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特開2024-167711車両制御装置、外部装置及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167711
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両制御装置、外部装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20241127BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
B60R16/023 Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083965
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000167288
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 一浩
(72)【発明者】
【氏名】荒木 惇也
(72)【発明者】
【氏名】村越 孝
(72)【発明者】
【氏名】矢谷 俊晃
(72)【発明者】
【氏名】永田 富夫
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA04
5K033BA06
5K033CB06
5K033DB16
(57)【要約】
【課題】外部装置との間で1つの電線で複数の電気的な信号のやり取りを排他的に行うことが可能となり、外部装置と接続する電線やコネクタの物理的体積と部品価格を削減することが可能な車両制御装置、外部装置及びシステムを提供する。
【解決手段】車両制御装置1は、送信すべき信号を外部装置3との間で送受信する装置であって、送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える継電器16と、1つの信号に対応する継電器切替信号11cを継電器16に送信して継電器16から出力される1つの信号、及び継電器切替信号11cに対応する継電器制御信号11aを共通の電線2を介して外部装置3に送信する制御マイコン11とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき信号を外部装置との間で送受信する車両制御装置であって、
送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える切替手段と、
前記1つの信号に対応する切替信号を前記切替手段に送信して前記切替手段から出力される前記1つの信号、及び前記切替信号に対応する制御信号を共通の電線を介して前記外部装置に送信する制御手段と、
を備えた車両制御装置。
【請求項2】
前記送信すべき複数の信号は、いずれもが前記制御信号を送受信可能な無効期間を含み、
前記制御手段は、前記無効期間に前記制御信号を前記共通の電線を介して前記外部装置に送信する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記送信すべき複数の信号に関する処理を行う処理手段、をさらに備え、
前記処理手段は、前記外部装置から前記共通の電線を介して前記切替手段を制御するための制御信号を受信するタイミングが、前記無効期間の場合は、当該制御信号の受信を有効とし、前記送信すべき信号の有効期間の場合は、当該制御信号の受信を無効とする、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記外部装置から前記共通の電線を介して前記送信すべき信号を受信するタイミングが、前記無効期間の場合は、当該信号の受信を無効とし、前記送信すべき信号の有効期間の場合は、当該信号の受信を有効とする、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記送信すべき信号に含まれている前記無効期間以外の前記送信すべき信号の有効期間に、前記外部装置から前記切替手段を制御するための制御信号を前記共通の電線を介して受信したとき、当該制御信号を信号無効あるいは信号異常と判定して当該制御信号に含まれている情報を破棄する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項6】
送信すべき信号を車両制御装置との間で送受信する外部装置であって、
送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える切替手段と、
前記1つの信号に対応する切替信号を前記切替手段に送信して前記切替手段から出力される前記1つの信号、及び前記切替信号に対応する制御信号を共通の電線を介して前記車両制御装置に送信する制御手段と、
を備えた外部装置。
【請求項7】
送信すべき信号を互いに送受信する外部装置及び車両制御装置を有するシステムであって、
前記外部装置及び前記車両制御装置の各々は、
送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える切替手段と、
前記1つの信号に対応する切替信号を前記切替手段に送信して前記切替手段から出力される前記1つの信号、及び前記切替信号に対応する制御信号を共通の電線を介して前記外部装置に送信する制御手段と、
を備えたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する車両制御装置、外部装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を制御する車両制御装置が外部装置(他の制御装置、外部機器等)との電気的な信号のやり取りを行う場合、共通の規格及び仕様に準拠する情報を送受信する信号を除き、個別に電線を配線して接続し、信号の送受信が行われている。例えば、自動車の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)のソフトウェアを開発し、その機能を検証する場合、標準IEEE 1149.1の通称であるJTAG(Joint Test Action Group)等の規格に従って接続される外部装置を利用することにより、そのソフトウェアをデバッグすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、車両制御装置を主体的に制御するマイコンのプログラムデータを読み書きするJTAGを使用するための電線は、専用で配線する必要があり、他の入出力インタフェースのために配線される電線とは排他的に使用される。JTAGで使用されるプロトコル仕様などは、マイコンメーカごとに固有で決められており、マイコンメーカが販売するJTAG用開発装置を接続して使用するため、セキュリティ対策の観点からも仕様は秘匿化されているのが一般的である。マイコンメーカから提供されるJTAG用開発装置とマイコン間の配線は、排他的に専用で使用することが求められ、他の出力インタフェースとの共用は禁止されている。
