(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167687
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電動工具システム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083927
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】林 拓実
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AA08
3C064AA20
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA12
3C064BA24
3C064BA32
3C064BA36
3C064BB01
3C064BB58
3C064BB87
3C064BB89
3C064CA53
3C064CA54
3C064CA80
3C064CB22
3C064CB87
3C064CB95
3C064DA01
3C064DA41
3C064DA59
3C064DA60
3C064DA61
3C064DA78
3C064DA87
3C064DA89
3C064DA92
3C064DA95
3C064EA02
3C064EA06
(57)【要約】
【課題】電動工具を含む電動工具システムの音声制御技術に関する改良を提供する。
【解決手段】電動工具システムは、電動工具を含む少なくとも1つの制御対象装置と、少なくとも1つの制御対象装置と無線通信可能に構成された音声制御装置とを備える。音声制御装置は、少なくとも1つの制御対象装置の動作を制御するように構成されたシステム制御部を含む。システム制御部は、音声データを取得し、電動工具の動作に関する指示であって、音声データに基づいて特定された指示に応じて、電動工具の動作を制御するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具システムであって、
電動工具を含む少なくとも1つの制御対象装置と、
前記少なくとも1つの制御対象装置と無線通信可能に構成された音声制御装置とを備え、
前記音声制御装置は、前記少なくとも1つの制御対象装置の動作を制御するように構成されたシステム制御部を含み、
前記システム制御部は、
音声データを取得し、
前記電動工具の動作に関する指示であって、前記音声データに基づいて特定された指示に応じて、前記電動工具の動作を制御するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具システムであって、
前記音声制御装置と無線通信可能に構成されたユーザデバイスを更に含み、
前記ユーザデバイスは、
音声の入力を受け付け、前記音声データに変換するように構成された音声入力部と、
前記ユーザデバイスの動作を制御するように構成されたデバイス制御部とを備え、
前記デバイス制御部は、前記音声入力部によって生成された前記音声データを前記音声制御装置に送信するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電動工具システムであって、
前記ユーザデバイスは、音声を出力するように構成された音声出力部を更に備え、
前記システム制御部は、前記音声出力部の出力を制御するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電動工具システムであって、
前記ユーザデバイスは、ウェアラブルデバイスであることを特徴とする電動工具システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電動工具システムであって、
前記ウェアラブルデバイスは、人間の首周りに装着可能なネックスピーカであることを特徴とする電動工具システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電動工具システムであって、
前記ウェアラブルデバイスは、前記ウェアラブルデバイスが着用されているか否かを検出する検出部を更に備え、
前記デバイス制御部は、前記検出部による検出結果に応じて、前記ウェアラブルデバイスが着用されているか否かを示す情報を前記音声制御装置に送信するように構成されており、
前記システム制御部は、前記ウェアラブルデバイスが着用されていないことを示す情報を受信した場合、前記ウェアラブルデバイスが着用されていることを示す情報を受信した場合とは異なる処理を実行するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1つに記載の電動工具システムであって、
前記音声制御装置は、バッテリ装着部を備え、前記バッテリ装着部に取り外し可能に装着された充電式のバッテリから供給される電力で動作するように構成されており、
前記バッテリは、複数種類の電動工具に選択的に装着可能であることを特徴とする電動工具システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1つに記載の電動工具システムであって、
前記システム制御部は、前記音声データの音声認識及び前記指示の特定のうち少なくとも一方を、機械学習による学習済みモデルを用いて実行するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の電動工具システムであって、
前記システム制御部は、前記音声データと、少なくとも一人の登録ユーザの照合用データとを用いて声紋認証を行い、前記音声データが示す音声が前記少なくとも一人の登録ユーザの音声か否かを判断するように構成されており、
前記システム制御部は、前記音声データが示す前記音声が前記少なくとも一人の登録ユーザの前記音声であると判断した場合にのみ、前記指示に応じた動作を前記電動工具に実行させるように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項10】
請求項6に従属する請求項9に記載の電動工具システムであって、
前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも1つの制御対象装置の1つであって、音声を出力するように構成された音声出力部を更に備え、
前記システム制御部は、前記ウェアラブルデバイスから、前記ウェアラブルデバイスが着用されていないことを示す情報を受信した場合、再度の声紋認証のための発話を求める音声を前記音声出力部から出力させるように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1つに記載の電動工具システムであって、
前記システム制御部は、前記指示に応じた動作を前記電動工具に実行させる前に、ユーザに対して前記指示を実行してよいか否かを確認するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1つに記載の電動工具システムであって、
前記システム制御部は、
前記音声データに基づいて特定された前記指示が、前記電動工具において制限なく実行可能な指示であるか否かを判断し、
前記指示が、前記制限なく実行可能な指示ではないと判断された場合、前記制限なく実行可能な指示であると判断された場合とは異なる処理を実行するように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項13】
請求項12に記載の電動工具システムであって、
前記電動工具は、
モータと、
工具制御部とを備え、
前記工具制御部は、前記モータの駆動中に前記音声制御装置からの前記指示の実行のための制御情報を受信した場合、前記モータの駆動が停止された後、前記制御情報に従って前記電動工具を動作させるように構成されていることを特徴とする電動工具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具と音声制御装置とを含む電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数種類の補助アダプタを電気的且つ機械的に接続可能な接続部を備えた電動工具を開示する。この電動工具は、接続部に接続された補助アダプタ経由で取得した情報に基づいて、駆動部の駆動を制御することができる。補助アダプタの一例である音声指示装置は、ユーザの音声を収集するマイクを備え、音声に含まれる指示の内容に応じた制御情報を生成し、電動工具に提供する。電動工具の駆動制御部は、音声指示装置から取得した制御情報に基づき、駆動部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動工具は、音声指示装置として構成された補助アダプタが電気的且つ機械的に接続された場合にのみ、ユーザの音声指示に基づいて動作する。よって、例えば、電動工具からある程度の距離範囲内でのみ音声指示が可能である。
【0005】
本開示は、電動工具を含む電動工具システムの音声制御技術に関する改良を提供することを、非限定的な1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の非限定的な一実施形態によれば、電動工具を含む少なくとも1つの制御対象装置と、少なくとも1つの制御対象装置と無線通信可能に構成された音声制御装置とを備えた電動工具システムが提供される。音声制御装置は、少なくとも1つの制御対象装置の動作を制御するように構成されたシステム制御部を含む。システム制御部は、音声データを取得し、電動工具の動作に関する指示であって、音声データに基づいて特定された指示に応じて、電動工具の動作を制御するように構成されている。
【0007】
なお、本態様の電動工具(power tool)は、加工材の加工作業(例えば、穴あけ、締め付け、ハツリ、切断、切削、研磨等)のためのツールのみならず、アウトドア作業(例えば、草刈り、植木の切断、剪定等)のための電動作業機(outdoor power equipment)も含む。
【0008】
少なくとも1つの制御対象装置は、(i)1つの電動工具のみを含んでもよいし、(ii)複数の電動工具(すべて同じ種類の電動工具でもよいし、少なくとも1つが異なる種類でもよい)のみを含んでもよいし、(iii)少なくとも1つの電動工具と、電動工具以外の少なくとも1つの装置(電気製品/電子機器)を含んでもよい。電動工具以外の装置の例として、例えば、電動工具が使用される作業現場において使用される照明装置、クリーナ、ラジオ、電気ケトル等が挙げられる。
【0009】
システム制御部は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ及びメモリによって具現化することができ、その機能は、例えば、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで実現されうる。システム制御部は、例えば、少なくとも1つの制御対象装置に制御情報を送信することで、少なくとも1つの制御対象装置の動作を制御することができる。
【0010】
システム制御部は、音声制御装置に設けられた音声入力部(例えば、マイク)を介して音声データを取得してもよいし、音声制御装置に接続された外部装置から送信された音声データを取得してもよい。また、システム制御部は、取得した音声データを処理することで指示を特定し、特定した指示に応じて電動工具の動作を制御してもよい。あるいは、音声制御装置は、取得した音声データを、音声制御装置に接続された外部の情報処理装置(例えば、サーバ)に送信してもよい。この場合、サーバが音声データを処理し、これにより得られたテキスト、又は特定された指示に関する情報を音声制御装置に送信し、音声制御装置は、受信した情報から指示を特定すればよい。
