(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167699
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】情報処理装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/3287 20190101AFI20241127BHJP
G06F 1/3206 20190101ALI20241127BHJP
【FI】
G06F1/3287
G06F1/3206
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083951
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚喜
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 康大
(72)【発明者】
【氏名】佐野 賢吾
【テーマコード(参考)】
5B011
【Fターム(参考)】
5B011EA04
5B011KK01
5B011MA01
5B011MA03
(57)【要約】
【課題】熱保護機能を有する情報処理装置のユーザビリティを向上する。
【解決手段】温度センサは温度を検出し。コントローラは温度に基づいて自装置の動作モードを制御し、動作モードが標準モードであって、温度が第1基準温度を超えるとき、コンピュータシステムの動作モードを熱保護モードに変更し、動作モードが熱保護モードであって、温度が第2基準温度を超えるとき、コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更し、動作モードが休止モードであって、温度が第3基準温度を超えるとき、自装置の動作を停止し、熱保護モードは、標準モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、休止モードは、熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、第1基準温度、第2基準温度および第3基準温度の順に高い温度が設定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムと、
温度を検出する温度センサと、
前記温度に基づいて自装置の動作モードを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記動作モードが標準モードであって、前記温度が第1基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを熱保護モードに変更し、
前記動作モードが前記熱保護モードであって、前記温度が第2基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更し、
前記動作モードが休止モードであって、前記温度が第3基準温度を超えるとき、自装置の動作を停止し、
前記熱保護モードは、前記標準モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、
前記休止モードは、前記熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、
前記第1基準温度、前記第2基準温度および前記第3基準温度の順に高い温度が設定される
情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記温度が第1基準温度以下であるとき、前記コンピュータシステムの動作状況に基づいて前記動作モードを前記標準モードと低消費電力モードとの間で切り替え、
前記動作モードが前記低消費電力モードであって、前記温度が前記第1基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを前記休止モードに変更し、
前記休止モードおよび前記低消費電力モードにおいて、表示情報の出力が制限され、
前記低消費電力モードは、前記標準モードよりも消費電力が少なく、前記休止モードよりも消費電力が多い動作モードである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
自装置に生ずる熱を放熱する放熱部を備え、
前記コントローラは、前記熱保護モードにおいて、前記標準モードよりも活発に前記放熱部を動作させ、
前記休止モードにおいて、前記放熱部の動作を停止させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
自装置に生ずる熱を放熱する放熱部を備え、
前記コントローラは、前記低消費電力モードおよび前記休止モードにおいて、前記放熱部の動作を停止させる
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記動作モードが休止モードであって、起動指示が検出され、前記温度が第4基準温度以下であるとき、
前記動作モードを前記標準モードに変更し、
前記第4基準温度は、前記第1基準温度以下である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記動作モードが休止モードであって、起動指示が検出され、前記温度が第5基準温度以下であるとき、
前記動作モードを前記熱保護モードに変更し、
前記第5基準温度は、前記第1基準温度よりも高く、前記第2基準温度以下である
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータシステムと、
温度を検出する温度センサと、
前記温度に基づいて自装置の動作モードを制御するコントローラと、を備える情報処理装置の制御方法であって、
前記情報処理装置は、
前記動作モードが標準モードであって、前記温度が第1基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを熱保護モードに変更し、
前記動作モードが前記熱保護モードであって、前記温度が第2基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更し、
前記動作モードが休止モードであって、前記温度が第3基準温度を超えるとき、自装置の動作を停止し、
前記熱保護モードは、前記標準モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、
前記休止モードは、前記熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、
前記第1基準温度、前記第2基準温度および前記第3基準温度の順に高い温度が設定される
