
シール部材60のシール基部61は、芯体部材54の軸方向の他方側の全面と、第1円輪部57の内径側の端部57aを回り込んで第1円輪部57の軸方向の一方面における内径側の一部を覆っている。また、シール基部61は、第5円筒部56の外周面を覆い、さらに第5円筒部56の軸方向の一方側の端部を回り込んで凹部59Aに至っている。第5円筒部56及び第5円筒部56を覆う部分のシール基部61が、外輪2の外周面2aに沿って流れてきた泥水等の異物を堰き止める堰としての役割を有する。
【0057】
また、第1部材53は、シール基部61から軸方向の他方側に突出して形成されている第1突出部65を備えている。第1突出部65の内周面65bと第1円筒部55を覆う部分のシール基部61の内周面61aとは、第3実施形態と同様に、略面一の傾斜面として形成されている。
【0058】
また、第1部材53は、第4円輪部58から軸方向の他方側に突出し、外周面72aが外輪2の外周面2aよりも外径側に位置する第2突出部72を備えている。この第2突出部72の外周面72aは、第5円筒部56の外周面を覆う部分のシール基部61から連続して形成されており、軸方向と略平行に形成されている。また、第2突出部72は、第3円輪部77よりも軸方向の一方側に位置している。
【0059】
第1突出部65の内周面65bと、シール基部61の内周面61aと、第1円輪部57の軸方向の一方面を覆うシール基部61と、第2円筒部74と、第2円輪部75と、第3円筒部76と第3円輪部77とに囲まれた空間部81Aが形成されている。第2部材73では、第2円輪部75の径方向の寸法が、第3実施形態の第2円輪部75よりも小さくなっている。また、第3円輪部77の径方向の寸法が、第3実施形態の第3円輪部77よりも大きくなっている。これにより、空間部81Aが第3実施形態の空間部81よりも容積が大きく形成され、より多くの泥水等の異物を空間部81A内に滞留させることができる。
【0060】
第4円筒部78は、開口溝部66内に非接触に配されており、内周壁面68よりも外周壁面67に近接している。これにより、第2ラビリンスシールR2における第4円筒部78と外周壁面67との間の隙間の幅寸法が小さくなり、泥水等の異物の侵入をより抑制することができる。第2ラビリンスシールR2では、内周壁面68と第4円筒部78との間の隙間、第4円筒部78と溝底69との間の隙間、第4円筒部78と外周壁面67との間の隙間の順に、隙間の幅寸法が小さく形成されており、泥水等の異物の侵入をより抑制することができる。さらに、第2ラビリンスシールR2は、第1突出部65の先端部65aと第3円輪部77との間の隙間に連通して形成されていることにより、経路が蛇行状になるとともにラビリンスシール全体の長さが長くなり、より泥水等の異物の侵入を抑制することができる。
【0061】
また、第2部材73は、第2円筒部74の軸方向の一方側の端部から外径側に延びるにつれて軸方向の一方側に傾斜した堰部79Aを備えている。堰部79Aは、第1突条部63Aの傾斜面63Aaの傾斜と略平行に形成されている。なお、第2部材73は、堰部79Aに代わり、
図6の二点鎖線で示す径方向に略平行に延びた堰部79を備えてもよい。
【0062】
<第5実施形態>
次に、
図7を参照しながら第5実施形態に係る密封装置52Bについて説明する。なお、第3実施形態と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
図7では、フランジ部11は、外輪2の内周面2bよりも内径側の位置から段差状に形成された段差部18を有している。この段差部18は、軸方向と略平行な面を備えて形成されている。フランジ部11は、段差部18よりも内径側に位置する内径側一方面11bと、段差部18よりも外径側に位置する外径側一方面11cとを有する。
【0063】
密封装置52Bの第1部材53は、第3実施形態の第1部材53と略同一の構成となっている。第2部材73は、ハブ輪7の外周面7aに嵌合する第2円筒部74と、第2円筒部74の軸方向の他方側の端部から外径側に延びてフランジ部11の内径側一方面11bに当接する第2円輪部75とを備えている。また、第2部材73は、第2円筒部74の軸方向の一方側の端部から外径側に延びて第1突条部63A、第2突条部63B間に配される堰部79を備えている。なお、第2部材73は、堰部79に代わり、
図6の二点鎖線で示す傾斜した堰部79Aを備えてもよい。
【0064】
