(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167721
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】バスバー製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/16 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01R43/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083980
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 謙士
(72)【発明者】
【氏名】田中 真輝
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063GA04
5E063HA02
5E063XA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コネクタハウジングに圧入固定するための複数パターンのバスバーを容易に得ることのできるバスバー製造方法を提供する。
【解決手段】コネクタハウジングに圧入された際にコネクタハウジングと係合する係合突起25を備えたバスバー20を製造する方法であって、複数のバスバー20がキャリア122により連鎖状に連結されたバスバー連結体121を準備する準備工程と、キャリア122を切断することでバスバー20をバスバー連結体121から切り離す切断工程と、を有し、切断工程において、キャリア122の切断と同時に係合突起25の成形を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングに圧入された際に前記コネクタハウジングと係合する係合突起を備えたバスバーを製造する方法であって、
複数の前記バスバーがキャリアにより連鎖状に連結されたバスバー連結体を準備する準備工程と、
前記キャリアを切断することで前記バスバーを前記バスバー連結体から切り離す切断工程と、を有し、
前記切断工程において、前記キャリアの切断と同時に前記係合突起の成形を行う、
バスバー製造方法。
【請求項2】
前記バスバーが、前記コネクタハウジングの各端子収容室にそれぞれ挿入される複数のタブ状の端子部と、複数の前記端子部の基端を互いに連結して前記各端子部を一定の配列で互いに平行に保持する帯板状の連結部と、を有し、
前記バスバー連結体が、前記連結部を兼ねる前記キャリアと、前記キャリアから櫛歯状に突出する複数の前記端子部と、を有する連鎖状供給材である、
請求項1に記載のバスバー製造方法。
【請求項3】
前記連鎖状供給材が、ロール状に巻かれた状態で前記切断工程に送り出し供給される、
請求項2に記載のバスバー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電線間を電気的に相互接続する場合、ジョイントコネクタと呼ばれるコネクタが広く使用されている。ジョイントコネクタは、複数の電線にそれぞれ接続された複数の接続端子と、コネクタハウジングに装着されることで接続端子同士を短絡させるジョイント用のバスバーと、を備えている。このバスバーは、後端の連結部及びこの連結部から前方に櫛歯状に延びる複数の端子部を有する。バスバーが、コネクタハウジングに装着され、バスバーの端子部に、コネクタハウジングの前方から挿入された接続端子が接続されることで、接続端子につながる電線間が相互接続される。
【0003】
この種のバスバーは、特許文献1に記載のように、平板状の金属板を所定の金型で打ち抜くことにより成形されて、コネクタハウジングに圧入固定される。
【0004】
また、特許文献2には、帯状のキャリアに複数のバスバーがそれぞれ連結片を介して接続されたバスバー連結体を用意し、各連結片を切断することでキャリアから個々のバスバーを切り離す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-232644号公報
【特許文献2】特開2016-9645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、特許文献1に記載のように、所定個数の端子部を有するバスバーを製造する場合に、必要な端子部の個数に応じた金型を用いて、バスバー本体とバスバー本体を圧入固定するための係合突起とを成形している。このため、コネクタハウジングに圧入するための端子部の個数(極数)が異なるバスバーを使用する場合には、極数毎に金型を用意してバスバーを打ち抜く必要があった。従って、複数のバスバーパターンのバスバーの製造に容易に対応できなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術においても、異なる形状のバスバーを使用する場合には、各バスバーパターンに応じた形状のバスバー連結体をそれぞれ準備する必要があった。このため、複数パターンのバスバーの製造に容易に対応できなかった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタハウジングに圧入固定するための複数パターンのバスバーを容易に得ることのできるバスバー製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバスバー製造方法は、下記を特徴としている。
コネクタハウジングに圧入された際に前記コネクタハウジングと係合する係合突起を備えたバスバーを製造する方法であって、
複数の前記バスバーがキャリアにより連鎖状に連結されたバスバー連結体を準備する準備工程と、
前記キャリアを切断することで前記バスバーを前記バスバー連結体から切り離す切断工程と、を有し、
