IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリジン電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-角度位置保持装置 図1
  • 特開-角度位置保持装置 図2
  • 特開-角度位置保持装置 図3
  • 特開-角度位置保持装置 図4
  • 特開-角度位置保持装置 図5
  • 特開-角度位置保持装置 図6
  • 特開-角度位置保持装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001677
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】角度位置保持装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20231227BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20231227BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F16D7/02 F
F16D1/02 110
F16D41/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100498
(22)【出願日】2022-06-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】磯部 太郎
(57)【要約】
【課題】所要強度が確保可能な継手手段を備えつつ良好な静音性を有する新規の角度位置保持装置を提供すること。
【解決手段】片側部材8と一体回転する他側部材10を合成樹脂製の接続体20と金属製の被作用筒22とに分けて、接続体20と被作用筒22とを相対回転不能に係止させ、金属製の片側部材8を合成樹脂製の接続体20と周方向に係止させると共に被作用筒22の外周面に制動トルク付与手段6を作用させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側機器及び出力側機器を相互に接続する継手手段と、前記継手手段に所要制動トルクを付与する制動トルク付与手段とを具備し、
前記継手手段は入力側機器及び出力側機器のいずれか一方に接続される片側部材といずれか他方に接続される他側部材とを含み、前記片側部材及び前記他側部材は共通の中心軸上で軸方向に隣接して配置され、前記片側部材に形成された係止部及び前記他側部材に形成された被係止部によって周方向に係止せしめられて一体回転可能であり、
前記制動トルク付与手段は前記他側部材の外周面に作用し、
入力側機器から回転トルクが入力されると、前記継手手段は前記所要制動トルクに抗して回転し、入力側機器から回転トルクが入力されないときは、前記継手手段は前記所要制動トルクによって保持される角度位置保持装置において、
前記他側部材は前記被係止部を備える合成樹脂製の接続体と、前記制動トルク付与手段が作用する金属製の被作用筒とを備え、前記接続体と前記被作用筒とは周方向に係止せしめられて一体回転可能であり、
前記他側部材の前記被作用筒は前記接続体を介して金属製の前記片側部材に接続される、ことを特徴とする角度位置保持装置。
【請求項2】
前記片側部材は軸方向に延びる雄係合部と、前記雄係合部の一端が固定されたフランジ部とを備え、前記係止部は前記フランジ部の外周面に形成されており、
前記他側部材の前記接続体は軸方向に延びる雌係合部と、前記片側部材の前記フランジ部を受容する凹部とを備え、前記被係止部は前記凹部の内周面に形成されている、請求項1に記載の角度位置保持装置。
【請求項3】
前記片側部材の前記雄係合部が入力側機器に、前記他側部材の前記雌係合部が出力側機器に夫々接続される、請求項2に記載の角度位置保持装置。
【請求項4】
前記雄係合部及び前記雌係合部はセレーションである、請求項2又は3に記載の角度位置保持装置。
【請求項5】
前記制動トルク付与手段と共に前記被作用筒は固定のハウジングの内側に配置され、前記被作用筒は、前記ハウジングが備える端板及び前記ハウジングに装着されるシールドによって軸方向の両側から支持される、請求項1に記載の角度位置保持装置。
【請求項6】
前記制動トルク付与手段はコイルばねであって、線材が螺旋状に巻回された巻回部と前記巻回部から前記線材が径方向外方に延出するフック部とを備え、
自由状態における前記巻回部の内径は前記被作用筒の外径よりも小さく、前記コイルばねは、前記巻回部の内径が拡径された状態で前記被作用筒の外周面に装着され、
前記フック部は前記ハウジングの内周面に形成されたフック溝に嵌め合わされて、前記コイルばねは前記ハウジングに対して回転不能であり、前記継手手段が回転すると、前記フック溝内で前記フック部は前記コイルばねの緩み方向に押される、請求項5に記載の角度位置保持装置。