【0011】
この実施形態によれば、音声制御装置が指示の音声データを取得でき、且つ、電動工具との間で無線通信が可能な限り、電動工具に音声指示装置が設けられる場合に比べて電動工具から離れた場所で音声指示を行うことが可能となる。よって、例えば、音声制御装置を、電動工具による加工作業に伴って生じる粉塵又は騒音による影響を受けにくい場所に設置することができる。また、例えば、電動工具を用いて実際に作業を行う人物とは異なる人物(例えば、現場監督)が、音声により適切な指示を行うことが可能となる。更に、1つの音声制御装置を用いて、複数の電動工具を音声指示に基づいて制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電動工具システムの全体構成の説明図である。
【
図2】電動工具システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図3】電動工具システム全体で実行される処理の概要の説明図である。
【
図4】音声制御装置で実行されるユーザ登録処理のフローチャートである。
【
図5】音声制御装置で実行されるメイン処理のフローチャートである。
【
図6】メイン処理で実行されるペアリング処理のフローチャートである。
【
図7】ペアリング処理のフローチャートであって、
図6の続きである。
【
図8】メイン処理で実行されるユーザ認証処理のフローチャートである。
【
図9】メイン処理で実行される指示特定処理のフローチャートである。
【
図11】メイン処理で実行される指示実行処理のフローチャートである。
【
図12】指示実行処理のフローチャートであって、
図11の続きである。
【
図13】ネックスピーカで実行されるメイン処理のフローチャートである。
【
図14】メイン処理で実行されるペアリング処理のフローチャートである。
【
図15】メイン処理で実行されるユーザ認証処理のフローチャートである。
【
図16】メイン処理で実行される音声指示処理のフローチャートである。
【
図17】装置で実行される音声制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の非限定的な一実施形態において、電動工具システムは、音声制御装置と無線通信可能に構成されたユーザデバイスを更に含んでもよい。ユーザデバイスは、音声の入力を受け付け、音声データに変換するように構成された音声入力部と、ユーザデバイスの動作を制御するように構成されたデバイス制御部とを備えてもよい。デバイス制御部は、音声入力部によって生成された音声データを音声制御装置に送信するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、音声制御装置とは別個のユーザデバイスで音声指示が受け付けられるため、音声指示を行うユーザ(発話者、指示者)は、電動工具及び音声制御装置から離れていてもよい。これにより、利便性が向上する。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ユーザデバイスは、音声を出力するように構成された音声出力部を更に備えてもよい。システム制御部は、音声出力部の出力を制御するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、システム制御部が音声出力部から適切な音声を出力させることで、ユーザに必要な発話や操作を行うよう要求することができる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ユーザデバイスは、ウェアラブルデバイスであってもよい。この実施形態によれば、ユーザはユーザデバイスを手で把持する必要がないため、利便性が向上する。なお、ウェアラブルデバイスの例として、ネックスピーカ(ネックバンドスピーカともいう)、スマートウォッチ、スマートイヤフォン、スマートグラス、スマートジャケットが挙げられる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ウェアラブルデバイスは、人間の首周りに装着可能なネックスピーカであってもよい。この実施形態によれば、音声入力部をユーザの口に近い位置に配置できるため、音声入力が騒音の影響を受けにくく、好ましい。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ウェアラブルデバイスは、ウェアラブルデバイスが着用されているか否かを検出する検出部を更に備えてもよい。デバイス制御部は、検出部による検出結果に応じて、ウェアラブルデバイスが着用されているか否かを示す情報を音声制御装置に送信するように構成されていてもよい。システム制御部は、ウェアラブルデバイスが着用されていないことを示す情報を受信した場合、ウェアラブルデバイスが着用されていることを示す情報を受信した場合とは異なる処理を実行するように構成されていてもよい。例えば、システム制御部は、ウェアラブルデバイスが着用されていない場合には、特定された指示を実行しないこと、あるいは、所定の条件が満たされた後で指示を実行することができる。この実施形態によれば、例えば、ウェアラブルデバイスから音声指示がなされた後で、ウェアラブルデバイスが取り外されたり、着用者が代わったりした場合に、不用意に指示が実行されるのを回避することができる。
【0018】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、音声制御装置は、バッテリ装着部を備え、バッテリ装着部に取り外し可能に装着された充電式のバッテリから供給される電力で動作するように構成されていてもよい。バッテリは、複数種類の電動工具に選択的に装着可能であってもよい。この実施形態によれば、例えば、使用されていない電動工具に装着されていたバッテリを取り外し、音声制御装置の電源として利用できるため、利便性が向上する。
【0019】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、システム制御部は、音声データの音声認識及び指示の特定のうち少なくとも一方を、機械学習による学習済みモデルを用いて実行するように構成されてもよい。この実施形態によれば、予め適切な機械学習により学習済みモデルを生成しておくことで、音声データの音声認識及び指示の特定のうち少なくとも一方を高精度に実行することが可能となる。なお、機械学習による学習済みモデルは、予め、音声制御装置において機械学習により生成されてもよい。あるいは、学習済みモデルは、音声制御装置とは異なる情報処理装置で生成されてもよい。この場合、音声制御装置には機械学習用の高性能の処理装置が必要ないため、好ましい。学習済みモデルは、例えば、音声制御装置の不揮発性の記憶装置に記憶されうる。
【0020】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、システム制御部は、音声データと、少なくとも一人の登録ユーザの照合用データとを用いて声紋認証を行い、音声データが示す音声が少なくとも一人の登録ユーザの音声か否かを判断するように構成されていてもよい。システム制御部は、音声データが示す音声が少なくとも一人の登録ユーザの音声であると判断した場合にのみ、指示に応じた動作を電動工具に実行させるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、例えば、所定の条件を満たす人物(例えば、熟練作業者、現場監督)のみを登録ユーザとすることで、不適切な音声指示が実行される可能性を低減することができる。
【0021】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、ウェアラブルデバイスは、少なくとも1つの制御対象装置の1つであって、音声を出力するように構成された音声出力部を更に備えてもよい。システム制御部は、ウェアラブルデバイスから、ウェアラブルデバイスが着用されていないことを示す情報を受信した場合、再度の声紋認証のための発話を求める音声を音声出力部から出力させるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、声紋認証の後、ウェアラブルデバイスが登録ユーザであると認証された人物から外され、別の人物によって不適切な音声指示が実行される可能性を低減することができる。
【0022】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、システム制御部は、指示に応じた動作を電動工具に実行させる前に、ユーザに対して指示を実行してよいか否かを確認するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、音声指示を行ったユーザが、指示の後で実行を中止したい場合に対応することができる。
【0023】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、システム制御部は、音声データに基づいて特定された指示が、電動工具において制限なく実行可能な指示であるか否かを判断するように構成されていてもよい。システム制御部は、更に、特定された指示が、制限なく実行可能な指示ではないと判断された場合、制限なく実行可能な指示であると判断された場合とは異なる処理を実行するように構成されていてもよい。システム制御部は、例えば、特定された指示が、制限なく実行可能な指示ではない場合、指示を実行しないこと、あるいは、所定の条件が満たされた後で指示を実行することができる。この実施形態によれば、指示に対応する動作に応じて制限を設定することで、電動工具のより適切な制御が可能となる。
【0024】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、電動工具は、モータと、工具制御部とを備えてもよい。工具制御部は、モータの駆動中に音声制御装置からの指示の実行のための制御情報を受信した場合、モータの駆動が停止された後、制御情報に従って電動工具を動作させるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、モータの駆動中に不用意に指示が実行されることが防止されるため、電動工具のより適切な制御が可能となる。
【0025】
以下、図面を参照して、本開示の代表的且つ非限定的な実施形態に係る電動工具システム1について説明する。
【0026】
まず、
図1を参照して、電動工具システム1の概要について説明する。
【0027】
電動工具システム1は、音声制御装置3と、少なくとも1つの制御対象装置100(以下、単に装置100という)と、ユーザデバイス5とを含む。少なくとも1つの装置100及びユーザデバイス5の各々は、音声制御装置3と無線通信可能に接続されている。
図1に例示される電動工具システム1では、少なくとも1つの装置100は、種類の異なる複数の装置100を含む。
【0028】
音声制御装置3は、ユーザデバイス5のユーザ7の音声に含まれる指示に基づき、無線通信可能に接続された少なくとも1つの装置100及びネックスピーカ50の動作を選択的に制御するように構成されている。音声制御装置3は、音声アシスタント装置とも称されうる。
【0029】
複数の装置100は、少なくとも1つの電動工具を含む。また、複数の装置100は、電動工具とは異なる種類の少なくとも1つの装置(例えば、電気製品、電子機器)を含みうる。電動工具及び電動工具以外の装置の種類や数は特に限定されないが、