密封装置52Bは、段差部18に装着される第3部材82を備えている。第3部材82は、軸方向に延びる第3円筒部83が段差部18に嵌合することで装着される。さらに、第3部材82は、軸方向に延びて開口溝部66内に非接触に配される第4円筒部85と、第4円筒部85の軸方向の他方側の端部から内径側に延びて第1突出部65と軸方向に対向する第3円輪部84とを備えている。第3円輪部84は、第3円筒部83の軸方向の他方側の端部と接続されている。また、第3円輪部84は、フランジ部11の外径側一方面11cに当接する。さらに第3部材82は、第4円筒部85よりも内径側に位置し、第3円筒部83の軸方向の一方側の端部から軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜して延びる傾斜部86を備えている。傾斜部86は、第2円輪部75と隙間を介して径方向に重なっている。
【0065】
段差部18に装着される第3部材82の第4円筒部85が開口溝部66内に非接触に配されている。開口溝部66と第3部材82の第4円筒部85との間及び第3部材82の第3円輪部84と第1突出部65との間には、連続した隙間による第2ラビリンスシールR2が形成されている。また、第3部材82は、軸方向の一方側に向けて外径側に傾斜して延びる傾斜部86を備えていることで、第2ラビリンスシールR2を異物が通過したとしても傾斜部86の傾斜によって、泥水等の異物の勢いを弱めて、それ以上の侵入を抑制することができる。また、第3部材82は、第3円輪部84、第3円筒部83、傾斜部86により囲まれて形成された空間部87を備えていることにより、泥水等の異物を滞留させることができる。密封装置52Bは、空間部87内に滞留した泥水等の異物を、内輪4の回転に伴う遠心力によって外部空間側に排出することができる。なお、密封装置52Bは、第2部材73の第2円輪部75に摺接する、
図7の二点鎖線で示すシールリップ70を備えていてもよい。
【0066】
<密封構造>
次に、
図8を参照しながら密封構造88について説明する。
密封構造88は、相対的に回転する外輪2及び内輪4間に形成された環状空間Sの端部に装着される密封部材89を備えている。内輪4は、内輪4の外周面から外径側に突出した第1堰部19と、立上基部10から連続して拡径して外輪2の軸方向の他方面2dと軸方向に対向するフランジ部11とを備えている。また、内輪4は、フランジ部11において外輪2の内周面2bよりも径方向の内側の位置から段差状に形成された段差部18と、段差部18の軸方向の一方側の端部から外径側に突出した第2堰部20を備えている。また、内輪4は、段差部18よりも外径側に位置して軸方向の一方側に突出するフランジ部側突出部21を有している。
密封部材89は、外輪2の内周面2bよりも内径側に位置して径方向に延びる第1円輪部57と、第1円輪部57の内径側の端部57aから内径側に突出して延びる突条部63A,63Bとを有する。また、密封部材89は、軸方向の他方側に突出してフランジ部側突出部21の内周面に対向する第1突出部65と、フランジ部側突出部21を介して第1突出部65の外周面と径方向に対向する第2突出部72とを有する。
突条部63A,63Bは、一対形成されて第1堰部19を介して軸方向に互いに対向しており、第1堰部19と対向する軸方向の面である傾斜面63Aa,63Baが内径側に向けて広がるように傾斜している。突条部63A,63Bは、第1堰部19と協働して第1ラビリンスシールR1を形成している。また、密封構造88は、第1突出部65、第2突出部72、フランジ部側突出部21により連続した第2ラビリンスシールR2が形成されている。
以下、詳しく説明する。
【0067】
密封部材89は、
図7の第5実施形態の密封装置52Bにおける芯体部材54と略同一の構成の芯体部材54Aを備えている。また、密封部材89は、芯体部材54Aに固着されているシール部材60Aを備えている。密封部材89のシール部材60Aは、第1円輪部57の一部から軸方向の他方側に拡径して延びてフランジ部11に摺接するシールリップ70をさらに備えている以外は、
図7の第5実施形態の密封装置52Bにおけるシール部材60と略同一の構成となっている。シールリップ70は、フランジ部11の内径側一方面11bに摺接して、
図8の二点鎖線に示す自然状態における形状から実線に示す形状に弾性変形している。シールリップ70により、泥水等の異物が第1堰部19に至ることを抑制することができる。また、密封構造88には、シールリップ70とフランジ部11の内径側一方面11bと第2堰部20と第1円輪部57を覆うシール基部61と第1円筒部55を覆う部分のシール基部61の内周面61aとによって囲まれた空間部90が形成されている。密封構造88は、シールリップ70によってそれ以上の侵入が抑制されて空間部90内に滞留した泥水等の異物を、時間の経過とともに外部空間側に排出することができる。
【0068】
