(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167724
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド及びそれを用いたレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20241127BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20241127BHJP
【FI】
B23K26/064 A
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083983
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 史記
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168CB03
4E168CB08
4E168EA17
4E168EA24
4E168FC04
4E168KB05
(57)【要約】
【課題】小型化、軽量化が図れるとともに、レーザ光をスピン走査する場合の走査周波数を高められるレーザ加工ヘッドを提供する。
【解決手段】レーザ加工ヘッド50は、第1及び第2平行板13、22と第1及び第2ホルダ14、23とが収容された筐体10と第1及び第2サーボモータ15、24とを備えている。第1及び第2ホルダ14、23は、第1及び第2平行板13、22をそれぞれ保持する。第1サーボモータ15は、第1回転軸16を中心に第1ホルダ14を揺動させ、レーザ光LBの光軸を第1光軸からシフトさせる。第2サーボモータ24は、第2回転軸25を中心に第2ホルダ23を揺動させ、第1平行板13を透過したレーザ光LBの光軸をシフトさせる。第1及び第2回転軸16、25の延伸方向と第1光軸とは互いに直交している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が入射される光入射口と前記レーザ光が出射される光出射口とを有し、複数の部品が内部に収容された筐体を少なくとも備えたレーザ加工ヘッドであって、
前記複数の部品は、コリメーションレンズとフォーカスレンズと第1平行板と第1ホルダと第2平行板と第2ホルダと、を少なくとも含み、
前記コリメーションレンズは、第1光軸を有する前記レーザ光を平行化し、
前記フォーカスレンズは、前記コリメーションレンズで平行化された前記レーザ光を集光し、
前記第1ホルダは、前記第1平行板を保持し、
前記第2ホルダは、前記第2平行板を保持し、
前記レーザ加工ヘッドは、第1アクチュエータと第2アクチュエータとをさらに備え、
前記第1アクチュエータは、前記第1ホルダが回転一体に接続された第1回転軸を有し、かつ前記第1回転軸を中心に前記第1ホルダを第1揺動角で揺動させ、
前記第1平行板は、前記第1揺動角に応じて、前記フォーカスレンズで集光された前記レーザ光の光軸を前記第1光軸からシフトさせ、
前記第2アクチュエータは、前記第2ホルダが回転一体に接続された第2回転軸を有し、かつ前記第2回転軸を中心に前記第2ホルダを第2揺動角で揺動させ、
前記第2平行板は、前記第2揺動角に応じて、前記第1平行板を透過した前記レーザ光の光軸をシフトさせ、
前記第1回転軸の延伸方向及び前記第2回転軸の延伸方向は、それぞれ前記第1光軸と直交しており、かつ前記第1回転軸の延伸方向は前記第2回転軸の延伸方向と直交していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第1揺動角及び前記第2揺動角の少なくとも一方は、所定の角度範囲で周期的に変化することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第1揺動角及び前記第2揺動角は、それぞれ、-θ(°)から+θ(°)まで周期的に変化する一方(-45≦θ≦+45)、前記第2揺動角の時間変化の位相は、前記第1揺動角の時間変化の位相と90(°)ずれていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記光入射口に入射され、かつ前記光出射口から出射された前記レーザ光は、レーザ加工対象であるワークの表面において、円を描くように照射され、
前記円に沿って前記レーザ光が1周する期間は、前記第1揺動角及び前記第2揺動角の時間変化の周期に一致することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第1アクチュエータには第1カバーが、及び前記第2アクチュエータには第2カバーが、それぞれ取り付けられており、
前記第1カバー及び前記第2カバーには、それぞれ、外部から供給されるエアーの導入口が設けられており、
