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特開2024-167694含フッ素ポリマーを含有する紫外光発光素子用レンズ、含フッ素ポリマーを含有する樹脂組成物、及び当該樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167694
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】含フッ素ポリマーを含有する紫外光発光素子用レンズ、含フッ素ポリマーを含有する樹脂組成物、及び当該樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 24/00 20060101AFI20241127BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20241127BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20241127BHJP
   C08L 27/14 20060101ALI20241127BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C08F24/00
C08L27/12
C08L27/16
C08L27/14
C08K5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083944
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】真利 大地
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛太
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD12X
4J002BD13W
4J002BD13X
4J002BD14X
4J002GP01
4J100AC26Q
4J100AU28P
4J100BB07P
4J100BB18P
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100DA36
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA52
4J100DA62
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA33
(57)【要約】
【課題】本開示は、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含み、表面硬度及び靭性が高い含フッ素ポリマー(A)を含有する紫外光発光素子用レンズの提供を一つの目的とする。
【解決手段】本開示は次の紫外光発光素子用レンズ等に関する。
含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する紫外光発光素子用レンズであって、
前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わず、
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有する、紫外光発光素子用レンズ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する紫外光発光素子用レンズであって、
前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わず、
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有する、紫外光発光素子用レンズ。
【請求項2】
前記含フッ素ポリマー(A)が、下記式(A1):
【化1】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
で表される構成単位
を主成分として含む、請求項1に記載の紫外光発光素子用レンズ。
【請求項3】
前記含フッ素ポリマー(A)がフルオロオレフィン単位をさらに含む、請求項1又は2に記載の紫外光発光素子用レンズ。
【請求項4】
前記フルオロオレフィン単位が含フッ素パーハロオレフィン単位、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位、ペンタフルオロプロピレン単位、及び1,1,1,2-テトラフルオロ-2-プロピレン単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
【請求項5】
前記含フッ素パーハロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
【請求項6】
前記フルオロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
【請求項7】
前記含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位において、含フッ素脂肪族環を有する構成単位の割合が、50~90モル%であり、フルオロオレフィン単位の割合が10~50モル%である、請求項3に記載の紫外光発光素子用レンズ。
【請求項8】
前記紫外発光素子用光学レンズがフレネルレンズである請求項1又は2に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
【請求項9】
含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する樹脂組成物であって、
前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わず、
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有し、
前記樹脂組成物は、非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)を含有し、
前記含フッ素ポリマー(C)の樹脂組成物における含有量が、前記含フッ素ポリマー(A)の含有質量に対し、1質量%以下である、
樹脂組成物。
【請求項10】
前記含フッ素ポリマー(A)は、(1)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位のみからなる含フッ素ポリマー(a)、並びに(2)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含み及びフルオロオレフィン単位を含む含フッ素ポリマー(b)の混合物であり、
前記含フッ素ポリマー(A)は、前記含フッ素ポリマー(b)を50質量%以上含有し、
前記含フッ素ポリマー(C)は、含フッ素ポリマー(b)に含まれるフルオロオレフィン単位と同じフルオロオレフィン単位を主成分として含む、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記含フッ素ポリマー(A)、前記含フッ素ポリマー(a)、及び前記含フッ素ポリマー(b)が、下記式(A1):
【化2】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
で表される構成単位
を主成分として含む、請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記フルオロオレフィン単位が含フッ素パーハロオレフィン単位、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位、ペンタフルオロプロピレン単位、及び1,1,1,2-テトラフルオロ-2-プロピレン単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記含フッ素パーハロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記フルオロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記フルオロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、及びヘキサフルオロプロピレン単位から選ばれる少なくとも1種であり、
前記含フッ素ポリマー(C)中の全ての構成単位において、前記フルオロオレフィン単位の割合が65モル%以上である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
含フッ素ポリマー(A)を、樹脂組成物の質量に対し、0.001~99.9999質量%含有する、請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記含フッ素ポリマー(C)の含有量が、前記フッ素ポリマー(A)の質量に対し、0.0001~1質量%である、請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
さらに非プロトン性溶媒(B)を含む請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記非プロトン性溶媒(B)は、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、フルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である、請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
前記非プロトン性溶媒(B)がハイドロフルオロエーテルである請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
前記非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)が600以下である請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
前記非プロトン性溶媒(B)が、
式(B-1):
F(CFO(CHH (B-1)
[式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。]
で表わされる化合物、
式(B-2):
H(CFO(CFF (B-2)
[式中、p及びqは前記と同意義である。]
で表わされる化合物、
式(B-3):
H(CFO(CHH (B-3)
[式中、p及びqは前記と同意義である。]
で表わされる化合物、
式(B-4):
X(CFCHO(CFH (B-4)
[式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。]
で表わされる化合物、
(CFCHOCH、(CFCFOCH、CFCHFCFOCH、CFCHFCFOCF、(CFCFCF(OCH)CFCF、(CFCFCF(OC)CFCFCF、CCF(OCH)C、(CFCFCFOCH、CHFCFOCHCF、及びCFCHFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項23】
前記非プロトン性溶媒(B)が、式(B-5):
21-O-R22 (B-5)
[式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。]
で表される化合物、(CFCFCF(OCH)CFCF、及び(CFCFCF(OC)CFCFCFからなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項24】
前記含フッ素ポリマー(A)が前記非プロトン性溶媒(B)に溶解している、請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項25】
前記樹脂組成物は、非プロトン性溶媒(B)を含有せず、含フッ素ポリマー(A)を、樹脂組成物の質量に対し、99~99.9999質量%含有する、請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項26】
請求項9又は10に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)を非プロトン性溶媒(B)と接触させて含フッ素ポリマー(A)を溶解させて、含フッ素ポリマー(A)溶解液を取得する工程、及び前記含フッ素ポリマー(A)溶解液を濾過して、前記含フッ素ポリマー(C)を分離し、濾液を取得する工程、
を含む、
樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素ポリマーを含有する紫外光発光素子用レンズ、含フッ素ポリマーを含有する樹脂組成物、当該樹脂組成物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子用レンズでは、光の照射範囲、照射強度等の調整のため拡散等の機能が求められる。このため、形状に特徴のある発光素子用レンズ(例;フレネルレンズ)が要望されている。非晶質の含フッ素ポリマーの一部は、その透明性を活用し、発光素子(例;UV-LED)用レンズとして用途が報告されている(特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-162191号公報
【特許文献2】国際公開第2007/086478号
【特許文献3】特開2016-006832号公報
【特許文献4】国際公開第2019/087348号
【特許文献5】国際公開第2019/043840号
【特許文献6】国際公開第2009/034952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非晶質の含フッ素ポリマーは透明性が高いものの、その多くは表面硬度が低く、ひっかきやこすれによって傷がつきやすかった。また、非晶質のフッ素ポリマーの一種は固い反面、割れやすかった。本発明者らは、これらのことに着目し、非晶質の含フッ素ポリマーを使用した発光素子用レンズであって、ひっかき傷がつきにくく、割れにくい発光素子用レンズを探求した。
本開示は、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含み、表面硬度及び靭性が高い含フッ素ポリマー(A)を含有する紫外光発光素子用レンズの提供を一つの目的とする。本開示は、含フッ素ポリマー(A)を含有しつつ、透過率低下の原因となり得る含フッ素ポリマー(C)含有量が低減されており、含フッ素ポリマー(A)の供給源として有用な樹脂組成物の提供を一つの目的とする。本開示は、当該樹脂組成物の製造方法の提供を一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、例えば次の態様を包含する。
項1.
含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する紫外光発光素子用レンズであって、
前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わず、
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有する、紫外光発光素子用レンズ。
項2.
前記含フッ素ポリマー(A)が、下記式(A1):
【化1】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
で表される構成単位
を主成分として含む、項1に記載の紫外光発光素子用レンズ。
項3.
前記含フッ素ポリマー(A)がフルオロオレフィン単位をさらに含む、項1又は2に記載の紫外光発光素子用レンズ。
項4.
前記フルオロオレフィン単位が含フッ素パーハロオレフィン単位、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位、ペンタフルオロプロピレン単位、及び1,1,1,2-テトラフルオロ-2-プロピレン単位からなる群から選択される少なくとも1種である項3に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
項5.
前記含フッ素パーハロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)単位からなる群から選択される少なくとも1種である項4に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
項6.
前記フルオロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位からなる群から選択される少なくとも1種である項3に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
項7.
前記含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位において、含フッ素脂肪族環を有する構成単位の割合が、50~90モル%であり、フルオロオレフィン単位の割合が10~50モル%である、項3~6のいずれか一項に記載の紫外光発光素子用レンズ。
項8.
前記紫外発光素子用光学レンズがフレネルレンズである項1~7のいずれか一項に記載の紫外発光素子用光学レンズ。
項9.
含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する樹脂組成物であって、
前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わず、
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有し、
前記樹脂組成物は、非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)を含有し、
前記含フッ素ポリマー(C)の樹脂組成物における含有量が、前記含フッ素ポリマー(A)の含有質量に対し、1質量%以下である、
樹脂組成物。
項10.
