(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167683
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】リード端子及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/008 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01G9/008 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083920
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】592152129
【氏名又は名称】株式会社アプトデイト
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金山 裕一
(57)【要約】
【課題】従来のリード端子と比較して、電解コンデンサの構成要素として用いた場合に封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大を抑制することが可能なリード端子を提供する。また、本発明のリード端子を備える信頼性の高い電解コンデンサを提供する。
【解決手段】平板状の扁平部12及び棒状の棒状部16を有するタブ10と、棒状部16の末端に接続されているリード線20とを備え、電解コンデンサの電極として用いられるリード端子であって、タブ10の表面全体が化成被膜で被覆されていることを特徴とするリード端子1。また、リード端子1を備える電解コンデンサ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の扁平部及び棒状の棒状部を有するタブと、前記棒状部の末端に接続されているリード線とを備え、電解コンデンサの電極として用いられるリード端子であって、
前記タブの表面全体が化成被膜で被覆されていることを特徴とするリード端子。
【請求項2】
請求項1に記載のリード端子を備えることを特徴とする電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード端子及び電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板状の扁平部及び棒状の棒状部を有するタブと、棒状部の末端に接続されているリード線とを備え、電解コンデンサの電極として用いられるリード端子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなリード端子においては、漏れ電流を抑制するために、タブの表面は化成被膜(酸化被膜)により被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のリード端子においては、タブ(特に棒状部)の表面全体が化成被膜により被覆されているわけではなかった。従来のリード端子は、タブの材料となる棒状部材を準備する棒状部材準備工程と、棒状部材の表面を一次化成被膜で被覆する一次被覆工程と、棒状部材の棒状部となる部分の末端にリード線を接続するリード線接続工程と、棒状部材の扁平部となる部分に圧力をかけて扁平部を形成する扁平部形成工程と、変形により一次化成被膜が破壊された扁平部を二次化成被膜で被覆する二次被覆工程とを実施することにより製造することができる。
【0005】
上記のような製造方法における二次被覆工程では、タブの棒状部については積極的には二次化成被膜で被覆しない。棒状部は扁平部のような大きな変形を経ないため、棒状部には一次被覆工程で形成された一次化成被膜が残存するためである。
【0006】
しかし、実際には、製造工程中における接触や摩擦の影響やリード線の接続の影響等により、棒状部においても一次被覆工程で形成された一次化成被膜が部分的に破壊されることがある。特に、タブとリード線との接続を溶接により実施する場合には、溶接時の熱等の影響により一次化成被膜が破壊されやすい。このため、従来のリード端子においては、電解コンデンサの構成要素として用いた場合に封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大が発生する懸念があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、従来のリード端子と比較して、電解コンデンサの構成要素として用いた場合に封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大を抑制することが可能なリード端子を提供することを目的とする。また、本発明のリード端子を備える電解コンデンサを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリード端子は、平板状の扁平部及び棒状の棒状部を有するタブと、前記棒状部の末端に接続されているリード線とを備え、電解コンデンサの電極として用いられるリード端子であって、前記タブの表面全体が化成被膜で被覆されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の電解コンデンサは、本発明のリード端子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリード端子は、タブの表面全体(特に棒状部の表面全体)が化成被膜で被覆されているため、従来のリード端子と比較して、電解コンデンサの構成要素として用いた場合に封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大を抑制することが可能なリード端子となる。
【0011】
本発明の電解コンデンサは、本発明のリード端子を備えるため、従来のリード端子を備える電解コンデンサと比較して、封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大を抑制することが可能な信頼性の高い電解コンデンサとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るリード端子1を説明するために示す図である。
【
図2】実施形態に係る電解コンデンサ100を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のリード端子及び電解コンデンサについて、図に示す実施形態に基づいて説明する。各図面は模式図であり、必ずしも実際の構造や構成を厳密に反映したものではない。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
【0014】
[実施形態]
1.リード端子1
図1は、実施形態に係るリード端子1を説明するために示す図である。
図1(a)はリード端子1の斜視図であり、
図1(b)はリード端子1の平面図である。
図1(b)における斜線は、化成被膜により被覆されている部分を示すものである。
【0015】
実施形態に係るリード端子1は、
図1に示すように、タブ10とリード線20とを備え、電解コンデンサ100(後述)の電極として用いられるものである。以下、リード端子1の構成要素について説明する。
【0016】