前記筐体には、前記エアーの別の導入口が設けられていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ光をワークに向けて出射する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドと、
前記レーザ加工ヘッドの動作を制御する制御装置と、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ光をワークに向けて出射する請求項5に記載のレーザ加工ヘッドと、
前記レーザ加工ヘッドの動作を制御する制御装置と、
エアー供給源と、
前記エアー供給源から供給される前記エアーの経路を切り替える経路切り替え機構と、を少なくとも備え、
前記経路切り替え機構を動作させることで、
前記レーザ加工ヘッドから前記レーザ光が出射されている期間は、前記別の導入口に前記エアーが供給され、
前記レーザ発振器に設けられた電源がオン状態である一方、前記レーザ発振器ではレーザ発振の準備中であり、前記レーザ加工ヘッドから前記レーザ光が出射されていない期間は、前記第1カバー及び前記第2カバーのそれぞれの前記導入口に前記エアーが供給されることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工ヘッド及びそれを用いたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、焦点距離が長いレーザ光を用いて、加工点から離れた位置からレーザ光を加工点に照射してレーザ溶接を行うリモートレーザ加工と呼ばれる加工法が注目されている。
【0003】
特に、小型かつ軽量であるレーザ加工ヘッドへの関心が高まっており、例えば、特許文献1には、簡便な構成でレーザ光をシフトさせて、加工対象であるワークに対するレーザ光の照射位置を制御し、スポット溶接やシーム溶接等のレーザ加工を行うことができるレーザ加工ヘッドが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された構成では、レーザ光の入射光軸に対して傾斜した入射面と出射面とをそれぞれ有し、レーザ光を透過する2枚の平行板が、レーザ加工ヘッドの内部に設けられている。それぞれサーボモータとタイミングベルトとを有する2組の回転機構により、2枚の平行板がレーザ光の入射光軸と平行な軸回りに回転することで、2枚の平行板を透過したレーザ光軸が変化する。このことを利用して、所望の軌跡、例えば、円形やらせん状の軌跡でワークの表面にレーザ光を照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される従来の構成は、前述したように、簡便な構成でワークに対するレーザ光の照射軌跡を制御できるため、レーザ加工を行う上で非常に有用である。
【0007】
一方、近年、レーザ加工の高速化が要求されている。例えば、レーザ加工ヘッドを直線に沿って移動させながらレーザ光を円形に走査してワークをレーザ加工する場合、レーザ光を円形に回転させる回転周波数を高める必要がある。
【0008】
一方、特許文献1に開示される従来の構成では、この回転周波数を所定値以上に高めることが難しかった。
【0009】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化、軽量化が図れるとともに、レーザ光をスピン走査する場合の走査周波数を高められるレーザ加工ヘッド及びそれを用いたレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示に係るレーザ加工ヘッドは、レーザ光が入射される光入射口と前記レーザ光が出射される光出射口とを有し、複数の部品が内部に収容された筐体を少なくとも備えたレーザ加工ヘッドであって、前記複数の部品は、コリメーションレンズとフォーカスレンズと第1平行板と第1ホルダと第2平行板と第2ホルダと、を少なくとも含み、前記コリメーションレンズは、第1光軸を有する前記レーザ光を平行化し、前記フォーカスレンズは、前記コリメーションレンズで平行化された前記レーザ光を集光し、前記第1ホルダは、前記第1平行板を保持し、前記第2ホルダは、前記第2平行板を保持し、前記レーザ加工ヘッドは、第1アクチュエータと第2アクチュエータとをさらに備え、前記第1アクチュエータは、前記第1ホルダが回転一体に接続された第1回転軸を有し、かつ前記第1回転軸を中心に前記第1ホルダを第1揺動角で揺動させ、前記第1平行板は、前記第1揺動角に応じて、前記フォーカスレンズで集光された前記レーザ光の光軸を前記第1光軸からシフトさせ、前記第2アクチュエータは、前記第2ホルダが回転一体に接続された第2回転軸を有し、かつ前記第2回転軸を中心に前記第2ホルダを第2揺動角で揺動させ、前記第2平行板は、前記第2揺動角に応じて、前記第1平行板を透過した前記レーザ光の光軸をシフトさせ、前記第1回転軸の延伸方向及び前記第2回転軸の延伸方向は、それぞれ前記第1光軸と直交しており、かつ前記第1回転軸の延伸方向は前記第2回転軸の延伸方向と直交していることを特徴とする。
