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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167712
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】表皮材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20241127BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20241127BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20241127BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H3/16
D04H3/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083967
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆志
(72)【発明者】
【氏名】関屋 徹
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AA37C
4F100AJ10A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DE01C
4F100DG01B
4F100DG01D
4F100DG12A
4F100DG13A
4F100DG15B
4F100DG15D
4F100DG20B
4F100DG20D
4F100EC03
4F100EJ19
4F100EJ42
4F100GB08
4F100GB33
4F100JA04B
4F100JA04D
4F100JB16B
4F100JB16D
4F100JB20C
4F100JC00
4F100JD02A
4F100JD02B
4F100JD02D
4F100JH01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA29
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB08
4L047BA09
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA05
4L047CA19
4L047CC09
4L047CC10
(57)【要約】
【課題】消臭性及び耐摩耗性に優れる表皮材の提供。
【解決手段】表面層と、該表面層の片面に接合されたシート材と、を含む表皮材であって、該表面層は、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、かつ、該表面層の通気度は、30cc/cm/sec以上であり、かつ、該シート材は、2枚の不織布の間に消臭性無機粒子が挟持され、かつ、該2枚の不織布同士が融着しているものである、ことを特徴とする表皮材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、該表面層の片面に接合されたシート材と、を含む表皮材であって、
該表面層は、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、かつ、
該表面層の通気度は、30cc/cm/sec以上であり、かつ、
該シート材は、2枚の不織布の間に消臭性無機粒子が挟持され、かつ、該2枚の不織布同士が融着しているものである、
ことを特徴とする表皮材。
【請求項2】
前記不織布が、熱可塑性合成繊維層(A)と、極細繊維層(B)と、該熱可塑性合成繊維層(A)を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する成分を含む熱可塑性繊維層(C)と、の3層から構成され、前記シート材において該不織布の熱可塑性繊維層(C)同士が接着している、請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
前記不織布の目付が15~120g/mである、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項4】
前記不織布の地合い指数が300以下である、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項5】
前記消臭性無機粒子の粒径が1000μm以下である、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項6】
前記消臭性無機粒子が活性炭である、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項7】
前記活性炭が、籾殻、藁、珈琲豆、茶葉、サトウキビ類、トウモロコシ類、果実の皮、葦、及び茎ワカメからなる群から選択された少なくとも1種類の材料を炭化させたものである、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項8】