【請求項7】
前記他側部材はガラス繊維を含有する合成樹脂製である、請求項1に記載の角度位置保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度位置保持装置、殊に入力側機器及び出力側機器を相互に接続する継手手段を備えた角度位置保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、電動モーターの如き入力側機器からの回転トルクを車両のハッチバックの如き出力側機器に伝達するシャフトに装着されて、入力側機器から回転トルクが入力されると、シャフトは所要制動トルクに抗して回転し、入力側機器から回転トルクが入力されないときは、シャフトは上記所要制動トルクによって保持される、つまり入力側機器の駆動を停止しても出力側機器の角度位置が保持される角度位置保持装置が使用されている。
【0003】
かような角度位置保持装置の一例として、下記特許文献1には、入力側機器及び出力側機器を相互に接続する継手手段と、前記継手手段に所要制動トルクを付与する制動トルク付与手段とを具備し、前記継手手段は入力側機器及び出力側機器のいずれか一方に接続される金属製の片側部材といずれか他方に接続される金属製の他側部材とを含み、前記片側部材及び前記他側部材は共通の中心軸上で軸方向に隣接して配置され、前記片側部材に形成された係止部及び前記他側部材に形成された被係止部によって周方向に係止せしめられて一体回転可能であり、前記制動トルク付与手段は前記他側部材の外周面に作用し、入力側機器から回転トルクが入力されると、前記継手手段は前記所要制動トルクに抗して回転し、入力側機器から回転トルクが入力されないときは、前記継手手段は前記所要制動トルクによって保持される角度位置保持装置が開示されている。この角度位置保持装置にあっては更に、前記片側部材は軸方向に延びる雄係合部と、前記雄係合部の一端が固定されたフランジ部とを備え、前記係止部は前記フランジ部の外周面に形成されており、前記他側部材は軸方向に延びる雌係合部と、前記片側部材の前記フランジ部を受容する凹部とを備え、前記被係止部は前記凹部の内周面に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7035254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1で開示された角度位置保持装置にあっては、継手手段を構成する片側部材及び他側部材が共に金属製であるため、継手手段が回転を開始するとき及び停止するときに、片側部材の係止部と他側部材の被係止部とが周方向に当接して音が発生する。かかる音は金属同士が衝突することで発せられるため比較的高周波であり、官能上好ましくない。
【0006】
なお、上記音の発生を抑制するため、継手手段を一体的に成形することも考えられるが、共通の中心軸上で軸方向に隣接して配置される雄係合部及び雌係合部を備えた継手手段を金属材料で一体的に成形する場合には、上記特許文献1の明細書の段落0004乃至0008に記載されたとおりの問題がある。また、継手手段を構成する片側部材及び他側部材のいずれか一方のみを金属製としていずれか他方を合成樹脂製とすることも考えられる。然しながら、片側部材を合成樹脂製とした場合には、雄係合部の基端部のねじれ強度が構造上弱いことに起因して、継手部材に負荷がかかった際に雄係合部の基端部が破断する虞がある。一方、他側部材を合成樹脂製とした場合には、耐摩耗性の観点から制動トルク付与手段として金属製のばね部材を採用することが困難となり、制動トルク付与手段は他側部材に充分な制動トルクを付与することができない。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、所要強度が確保可能な継手手段を備えつつ良好な静音性を有する、新規且つ改良された角度位置保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、片側部材と一体回転する他側部材を合成樹脂製の接続体と金属製の被作用筒とに分けて、接続体と被作用筒とを相対回転不能に係止させ、合成樹脂製の接続体に金属製の片側部材を周方向に係止させると共に、金属製の被作用筒の外周面に制動トルク付与手段を作用させることで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する角度位置保持装置として、入力側機器及び出力側機器を相互に接続する継手手段と、前記継手手段に所要制動トルクを付与する制動トルク付与手段とを具備し、