前記含フッ素ポリマー(A)は、(1)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位のみからなる含フッ素ポリマー(a)、並びに(2)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含み及びフルオロオレフィン単位を含む含フッ素ポリマー(b)の混合物であり、
前記含フッ素ポリマー(A)は、前記含フッ素ポリマー(b)を50質量%以上含有し、
前記含フッ素ポリマー(C)は、含フッ素ポリマー(b)に含まれるフルオロオレフィン単位と同じフルオロオレフィン単位を主成分として含む、項9に記載の樹脂組成物。
項11.
前記含フッ素ポリマー(A)、前記含フッ素ポリマー(a)、及び前記含フッ素ポリマー(b)が、下記式(A1):
【化2】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
で表される構成単位
を主成分として含む、項9又は10に記載の樹脂組成物。
項12.
前記フルオロオレフィン単位が含フッ素パーハロオレフィン単位、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位、ペンタフルオロプロピレン単位、及び1,1,1,2-テトラフルオロ-2-プロピレン単位からなる群から選択される少なくとも1種である項10又は11に記載の樹脂組成物。
項13.
前記含フッ素パーハロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)単位からなる群から選択される少なくとも1種である項12に記載の樹脂組成物。
項14.
前記フルオロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位からなる群から選択される少なくとも1種である項10~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項15.
前記フルオロオレフィン単位が、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、及びヘキサフルオロプロピレン単位から選ばれる少なくとも1種であり、
前記含フッ素ポリマー(C)中の全ての構成単位において、前記フルオロオレフィン単位の割合が65モル%以上である、項10~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項16.
含フッ素ポリマー(A)を、樹脂組成物の質量に対し、0.001~99.9999質量%含有する、項9~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項17.
前記含フッ素ポリマー(C)の含有量が、前記フッ素ポリマー(A)の質量に対し、0.0001~1質量%である、項9~16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項18.
さらに非プロトン性溶媒(B)を含む項9~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項19.
前記非プロトン性溶媒(B)は、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、フルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である、項18に記載の樹脂組成物。
項20.
前記非プロトン性溶媒(B)がハイドロフルオロエーテルである項18に記載の樹脂組成物。
項21.
前記非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)が600以下である項18~20のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項22.
前記非プロトン性溶媒(B)が、
式(B-1):
F(CFO(CHH (B-1)
[式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。]
で表わされる化合物、
式(B-2):
H(CFO(CFF (B-2)
[式中、p及びqは前記と同意義である。]
で表わされる化合物、
式(B-3):
H(CFO(CHH (B-3)
[式中、p及びqは前記と同意義である。]
で表わされる化合物、
式(B-4):
X(CFCHO(CFH (B-4)
[式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。]
で表わされる化合物、
(CFCHOCH、(CFCFOCH、CFCHFCFOCH、CFCHFCFOCF、(CFCFCF(OCH)CFCF、(CFCFCF(OC)CFCFCF、CCF(OCH)C、(CFCFCFOCH、CHFCFOCHCF、及びCFCHFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである項18~21のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項23.
前記非プロトン性溶媒(B)が、式(B-5):
21-O-R22 (B-5)
[式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。]
で表される化合物、(CFCFCF(OCH)CFCF、及び(CFCFCF(OC)CFCFCFからなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである項18~21のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項24.
前記含フッ素ポリマー(A)が前記非プロトン性溶媒(B)に溶解している、項18~23のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項25.
前記樹脂組成物は、非プロトン性溶媒(B)を含有せず、含フッ素ポリマー(A)を、樹脂組成物の質量に対し、99~99.9999質量%含有する、項9~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
項26.
項9~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)を非プロトン性溶媒(B)と接触させて含フッ素ポリマー(A)を溶解させて、含フッ素ポリマー(A)溶解液を取得する工程、及び前記含フッ素ポリマー(A)溶解液を濾過して、前記含フッ素ポリマー(C)を分離し、濾液を取得する工程、
を含む、
樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、表面硬度及び靭性が高く、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマーを含有する紫外光発光素子用レンズを提供できる。本開示によれば、種々の光学素子(例えば、レンズ、プリズム、ディスプレイ材料、光導波路材)、光学材料用屈折率調整材、光学材料用3次元造形材料、光学デバイス向けシーラント用のフッ素材料等として有用な樹脂組成物を提供できる。本開示によれば、前記樹脂組成物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の前記概要は、本開示の各々の開示された実施形態または全ての実装を記述することを意図するものではない。
本開示の後記説明は、実例の実施形態をより具体的に例示する。
本開示のいくつかの箇所では、例示を通してガイダンスが提供され、及びこの例示は、様々な組み合わせにおいて使用できる。
それぞれの場合において、例示の群は、非排他的な、及び代表的な群として機能できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられる。
【0008】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、特に断りのない限り、室温で実施され得る。本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-Cm」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
本明細書中、「構成単位を主成分として含む」又は「単位を主成分として含む」は、対象となるポリマー中の全ての構成単位における特定の構成単位又は単位の割合が50モル%以上であることを意味する。
【0009】
本明細書中、特に断りのない限り、「含フッ素脂肪族環」は、環構成原子として、複数の炭素原子、及び1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有する。「含フッ素脂肪族環」が環構成原子として複数の酸素原子を含むときは、当該酸素原子は互いに隣り合わない。
「含フッ素脂肪族環」は、フッ素原子を含有する飽和脂肪族の単環を包含する。
「含フッ素脂肪族環」は、4員以上の環(例:4員環、5員環、6員環、7員環)を包含する。
「含フッ素脂肪族環」は、パーフルオロアルキル基(例:C1-C5の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基)及びパーフルオロアルコキシ基(例:C1-C5の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルコキシ基)からなる群から選択される少なくとも1種を置換基として有していてもよい。置換基の数は、1個以上とでき、例えば、1~4個、1~3個、1~2個、1個、2個、3個、又は4個であることができる。
「含フッ素脂肪族環」において、環構成炭素原子はフッ素原子を有していてもよい。
「含フッ素脂肪族環」の例は、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロオキセタン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロテトラヒドロフラン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロジオキソラン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロテトラヒドロピラン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロ-1,3-ジオキサン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロオキセパン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロ-1,3-ジオキセパン、1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロ-1,4-ジオキセパン、及び1個以上の置換基を有していてもよいパーフルオロ-1,3,5-トリオキセパンを含む。
【0010】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキル基」の例は、メチル、エチル、プロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C10(好ましくはC1-C7、より好ましくはC1-C6、より一層好ましくはC1-C4、特に好ましくはC1-C3)アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル等の環状のC3-C10(例えば、C3-C6、C4-C6、C3-C5、C5-C6)アルキル基を包含できる。
【0011】
本明細書中、特に断りのない限り、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
「フルオロアルキル基」の炭素数は、例えば、炭素数1~12、炭素数1~6、炭素数1~5、炭素数1~4、炭素数1~3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1であることができる。
「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1~3個、1~5個、1~9個、1~11個、1個から置換可能な最大個数)であることができる。