【0004】
また、車両制御装置の外部機器との接続においても、配線される電線は、排他的に使用されることが外部機器を製造販売する機器メーカより求められる場合がある。例えば、GPSアンテナモジュールは、一般的にはIEEE等の公的規格に適合したシリアル通信を用いて制御情報のやり取りを行うが、モジュール個別の仕様として定期的な制御情報の送受信が求められることがあり、これらの個別の仕様は、IEEE等の公的規格の範囲外である。これらの個別の仕様で定められ、単独での使用が求められるモジュールにおいて、他のモジュールを1つの電線で共存させて動作させることは、機器メーカからの動作保証が受けられなくなり、物理的にも正常な動作が困難であるため、配線される電線は排他的に使用されることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-86742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、車両を制御する車両制御装置が外部装置との電気的な信号のやり取りを行う場合、扱う信号の増加に比例して、電線及び電線と外部装置を接続するコネクタの端子が増加し、これに伴う物理的体積と部品価格の増加が課題となっている。
【0007】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解決するためになされたものであり、外部装置との間で1つの電線で複数の電気的な信号のやり取りを排他的に行うことが可能となり、外部装置と接続する電線やコネクタの物理的体積と部品価格を削減することが可能な車両制御装置、外部装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達するため、送信すべき信号を外部装置との間で送受信する車両制御装置であって、送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える切替手段と、前記1つの信号に対応する切替信号を前記切替手段に送信して前記切替手段から出力される前記1つの信号、及び前記切替信号に対応する制御信号を共通の電線を介して前記外部装置に送信する制御手段と、を備えた車両制御装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記目的を達成するため、送信すべき信号を車両制御装置との間で送受信する外部装置であって、送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える切替手段と、前記1つの信号に対応する切替信号を前記切替手段に送信して前記切替手段から出力される前記1つの信号、及び前記切替信号に対応する制御信号を共通の電線を介して前記車両制御装置に送信する制御手段と、を備えた外部装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記目的を達成するため、送信すべき信号を互いに送受信する外部装置及び車両制御装置を有するシステムであって、前記外部装置及び前記車両制御装置の各々は、送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替える切替手段と、前記1つの信号に対応する切替信号を前記切替手段に送信して前記切替手段から出力される前記1つの信号、及び前記切替信号に対応する制御信号を共通の電線を介して前記外部装置に送信する制御手段と、を備えたシステムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部装置との間で1つの電線で複数の電気的な信号のやり取りを排他的に行うことが可能となり、外部装置と接続する電線やコネクタの物理的体積と部品価格を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る車両制御装置の概略の構成例を示すブロック図である。
図2】送信すべき信号の種類を説明するための図である。
図3】継電器制御信号を送信するパケットのフォーマットの一例を示す図である。
図4】継電器制御信号の送受信のタイミングの一例を示す図である。
図5】継電器制御信号を破棄する場合のフローの一例を示す図である。
図6】外部装置から継電器の切り替え要求を行う場合のフローの一例を示す図である。
図7】車両制御装置から継電器の切り替え要求を行う場合のフローの一例を示す図である。
図8】正常な応答信号を受信できない場合のフローの一例を示す図である。
図9】継電器制御信号を再受信する場合のフローの一例を示す図である。
図10】本実施の形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図9を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両制御装置の概要の構成例を示すブロック図である。この車両制御装置1は、自車両の車両機能を制御するものであり、電線2を介して外部装置3が接続されている。車両制御装置1及び外部装置3は、電線2により複数種のアナログ信号やデジタル信号(以下、「送信すべき信号」又は単に「信号」ともいう。)を送受信する。電線2は、共通の電線の一例である。車両制御装置1、電線2及び外部装置3は、車両用システムの一例である。
【0015】
(車両制御装置の構成)
車両制御装置1は、車両に設けられ、複数の電子素子モジュール40a、40b、40c等や複数の電気負荷41a、41b、41c等を有する機器類4が接続され、各電子素子モジュール40a、40b、40cからの信号を入力するとともに、各電気負荷41a、41b、41cに信号を出力するインタフェース部12と、電子素子モジュール40a、40b、40cからの信号、及び電気負荷41a、41b、41cへの信号に関する処理を行う処理マイコン13と、外部装置3に送信すべき信号に対応して設けられた複数の内部回路14a、14b、14cと、内部回路14a、14b、14cに経路15a、15b、15cによって接続され、送信すべき信号の切り替えを排他的に行う継電器16と、制御マイコン11及び継電器16に接続され、外部装置3との間で信号を送受信するインタフェース回路17とを備えている。ここで、制御マイコン11は、制御手段の一例である。処理マイコン13は、処理手段の一例である。継電器16は、切替手段の一例である。機器類4は、制御対象の一例である。
【0016】