タブ10は、扁平部12、リブ部14及び棒状部16を有する。リード端子1においては、タブ10の表面全体(
図1において斜線で表示する部分全体)が化成被膜(図示せず。)で被覆されている。タブ10は、アルミニウム系材料(アルミニウムを主成分とする材料)からなることが好ましい。タブ10の表面の化成被膜を緻密で欠陥が少ないものとし、リード端子1を電解コンデンサの構成要素として用いた場合に漏れ電流を低減するという観点からは、当該アルミニウム系材料としてアルミニウムの純度が可能な限り高いものを用いることが好ましい。
【0017】
なお、棒状の金属部材(以下、棒状部材という。)からタブ10の形状を形成して棒状部16にリード線20を接続したもの、又は、棒状部材にリード線20を接続してからタブ10の形状を形成したものを準備し、タブ10の全体を化成被膜形成用の化成液に接触させた状態で電圧を印加することにより、タブ10の表面全体を化成被膜で被覆することができる。
【0018】
扁平部12は、タブ10のうち平板状の部分である。扁平部12は、タブ10の材料である棒状部材の一部に圧力をかけて(圧延して)形成された部分である。
【0019】
リブ部14は、扁平部12と棒状部16との間に存在する部分であり、扁平部12と棒状部16とを連続的に接続するような形状からなる。リブ部14も、扁平部12と同様にタブ10の材料である棒状部材の一部に圧力をかけて(圧延して)形成された部分である。リブ部14の存在により、扁平部12と棒状部16との形状の違いを補完してタブ10の強度を高くする効果が得られる。
【0020】
棒状部16は、タブ10のうち棒状の部分である。棒状部16は、丸棒状であることが好ましい。棒状部16は、タブ10の材料である棒状部材の形状が残っている部分である。
【0021】
リード線20は、棒状部16の末端に接続されている。リード線20としては、CP線(銅覆鋼線)からなるものを好適に使用することができる。なお、CP線は、錫等によりめっきされていてもよい。
【0022】
タブ10とリード線20とは、接続部30により接続されている。接続部30は、例えば、タブ10に対するリード線20の溶接により形成された部分である。接続部30の表面は、タブ10と同様に化成被膜により被覆されている。なお、溶接により形成された接続部30はタブ10の構成材料(例えば、アルミニウム)を多く含むため、タブ10の表面全体を化成被膜で被覆するのと同時に、同様の方法により接続部30も化成被膜で被覆することができる。
【0023】
2.電解コンデンサ100
図2は、実施形態に係る電解コンデンサ100を説明するために示す図である。
図2(a)は電解コンデンサ100の斜視図であり、
図2(b)は2つのリード端子1を含む面による電解コンデンサ100の断面図である。なお、リード端子1はタブ10及びリード線20という複数の部材からなるものであるが、
図2(b)においてはリード端子1の断面を単純化して示しており、これらの境界線を表示していない。また、
図2(b)においては、コンデンサ素子120の断面については電極箔やセパレータの断面の表示を省略し、簡易的に表示している。
【0024】
実施形態1に係る電解コンデンサ100は、
図2に示すように、リード端子1と、外装ケース110と、コンデンサ素子120と、封口体130とを備える。電解コンデンサ100におけるリード端子1以外の構成要素としては、従来知られている電解コンデンサの構成要素と同様のものを用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
電解コンデンサ100は、実施形態に係るリード端子1を2つ備える。2つのリード端子1は、それぞれコンデンサ素子120の異なる極に接続されている。なお、2つのリード端子1は、リード線20の長さが異なっている。これは電解コンデンサ100の極性を表すための仕様であり、リード線20の長さによって極性を表す必要が無い場合には、2つのリード端子1におけるリード線20の長さは同じであってもよい。
【0026】
外装ケース110は、コンデンサ素子120を収容する部材である。外装ケース110は、コンデンサ素子120を固定するための構造(リブ等)や天面を防爆弁として利用するための防爆溝等の構造を有していてもよい。また、外装ケース110の表面に樹脂層やフィルム層が配置されていてもよい。
【0027】
コンデンサ素子120は、電荷の蓄積を行うことが可能な素子である。コンデンサ素子120は、例えばアルミ電解コンデンサ素子であり、2つのリード端子1のうちの第1のリード端子が接続された第1の電極箔と、2つのリード端子1のうちの第2のリード端子が接続された第2の電極箔とを有し、第1の電極箔と第2の電極箔とがセパレータを介して積層され、巻回されてなるものを用いることができる。なお、コンデンサ素子120は、液体電解コンデンサ素子であってもよいし、固体電解コンデンサ素子であってもよいし、ハイブリッド型電解コンデンサ素子であってもよい。
【0028】
封口体130は、外装ケース110の開口部付近に圧入され、コンデンサ素子120を封止するとともに、リード端子1の根元(タブ10の棒状部16)を支持する部材である。
【0029】
3.実施形態に係るリード端子1及び電解コンデンサ100の効果
実施形態に係るリード端子1は、タブ10の表面全体(特に棒状部16の表面全体)が化成被膜で被覆されているため、従来のリード端子と比較して、電解コンデンサ100の構成要素として用いた場合に封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大を抑制することが可能なリード端子となる。
【0030】
実施形態に係る電解コンデンサ100は、実施形態に係るリード端子1を備えるため、従来のリード端子を備える電解コンデンサと比較して、封口の密着性低下、電気的特性の不安定化及び漏れ電流の増大を抑制することが可能な信頼性の高い電解コンデンサとなる。
【0031】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0032】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0033】
(2)本発明はリブ部を有しないリード端子にも適用可能である。
【0034】
(3)上記実施形態に係る電解コンデンサ100は、実施形態に係るリード端子1を2つ備えるが、本発明はこれに限定されるものではない。電解コンデンサにおける2つのリード端子のうち、片方のみが本発明のリード端子であってもよい。
【0035】
(4)上記実施形態に係るリード端子1においては、接続部30の表面が化成被膜により被覆されているが、本発明はこれに限定されるものではない。接続部の表面の一部のみが化成被膜により被覆されていてもよいし、接続部の表面が化成被膜により被覆されていなくてもよい。また、接続部の表面に化成被膜が形成されている場合であっても、タブを被覆する化成被膜と接続部を被覆する化成被膜との間に構成(密度や成分等)の違いがあってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…リード端子、10…タブ、12…扁平部、14…リブ部、16…棒状部、20…リード線、30…接続部、100…電解コンデンサ、110…外装ケース、120…コンデンサ素子、130…封口体