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。「パーフルオロアルキル基」は、アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である。
パーフルオロアルキル基の例は、トリフルオロメチル基(CF-)、ペンタフルオロエチル基(C-)、ヘプタフルオロプロピル基(CFCFCF-)、及びヘプタフルオロイソプロピル基((CFCF-)等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C10パーフルオロアルキル基を包含し、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C5パーフルオロアルキル基、C1-C4パーフルオロアルキル基、C1-C3パーフルオロアルキル基等であってよい。
「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基(CF-)、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基(C-)、テトラフルオロプロピル基(例:HCFCFCH-)、ヘキサフルオロプロピル基(例:(CFCH-)、パーフルオロブチル基(例:CFCFCFCF-)、オクタフルオロペンチル基(例:HCFCFCFCFCH-)、パーフルオロペンチル基(例:CFCFCFCFCF-)及びパーフルオロヘキシル基(例:CFCFCFCFCFCF-)等が挙げられる。
【0012】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルコキシ基」は、RO-[当該式中、Rはアルキル基(例:C1-10アルキル基、C1-C7アルキル基、C1-C6アルキル基、C1-C4アルキル基、C1-C3アルキル基)である。]で表される基であることができる。
「アルコキシ基」の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例:n-プロポキシ、イソプロポキシ)、ブトキシ(例:n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、ペンチルオキシ(例:n-ペンチルオキシ、tert-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、sec-ペンチルオキシ、3-ペンチルオキシ)、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、及びデシルオキシ等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C10(例:C1-C5、C1-C4、C1-C3)アルコキシ基を包含する。
【0013】
本明細書中、特に断りのない限り、「フルオロアルコキシ基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基である。「フルオロアルコキシ基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
「フルオロアルコキシ基」の炭素数は、例えば、炭素数1~12、炭素数1~6、炭素数1~5、炭素数1~4、炭素数1~3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1であることができる。
「フルオロアルコキシ基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1~3個、1~5個、1~9個、1~11個、1個から置換可能な最大個数)であることができる。
「フルオロアルコキシ基」は、パーフルオロアルコキシ基を包含する。「パーフルオロアルコキシ基」は、アルコキシ基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である。
「パーフルオロアルコキシ基」の例は、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、及びヘプタフルオロイソプロポキシ基等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C10パーフルオロアルコキシ基を包含し、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C5パーフルオロアルコキシ基、C1-C4パーフルオロアルコキシ基、C1-C3パーフルオロアルコキシ基等であってよい。
「フルオロアルコキシ基」として、具体的には、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基(例:CFCFCFO-、(CFCFO-)、及びノナフルオロブトキシ基(例:CFCFCFCFO-、(CFCO-)等が挙げられる。
【0014】
紫外光発光素子用レンズ
本開示の一実施態様は、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する紫外光発光素子用レンズであって、
前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わない。
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有することが好ましい。
【0015】
紫外光発光素子用レンズには、高い紫外光透過性を有し、ひっかき傷がつきにくく、割れにくいことが望まれる。本開示の紫外光発光素子用レンズは紫外光透過性に優れている。本開示の紫外光発光素子用レンズは、原料樹脂(含フッ素ポリマー(A))の表面硬度が高いため、ひっかき傷がつきにくい。本開示の紫外光発光素子用レンズは、原料樹脂の靭性が高いために割れにくい。このため原料樹脂を微細な構造を有するレンズへ成形しても、微細な構造が割れにくく傷つきにくい。例えば、本開示の紫外光発光素子用レンズは、フレネルレンズ等の微細な構造を有するレンズとして適している。
【0016】
紫外光発光素子用レンズは、例えば、フレネルレンズ、マイクロレンズ、曲面レンズ、非曲面レンズ、両凸レンズ、平凸レンズ、凸メニスカスレンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、シリンドリカルレンズ、トロイダルレンズ、放物面レンズ、異形レンズ、回折レンズ、およびそれらのアレイレンズ等であり、好ましくは、フレネルレンズ、マイクロレンズ、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、異形レンズ、回折レンズ、又はそれらのアレイレンズである。
【0017】
紫外光発光素子用レンズは、含フッ素ポリマー(A)を公知のレンズ成形方法で成形することにより製造できる。成形の条件は、公知の条件を必要に応じて適宜調整することができる。例えば、切削加工法、含フッ素ポリマー(A)を溶融して射出する射出成形法、平板状に加工した含フッ素ポリマー(A)を加熱した金型に押し当てて成形するプレス成形法などにより、所望の形状に成形して紫外光発光素子用レンズを製造することが望ましい。含フッ素ポリマー(A)を他の方法、例えば、含フッ素ポリマー(A)を溶解又は分散して型に流し込んで成形するモールド成形法などにより所望の形状に成形して紫外光発光素子用レンズを製造してもよい。
【0018】
紫外光発光素子用レンズが適用される紫外光発光素子は、紫外光発光ダイオード(LED)が好ましい。紫外光発光素子は、紫外光、例えば100nm~400nm(好ましくは240nm~340nm、より好ましくは250~270nm)の波長の光を主として発する素子である。その波長としては、工業的な価値が高いUV-A、UV-B、UV-C等があり、紫外光発光素子用レンズは、いずれの種類の紫外光発光素子にも適用できるが、UV-C発光素子に適用されるレンズであることが好ましい。
【0019】
本明細書において、「レンズ」は、発光素子用のいわゆる「封止材」を包含しない。
【0020】
含フッ素ポリマー(A)
含フッ素ポリマー(A)は、前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む。
含フッ素ポリマー(A)中の前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位の割合は、少なくとも50モル%以上であり、例えば、50モル%超、55モル%以上等とでき、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。
【0021】
紫外光発光素子用レンズに使用される含フッ素ポリマー(A)は、高い靭性を備える観点から、含フッ素脂肪族環を有する構成単位に加えてフルオロオレフィン単位を含むことが望ましい。含フッ素ポリマー(A)中の含フッ素脂肪族環を有する構成単位の割合は、例えば50~90モル%、50モル%超~85モル%、55~90モル%等とでき、60~90モル%が好ましく、65~85モル%がより好ましい。
【0022】
樹脂組成物に含有される含フッ素ポリマー(A)としては、(1)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位のみからなる含フッ素ポリマー(a)、並びに(2)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含み及びフルオロオレフィン単位を含む含フッ素ポリマー(b)を併用すること(例えば含フッ素ポリマー(a)と含フッ素ポリマー(b)の混合物)が望ましい。
【0023】
含フッ素ポリマー(a)は、前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位のみからなる。
【0024】
含フッ素ポリマー(b)中の前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位の割合は、例えば50~90モル%、50モル%超~85モル%、55~90モル%等とでき、60~90モル%が好ましく、65~85モル%がより好ましい。
【0025】
含フッ素ポリマー(A)中の含フッ素脂肪族環を有する構成単位の種類は1種以上であってよく、好ましくは1~3種類、より好ましくは1又は2種類、特に好ましくは1種類である。
【0026】
含フッ素脂肪族環を有する構成単位は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わない。
含フッ素脂肪族環は環構成原子として炭素原子を2個以上(例:2個、3個、4個)含み、且つ、隣接する炭素原子間で形成される炭素-炭素結合を1個以上(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)含むことができる。
含フッ素脂肪族環は、環構成原子として、2個以上の炭素原子及び1、2、又は3個の酸素原子を含み、他の原子を含まないことが好ましい。
含フッ素脂肪族環は水素原子を含まないことが好ましい。
含フッ素脂肪族環は全ての水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族環であることが好ましい。
【0027】
含フッ素脂肪族環は、4員環、5員環、6員環、又は7員環であることができる。含フッ素ポリマー(A)の種々の物性の観点から、含フッ素脂肪族環は、好ましくは4員環、5員環、又は6員環であり、より好ましくは5員環である。
含フッ素脂肪族4員環は、環構成原子として、3個の炭素原子及び1個の酸素原子を含むことができる。含フッ素脂肪族4員環の例は、パーフルオロオキセタン環を包含する。
含フッ素脂肪族5員環は、環構成原子として、4個の炭素原子及び1個の酸素原子を含んでもよく、又は3個の炭素原子及び2個の酸素原子を含んでもよい。含フッ素脂肪族5員環の例は、パーフルオロテトラヒドロフラン環及びパーフルオロジオキソラン環を包含する。
含フッ素脂肪族6員環は、環構成原子として、5個の炭素原子及び1個の酸素原子を含んでもよく、又は4個の炭素原子及び2個の酸素原子を含んでもよい。含フッ素脂肪族6員環の例は、パーフルオロテトラヒドロピラン環及びパーフルオロ-1,3-ジオキサン環を包含する。
含フッ素脂肪族7員環は、環構成原子として、6個の炭素原子及び1個の酸素原子を含んでもよく、5個の炭素原子及び2個の酸素原子を含んでもよく、又は4個の炭素原子及び3個の酸素原子を含んでもよい。含フッ素脂肪族7員環の例は、パーフルオロオキセパン環、パーフルオロ-1,3-ジオキセパン環、パーフルオロ-1,4-ジオキセパン環、及びパーフルオロ-1,3,5-トリオキセパン環を包含する。
【0028】
