(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167701
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】糖、その塩、又はそれらの溶媒和物
(51)【国際特許分類】
C07H 5/06 20060101AFI20241127BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20241127BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241127BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241127BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20241127BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20241127BHJP
【FI】
C07H5/06
A61K31/7016
A61P37/04
A61P31/00
A61P37/00
A23L33/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083953
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】504145283
【氏名又は名称】国立大学法人 和歌山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真範
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 千秋
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD28
4B018MD31
4B018MD90
4B018ME09
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4C057BB03
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4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB01
4C086ZB09
4C086ZB31
(57)【要約】
【課題】免疫賦活作用を有するオリゴ糖を提供すること。
【解決手段】Galβ(1→3)Xxx1[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。]若しくはGalβ(1→3)Xxx1-Xxx2[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示し、Xxx2は任意の糖を示す。]で表される糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Galβ(1→3)Xxx1[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。]若しくはGalβ(1→3)Xxx1-Xxx2[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示し、Xxx2は任意の糖を示す。]で表される糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
Xxx1が6-スルホ-N-アセチルガラクトサミンである、請求項1に記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項3】
前記糖を構成する単糖の分子数が2~20である、請求項1に記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項4】
前記分子数が2~5である、請求項3に記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の糖、その塩、及びそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、組成物。
【請求項6】
経口摂取形態である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
食品組成物、食品添加剤、健康増進剤、栄養補助剤、医薬、又は試薬である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
免疫賦活、感染防御、及びIgA産生促進からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
ガラクトース供与体とXxx1[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。]又はXxx1-Xxx2[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示し、Xxx2は任意の糖を示す。]で表される糖とを、β-ガラクトシダーゼの存在下で反応させる工程を含む、請求項1~4のいずれかに記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖、その塩、又はそれらの溶媒和物等に関する。
【背景技術】
【0002】
生体において、粘膜は、細菌やウイルス等の微生物、各種抗原、毒素等にさらされているので、これらに対する防御機構が存在する。その一つとして、腸管免疫等の粘膜免疫機構が知られている。例えば、腸粘膜においては、パイエル板の免疫細胞によって免疫グロブリンA(IgA)が分泌され、これにより、微生物の腸粘膜からの侵入阻止、毒素の中和、アレルゲンの侵入阻止、腸内共生菌の制御が行われている。したがって、免疫グロブリンAの分泌を促進すれば、粘膜免疫が活性化され、病原体感染やその毒素による中毒等に対してより抵抗力が高まると考えられている。
【0003】
ガラクト-N-ビオースは従来よりプレバイオティクスとしてしられていた。例えば、非特許文献1には、乳酸菌がガラクト-N-ビオース存在下で生育することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Appl Microbiol Biotechnol. 2017 Jan;101(1):205-215. doi: 10.1007/s00253-016-7882-0. Epub 2016 Oct 7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレバイオティクスとしての利用が見込めるオリゴ糖でありながらも免疫賦活作用を有する物質であれば、有用な腸内細菌の増殖による有益作用と免疫賦活作用の両方の発揮が期待できる。しかし、ガラクト-N-ビオースは、IgA分泌促進作用等の免疫賦活作用を有しない。