【0011】
本開示に係るレーザ加工装置は、前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ光をワークに向けて出射する前記レーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドの動作を制御する制御装置と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、レーザ加工ヘッドの小型化、軽量化が図れる。また、レーザ光をスピン走査する場合の走査周波数を高められる。このことにより、高速でのレーザ加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。
【
図2】第1揺動角及び第2揺動角が0°の場合のレーザ加工ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】第1揺動角及び第2揺動角が0°の場合のレーザ加工ヘッドの断面模式図である。
【
図4】第1揺動角及び第2揺動角が20°の場合のレーザ加工ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
【
図5】第1揺動角及び第2揺動角が20°の場合のレーザ加工ヘッドの断面模式図である。
【
図6】第1ホルダ及び第1平行板が取り付けられた第1サーボモータの斜視図である。
【
図7】第1平行板によるレーザ光の光軸シフトの様子を説明する模式図である。
【
図8A】第2平行板によるレーザ光のビームシフト量の時間変化を示す図である。
【
図8B】第1平行板によるレーザ光のビームシフト量の時間変化を示す図である。
【
図9】ワークの表面でのレーザ光の照射軌跡を示す図である。
【
図10】比較に係るレーザ加工ヘッドの断面模式図である。
【
図11A】実施形態2に係るレーザ加工装置の要部であって、レーザ加工中のエアーの流れを示すブロック図である。
【
図11B】実施形態2に係るレーザ加工装置の要部であって、レーザ加工のインターバルにおけるエアーの流れを示すブロック図である。
【
図12】実施形態2に係るレーザ加工ヘッドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
(実施形態1)
[レーザ加工装置の構成]
図1は、実施形態1に係るレーザ加工装置の構成を示し、レーザ加工装置100は、レーザ加工ヘッド50と、マニピュレータ60と、制御装置70と、レーザ発振器80と、光ファイバ90とを備えている。
【0016】
レーザ加工ヘッド50は、光ファイバ90で伝送されたレーザ光LBをワークWに向けて照射する。レーザ加工ヘッド50の構成については後で詳しく述べる。
【0017】
マニピュレータ60は、多関節軸ロボットであり、先端にレーザ加工ヘッド50が取り付けられ、レーザ加工ヘッド50を移動させる。なお、各関節軸(図示せず)には、サーボモータ(図示せず)が取り付けられており、制御装置70からの指令信号により、サーボモータの駆動制御が行われる。
【0018】
制御装置70は、1または複数のCPU(Central Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)(いずれも図示せず)を有している。また、制御装置70は、記憶部としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)やSSD(Solid State Drive)等の半導体メモリまたはHDD(Hard Disk Drive)あるいはその両方(いずれも図示せず)を有している。
【0019】
制御装置70は、レーザ加工ヘッド50の動作と、マニピュレータ60の動作と、レーザ発振器80のレーザ発振を制御する。具体的には、制御装置70は、後で述べる第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24の動作をそれぞれ制御する。また制御装置70は、前述したマニピュレータ60の各サーボモータの動作を制御する。また、制御装置70は、レーザ発振器80に設けられた電源(図示せず)を動作させ、レーザ光LBのパワーやオンオフのタイミング等を制御する。
【0020】
なお、制御装置70は、少なくともレーザ加工ヘッド50の動作を制御すればよい。例えば、マニピュレータ60の動作を制御する制御装置と、レーザ発振器80のレーザ発振を制御する制御装置とを、制御装置70と別個に設けてもよい。
【0021】
レーザ発振器80は、レーザ発振によりレーザ光LBを発生させ、光ファイバ90に出力する。光ファイバ90は、レーザ発振器80から出力されたレーザ光LBをレーザ加工ヘッド50まで伝送する。
【0022】