前記消臭性無機粒子の目付が50g/m以下である、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項9】
前記不織布の通気性が0.1~100cc/cm/secである、請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項10】
前記熱可塑性合成繊維層(A)が、平均繊維径10μm以上30μm以下の繊維層であり、かつ、前記極細繊維層(B)が、平均繊維径が0.3μm以上7μm以下の繊維層である、請求項2に記載の表皮材。
【請求項11】
前記熱可塑性繊維層(C)における、熱可塑性合成繊維層(A)を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する成分のうち、少なくとも一部が、芯鞘構造の複合繊維からなる、請求項2又は10に記載の表皮材。
【請求項12】
シート、天井、インストルメントパネル、コンソール、アームレスト、ドアトリム、カーペット、及び床材からなる群から選ばれる少なくとも1つの用途に用いられる、請求項1又は2に記載の表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材に関する。さらに詳しくは、消臭性と耐摩耗性に優れた表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、建築用壁材などの分野において使用され得る、消臭機能に優れる消臭材として、短繊維不織布層および無機多孔質体含有層を含む消臭吸音材であって、該無機多孔質体含有層が、メルトブローン不織布同士又はメルトブローン不織布と他の長繊維不織布とに挟まれた無機多孔質体を有することを特徴とする消臭吸音材が知られている(以下、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-275309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載に記載された消臭材は、消臭性を発現するための無機粒子の微細な孔をバインダー樹脂や接着剤で塞いでしまい、十分な消臭性を発現することができない。また、特許文献1に記載の消臭材は、自動車のシートやカーペットなどの、人が触れ、摩耗する部分へ適用された場合、不織布の耐摩耗性の低さのため破袋が生じるという問題がある。
【0005】
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、消臭性及び耐摩耗性に優れる表皮材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、表面層と、該表面層の片面に接合されたシート材と、を含む表皮材であって、該表面層は、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり 、かつ、該表面層の通気度が30cc/cm/sec以上であり、かつ、該シート材は、2枚の不織布の間に消臭性無機粒子が挟持され、前記2枚の不織布同士が融着しているものであるところの表皮材であれば、前記課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]表面層と、該表面層の片面に接合されたシート材と、を含む表皮材であって、
該表面層は、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、かつ、
該表面層の通気度は、30cc/cm/sec以上であり、かつ、
該シート材は、2枚の不織布の間に消臭性無機粒子が挟持され、かつ、該2枚の不織布同士が融着しているものである、
ことを特徴とする表皮材。
[2]前記不織布が、熱可塑性合成繊維層(A)と、極細繊維層(B)と、該熱可塑性合成繊維層(A)を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する成分を含む熱可塑性繊維層(C)と、の3層から構成され、前記シート材において該不織布の熱可塑性繊維層(C)同士が接着している、前記[1]に記載の表皮材。
[3]前記不織布の目付が15~120g/mである、前記[1]又は[2]に記載の表皮材。
[4]前記不織布の地合い指数が300以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の表皮材。
[5]前記消臭性無機粒子の粒径が1000μm以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の表皮材。
[6]前記消臭性無機粒子が活性炭である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の表皮材。
[7]前記活性炭が、籾殻、藁、珈琲豆、茶葉、サトウキビ類、トウモロコシ類、果実の皮、葦、及び茎ワカメからなる群から選択された少なくとも1種類の材料を炭化させたものである、前記[6]に記載の表皮材。
[8]前記消臭性無機粒子の目付が50g/m以下である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の表皮材。