【0006】
そこで、本発明は、免疫賦活作用を有するオリゴ糖を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、Galβ(1→3)Xxx1[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。]若しくはGalβ(1→3)Xxx1-Xxx2[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示し、Xxx2は任意の糖を示す。]で表される糖、その塩、又はそれらの溶媒和物、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. Galβ(1→3)Xxx1[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。]若しくはGalβ(1→3)Xxx1-Xxx2[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示し、Xxx2は任意の糖を示す。]で表される糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【0009】
項2. Xxx1が6-スルホ-N-アセチルガラクトサミンである、項1に記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【0010】
項3. 前記糖を構成する単糖の分子数が2~20である、項1に記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【0011】
項4. 前記分子数が2~5である、項3に記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【0012】
項5. 項1~4のいずれかに記載の糖、その塩、及びそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、組成物。
【0013】
項6. 経口摂取形態である、項5に記載の組成物。
【0014】
項7. 食品組成物、食品添加剤、健康増進剤、栄養補助剤、医薬、又は試薬である、項5に記載の組成物。
【0015】
項8. 免疫賦活、感染防御、及びIgA産生促進からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、項5に記載の組成物。
【0016】
項9. ガラクトース供与体とXxx1[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。]又はXxx1-Xxx2[Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示し、Xxx2は任意の糖を示す。]で表される糖とを、β-ガラクトシダーゼの存在下で反応させる工程を含む、項1~4のいずれかに記載の糖、その塩、又はそれらの溶媒和物を製造する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、免疫賦活作用を有するオリゴ糖を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】試験例1の結果を示す。グラフ上方に測定対象遺伝子を示す。縦軸は、遺伝子発現量を示す。横軸中、6S_GNBは6-スルホ-ガラクト-N-ビオース添加群を示し、GNBはガラクト-N-ビオース添加群を示し、controlは無添加群を示す。上方に表示されるアルファベットが異なる群間は、有意(P<0.01)であることを示す。
【
図2】試験例2の結果を示す。縦軸は、上清中のIgA量を示す。横軸中、6S-GNBは6-スルホ-ガラクト-N-ビオース添加群を示し、GNBはガラクト-N-ビオース添加群を示し、controlは無添加群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0020】
1.オリゴ糖
本発明は、その一態様において、Galβ(1→3)Xxx1若しくはGalβ(1→3)Xxx1-Xxx2で表される糖、その塩、又はそれらの溶媒和物(本明細書において、まとめて「本発明のオリゴ糖」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0021】
Xxx1は6-スルホ-N-アセチルアミノ糖を示す。6-スルホ-N-アセチルアミノ糖としては、六炭糖の6位のヒドロキシ基(-OH)を-O-S(=O)2-OHに置き換え且つ6位及び3位以外のヒドロキシ基(典型的には2位のヒドロキシ基)をアミノ基に置き換えてなる糖(アミノ糖)のアミノ基がアセチル基で置換されてなる糖であり、その限りにおいて特に制限されない。6-スルホ-N-アセチルアミノ糖としては、具体的には、例えば6-スルホ-N-アセチルガラクトサミン、6-スルホ-N-アセチルグルコサミン、6-スルホ-N-アセチルマンノサミン等が挙げられる。これらの中でも、免疫賦活作用の観点から、好ましくは6-スルホ-N-アセチルガラクトサミン、6-スルホ-N-アセチルグルコサミン、特に好ましくは6-スルホ-N-アセチルガラクトサミンが挙げられる。
【0022】
Xxx2は任意の糖を示す。任意の糖としては、例えば単糖、オリゴ糖等が挙げられる。
【0023】
単糖としては、特に限定されず、公知の単糖を採用することができる。例えば、七炭糖、六炭糖、五炭糖、四炭糖、又は三炭糖等が挙げられ、これらの中でも六炭糖が好ましく挙げられる。
【0024】
六炭糖としては、ガラクトース、グルコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、フルクトース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、イドース、プシコース、ソルボース、又はタガトースが挙げられる。また、これらは一部のヒドロキシ基が還元されて水素原子に置換されていてもよいし、一部のヒドロキシ基が公知の保護基で保護されていても、硫酸基等の官能基で置換されていてもよい。
【0025】
オリゴ糖は、2分子以上の単糖がグリコシド結合により1分子に連結された糖である。オリゴ糖を構成する単糖の分子数としては、例えば2~20が挙げられ、好ましくは2~10が挙げられ、より好ましくは2~5が挙げられ、更に好ましくは2~3が挙げられる。オリゴ糖を構成する単糖の種類としては、特に限定されず、上記に示した単糖を採用することができる。またオリゴ糖を構成する単糖の組み合わせも特に限定されない。オリゴ糖の具体例としては、構成する単糖の分子数が2であるオリゴ糖(例えばラクトース、Galβ(1→3)GalNAc、Galβ(1→6)GalNAc、Galβ(1→4)GlcNAc、Galβ(1→6)GlcNAc、スクロース、マルトース、トレハロース、ツラノース、又はセロビオース等)、構成する単糖の分子数が3であるオリゴ糖(例えばラフィノース、メレジトース、又はマルトトリオース等)、構成する単糖の分子数が4であるオリゴ糖(例えばアカルボース、又はスタキオース)、構成する単糖の分子数が5以上であるオリゴ糖が挙げられ、これらの中でも構成する単糖の分子数が2であるオリゴ糖が好ましく挙げられる。