含フッ素脂肪族環は、1個以上の置換基を有してもよい。置換基が複数あるときは同一でも異なっていてもよい。
置換基は、パーフルオロアルキル基(例:直鎖状又は分岐状のC1-C5パーフルオロアルキル基)及びパーフルオロアルコキシ基(例:直鎖状又は分岐状のC1-C5パーフルオロアルコキシ基)からなる群から選択される少なくとも1種であることができる。置換基の数は、1個以上とでき、例えば、1~4個、1~3個、1~2個、1個、2個、3個、又は4個であることができる。
置換基としては、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロイソプロピル、トリフルオロメトキシ、及びパーフルオロエトキシからなる群から選択される少なくとも1種の基が好ましく、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、及びパーフルオロイソプロピルからなる群から選択される少なくとも1種の基がより好ましく、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、及びトリフルオロメトキシからなる群から選択される少なくとも1種の基が特に好ましい。
【0029】
含フッ素脂肪族環を有する構成単位は含フッ素脂肪族環とは別に、1又は2個のパーフルオロアルキレン基を有してもよいし、有していなくてもよい。当該パーフルオロアルキレン基は、含フッ素脂肪族環の環構成炭素原子と結合して、含フッ素ポリマー(A)の主鎖を形成する。
このようなパーフルオロアルキレン基の一例は、下記式(A2-1):
【化3】
で表される構成単位中の、環を構成するパーフルオロメチレンを除いた、2個の-CF-である。構成単位中のパーフルオロアルキレン基は1個でもよい。パーフルオロアルキレン基が2個含まれる場合、同一又は異なっていてよい。
パーフルオロアルキレン基の例は、-(CF)n-[式中、nは1~4の整数を示す。]で表されるアルキレン基である。
含フッ素脂肪族環を有する構成単位に含まれるパーフルオロアルキレン基は、1個以上のパーフルオロアルキル基を置換基として有してもよい。当該置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。置換基の数は、1個以上とでき、例えば、1~4個、1~3個、1~2個、1個、2個、3個、又は4個とできる。
置換基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、及びヘプタフルオロイソプロピルからなる群から選択される少なくとも1種の基が好ましく、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルからなる群から選択される少なくとも1種の基がより好ましい。
【0030】
含フッ素脂肪族環を有する構成単位は、下記式(A1)~(A3)のいずれかで表される構成単位(本明細書中、各々、「構成単位(A1)」、「構成単位(A2)」、及び「構成単位(A3)」と称することがある。)であってよい。構成単位(A1)、(A2)及び(A3)は、1種単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
【化4】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
【0032】
【化5】
[式中、Rはフッ素原子又はC1-C5のパーフルオロアルキル基を示す。]
【0033】
【化6】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
【0034】
構成単位(A1)において、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C3の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基、あるいはC1-C3の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルコキシ基とできる。R~Rはそれぞれ独立して、は、フッ素原子、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、又はトリフルオロメトキシが好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル、又はトリフルオロメトキシがより好ましい。
【0035】
好ましい構成単位(A1)は、式(A1)において、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子又はトリフルオロメチルを示す、構成単位である。
【0036】
より好ましい構成単位(A1)は、式(A1)において、
~Rはフッ素原子を示す、
~Rはフッ素原子を示し、Rはトリフルオロメチルを示す、
はトリフルオロメチルを示し、R~Rはフッ素原子を示す、あるいは
及びはトリフルオロメチルを示し、R及びRはフッ素原子を示す、
構成単位である。
【0037】
構成単位(A1)の好ましい例は、下記式で表される構成単位(本明細書中、「構成単位(A1-1)」と称することがある。)を包含する。
【化7】
【0038】
構成単位(A2)において、Rは、フッ素原子あるいはC1-C4の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基とできる。Rは、フッ素原子、トリフルオロメチル、又はパーフルオロエチルが好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチルがより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0039】
構成単位(A2)の好ましい例は、下記式で表される構成単位(各々、本明細書中、「構成単位(A2-1)」、「構成単位(A2-2)」と称することがある。)を包含する。
【化8】
【0040】
構成単位(A3)において、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C3の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基、あるいはC1-C3の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルコキシ基とできる。R~Rはそれぞれ独立して、は、フッ素原子、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、又はトリフルオロメトキシが好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル、又はトリフルオロメトキシがより好ましい。
【0041】
好ましい構成単位(A3)は、式(A3)において、R及びRがそれぞれ独立して、フッ素原子、トリフルオロメチル、又はトリフルオロメトキシを示し、R及びRがそれぞれ独立して、フッ素原子又はトリフルオロメチルを示す、構成単位である。
【0042】
より好ましい構成単位(A3)は、式(A3)において、Rがフッ素原子を示し、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル、又はトリフルオロメトキシを示し、R及びRがそれぞれ独立して、フッ素原子又はトリフルオロメチルを示す、構成単位である。
【0043】
特に好ましい構成単位(A3)は、式(A3)において、Rがフッ素原子を示し、Rがフッ素原子又はトリフルオロメトキシを示し、R及びRが同一に、フッ素原子又はトリフルオロメチルを示す、構成単位である。
【0044】
構成単位(A3)の好ましい例は、下記式で表される構成単位(各々、本明細書中、「構成単位(A3-1)」、「構成単位(A3-2)」と称することがある。)を包含する。
【化9】
【0045】
含フッ素ポリマー(A)は、主成分として含まれる含フッ素脂肪族環を有する構成単位に加えて、フルオロオレフィン単位を含むことができる。含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位におけるフルオロオレフィン単位の割合は50モル%以下、50モル%未満、45モル%以下等とでき、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。
【0046】
紫外光発光素子用レンズに使用される含フッ素ポリマー(A)は、高い靭性を備える観点から、含フッ素脂肪族環を有する構成単位に加えてフルオロオレフィン単位を含むことが望ましい。含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位におけるフルオロオレフィン単位の割合は、例えば10~50モル%、15~50モル%未満、10~45モル%等とでき、10~40モル%が好ましく、15~35モル%がより好ましい。
【0047】
含フッ素ポリマー(b)中の全ての構成単位におけるフルオロオレフィン単位の割合は、例えば10~50モル%、15~50モル%未満、10~45モル%等とでき、10~40モル%が好ましく、15~35モル%がより好ましい。
【0048】
含フッ素ポリマー(A)及び含フッ素ポリマー(b)に含まれるフルオロオレフィン単位は、フッ素を含むオレフィンが重合して形成する構成単位であり、1種のみでも2種以上の組み合わせでもよい。
【0049】
フルオロオレフィン単位は、フッ素原子及び炭素-炭素間二重結合を含む単量体が重合後に形成する構成単位である。
フルオロオレフィン単位を構成する原子は、フッ素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子、炭素原子、水素原子、及び酸素原子のみであってよい。
フルオロオレフィン単位を構成する原子は、フッ素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子、炭素原子、及び水素原子のみであってよい。
フルオロオレフィン単位を構成する原子は、フッ素原子、炭素原子、及び水素原子のみであってよい。
フルオロオレフィン単位を構成する原子は、フッ素原子及び炭素原子のみであってよい。
【0050】
フルオロオレフィン単位は、含フッ素パーハロオレフィン単位、フッ化ビニリデン単位(-CH-CF-)、トリフルオロエチレン単位(-CFH-CF-)、ペンタフルオロプロピレン単位(例:-CFH-CF(CF)-、-CF-CF(CHF)-)、1,1,1,2-テトラフルオロ-2-プロピレン単位(-CH-CF(CF)-)等からなる群から選択される少なくとも1種の単位を包含する。
【0051】
含フッ素パーハロオレフィン単位は、フッ素原子及び炭素-炭素間二重結合を含み、フッ素原子以外のハロゲン原子を含んでもよい単量体が、重合後に形成する構成単位である。
含フッ素パーハロオレフィン単位は、クロロトリフルオロエチレン単位(-CFCl-CF-)、テトラフルオロエチレン単位(-CF-CF-)、ヘキサフルオロプロピレン単位(-CF-CF(CF)-)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位(-CF-CF(OCF)-)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)単位(-CF-CF(OC)-)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位(-CF-CF(OCF)-)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)単位(-CF-CF(O(CF)-)、及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)単位(-CF-CAF-(式中、Aは、式中に示された隣接炭素原子と共に形成されたジオキソラン環であってジオキソラン環の2位の炭素原子に2個のトリフルオロメチルが結合した構造を示す。))からなる群から選択される少なくとも1種を包含する。
【0052】
フルオロオレフィン単位は、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位、及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位からなる群から選択される少なくとも1種を包含する。
【0053】