なお、以下の説明において、複数の電子素子モジュール40a、40b、40cを総称するときは、電子素子モジュール40という。複数の電気負荷41a、41b、41cを総称するときは、電気負荷41という。複数の内部回路14a、14b、14cを総称するときは、内部回路14という。複数の経路15a、15b、15cを総称するときは、経路15という。図1では、送信すべき信号、内部回路14及び経路15の数をそれぞれ3つとしているが、3つに限られず、2つ又は4つ以上でもよい。
【0017】
電子素子モジュール40は、センサ等の電子素子をモジュール化したものであり、アナログ信号を出力するものもあれば、デジタル信号を出力するものもある。電気負荷41としては、例えば、エアコン、オーディオ、カーナビゲーション等が挙げられるが、これらに限られない。
【0018】
(車両機能を制御する構成)
次に、車両機能を制御する構成の一例について説明する。電子素子モジュール40からアナログ信号が出力されると、アナログ信号は、インタフェース部12のインタフェース回路を介して処理マイコン13の該当端子に受信を可能にするI/O回路に入力され、I/O回路によってアナログ信号電圧が分圧あるいは昇圧されて処理マイコン13の該当端子に入力する。処理マイコン13は、入力されたアナログ信号電圧をAD変換し、変換したデジタル値を予めプログラミングされた処理系によって処理する。なお、処理マイコン13は、アナログ信号電圧をコンパレータに入力して閾値以上か否かの2値でデジタル入力する場合もある。
【0019】
電子素子モジュール40からは、規格化されたデジタル信号電圧にて情報を送受信する場合もある。この場合も電子素子モジュール40からデジタル信号が出力されると、デジタル信号は、インタフェース部12のインタフェース回路を介して処理マイコン13の該当端子に受信を可能にするI/O回路に入力され、I/O回路によってデジタル信号電圧が分圧あるいは昇圧されて処理マイコン13の該当端子に入力する。処理マイコン13は、入力されたデジタル信号電圧を既定の時間間隔で読み取って得られたデジタル値を予めプログラミングされた処理系によって処理する。
【0020】
処理マイコン13は、予めプログラミングされた処理系によって処理された結果に応じた電気信号を、インタフェース部12を介して電気負荷41に出力する。例えば、ランプのような電気負荷41は、通電又は非通電を制御するデジタル信号電圧で動作する。処理マイコン13から出力された電気信号は、インタフェース部12のインタフェース回路の動作を可能にするI/O回路を介してインタフェース回路に入力され、インタフェース回路によって電気信号電圧が分圧あるいは昇圧された電圧が車両制御装置1の接続子に配線される電線へ通電し、その電圧が電気負荷41を動作させる。なお、電気負荷41がランプのような光源の場合、電気信号電圧を分圧あるいは昇圧せずに、電圧を高速でスイッチングし、その時間間隔を増減することで光源の明るさを制御してもよい。
【0021】
一部の電気負荷41は、アナログ信号電圧で動作する。処理マイコン13から出力されたアナログ信号は、インタフェース部12のインタフェース回路の動作を可能にするI/O回路を介してインタフェース回路に入力され、インタフェース回路によって分圧あるいは昇圧された電圧が車両制御装置1の接続子に配線される電線へ通電し、その電圧が電気負荷41を動作させる。
【0022】
これらの車両機能を制御するために用いられるデジタル信号電圧あるいはアナログ信号電圧をまとめたものを後述する図2に示す。これらのうち任意に選択された信号をA、B、Cとする。信号Aを通る経路は経路15a、34aであり、信号Bを通る経路は経路15b、34bであり、信号Cを通る経路は経路15c、34cである。送信すべき信号A、B、Cの具体例については後述する。
【0023】
(車両制御装置の各部の構成)
制御マイコン11は、継電器制御信号11a及び応答信号11bをインタフェース回路17を介して外部装置3に送信し、継電器切替信号11cを継電器16に送信する。これらの継電器制御信号11a、応答信号11b及び継電器切替信号11cは、外部装置3に送信すべき信号A、B、Cに対応した信号である。継電器制御信号11aは、送信すべき信号A、B、Cのいずれかの切り替えの要求メッセージを含む。応答信号11bは、外部装置3から正しい継電器制御信号31aを受信し、継電器16の切り替えを実施することを伝えるための応答メッセージを含む。継電器制御信号11a及び継電器制御信号31aは、制御信号の一例である。
【0024】
インタフェース部12は、上述したようにインタフェース回路及びI/O回路を有する。
【0025】
処理マイコン13は、外部装置3に送信すべき信号に対応した切替制御信号13aを制御マイコン11に送信する。切替制御信号13aは、継電器16の切り替え要求を含む。
【0026】
車両制御装置1において、送信すべき信号A、B、Cがそれぞれ通る経路15a、15b、15cは、内部回路14a、14b、14cを介して処理マイコン13へ接続され、もう一方は継電器16へ接続されている。
【0027】
継電器16は、電磁リレー、アナログリレーIC等によって構成され、制御マイコン11からの継電器切替信号11cによって接点16a、16b、16c及び経路15a、15b、15cを切り替える。継電器16は、インタフェース回路17と制御マイコン11の制御により選択された経路15a、15b、15cとを接続する。すなわち、継電器16は、信号Aを送信するときは、経路15aに接続された接点16aと接点16dとを接続し、信号Bを送信するときは、経路15bに接続された接点16bと接点16dとを接続し、信号Cを送信するときは、経路15cに接続された接点16cと接点16dとを接続する。
【0028】
インタフェース回路17は、制御マイコン11及び継電器16に接続され、制御マイコン11からの継電器制御信号11a、応答信号11b、又は継電器16にて選択された信号A、B、Cのいずれか1つを、接続子10aに接続された電線2を介して外部装置3に送信する。
【0029】
(外部装置の構成)
外部装置3は、車両制御装置1との間で信号の送受信を制御する制御マイコン31と、送信すべき信号に応じた処理や外部装置3が機器として基本機能の制御等を行う処理部32と、送信すべき信号に対応して設けられた複数の内部回路33a、33b、33cと、内部回路33a、33b、33cに複数の経路34a、34b、34cを介して接続され、送信すべき信号の切り替えを行う継電器35と、車両制御装置1との間で信号を送受信するためのインタフェース回路36と、機器類5が接続されるインタフェース部37とを備えている。ここで、制御マイコン31は、制御手段の一例である。処理部32は、処理手段の一例である。継電器35は、切替手段の一例である。なお、以下の説明において、複数の内部回路33a、33b、33cを総称するときは、内部回路33ともいう。複数の経路34a、34b、34cを総称するときは、経路34ともいう。