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および制御方法に関し、例えば、高温時に動作を制限する熱保護に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセッサは、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)をはじめとする各種の情報処理装置の中核的な処理装置である。一般に、プロセッサは、処理量が多いほど多くの電力を消費する。電力の消費は発熱を伴うので、プロセッサ自体または周囲の部材の温度を上昇させる。過度な温度上昇は、情報処理装置自体の損傷の原因となることや、ユーザが所持できなくなることがある。そのため、情報処理装置は、熱保護(サーマル・プロテクション、Thermal Protection)機構を備えることがある。熱保護機構は、一定の動作温度範囲よりも温度が高いとき、通常よりも処理量を抑制した動作モードをシステムに適用して温度上昇を抑制する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発熱性デバイスは、最大消費電力値の変更が可能なプロセッサを内蔵する。当該デバイスは、プロセッサの消費電力値と温度値を定期的に計測する。計測された複数個の消費電力値の集合を代表する値が所定の閾値を超え、かつ、温度値が所定の閾値を超えたときに当該プロセッサの発熱量の高い状態が一定時間にわたって続いたことを検出し、当該プロセッサの最大消費電力値を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱保護機能によれば、さらに温度が高くなるとシステムを停止させることがある。しかしながら、プロセッサには、最低駆動周波数(LFM:Low Frequency Mode)が設定される。LFMは、機能を実現するためのクロック周波数の最小値である。プロセッサはLFM以上のクロック周波数でなければ動作しないため、機能を維持するためにLFMに相応した一定量以上の発熱が常に生じる。高機能のプロセッサほど発熱量が大きいので、熱保護機構により早期に動作が停止する可能性が高くなる。他方、完全に停止させた後、所定の動作温度範囲内に温度が低下しないと、システムの機能が回復しなくなる。また、システムの機能を回復させるためには再起動ならびに、その指示を要する。
【0006】
使用状態によっては、通常よりも消費電力が少ない省電力モードがシステムに適用されることがある。省電力モードでは画面表示ならびに画面表示に係る処理が停止される。熱保護機能に従い一律に高温度時の動作モードが選択されると、選択された動作モードに従い画面表示が再開することがある。予期しない画面表示は、ユーザに対し違和感を与えることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記の課題を解決するためになされたものであり、本願の一態様に係る情報処理装置は、コンピュータシステムと、温度を検出する温度センサと、前記温度に基づいて自装置の動作モードを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記動作モードが標準モードであって、前記温度が第1基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを熱保護モードに変更し、前記動作モードが前記熱保護モードであって、前記温度が第2基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更し、前記動作モードが休止モードであって、前記温度が第3基準温度を超えるとき、自装置の動作を停止し、前記熱保護モードは、前記標準モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、前記休止モードは、前記熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、前記第1基準温度、前記第2基準温度および前記第3基準温度の順に高い温度が設定される。
【0008】
上記の情報処理装置において、前記コントローラは、前記温度が第1基準温度以下であるとき、前記コンピュータシステムの動作状況に基づいて前記動作モードを前記標準モードと低消費電力モードとの間で切り替え、前記動作モードが前記低消費電力モードであって、前記温度が前記第1基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを前記休止モードに変更し、前記休止モードおよび前記低消費電力モードにおいて、表示情報の出力が制限され、前記低消費電力モードは、前記標準モードよりも消費電力が少なく、前記休止モードよりも消費電力が多い動作モードであってもよい。
【0009】
上記の情報処理装置において、自装置に生ずる熱を放熱する放熱部を備え、前記コントローラは、前記熱保護モードにおいて、前記標準モードよりも活発に前記放熱部を動作させ、前記休止モードにおいて、前記放熱部の動作を停止させてもよい。
【0010】
上記の情報処理装置は、自装置に生ずる熱を放熱する放熱部を備え、前記コントローラは、前記低消費電力モードおよび前記休止モードにおいて、前記放熱部の動作を停止させてもよい。
【0011】
上記の情報処理装置は、前記コントローラは、前記動作モードが休止モードであって、起動指示が検出され、前記温度が第4基準温度以下であるとき、前記動作モードを前記標準モードに変更し、前記第4基準温度は、前記第1基準温度以下であってもよい。
【0012】
上記の情報処理装置において、前記コントローラは、前記動作モードが休止モードであって、起動指示が検出され、前記温度が第5基準温度以下であるとき、前記動作モードを前記熱保護モードに変更し、前記第5基準温度は、前記第1基準温度よりも高く、前記第2基準温度以下であってもよい。
【0013】
本願の第2態様に係る制御方法は、コンピュータシステムと、温度を検出する温度センサと、前記温度に基づいて自装置の動作モードを制御するコントローラと、を備える情報処理装置の制御方法であって、前記情報処理装置は、前記動作モードが標準モードであって、前記温度が第1基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを熱保護モードに変更し、前記動作モードが前記熱保護モードであって、前記温度が第2基準温度を超えるとき、前記コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更し、前記動作モードが休止モードであって、前記温度が第3基準温度を超えるとき、自装置の動作を停止し、前記熱保護モードは、前記標準モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、前記休止モードは、前記熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、前記第1基準温度、前記第2基準温度および前記第3基準温度の順に高い温度が設定されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本願の実施形態によれば、熱保護機能を有する情報処理装置のユーザビリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置の機能構成例を示す概略ブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るモード制御の例を示すモード遷移図である。