図1に示す例では、複数の装置100は、インパクトドライバ101と、グラインダ102と、照明装置103とを含む。インパクトドライバ101及びグラインダ102は何れも、モータ12の動力により先端工具91を駆動することで加工作業を行う電動工具の一例である。照明装置103は、照明用の電気製品である。インパクトドライバ101、グラインダ102、照明装置103は、同じ作業現場で同時に使用されうる。なお、以下では、複数の装置100を総称する場合及び少なくとも1つの装置100を区別なく指す場合、単に装置100という。
【0030】
ユーザデバイス5は、ユーザ7が音声指示を入力するのに用いられるデバイスである。ユーザデバイス5は、ユーザ7の近傍に配置されて、あるいはユーザ7によって身に着けられて使用されうる。
図1に示す本実施形態の例では、ユーザデバイス5として、ネックスピーカ50が採用されている。ネックスピーカ50は、手で把持する必要がないウェアラブルデバイスの一例であって、ユーザ7の首周りに装着可能である。ネックスピーカ50は、音声入力機器の一例であるマイク52を備えている。ユーザ7の音声は、マイク52に入力され、音声データに変換される。
【0031】
電動工具システム1では、ユーザ7は、装置100のうち少なくとも1つに所望の動作をさせるために、音声で指示を発する。ネックスピーカ50のマイク52で生成された音声データは、音声制御装置3に送信される。音声制御装置3は、取得した音声データに基づいて特定された指示に対応する制御情報(信号)を、指示された装置100に送信することで、この装置100の動作を制御する。なお、ネックスピーカ50を用いて音声で指示を行うユーザ7と、装置100の使用者/操作者(例えば、電動工具を使用する作業者)とは、必ずしも同一ではなく、異なりうる。
【0032】
以下、
図1及び
図2を参照して、電動工具システム1の詳細構成について説明する。
【0033】
まず、装置100(インパクトドライバ101、グラインダ102、照明装置103)について説明する。なお、インパクトドライバ101、グラインダ102、照明装置103に共通する構成(実質的に同一の機能を有する構成)については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
インパクトドライバ101は、ネジ等の締め付け作業用の電動工具であって、ビットと称される先端工具91の回転駆動中に一定以上の負荷が加わると、回転方向に打撃(インパクト)を与えるように構成されている。
【0035】
図1に示すように、インパクトドライバ101のハウジング11には、モータ12と、モータ12の起動用のスイッチ13と、外部の装置と無線通信が可能な通信部18と、インパクトドライバ101の動作を制御する制御部16とが収容されている。スイッチ13は、常時にはオフであり、ハウジング11に設けられたトリガの押圧に応じてオンとされる。
【0036】
ハウジング11は、バッテリ93を取り外し可能に受けるように構成されたバッテリ装着部111を備えている。具体的には、バッテリ装着部111は、バッテリ93に物理的に係合可能な係合部と、バッテリ93の端子に電気的に接続可能な端子部とを含む。このようなバッテリ装着部111の構成は周知であるため、詳細な図示及び説明は省略する。バッテリ装着部111にバッテリ93が装着されると、バッテリ93から、インパクトドライバ101の通信部18以外の各部に電力が供給される。バッテリ93は、インパクトドライバ101以外の電動工具(例えば、グラインダ102)や特定の電気製品(例えば、照明装置103)に共通して使用可能である。また、装置100には、バッテリ93でなく、電源コードを介して外部の交流電源から電力が供給されてもよい。
【0037】
また、ハウジング11には、LEDライト115と、操作部116と、報知部117と、ペアリングボタン118とが設けられている。
【0038】
LEDライト115は、LED光源を含む照明装置である。LEDライト115は、LED光源が先端工具91による作業が行われる領域を照らすように、ハウジング11に取り付けられている。
【0039】
操作部116は、ハウジング11の表面に、各種情報の入力用に、手動操作可能に設けられている。操作部116は、例えば、押しボタンスイッチ、タッチスクリーン等として構成される。操作部116は、例えば、モータ12の回転数の設定、LEDライト115のオン・オフ、LEDライト115の光量設定等のための情報を入力するために操作される。また、インパクトドライバ101は、異なる強さの打撃に対応する複数のモードを有する。よって、操作部116は、更に、モード設定のための情報を入力するために操作される。
【0040】
報知部117は、ハウジング11の表面に設けられ、情報を報知するように構成されている。報知部117は、表示、光、音等により情報を報知するいかなる機器であってもよい。本実施形態では、報知部117は、緑色と赤色の2つのLEDを含み、各LEDの駆動状態(点灯、点滅、消灯)で各種情報を報知するように構成されている。詳細は後述するが、本実施形態では、報知部117は、例えば、インパクトドライバ101を使用して作業を行う人物(作業者)に対して情報を提示するのに用いられる。
【0041】
ペアリングボタン118は、ペアリングを開始させるための手動操作部である。ペアリングとは、2つの装置が一対一で無線通信可能な状態とするために、相手方の装置の設定情報を登録することである。詳細は後述するが、インパクトドライバ101のペアリングボタン118が押され、音声制御装置3でもペアリングボタン314が押されると、インパクトドライバ101と音声制御装置3との間で所定の情報の送受信が行われる。ペアリングの完了後、インパクトドライバ101と音声制御装置3との間で一対一の無線通信が可能となる。
【0042】
図2に示すように、インパクトドライバ101の制御部16は、上述のスイッチ13、通信部18、LEDライト115、操作部116、報知部117、ペアリングボタン118の夫々と、電気的に接続されている。また、制御部16は、モータ12を駆動するためのモータ駆動回路121と電気的に接続されている。
【0043】
制御部16は、少なくとも1つのプロセッサ/処理回路(例えば、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)と、少なくとも1つのメモリとを備える。本実施形態では、制御部16には、CPU161、ROM162、RAM163、不揮発性のメモリ164等を含むマイクロコンピュータが採用されている。
【0044】
通信部18は、無線により音声制御装置3と接続可能に構成されている。通信部18は、予め定められた規格に従って、音声制御装置3の通信部38との間で無線により情報(データ、信号)の送受信を行うことができれば、いかなる公知の構成を有してもよい。通信部18は、例えば、無線ユニット/無線モジュールとして構成されうる。なお、通信部18には、後述のペアリングボタン118の押圧操作に応じて電力供給が開始される。これにより、無線通信が行われないときの無用な電力消費が抑えられる。
【0045】
制御部16は、スイッチ13の状態及び/又は操作部116から入力された情報に応じて、インパクトドライバ101の動作を制御する。また、インパクトドライバ101と音声制御装置3との無線通信が確立された状態(ペアリングが完了した状態)では、制御部16は、通信部18を介して音声制御装置3から受信した制御情報を取得する。制御部16は、音声制御装置3から送信される制御情報に従って、インパクトドライバ101の動作(例えば、モータ12、LEDライト115、報知部117のLEDの駆動、モード変更)を制御する。
【0046】
図1に示すように、グラインダ102は、ディスク状の先端工具91(例えば、砥石、ゴムパッド、ブラシ、ブレード)を回転駆動することで、研削、研磨、切断等の加工作業を行う周知の回転工具である。グラインダ102は、インパクトドライバ101と同様、ハウジング11に収容されたモータ12と、スイッチ13と、制御部16と、通信部18とを備えている。ハウジング11には、バッテリ装着部111と、操作部116と、報知部117と、ペアリングボタン118とが設けられている。
【0047】
グラインダ102のハードウェア構成は、LEDライト115を備えない点を除き、インパクトドライバ101と実質的に同じであるため、詳細な図示及び説明を省略する。インパクトドライバ101と同様、グラインダ102の制御部16は、スイッチ13の状態及び/又は操作部116から入力された情報に応じて、あるいは、音声制御装置3から送信される制御情報に従って、グラインダ102の動作(例えば、モータ12の駆動)を制御する。
【0048】
図1に示すように、照明装置103は、光源141と、ハウジング11に収容された制御部16と、通信部18とを備えている。ハウジング11には、バッテリ装着部111と、操作部116と、報知部117と、ペアリングボタン118とが設けられている。照明装置103の操作部116は、光源141のオン・オフ、光源141の光量設定等のための情報を入力するために操作される。
【0049】
照明装置103の光源141は、LEDである。照明装置103のハードウェア構成の詳細な図示は省略するが、制御部16は、光源141(LED)、通信部18、操作部116、報知部117、ペアリングボタン118の夫々と、電気的に接続されている。インパクトドライバ101と同様、照明装置103の制御部16は、スイッチ13の状態及び/又は操作部116から入力された情報に応じて、あるいは、音声制御装置3から送信される制御情報に従って、照明装置103の動作(例えば、光源141のオン・オフ、光源141の光量)を制御する。
【0050】
以下、ネックスピーカ50(ユーザデバイス5)について説明する。
【0051】
図1に示すように、ネックスピーカ50は、C字状/U字状に形成された本体51を備えている。本体51は、通常、本体51の中央部がユーザ7の首の後ろ側に配置され、中央部の両端から延びる2つの側部が首から前方に延びるように着用される。
【0052】
本体51には、マイク52と、電源スイッチ501と、ペアリングボタン502と、着用検出部55と、報知部516とが設けられている。本体51の内部には、スピーカ53と、通信部58と、制御部56とが収容されている。
【0053】
マイク52は、本体51の一端部に設けられている。つまり、マイク52は、ユーザ7の口の比較的近くに配置される部分にあるため、音声入力が騒音の影響を受けにくく、好ましい。マイク52は、入力された音声を音声データ(音声信号)に変換して出力する。なお、マイク52は、本体51が通常の着用状態にあるときに、口がある方向に特定される指向性を有すると好ましい。
【0054】
電源スイッチ501及びペアリングボタン502は、2つの側部のうち一方に、手動操作可能に配置されている。電源スイッチ501は、押圧に応じてオン、オフされる。電源スイッチ501がオンとされると、ネックスピーカ50の各部に電力が供給される。なお、詳細な図示は省略するが、ネックスピーカ50には、充電式のバッテリが内蔵されており、充電ポートに接続されたケーブルを介して充電可能である。ペアリングボタン502は、装置100のペアリングボタン118と同様、音声制御装置3とのペアリングを開始させるための手動操作部である。
【0055】
着用検出部55は、ネックスピーカ50が着用されていることを検出するように構成された検出器である。着用検出部55は、本体51の中央部(詳細には、着用時にユーザ7の首に対向する内側部分)に配置されている。着用検出部55は、中央部の内側部分がユーザ7の首に接触している、又は近接した位置に配置されていることを検出可能であればよく、いかなる公知の検出器が採用されてもよい。例えば、接触式の各種スイッチ、非接触式の各種センサが採用されうる。