【0030】
図1は、一例として外部装置3が車両制御装置の故障診断を行う場合を示している。この場合の機器類5は、例えば、操作表示器(押しボタン、スイッチ、LED、ブザー等を含む。)、記録媒体(例えば、マイクロSD)、通信インタフェース(例えば、Bluetooth(登録商標))等である。なお、外部装置3がJTAG開発を行うものでもよい。この場合の機器類5は、例えば、操作表示器、JTAGユニット、JTAGユニットに接続されたパソコン等である。この場合、内部回路が処理部32を介さずJTAGユニットが内部回路に接続される。また、外部装置3が他の車両制御装置(ECU)でもよい。この場合の機器類5は、操作表示器、CAN通信等の通信インタフェースである。この場合、外部装置3が制御マイコン31を持たない場合、車両制御装置1における内部回路14a、14b、14cのいずれかとの接続は、車両制御装置1の制御マイコン11あるいは処理マイコン13に依存することになる。
【0031】
外部装置3において、送信すべき信号A、B、Cがそれぞれ通る経路34a、34b、34cは、内部回路33a、33b、33cを介して処理部32へ接続され、もう一方は継電器35へ接続されている。
【0032】
制御マイコン31は、継電器制御信号31a及び応答信号31bをインタフェース回路36を介して車両制御装置1に送信し、継電器切替信号31cを継電器35に送信する。これらの継電器制御信号31a、応答信号31b及び継電器切替信号31cは、車両制御装置1に送信すべき信号に対応した信号である。継電器制御信号31aは、送信すべき信号A、B、Cのいずれかの切り替えの要求メッセージを含む。応答信号31bは、車両制御装置1から正しい継電器制御信号11aを受信し、継電器35の切り替えを実施することを伝えるための応答メッセージを含む。なお、継電器切替信号31cは、継電器35と制御マイコン31との間でのみ用いることから、インタフェース回路36を流れる信号は、継電器制御信号31aと応答信号11bの組合せ、継電器制御信号11aと応答信号31bとの組合せとなる。継電器制御信号31a、11aには、継電器35をどれに切り替えるかのルートの情報(経路15a-接点16a-接点35a-経路34a、経路15b-接点16b-接点35b-経路34b、又は経路15c-接点16c-接点35c-経路34c)が含まれる。
【0033】
処理部32は、マイコンや機能IC等によって構成されている。処理部32は、車両制御装置1に送信すべき信号に対応した切替制御信号32aを制御マイコン31に送信する。切替制御信号32aは、継電器35の切り替え要求を含む。
【0034】
継電器35は、電磁リレー、アナログリレーIC等によって構成され、制御マイコン31からの継電器切替信号31cによって接点35a、35b、35c及び経路34a、34b、34cを切り替える。継電器35は、インタフェース回路36と制御マイコン31の制御により選択された経路34a、34b、34cとを接続する。すなわち、継電器35は、信号Aを送信するときは、経路34aに接続された接点35aと接点35dとを接続し、信号Bを送信するときは、経路34bに接続された接点35bと接点35dとを接続し、信号Cを送信するときは、経路34cに接続された接点35cと接点35dとを接続する。
【0035】
インタフェース回路36は、制御マイコン31及び継電器35に接続され、制御マイコン31からの継電器制御信号31a、応答信号31b、又は継電器35にて選択された信号A、B、Cのいずれか1つを、接続子30aに接続された電線2を介して車両制御装置1に送信する。
【0036】
なお、車両制御装置1の制御マイコン11は、継電器16の状態を処理マイコン13に知らせるために、継電器状態信号を処理マイコン13に送信してもよい。また、外部装置3の制御マイコン31は、継電器35の状態を処理部32に知らせるために、継電器状態信号を処理部32に送信してもよい。また、制御マイコン11及び制御マイコン31の一方が継電器状態信号を送信してもよい。この場合、制御マイコン11は、継電器切替信号11cを継電器16に送信してから一定時間経過後に、継電器状態信号を処理マイコン13に送信する。制御マイコン11は、処理マイコン13から送信される切替制御信号13aのうち、継電器の接続状態の情報を求めるものであった場合も、継電器状態信号を処理マイコン13に送信する。継電器状態信号は、システム構成によっては省略し、省略された場合に処理マイコン13及び処理部32は、切り替えられていることを前提で処理を行う。省略された場合、処理マイコン13及び処理部32は、信号A、B、Cの期待する信号と実際に受信する信号のとの差異から、継電器の接続状態を判断する処理が組み込まれる場合がある。
【0037】
(送信すべき信号の種類)
図2は、車両制御装置1と外部装置3との間で送信すべき信号の種類を説明するための図である。送信すべき信号は、それぞれが専用化されたユニークな仕様を有し、互いに一致性がない。本実施の形態では、本実施の形態を構成する構成要素の有益性を明確にするために一致性がない例を挙げるが、例え一致性があったとしても本実施の形態の効果に対する影響はほとんどない。
【0038】
送信すべき信号は、「波形」、「信号種別」に示すように、デジタル信号の場合(分類a、d、e、f)もあれば、アナログ信号の場合(分類b、c)もある。また、送信すべき信号A、B、Cは、「信号種別」がデジタル信号の場合、「信号仕様」はシリアル通信であるが、アナログ信号の場合は、「信号仕様」はセンサ出力の場合(分類b)もあれば、アナログ通信の場合(分類c)もある。「パケット仕様」には、秘匿された仕様、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)規格の通信方式、1線式シリアル通信である1-WIRE(登録商標)等がある。
【0039】
(継電器制御信号の送受信のタイミング)
図4(a)、(b)、(c)は、継電器を制御する継電器制御信号の送受信のタイミングを示す時間遷移図である。本特許技術においては、具体的な形態に関わらず図4(a)のタイミングにて送受信される。図4(b)及び(c)は、図4(a)と相反する時間遷移であり、本特許技術においては、継電器制御信号11a、31aの送受信のタイミングが図4(b)及び(c)で行われた場合に、処理マイコン13及び処理部32は受信した継電器制御信号11a、31aを破棄し、車両制御装置1に期待される車両制御において影響をもたらさない安全機能を有する。ただし、送信されるべき信号において用いられる信号の種別、すなわち図2の一例で示されるような内容のいずれかにより、あるいは送信されるべき信号が秘匿化され図2の一例で示される信号を観測したときに確認できる無効期間の周期性や時間によっては図4(b)又は(c)が選択される場合もある。この場合も上記に示す安全機能により、車両制御装置1に期待される車両制御において影響をもたらさない。