図1に示すレーザ加工装置100は、ワークWの切断や溶接、穴あけ加工等を行うのに使用される。レーザ加工装置100では、制御装置70により、レーザ発振器80、レーザ加工ヘッド50及びマニピュレータ60をそれぞれ動作させて、ワークWに所望の軌跡でレーザ光LBを照射する。
【0023】
[レーザ加工ヘッドの構成]
図2は、第1揺動角及び第2揺動角が0°の場合のレーザ加工ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
図3は、第1揺動角及び第2揺動角が0°の場合のレーザ加工ヘッドの断面模式図である。
図4は、第1揺動角及び第2揺動角が20°の場合のレーザ加工ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
図5は、第1揺動角及び第2揺動角が20°の場合のレーザ加工ヘッドの断面模式図である。なお、
図2及び
図4において、第2筐体2は、外形のみを二点鎖線で図示し、レーザ加工ヘッド50の内部構造を可視化できるようにしている。
【0024】
図6は、第1ホルダ及び第1平行板が取り付けられた第1サーボモータの斜視図である。なお、第2ホルダ23及び第2平行板22が取り付けられた第2サーボモータ24の構造も、
図6に示す構造と同様である。
【0025】
図2~5に示すように、レーザ加工ヘッド50は、筐体10を有し、筐体10の内部に、それぞれ光学部品であるコリメーションレンズ11とフォーカスレンズ12と第1保護ガラス41と第2保護ガラス42とが収容されている。また、筐体10の内部には第1平行板13と第1ホルダ14と第2平行板22と第2ホルダ23とが収容されている。
【0026】
なお、以降の説明において、筐体10の長手方向、さらに言うと、光入射口10aから筐体10の内部に入射されるレーザ光LBの光軸方向をZ方向と呼ぶことがある。また、第1回転軸16の延伸方向をX方向と呼び、第2回転軸25の延伸方向をY方向と呼ぶことがある。
【0027】
なお、Z方向において、光入射口10aが設けられた側を上側または上方と呼び、光出射口10bが設けられた側を下側または下方と呼ぶことがある。
【0028】
X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交している。なお、本願明細書において、「直交」している、または「平行」である、あるいは「同じ」であるとは、レーザ加工ヘッド50を構成する各部品の製造公差や部品間の組立公差を含んで、比較対象同士が直交している、または平行である、あるいは同じであると言う意味である。比較対象同士が厳密な意味で直交している、または平行である、あるいは同じであるということまでを意味するものではない。
【0029】
筐体10は、それぞれ筒状の部材である第1筐体1と第2筐体2と第3筐体3とが、Z方向に沿って下からこの順で配置されてなる。
【0030】
第1筐体1の上端にコネクタ4が接続される。また、コネクタ4に光ファイバ90が接続され、筐体10の内部にレーザ光LBが導光される。なお、第1筐体1の上端の開口が、光入射口10aである。
【0031】
また、第1筐体1の内部には、コリメーションレンズ11とフォーカスレンズ12とが、Z方向に沿って上からこの順で配置されている。コリメーションレンズ11は、筐体10の内部に入射されたレーザ光LBを平行化する。フォーカスレンズ12は、コリメーションレンズ11によって平行化されたレーザ光LBをワークWにおける加工点で焦点を結ぶように集光する。なお、光入射口10aから入射してフォーカスレンズ12を透過した直後まで、レーザ光LBの光軸(第1光軸)はZ方向に沿っている。
【0032】
第2筐体2の内部には、第1平行板13と第1ホルダ14と第2平行板22と第2ホルダ23とが収容されている。
【0033】
図3及び
図6に示すように、第1ホルダ14は、第1サーボモータ15の第1回転軸16に回転一体に接続されている。また、第1平行板13は第1ホルダ14に保持されている。つまり、第1サーボモータ15が動作し、第1回転軸16が時計回りまたは反時計回りに所定の回転速度で回転すると、この回転にあわせて第1平行板13と第1ホルダ14とが同じ方向に同じ回転速度で回転する。
【0034】
また、
図3及び
図6に示すように、第2ホルダ23は、第2サーボモータ24の第2回転軸25に回転一体に接続されている。また、第2平行板22は第2ホルダ23に保持されている。つまり、第2サーボモータ24が動作し、第2回転軸25が時計回りまたは反時計回りに所定の回転速度で回転すると、この回転にあわせて第2平行板22と第2ホルダ23とが同じ方向に同じ回転速度で回転する。
【0035】
また、第1平行板13が所定の角度で回転すると、当該角度に応じて、レーザ光LBの光軸が第1光軸からシフトする。また、第2平行板22が所定の角度で回転すると、当該角度に応じて、第2平行板22から出射されるレーザ光LBの光軸が第1平行板13を透過した直後のレーザ光LBの光軸からシフトする。これらの詳細については後で述べる。