【0056】
報知部516は、視覚的に情報を報知するように構成されていれば、いかなる機器であってもよい。本実施形態では、報知部516は、緑色と赤色の2つのLEDを含み、各LEDの駆動状態(点灯、点滅、消灯)で各種情報を報知するように構成されている。報知部516は、ネックスピーカ50の着用時にユーザ7が視認できるように、本体51の一端部に配置されている。
【0057】
スピーカ53は、音声を出力する音声出力機器である。本実施形態では、2つのスピーカ53が、本体51の2つの側部(耳の比較的近くに配置される部分)に設けられている。但し、スピーカ53の数は1つであってもよい。
【0058】
通信部58は、無線により音声制御装置3と接続可能に構成されている。通信部58は、装置100の通信部18と同様、予め定められた規格に従って、音声制御装置3の通信部38との間で無線により情報(データ、信号)の送受信を行うことができれば、いかなる公知の構成を有してもよい。
【0059】
制御部56は、ネックスピーカ50の動作を制御する制御部である。
図2に示すように、制御部56は、上述の電源スイッチ501、ペアリングボタン502、着用検出部55、報知部516、マイク52、スピーカ53、通信部58の夫々と電気的に接続されている。制御部56は、少なくとも1つのプロセッサ/処理回路(例えば、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)と、少なくとも1つのメモリとを備える。本実施形態では、制御部56には、CPU561、ROM562、RAM563、不揮発性のメモリ564等を含むマイクロコンピュータが採用されている。
【0060】
制御部56は、マイク52で生成された音声データを、通信部58を介して音声制御装置3に送信する。また、音声制御装置3は、必要に応じてネックスピーカ50に制御情報を送信する。制御部56は、この制御情報に応じて、例えば、スピーカ53から音声を出力させることで、ユーザ7に発話を要求したり、報知部516のLEDを駆動したりする。
【0061】
以下、音声制御装置3について説明する。
【0062】
図1に示すように、音声制御装置3は、ハウジング31と、ハウジング31に設けられたバッテリ装着部311と、電源スイッチ313と、ペアリングボタン314と、ユーザ登録ボタン315と、マイク34と、操作部316と、報知部317とを備えている。ハウジング31には、スピーカ37と、制御部33と、通信部38と、記憶部35とが収容されている。
【0063】
バッテリ装着部311は、ハウジング31の下端部に設けられている。バッテリ装着部311は、装置100のバッテリ装着部111と実質的に同一構成を有し、バッテリ93を取り外し可能に受けるように構成されている。音声制御装置3は、バッテリ装着部311にバッテリ93が装着され、バッテリ93が床又は地面に置かれたときに安定して姿勢を保持できるように設計されている。上述のように、バッテリ93は、インパクトドライバ101、グラインダ102等の電動工具や、特定の電気製品(例えば、照明装置103)に共通して使用可能である。よって、例えば、作業現場で使用されていない電動工具のバッテリ93が、音声制御装置3に電力を供給するために利用されうる。
【0064】
電源スイッチ313、ペアリングボタン314、ユーザ登録ボタン315は、ハウジング31の表面に、手動操作可能に配置されている。電源スイッチ313は、押圧に応じてオン、オフされる。電源スイッチ313がオンとされると、音声制御装置3の各部に電力が供給される。ペアリングボタン314は、装置100、ネックスピーカ50とのペアリングを開始させるための手動操作部である。ユーザ登録ボタン315は、ユーザ登録処理を開始させるための手動操作部である。ユーザ登録ボタン315がオンとされると、通信部38以外の音声制御装置3の各部に電力が供給される。詳細は後述するが、ユーザ登録処理では、音声制御装置3を介して音声指示によって装置100を動作させることが可能な人物の情報が音声制御装置3に記憶される。
【0065】
マイク34は、入力された音声を音声データ(音声信号)に変換して出力する。詳細は後述するが、ユーザ登録処理において、マイク34で生成された音声データが音声制御装置3に記憶される。
【0066】
スピーカ37は、音声を出力する音声出力機器である。詳細は後述するが、本実施形態では、報知部317は、例えば、ユーザ登録処理において情報の登録を行おうとする人物に対して情報を提示するのに用いられる。
【0067】
操作部316は、ハウジング31の表面に、各種情報の入力用に、手動操作可能に設けられている。操作部316は、例えば、押しボタンスイッチ、タッチスクリーン等として構成される。操作部316は、例えば、ユーザ登録処理において暗証番号を入力するのに用いられる。
【0068】
報知部317は、ハウジング31の表面に設けられ、情報を報知するように構成されている。報知部117は、表示、光、音等により情報を報知するいかなる機器であってもよい。本実施形態では、報知部317は、赤色と緑色のLEDを含むが、これに代えて、例えば、テキスト情報を表示可能なディスプレイが採用されてもよい。報知部317は、例えば、ユーザ登録処理等において情報の登録を行おうとする人物に対して、視覚的に情報を提示するのに用いられる。
【0069】
図2に示すように、制御部33は、上述の電源スイッチ313、ペアリングボタン314、ユーザ登録ボタン315、マイク34、スピーカ37、報知部317の夫々と電気的に接続された制御部33を備える。制御部33は、更に、通信部38、記憶部35と電気的に接続されている。
【0070】
制御部33は、音声制御装置3の動作を制御する。また、制御部33は、装置100及びネックスピーカ50に様々な制御情報を送信することで、装置100及びネックスピーカ50の動作を制御する。制御部33は、少なくとも1つのプロセッサ/処理回路(例えば、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)と、少なくとも1つのメモリとを備える。本実施形態では、制御部33には、CPU331、ROM332、RAM333、不揮発性のメモリ334等を含むマイクロコンピュータが採用されている。
【0071】
通信部38は、無線により装置100及びネックスピーカ50と接続可能に構成されている。通信部38は、予め定められた規格に従って、装置100の通信部18及びネックスピーカ50の通信部58との間で無線により情報(データ、信号)の送受信を行うことができれば、いかなる公知の構成を有してもよい。
【0072】
記憶部35は、制御部33のメモリ334とは別個の記憶装置である。記憶部35は、例えば、半導体メモリ装置及び磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。記憶部35には、ユーザ登録処理で得られた情報、スピーカ37から情報提示用の音声を出力するための情報、過去にペアリング済みの装置100の設定情報、装置100の動作を制御するための情報等が記憶されている。また、詳細は後述するが、本実施形態では、音声制御装置3において、ネックスピーカ50から取得された音声データに基づく音声認識が行われる。記憶部35には、このときの処理で使用するために、音声認識モデルが記憶されている。
【0073】
以下、電動工具システム1で行われる処理について説明する。
【0074】
まず、
図3を参照して、ネックスピーカ50のユーザ7の音声指示に基づき、音声制御装置3が装置100を制御する場合に電動工具システム1全体で行われる処理の大まかな流れについて説明する。なお、以下の説明及び図では、処理中の各「ステップ」を「S」と簡略表記する。
【0075】
図3に示すように、ネックスピーカ50のユーザ7の音声データが、音声制御装置3に登録される(S101、ユーザ登録処理)。音声制御装置3と装置100との間、及び、音声制御装置3とネックスピーカとの間で特定の情報が送受信され、ペアリングが行われる(S103及びS105)。更に、ネックスピーカ50と音声制御装置3との間で特定の情報が送受信され、ネックスピーカ50のユーザ7が、音声指示によって装置100を動作させることが可能な登録ユーザであることを確認するユーザ認証処理が行われる(S107)。
【0076】
ネックスピーカ50のユーザ7が発した装置100の動作に関する音声指示が、ネックスピーカ50に入力され(S109)、ネックスピーカ50の着用状態が検出される(S111)。音声データと検出結果が音声制御装置3に送信される(S113)。音声制御装置3は、ネックスピーカ50が着用されていれば、ネックスピーカ50から取得した音声データに基づいて音声認識を行い、指示を特定する(S115)。音声制御装置3は、特定した指示を実行可能か否か判断し(S117)、実行可能であれば、ネックスピーカ50に、実行してよいか否かの確認を要求する(S119)。
【0077】
ネックスピーカ50のユーザ7による指示実行を確認する音声が、ネックスピーカ50に入力され(S121)、ネックスピーカ50の着用状態が検出される(S123)。音声データと検出結果が音声制御装置3に送信される(S125)。音声制御装置3は、ネックスピーカ50が着用されていれば、装置100に、指示された動作を実行させるための制御情報を送信する(S127)。装置100は、受信した制御情報に従って、指示された動作を実行する(S129)。
【0078】
その後、S109~S129の処理が適宜繰り返される。なお、この例では、装置100が1つのみ例示されているが、音声制御装置3と複数の装置100がペアリングされた場合には、ネックスピーカ50のユーザ7は、複数の装置100に対して選択的に音声指示を発することができる。音声制御装置3は、音声データに基づいて適切な装置100に制御情報を送信し、動作を制御する。
【0079】
以下、音声制御装置3、ネックスピーカ50、装置100の各々で行われる処理の詳細について、順に説明する。
【0080】
まず、
図4を参照して、音声制御装置3において、制御部33(詳細には、CPU331)によって実行されるユーザ登録処理について説明する。ユーザ登録処理は、ユーザ登録ボタン315がオンとされるのに応じて開始される。また、この処理は、CPU331がROM332、メモリ334、記憶部35の何れかに記憶されたプログラムをRAM333に読み出して実行することで実現される。
【0081】
図4に示すように、CPU331はまず、スピーカ37から、暗証番号の入力を求める音声を出力させる(S301)。CPU331は、記憶部35から適切な音声のデータを取得して音声出力に用いるが、この点は以下の処理でも同様である。
【0082】
CPU331は、操作部316を介して入力された暗証番号と、予め設定され、記憶部35に記憶された暗証番号とを照合することで、入力された暗証番号が正しいか否か判断する(S302)。暗証番号が正しくない場合(S302:NO)、CPU331は、スピーカ37から、暗証番号が誤りであることを告げる音声と、処理のやり直しを求める音声とを順に音声出力させ(S303、S316)、電源をオフとして(S319)、ユーザ登録処理を終了する。
【0083】
入力された暗証番号が正しい場合(S302:YES)、CPU331は、スピーカ37から、起動ワード(ウェイクワード)の発話を求める音声を出力させる(S305)。マイク34から入力された音声の音声データが取得され、RAM333に一時的に記憶される(S306)。取得された音声データの数が3未満である場合(S307:NO)、CPU331は、S305に戻って再度発話を促す。
【0084】