【0040】
(i) 外部装置3が検査装置、異常診断機、開発装置等の車両を直接制御しないものである場合
(ii) 外部装置3が他の車両制御装置(ECU)であり、処理部32と継電器35との電気的信号の接続が2線以上あり、かつ送信すべき信号A、B、Cが同時に使用されることがなく、かつ送信すべき信号A、B、Cのそれぞれが継電器制御信号11a、31aを送受信可能な無効期間を含む場合
(iii) 上記(ii)に加え、送信すべき信号の有効期間に継電器制御信号11a、31aを受信したとき、処理マイコン13、処理部32が継電器制御信号11a、31aを信号無効又は信号異常と判定して当該継電器制御信号11a、31aを破棄する機能を有する場合
(iv) 外部装置3が他の車両制御装置(ECU)であり、処理部32と継電器35との電気的信号の接続が2線以上あり、かつ送信すべき信号A、B、Cが同時に使用されることがなく、かつ継電器制御信号11a、31aを送信すべき信号と同時に受信したとき、処理部32及び処理マイコン13が本来の信号の処理に影響を及ぼさないように処理する機能を有する場合
【0041】
上記(i)、(ii)の場合は、継電器制御信号11a、31aの送受信は、図4(a)の時間遷移図に示す無効期間に実行される。信号Aには、予め定められた無効期間が含まれており、その無効期間中に継電器制御信号11a、31aが送受信される。図4(a)に示す例では、継電器35が信号Aに切り替えた状態であることを示し、信号Bあるいは信号Cに切り替えた場合であっても、継電器制御信号11a、31aの送受信は、信号Aと同様の無効期間に実行される。
【0042】
また、制御マイコン11、31は、信号Aの有効期間における継電器制御信号11a、31aの受信を無効とし、信号Aの無効期間における継電器制御信号11a、31aの受信を有効とする。信号Aを扱う処理マイコン13及び処理部32は、信号Aの有効期間における信号Aの受信を有効とし、信号Aの無効期間における信号Aの受信を無効とする。これにより、制御マイコン11及び制御マイコン31と処理マイコン13及び処理部32との間で、互いに独立した信号系を維持することができる。なお、このような機能は、他の信号B、Cにおいても同様である。
【0043】
上記(iii)の場合は、継電器制御信号11a、31aの送受信が図4(a)の時間遷移図に示す無効期間に実行されたときは、上記(i)及び(ii)と同様に処理される。継電器制御信号11a、31aの送受信が図4(b)の時間遷移図に示す有効期間に実行されたとき、継電器16、35は継電器制御信号11a、31aに基づいて動作するが、処理マイコン13及び処理部32は、受信した継電器制御信号11a、31aを信号無効もしくは信号異常と判定し、継電器制御信号11a、31aを破棄して処理を終了する。この場合の動作を図5のフローチャートに示す。
【0044】
すなわち、図5(a)に示すように、アナログ信号を入力処理する機能を有する処理マイコン13及び処理部32がアナログ信号の継電器制御信号11a、31aを受信し、処理マイコン13及び処理部32が入力したアナログ信号の電圧の連続性が正常であると判定すると(Y)、処理マイコン13及び処理部32の機能が誤動作を生じるおそれがあるため、処理マイコン13及び処理部32は、常に、入力したアナログ信号の電圧の連続性が正常ではないと判定し(N)、処理を終了する。また、図5(b)に示すように、デジタル信号を入力処理する機能を有する処理マイコン13及び処理部32がデジタル信号の継電器制御信号11a、31aを受信し、処理マイコン13及び処理部32が入力したデジタル信号に含まれるメッセージが正常であると判定すると(Y)、処理マイコン13及び処理部32の機能が誤動作を生じるおそれがあるため、処理マイコン13及び処理部32は、常に、入力したデジタル信号に含まれるメッセージは正常ではないと判定し(N)、処理を終了する。
【0045】
このとき制御マイコン11、31において継電器制御信号11a、31aの正常な受信ができた場合は、上述までの上記(i)及び(ii)における継電器切替処理が実行される。制御マイコン11、31は、図3に示す信号メッセージの独自性に基づいて、継電器制御信号11a、31aの識別ができず信号無効あるいは信号異常として判定し、継電器制御信号11a、31aを破棄する。この動作が実行された場合、後述するフローチャートで説明するリトライ処理が実行される。
【0046】
(iv)において、継電器を制御するための継電器制御信号を送受信するタイミングは、上述までの上記(i)及び(ii)におけるのと同様である。図4に示した時間遷移図のうち(b)のタイミングで継電器制御信号が送信された場合、信号Aを受信する処理マイコン13又は処理部32は、処理系が行う制御に影響を与えない機能を有する。
【0047】
(継電器制御信号を送信するパケットの構成)
図3は、継電器制御信号11a、31aを送信するパケットのフォーマットの一例を示す図である。継電器制御信号11a、31aは、独自の制御信号あるいは既存の制御信号に社名や商標等の固有の情報を加えた制御信号で構成される。独自の制御信号とは、公的に公開されたIEEEやISO等における通信規格との比較において、電圧と時間周期もしくは周波数で表される電気信号及び電気信号で構成されるパケット情報において著しい不一致があり、共通性がみられないあるいは著しく低いと判断される状態のものを指す。
【0048】
既存の制御信号に社名や商標等の固有の情報を加えた制御信号とは、公的に公開されたIEEEやISO等における通信規格を用い、この通信規格で送受信されるメッセージのデータ領域に社名や商標等の固有の情報を加えたものを指し、図3の(a)及び(b)に一例を示す。(a)はメッセージにヘッダ領域やフッタ領域を持たない通信規格における例であり、社名もしくは商標等の固有の情報に、信号の分類を識別する識別子を加えたものである。(b)はメッセージにヘッダ領域やフッタ領域を持つ通信規格における例であり、社名もしくは商標等の固有の情報に、信号の分類を識別する識別子を加えたものである。
【0049】
これらの既存の制御信号に社名や商標等の固有の情報を加えた制御信号は、ASCIIコード等で構成された固定値の連続性を持つ独自性の高い情報であり、車両機能を制御する車両制御装置1と外部装置3の間で信号の送受信される信号A、B、Cで使用される公的に公開されたIEEEやISO等における通信規格を用いたメッセージのデータ領域との一致性は可能な限り低くなる。この方法により独自性及び不一致性は担保され、継電器制御信号は制御マイコン11及び制御マイコン31でのみ正常に扱うことができ、処理部32及び処理マイコン13では異常な信号として扱われることが期待できる。