[9]前記不織布の通気性が0.1~100cc/cm/secである、前記[1]~[8]のいずれかに記載の表皮材。
[10]前記熱可塑性合成繊維層(A)が、平均繊維径10μm以上30μm以下の繊維層であり、極細繊維層(B)が、平均繊維径が0.3μm以上7μm以下の繊維層である、前記[2]に記載の表皮材。
[11]前記熱可塑性繊維層(C)における、可塑性合成繊維層(A)を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する成分のうち、少なくとも一部が、芯鞘構造の複合繊維からなる、前記[2]又は[10]に記載の表皮材。
[12]シート、天井、インストルメントパネル、コンソール、アームレスト、ドアトリム、カーペット、及び床材からなる群から選ばれる少なくとも1つの用途に用いられる、前記[1]~[11]のいずれかに記載の表皮材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表皮材は、消臭性、及び耐摩耗性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態は、
表面層と、該表面層の片面に接合されたシート材と、を含む表皮材であって、
該表面層は、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、かつ、
該表面層の通気度が30cc/cm/sec以上であり、かつ、
該シート材は、2枚の不織布の間に消臭性無機粒子が挟持され、前記2枚の不織布同士が融着しているものである、
ことを特徴とする表皮材である。
【0010】
<表皮材>
本実施形態の表皮材は、表面層と、該表面層の片面に接合されたシート材と、を含む。表皮材は、表面層を、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つで構成することにより、不織布が表面に露出しないため、耐摩耗性に優れるものとなる。
【0011】
シート材は、表面層の片面に接合されている。接合方法は、表面層及びシート材の材質に応じて適宜選択され得るが、消臭性無機粒子への臭気成分の接触を妨げない方法が好ましい。接合方法の具体例としては、熱プレス、超音波融着、縫製、ニードルパンチ等が挙げられる。また、表面層とシート材を一体成型させて両者を接合してもよい。
【0012】
<表面層>
表面層は、織物、編物、天然皮革、人工皮革、合成皮革、及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つである。表面層が織物、編物、人工皮革、合成皮革、又は樹脂を含む場合、その素材は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンを含むことができる。表面層が織物である場合、その織組織は特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織等を含むことができる。表面層が編物である場合、緯編及び経編のいずれであってもよく、立体編物であってもよく、また編組織は特に限定されない。
【0013】
表面層は、臭気成分を消臭性無機粒子に接触させやすくするという観点より、通気度が30cc/cm/sec以上であり、好ましくは50cc/cm/sec以上である。表面層は、無加工であってもよいし、孔あけ加工などにより上記通気度を達成してもよい。
【0014】
<シート材>
シート材は、2枚の不織布の間に消臭性無機粒子が挟持され、該2枚の不織布同士が融着しているものである。シート材は、2枚の不織布同士が融着することで、バインダーや接着剤を用いずとも消臭性無機粒子を挟持することができ、消臭性無機粒子がバインダーや接着剤に覆われないため、本来の消臭性を発揮することができる。
【0015】
シート材は、所望の効果を付与させる目的で、消臭性無機粒子以外の粒子を含むことができる。
【0016】
<消臭性無機粒子>
消臭性無機粒子は、消臭機能を有するものであれば特に限定されないが、活性炭などの各種炭、シリカゲル、多孔質ガラス、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、粘土鉱物類等が例示される。本実施形態において、消臭性無機粒子は、軽量、大比表面積、及び抗菌性の観点から、好ましくは活性炭であり、さらに環境配慮の観点から、より好ましくは、籾殻、藁、珈琲豆、茶葉、サトウキビ類、トウモロコシ類、果実の皮、葦、及び茎ワカメからなる群から選択された少なくとも1種類の材料を炭化させたものである。
【0017】
消臭性無機粒子は、窒素BET法による比表面積の値が100m/グラム以上、細孔径分布において直径3nm~20nmの範囲内に少なくとも1つ以上のピークがあり、かつ、同範囲内の細孔の容積が全体の細孔の容積の3割以上である活性炭であることが好ましい。上記の活性炭は、例えば、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料として、炭化後、酸又はアルカリでの処理等によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することによって製造することができる。