取得された音声データの数が3に達すると(S307:YES)、CPUは、スピーカ37から、音声データを登録するか否かの指示を求める音声を出力させる(S311)。マイク34から入力された音声の音声データが取得されると(S312)、CPU331は、音声認識によって音声データをテキストデータに変換し(S313)、得られたテキストデータに基づき、登録の指示がされたか否かを判断する(S314)。
【0085】
S313の音声認識処理には、いかなる公知の手法が用いられてもよいが、本実施形態では、機械学習(例えば、ニューラルネットワークを用いた深層学習)によって予め大量のデータを学習することで得られた少なくとも1つの音声認識モデルが用いられる。例えば、音声認識処理のいくつかのステップで別個に用いられる音響モデル及び言語モデル、又は、音声認識処理で統一的に用いられる単一モデル(End-to-Endモデル)が採用されうる。本実施形態では、音声認識モデル生成のための機械学習は、音声制御装置3とは異なる情報処理装置(図示略)で予め行われ、生成された音声認識モデルが記憶部35に記憶されている。
【0086】
また、本実施形態では、S314の判断は、音声認識処理によって得られたテキストデータと、記憶部35に予め登録指示と対応付けて記憶されたテキストデータとを照合することで行われる。これに代えて、S313~S314では、音声認識と共に自然言語処理技術を用いて、入力された音声の意味が解析されることで、指示が判断されてもよい。なお、この点は、後述する指示特定処理(
図9参照)における音声認識及び指示特定(S474~S475)についても同じことがいえる。
【0087】
CPU331は、登録を拒否されたと判断すると(S314:NO)、スピーカ37から、処理のやり直しを求める音声を出力させ(S316)、電源をオフとして(S319)、ユーザ登録処理を終了する。
【0088】
CPU331は、登録が指示されたと判断すると(S314:YES)、ユーザIDを生成し、ユーザIDと音声データ(音声波形のデータ)とを対応付けて、記憶部35に記憶(登録)する(S315)。以下、音声データが記憶部35に記憶されている人物を、登録ユーザといい、記憶された音声データを登録音声データという。なお、取得された3つの音声データがすべて記憶されてもよいし、3つの音声データから生成された、登録ユーザが起動ワードを発話したときの音声波形の特徴を示す1つのデータが記憶されてもよい。CPU331は、登録が完了すると、スピーカ37から登録完了を告げる音声を出力させ(S317)、電源をオフとして(S319)、ユーザ登録処理を終了する。
【0089】
次に、
図5~
図12を参照して、音声制御装置3において、制御部33(詳細には、CPU331)によって実行されるメイン処理について説明する。メイン処理は、電源スイッチ313がオンとされるのに応じて開始され、処理中に電源スイッチ313がオフとされるのに応じて終了される。また、この処理は、CPU331がROM332、メモリ334、記憶部35の何れかに記憶されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0090】
図5に示すように、メイン処理が開始されると、CPU331は、ペアリングボタン314が押されるまで待機する(S400:NO、S400)。ペアリングボタン314押されると(S400:YES)、CPU331は、ペアリング処理を実行する(S410)。以下、
図6及び
図7を参照して、ペアリング処理について説明する。上述のように、ペアリングとは、2つの装置が一対一で無線通信可能な状態とするために、相手方の装置の設定情報を登録することである。
【0091】
図6に示すように、CPU331はまず、ペアリングボタン314が所定時間よりも長く押されたか(長押しされたか)否かを判断する(S411)。本実施形態では、音声制御装置3と過去にペアリングされたことがある外部装置の設定情報(以下、登録設定情報という)は、記憶部35に記憶されている。長押しは、過去にペアリングされたことがないネックスピーカ50及び/又は装置100の設定情報の新規登録の指示操作である。
【0092】
CPU331は、ペアリングボタン314が長押しされ(S411:YES)、ペアリング相手の設定情報を受信すると(S412:YES)、受信した設定情報を、記憶部35に登録する(S413)。CPU331は、報知部317の緑色LEDを点灯させ、スピーカ37から、設定情報を登録したことを告げる音声を出力させる(S414)。CPU331は、音声制御装置3の設定情報を取得し、ペアリング相手に送信する(S415)。なお、音声制御装置3の設定情報は、例えばROM332に記憶されていればよい。CPU331は、ペアリング相手から、登録完了信号を受信するまで待機し(S416:NO、S416)、登録完了信号を受信すると(S416:YES)、緑色LEDを消灯して登録完了を報知し(S417)、S412に戻る。ここまでの処理で、ペアリング相手と音声制御装置3との間で一対一の無線通信が可能となる。
【0093】
ペアリング相手の設定情報を受信する前、あるいは設定情報を登録した後、ペアリングボタン314が再度押されると(S421:YES)、CPU331は、ペアリング処理の終了指示がなされたと認識する。そこで、CPU331は、ネックスピーカ50に、ペアリングにより無線接続が確立された状態の(接続中の)装置100に関する情報(以下、接続中装置情報という)を送信し(S423)、ペアリング処理を終了してメイン処理に戻る(
図5参照)。なお、音声制御装置3では、接続中装置情報は、随時RAM333に記憶されている。接続中装置情報は、少なくとも、装置100の種類(名称)を示す情報(装置ID)を含む。
【0094】
所定時間が経過していない間は(S425:NO)、CPU331は、設定情報の受信とペアリングボタン314の再度の押圧を監視する(S412、S421)。ペアリングボタン314が再度押されないまま所定時間が経過すると(S425:YES)、CPU331は、報知部317の赤色LEDを点滅させ、スピーカ37から、処理終了を告げる音声を出力させた後(S426)、S423に移行し、ペアリング処理を終了してメイン処理に戻る(
図5参照)。
【0095】
ペアリングボタン314が長押しされなかった場合(S411:NO)、
図7に示すように、CPU331は、記憶部35に記憶されている登録設定情報を取得する(S431)。CPU331は、ペアリング相手の設定情報を受信すると(S432:YES)、ペアリング相手の設定情報が記憶部35に登録されているか否か(つまり、登録設定情報に含まれているか否か)判断する(433)。ペアリング相手の設定情報が登録されていない場合(S433:NO)、CPU331は、報知部317の赤色LEDを点灯させ、ペアリング相手は記憶部35に登録されていないことを告げる音声をスピーカ37から出力させた後(S439)、S432に戻る。
【0096】
一方、ペアリング相手の設定情報が登録されている場合(S433:YES)、CPU331は、報知部317の緑色LEDを点灯させ、スピーカ37から、ペアリング相手は記憶部35に登録済みであることを告げる音声を出力させる(S435)。CPU331は、音声制御装置3の設定情報を取得し、ペアリング相手に送信する(S436)。CPU331は、ペアリング相手から、登録完了信号を受信するまで待機し(S437:NO、S437)、登録完了信号を受信すると(S437:YES)、緑色LEDを消灯して登録完了を報知し(S438)、S432に戻る。
【0097】
ペアリングボタン314が再度押されない間は(S441:NO)、CPU331は、ペアリング相手の設定情報を受信する度に、上述のS433~S439の処理を行う。よって、音声制御装置3は、この間に複数の外部装置(例えば、ネックスピーカ50と複数の装置100)との無線接続を確立することができる。ペアリングボタン314が再度押されると(S441:YES)、CPU331は、ネックスピーカ50に接続中装置情報を送信し(S442)、ペアリング処理を終了してメイン処理に戻る(
図5参照)。なお、ペアリングボタン314が再度押されずに所定時間経過した場合は、CPU331は、ペアリング処理を終了してメイン処理に戻ってもよい。
【0098】
図5に示すように、メイン処理では、ペアリング処理(S410)の後、ユーザ認証処理(S450)が行われる。ユーザ認証処理は、音声指示を行うネックスピーカ50のユーザ7が登録ユーザであるか否かを確認するための処理である。以下、
図8を参照して、ユーザ認証処理について説明する。
【0099】
図8に示すように、CPU331はまず、ネックスピーカ50から送信され、通信部38によって受信された音声データを取得するまで待機する(S451:NO、S451)。音声データを取得すると(S451:YES)、CPU331は、記憶部35に記憶された登録音声データを用いて声紋認証を行う(S452)。なお、声紋認証は、いかなる公知の方法で行われてもよい。CPU331は、声紋認証の結果、ネックスピーカ50のユーザ7が登録ユーザであると判断すると(S453:YES)、ネックスピーカ50に成功コードを送信し(S454)、ユーザ認証処理を終了してメイン処理に戻る(
図5参照)。
【0100】
CPU331は、声紋認証の結果、ネックスピーカ50のユーザ7が登録ユーザではないと判断すると(S453:NO)、ネックスピーカ50に失敗コードを送信する(S456)。声紋認証の失敗回数が所定回数に達していなければ(S457:NO)、CPU331は、S451に戻って音声データの取得を待つ。
【0101】
声紋認証の失敗回数が所定回数に達すると(S457:YES)、CPU331は、操作部316を介して正しい暗証番号が入力されたか否かを判断する(S461)。なお、詳細は後述するが、声紋認証の失敗回数が所定回数に達すると、ネックスピーカ50のスピーカ53からは、暗証番号の入力を求める音声が出力されている。これは、周囲の騒音等により、声紋認証だけでは、ユーザ7が登録ユーザでないと誤って判断される可能性があるためである。
【0102】
正しくない暗証番号が入力された場合(S461:NO)、暗証番号入力の失敗回数が所定回数に達していなければ(S462:NO)、ネックスピーカ50に失敗コードを送信し(S463)、S461に戻って暗証番号の入力を待つ。失敗回数が所定回数に達すると(S462:YES)、CPU331は、ネックスピーカ50に終了コードを送信し(S465)、電源をオフとして(S466)、メイン処理を終了する。これは、登録ユーザと認められない人物からの音声指示により装置100の動作を制御するのを防止するためである。
【0103】
以上に説明したユーザ認証処理により、例えば、所定の条件を満たす人物(例えば、熟練作業者、現場監督)のみに暗証番号を教えて登録ユーザとなるのを可能とし、更に声紋認証を行うことで、不適切な音声指示が実行される可能性を低減することができる。
【0104】
図5に示すように、メイン処理では、ユーザ認証処理(S450)が成功コードの送信(S454)で終了した後、指示特定処理(S470)が行われる。指示特定処理は、音声認識を行い、音声指示の内容を具体的に特定するための処理である。以下、
図9を参照して、指示特定処理について説明する。
【0105】
図9に示すように、CPU331はまず、ネックスピーカ50から送信され、通信部38によって受信された音声データ及び検出コードを取得するまで待機する(S471:NO、S471)。なお、検出コードは、ネックスピーカ50の着用検出部55の検出結果を示す信号であって、ネックスピーカ50が着用されているか否かを示す。音声データ及び検出コードを取得すると(S471:YES)、CPU331は、検出コードに基づき、ネックスピーカ50が着用されているか否かを判断する(S472)。