前記継手手段は入力側機器及び出力側機器のいずれか一方に接続される片側部材といずれか他方に接続される他側部材とを含み、前記片側部材及び前記他側部材は共通の中心軸上で軸方向に隣接して配置され、前記片側部材に形成された係止部及び前記他側部材に形成された被係止部によって周方向に係止せしめられて一体回転可能であり、
前記制動トルク付与手段は前記他側部材の外周面に作用し、
入力側機器から回転トルクが入力されると、前記継手手段は前記所要制動トルクに抗して回転し、入力側機器から回転トルクが入力されないときは、前記継手手段は前記所要制動トルクによって保持される角度位置保持装置において、
前記他側部材は前記被係止部を備える合成樹脂製の接続体と、前記制動トルク付与手段が作用する金属製の被作用筒とを備え、前記接続体と前記被作用筒とは周方向に係止せしめられて一体回転可能であり、
前記他側部材の前記被作用筒は前記接続体を介して金属製の前記片側部材に接続される、ことを特徴とする角度位置保持装置が提供される。
【0010】
好ましくは、前記片側部材は軸方向に延びる雄係合部と、前記雄係合部の一端が固定されたフランジ部とを備え、前記係止部は前記フランジ部の外周面に形成されており、前記他側部材の前記接続体は軸方向に延びる雌係合部と、前記片側部材の前記フランジ部を受容する凹部とを備え、前記被係止部は前記凹部の内周面に形成されている。この場合には、前記片側部材の前記雄係合部が入力側機器に、前記他側部材の前記雌係合部が出力側機器に夫々接続されるのがよい。さらに、前記雄係合部及び前記雌係合部はセレーションであるのが好適である。前記制動トルク付与手段と共に前記被作用筒は固定のハウジングの内側に配置され、前記被作用筒は、前記ハウジングが備える端板及び前記ハウジングに装着されるシールドによって軸方向の両側から支持されるのが好ましい。この場合には、前記制動トルク付与手段はコイルばねであって、線材が螺旋状に巻回された巻回部と前記巻回部から前記線材が径方向外方に延出するフック部とを備え、自由状態における前記巻回部の内径は前記被作用筒の外径よりも小さく、前記コイルばねは、前記巻回部の内径が拡径された状態で前記被作用筒の外周面に装着され、前記フック部は前記ハウジングの内周面に形成されたフック溝に嵌め合わされて、前記コイルばねは前記ハウジングに対して回転不能であり、前記継手手段が回転すると、前記フック溝内で前記フック部は前記コイルばねの緩み方向に押されるのがよい。好ましくは、前記他側部材はガラス繊維を含有する合成樹脂製である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の角度位置保持装置にあっては、片側部材と一体回転する他側部材が合成樹脂製の接続体と金属製の被作用筒とに分けられ、金属製の片側部材は合成樹脂製の接続体と周方向に係止せしめられることから、継手手段が回転を開始するとき及び停止するときに金属同士が衝突することは回避される。なお、継手手段が回転を開始するとき及び停止するときに、片側部材に形成された係止部と他側部材の接続体に形成された被係止部とは衝突するものの、かかる衝突は金属と合成樹脂との衝突であるため、衝突した際の音は充分抑制される。更に、制動トルク付与手段が作用する被作用筒は金属製であることから、制動トルク付与手段として金属製のばね部材を採用することができ、これにより制動トルク付与手段は他側部材に充分な制動トルクを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成された角度位置保持装置の好適実施形態の全体構成を示す図。
図2図1に示す角度位置保持装置の分解斜視図。
図3図1に示す角度位置保持装置の片側部材を単体で示す図。
図4図1に示す角度位置保持装置の他側部材の接続体を単体で示す図。
図5図1に示す角度位置保持装置の他側部材の被作用筒を単体で示す図。
図6図1に示す角度位置保持装置のハウジングを単体で示す図。
図7図1に示す角度位置保持装置のシールドを単体で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された角度位置保持装置の好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。なお、以下の説明における「軸方向片側」及び「軸方向他側」とは、特に指定しない限り、図1のA-A断面図に示される状態を基準として、「軸方向片側」は同図において左側を、「軸方向他側」は同図において右側のことを言う。
【0014】
図1及び図2を参照して説明すると、全体を番号2で示す角度位置保持装置は、入力側機器及び出力側機器を相互に接続する継手手段4と、この継手手段4に所要制動トルクを付与する制動トルク付与手段6とを具備している。図1の各断面図においては、容易に理解できるように、制動トルク付与手段6(後述するとおり、これは図示の実施形態においてはコイルばねである)には薄墨を付して示している。