【0026】
Galβ(1→3)Xxx1は、ガラクトース(Gal)の1位のヒドロキシ基と6-スルホ-N-アセチルアミノ糖(Xxx1)の3位のヒドロキシ基がβグリコシド結合によって連結されてなる糖である。6-スルホ-N-アセチルアミノ糖が6-スルホ-N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)である場合の構造式(A)(6-スルホ-ガラクト-N-ビオース)、及び6-スルホ-N-アセチルアミノ糖が6-スルホ-N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)である場合の構造式(B)(6-スルホ-ラクト-N-ビオース)を以下に示す。
【0027】
【0028】
【0029】
Galβ(1→3)Xxx1-Xxx2は、Galβ(1→3)Xxx1のXxx1のヒドロキシ基とXxx2のヒドロキシ基とがグリコシド結合によって連結されてなる糖である。グリコシド結合の形態としては、Galβ(1→3)Xxx1-Xxx2が腸内細菌に資化される限り、特に制限されない。当該結合は、例えば生体内で(特に消化管内で)切断可能な結合であることができ、具体的には、例えばα-1,4-グリコシド結合、β-1,4-グリコシド結合等が挙げられる。
【0030】
本発明のオリゴ糖を構成する単糖の分子数は、免疫賦活作用の観点から、例えば2~20、好ましくは2~10、より好ましくは2~5、更に好ましくは2~3である。本発明のオリゴ糖は、免疫賦活作用の観点から、特に好ましくはGalβ(1→3)Xxx1である。
【0031】
塩である本発明のオリゴ糖としては、特に制限されず、例えば薬学的に許容される塩であることができる。該塩としては、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。典型的には、塩である本発明のオリゴ糖は、6-スルホ-N-アセチルアミノ糖におけるスルホ基ととの塩(例えばナトリウム塩などのアルカリ金属塩)である。
【0032】
溶媒和物である本発明のオリゴ糖としては、特に制限されず、例えば薬学的に許容される溶媒との溶媒和物であることができる。溶媒としては、水、薬学的に許容される有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。
【0033】
本発明のオリゴ糖は、例えば、ガラクトース供与体とXxx1又はXxx1-Xxx2で表される糖とを、β-ガラクトシダーゼの存在下で反応させる工程を含む方法により、製造することができる。
【0034】
Xxx1又はXxx1-Xxx2で表される糖については、上述のとおりである。
【0035】
Xxx1及びXxx1-Xxx2で表される糖は、N-アセチルアミノ糖、又はN-アセチルアミノ糖のヒドロキシ基とXxx2のヒドロキシ基とがグリコシド結合によって連結されてなる糖と硫酸化試薬(例えば三酸化硫黄ピリジン錯体、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体等)とを反応させることにより、得ることができる。
【0036】
ガラクトース供与体は、特に制限されず、特開2017-195793号公報に記載のガラクトース供与体を広く使用することができる。具体例としては、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド、o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド、4-メトキシフェニル-β-D-ガラクトピラノシド、フェニル-β-D-ガラクトピラノシド、ラクト-N-ビオース、ガラクトビオース等が挙げられる。
【0037】
β-ガラクトシダーゼとしては、特に制限されないが、反応効率の観点から、好ましくは特開2017-195793号公報に記載のβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。特に好ましくは、バシラス属細菌GS-MAIU株(特許生物寄託センター受託番号:NITE P-02240))由来のβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0038】
反応は、特開2017-195793号公報に記載の方法に従って又は準じて行うことができる。
【0039】
上記反応後、反応によって得られた本発明のオリゴ糖を含む溶液を、さらに精製工程に供してもよい。精製手段は、公知の方法(分液、蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等)を採用できる。また過剰の糖受容体は反応終了後、回収、再利用できる。
【0040】
2.用途
本発明のオリゴ糖は、免疫賦活、感染防御、及びIgA産生促進からなる群より選択される少なくとも1種の作用を発揮することができる。
【0041】
免疫賦活により、微生物感染を予防することができ、また微生物感染症状等を改善することができる。また、免疫賦活により、ワクチン抗原の免疫原性を高めることができる。IgA(分泌型IgA)産生促進により、微生物感染防御、毒素の中和、アレルゲンの侵入阻止、腸内共生菌の制御等が可能になる。
【0042】
本発明のオリゴ糖は、例えば粘膜(例えば、頬側粘膜、胃粘膜、腸粘膜、嗅上皮、口腔粘膜、子宮内膜等、好ましくは腸粘膜)上へのIgA(分泌型IgA)の分泌を促進することができる。
【0043】
本発明のオリゴ糖は、腸内細菌の非存在下であっても、上記作用を発揮することができる。このため、本発明のオリゴ糖は、腸内細菌の保持量が少ない(或いは全くない)細胞、粘膜或いは検体(高齢者や抗生物質服用者)に対しても、上記作用を効果的に発揮することができる。
【0044】
微生物としては、ウイルス、菌等が挙げられる。
【0045】
ウイルスとしては、特に制限されないが、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型、B型等)、風疹ウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス(例えばSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)等)、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルス等のエンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス); アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ライノウイルス等の非エンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)等が挙げられる。