【
図4】本実施形態に係る温度制御テーブルの一例を示す表である。
【
図5】本実施形態に係る動作パラメータを例示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本願の実施形態に係る情報処理装置1の概要について説明する。以下の説明では、情報処理装置1がPCである場合を主とする。情報処理装置1は、必ずしもPCに限られず、スマートフォン、タブレット端末装置、などとして構成されてもよい。
【0017】
情報処理装置1は、温度センサにより検出された温度に基づいて自装置の動作モードを制御する。情報処理装置1は、制御した動作モードが標準モードであって、検出された温度が第1基準温度を超えるとき、その動作モードを熱保護モードに変更する。熱保護モードは、標準モードよりも消費電力が少ない動作モードである。情報処理装置1は、動作モードが熱保護モードであって、検出された温度が第2基準温度を超えるとき、動作モードを休止モードに変更する。休止モードは、熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードである。第2基準温度は、第1基準温度よりも高い温度に設定されている。情報処理装置1は、動作モードが休止モードであって、検出された温度が第3基準温度を超えるとき、自装置の動作を停止する。第3基準温度は、第2基準温度よりも高い温度に設定されている。
【0018】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。情報処理装置1は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、ビデオサブシステム13と、ディスプレイ14と、チップセット21と、ROM22と、補助記憶装置23と、オーディオシステム24と、通信モジュール25と、入出力インタフェース26と、EC31と、入力デバイス32と、電源回路33と、バッテリ34と、温度センサ351、駆動回路352と、放熱ファン353と、電源スイッチ36と、を備える。
【0019】
プロセッサ11は、ソフトウェア(プログラム)に記述された命令で指示される種々の演算処理を実行する中核的な処理装置である。プロセッサ11が実行する処理には、メインメモリ12、補助記憶装置23などの記憶媒体とのデータの読み書き、他のデバイスとの入出力などが含まれる。プロセッサ11には、少なくとも1個のCPUが含まれる。CPUは、情報処理装置1全体の動作を制御する。CPUは、例えば、OS(Operating System)、ファームウェア、デバイスドライバ、ユーティリティ、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」と呼ぶこともある)など、プログラムに基づく処理を実行する。なお、各種のプログラムに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「プログラムを実行する」、「プログラムの実行」などと呼ぶことがある。
【0020】
メインメモリ12は、プロセッサ11の実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。プロセッサ11とメインメモリ12は、ホストシステムをなす最小限のハードウェアに相当する。ホストシステムは、情報処理装置1の中核をなすコンピュータシステムである。
【0021】
ビデオサブシステム13は、画像表示に関連する機能を実現するためのサブシステムであり、ビデオコントローラを含む。ビデオコントローラは、プロセッサ11からの描画命令を処理し、得られた描画情報をビデオメモリに書き込むとともに、ビデオメモリからこの描画情報を読み出し、表示情報を示す表示データとしてディスプレイ14に出力する(画像処理)。ビデオサブシステム13は、1個または複数個のGPU(Graphic Processing Unit)またはコプロセッサを含んで構成されてもよい。GPUは、主に実時間画像処理、その他の並列演算処理を担うプロセッサである。GPUは、CPUと一部の処理を分担することがある。GPUは、プロセッサ11として機能するCPUと一体化し、同一のコアに形成されてもよいし、CPUとは別個のコアに形成されてもよい。GPUは、画像処理以外の並列演算処理を実行することも、CPUと一部の処理を分担することもある。
【0022】
ディスプレイ14は、ビデオサブシステム13から入力される表示データに基づく表示画面を表示する。ディスプレイ14は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode、有機発光ダイオード)ディスプレイなどのいずれであってもよい。
【0023】
チップセット21は、複数のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力できるように接続可能とする。コントローラは、例えば、USB(Universal Serial Bus)、シリアルATA(AT Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、および、LPC(Low Pin Count)などのバスコントローラのいずれか1個または組み合わせである。接続先のデバイスには、ROM22、補助記憶装置23、オーディオシステム24、通信モジュール25、入出力インタフェース26、および、EC31が含まれる。
【0024】
ROM(Read Only Memory)22は、主にシステムファームウェア、EC31その他のデバイスの動作を制御するためのファームウェアなどを記憶する。ROM22は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュROMなどのいずれでもよい。
【0025】
補助記憶装置23は、プロセッサ11その他のデバイスの処理に用いられる各種のデータ、または、それらの処理により取得された各種のデータ、各種のプログラムなどを記憶する。補助記憶装置23は、例えば、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などのいずれか1個またはいずれかの組み合わせであってもよい。
【0026】
オーディオシステム24は、マイクロホンとスピーカ(図示せず)が接続され、音声データの記録、再生および出力を行う。なお、マイクロホンとスピーカは、情報処理装置1に内蔵されてもよいし、情報処理装置1とは別体であってもよい。