【0106】
ネックスピーカ50が着用されていないと判断された場合、声紋認証で登録ユーザと認められた人物がネックスピーカ50を外したことを意味する。そこで、CPU331は、ネックスピーカ50が着用されていないと判断すると(S472:NO)、ネックスピーカ50に、再認証要求コードを送信し(S479)、ユーザ認証処理のS451に戻る(
図8参照)。これは、声紋認証で登録ユーザと認められた人物がネックスピーカ50を外した後、別の人物によって不適切な音声指示がなされる可能性を低減するためである。
【0107】
CPU331は、ネックスピーカ50が着用されていると判断すると(S472:YES)、音声認識を行い(S474)、指示を特定する(S475)。
【0108】
S474で行われる音声認識は、ユーザ登録処理の音声認識(
図4のS313)と実質的に同じであり、少なくとも1つの音声認識モデルが用いられる。また、本実施形態では、S475で行われる指示の特定には、音声認識処理によって得られたテキストデータと、記憶部35に予め各種指示と対応付けて記憶されたテキストデータとを照合することで行われる。
【0109】
ここで、
図10を参照して、本実施形態で指示の特定のために記憶部35に記憶されている情報(以下、指示特定情報という)の例について説明する。
図10に示すように、指示特定情報は、例えば、互いに対応付けられた指示テキストデータと、指示IDと、制限判別コードと、装置テキストデータと、装置IDとを含む。指示テキストデータは、実行可能な装置100の動作に関する指示のテキストデータである。指示IDは、指示を識別するための情報である。制限判別コードは、指示の実行に制限があるか否かを示す情報であって、制限がない場合には「0」、制限がある場合には「1」が使用される。装置テキストデータは、指示に対応可能な装置100の種類(名称)を示すテキストデータである。装置IDは、装置の種類を識別するための情報である。
【0110】
図10に示す例では、「回転数をNにして」というテキストデータに対し、回転数制御に関する指示であることを示す指示ID「0001」と、制限があることを示す制限判別コード「1」と、対応可能な装置100の種類を示す「グラインダ」及び「ポリッシャ」というテキストデータと、これらに対応する装置コード「102」、「108」とが対応付けられている。また、「ライトをもっと明るくして」及び「ライトだけ点けて」というテキストデータに対し、光量制御に関する指示であることを示す指示ID「0002」と、制限がないことを示す制限判別コード「0」と、対応可能な装置100が「照明装置」、インパクトドライバ等のLEDライト115を備えた各種電動工具であることを示す「インパクトドライバ」・・・というテキストデータと、これらに対応する装置ID「103」、「101」・・・とが対応づけられている。同様に、様々な指示に対応する指示テキストデータに、指示を実行するための情報が対応づけられている。
【0111】
CPU331は、音声認識で得られたテキストデータの少なくとも一部が指示テキストデータを実質的に含む場合、その指示テキストデータに対応付けられた指示IDを特定する。また、音声認識で得られたテキストデータの少なくとも一部が装置テキストデータを実質的に含む場合、その装置テキストデータに対応付けられた装置IDを特定する。
【0112】
図9に示すように、CPU331は、音声認識でテキストデータが得られたか否かに応じて、指示を特定できたか否かを判断する(S476)。より詳細には、CPU331は、音声認識に成功した場合(S476:YES)、指示特定処理を終了してメイン処理に戻る(
図5参照)。一方、CPU331は、音声認識が失敗した場合(S476:NO)、ネックスピーカ50に特定失敗コードを送信し、S471に戻って音声データの取得を待つ。
【0113】
図5に示すように、メイン処理では、指示特定処理(S470)の後、指示実行処理(S500)が行われる。指示実行処理は、指示に応じて装置を動作させるための処理である。以下、
図11及び
図12を参照して、指示実行処理について説明する。
【0114】
図11に示すように、CPU331はまず、指示が実行可能であるか否かを判断する(S501)。より詳細には、指示特定処理のS475において指示ID及び装置IDの少なくとも一方を特定できなかった場合、特定された指示ID及び装置IDが対応付けられていない場合、又は接続中装置情報に特定された装置IDが含まれない場合には、CPU331は、指示は実行不能と判断する(S501:NO)。この場合、CPU331は、ネックスピーカ50に実行不能コードを送信し(S511)、指示特定処理(
図9参照)のS471に戻って、再度の指示の音声データの取得を待つ。
【0115】
CPU331は、指示特定処理のS475において、互いに対応付けられた指示ID及び装置IDが特定されており、接続中装置情報に特定された装置IDが含まれる場合、指示は実行可能と判断する(S501:YES)。この場合、CPU331は、指示を実行する装置100に、指示ID及び制限判別コードを送信する(S502)。CPU331は、所定時間内に装置100から確認コードを受信しなければ(S505:NO)、指示実行は失敗したとみなす。CPU331は、実行失敗コードをネックスピーカ50に送信して(S512)、指示特定処理のS471に戻って、新たな指示の音声データの取得を待つ。
【0116】
CPU331は、所定時間内に装置100から確認コードを受信すると(S505:YES)、ネックスピーカ50に最終確認を促すための確認要求コードを送信する(S506)。CPU331は、所定時間内にネックスピーカ50から音声データ及び検出コードを取得できない場合(S507:NO)、実行失敗コードをネックスピーカ50に送信して(S512)、指示特定処理のS471に戻って、再度の指示の音声データの取得を待つ。CPU331は、所定時間内にネックスピーカ50から音声データ及び検出コードを取得すると(S507:YES)、検出コードに基づき、ネックスピーカ50が着用されているか否かを判断する(S508)。ネックスピーカ50が着用されていない場合(S508:NO)、ネックスピーカ50に、再認証要求コードを送信し(S513)、ユーザ認証処理のS451に戻る(
図8参照)。
【0117】
CPU331は、ネックスピーカ50が着用されていると判断すると(S508:YES)、
図12に示すように、音声認識を行い(S515)、指示を特定する(S516)。S515、S516の処理は、上述のユーザ登録処理のS312、S313と同様である。CPU331は、特定された指示が実行指示であるか否か判断する(S517)。特定された指示が実行中止を求める指示である場合には(S517:NO)、CPU331は、ネックスピーカ50及び装置100にキャンセルコードを送信し(S518、S519)、指示特定処理のS471に戻って、新たな指示の音声データの取得を待つ。
【0118】
CPU331は、特定された指示が実行指示である場合(S517:YES)、指示を実行する装置100に実行確認コードを送信する(S521)。CPU331は、所定時間が経過するまで、装置100から送信される信号を監視する(S522:NO、S523:NO、S524:NO)。装置100から何も受信しないまま所定時間が経過した場合(S522:YES)、CPU331は、ネックスピーカ50に実行失敗コードを送信し(S527)、指示特定処理のS471に戻って、新たな指示の音声データの取得を待つ。
【0119】
所定時間内に、装置100から送信され、通信部38によって受信された待機コードを取得した後(S522:NO、S523:YES)、実行完了コードを受信しないまま所定時間が経過すると(S524:NO、S522:YES)、CPU331は、ネックスピーカ50に実行失敗コードを送信し(S527)、指示特定処理のS471に戻って、新たな指示の音声データの取得を待つ。なお、詳細は後述するが、待機コードは、装置100に対し、実行制限がある動作が指示された場合、装置100から音声制御装置3に、制限がクリアされるまで待機することを通知するために送信される信号である。
【0120】
所定時間内に、装置100から送信され、通信部38によって受信された実行完了コードを取得すると(S522:NO、S523:NO、S524:YES)、CPU331は、ネックスピーカ50に実行完了コードを送信し(S525)、指示実行処理を終了してメイン処理に戻る。
【0121】
図5に示すように、メイン処理では、指示実行処理(S500)の後、CPU331は、ペアリングボタン314の押圧操作、又は音声データ及び検出コードの取得を待つ(S551:NO、S552:NO)。CPU331は、ペアリングボタン314が押されると(S551:YES)、ペアリング処理(S410)に移行し、音声データ・検出コードを取得すると(S552:YES)、指示特定処理(S470)に移行する。
【0122】
以下、
図13~
図16を参照して、ネックスピーカ50において、制御部56(詳細には、CPU561)によって実行されるメイン処理について説明する。メイン処理は、電源スイッチ501がオンとされるのに応じて開始され、処理中に電源スイッチ501がオフとされるのに応じて終了される。また、この処理は、CPU561がROM562又はメモリ564に記憶されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0123】
図13に示すように、CPU561はまず、ネックスピーカ50に音声制御装置3との通信履歴があるか否かを確認する(S601)。なお、音声制御装置3との通信履歴は、例えばメモリ564に記憶されている。CPU561は、音声制御装置3との通信履歴がない場合には、ペアリングボタン502が押されるまで待機する(S601:NO、S602)。ペアリングボタン502が押されないまま所定時間が経過すると(S602:NO、S603:YES)、CPU561は、電源をオフして(S605)、メイン処理を終了する。
【0124】
CPU561は、音声制御装置3との通信履歴を確認した場合(S601:YES)、又は所定時間内にペアリングボタン502が押された場合(S603:NO、S602:YES)、ペアリング処理を行う(S610)。なお、本実施形態では、音声制御装置3との通信履歴がある場合にはペアリングボタン502が押されなくてもペアリング処理が開始されることで、利便性が高められている。一方、上述の音声制御装置3では、電源がオンされる度にペアリングボタン314が押されないとペアリング処理は行われない。これは、音声制御装置3は複数の様々な種類の外部装置と接続されうることを考慮し、不用意な接続を回避するためである。
【0125】
図14に示すように、ペアリング処理では、CPU561はまず、ネックスピーカ50の設定情報を取得し、音声制御装置3に送信する(S611)。ネックスピーカ50の設定情報は、例えば、ROM562に記憶されていればよい。CPU561は、所定時間内に音声制御装置3の設定情報を受信できなければ(S613:NO)、スピーカ53から、ペアリングが失敗したため処理を終了することを告げる音声を出力させる(S618)。なお、スピーカ53から情報提示用の音声を出力するための情報は、例えば、ROM562又はメモリ564に記憶されていればよい。CPU561は、電源をオフにして(S619)、メイン処理を終了する。
【0126】
CPU561は、所定時間内に音声制御装置3の設定情報を受信した場合(S613:YES)、スピーカ53から、ペアリングが成功したことを告げる音声を出力する(S614)。なお、取得された設定情報はRAM563に記憶される。CPU561は、音声制御装置3に登録完了信号を送信する(S615)。その後、CPU561は、登録完了信号の受信に応じて音声制御装置3から送信される接続先装置情報を受信し、RAM563に記憶して(S616)、メイン処理に戻る(