【0046】
菌としては、特に制限されないが、例えば百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、サルモネラ菌、ピロリ菌、ウエルシュ菌、ボツリヌス菌、カンピロバクター、大腸菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、セレウス菌、腸炎ビブリオ、アクネ菌、フェカーリス菌、ディフィシル菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ菌、肺炎桿菌、コイネバクテリウム、溶連菌、緑膿菌、ブドウ球菌、マイコプラズマ、カンジダ菌、アスペルギルス菌等が挙げられる。
【0047】
本発明は、その一態様において、本発明のオリゴ糖を含有する、組成物(本明細書において、「本発明の組成物」と示すこともある。)、に関する。
【0048】
本発明の組成物は、本発明のオリゴ糖を、精製物として含有することが好ましい。本発明の組成物が含有する有効成分である本発明のオリゴ糖の含有量は、本発明の組成物が含有する糖100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、とりわけ好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることができる。
【0049】
本発明の組成物、本発明のオリゴ糖は、各種分野において、例えば食品添加剤、食品組成物(健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)を包含する)、医薬、試薬などとして用いることができる。
【0050】
本発明の組成物、本発明のオリゴ糖の使用態様は、特に制限されず、その種類に応じて適切な使用態様を採ることができる。本発明の薬剤は、その用途に応じて、例えばin vitroで使用する(例えば、培養細胞の培地に添加する。)こともできるし、in vivoで使用する(例えば、動物に投与する。)こともできる。
【0051】
本発明の組成物、本発明のオリゴ糖の適用対象は特に限定されないが、哺乳動物では、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ等が挙げられる。また、細胞としては、動物細胞等が挙げられる。細胞の種類も特に制限されず、例えば血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物、本発明のオリゴ糖は、通常は経口摂取されるが、これに限定されるものではない。本発明の組成物、本発明のオリゴ糖は、経口投与; 経管栄養、注腸投与等の経腸投与; 経静脈投与、経動脈投与、筋肉内投与、心臓内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、経鼻投与等の非経口投与等に供することができる。
【0053】
本発明の組成物の形態は、特に限定されず、用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
【0054】
本発明の組成物の形態としては、用途が食品添加剤、健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などが挙げられる。
【0055】
本発明の組成物の形態としては、用途が医薬の場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口製剤形態や、注射用製剤(例えば、点滴注射剤(例えば点滴静注用製剤等)、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等の非経口製剤形態などが挙げられる。
【0056】
本発明の組成物の形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えば、(1)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(2)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(3)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(4)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(5)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(6)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(7)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(8)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(9)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(10)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(11)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(12)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(13)加工卵製品、(14)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(15)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(16)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、食品添加剤、食品組成物、医薬、試薬、健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えばアミノ酸類、アルコール類、多価アルコール類、糖類、ガム質、多糖類などの高分子化合物、界面活性剤、防腐・抗菌・殺菌剤、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、酵素成分、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、清涼化剤の他、ミネラル類、細胞賦活剤、滋養強壮剤、賦形剤、増粘剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、分散剤、吸着剤、崩壊補助剤、湿潤剤または湿潤調節剤、防湿剤、着色料、着香剤または香料、芳香剤、還元剤、可溶化剤、溶解補助剤、発泡剤、粘稠剤または粘稠化剤、溶剤、基剤、乳化剤、可塑剤、緩衝剤、光沢化剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物における有効成分の含有量は、用途、使用態様、適用対象の状態などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.0001~100質量%、好ましくは0.001~50質量%とすることができる。当該含有量は、乾燥重量換算で、例えば50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上であることができる。