フルオロオレフィン単位としては、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位、及びヘキサフルオロプロピレン単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0054】
含フッ素ポリマー(A)は、主成分として含まれる含フッ素脂肪族環を有する構成単位、フルオロオレフィン単位とは異なる、他の構成単位を1種以上含んでもよく、含まないことが好ましい。
【0055】
このような他の構成単位は、CH=CHRf(RfはC1-C10フルオロアルキル基を表す)単位、アルキルビニルエーテル単位(例:シクロヘキシルビニルエーテル単位、エチルビニルエーテル単位、ブチルビニルエーテル単位、メチルビニルエーテル単位)、アルケニルビニルエーテル単位(例:ポリオキシエチレンアリルエーテル単位、エチルアリルエーテル単位)、反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物単位(例:ビニルトリメトキシシラン単位、ビニルトリエトキシシラン単位、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン単位)、アクリル酸エステル単位(例:アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位)、メタアクリル酸エステル単位(例:メタアクリル酸メチル単位、メタクリル酸エチル単位)、ビニルエステル単位(例:酢酸ビニル単位、安息香酸ビニル単位、「ベオバ」(シェル社製のビニルエステル)単位)などを包含する。
【0056】
他の構成単位の割合は、全構成単位の、例えば0モル%以上且つ20モル%以下、0モル%以上且つ10モル%以下等とできる。
【0057】
含フッ素ポリマー(A)の数平均分子量は、例えば、5000~1000000の範囲内等とでき、10000~800000の範囲内が好ましく、15000~600000の範囲内がより好ましく、30000~600000の範囲内が特に好ましい。
含フッ素ポリマー(A)の数平均分子量の下限は、例えば、5000以上とでき、10000以上が好ましく、15000以上がより好ましく、30000以上が特に好ましい。含フッ素ポリマー(A)の数平均分子量の上限は、1000000以下が好ましい。前記下限と上限とは適宜組み合わせられてよい。
含フッ素ポリマー(A)の数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法(特に、実施例に記載のGPC法)により特定される値である。
【0058】
含フッ素ポリマー(A)は、240nm~340nmの波長における平均透過率が、85%以上であってよく、好ましくは86%以上、より好ましくは87%以上である。平均透過率は次のようにして特定される。
平均透過率
日立分光光度計U-4100を用いてサンプルの所定の波長(240nm~340nm)における平均透過率を測定する。サンプルは平均厚み1mmの平板とする。検出器としては積分球検知器を用いる。
【0059】
含フッ素ポリマー(A)は、鉛筆硬度がF以上であってよく、好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上である。鉛筆硬度が高いほど、レンズ形状への加工の際、レンズを使用する際等に、レンズにひっかき傷等がつきにくくなる。鉛筆硬度は次のようにして特定される。
鉛筆硬度
鉛筆硬度はJIS K5600-5-4:1999に準拠して測定する。サンプルは平均厚み1mmの平板とする。具体的には、本開示の具体例にて記載された方法で決定される値である。
【0060】
含フッ素ポリマー(A)は、曲げ強度が30MPa以上であってよく、好ましくは30~100MPa、より好ましくは50~90MPaである。曲げ強度は次のようにして特定される。
曲げ強度
万能材料試験機5966型(インストロン社製)により1mm/分の速度で曲げ試験を行い、JIS K7171に準じて、曲げ試験片の曲げ強度を測定する。
【0061】
含フッ素ポリマー(A)は、シャルピー衝撃値が5kJ/m以上であってよく、好ましくは5~100kJ/m、より好ましくは10~90kJ/mである。シャルピー衝撃値は次のようにして特定される。
シャルピー衝撃値
シャルピー衝撃値はJIS K7111-1に準拠し、デジタル衝撃試験機DG-UB型(東洋精機製作所製)により、打撃方向:フラットワイズで測定した値とする。
【0062】
含フッ素ポリマー(A)の製造方法
含フッ素ポリマー(A)は、公知の方法により合成できる。例えば、含フッ素ポリマーの構成単位に対応するモノマーを重合することにより合成することができる。重合方法としては、ラジカル重合、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を用いることができる。含フッ素ポリマー(A)が高濃度で溶媒に溶解できる点で、非プロトン性溶媒中で原料モノマーを重合する溶液重合が好ましい。
【0063】
含フッ素ポリマー(A)は、例えば、モノマー(M)及び非プロトン性溶媒(B)の混合物中で、前記モノマー(M)を重合することで製造できる。含フッ素ポリマー(A)は、例えば、原料モノマー(モノマー(M)のみであっても、モノマー(M)と他のモノマーとの組み合わせであってもよい)及び任意に重合開始剤を含有する非プロトン性溶媒(B)を重合条件に供することで前記モノマー(M)を重合させて製造できる。
【0064】
モノマー
「モノマー(M)」は、含フッ素ポリマー(A)に主成分として含まれる構成単位に対応するモノマーである。原料モノマーとしては、モノマー(M)に加え、フルオロオレフィン、他のモノマー等を使用することができる。
【0065】
当業者は、特定の原料モノマーを重合反応させることにより、この原料モノマーに対応した構成単位を有する含フッ素ポリマー(A)が得られることを理解できる。したがって、当業者は、所望の含フッ素ポリマー(A)を製造するために、適切な原料モノマーを選択できる。
例えば、構成単位(A1)、構成単位(A2)、構成単位(A3)、構成単位(A1-1)、構成単位(A2-1)、構成単位(A2-2)、構成単位(A3-1)、構成単位(A3-2)、及び構成単位(A11-1)に対応するモノマーは、各々、以下に示す、式(M1)、式(M2)、式(M3)、式(M1-1)、式(M2-1)、式(M2-2)、式(M3-1)、式(M3-2)、及び式(M11-1)で表されるモノマー(本明細書中、各々、「モノマー(M1)」、「モノマー(M2)」、「モノマー(M3)」、「モノマー(M1-1)」、「モノマー(M2-1)」、「モノマー(M2-2)」、「モノマー(M3-1)」、「モノマー(M3-2)」、及び「モノマー(M11-1)」と称することがある。)とできる。
【化10】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示し、Rはフッ素原子又はC1-C5のパーフルオロアルキル基を示し、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
【0066】
モノマー(M1)、モノマー(M2)、及びモノマー(M3)におけるR~Rについては、構成単位(A1)、構成単位(A2)、及び構成単位(A3)におけるR~Rに関する記載が適用できる。
モノマー(M)は1種単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、モノマー(M)とその他のモノマーとを組み合わせて使用できる。例えば、モノマー(M2-1)及びモノマー(M11-1)を組み合わせて、構成単位(A2-1)及び構成単位(A11-1)を含む含フッ素ポリマー(A)を製造できる。
【0067】
非プロトン性溶媒
非プロトン性溶媒としては、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、フルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物などが挙げられる。非プロトン性溶媒は、1種単独又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましくは、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、及びハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である。さらに好ましくは、含フッ素ポリマー(A)を溶解する性能が高い点から、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒であり、特に好ましくはハイドロフルオロエーテルである。
【0068】
パーフルオロ芳香族化合物は、例えば、1個以上のパーフルオロアルキル基を有してもよいパーフルオロ芳香族化合物である。パーフルオロ芳香族化合物が有する芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1種の環であってよい。パーフルオロ芳香族化合物は芳香環を1個以上(例:1個、2個、3個)有してもよい。
置換基としてのパーフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、又はC1-C4パーフルオロアルキル基であり、直鎖状又は分岐状のC1-C3パーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル又はペンタフルオロエチルがより好ましい。
置換基の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。
パーフルオロ芳香族化合物の例は、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン、パーフルオロキシレン、パーフルオロナフタレンを包含する。
パーフルオロ芳香族化合物の好ましい例は、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエンを包含する。
【0069】
パーフルオロトリアルキルアミンは、例えば、3つの直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基で置換されたアミンである。当該パーフルオロアルキル基の炭素数は例えば1~10であり、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である。当該パーフルオロアルキル基は同一又は異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
パーフルオロトリアルキルアミンの例は、パーフルオロトリメチルアミン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリイソプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリsec-ブチルアミン、パーフルオロトリtert-ブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリイソペンチルアミン、パーフルオロトリネオペンチルアミンを包含する。
パーフルオロトリアルキルアミンの好ましい例は、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミンを包含する。
【0070】
パーフルオロアルカンは、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のC3-C12(好ましくはC3-C10、より好ましくはC3-C6)パーフルオロアルカンである。
パーフルオロアルカンの例は、パーフルオロペンタン、パーフルオロ-2-メチルペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ-2-メチルヘキサン、パーフルオロへプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(ジメチルシクロヘキサン)(例:パーフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン))、パーフルオロデカリンを包含する。
パーフルオロアルカンの好ましい例は、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロへプタン、パーフルオロオクタンを包含する。
【0071】
ハイドロフルオロカーボンは、例えば、C3-C8ハイドロフルオロカーボンである。