前記切断工程において、前記キャリアの切断と同時に前記係合突起の成形を行う、
ことを特徴とするバスバー製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コネクタハウジングに圧入固定するための複数パターンのバスバーを容易に得ることができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の方法で製造したバスバーを使用するコネクタの一例を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態のバスバー製造方法の説明図およびその部分拡大図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態のバスバー製造方法で製造した極数の異なる複数種類のバスバーの例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の実施形態の方法で製造したバスバーを使用するコネクタの一例を示す分解斜視図、
図2はコネクタの正面図、
図3は
図2のA-A断面図、
図4は
図3のB部の拡大図である。以下、説明の便宜上、
図2及び
図3に示すように、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」を定義する。「上下方向」、「左右方向」、及び「前後方向」は、互いに直交する。
【0014】
まず、コネクタとバスバーについて説明する。
図1に示すように、このコネクタ1は、コネクタハウジング10に後方からバスバー20が圧入され、複数の電線Wにそれぞれ接続された接続端子(相手側端子)5がコネクタハウジング10の端子収容室11に前方から挿入される。このようにコネクタ1は、バスバー20を介して複数の接続端子5同士、すなわち電線W同士を相互接続するためのものである。この種のコネクタ1は、一般にジョイント機能付きコネクタ、あるいは、ジョイントコネクタと呼ばれている。
【0015】
このコネクタ1のコネクタハウジング10は、
図1および
図2に示すように、周壁10a及び周壁10aの内側に設けられた端子収容室11を有している。コネクタハウジング10の周壁10aは、扁平四角筒状に形成されている。周壁10aを形成する一対の対向壁のうち、幅が広く設定された一方の対向壁を上壁10a1及び下壁10a2と呼び、幅が狭く設定された他方の対向壁を側壁10a3及び側壁10a4と呼ぶ。複数の端子収容室11は、コネクタハウジング10の上下方向及び左右方向に配列されている。図示例では、左右方向一列に配置された12個の端子収容室11が、上下方向3段に配列されている。
【0016】
図3および
図4に示すように、各端子収容室11はコネクタハウジング10の前端から後端まで貫通して設けられており、隔壁13によって、左右方向および上下方向に隣り合う端子収容室11同士が仕切られている。端子収容室11の後端部は、後方から前方に向けて挿入されるバスバー20の連結部22を収容する収容凹部12に連通している。
【0017】
コネクタハウジング10に後方から圧入されるバスバー20は、後端の連結部22と、連結部22から前方に互いに平行に櫛歯状に延びる複数のタブ状の端子部21と、を有している。また、連結部22の左右側縁には、係合突起25がそれぞれ設けられている。係合突起25は、バスバー20がコネクタハウジング10に圧入される際に、コネクタハウジング10の側壁10a3、10a4、隔壁14、15に係合する。隔壁14、15は、隣接するバスバー20間のショート防止とバスバー係止部を兼ねる。例えば、
図3において最も左側に位置するバスバー20は、コネクタハウジング10に圧入されると、連結部22の左右側縁に設けられた係合突起25、25が、側壁10a4及び隔壁14にそれぞれ係合する。バスバー20は、コネクタハウジング10の後方から前方に向けて挿入されることで、連結部22が収容凹部12に収容される。このとき、バスバー20は、各端子部21がそれぞれ端子収容室11内に突出した状態で、左右側縁の係合突起25が側壁10a3、10a4、隔壁14、15に圧入固定される。
【0018】
各端子収容室11の前端は、相手側の接続端子5の挿入用開口11aとして開放されている。相手側の接続端子5は、各端子収容室11内に突出したバスバー20の端子部21に導通接続される。接続端子5は、コネクタハウジング10の各端子収容室11に前方から挿入されることで、バスバー20の端子部21に導通接続される。なお、接続端子5は、各端子収容室11に設けられた可撓ランス(図示略)によって抜け止め係止される。
【0019】
バスバー20は、挿入される接続端子5の短絡仕様に対応したバスバーパターンを有するように形成されている。本例においてバスバー20は、
図3に示すように、左右方向に隣接して並ぶ4つの接続端子5を相互に短絡するように、連結部22から突出する4つの端子部21を有している。短絡させる接続端子5の位置や個数は、コネクタ1の仕様に応じて任意に設定される。このため、短絡させる接続端子5の個数に応じて、端子部21の個数を違えたバスバーパターンのバスバー20を用意することになる。
【0020】
次に本発明の実施形態のバスバー製造方法を説明する。
図5は、本発明の実施形態のバスバー製造方法の説明図およびその部分拡大図である。
本実施形態のバスバー製造方法は、任意の個数の端子部21を有するバスバーパターンのバスバー20を容易に製造できるようにするものである。
【0021】
まず、製造対象のバスバー20は、上述したように、コネクタハウジング10の各端子収容室11にそれぞれ挿入される複数のタブ状の端子部21と、複数の端子部21の基端を互いに連結する帯板状の連結部22とを有する。連結部22は、各端子部21を一定の配列で互いに平行に保持する。各バスバー20は、コネクタハウジング10に圧入された際にコネクタハウジング10と係合するための係合突起25を左右側縁に備えている。