図13参照)。
【0127】
図13に示すように、ペアリング処理(S610)の後、CPU561は、接続先装置情報に基づいて、ネックスピーカ50のユーザ7が音声指示で操作可能な装置100の種類を告げる音声を出力させる(S622)。その後、ユーザ認証処理(S630)が行われる。ユーザ認証処理は、音声制御装置3との通信を介して、ネックスピーカ50のユーザ7が登録ユーザであるか否かを音声制御装置3に確認させるための処理である。以下、
図15を参照して、ユーザ認証処理について説明する。
【0128】
図15に示すように、ユーザ認証処理では、CPU561は、起動ワードを発話するよう求める音声を出力させ(S631)、マイク52で生成された音声データを取得するまで待機する(S632:NO、S632)。CPU561は、音声データを取得すると(S632:YES)、通信部58を介して音声制御装置3に音声データを送信する(S633)。
【0129】
上述のように、音声制御装置3のユーザ認証処理(
図8参照)で声紋認証が行われた結果、成功コードが送信されると、CPU561は通信部58を介してこれを取得し、認証が成功したと判断する(S635:YES)。この場合、CPU561は、報知部516の緑色LEDを点滅させ、スピーカ53から、認証成功を告げる音声を出力させる(S636)。CPU561は、所定時間経過後に緑色LEDを点灯させて、待機状態であることを報知し(S637)、メイン処理に戻る(
図13参照)。
【0130】
CPU561は、音声制御装置3から送信された失敗コードを取得した場合(S635:NO)、失敗コードの取得回数が所定回数に達していなければ(S641:NO)、スピーカ53から、起動ワードを再度発話するよう求める音声を出力させ(S642)、S632に戻って音声データの取得を待つ。CPU561は、失敗コードの取得回数が所定回数に達すると(S641:YES)、スピーカ53から、音声制御装置3で暗証番号を入力するよう求める音声を出力させる(S643)。
【0131】
音声制御装置3のユーザ認証処理(
図8参照)において入力された暗証番号が確認された結果、成功コードが送信されると、CPU561は通信部58を介してこれを取得し、認証が成功したと判断する(S645:YES)。CPU561は、上述のようにS636、S637の処理を行い、メイン処理に戻る(
図13参照)。
【0132】
CPU561は、音声制御装置3から送信された失敗コードを取得した場合(S645:NO)、S643の後で取得した失敗コードの取得回数が所定回数に達したか否か判断する(S646)。失敗回数が所定回数に達していなければ(S646:NO)、スピーカ53から、音声制御装置3で暗証番号を再度入力するよう求める音声を出力させ(S647)、S645に戻って認証結果を待つ。CPU561は、失敗回数が所定回数に達すると(S646:YES)、スピーカ53から、認証が失敗したため処理を終了することを告げる音声を出力させる(S648)。CPU561は、電源をオフにして(S649)、メイン処理を終了する。
【0133】
図13に示すように、ユーザ認証処理(S630)の後、音声指示処理(S660)が行われる。音声指示処理は、音声制御装置3との通信を介して、ネックスピーカ50のユーザ7が音声指示によって音声制御装置3に装置100の動作を制御させる処理である。以下、
図16を参照して、音声指示処理について説明する。
【0134】
図16に示すように、CPU561は、マイク52で生成された音声データを取得するまで待機する(S661:NO、S661)。CPU561は、音声データを取得すると(S661:YES)、着用検出部の検出結果を取得し(S662)、音声データ及び検出結果を示す検出コードを、通信部58を介して音声制御装置3に送信する(S663)。
【0135】
CPU561は、所定時間内に音声制御装置3からの返信がない場合には(S665:NO)、報知部516の緑色LEDを消灯させ、赤色LEDを点滅させて(S666)、スピーカ53から、通信が失敗したことを告げる音声を出力させる(S667)。その後、CPU561は、緑色LEDを点灯させ、赤色LEDを消灯させて待機状態に戻ったことを報知し(S668)、メイン処理に戻る(
図13参照)。
【0136】
上述のように、音声制御装置3の指示特定処理(
図9参照)又は指示実行処理(
図11、
図12参照)において、検出コードに基づいてネックスピーカ50が着用されていないと判断されると、再認証要求コードがネックスピーカ50に送信される。CPU561は、所定時間内に通信部58を介して再認証要求コードを取得すると(S665:YES、S671:YES)、スピーカ53から、再度ユーザ認証処理を行うよう要求する音声を出力させ(S672)、ユーザ認証処理のS631に戻る(
図15参照)。
【0137】
また、上述のように、音声制御装置3の指示実行処理(
図11参照)において、指示実行が可能と判断されると、最終確認のための確認要求コードがネックスピーカ50に送信される。CPU561は、所定時間内に通信部58を介して確認要求コードを取得すると(S665:YES、S671:NO、S674:YES)、スピーカ53から、指示を実行してよいか否かを示す発話を求める音声を出力させ(S675)、S661に戻って音声データの取得を待つ。
【0138】
更に、音声制御装置3の指示特定処理(
図9参照)又は指示実行処理(
図11、
図12参照)において、その他の各種コードがネックスピーカ50に送信されうる。CPU561は、所定時間内に通信部58を介して再認証要求コード及び確認要求コードとは異なるコードを取得すると(S665:YES、S671:NO、S674:NO)、スピーカ53から、受信したコードに応じた音声を出力させる(S677)。
【0139】
具体的には、CPU561は、音声制御装置3から送信された特定失敗コードを取得した場合、指示が音声認識できなかったことを告げる音声をスピーカ53から出力させる。また、CPU561は、音声制御装置3から送信された実行不能コードを取得した場合、指示が実行できないことを告げる音声をスピーカ53から出力させる。CPU561は、音声制御装置3から送信された実行失敗コードを取得した場合、装置100による指示の実行が失敗したことを告げる音声をスピーカ53から出力させる。CPU561は、音声制御装置3から送信されたキャンセルコードを取得した場合、指示をキャンセルしたことを告げる音声をスピーカ53から出力させる。なお、CPU561は、これらの場合、S666と同様、音声出力とあわせて報知部516の緑色LEDを消灯させ、赤色LEDを点滅させてもよい。更に、CPU561は、音声制御装置3から送信された実行完了コードを取得した場合、指示の実行が完了したことを告げる音声をスピーカ53から出力させる。
【0140】
CPU561は、S677で受信したコードに応じた音声を出力させた後、緑色LEDを点灯させ、赤色LEDを消灯させて待機状態に戻ったことを報知し(S668)、メイン処理に戻る(
図13参照)。
【0141】
図13に示すように、メイン処理では、音声指示処理(S660)の後、CPU561は、ペアリングボタン502の押圧操作又は音声データの取得を待つ(S681:NO、S682:NO)。CPU561は、ペアリングボタン502が押されると(S681:YES)、ペアリング処理(S610)に移行し、音声データを取得すると(S682:YES)、音声指示処理(S660)に移行する。
【0142】
以下、
図17を参照して、装置100において、制御部16(詳細には、CPU161)によって実行される音声制御処理について説明する。音声制御処理は、ペアリングボタン118が押圧され、オンとされるのに応じて開始される。音声制御処理は、CPU161がROM162又はメモリ164に記憶されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0143】
図17に示すように、音声制御処理では、CPU161は、通信部18への電力供給を開始させる(S701)。その後、CPU161は、ペアリング処理を行う(S702)。なお、装置100で行われるペアリング処理は、上述のネックスピーカ50で行われるペアリング処理(
図14参照)と、音声制御装置3からの接続先装置情報を受信しない点を除き、実質的に同じである。よって、ここでの説明は省略する。
【0144】
ペアリング処理で音声制御装置3との無線接続が確立されると、CPU161は、指示ID及び制限判別コードの取得を待つ(S705:NO、S705)。上述のように、音声制御装置3の指示実行処理(
図11参照)において、ネックスピーカ50のユーザ7による指示が装置100で実行可能だと判断されると、装置100には指示ID及び制限判別コードが送信される。CPU161は、通信部18を介して音声制御装置3から受信した指示ID及び制限判別コードを取得すると(S705:YES)、報知部117の緑色LEDを点灯させることで、音声制御装置3から指示を受けたことを報知する(S706)。CPU161は、確認コードを、通信部18を介して音声制御装置3に送信する(S707)。
【0145】
上述のように、音声制御装置3では、指示実行処理(
図11参照)において、ネックスピーカ50のユーザ7に指示を実行するか否かの最終確認が行われ、その結果を示すコードが装置100に送信される。CPU161は、通信部18を介して、音声制御装置3から送信されたキャンセルコードを取得した場合(S708:NO)、報知部117の赤色LEDを点灯させることで、指示がキャンセルされたことを報知する(S731)。CPU161は、通信部18を介してキャンセル完了コードを音声制御装置3に送信し(S732)、S705に戻って、指示ID及び制限判別コードの取得を待つ。一方、CPU161は、通信部18を介して、音声制御装置3から送信された実行確認コードを取得した場合(S708:YES)、S705で取得した制限判別コードに基づき、指示の実行に制限があるか否かを判断する(S711)。
【0146】
ここで、指示の実行制限の具体例について説明する。例えば、装置100がインパクトドライバ101である場合、
図10に示すように、光量制御に関する指示ID「0002」と、モード変更に関する指示ID「0003」を受け付けうる。指示ID「0002」に対応する制限判別コードは、制限のない指示であることを示す「0」であり、指示ID「0003」に対応する制限判別コードは、制限付きの指示であることを示す「1」である。制限判別コード「1」は、指示された動作を即時に実行すると不都合が生じる可能性がある指示に付与されている。
【0147】
例えば、上述の光量変更(例えば光量の増加)のように、不慣れな作業者の作業中に実行されても、作業者に悪影響を及ぼす可能性が低い動作の指示には、制限判別コード「0」が付与され、即時に指示が実行されることが許容されている。よって、CPU161は、制限判別コードが「0」である場合(S711:NO)、指示に応じた動作(例えば、インパクトドライバ101のLEDライト115の光量増加)を実行する(S712)。指示の実行後、CPU161は、音声制御装置3に実行完了コードを送信する(S713)。更に、CPU161は、報知部117の緑色LEDを消灯させることで、音声制御装置3からの指示の実行が終了したことを報知し(S714)、S705に戻って、指示ID及び制限判別コードの取得を待つ。
【0148】