ハイドロフルオロカーボンの例は、CFCHCFH、CFCHCFCH、CFCHFCHFC、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCFCHF、及びCFCFCFCFCFCFを包含する。
ハイドロフルオロカーボンの好ましい例は、CFCHFCHFC、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、CFCHCFH、CFCHCFCHを包含する。
【0072】
フルオロ環状エーテルは、例えば、1個以上のフルオロアルキル基を有してもよいフルオロ環状エーテルである。フルオロ環状エーテルが有する環は3~6員環であってよい。フルオロ環状エーテルが有する環は環構成原子として1個以上の酸素原子を有してよい。当該環は、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個の酸素原子を有する。
置換基としてのフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、又はC1-C4フルオロアルキル基である。好ましいフルオロアルキル基は直鎖状又は分岐状のC1-C3フルオロアルキル基である。フルオロアルキル基はパーフルオロアルキル基が好ましく、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、C1-C4、又はC1-C3パーフルフルオロアルキル基である。
フルオロ環状エーテルは、パーフルオロ環状エーテルが好ましい。パーフルオロ環状エーテルは1個以上のパーフルオロアルキル基を有してもよい。パーフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、又はC1-C4パーフルオロアルキル基である。好ましいパーフルオロアルキル基は直鎖状又は分岐状のC1-C3パーフルオロアルキル基である。
置換基の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。
フルオロ環状エーテルの例は、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-メチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-プロピルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロピランを包含する。
フルオロ環状エーテルの好ましい例は、パーフルオロ-5-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-ブチルテトラヒドロフランを包含する。
【0073】
ハイドロフルオロエーテルは、例えば、フッ素含有エーテルである。
ハイドロフルオロエーテルの地球温暖化係数(GWP)は600以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下が特に好ましい。ハイドロフルオロエーテルの地球温暖化係数(GWP)の下限は1以上であっても5以上であってもよい。
ハイドロフルオロエーテルの例は、CFCFCFCFOCH3、CFCFCF(CF)OCH3、CFCF(CF)CFOCH3、CFCFCFCFOC、CFCF(CF)CFOC、CFCHOCFCHF、CCF(OCH)C、(CFCHOCH、(CFCFOCH、(CFCFCFOCH、(CFCFCFOC、CHFCFOCHCF、CHFCFCHOCFCHF、CFCHFCFOCH、CFCHFCFOCF、トリフルオロメチル1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227me)、ジフルオロメチル1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチルエーテル(HFE-227mc)、トリフルオロメチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227pc)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-245mf)、2,2-ジフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(HFE-245pf)、1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(CFCHFCFOCH)、1,1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(CFCFOCHCF)、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパン((CFCHOCH)を含む。
ハイドロフルオロエーテルの好ましい例は、CFCFCFCFOCH3、CFCFCFCFOC、CFCHOCFCHF、CCF(OCH)C、(CFCFCFOCH、(CFCFCFOC、1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(CFCHFCFOCH)、1,1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(CHFCFOCHCF)、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパン((CFCHOCH)を包含する。
【0074】
ハイドロフルオロエーテルは、下記式(B-1)で表わされる化合物、下記式(B-2)で表される化合物、下記式(B-3)で表わされる化合物、下記式(B-4)で表される化合物、(CFCHOCH、(CFCFOCH、CFCHFCFOCH、CCF(OCH)C、(CFCFCFOCH、(CFCFCFOC、CHFCFOCHCF、及びCFCHFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
式(B-1):
F(CFO(CHH (B-1)
[式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。]
式(B-2):
H(CFO(CFF (B-2)
[式中、p及びqは前記と同意義である。]
式(B-3):
H(CFO(CHH (B-3)
[式中、p及びqは前記と同意義である。]
式(B-4):
X(CFCHO(CFH (B-4)
[式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。]
【0075】
ハイドロフルオロエーテルは、下記式(B-5):
21-O-R22 (B-5)
[式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。]
で表される化合物がより好ましい。式(B-5)で表わされる化合物は、R21がパーフルオロブチルであり、R22がメチル又はエチルである、化合物であってよい。
【0076】
少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物は、その構造中に少なくとも1つの塩素原子を含むC2-C4(好ましくはC2-C3)オレフィン化合物である。少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物は、二重結合を1又は2個(好ましくは1個)有する、炭素数2~4の炭化水素において、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つが塩素原子に置換された化合物である。
塩素原子の数は、1~置換可能な最大の数である。塩素原子の数は、例えば、1個、2個、3個、4個、5個等とできる。
少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物は、少なくとも1つ(例えば、1個、2個、3個、4個、5個等)のフッ素原子を含んでもよい。
少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物の例は、CH=CHCl、CHCl=CHCl、CCl=CHCl、CCl=CCl、CFCH=CHCl、CHFCF=CHCl、CFHCF=CHCl、CFCCl=CFCl、CFHCl=CFCl、CFHCl=CFClを包含する。
少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物の好ましい例はCHCl=CHCl、CHFCF=CHCl、CFCH=CHCl、CFCCl=CFClを包含する。
【0077】
非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)は600以下、400以下等とでき、375以下が好ましく、350以下がより好ましく、0が特に好ましい。非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)の下限は1以上であっても5以上であってもよい。
【0078】
重合開始剤
原料モノマーを重合して含フッ素ポリマー(A)を製造する方法では、重合工程において重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、モノマー(M)を重合できるものであればいずれも使用でき、例えば、ラジカル重合開始剤である。重合開始剤は、その構造中にフッ素元素を含有しないことが好ましい。重合開始剤は、0℃~160℃の範囲内の10時間半減期温度を有することが好ましい。重合開始剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
重合工程に使用される重合開始剤の好ましい例は、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パ-オキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド、パーオキシピバル酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ヘキシル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムを包含する。
重合開始剤のより好ましい例は、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド、パーオキシピバル酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ヘキシル、過硫酸アンモニウムを包含する。
【0080】
モノマー(M)を重合させる重合工程
重合反応に用いるモノマー(M)の量は、含フッ素ポリマー(A)における、モノマー(M)に対応する構成単位の割合等に応じて適宜決定できる。例えば、全ての原料モノマーの総モル数に対し、50モル%以上、50モル%超、55モル%以上とでき、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。
【0081】
モノマー(M)に加えフルオロオレフィンを使用する場合、フルオロオレフィンの量は、所望の含フッ素ポリマー(A)における、フルオロオレフィン単位の割合等に応じて適宜決定できる。例えば、全ての原料モノマーの総モル数に対し、50モル%以下、50モル%未満、45モル%以下とでき、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、0モル%が特に好ましい。
【0082】
モノマー(M)及びフルオロオレフィンに加え他のモノマーを使用する場合、他のモノマーの量は、所望の含フッ素ポリマー(A)における、他のモノマーに対応する構成単位の割合等に応じて適宜決定できる。例えば、全ての原料モノマーの総モル数に対し、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、0モル%が特に好ましい。
【0083】
重合反応に用いる非プロトン性溶媒(B)の量は、モノマー(M)の量を100質量%とした場合、20~600質量%の範囲内とでき、好ましくは50~500質量%の範囲内とでき、より好ましくは100~400質量%の範囲内とできる。
【0084】
重合反応に用いる重合開始剤の量は、例えば、反応に供される全てのモノマー(つまり、モノマー(M)とフルオロオレフィンと他のモノマーの合計量)の1gに対して、0.0001g~0.05gの範囲内とでき、好ましくは0.0001g~0.01gの範囲内であり、より好ましくは0.0005g~0.008gの範囲内であってよい。
【0085】