【0059】
本発明の組成物、本発明のオリゴ糖の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、その効果を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、本発明のオリゴ糖の乾燥重量として、一般に一日あたり0.1~10000mg/kg体重である。上記適用量は1日1回以上(例えば1~3回)適用するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【実施例0060】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0061】
合成例1.6-スルホ-N-アセチルガラクトサミン(6sulfo GalNAc)の合成
N-アセチルガラクトサミン(72 mg, 0.30 mmol)、及び三酸化硫黄ピリジン錯体(48 mg, 0.30 mmol)を、DMF (3.6 mL)に溶解し、室温にて24時間攪拌した。反応終了後、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的とした6-スルホ-N-アセチルガラクトサミン(13.5 mg)を得た。
【0062】
合成例2.Galβ(1→3)6sulfo GalNAc(6-スルホ-ガラクト-N-ビオース)の合成
PNP-ガラクトース(27.3 mg, 90.6μmol)、6sulfo N-アセチルガラクトサミン(292.8 mg, 0.90 mmol)を、50 mM リン酸buffer(pH = 6.0)600μLに溶解し、β-ガラクトシダーゼ(155μL, 30 mU, Bacillus sp.(GS-MAIU株(特許生物寄託センター受託番号:NITE P-02240))由来)を加え、37 ℃にて48時間インキュベートした。反応終了後、100℃にて3分間加熱し、反応器を15000×g、5分間遠心した。上清をゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的とした6-スルホ-ガラクト-N-ビオース(12.5 mg, 42.8%)を得た。
1H-NMR (D2O) δ5.11 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 4.61 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 4.39 (d, 1 H, J = 7.6 Hz), 4.33 (d, 1 H, J = 7.3 Hz), 4.27-4.24 (m), 4.20-4.17 (m), 4.12-4.03 (m), 3.96-3.74 (m), 3.68-3.59 (m), 3.56-3.49 (m), 3.41 (dd, 1 H, J = 8.0 Hz, J = 10.4 Hz), 1.92 (s, 3 H)。
【0063】
合成例3.Galβ(1→3) GalNAc(ガラクト-N-ビオース)の合成
β-PNP-ガラクトース(5 mg, 16.6μmol)を蒸留水 495μLに溶解した。続いて、β-ガラクトシダーゼ(Bacillus sp.(GS-MAIU株(特許生物寄託センター受託番号:NITE P-02240)由来)液 100μL、及びN-アセチルガラクトサミン溶液(50 mM Tris-HClバッファー(pH 8.0)) 2.5 mL(N-アセチルガラクトサミン:200 mg、0.91 mmol)を加え、37℃にて 48 h インキュベートした。反応終了後、100℃にて3分間加熱し酵素を失活し反応を停止した。その反応液を脱塩、フィルターし不溶成分を除去した後、GLサイエンス社製(HPLCシステムPLC761)、Inertsil Amide 5 μm (14 x 250 mm) カラムに供し(カラム温度:40℃、溶離液:アセトニトリル/水=7/3、流速:9.5 mL / min)、検出はUV-215nmにてガラクト-N-ビオース( 4.93 mg, 12.7μmol, 77.5%)を得た。
1H-NMR (D2O) δ5.01 (d, 1H, J = 3.6 Hz), 4.50 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 4.30 (d, 1 H, J = 7.6 Hz), 4.08 (dd), 4.05 (d, 1 H), 3.98-3.66 (m), 3.56-3.40 (m), 3.32 (t, 1 H), 1.82 (s, 3 H)。
【0064】
試験例1.6-スルホ-ガラクト-N-ビオースによる樹状細胞刺激効果
マウス(BALB/cA)骨髄由来の樹状細胞 (0.3×106 cells/mL)を、6-スルホ-ガラクト-N-ビオース又はガラクト-N-ビオースの添加培地 (終濃度100μg/ml)で12時間培養(37℃、5%CO2)し、遠心にて細胞を回収し、qRT-PCRにより細胞の遺伝子(IL-10、IL-12、IL-6、iNOS、RALDH2)の発現量を測定した。
【0065】
結果を
図1に示す。6-スルホ-ガラクト-N-ビオースの刺激によって、感染防御機構を誘導するiNOS、IgA抗体産生を促すIL-6、エフェクターT細胞への分化を誘導及び制御するIL-12, IL-10, RALDH2の遺伝子発現が有意に上昇した。
【0066】
試験例2.6-スルホ-ガラクト-N-ビオースによるIgA産生誘導効果
マウス(BALB/cA)のパイエル板免疫細胞 (1.25 ×106 cells/mL)を、6-スルホ-ガラクト-N-ビオース又はガラクト-N-ビオースの添加培地 (終濃度150μg/ml)で5日間培養(37℃、5%CO2)し、上清中のイムノグロブリンA (IgA) 量をELISA 法で測定した。
【0067】
結果を
図2に示す。6-スルホ-ガラクト-N-ビオース刺激によって分泌されるIgA抗体量が有意に上昇した。