【0015】
継手手段4は入力側機器及び出力側機器のいずれか一方に接続される片側部材8といずれか他方に接続される他側部材10とを含んでいる。図1及び図2と共に図3を参照して説明すると、片側部材8は軸方向に延びる雄係合部12と、雄係合部12の軸方向他側端が固定されたフランジ部14とを備えている。片側部材8は金属製であって一体的に成形される。片側部材8は例えば粉末冶金により成形されるのが良い。図示の実施形態においては、雄係合部12はセレーション(雄セレーション)であって、ここには電動モーターの如き入力側機器から延びる中空のシャフトS1の内周面に形成された雌被係合部(雌セレーション)S1aが嵌合せしめられる。フランジ部14は円板形状であって、外周面には径方向外方に突出する係止部16が周方向に等角度間隔をおいて複数(図示の実施形態においては8個)形成されている。雄係合部12及びフランジ部14は共通の中心軸を有し、図1のA-A断面図に示されるとおり、片側部材8には中心軸に沿って軸方向に直線状に延びる断面正方形の貫通穴18が形成されている。
【0016】
図1及び図2を参照して説明すると、他側部材10は片側部材8に接続される接続体20と、これに相対回転不能に係止せしめられる被作用筒22とを備えている。接続体20は合成樹脂製であって、所要合成樹脂材料により適宜の成形法方法により一体的に成形される。接続体20はガラス繊維を含有する比較的高硬度の合成樹脂材料により成形されるのが好ましく、かような合成樹脂材料としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂にガラスフィラーを20乃至40%程度含有したものが使用されうる。図1及び図2と共に図4を参照して説明すると、接続体20は全体的に円筒形状であって軸方向に貫通している。接続体20の内周面には、軸方向片側端部を除いて、軸方向に延びる雌係合部24が形成されている。図示の実施形態においては、雌係合部24もセレーション(雌セレーション)であって、ここにはハッチバックの如き出力側機器から延びる中実のシャフトS2の外周面に形成された雄被係合部(雄セレーション)S2aが嵌合せしめられる。なお、雌係合部24及び雄係合部12のピッチ円直径は実質上同一である。接続体20の軸方向片側端面には片側部材8のフランジ部14を受容する凹部26が形成されている。凹部26及び雌係合部24は共通の中心軸を有する。凹部26の内周面には径方向内方に突出する被係止部28が周方向に等角度間隔をおいて複数(図示の実施形態においては8個)形成されている。被係止部28の形状、配置及び個数は片側部材8のフランジ部14に形成された係止部16の形状、配置及び個数と対応する。凹部26に片側部材8のフランジ部14が嵌め合わされ、図1のB-B断面図に示すとおり被係止部28と係止部16とが周方向に係止することで、片側部材8及び他側部材10は一体回転可能となる。このことから、片側部材8及び他側部材10は共通の中心軸o上で軸方向に隣接して配置される。接続体20の外周面の軸方向他側には、軸方向に直線状に延びる断面略矩形の係止溝30が周方向に等角度間隔をおいて複数個(図示の実施形態においては8個)形成されている。夫々の係止溝30の軸方向他側端は開放せしめられている。そして、周方向に隣接する2つの係止溝30の間には夫々、接続体20の外周面の軸方向他側端部から軸方向片側に向かって直線状に延びる係止突条32が残留せしめられている。図4の上段左図と右図とを比較参照することによって理解されるとおり、軸方向に見ると、係止突条32及び被係止部28は周方向に交互に配置されている(図4の上段中央図及び図2も併せて参照されたい)。これにより、接続体20に作用する力が分散され、接続体20の強度が向上する。
【0017】
一方、被作用筒22は金属製であって、例えば粉末冶金により成形される。図1及び図2と共に図5を参照して説明すると、被作用筒22は断面円形の外周面を有している。被作用筒22の内周面には軸方向の他側端部から片側端部まで軸方向に直線状に延びる断面略矩形の被係止突条34が周方向に等角度間隔をおいて複数個(図示の実施形態においては8個)形成されている。被係止突条34の軸方向長さは接続体20の係止溝30の軸方向長さと等しい。そのため、図1のC-C断面図に示すとおり、被係止突条34を接続体20の係止溝30に整合せしめることで、接続体20が被作用筒22の内側に進入して被係止突条34と係止突条32とが周方向に係止せしめられ、接続体20と被作用筒22とは一体回転可能となる。このことから、図1のB-B断面図及びC-C断面図を参照することによって理解されるとおり、被作用筒22は接続体20を介して金属製の片側部材8に接続される。
【0018】