重合反応は、不活性ガスの存在下又は不存在下で実施できるものの、存在下で実施することが、含フッ素ポリマー(A)のフッ化水素含有量をさらに低減できる観点から好ましい。不活性ガスは、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、二酸化炭素等であり、好ましくは窒素、アルゴンであり、より好ましくは窒素である。
【0086】
重合反応の温度は、例えば、-10℃~160℃の範囲内とでき、好ましくは0℃~160℃の範囲内であり、より好ましくは0℃~100℃の範囲内であってよい。
重合反応は、含フッ素ポリマー(A)の主成分となる構成単位に対応するモノマー(M)及び前記非プロトン性溶媒のいずれか低いほうの沸点より20℃高い温度以下、且つ、前記重合開始剤の10時間半減期温度より20℃高い温度以下で行われてもよい。この場合、温度の下限は、例えば-10℃とでき、好ましくは0℃とできる。
【0087】
重合反応の反応時間は、好ましくは、0.5時間~72時間の範囲内、より好ましくは、1時間~48時間の範囲内、さらに好ましくは1時間~30時間の範囲内であってよい。
【0088】
重合反応は、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。重合反応は、不活性ガスの存在下、かつ加圧下で実施されることが、含フッ素ポリマー(A)のフッ化水素含有量をさらに低減できる観点から好ましい。この場合の加圧は0.05~0.2MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0089】
重合反応で生成した含フッ素ポリマー(A)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、フィルター濾過、析出、脱水、吸着、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0090】
樹脂組成物
樹脂組成物は、フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を含有する樹脂組成物である。前記含フッ素ポリマー(A)の含フッ素脂肪族環は、環構成原子として1、2、又は3個のエーテル性酸素原子を有し、当該含フッ素脂肪族環が当該エーテル性酸素原子を複数含むときは当該エーテル性酸素原子は互いに隣り合わない。
前記含フッ素ポリマー(A)は、下記の特性(a)~(d):
(a)240nm~340nmの波長における平均透過率が85%以上
(b)鉛筆硬度がF以上
(c)曲げ強度が30MPa以上
(d)シャルピー衝撃値が5kJ/m以上
を有することが望ましい。
樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)に加え、非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)を含有する。含フッ素ポリマー(C)の樹脂組成物における含有量は含フッ素ポリマー(A)の含有質量に対し1質量%以下である。
【0091】
樹脂組成物は、種々の光学素子(例えば、レンズ、プリズム、ディスプレイ材料、光導波路材)、光学材料用屈折率調整材、光学材料用3次元造形材料、光学デバイス向けシーラント用のフッ素材料等として有用である。
【0092】
樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)を樹脂組成物の質量に対し、例えば0.001~99.9999質量%等とでき、0.5~99.9999質量%含有することが好ましい。
【0093】
樹脂組成物は、溶媒(例えば非プロトン性溶媒(B))を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
樹脂組成物が溶媒(例えば非プロトン性溶媒(B))を含有しないときは、樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)を樹脂組成物の質量に対し、例えば99~99.9999質量%等とでき、好ましくは99.5~99.9999質量%である。
樹脂組成物が溶媒(例えば非プロトン性溶媒(B))を含有するときは、樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)を樹脂組成物の質量に対し、例えば0.001~60質量%等とでき、好ましくは0.001~40質量%、より好ましくは0.001~30質量である。
【0094】
樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(C)を含有し、その含有量は樹脂組成物の質量に対し、1質量%以下であり得、0.0001~1質量%が好ましい。
また、含フッ素ポリマー(C)の含有量は、含フッ素ポリマー(A)の質量に対し、1質量%以下であることが好ましく、0.0001~1質量%であることがより好ましい。
【0095】
樹脂組成物に含有される含フッ素ポリマー(A)には、特に断りがない限り、含フッ素ポリマー(A)に関する前記説明が適用される。前述のように、樹脂組成物に含有される含フッ素ポリマー(A)としては、(1)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位のみからなる含フッ素ポリマー(a)、並びに(2)前記含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含み及びフルオロオレフィン単位を含む含フッ素ポリマー(b)を併用すること(例えば含フッ素ポリマー(a)と含フッ素ポリマー(b)の混合物)が望ましい。
【0096】
含フッ素ポリマー(A)において、含フッ素ポリマー(a)は、含フッ素ポリマー(A)総質量の、例えば50質量%以下、40質量%以下、0.0001~50質量%、0.0001~40質量%等であってよく、0.0001~30質量%であることが好ましく、0.0001~20質量%であることがより好ましい。
【0097】
含フッ素ポリマー(A)において、含フッ素ポリマー(b)は、含フッ素ポリマー(A)総質量の、例えば50質量%以上、60質量%以上、50~99.9999質量%、60~99.9999質量%等であってよく、70~99.9999質量%であることが好ましく、80~99.9999質量%であることがより好ましい。
【0098】
含フッ素ポリマー(C)は、非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマーである。ここでの非プロトン性溶媒としては、前記説明した各種の非プロトン性溶媒のいずれであってもよく、好ましい非プロトン性溶媒についても前記説明が適用できる。ここでの非プロトン性溶媒はパーフルオロベンゼンがさらに好ましい。また、ここでの非プロトン性溶媒は、樹脂組成物が非プロトン性溶媒(B)を含有する場合は、当該非プロトン性溶媒(B)と同じであってもなくてもよいが、同じであることが好ましい。
「実質的に溶解しない」とは、次の溶解条件において目視で溶け残りが確認できる場合をいう。一方、目視で溶け残りが確認できない場合は実質的に溶解したとする。溶解条件は、5gの含フッ素ポリマーを、95gの非プロトン性溶媒(例えばパーフルオロベンゼン)に、50℃、1日撹拌条件下で処理するものとする。処理物を目開き0.22μmのメンブランフィルターで加圧濾過処理し、取得された濾過残渣を含フッ素ポリマー(C)と判断できる。
【0099】
含フッ素ポリマー(C)は構成単位としてフルオロオレフィン単位を主成分として含む(全構成単位に対し50モル%以上含む)ものが好ましい。含フッ素ポリマー(C)に含まれるフルオロオレフィン単位については、特に断りがない限り、前述のフルオロオレフィン単位の説明を適用できる。含フッ素ポリマー(C)に含まれるフルオロオレフィン単位は、含フッ素ポリマー(b)に含まれるフルオロオレフィン単位と同じであることが好ましい。
【0100】
含フッ素ポリマー(C)に含まれるフルオロオレフィン単位の割合は、含フッ素ポリマー(C)の全ての構成単位に対し、例えば50モル%以上、60モル%以上等とでき、65モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
【0101】
含フッ素ポリマー(C)は、主成分として含まれるフルオロオレフィン単位に加え、他の構成単位を含んでもよい。他の構成単位としては、含フッ素脂肪族環を有する前記構成単位、CH=CHRf(RfはC1-C10フルオロアルキル基を表す)単位、アルキルビニルエーテル単位(例:シクロヘキシルビニルエーテル単位、エチルビニルエーテル単位、ブチルビニルエーテル単位、メチルビニルエーテル単位)、アルケニルビニルエーテル単位(例:ポリオキシエチレンアリルエーテル単位、エチルアリルエーテル単位)、反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物単位(例:ビニルトリメトキシシラン単位、ビニルトリエトキシシラン単位、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン単位)、アクリル酸エステル単位(例:アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位)、メタアクリル酸エステル単位(例:メタアクリル酸メチル単位、メタクリル酸エチル単位)、ビニルエステル単位(例:酢酸ビニル単位、安息香酸ビニル単位、「ベオバ」(シェル社製のビニルエステル)単位)等が挙げられ、含フッ素脂肪族環を有する構成単位が好ましい。他の構成単位は1種でも2種以上でもよい。
含フッ素ポリマー(C)に含まれる他の構成単位の割合は、含フッ素ポリマー(C)の全ての構成単位に対し、例えば50モル%以下、40モル%以下等とでき、35モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
【0102】
樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)及び含フッ素ポリマー(C)に加えて非プロトン性溶媒(B)を含有してもよいし、含有しなくてもよい。非プロトン性溶媒(B)については、特に断りがない限り、前述の非プトロン性溶媒の説明を適用できる。
【0103】
樹脂組成物が非プロトン性溶媒(B)を含有する場合、非プロトン性溶媒(B)の含有量は、樹脂組成物の質量に対し、40~99.999質量%等とでき、好ましくは60~99.999質量%、より好ましくは70~99.999質量%である。
【0104】
樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)、含フッ素ポリマー(C)及び非プロトン性溶媒(B)とは異なる他の物質を含有してもよい。他の物質としては、含フッ素カルボン酸、非フッ素カルボン酸、水等を挙げることができる。樹脂組成物における他の物質の含有量は含フッ素ポリマー(A)の含有量に対し、0.1質量%以下、0.01質量%以下等であってよい。
【0105】
樹脂組成物の製造方法
モノマー(M)とそれ以外のモノマーを重合させると、含フッ素ポリマー(A)に加えて含フッ素ポリマー(A)以外の含フッ素ポリマーも副生し得る。含フッ素ポリマー(A)以外の含フッ素ポリマーは、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含まない含フッ素ポリマーであり、モノマー(M)以外のモノマー同士が重合することで生成し得る。含フッ素ポリマー(A)の取得を目的とする場合、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含まない含フッ素ポリマー含有量の低減が望まれる。含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含まない含フッ素ポリマーの代表的なものは含フッ素ポリマー(C)である。
【0106】
本開示の樹脂組成物の製造方法は、含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)を非プトロン性溶媒(B)と接触させて含フッ素ポリマー(A)を溶解させて、含フッ素ポリマー(A)溶解液を取得する工程(溶解液取得工程)、及び前記含フッ素ポリマー(A)溶解液を濾過して、前記含フッ素ポリマー(C)を分離し、濾液を取得する工程(濾液取得工程)を含む。
【0107】
含フッ素ポリマー(A)、含フッ素ポリマー(C)、及び非プロトン性溶媒(B)については、特に断りがない限り、前述のこれらに関する説明を適用できる。