第1堰部19は、ハブ輪7の外周面7aから外径側に突出して形成されている。第1堰部19は、その断面形状が外径側に向けて先細りした台形形状となっており、密封部材89の第1突条部63A,第2突条部63B間に配されて底部64と径方向に隙間を介して対向することにより、隙間による第1ラビリンスシールR1を形成している。第1堰部19が環状空間S側から流れてきたグリースと、外部空間側から侵入してきた泥水等の異物とを堰き止める堰となる。また、第2突条部63Bと第1堰部19との協働により、第1ラビリンスシールR1内に侵入したグリースを環状空間S側へ押し戻し、密封構造88内に侵入して外部空間側にグリースが漏出することを抑制することができる。さらに、第1突条部63Aと第1堰部19との協働により、異物等が環状空間S内に侵入することを抑制することができる。
【0069】
第2堰部20は、段差部18の軸方向の一方側の端部から外径側に突出して形成されており、その断面形状は矩形状となっている。密封構造88は、第2堰部20が設けられていることによって、泥水等の異物のそれ以上の侵入を抑制することができる。また、密封構造88は、第2堰部20、段差部18、フランジ部11の外径側一方面11cにより囲まれて形成された空間部91内に、泥水等の異物を滞留させることができる。密封構造88は、空間部91内に滞留した泥水等の異物を、内輪4の回転に伴う遠心力によって外部空間側に排出することができる。
【0070】
フランジ部側突出部21は、フランジ部11の外径側一方面11cから軸方向の一方側に突出して形成されており、その断面形状は矩形状となっている。フランジ部側突出部21は、第1突出部65と第2突出部72と隙間を介して径方向に重なっており、密封部材89の開口溝部66内に非接触に配されている。第2ラビリンスシールR2は、第2突出部72とフランジ部側突出部21との間の隙間と、フランジ部側突出部21と溝底69との間の隙間と、フランジ部側突出部21と第1突出部65との間の隙間と、が連通して形成されている。さらに第2ラビリンスシールR2は、第1突出部65の先端部65aとフランジ部11の外径側一方面11cとの間の隙間に連通して形成されている。これにより、第2ラビリンスシールR2は、蛇行状の隙間になるとともにラビリンスシール全体の長さが長くなり、泥水等の異物の侵入をより抑制することができる。また、密封構造88は、1本のシールリップ70を備えているので、2本以上のシールリップを備えているものと比べて回転トルクの増大を抑制することができる。密封構造88は、フランジ部側突出部21や第2堰部20、第2ラビリンスシールR2を備えていることにより、シールリップ70に到達する泥水等の異物を抑制することができる。そのため、密封構造88は、シールリップ70が1本だけであっても、第1堰部19に到達する泥水等の異物を抑制することができる。
【0071】
上述した各実施形態の密封装置22,22A,52,52A,52B、上述した構成に限定されることはなく、各実施形態の構成を組み合わせたものや組み替えられたものであってもよい。また、上述した密封構造88の密封部材89は、上述した各実施形態の密封装置22,22A,52,52A,52Bの各第1部材の構成を組み合わせたものや組み替えられたものであってもよい。また、芯体部材24,54及び第2部材43,73、第3部材82は、鋼材以外の例えば硬質な樹脂材料で形成されてもよい。また、シール部材30,60は、他の部材に摺接するシールリップ40,70を備えないのであれば、硬質な樹脂材料で形成されてもよい。また、第1部材23,53及び密封部材89は、他の部材に摺接するシールリップ40,70を備えないのであれば、芯体部材24,54及びシール部材30,60が同一の材料によって一体に構成されてもよい。例えば、第1部材23,53及び密封部材89は、その全体が硬質な樹脂材料によって射出成形されたものや3Dプリンタで形成されたものであってもよい。また、シールリップ40,70は、他の部材に非接触のシールリップであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 軸受装置
2 外輪(外側部材)
4 内輪(内側部材)
5 内輪部材(内側部材)
7 ハブ輪(内側部材)
10 立上基部(基部)
11 フランジ部
18 段差部
19 第1堰部
20 第2堰部
21 フランジ部側突出部
22,22A 密封装置
52,52A,52B 密封装置
23,53 第1部材
27,57 第1円輪部
27a,57a (内径側の)端部
28,58 第4円輪部
33A,63A 第1突条部(突条部)
33Aa,63Aa 傾斜面
33B,63B 第2突条部(突条部)
33Ba,63Ba 傾斜面
35,65 第1突出部
36,66 開口溝部
37,67 外周壁面
38,68 内周壁面
39,69 溝底
40,70 シールリップ
42,72 第2突出部
43,73 第2部材
45,75 第2円輪部
47,77 第3円輪部
48,78 第4円筒部(円筒部)
49,49A 堰部
79,79A 堰部
82 第3部材
84 第3円輪部
85 第4円筒部(円筒部)
86 傾斜部
88 密封構造
89 密封部材
R1 第1ラビリンスシール
R2 第2ラビリンスシール
S 環状空間