【0027】
通信モジュール25は、無線または有線で通信ネットワークに接続する。通信モジュール25は、通信ネットワークに接続される他の機器との間で各種のデータを通信する。通信モジュールは、例えば、無線LAN(Local Area Network)を含み、所定の無線通信方式(例えば、IEEE802.11)に従って機器間で各種のデータを送受信可能とする。無線LANでは、機器間の通信がアクセスポイントを経由して実行される。
【0028】
入出力インタフェース26は、周辺機器など各種のデバイスと有線または無線で接続する。入出力インタフェース26は、例えば、USBの規定に従って有線でデータを入出力するためのコネクタである。
【0029】
EC(Embedded Controller)31は、情報処理装置1のシステムの動作状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)を監視し、制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。EC31は、プロセッサ11とは別個にCPU、ROM、RAM、複数チャネルのA/D(Analog-to-Digital)入力端子、D/A(Digital-to-Analog)出力端子、タイマおよびデジタル入出力端子(図示せず)を備える。EC31の入出力端子には、例えば、入力デバイス32、電源回路33、温度センサ351、駆動回路352および電源スイッチ36などが接続される。
【0030】
入力デバイス32は、ユーザの操作を検出し、検出した操作に応じた操作信号をEC31に出力する。入力デバイス32は、例えば、キーボード、タッチパッド、などのいずれかの組み合わせを備える。入力デバイス32は、タッチセンサであってもよく、ディスプレイ14と重なり合い、タッチパネルとして構成されてもよい。
【0031】
電源回路33は、外部電源、または、バッテリ34から供給される直流電力の電圧を、情報処理装置1を構成する各デバイスの動作に要する電圧に変換し、変換した電圧を有する電力を供給先のデバイスに供給する。電源回路33は、EC31の制御に従って、電力供給を実行する。電源回路33は、自器に供給される電力の電圧を変換する変換器と、電圧が変換された電力をバッテリ34に充電する給電器を備える。給電器は、外部電源から供給される電力のうち、各デバイスにおいて消費されずに残された電力をバッテリ34に充電する。外部電源から電力が供給されない場合、または、外部電源から供給される電力が不足する場合には、バッテリ34から放電される電力を、動作電力として各デバイスに供給する。
【0032】
バッテリ34は、電源回路33を用いて電力を充電または放電する。バッテリ34は、例えば、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、などのいずれでもよい。
温度センサ351、駆動回路352および放熱ファン353は、自装置に生じた熱を放熱する放熱部を構成する。
温度センサ351は、自部の温度を検出し、検出した温度を示す温度信号をEC31に出力する。温度センサ351は、例えば、プロセッサ11に隣接して設置させておくことで、プロセッサ11の温度を検出する。
【0033】
駆動回路352は、EC31の制御に従って、電源回路33から自部に供給される電力を放熱ファン353に供給する。これにより、放熱ファン353の動作が制御される。
放熱ファン353は、情報処理装置1に発生する熱を放熱する。放熱ファン353は、駆動回路352から供給される電力を消費してフィン(羽)を回転させるモータを備え、空気を情報処理装置1の筐体内に流入させる。流入された空気は情報処理装置1の各部と熱交換したうえで、筐体の外に排出される。
【0034】
電源スイッチ36は、押下操作が受け付けられる都度、情報処理装置1の全体に対する電力の供給状態として、電源投入(Power ON)および電源断(Power OFF)のいずれかに制御する。押下操作が受け付けられるとき、電源スイッチ36は、押下を示す押下信号をEC31に出力する。EC31は、情報処理装置1が電源断であって電源スイッチ36から押下信号が入力されるとき、電源回路33に対し、情報処理装置1の各デバイスへの電力供給を開始させる(電源投入)。プロセッサ11は、自部への電力供給の開始を検出するとき、ROM22からシステムファームウェアを読み取り、メインメモリ12にロードし、システムファームウェアに記述された指令に従って起動処理(ブート)を実行する。起動処理において、プロセッサ11は、補助記憶装置23に退避させていたデータをメインメモリ12にロードする。その後、プロセッサ11は、OSを起動し、OSの起動が完了した後、補助記憶装置23、通信モジュール25、入出力インタフェース26などのデバイスの制御に係るデバイスドライバの実行を開始する。
【0035】
他方、情報処理装置1に電力が供給され、かつ、電源スイッチ36から押下信号が入力されるとき、EC31は、プロセッサ11に停止処理(シャットダウン)を実行させる。プロセッサ11は、停止処理において、その時点で作業領域に存在するデータを補助記憶装置23に退避させる。プロセッサ11は、データの退避を終了した後、その時点で実行しているアプリ、デバイスドライバ、その他のプログラムによる処理を停止する。その後、プロセッサ11は、停止処理の完了をEC31に通知する。EC31は、電源回路33に情報処理装置1の各デバイスへの電力供給を停止させる。
【0036】
次に、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成例を示す概略ブロック図である。
情報処理装置1は、ホストシステム100を備える。
ホストシステム100は、プロセッサ11が各種のプログラムを実行し、メインメモリ12、チップセット21、通信モジュール25、入出力インタフェース、および、EC31などのハードウェアと協働して、その機能を実現する。
【0037】
ホストシステム100は、OSを実行し、アプリなど、他のプログラムの実行管理、メモリ、プロセスなどの演算資源の管理、各デバイスとの入出力の管理などを行うコンピュータシステムである。ホストシステム100は、自部が定めた動作モードに従って動作する。ホストシステム100は、プロセッサ11のレジスタに予め記憶させておいた電力制御パラメータセットを参照し、当該動作モードに係る電力制御パラメータを特定する。ホストシステム100は、特定した電力制御パラメータを用いて消費電力を制御する。また、EC31は、自部のROMに予め記憶させておいた駆動パラメータセットを参照し、当該動作モードに係る駆動パラメータを特定する。EC31は、特定した駆動パラメータを用いて駆動回路352に対し、放熱ファン353を駆動させる。動作モードの例については、後述する。
【0038】