図1及び図2に示すとおり、制動トルク付与手段6はコイルばねであって(以下、コイルばねを番号6で示す)、金属製で断面円形の線材が螺旋状に巻回された巻回部36と巻回部36から上記線材が径方向外方に延出するフック部38とを備えている。コイルばね6が自由状態にあるときの、つまりコイルばね6が何らの外力を受けていない状態にあるときの、巻回部36の内径は被作用筒22の外径よりも小さく、コイルばね6は巻回部36の内径が拡径された状態で被作用筒22の外周面に装着される。フック部38は上記線材の両端部により構成され、従って、フック部38は巻回部36の軸方向両端に夫々設けられている。
【0019】
図示の実施形態においては、制動トルク付与手段6と共に被作用筒22は固定のハウジング40の内側に配置されている。図1及び図2と共に図6を参照して説明すると、ハウジング40は中心軸oに対して垂直に配置される円形の端板42と、端板42の外周縁から軸方向片側に延びる円筒形状の外周壁44とを備えたカップ形状であり、適宜の合成樹脂により一体的に成形される。ハウジング40は図示しない固定部によって車両等に固定される。端板42の中央には軸方向に貫通する円形の貫通穴46が形成されている。端板42の軸方向片側面の中央には円形の支持凹部48が形成されており、支持凹部48の底面には貫通穴46を囲繞して軸方向に突出する円環形状の支持突条50が形成されている。図1のA-A断面図に示されるとおり、支持凹部48の内周面と支持突条50の外周面との間に被作用筒22の軸方向他側端部が嵌め合わされると共に、支持凹部48の底面に接続体20の軸方向他側端面が当接することで、ハウジング40は他側部材10の軸方向他側端部を回転可能に支持する。そして、シャフトS2の雄被係合部S2aは貫通穴46を通って接続体20に形成された雌係合部24に係合せしめられる。端板42の軸方向他側面の外周縁部には周方向に延在する円弧形状の有底凹所52が周方向に等角度間隔をおいて複数個(図示の実施形態においては8個)形成されている。有底凹所52は所謂肉盗みのために形成されている。外周壁44の外周面の断面形状は円形である。一方、外周壁44の内周面の断面形状は全体的に円形であるが、外周壁44の内周面には局所的に内径が増大せしめられた溝54が存在する。かかる溝54の断面形状は円弧形状であってこれは直径方向に対向して一対設けられており、共に外周壁44の内周面の軸方向全体に亘って軸方向に直線状に延在している。図1のB-B断面図に示されているとおり、一対の溝54のいずれか一方にはコイルばね6が備える2つのフック部38が共通して嵌め合わされ、コイルばね6はハウジング40に対して回転不能となる。外周壁44において上記溝54が設けられていない部分には、周方向に延在する円弧形状の有底凹所56が周方向に間隔をおいて複数(図示の実施形態においては溝54の周方向両側に3つずつ、全部で6個)形成されている。溝54の周方向両側に3つずつ形成された有底凹所56のうち、中央に位置する有底凹所56の周方向中央部分には、軸方向に貫通して端板42に形成された有底凹所52に連通する貫通穴58が形成されている。外周壁44の自由端面の外周縁部には軸方向に更に延出する円弧形状の周方向係止片が周方向に等角度間隔をおいて4つ形成されており、夫々を符号60a乃至60dで示す。周方向係止片60a乃至60dの先端部の内周面の周方向中央領域には径方向内側に向かって突出する軸方向係止突条62が形成されている。ここで、軸方向に見ると、周方向係止片60a及び60cに形成された軸方向係止突条62の周方向中央位置は溝54の周方向中央位置と整合すると共に、周方向係止片60b及び60dに形成された軸方向係止突条62の周方向中央位置は貫通穴58の周方向中央位置と整合する。
【0020】
ハウジング40の開放端、つまり外周壁44の軸方向片側端はシールド64によって閉塞される。図1及び図2と共に図7を参照して説明すると、シールド64は全体的に円板形状であって、適宜の合成樹脂により一体的に成形される。シールド64の軸方向片側面の中央部分には円形の窪み66が形成されている。シールド64の外周面には径方向外側に延出した円弧形状の周方向被係止片68が周方向に等角度間隔をおいて4つ設けられている。周方向に隣接する2つの周方向被係止片68の間における、シールド64の軸方向片側面の外周縁部には、外周縁に沿って軸方向片側面を切り欠いて形成された円弧形状の軸方向被係止段部70が設けられている。シールド64の軸方向他側面には軸方向に突出する円環形状の支持突条72が形成されている。シールド64の中央には軸方向に貫通する円形の貫通穴74が形成されている。シールド64をハウジング40に装着する際には、先ずハウジング40の内側に継手手段4及び制動トルク付与手段6を所要とおりに配置し、次いで貫通穴74に片側部材8の雄係合部12を挿通せしめる。