【0018】
消臭性無機粒子の形状は特に限定はされず、粒状や板状であることができるが、粒状のものが好ましく用いられる。消臭性無機粒子が粒状の場合、その粒径は、表面積を大きくして消臭性を向上させる観点から、1000μm以下が好ましく、また、消臭性と取扱性の両立の観点からは、より好ましくは1μm以上1000μm以下、さらに好ましくは10μm以上500μm以下である。
【0019】
消臭性無機粒子の目付は、より少ない含有量で効果が発揮できるという観点から、好ましくは50g/m以下、より好ましくは15g/m以下、さらに好ましくは7g/m以下である。
【0020】
<不織布>
不織布は、熱可塑性合成繊維層(A)と、極細繊維層(B)と、該熱可塑性合成繊維層(A)を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する成分を含む熱可塑性繊維層(C)と、の3層から構成されることが好ましい。不織布は、かかる構成をとることで、熱可塑性繊維層(C)同士が融着し、消臭性無機粒子を挟持しやすくなり、また、消臭性無機粒子の漏れも抑制しやすくなる。さらに、不織布が極細繊維層を有することで、吸音性を高めることができる。
【0021】
不織布は、上記の3層から構成される場合、消臭性無機粒子の漏れ防止と通気性の両立の観点より、熱可塑性合成繊維層(A)が、平均繊維径10μm以上30μm以下の繊維層であり、極細繊維層(B)が、平均繊維径が0.3μm以上7μm以下の繊維層であることが好ましい。構成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなど)、芳香族ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート)、脂肪族ポリエステル系繊維(ポリD-乳酸、ポリL-乳酸、D-乳酸とL-乳酸との共重合体、D-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D-乳酸とL-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、これらのブレンド体など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、共重合ポリアミドなど)、ポリフェニレンサルファイド繊維などの合成繊維が挙げられる。
【0022】
不織布は、上記の3層から構成される場合、不織布同士の融着性の観点より、熱可塑性繊維層(C)における、可塑性合成繊維層(A)を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する成分のうち、少なくとも一部が、芯鞘構造、サイドバイサイドなどの低融点成分を有する2成分からなる複合繊維、例えば、芯部が高融点であり、鞘部が低融点である複合繊維が好ましい。例えば、芯部がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどの高融点繊維であり、鞘部が低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステル(co-PET)、脂肪族ポリエステルなどの低融点繊維が好ましい。
【0023】
不織布の目付は、消臭性無機粒子の漏れ防止と通気性の両立の観点より、好ましくは15~120g/mである。
【0024】
不織布の地合い指数は、消臭性無機粒子の漏れ防止の観点より、好ましくは300以下である。
【0025】
不織布の通気度は、高い消臭性の発現の観点より、好ましくは0.1~100cc/cm/secである。また、不織布の通気性を1~50cc/cm/secの範囲とすることで、消臭性無機粒子への過剰な吸着を抑制でき、消臭効果を長時間持続させることができる。
【0026】
<用途>
本実施形態の表皮材は、消臭性と耐摩耗性に優れるため、様々な産業分野において表皮材として利用可能である。具体的には、本実施形態の表皮材は、自動車のシート、天井、インストルメントパネル、コンソール、アームレスト、ドアトリム、カーペット、及び床材などの表皮材として好適に用いることができる。また、本実施形態の表皮材は、エアフィルターにも転用可能である。
【実施例0027】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例等における各物性は、下記方法により測定して得られたものである。尚、本発明の各種物性は原則的に下記方法により測定されるが、下記方法により測定できない事情がある場合は、適宜合理的な代替方法によって測定することが可能である。
【0028】
(1)通気度(cc/cm/sec)
JIS-L-1096、1018通気性試験方法(A法空気量)に準じて、不織布や表皮材の片面から反対側の面に透過する通気度を高山リード社製の通気性試験機FX3300ラボエアーIVを用いて測定する。
【0029】
(2)耐摩耗性
JASOM403 A法(テーバーロータリーアブレッサ法)に準じ、テーバー型摩耗試験機を用い、CS-10の摩耗輪により荷重4.9N、速度70rpmで1000回摩耗する。試験後に試験片の表面の摩耗状態を観察し、以下の等級判定を行う。判定は0.5級きざみで行う。