【0022】
実施形態の製造方法では、まず、
図5に示すように、複数のバスバー20がキャリア122により連鎖状に連結されたバスバー連結体121を準備する(準備工程)。バスバー連結体121は、帯板状の基材の打ち抜きにより連鎖状供給材120として形成されている。連鎖状供給材120は、連結部22を兼ねるキャリア122と、キャリア122から櫛歯状に突出する複数の端子部21とを有し、ロール状に巻かれた状態で送り出し供給される。送り出し操作のため、および、送り出しピッチの管理のために、バスバー連結体121のキャリア122には、ピッチ孔24が設けられている。そして、送り出されたバスバー連結体121のキャリア122を、次の切断工程で打ち抜きにより切断することで、バスバー20をバスバー連結体121から切り離す。また、この切断工程において、キャリア122の切断と同時に係合突起25の成形を行う。
【0023】
バスバー連結体121のキャリア122の切断位置は自由に設定できるので、任意の位置でキャリア122を切断することにより、任意のサイズのバスバー20、すなわち任意の個数の端子部21を有するバスバーパターンを得ることができる。
【0024】
図6は、本発明の実施形態のバスバー製造方法で製造した極数の異なる複数種類のバスバーの例を示す平面図である。
図6において、例えば、矢印X方向に順次バスバー連結体121が送り移動されるものとする。
【0025】
図6に示すように、前段のバスバー20と後段のバスバー20とを切り離す際に、前段のバスバー20の連結部22となるキャリア122の後端Eと、後段のバスバー20の連結部22となるキャリア122の前端Tとに、係合突起25、25を同時に打ち抜き形成する。
【0026】
図6においては、端子部21の極数3、4、5、6の4つのバスバーパターンのバスバー20A、20B、20C、20Dを示している。本実施形態のバスバー製造方法によれば、バスバー連結体121のキャリア122の切断位置を自由に選択することにより、係合突起25、25を有する任意のサイズ、つまり、極数の違うバスバーパターンのバスバー20(20A~20D)を自由に製造できる。また、本実施形態のバスバー製造方法によれば、1品番のバスバー連結体121から、例えば、同一形状のバスバー20Aを所定数製造した後に、異なるパターンのバスバー20Bを連続して製造できる。このように、1品番のバスバー連結体121を供給するだけで、複数のバスバーパターンに容易に対応可能となる。
【0027】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記実施形態では、バスバー20の極数が3、4、5、6の例を示したが、極数は1以上であればよい。また、上記実施形態では、バスバー20がジョイント機能付きのコネクタ1に用いられる例を示したが、本発明のバスバー製造方法により製造されるバスバーは、各種コネクタに用いられ得る。
【0028】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るバスバー製造方法の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]コネクタハウジング(10)に圧入された際に前記コネクタハウジングと係合する係合突起(25)を備えたバスバー(20)を製造する方法であって、
複数の前記バスバーがキャリア(122)により連鎖状に連結されたバスバー連結体(121)を準備する準備工程と、
前記キャリアを切断することで前記バスバーを前記バスバー連結体から切り離す切断工程と、を有し、
前記切断工程において、前記キャリアの切断と同時に前記係合突起の成形を行う、
バスバー製造方法。
【0029】
上記[1]の構成によれば、バスバー連結体(121)のキャリア(122)を切断することで、コネクタハウジングと係合する係合突起(25)を同時に形成し、係合突起(25)を有するバスバー(20)を得ることができる。よって、キャリア(122)の切断位置を変更することにより、複数パターンのバスバー(20)を得ることができる。したがって、1品番のバスバー連結体(121)を供給し、キャリア(122)の切断位置を変更するだけで、複数のバスバーパターンに対応可能となる。
【0030】
[2]前記バスバー(20)が、前記コネクタハウジング(10)の各端子収容室(11)にそれぞれ挿入される複数のタブ状の端子部(21)と、複数の前記端子部の基端を互いに連結して前記各端子部を一定の配列で互いに平行に保持する帯板状の連結部(22)と、を有し、
前記バスバー連結体(121)が、前記連結部(22)を兼ねる前記キャリア(122)と、前記キャリアから櫛歯状に突出する複数の前記端子部(21)と、を有する連鎖状供給材(120)である、
上記[1]に記載のバスバー製造方法。
【0031】
上記[2]の構成によれば、切断工程でキャリア(122)をカットすることにより、係合突起(25)を有する任意のサイズ、即ち、任意の個数(極数)の端子部(21)と連結部(22)を持つバスバー(20)を得ることができる。
【0032】
[3]前記連鎖状供給材(120)が、ロール状に巻かれた状態で前記切断工程に送り出し供給される、
上記[2]に記載のバスバー製造方法。
【0033】
上記[3]の構成によれば、ロールからの送り出しにより、バスバー連結体(121)を切断工程に導入することができる。
【符号の説明】
【0034】
W 電線
5 接続端子(相手側端子)
10 コネクタハウジング
11 端子収容室
20 バスバー
21 端子部
22 連結部
25 係合突起
120 連鎖状供給材
121 バスバー連結体
122 キャリア