その後に、シールド64の周方向被係止片68を、ハウジング40が備える周方向に隣接する2つの周方向係止片60の間に整合せしめ、シールド64をハウジング40に対して軸方向に強制する。これにより、シールド64の軸方向被係止段部70がハウジング40の周方向係止片60a乃至60dの夫々の内周面に形成された軸方向係止突条62を弾性的に乗り越えてこれによって軸方向に係止せしめられると共に、シールド64の周方向被係止片68がハウジング40の周方向係止片60a乃至60dによって周方向に係止せしめられ、かくしてシールド64はハウジング40に固定される。シールド64がハウジングに固定された後にあっては、図1のA-A断面図を参照することによって理解されるとおり、片側部材8のフランジ部14における係止部16を除く部分が貫通穴74に嵌め合わされると共に、他側部材10の軸方向片側端部がシールド64の支持突条72の内側に嵌め合わされる。これにより、シールド64は片側部材8の軸方向他側端部及び他側部材10の軸方向片側端部を同時に回転可能に軸支すると共に、継手手段4がハウジング40から脱落することを防止する。更に、シールド64の支持突条72は制動トルク付与手段6が軸方向に移動することをも制限する。
【0021】
角度位置保持装置2は以下のようにして作動する。即ち、入力側機器から延びるシャフトS1及び出力側機器から延びるシャフトS2並びに継手手段4は一体であることから、入力側機器から回転トルクが入力されると、継手手段4はコイルばね6と共に回転しようとするが上述したとおりコイルばね6はハウジング40に対して回転不能であるため、ハウジング40に形成された溝54内において2つのフック部38のいずれか一方が溝54を規定するハウジング40の内側面によって相対的にコイルばね6が緩む方向に押され、継手手段4はコイルばね6の締め付け力による制動トルクに抗してコイルばね6(及びハウジング40)に対して摺動回転する。つまり、入力側機器からの回転トルクが出力側機器に伝達されてこれを駆動させる。一方、入力側機器からの回転トルクが入力されないときは、コイルばね6による所要制動トルクによって継手手段4が保持され、これにより、出力側機器の角度位置も保持される。
【0022】
本発明の角度位置保持装置にあっては、片側部材8と一体回転する他側部材10が合成樹脂製の接続体20と金属製の被作用筒22とに分けられ、金属製の片側部材8は合成樹脂製の接続体20と周方向に係止せしめられることから、継手手段4が回転を開始するとき及び停止するときに金属同士が衝突することは回避される。なお、継手手段4が回転を開始するとき及び停止するときに、片側部材8に形成された係止部16と他側部材10の接続体20に形成された被係止部28とは衝突するものの、かかる衝突は金属と合成樹脂との衝突であるため、衝突した際の音は充分抑制される。更に、制動トルク付与手段6が作用する被作用筒22は金属製であることから、制動トルク付与手段6として金属製のばね部材を採用することができ、これにより制動トルク付与手段6は他側部材10に充分な制動トルクを付与することができる。
【0023】
以上、本発明に従って構成された角度位置保持装置について添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、片側部材8が雄係合部12を、他側部材10が雌係合部24を夫々備えていたが、各係合部の雌雄は任意に選択可能である。また、図示の実施形態においては、被作用筒22は接続体20の外周面を囲繞してこれの径方向外側に配置されていたが、被作用筒は接続体20と軸方向に直列に配置されていてもよい。図示の実施形態においては、制動トルク付与手段はコイルばねであったが、制動トルク付与手段は板ばねやトレランスリング或いは輪ばね等であってもよく、従って制動トルク付与手段は必ずしもハウジングに対して回転不能でなくてもよい。図示の実施形態においては、片側部材及び他側部材と入力側機器及び出力側機器とはセレーションによって接続されていたが、かかる接続は任意の形式であってよい。念のため付言すると、本発明は角度位置保持装置であるが、本発明の構成及び作動を考慮(即ち継手手段及び制動トルク付与手段のいずれか一方を入力側装置に、いずれか他方を出力側装置に接続する等)すれば、本発明をトルクリミッタに転用することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
2:角度位置保持装置
4:継手手段
6:制動トルク付与手段
8:片側部材
10:他側部材
16:(片側部材に形成された)係止部
20:接続体
22:被作用筒
28:(他側部材に形成された)被係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7