(等級判定の基準)
5級:表面状態に変化がない
4級:やや毛羽立ちがある
3級:毛羽立ちが多い
2級:毛羽立ちが多く糸が細くなっている
1級:糸切れがある。
【0030】
(3)地合い指数(%)
フォーメーションテスターFMT-MIII(野村商事株式会社社製)を使用し、CD方向に1mあたり4点測定し、地合指数を得た。この数値が小さい程、地合が均一で斑がない。
【0031】
(4)平均繊維径(μm)
キーエンス社製のマイクロスコープVHX-700Fを用いて500倍の拡大写真を撮り、観察視野においてピントの合った繊維10本の平均値で求める。
【0032】
(5)厚み(mm)
JIS L 1913 B法に準拠した。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、その平均値を求める。
【0033】
(6)目付(g/m
不織布層の目付は、JIS L 1913に準拠して測定する。
【0034】
(7)吸音性能(吸音率(%))
JIS A 1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて、試作した表皮材に背後空気10mmを設けた条件で測定し、代表値として周波数1500Hz、3000Hz、及び5000Hzでの吸音率(%)を求める。
【0035】
(8)消臭性能
<消臭性能の評価>
消臭性能:芳香消臭脱臭剤協議会 一般消費者用 芳香・消臭・脱臭剤の自主基準で定める方法II-2消臭剤効果試験方法(化学的消臭)に準じて、アンモニアガスを用いて評価した。
使用バック:フレックサンプラー10L
希釈ガス:無臭空気
使用検知管:(株)ガステック製 3La(アンモニア用)
<消臭性能の測定>
容積10Lのガスバックに100×100mmの試料を封入後、初期アンモニアガス濃度を100ppmに調整。1時間放置後のアンモニアガス濃度を、検知管を用いて測定した。数値の算出は次式にて行った。
{(空試験の測定濃度-実試験の測定濃度)÷(空試験の測定濃度)}×100(%)
【0036】
(9)抗菌性能
試料5cm×5cm角を用い、JIS-L-1902定量試験(菌液吸収法)に準拠する。
試験菌株:モラクセラ菌生菌数の測定法:混釈平板培養法
培養時間:18時間(培養中 紫外線強度0.1mV/cmのUV照射を行った)。
結果は、静菌活性値で表した。静菌活性値2.2以上で抗菌効果ありと判断される。
【0037】
(10)消臭性無機粒子の平均粒径
JIS-Z-8815:1994 ふるい分け試験方法通則に準拠し、試験用ふるいを用い、無機活性炭の通過百分率が50%のときの試験用ふるいの目開き(μm)を平均粒径とした。
【0038】
(11)比表面積
自動比表面積測定装置(株式会社島津製作所製 Gemini2360)を用い測定する。活性炭は微小細孔を無数に有し、広い比表面積を持つため、投入するサンプル重量は、0.05~0.10g程度の少量が好ましい。また、測定時間は長くする必要がある。サンプルを投入したセルを真空下150℃以上の条件で脱気乾燥を行う。常温に戻した後に、上記の比表面積測定装置にセルをセットし、サンプル表面への窒素ガス吸着により、下記BETの式:
P/{V(P0-P)}=1/(Vm×C)+{(C-1)/(Vm×C)}(P/P0)
{式中、P0:飽和水蒸気圧(Pa)、V:窒素吸着量(mg/g)、Vm:単分子層吸着量(mg/g)、C:吸着熱等に関するパラメーター(-)<0である。}
を用いて比表面積を算出した。
【0039】
[実施例1]
下層不織布及び上層不織布として、ポリエステル繊維からなるスパンボンド層(A)と、ポリエステル繊維からなる極細繊維層(B)と、前記A層を構成する繊維の融点よりも40℃以上低い融点を有する共重合ポリエステルを鞘成分として含む芯鞘構造繊維からなるスパンボンド層(C)と、の3層から構成される、SMS型の不織布(プレシゼ(登録商標)αシール、旭化成社製、目付70.5g/m、厚み0.23mm)を用いた。
下層不織布の低融点成分を含む層の上に、消臭性無機粒子として活性炭(ヤシ殻由来、平均粒子径32μm、比表面積820m/g)を均一に10g/mとなるように散布した。上層不織布の低融点成分を含む層を散布された消臭性無機粒子の上に重ね、120℃に熱せられた熱プレスロールにて不織布同士を接合してシート材を得た。
次に、得られたシート材の上に表面層としてポリエステル織物(目付411g/m、厚み2mm、通気度86cc/cm/sec、表面耐摩耗性4級)を重ね、220℃に熱せられた熱プレスロールにてシート材と織物を接合して表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0040】
[実施例2]
下層不織布及び上層不織布を目付41.3g/m、かつ厚み0.23mmのものに、活性炭の目付を20g/mに、並びに表面層をポリエステル編物(目付332g/m、厚み1.5mm、通気度120cc/cm/sec、表面耐摩耗性4級)に、変更したこと以外は、実施例1と同様に表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0041】