【0050】
(本実施の形態の動作)
次に、外部装置3からの継電器の切り替え要求に基づく、外部装置3及び車両制御装置1の継電器切替処理の動作、及び車両制御装置1からの継電器の切り替え要求に基づく、車両制御装置1及び外部装置3の継電器切替処理の動作を説明する。なお、これらの動作は異なるため、分けて説明する。
【0051】
(1)外部装置から継電器の切り替え要求がある場合
まず、外部装置3から継電器16の切り替え要求がある場合について説明する。この場合の動作は、図6に示すフローチャートとなる。
【0052】
処理部32又は制御マイコン31の処理系により送信すべき信号A、B、Cの送受信を車両制御装置1との間で行う必要が発生したとする。処理部32が起点である場合、処理部32は、継電器35の切り替え要求を含む切替制御信号32aを制御マイコン31に送信する(ステップS101)。
【0053】
制御マイコン31が起点である場合、又は制御マイコン31が処理部32から切替制御信号32aを通して切り替え要求を受け付けた場合、制御マイコン31は、送信すべき信号A、B、Cのいずれかの切り替えの要求メッセージを含む継電器制御信号31aをインタフェース回路36に送信する(ステップS102)。
【0054】
要求メッセージを含む継電器制御信号31aは、インタフェース回路36から、電線2を通り、車両制御装置1のインタフェース回路17を経由し、制御マイコン11が受信する(ステップS103)。
【0055】
制御マイコン11は、受信した継電器制御信号31aが正しいメッセージであるか否かを判定する(ステップS104)。受信したメッセージが送信すべき信号A、B、Cであれば、制御マイコン11は、受信した継電器制御信号31aが正しくないメッセージであると判定し(ステップS104:N)、処理を終了する。受信した継電器制御信号31aに欠損や情報誤り等が存在する場合も、制御マイコン11は、正しくないメッセージであると判定し(ステップS104:N)、処理を終了する。
【0056】
制御マイコン11は、ステップS104において受信した継電器制御信号31aが正しいメッセージであると判定した場合(ステップS104:Y)、切替制御信号13aやインタフェース回路17の状態の監視から、継電器16が切替可能な状態であるか否かを判定する(ステップS105)。制御マイコン11は、継電器16が切替可能でないと判定した場合(ステップS105:N)、継電器16を切り替えることなく処理を終了する。
【0057】
制御マイコン11は、継電器16が切替可能であると判定した場合(ステップS105:Y)、切り替えを実施することを伝えるための応答メッセージを含む応答信号11bをインタフェース回路17及び電線2を介して外部装置3の制御マイコン31に送信する(ステップS106)。制御マイコン11は、応答信号11bを送信してから一定時間経過後に、ステップS103において受信した継電器制御信号31aに基づいて、送信すべき信号に応じた切り替えを行わせるための継電器切替信号11cを継電器16に送信して継電器16を切り替える。
【0058】
送信された応答信号11bは、インタフェース回路17を経由し、電線2を通り、外部装置3のインタフェース回路36を経由して、外部装置3の制御マイコン31が受信する(ステップS107)。
【0059】
外部装置3の制御マイコン31は、受信した応答信号11bが正しいメッセージであるか否かを判定する(ステップS108)。制御マイコン31は、受信した応答信号11bが正しいメッセージであると判定した場合(ステップS108:Y)、ステップS102において送信した継電器制御信号31aに対応する継電器切替信号31cを継電器35に送信して継電器35を切り替える(ステップS109)。制御マイコン31は、ステップS108において受信した応答信号11bが正しくないメッセージであると判定した場合(ステップS108:N)、処理を終了し、制御マイコン11からの継電器制御信号11aを一定の時間待ち続ける。以上のように継電器16、35が切り替えられたことにより、外部装置3と車両制御装置1は、電線2を経由して送信すべき信号A、B、Cのうち目的の信号を送受信することができる。
【0060】
(外部装置が正常な応答信号を受信できない場合)
上記ステップS108において、外部装置3の制御マイコン31が正常な応答信号11bを受信できない場合の動作を、図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0061】
制御マイコン31は、ステップS102を実行した後、ステップS109が実行されるまで図8に示す処理を一定の間隔で実行し、既定の時間を経過したか否かを判定する(ステップS301)。
【0062】
既定の時間を経過した場合(ステップS301:Y)、時間カウンタをリセットし、応答信号を受信したか否かを判定し(ステップS302)、応答信号を受信していない場合(ステップS302:N)、リトライカウンタが規定回数以内であるか否かを判定する(ステップS303)。
【0063】
リトライカウンタが規定回数以内である場合(ステップS303:Y)、制御マイコン31は、継電器制御信号31aを再び送信する(ステップS304)。
【0064】
制御マイコン31は、継電器制御信号31aを再び送信した後にリトライカウンタをカウントアップする(ステップS305)。
【0065】
上記ステップS303において、リトライカウンタが規定回数を超えた場合(ステップS303:N)、制御マイコン31は、正常な通信ができないと判定し、図6及び図8のフローチャートに示す継電器切替処理を中断し(ステップS306)、処理を終了する。上記ステップS302において、応答信号を受信した場合(ステップS302:Y)も処理を終了する。
【0066】
(車両制御装置が正常な応答信号を送信できない場合)
上記ステップS106において、車両制御装置1の制御マイコン11が正常な応答信号11bを送信できない場合の動作を、図9に示すフローチャートに従って説明する。
【0067】
制御マイコン11は、ステップS106を実行した後、ステップS109が実行されるまで図9に示す処理を一定の間隔で既定の回数実行し、既定の時間を経過したか否かを判定する(ステップS401)。
【0068】
制御マイコン11は、既定の時間を経過した場合(ステップS401:Y)、時間カウンタをリセットし、継電器制御信号31aを再び受信しているか否かを判定する(ステップS402)。
【0069】
継電器制御信号31aを再び受信している場合(ステップS402:Y)、再受信カウンタが規定回数以内であるか否かを判定する(ステップS403)。
【0070】
再受信カウンタが規定回数以内である場合(ステップS403:Y)、制御マイコン11は、継電器制御信号31aの応答信号11bを再び送信する(ステップS404)。