ホストシステム100は、温度センサ351から入力される温度信号に示される温度に基づいて自装置の動作モードを制御する。情報処理装置1がとりうる動作モードは、標準モード、モダンスタンバイ、熱保護モードおよびハイバネーションを含む。次に、本実施形態に係るモード制御の例について説明する。
図3は、本実施形態に係るモード制御の例を示すモード遷移図である。
図3の例では、標準モード、モダンスタンバイ、熱保護モード、ハイバネーションよび非作動の相互間で、変更前後の動作モードの組と、組ごとの遷移条件を示す。
【0039】
非作動とは、ホストシステム100が動作していない状態である。非作動を起点とする変更後の動作モードとして標準モードと熱保護モードが設定されている。標準モードは、情報処理装置1の仕様から期待される機能を提供する動作モードである。標準モードは、その時点における温度が予め定めた標準動作温度の範囲内であるときに提供される。熱保護モードは、標準モードよりも消費電力が少ない動作モードである。熱保護モードでは、標準モードよりも放熱ファン353の動作が活発でもよい。つまり、熱保護モードは、標準モードよりも発熱量が少なく、放熱量が大きい動作モードである。熱保護モードは、標準動作温度範囲よりも高い温度範囲において適用される。
【0040】
非作動から標準モードまたは熱保護モードへの遷移は、いずれも起動指示の検出を条件とする。起動指示は、例えば、電源スイッチ36の押下により指示される。ホストシステム100が動作せず、かつ、電源スイッチ36の押下を検出するとき、EC31は、ホストシステム100の起動処理を開始する。より具体的には、EC31は、電源スイッチ36の接点の接触を検出し、電源回路33からプロセッサ11、メインメモリ12およびROM22への通電を開始する。プロセッサ11は、ROM22からシステムファームウェアを読み出し、メインメモリ12を作業領域として読み出したシステムファームウェアを実行して、自部に接続するデバイスを検出する。その後、プロセッサ11は、OSの実行を開始し、ホストシステム100としての機能を開始する。
【0041】
EC31は、温度センサ351から通知される温度TがT4以下である場合には、標準モードをプロセッサ11に通知し、標準モードに従って動作させる。T4は、熱保護モードから標準モードへの変更に係る予め定めた温度の閾値に相当する。プロセッサ11は、例えば、予めレジスタに記憶された電力制御パラメータセットを参照し、標準モードに対応する電力制御パラメータを特定する。プロセッサ11は、特定した電力制御パラメータに従って消費電力を制御する。また、EC31は、標準モードに従って放熱ファン353を駆動させる。EC31は、例えば、予めROMに記憶された駆動パラメータセットを参照し、標準モードに対応する駆動パラメータを特定する。
【0042】
標準モードでは、必ずしも放熱ファン353を動作させなくてもよい。標準モードに対しては、駆動パラメータに対し、さらに動作開始温度Tstartと動作停止温度Tstopが設定されてもよい。Tstartは、T1(後述)よりも低い温度であればよい。Tstopは、Tstartよりも低い温度であればよい。EC31は、温度センサ351から通知される温度TがTstart以上に上昇するとき、駆動回路352に対して特定した駆動パラメータに基づく電力の放熱ファン353への供給を開始させる。EC31は、温度センサ351から通知される温度TがTstop以下に低下するとき、駆動回路352に対して放熱ファン353への電力の供給を停止する。
【0043】
EC31は、温度センサ351から通知される温度TがT4より高く、T5以下となる場合には、熱保護モードをプロセッサ11に通知し、熱保護モードに従ってプロセッサ11を動作させる。T5は、熱保護モードへの変更を許容する温度の上限に相当する。プロセッサ11は、例えば、予めレジスタに記憶された電力制御パラメータセットを参照し、熱保護モードに対応する電力制御パラメータを特定する。プロセッサ11は、特定した電力制御パラメータに従って消費電力を制御する。また、EC31は、熱保護モードに従って放熱ファン353を駆動させる。EC31は、例えば、予めROMに記憶された駆動パラメータセットを参照し、熱保護モードに対応する駆動パラメータを特定する。EC31は、駆動回路352に対して特定した駆動パラメータに基づいて電力を放熱ファン353に供給させる。
【0044】
なお、温度センサ351から通知される温度TがT5より高い場合、または、標準動作温度範囲よりも低い場合には、EC31は、プロセッサ11を起動させなくてもよい。その場合、EC31は、電源スイッチ36の押下を検出しても、電源回路33に対し、プロセッサ11への通電を開始させなくてもよい。
【0045】
標準モードからの変更後の動作モードとして熱保護モードとモダンスタンバイが設定されている。
EC31は、現動作モードが標準モードであるとき、温度センサ351から通知される温度Tを監視する。温度TがT1を超えるとき、EC31は、熱保護モードをプロセッサ11に通知し、熱保護モードでプロセッサ11を動作させる。また、EC31は、熱保護モードに従って放熱ファン353を駆動させる。
【0046】
ホストシステム100は、現動作モードが標準モードであるとき、スリープ状態指示を待ち受ける。スリープ状態指示とは、スリープ状態を指示するための操作、入力などのイベントである。スリープ状態指示として、OSにおいて予め定められたイベントが用いられてもよい。スリープ状態指示として、例えば、電源ボタンの押下、スリープメニューの選択、アイドリングアウトなどが適用されうる。アイドリングアウトとは、一定時間以上操作を待ち受けている間、操作が検出されない状態が継続することを指す。情報処理装置1がノートブック型PCである場合には、連接した2個の筐体が閉じられた状態がスリープ状態指示として適用されてもよい。スリープ状態指示を検出するとき、ホストシステム100は、動作モードをモダンスタンバイに変更する。
【0047】
モダンスタンバイは、スリープ状態の一態様である。即ち、モダンスタンバイは、標準モードよりも消費電力が少なく、一部の機能が制限されたシステム状態である。モダンスタンバイは、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)で規定されたS0状態の拡張状態であって、標準モードよりも低い消費電力を提供するシステム状態である。モダンスタンバイは、待機モードに相当し、一部のデバイスとの入出力もしくは機能を停止した状態である。
【0048】
より具体的には、モダンスタンバイでは、ディスプレイ14の機能が停止され、各種の表示情報を示す表示データの出力が制限される。また、モダンスタンバイでは、放熱ファン353の動作が停止されてもよい。ホストシステム100は、入力デバイス32からの操作信号の入力、入出力インタフェース26を経由した入出力、通信モジュール25を用いた送受信、オーディオシステム24からの音声信号の入力などを受け付けてもよい(コネクテッドスタンバイ(connected stand-by))。なお、標準モードは、ACPIで規定されたシステム状態のうち、S0状態に相当する。