[実施例3]
下層不織布及び上層不織布を目付24.6g/m、厚み0.15mmのものに、活性炭を籾殻由来、平均粒子径125μm、比表面積2046m/gのものとし、その目付を5g/mに、並びに表面層をポリエステル織物(目付466g/m、厚み2.2mm、通気度65cc/cm/sec、表面耐摩耗性4級)に、変更したこと以外は、実施例1と同様に表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0042】
[実施例4]
表面層をポリエステル編物(目付460g/m、厚み1.3mm、通気度75cc/cm/sec、表面耐摩耗性4級)に変更したこと以外は、実施例3と同様に消臭性表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0043】
[実施例5]
下層不織布を、実施例1の不織布と同じものに、活性炭を籾殻由来、平均粒子径355μm、比表面積1753m/gのものとし、その目付を5g/mに、及び表面層をポリエステル立体編物(目付711g/m、厚み5.7mm、通気度60cc/cm/sec、表面耐摩耗性3.5級)に変更したこと以外は、実施例3と同様に表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0044】
[実施例6]
消臭性無機粒子をシリカ(平均粒子径355μm、比表面積455m/g)とし、その目付を10g/mに、表面層としてポリエステルスエード(ディナミカ(登録商標)、旭化成社製、ドットパターン穴あけ加工品(正円1mmφ穴、穴間隔5.45mm)、目付513g/m、厚み1.6mm、通気度36cc/cm/sec、表面耐摩耗性3.5級)に、及びシート材と表面層との接合方法を超音波融着に変更したこと以外は、実施例3と同様に表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0045】
[比較例1]
下層不織布及び上層不織布として、スパンボンド不織布(エルタス(登録商標)、型番E05070、旭化成社製、目付70.0g/m、厚み0.21mm)を用いた。
実施例1と同様の活性炭と粒度75~200μmに分級された融点83℃であるEVA系ホットメルト接着剤を重量比で1:1となるように回転型粉体混合機で混合し、活性炭とホットメルト接着剤の混合体を得た。この混合体を下層不織布の上に、均一に200g/mとなるように散布した。上層不織布を散布された混合体の上に重ね、120℃に熱せられた熱プレスロールにて不織布同士を接合してシート材を得た。
次に、得られたシート材の上に表面層としてポリエステル織物(目付467g/m、厚み1.8mm、通気度28cc/cm/sec、表面耐摩耗性2.5級)を重ね、220℃に熱せられた熱プレスロールにてシート材と表面層を接合して表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0046】
[比較例2]
下層不織布及び上層不織布として、低融点の熱可塑性繊維層を含まないSMS型の不織布(プレシゼ(登録商標)、旭化成社製、目付41.3g/m、厚み0.23mm)を用いた。
活性炭(ヤシ殻由来:平均粒子径32μm、比表面積820m/g)と粒度75~200μmに分級された融点83℃であるEVA系ホットメルト接着剤を重量比で1:10となるように回転型粉体混合機で混合し、活性炭とホットメルト接着剤の混合体を得た。この混合体を下層不織布の上に、均一に220g/mとなるように散布した。上層不織布を散布された混合体の上に重ね、120℃に熱せられた熱プレスロールにて不織布同士を接合してシート材を得た。
表面層は用いず、シート材を表皮材とした。その特性を以下の表1に示す。
【0047】
[比較例3]
下層不織布として、実施例3と同じ不織布を、及び上層不織布として比較例1と同じ不織布を用いた。
活性炭(ヤシ殻由来:平均粒子径32μm、比表面積820m/g)と粒度75~200μmに分級された融点83℃であるEVA系ホットメルト接着剤を重量比で1:10となるように回転型粉体混合機で混合し、活性炭とホットメルト接着剤の混合体を得た。これを下層不織布の低融点成分を含む層の上に、均一に220g/mとなるように散布した。上層不織布を散布された混合体の上に重ね、120℃に熱せられた熱プレスロールにて不織布同士を接合してシート材を得た。
次に、得られたシート材の上に表面層としてポリエステル編物(目付585g/m、厚み3.6mm、通気度15cc/cm/sec、表面耐摩耗性3.5級)を重ね、220℃に熱せられた熱プレスロールにてシート材と表面層を接合して表皮材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る表皮材は、消臭性と耐摩耗性に優れるため、様々な産業分野において表皮材として利用可能である。具体的には、本発明に係る表皮材は、自動車のシート、天井、インストルメントパネル、コンソール、アームレスト、ドアトリム、及びカーペット、及び床材などの表皮材として好適に用いることができる。また、本発明に係る表皮材は、エアフィルターにも転用可能である。