一方、上述のモード変更は、モータ12の回転数の変更を伴う。例えば、不慣れな作業者がインパクトドライバ101を使用している場合、モータ12の駆動中にモード変更が行われると、モータ12の回転数の変化に適切に対応できず、好ましくない。そこで、本実施形態では、制限判別コードが「1」である場合、モータ12の駆動が一旦停止された後で、指示された動作が実行される。
【0149】
具体的には、CPU161は、制限判別コードが「1」である場合(S711:YES)、モータ12起動用のスイッチ13がオンであるか否か(つまり、モータ12が駆動中か否か)判断する(S721)。スイッチ13がオンであれば(S721:YES)、CPU161は、通信部18を介して音声制御装置3に待機コードを送信する(S722)。CPU161は、その後、スイッチ13がオフとなると(S721:NO)、S712に移行し、指示に応じた動作を行う。その後、上述のS713~S715の処理を行って、音声制御処理を終了する。
【0150】
なお、
図1の例のように、音声制御装置3に複数の装置100が接続されている場合、各装置100において、音声制御装置3からの制御情報に従って、上述の処理が行われる。
【0151】
以上に説明したように、本実施形態の電動工具システム1では、音声制御装置3が音声の音声データを取得し、この音声データに基づいて特定された装置100(電動工具)の動作に関する指示に応じて、無線通信によって装置100の動作を制御する。このため、音声制御装置3が指示の音声データを取得でき、且つ、装置100との間で無線通信が可能な限りにおいて、電動工具に音声指示装置が設けられる従来の構成に比べ、装置100から離れた場所で音声指示を行うことが可能となる。よって、例えば、音声制御装置3を、電動工具とは別個に、加工作業で生じる粉塵による影響を受けにくい場所に設置することができる。また、電動工具を用いて実際に作業を行う人物とは異なる人物(例えば、現場監督)が、音声によって適切な指示を行うことが可能となる。更に、1つの音声制御装置3を用いて、複数の電動工具を音声指示に基づいて制御することが可能となる。また、電動工具のみならず、他の電気製品も音声指示により制御可能であるため、利便性の高い電動工具システム1が実現されている。
【0152】
また、本実施形態では、音声制御装置3は、ユーザデバイス5で入力された音声から生成された音声データを受信することで、音声データを取得する。特に、ユーザデバイス5としてネックスピーカ50が採用されているため、音声入力が騒音による影響を受けにくく、好適である。
【0153】
また、装置100のCPU161は、音声制御装置3から送信された指示IDと制限判別コードに従って、装置100の動作を制御する。よって、音声制御装置3に無線接続可能な新しい装置100が製品化された場合、新しい装置100において、指示IDに対応する動作が設定されることで、新しい装置100は、音声制御装置3から送信された指示IDに従って動作可能である。このため、音声制御装置3に記憶されている指示特定情報(
図10参照)が変更されなくても、音声制御装置3が音声指示で制御可能な装置100を増やすことができる。
【0154】
上記実施形態の各構成要素(特徴)と本開示又は発明の各構成要素(特徴)の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は、単なる一例であって、本開示又は本発明の各構成要素を限定するものではない。
【0155】
電動工具システム1は、「電動工具システム」の一例である。装置100の各々は、「制御対象装置」の一例である。インパクトドライバ101、グラインダ102の各々は、「電動工具」の一例である。音声制御装置3は、「音声制御装置」の一例である。制御部33は、「システム制御部」の一例である。ネックスピーカ50は、「ユーザデバイス」、「ウェアラブルデバイス」、「ネックスピーカ」の一例である。マイク52は、「音声入力部」の一例である。制御部56は、「デバイス制御部」の一例である。スピーカ53は、「音声出力部」の一例である。着用検出部55は、「検出部」の一例である。バッテリ装着部311は、「バッテリ装着部」の一例である。バッテリ93は、「バッテリ」の一例である。モータ12は、「モータ」の一例である。制御部16は、「工具制御部」の一例である。
【0156】
なお、本開示に係る電動工具システムは、上記実施形態の例示に限定されるものではない。例えば、以下に説明する非限定的な変更のうち少なくとも1つが、上記実施形態に例示された電動工具システム1、音声制御装置3、装置100、及び各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
【0157】
例えば、本開示に係る電動工具システムは、音声制御装置3と、少なくとも1つの装置100と、ネットワーク(例えば、携帯電話通信網、無線LAN(Local Area Network)、インターネット)を介して音声制御装置3に接続可能なサーバ(情報処理装置)を備えてもよい。この変形例では、音声制御装置3は、無線又は有線によりネットワークに接続し、ネットワークを介してサーバと通信を行うように構成されうる。なお、この変形例に係る電動工具システムは、ユーザデバイス5を選択的に含みうる。
【0158】
この変形例では、音声制御装置3の制御部33(CPU331)は、マイク34から入力された音声を音声データに変換し、あるいは、ユーザデバイス5から音声データを受信し、取得した音声データをサーバに送信する。サーバでは、少なくとも1つのプロセッサとメモリとを含む制御部が、上記実施形態で説明したように、音声認識モデルを用いて音声認識を行って指示を特定し、特定した指示を音声制御装置3に送信する。あるいは、サーバの制御部は、音声認識により得られたテキストデータを音声制御装置3に送信し、音声制御装置3の制御部33が、指示の特定のみを行ってもよい。更に、音声制御装置3は、記憶部35に記憶されていない装置100の動作に関する指示を受けた場合、サーバと通信を行い、その装置100に関する情報を取得してもよい。また、音声制御装置3は、サーバと適宜通信を行い、サーバで更新された最新の音声認識モデルを取得して、音声認識及び指示の特定を行ってもよい。
【0159】
上記変形例の電動工具システムと同様、上記実施形態の電動工具システム1からユーザデバイス5が省略され、音声制御装置3の制御部33(CPU331)は、マイク34で生成された音声データを取得してもよい。また、ユーザデバイス5には、別の種類のウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ)が採用されてもよいし、スマートフォンやタブレット端末のような携帯端末が採用されてもよい。
【0160】
上記実施形態におけるユーザ登録処理(音声データの登録)は、音声制御装置3とのペアリング後に、ネックスピーカ50のマイク52から入力された音声の音声データが音声制御装置3に送信されることで行われてもよい。音声制御装置3で音声入力や音声出力が必要ない場合、マイク52及びスピーカ53は、省略されうる。また、操作部316、報知部317についても同様である。
【0161】
音声制御装置3は、アダプタタイプであってもよく、ユーザ7又は電動工具を使用する作業者の衣服やベルトに取り付け可能な留め具(例えば。フック)を備えていてもよい。また、音声制御装置3は、USB端子を備え、例えば、モバイルバッテリから電力供給を受けてもよいし、電源コードを介して接続された外部の交流電源から電力供給を受けてもよい。音声制御装置3が交流電源に接続可能な場合、音声制御装置3は、バッテリ93の充電機能を備えてもよい。あるいは、音声制御装置3は、作業現場で使用される電気製品/電子機器(例えば、照明装置103、ラジオ等)と一体化されていてもよい。
【0162】
上記実施形態では、説明の簡単化のため、音声制御装置3が1つの装置100に対する1つの指示を受けるのに応じて、該当する装置100にその指示を実行させる例が説明されている。しかしながら、音声制御装置3は、以下に挙げる変形例のように、複数の装置100に対する複数の指示、及び/又は、時間が指定された指示を処理するように構成されてもよい。
【0163】
第1の変形例では、ネックスピーカ50のユーザ7は、一度に複数の装置100に対する指示を音声入力してもよい。この場合、音声制御装置3の制御部33(CU331)は、指示特定処理(
図9参照)のS474、S475において、取得した音声データに基づいて複数の装置100の夫々に対応する指示を特定し、指示実行処理(
図11参照)のS502において、複数の装置100の夫々に適切な制御情報(指示ID、制限判別コード)を送信することで、複数の装置100を制御しうる。また、S506で行われるネックスピーカ50への実行確認要求は、指示毎になされてもよいし、複数の指示に対する1つの実行確認要求がなされてもよい。これに対応して、ネックスピーカ50のユーザ7は、音声指示処理(
図16参照)のS675で発話が求められるのに応じて、指示毎に実行を確認する音声を入力してもよいし、複数の指示の実行を一括で確認する音声を入力してもよい。
【0164】
第2の変形例では、ネックスピーカ50のユーザ7は、装置100の動作に関する指示であって、実行予定時間が指定された指示を音声入力してもよい。この場合、音声制御装置3の制御部33(CU331)は、指示特定処理(
図9参照)のS474、S475で指示を特定した後、対象の装置100がタイマ設定に対応しているか否かに応じて異なる処理を行ってもよい。具体的には、例えば、対象の装置100がタイマ設定に対応していない場合、制御部33は、音声制御装置3が備えるタイマを用いて指定された時間になるまで待機し、指定された時間になると、装置100に制御情報を送信すればよい。一方、対象の装置100がタイマ設定に対応している場合、制御部33は、S474、S475で指示を特定した後、待機することなく、制御情報と共に指定された時間の情報を装置100に送信すればよい。装置100の制御部16(CPU161)は、指定された時間まで待機し、指定された時間になると、制御情報に基づいて指示を実行することができる。なお、制御部16は、指定された時間よりも前に別の指示に対応する制御情報を受信した場合は、別の指示を実行してもよい。
【0165】
第3の変形例は、第1の変形例と第2の変形例の組合せとして実現されうる。つまり、音声制御装置3は、ネックスピーカ50から、実行予定時間が指定された複数の指示に対応する音声データを取得し、特定した指示に応じて、複数の装置100が指定された時間に指示を実行するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0166】
1:電動工具システム、100:制御対象装置(装置)、101:インパクトドライバ、102:グラインダ、103:照明装置、11:ハウジング、111:バッテリ装着部、115:LEDライト、116:操作部、117:報知部、118:ペアリングボタン、12:モータ、121:モータ駆動回路、13:スイッチ、141:光源、16:制御部、161:CPU、162:ROM、163:RAM、164:メモリ、18:通信部、3:音声制御装置、31:ハウジング、311:バッテリ装着部、313:電源スイッチ、314:ペアリングボタン、315:ユーザ登録ボタン、316:操作部、317:報知部、33:制御部、331:CPU、332:ROM、333:RAM、334:メモリ、34:マイク、35:記憶部、37:スピーカ、38:通信部、5:ユーザデバイス、50:ネックスピーカ、501:電源スイッチ、502:ペアリングボタン、51:本体、516:報知部、52:マイク、53:スピーカ、55:着用検出部、56:制御部、561:CPU、562:ROM、563:RAM、564:メモリ、58:通信部、7:ユーザ、91:先端工具、93:バッテリ