【0071】
制御マイコン11は、継電器制御信号31aの応答信号11bを再び送信した後に再受信カウンタをカウントアップする(ステップS405)。ステップS402において、継電器制御信号31aを再び受信していないと判断した回数(期間)が既定回数を上回ったとき(ステップS407:Y)、処理を終了する。
【0072】
上記ステップS403において、制御マイコン11は、再受信カウンタが規定回数を超えた場合(ステップS403:N)、正常な通信ができないと判定し、図6及び図9のフローチャートに示す継電器切替処理を中断し(ステップS406)、処理を終了する。
【0073】
(2)車両制御装置から継電器の切り替え要求がある場合
次に、車両制御装置1から継電器35の切り替え要求がある場合について説明する。この場合の動作は、図7に示すフローチャートとなる。
【0074】
制御マイコン11又は処理マイコン13の処理系により送信すべき信号A、B、Cの送受信を外部装置3との間で行う必要が発生したとする。処理マイコン13が起点である場合、処理マイコン13は、継電器16の切り替え要求を含む切替制御信号13aを制御マイコン11に送信する(ステップS201)。
【0075】
制御マイコン11が起点である場合、又は制御マイコン11が処理マイコン13から切替制御信号13aを通して切り替え要求を受け付けた場合、制御マイコン11は、送信すべき信号A、B、Cのいずれかの切り替えの要求メッセージを含む継電器制御信号11aをインタフェース回路17に送信する(ステップS202)。
【0076】
要求メッセージを含む継電器制御信号11aは、インタフェース回路17から、電線2を通り、外部装置3のインタフェース回路36を経由し、制御マイコン31が受信する(ステップS203)。
【0077】
制御マイコン31は、受信した継電器制御信号11aが正しいメッセージであるか否かを判定する(ステップS204)。受信したメッセージが送信すべき信号A、B、Cであれば、制御マイコン31は、受信した継電器制御信号11aが正しくないメッセージであると判定し(ステップS204:N)、処理を終了する。受信した継電器制御信号11aに欠損や情報誤り等が存在する場合も、制御マイコン31は、正しくないメッセージであると判定し(ステップS204:N)、処理を終了する。
【0078】
上記ステップS204において、制御マイコン31は、受信した継電器制御信号11aが正しいメッセージであると判定した場合(ステップS204:Y)、切替制御信号32aやインタフェース回路36の状態の監視から、継電器35が切替可能な状態であるか否かを判定する(ステップS205)。制御マイコン31は、継電器35が切替可能でないと判定した場合(ステップS205:N)、継電器35を切り替えることなく処理を終了する。
【0079】
制御マイコン31は、継電器35が切替可能であると判定した場合(ステップS205:Y)、切り替えを実施することを伝えるための応答メッセージを含む応答信号31bをインタフェース回路36及び電線2を介して車両制御装置1の制御マイコン11に送信する(ステップS206)。制御マイコン31は、応答信号31bを送信してから一定時間経過後に、ステップS203において受信した継電器制御信号11aに基づいて、送信すべき信号に応じた切り替えを行わせるための継電器切替信号31cを継電器35に送信して継電器35を切り替える(ステップS206)。
【0080】
送信された応答信号31bは、インタフェース回路36を経由し、電線2を通り、車両制御装置1のインタフェース回路17を経由して、車両制御装置1の制御マイコン11が受信する(ステップS207)。
【0081】
車両制御装置1の制御マイコン11は、受信した応答信号31bが正しいメッセージであるか否かを判定する(ステップS208)。制御マイコン11は、受信した応答信号31bが正しいメッセージであると判定した場合(ステップS208:Y)、ステップ202において送信した継電器制御信号11aに対応する継電器切替信号11cを継電器16に送信して継電器16を切り替える(ステップS209)。制御マイコン11は、ステップS208において受信した応答信号31bが正しくないメッセージであると判定した場合(ステップS208:N)、処理を終了し、制御マイコン31からの継電器制御信号31aを一定の時間待ち続ける。以上のように継電器16、35が切り替えられたことにより、外部装置3と車両制御装置1は、電線2を経由して送信すべき信号A、B、Cのうち目的の信号について送受信することができる。
【0082】
(車両制御装置が正常な応答信号を受信できない場合)
上記ステップS208において、車両制御装置1の制御マイコン11が正常な応答信号31bを受信できない場合の動作を、図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0083】
制御マイコン11は、ステップS202を実行した後、ステップS209が実行されるまで図8に示す処理を一定の間隔で実行し、既定の時間を経過したか否かを判定する(ステップS301)。
【0084】
既定の時間を経過した場合(ステップS301:Y)、時間カウンタをリセットし、応答信号を受信したか否かを判定し(ステップS302)、応答信号を受信していない場合(ステップS302:N)、リトライカウンタが規定回数以内であるか否かを判定する(ステップS303)。
【0085】
リトライカウンタが規定回数以内である場合(ステップS303:Y)、制御マイコン11は、継電器制御信号11aを再び送信する(ステップS304)。
【0086】
制御マイコン11は、継電器制御信号11aを再び送信した後にリトライカウンタをカウントアップする(ステップS305)。
【0087】
上記ステップS303において、リトライカウンタが規定回数を超えた場合(ステップS303:N)、制御マイコン11は、正常な通信ができないと判定し、図7及び図8のフローチャートに示す継電器切替処理を中断し(ステップS306)、処理を終了する。上記ステップS302において、応答信号を受信した場合(ステップS302:Y)も処理を終了する。
【0088】
(外部装置が正常な応答信号を送信できない場合)
上記ステップS206において、外部装置3の制御マイコン31が正常な応答信号31bを送信できない場合の動作を、図9に示すフローチャートに従って説明する。
【0089】
制御マイコン31は、ステップS206を実行した後、ステップS209が実行されるまで図9に示す処理を一定の間隔で既定の回数実行し、既定の時間を経過したか否かを判定する(ステップS401)。
【0090】
制御マイコン31は、既定の時間を経過した場合(ステップS401:Y)、時間カウンタをリセットし、継電器制御信号11aを再び受信しているか否かを判定する(ステップS402)。