【0049】
プロセッサ11は、動作モードをモダンスタンバイに変更するとき、例えば、予めレジスタに記憶された電力制御パラメータセットを参照し、モダンスタンバイに対応する電力制御パラメータを特定する。プロセッサ11は、特定した電力制御パラメータに従って消費電力を制御する。また、ホストシステム100は、EC31に新たな動作モードとしてモダンスタンバイを通知し、EC31に対して放熱ファン353の動作を停止させる。EC31は、例えば、駆動回路352に対して電源回路33から放熱ファン353への電力の供給を停止させる。
【0050】
モダンスタンバイからの変更後の動作モードとして標準モードとハイバネーションが設定されている。
ホストシステム100は、現動作モードがモダンスタンバイであるとき、スリープ解除指示を待ち受ける。スリープ解除指示とは、スリープ状態の解除を指示するための操作、入力などのイベントである。スリープ状態解除指示として、OSにおいて予め定められたイベントが用いられてもよい。
【0051】
スリープ状態解除指示として、例えば、電源ボタンの押下、入力デバイス32からの操作信号の入力、オーディオシステム24からの音声信号の入力、他機器との有線での着脱などが適用されうる。情報処理装置1がノートブック型PCである場合には、連接した2個の筐体が開いた状態がスリープ状態解除指示として適用されてもよい。ノートブック型PCは、2個の筐体のそれぞれの一辺が係合され、それらの辺に平行な軸周りに一方の筐体が他方の筐体に対して回動可能とする構造を有する。ノートブック型PCは、一方の筐体に磁気センサを有し、永久磁石を有する他方の筐体との開閉状態を検出可能とする。磁気センサが検出した磁力に基づき2個の筐体の開閉状態が検出される。磁気センサは、検出した磁気信号をホストシステム100にEC31を経由して出力する。これにより、2個の筐体の開閉状態がホストシステム100に通知される。
【0052】
スリープ状態解除指示を検出するとき、ホストシステム100は、動作モードを標準モードに変更する。プロセッサ11は、動作モードを標準モードに変更するとき、例えば、予めレジスタに記憶された電力制御パラメータセットを参照し、標準モードに対応する電力制御パラメータを特定する。プロセッサ11は、特定した電力制御パラメータに従って消費電力を制御する。また、ホストシステム100は、EC31に動作モードとして標準モードを通知し、標準モードでEC31に対して放熱ファン353を動作させる。EC31は、例えば、予めROMに記憶された駆動パラメータセットを参照し、標準モードに対応する駆動パラメータを特定する。EC31は、駆動回路352に対して特定した駆動パラメータに基づいて電力を放熱ファン353に供給させる。
【0053】
ホストシステム100は、現動作モードがモダンスタンバイであるとき、温度センサ351からEC31を経由して通知される温度Tを監視する。温度TがT1を超えるとき、ホストシステム100は、動作モードをハイバネーションに変更する。ホストシステム100は、動作モードをハイバネーションに変更する際、実行中のプログラムの実行を停止する。ホストシステム100は、実行中の処理により生じた種々の中間データ、パラメータなどを含むイメージファイルを生成し、生成したイメージファイルを補助記憶装置23に記憶する(退避)。その後、ホストシステム100をなすプロセッサ11は、その動作を終了する。そして、EC31は、駆動回路352に対し、プロセッサ11への電力供給を停止させる。また、EC31は、駆動回路352に対し、放熱ファン353への電力供給を停止させる。
【0054】
熱保護モードからの変更後の動作モードとして標準モードとハイバネーションが設定される。ホストシステム100は、現動作モードが熱保護モードであるとき、温度センサ351からEC31を経由して通知される温度Tを監視する。温度TがT2を超えるとき、ホストシステム100は、動作モードをハイバネーションに変更する。T2は、熱保護モードでの動作を許容する温度の上限に相当する。T2は、T5と等しいか、より高い温度でもよい。ホストシステム100は、動作モードをハイバネーションに変更する際、実行中のプログラムの実行を停止する。
【0055】
ホストシステム100は、モダンスタンバイからハイバネーションへの変更時と同様に、熱保護モードからハイバネーションへの変更時においてもイメージファイルを生成し、生成したイメージファイルを補助記憶装置23に記憶する(退避)。その後、ホストシステム100をなすプロセッサ11は、その動作を終了する。そして、EC31は、電源回路33に対し、プロセッサ11とメインメモリ12への電力供給を停止させる。また、EC31は、駆動回路352に対して、放熱ファン353への電力供給を停止させる。
ハイバネーションは、ACPIに規定されたシステム状態のうち、S4状態に相当する。ハイバネーションは、プロセッサ11とメインメモリ12が停止された休止状態である。
【0056】
温度TがT4以下となるとき、ホストシステム100は、動作モードを標準モードに変更する。このとき、プロセッサ11は、動作モードを標準モードに変更する。プロセッサ11は、特定した電力制御パラメータに従って消費電力を制御する。また、ホストシステム100は、EC31に標準モードを通知し、標準モードでEC31に対して放熱ファン353を動作させる。
【0057】
ハイバネーションからの変更後の動作モードとして標準モード、熱保護モードおよび非作動が設定されている。ハイバネーションから標準モードまたは熱保護モードへの遷移は、非作動から標準モードまたは熱保護モードへの遷移と同様に、起動指示の検出を条件とする。EC31は、電源スイッチ36の接点の接触を電気的または機械的に検出し、電源回路33からプロセッサ11、メインメモリ12および補助記憶装置23への通電を開始する。プロセッサ11は、補助記憶装置23からイメージファイルを読み出し、読み出したイメージファイルをメインメモリ12に記憶する。その後、プロセッサ11は、読み出したイメージファイルを用い、ハイバネーションへの動作モードの変更直前におけるプログラムの実行を再開する。
【0058】
EC31は、温度センサ351から通知される温度TがT4以下である場合には、標準モードに従ってプロセッサ11を動作させる。EC31は、プロセッサ11に動作モードとして標準モードを通知し、プロセッサ11に標準モードで動作させる。また、EC31は、標準モードに従って駆動回路352に対し放熱ファン353を駆動させる。
【0059】
EC31は、温度センサ351から通知される温度TがT4より高く、T5以下となる場合には、上記のように、熱保護モードに従ってプロセッサ11を動作させ、駆動回路352に対し放熱ファン353を駆動させる。
温度センサ351から通知される温度TがT5より高い場合、または、標準動作温度範囲よりも低い場合には、EC31は、プロセッサ11を起動させなくてもよい。