【0108】
溶解液取得工程において使用される含フッ素ポリマー(A)は、含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)であればよく、モノマー(M)とそれ以外のモノマー(好ましくはフルオロオレフィン単位)を重合させて生じる重合物であることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)に含有される含フッ素ポリマー(C)の量は、含フッ素ポリマー(A)及び含フッ素ポリマー(C)の総質量に対し、1~40質量%であってよく、好ましくは1~25質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0109】
含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)は、非プロトン性溶媒(B)と接触させられることにより、含フッ素ポリマー(A)は溶解し、含フッ素ポリマー(C)は溶解せずに析出し、含フッ素ポリマー(A)が溶解した液が得られる。
【0110】
含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)に適用される非プロトン性溶媒(B)は、含フッ素ポリマー(C)を実質的に溶解しないものであればよい。含フッ素ポリマー(A)に適用される非プロトン性溶媒(B)の量は、含フッ素ポリマー(A)が溶解する量であればよく、含フッ素ポリマー(A)及び含フッ素ポリマー(C)の総質量に対し、例えば400質量%以上、600質量%以上等とでき、好ましくは400~10000質量%、より好ましくは600~5000質量%である。溶解液取得工程の温度は、例えば40~180℃とでき、好ましくは50~100℃、より好ましくは50~80℃である。溶解液取得工程は、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0111】
取得された含フッ素ポリマー(A)溶解液は、次の濾液取得工程に供される。濾液取得工程では、含フッ素ポリマー(A)溶解液が濾過により固液分離されて、含フッ素ポリマー(A)は濾液として取得される。含フッ素ポリマー(C)は非プロトン性溶媒(B)に溶解しないため、この工程では残渣として取得され、含フッ素ポリマー(A)から分離される。
【0112】
濾過の手法は、固液分離できる方法であれば特に制限されず、例えば自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等であって良く、好ましくは加圧濾過である。濾材は、固液分離できる濾材であれば特に制限されず、例えば濾紙、ガラス繊維フィルター、メンブランフィルター、焼結フィルター等であってよく、好ましくはメンブランフィルターである。フィルターの目開きは、10~0.001μm、10~0.01μmであり得、10~0.1μmが好ましい。
濾液取得工程の温度は、例えば0~50℃とでき、好ましくは10~40℃、より好ましくは20~30℃である。
【0113】
取得された濾液を所望の樹脂組成物とするために、必要に応じて、濾液に含有される非プロトン性溶媒(B)の全量又は一部が濾液から除去されてよい。濾液の除去は公知の非プロトン性溶媒を除去する方法により実施し得る。
【0114】
樹脂組成物の製造方法は、溶解及び濾過という簡便な方法で、含フッ素ポリマー(C)を含有する含フッ素ポリマー(A)から、非プロトン性溶媒(B)に溶解した、含フッ素ポリマー(C)が低減された含フッ素ポリマー(A)を得ることができる。
【0115】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能であることが理解されるであろう。
【実施例0116】
以下、実施例等によって本開示の実施態様を更に詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。以下において「Mw」は質量平均分子量、「Mn」は数平均分子量を意味する。
【0117】
平均透過率
日立分光光度計U-4100を用いてサンプルの所定の波長(240nm~340nm)における平均透過率を測定した。サンプルは平均厚み1mmの平板とする。検出器としては積分球検知器を用いた。
【0118】
鉛筆硬度
鉛筆硬度はJIS K5600-5-4:1999に準拠して測定した。測定器として、鉛筆硬度測定器5800(BYK Gardner製)を使用し、鉛筆としてUni(三菱鉛筆社製)を使用して測定した。サンプルは平均厚み1mmの平板とした。
【0119】
曲げ強度
万能材料試験機5966型(インストロン社製)により1mm/分の速度で曲げ試験を行い、JIS K7171に準じて、曲げ試験片の曲げ強度を測定した。
【0120】
シャルピー衝撃値
シャルピー衝撃値は、JIS K7111-1に準拠し、デジタル衝撃試験機DG-UB型(東洋精機製作所製)により、打撃方向:フラットワイズで測定した値とした。
【0121】
実施例1
300mLのSUS316L製耐圧容器に、モノマー(M1-1)の20gと、溶媒としてのハイドロフルオロエーテル(HFE7200)の290gと、ジ(ω-ハイドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイドのパーフルオロヘキサン溶液(8質量%)の2.62gとを仕込んだ後、ドライアイスアセトン浴で冷却し、窒素置換と真空脱気を5回繰り返した。そこへテトラフルオロエチレン(モノマー(M11-1))の14.0gを撹拌しながら添加した。テトラフルオロエチレンを全量添加した後、内温15℃で20時間重合反応を行い、含フッ素ポリマーを15.5質量%含む組成物を製造した。得られた組成物は白濁状態であった。上記組成物へアセトン150.0gを滴下して再沈殿を行い、90℃で一日乾燥した後、含フッ素ポリマー(A)51.1gを得た。
【0122】
得られたポリマーの30.0gをパーフルオロベンゼン570gに50℃で1日撹拌して溶解させ、白濁溶液を得た(溶解液取得工程)。白濁溶液の300gを目開き1μmのメンブランフィルターを使用して加圧濾過し、透明な濾液(本開示の樹脂組成物)と濾過残渣とに分離した(濾液取得工程)。得られた濾液を乾燥させたところ含フッ素ポリマー(A)(Mw:172830、Mn:72671、構成単位(A1-1):構成単位(A11-1)=65:35(モル比)、Tg:96℃、1%分解温度:386℃)13.6g(本開示の組成物)を得た。また濾過残渣を乾燥させて非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)(構成単位(A1-1):構成単位(A11-1)=20:80(モル比))1.3gを得た。
【0123】
濾液から得られた含フッ素ポリマー(A)の5.0gをパーフルオロベンゼン95.0gへ50℃で1日撹拌して溶解させ、目開き0.22μmのメンブランフィルターを使用して加圧濾過したところ、未溶解分量(濾過残渣;実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C))は含フッ素ポリマー(A)質量の0.1質量%未満であり、実質的に存在しなかった。
【0124】
濾液から得られた含フッ素ポリマー(A)の物性値:
・波長240nm~340nmの平均透過率:88.9%
・鉛筆硬度:2H
・曲げ強度:62.2MPa
・シャルピー衝撃値:12kJ/m
【0125】
濾液から得られた含フッ素ポリマー(A)の平均厚み1mmの平板を作製し、同平板を原料として切削加工によりフレネルレンズを作製した。KEYENCEレーザー顕微鏡VKX-1000でフレネルレンズ表面の凹凸構造を観察したところ、切削面の面粗さSaは29nm、Sqは44nmであった。同レンズを高さ50cmの位置から実験台上に落としたところ、レンズ形状を維持したままであった。
【0126】
実施例2
実施例1で得られた白濁溶液の300gを目開き3μmのメンブランフィルターを使用して加圧濾過し、透明な濾液と濾過残渣とに分離した。得られた濾液を乾燥させたところ含フッ素ポリマー(A)(Mw:175230、Mn:73331、構成単位(A1-1):構成単位(A11-1)=65:35(モル比))14.0gを得た。また濾過残渣を乾燥させて非プロトン性溶媒に実質的に溶解しない含フッ素ポリマー(C)(構成単位(A1-1):構成単位(A11-1)=20:80(モル比))1.0gを得た。
【0127】
さらに濾液から得られた含フッ素ポリマー(A)の5.0gをパーフルオロベンゼン95.0gへ50℃で1日撹拌して溶解させ、目開き0.22μmのメンブランフィルターを使用して加圧濾過したところ、未溶解分量は含フッ素ポリマー(A)質量の0.9質量%であった。
濾液から得られた含フッ素ポリマー(A)の物性値:
・波長240nm~340nmの平均透過率:85.2%
・鉛筆硬度:2H
・曲げ強度:58.7MPa
・シャルピー衝撃値:11kJ/m
【0128】
比較例1
実施例1において、アセトン中で再沈殿し、90℃で一日乾燥して得られた含フッ素ポリマー(A)の5.0gをパーフルオロベンゼン95.0gへ50℃で1日撹拌して溶解させ、目開き0.22μmのメンブランフィルターを使用して加圧濾過したところ、未溶解分量は含フッ素ポリマー(A)質量の9.8質量%であった。
含フッ素ポリマー(A)の物性値:
・波長240nm~340nmの平均透過率:20.3%
【0129】
比較例2
300mLのSUS316L製耐圧容器に、モノマー(M1-1)の60gと、溶媒としてのハイドロフルオロエーテル(HFE7200)の240g、ジ(ω-ハイドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイドのパーフルオロヘキサン溶液(8質量%)の3.10gを仕込んだ後、ドライアイスアセトン浴で冷却し、窒素置換と真空脱気を5回繰り返した。その後、内温15℃で20時間重合反応を行い、含フッ素ポリマーを15.6質量%を含む組成物を製造した。得られた組成物は透明であった。上記組成物へアセトン120.0gを滴下して再沈殿を行い、90℃で一日乾燥した後、含フッ素ポリマー(A)(Mw:96314、Mn:45437、Tg:130℃、1%分解温度:330℃)47.1gを得た。
【0130】
含フッ素ポリマー(A)の物性値:
・波長240nm~340nmの平均透過率:91.2%
・鉛筆硬度:2H
・曲げ強度:25.0MPa
・シャルピー衝撃値:1.1kJ/m
【0131】
含フッ素ポリマー(A)の平均厚み1mmの平板を作製し、同平板を原料として切削加工によりフレネルレンズを作製した。KEYENCEレーザー顕微鏡VKX-1000でフレネルレンズ表面の凹凸構造を観察したところ、切削面の面粗さSaは74nm、Sqは118nmであった。同レンズを高さ50cmの位置から実験台上に落としたところ、割れてしまったためレンズとして使用することは不可であった。
【0132】
比較例3
構成単位(A2-1)のホモポリマーを使用して各種物性を測定した。
構成単位(A2-1)のホモポリマーの物性値:
・波長240nm~340nmの平均透過率:90.5%
・鉛筆硬度:HB
・曲げ強度:70.0MPa
・シャルピー衝撃値:未測定
【0133】
この重合体の平均厚み1mmの平板を作製し、同平板を原料として切削加工によりフレネルレンズを作製した。KEYENCEレーザー顕微鏡VKX-1000でフレネルレンズ表面の凹凸構造を観察したところ、切削面の面粗さSaは111nm、Sqは176nmであった。同レンズを高さ50cmの位置から実験台上に落としたところ、レンズ形状を維持したままであったが、表面に傷が入ることを確認した。
【0134】
比較例4
構成単位(A3-1)及び構成単位(M11-1)からなる共重合体(TeflonTM AF1600(構成単位(A3-1):構成単位(M11-1)=65:35(モル比))を使用して各種物性を測定した。
構成単位(A3-1)及び構成単位(M11-1)からなる共重合体の物性値:
・波長240nm~340nmの平均透過率:84.3%
・鉛筆硬度:2B
・曲げ強度:未測定
・シャルピー衝撃値:>23kJ/m(当該エネルギーでも破壊されなかった)
【0135】
この共重合体の平均厚み1mmの平板を作製し、同平板を原料として切削加工によりフレネルレンズを作製した。KEYENCEレーザー顕微鏡VKX-1000でフレネルレンズ表面の凹凸構造を観察したところ、切削面の面粗さSaは95nm、Sqは151nmであった。同レンズを高さ50cmの位置から実験台上に落としたところ、レンズ形状を維持したままであったが、表面に傷が入ることを確認した。