【0091】
継電器制御信号11aを再び受信している場合(ステップS402:Y)、再受信カウンタが規定回数以内であるか否かを判定する(ステップS403)。
【0092】
再受信カウンタが規定回数以内である場合(ステップS403:Y)、制御マイコン31は、継電器制御信号11aの応答信号31bを再び送信する(ステップS404)。
【0093】
制御マイコン31は、継電器制御信号11aの応答信号31bを再び送信した後に再受信カウンタをカウントアップする(ステップS405)。ステップS402において、再受信を規定の回数実行したとき(ステップS407:Y)、処理を終了する。
【0094】
上記ステップS403において、制御マイコン31は、再受信カウンタが規定回数を超えた場合(ステップS403:N)、正常な通信ができないと判定し、図7及び図9のフローチャートに示す継電器切替処理を中断し(ステップS406)、処理を終了する。
【0095】
(実施の形態の作用、効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
(a)送信すべき複数の信号のうち1つの信号を排他的に切り替え、外部装置3との間で1つの信号、及び継電器制御信号11a、31aを電線2を介して送受信することにより、外部装置3との間で1つの電線2で複数の電気的な信号のやり取りを排他的に行うことが可能となり、外部装置3と接続する電線2やコネクタの物理的体積と部品価格を削減することが可能となる。
(b)送信すべき信号の無効期間に継電器制御信号11a、31aを送受信することにより、1つの電線2で送信すべき信号及び継電器制御信号11a、31aを送受信することが可能となる。
(c)制御マイコン11、31は、送信すべき信号の有効期間における継電器制御信号11a、31aの受信を無効とし、送信すべき信号の無効期間における継電器制御信号11a、31aの受信を有効とし、処理マイコン13及び処理部32は、送信すべき信号の有効期間における送信すべき信号の受信を有効とし、送信すべき信号の無効期間における送信すべき信号の受信を無効とすることにより、制御マイコン11及び制御マイコン31と処理マイコン13及び処理部32との間で、互いに独立した信号系を維持することができる。
(d)外部装置3が他の車両制御装置(ECU)の場合、送信すべき信号の有効期間に、相手装置(車両制御装置1、外部装置3)から継電器制御信号11a、31aを受信した場合、継電器16、35は継電器制御信号11a、31aに基づいて動作するが、処理マイコン13及び処理部32が、受信した継電器制御信号11a、31aを信号無効あるいは信号異常と判定して当該継電器制御信号11a、31aを破棄することで、処理マイコン13及び処理部32の誤動作を回避することが可能となる。なお、このような機能は、外部装置3が他の車両制御装置(ECU)の場合に限られるものではない。
【0096】
(変形例)
図10は、本実施の形態の変形例を示す図である。同図は、制御マイコン11、31と、継電器16、35と、インタフェース回路17、36との配置関係について、要部を示すブロック図である。本実施の形態では、車両制御装置1の制御マイコン11がインタフェース回路17に接続され、外部装置3の制御マイコン31がインタフェース回路36に接続された場合について説明したが、図10に示すように、車両制御装置1の制御マイコン11がインタフェース回路17に接続されず、継電器16の後段に配置され、継電器16と内部回路14とを接続する経路15a、15b、15c上に接続されてもよい。同様に、外部装置3の制御マイコン31がインタフェース回路36に接続されず、継電器35の後段に配置され、継電器35と内部回路33とを接続する経路34a、34b、34c上に接続されてもよい。なお、制御マイコン11は、内部回路14に直接接続されてもよく、制御マイコン31は、内部回路33に直接接続されてもよい。
【0097】
車両制御装置1の制御マイコン11から送信される継電器制御信号11aは、継電器16にて選択されている経路15a、15b、15cのいずれかを通り、インタフェース回路17を経由し、電線2へ到達する。同様に、外部装置3の制御マイコン31から送信される継電器制御信号31aは、継電器35にて選択されている経路34a、34b、34cのいずれかを通り、インタフェース回路36を経由し電線2へ到達する。このことから制御マイコン11及び制御マイコン31は、継電器16、35の上段及び下段のどちらに配置されても目的を達成することができる。
【0098】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、本実施の形態では、車両制御装置1と外部装置3とを1本の電線2で接続した場合について説明したが、複数の電線2で接続してもよい。この場合、インタフェース回路17、36(インタフェース回路36は単一でもよい。)と、継電器16、35と、内部回路14、33とを電線2の数に応じて複数設け、外部装置3に複数の機器類5を接続してもよい。また、本実施の形態で説明したように、外部装置3の制御マイコン31及び処理部32をそれぞれ別個のマイコンで構成してもよく、単一のマイコンで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、経済的、かつ、効率よく電気的な信号のやり取りを行いたい場合に有用である。既存の先端技術である複数の信号を重畳させたときに必要な帯域の区分けと非干渉性の管理を考慮する必要がなく、複数の信号をA/D変換して高速で送受信させて復号化させて出力させる双方向高速通信のようなギガヘルツ帯域における高周波数帯域特性を考慮する必要もなく、簡易的な電気回路設計と制御技術で実現させることができ、特に経済性において有用である。
【符号の説明】
【0100】
1…車両制御装置、2…電線、3…外部装置、4、5…機器類、
10a…接続子、11…制御マイコン、11a…継電器制御信号、11b…応答信号、
11c…継電器切替信号、12…インタフェース部、13…処理マイコン、
13a…切替制御信号、14(14a、14b、14c)…内部回路、
15(15a、15b、15c)…経路、16…継電器、16a~16d…接点、
17…インタフェース回路、30a…接続子、31…制御マイコン、
31a…継電器制御信号、31b…応答信号、31c…継電器切替信号、32…処理部、
32a…切替制御信号、33(33a、33b、33c)…内部回路、
34(34a、34b、34c)…経路、35…継電器、35a~35d…接点、
36…インタフェース回路、37…インタフェース部、
40(40a、40b、40c)…電子素子モジュール、
41(41a、41b、41c)…電気負荷

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10