【0060】
現動作モードが熱保護モードであるとき、EC31は、温度センサ351から通知される温度Tを監視する。温度TがT3を超えるとき、EC31は、情報処理装置1を非作動とする(シャットダウン)。この段階では、既にプロセッサ11とメインメモリ12への電力供給が停止されている。EC31は、電源回路33に対し、補助記憶装置23、駆動回路352、その他のデバイスへの電力供給を停止させる。
【0061】
図4は、本実施形態に係る温度制御テーブルの一例を示す。温度制御テーブルは、例えば、EC31に備わるROMに予め記憶させておく。温度制御テーブルは、モード遷移ごとに温度の閾値を示すデータテーブルである。EC31は、温度制御テーブルを参照し、現動作モードから変更後の動作モードへのモード遷移に対応する温度パラメータと温度センサ351から通知される温度Tとを比較し、遷移条件を満たす否かを判定する。
【0062】
図4の第1列の各行は変更前の動作モードを示し、第1行の各列は変更後の動作モードを示す。標準モードから熱保護モードへのモード遷移と、モダンスタンバイからハイバネーションへのモード遷移には、それぞれT
1が対応づけられている。熱保護モードからハイバネーションへのモード遷移には、T
2が対応づけられている。T
2として、T
1よりも高い温度が設定されている。ハイバネーションから非作動へのモード遷移には、T
3が対応づけられている。T
3として、T
2よりも高い温度が設定されている。
【0063】
熱保護モードから標準モードへのモード遷移、ハイバネーションから標準モードへのモード遷移、および、非作動から標準モードへのモード遷移には、それぞれT4が対応づけられている。T4として、T1と等しいか、T1より低い温度が設定されている。
ハイバネーションから熱保護モードへのモード遷移と非作動から熱保護モードへのモード遷移には、それぞれT5が対応づけられている。T5として、T2と等しいか、T2より低い温度が設定されている。
【0064】
次に、本実施形態に係る動作パラメータの例について説明する。
図5は、本実施形態に係る動作パラメータを例示する。動作パラメータには、電力制御パラメータと駆動パラメータが含まれる。電力制御パラメータは、標準モード、モダンスタンバイおよび熱保護モードのそれぞれに対して設定される。モダンスタンバイおよび熱保護モードのそれぞれに対する電力制御パラメータは、標準モードに対する電力制御パラメータよりも少ない消費電力に対応する。
【0065】
図示の例では、動作モードごとに第1制限電力(PL1:Power Limit 1)と第2制限電力(PL2:Power Limit 2)が設定されている。PL1は、定格電力に相当する。定格電力は、消費電力の移動平均が一時的にこの値を超えることを許容するが、定常的に(例えば、数秒~数十秒以上継続して)この値を超えることを制限するための閾値である。移動平均における窓長(消費電力の移動平均に係る観測期間)は、典型的には、例えば、1~10s程度である。PL2は、消費電力が一時的であっても、この値を超えることを制限するための閾値である。一般に、プロセッサ11は、クロック周波数が高いほど多くの演算処理を実行し、それに伴い消費電力が増加する。プロセッサ11は、消費電力の瞬時値がPL2を越えず、かつ、消費電力の移動平均がPL1を超えないようにクロック周波数を調整する制御機構を有する。
【0066】
図5の例では、PL10、PL11、PL12は、それぞれ標準モード、モダンスタンバイ、熱保護モードに対応する定格電力である。PL10は、PL11以上となり、かつ、PL12以上となる。但し、PL11はPL12と等しくてもよいし、PL12よりも小さくてもよいし、PL12よりも大きくてもよい。PL2は、最大電力に相当する。最大電力は、消費電力の移動平均値が、一時的にこの値を越えることを制限するための閾値である。最大電力は、プロセッサの消費電力の上限に相当する。
図5の例では、PL20、PL21、PL22は、それぞれ標準モード、モダンスタンバイ、熱保護モードに対応する最大電力である。PL20は、PL21以上となり、かつ、PL22以上となる。但し。PL21はPL22と等しくなることも、PL22よりも小さくなることも、PL22よりも大きくなることもありうる。
【0067】
駆動パラメータは、標準モードと熱保護モードのそれぞれに対して設定される。
図5の例では、NL0、NL2は、それぞれ標準モード、熱保護モードに対応する放熱ファン353の騒音レベルである。NL2は、NL0と等しいか、より大きい。放熱ファン353の動作量は、騒音レベルに限らず、モータの回転速度、消費電力などを用いて定義されてもよい。モダンスタンバイに対しては。放熱ファン353の騒音レベルは設定されていない。モダンスタンバイは、スリープ状態の一態様である。モダンスタンバイに対して、放熱ファン353は動作せずに静止する。
【0068】
上記の説明では、主にEC31が温度センサ351から入力される温度信号に示される温度に基づいて、情報処理装置1の動作モードを制御する場合を例にしたが、これには限られない。情報処理装置1は、EC31とは別個のコントローラが情報処理装置1の動作モードを制御してもよい。別個のコントローラは、チップセット21であってもよい。EC31または別個のコントローラとホストシステム100との間で、一部のモード遷移に係る処理を分担してもよい。例えば、EC31または別個のコントローラは、現時点における動作モードがハイバネーションまたは非作動である場合、標準モード、モダンスタンバイまたは熱保護モードへの遷移に係る処理を実行する。これに対し、ホストシステム100は、標準モード、モダンスタンバイおよび熱保護モードの相互間、および、標準モード、モダンスタンバイまたは熱保護モードからハイバネーションまたは非作動への遷移に係る処理を実行する。
【0069】
上記の説明では、非作動から標準モードまたは熱保護モードへの遷移に係る起動指示が、電源スイッチ36への押下の検出により実現される場合を主としたが、これには限られない。EC31は、他機器からの有線または無線での起動指示を待ち受け、起動指示を検出するとき、ホストシステム100の起動処理を開始してもよい。起動指示は、通信ネットワークを経由して伝達されてもよい。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態に係る情報処理装置1は、コンピュータシステム(例えば、ホストシステム100)と、温度を検出する温度センサ351と、検出された温度に基づいて自装置の動作モードを制御するコントローラ(例えば、EC31)と、を備える。コントローラは、動作モードが標準モードであって、検出された温度が第1基準温度(例えば、T1)を超えるとき、コンピュータシステムの動作モードを熱保護モードに変更し、動作モードが熱保護モードであって、検出された温度が第2基準温度(例えば、T2)を超えるとき、コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更し、動作モードが休止モード(例えば、ハイバネーション)であって、検出された温度が第3基準温度(例えば、T3)を超えるとき、自装置の動作を停止(即ち、非作動)し、熱保護モードは、標準モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、休止モードは、熱保護モードよりも消費電力が少ない動作モードであり、第1基準温度、第2基準温度および第3基準温度の順に高い温度が設定される。
この構成によれば、検出された温度が第2基準温度を超えるときコンピュータシステムの動作モードが熱保護モードから休止モードに変更され、検出された温度が第3基準温度を超えるときコンピュータシステムが停止する。コンピュータシステムが完全に停止する前に休止モードに変更されることで電力の消費が停止する。さらなる温度の上昇によるコンピュータシステムの停止が回避されるため、温度が動作温度範囲内に低下したときに起動処理を行わずにコンピュータシステムの動作を回復させることができる。
【0071】
また、コントローラは、検出された温度が第1基準温度以下であるとき、コンピュータシステムの動作状況(例えば、スリープ状態指示、スリープ解除指示)に基づいて動作モードを標準モードと低消費電力モードとの間で切り替え、動作モードが低消費電力モード(例えば、モダンスタンバイ)であって、検出された温度が第1基準温度を超えるとき、コンピュータシステムの動作モードを休止モードに変更してもよい。低消費電力モードにおいて、表示情報(例えば、表示データ)の出力が制限され、低消費電力モードは、標準モードよりも消費電力が少なく、休止モードよりも消費電力が多い動作モードである。
この構成によれば、コンピュータシステムの動作状況により、動作モードが低消費電力モードにあり、温度が第1基準温度を超えるとき、熱保護モードではなく、動作モードが休止モードに変更される。温度上昇による機能の制限が予期されるところ、表示情報の出力を伴う熱保護モードへの変更を回避することで、ユーザに対して表示情報の提示による違和感を与えずに済む。また、休止モードへの変更により、電力消費による温度上昇が回避されるので、温度が標準動作温度範囲内に低下するとき起動処理を行わずにコンピュータシステムの動作を回復させることができる。
【0072】
また、情報処理装置1は、自装置に生ずる熱を放熱する放熱部(例えば、放熱ファン353)を備えてもよい。コントローラは、熱保護モードにおいて、標準モードよりも活発に放熱部を動作させ、休止モードにおいて、放熱部の動作を停止させてもよい。
この構成によれば、熱保護モードにおいて標準モードよりも活発に放熱されるので、温度上昇が抑制される。休止モードでは放熱されない。休止モードでは、電力が消費されないため、放熱部の動作の停止が許容される。従って、放熱部を動作させないことで、電力を節約することができる。
【0073】
また、情報処理装置1は、自装置に生ずる熱を放熱する放熱部(例えば、放熱ファン353)を備えてもよい。コントローラは、低消費電力モードおよび休止モードにおいて、放熱部の動作を停止させてもよい。
この構成によれば、低消費電力モードおよび休止モードにおいて放熱部を動作させない。動作モードを低消費電力モードから休止モードに変更することで、放熱部の動作が停止する状態が維持される。そのため、低消費電力モードから熱保護モードへの変更により放熱部を起動させることによるユーザに対する違和感を回避することができる。
【0074】
また、コントローラは、動作モードが休止モードであって、起動指示(例えば、電源スイッチ36の押下)が検出され、検出された温度が第4基準温度(例えば、T4)以下であるとき、動作モードを標準モードに変更してもよい。ここで、第4基準温度を、第1基準温度以下とする。
この構成によれば、起動指示が検出され、検出された温度が標準モードから熱保護モードへの変更に係る第1基準温度以下に低下したとき、情報処理装置1は、標準モードで動作する。情報処理装置1は、温度が第1基準温度以下に低下したとき、電源スイッチ36の押下を契機として、起動処理を行わずにコンピュータシステムの標準モードでの動作を開始することができる。
【0075】
また、コントローラは、動作モードが休止モードであって、起動指示(例えば、電源スイッチ36の押下)が検出され、検出された温度が第5基準温度(例えば、T5)以下であるとき、動作モードを熱保護モードに変更してもよい。ここで、第5基準温度を、第1基準温度よりも高く、第2基準温度以下とする。
この構成によれば、起動指示が押下され、検出された温度が標準モードから熱保護モードへの変更に係る第1基準温度以下よりも高く、熱保護モードから休止モードへの変更に係る第2基準温度以下に低下したとき、情報処理装置1は、熱保護モードで動作する。情報処理装置1は、温度が第1基準温度以下に低下しなくても、第2基準温度以下に低下したとき、電源スイッチ36の押下を契機として、起動処理を行わずにコンピュータシステムを標準モードよりも発熱量が少ない熱保護モードでの動作を開始することができる。温度上昇を抑制することで再度休止モードに変更する可能性を低下しながら、動作による利便性を回復することができる。
【0076】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上記の実施形態において説明した各構成は、矛盾しない限り任意に組み合わせることができ、一部の構成が省略されてもよい。
【0077】
例えば、情報処理装置1は、駆動回路352と放熱ファン353が省略されてもよい。その場合、上記の駆動パラメータの設定に係る処理が省略される。また、情報処理装置1は、駆動回路352と放熱ファン353に代えて、または、駆動回路352と放熱ファン353とともに冷媒循環回路を備えてもよい。その場合、放熱ファン353の動作量に代えて、または、放熱ファン353の動作量とともに、ホストシステム100の消費電力と放熱ファン353の動作量と同様の関係性をもって、冷媒循環回路の循環量が制御されればよい。また、標準モードまたは熱保護モードに対する電力制御パラメータには、少なくとも第1制限電力が含まれ、第2制限電力が省略されてもよい。標準モードまたは熱保護モードに対する電力制御パラメータには、さらに第4制限電力が含まれてもよい。第4制限電力は、瞬間的にさらに大きい消費電力を制限するための閾値である。
【符号の説明】
【0078】
1…情報処理装置、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…ビデオサブシステム、14…ディスプレイ、21…チップセット、22…ROM、23…補助記憶装置、24…オーディオシステム、25…通信モジュール、26…入出力インタフェース、31…EC、32…入力デバイス、33…電源回路、34…バッテリ、351…温度センサ、352…駆動回路、353…放熱ファン、36…電源スイッチ、100…ホストシステム