【0036】
また、第1平行板13及び第2平行板22は、それぞれレーザ光LBを透過する板材である。本実施形態において、第1平行板13及び第2平行板22は、いずれも合成石英からなる。また、第1平行板13及び第2平行板22のそれぞれにおいて、レーザ光LBが入射される表面は、レーザ光LBが出射される裏面と平行である。
【0037】
第3筐体3の内部には、第1保護ガラス41と第2保護ガラス42とが、Z方向に沿って上からこの順で配置されている。なお、第3筐体3の下端の開口が、光出射口10bである。第1保護ガラス41と第2保護ガラス42とを設けることで、レーザ加工中に筐体10の内部にスパッタやヒュームが入り込むのを防止できる。スパッタやヒュームが第1平行板13や第2平行板22、また、コリメーションレンズ11やフォーカスレンズ12に付着すると、レーザ光LBがけられて、光出射口10bから出射されるレーザ光LBのパワーが設定値より低下するおそれがある。また、レーザ光LBのビーム品質を低下させるおそれがある。
【0038】
第1保護ガラス41と第2保護ガラス42とを設けることで、このような不具合が発生するのを防止できる。なお、同じ目的で、1ないし複数の保護ガラスをさらに筐体10の内部に設定するようにしてもよい。
【0039】
第1サーボモータ15は、前述したように第1回転軸16を有している。第1回転軸16は第2筐体2を貫通して第2筐体2の内部に導入され、先端に第1ホルダ14が接続されている。
【0040】
第2サーボモータ24は、前述したように第2回転軸25を有している。第2回転軸25は第2筐体2を貫通して第2筐体2の内部に導入され、先端に第2ホルダ23が接続されている。
【0041】
第2サーボモータ24は、第1サーボモータ15よりも下方に配置されている。また、前述したように、Z方向に沿って見て、第1回転軸16の延伸方向であるX方向は、第2回転軸25の延伸方向であるY方向と直交している。
【0042】
[ワークの表面におけるレーザ光の走査について]
本実施形態におけるレーザ加工ヘッド50では、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24がそれぞれ初期位置にあるとき、
図3に示すように、光入射口10aから筐体10の内部に入射したレーザ光LBは、同じ光軸のまま光出射口10bから出射される。
【0043】
この場合の初期位置は、第1回転軸16及び第2回転軸25の回転角度がそれぞれ0°であり、第1平行板13及び第2平行板22のそれぞれの表面に対して、レーザ光LBが垂直に入射される。
【0044】
一方、
図4,5に示すように、第1回転軸16及び第2回転軸25がそれぞれ所定の角度、この場合は20°回転させると、筐体10の内部に入射したレーザ光LBの光軸は、2段階にシフトされて光出射口10bから出射される。以下、このことについてさらに説明する。
【0045】
図7は、第1平行板によるレーザ光の光軸シフトの様子を説明する模式図である。なお、第1平行板13の周囲は大気であり、その屈折率n1は、1.00である。
【0046】
図7に示すように、第1平行板13の表面に対して角度θ1でレーザ光LBが入射した場合、第1平行板13の内部で屈折され、第1平行板13の表面に対して角度θ2(θ2<θ1)で進行し、第1平行板13の裏面に到達する。レーザ光LBが、第2平行板22の裏面から大気中に出射される際、再度屈折される。第1平行板13の表面と裏面とは互いに平行であるから、レーザ光LBの進行方向は、第1平行板13の表面に入射する前と同じ方向に戻る。ただし、第1平行板13の表面に入射した時点でのレーザ光LBの光軸は、第1平行板13の表面から出射された時点でシフト量Dだけ平行に移動する。第1平行板13を構成する合成石英の屈折率をn2(=1.44963)とし、第1平行板13の板厚をt(=13mm)とするとき、シフト量Dは、式(1)で表される。なお、以降の説明において、シフト量Dをビームシフト量Dと呼ぶ。
【0047】
D=tcosθ1(tanθ1-tanθ2) ・・・(1)
また、角度θ2は、式(2)で表される。
【0048】
θ2=sin-1((n1/n2)sinθ1) ・・・(2)
また、第1平行板13は、延伸方向がX方向である第1回転軸16を中心として回転する。このため、第1回転軸16を初期位置から角度θ1回転させると、第1平行板13を透過したレーザ光LBの光軸はY方向に沿って第1光軸からシフトする。つまり、この場合のビームシフト量Dは、Y方向に関する値である。
【0049】
また、本実施形態において、第2平行板22の材質、屈折率n2及び板厚tは、第1平行板13の材質、屈折率n2及び板厚tと同じである。
【0050】
したがって、式(1)、(2)に示す関係は、第2平行板22に入射して第2平行板22を透過するレーザ光LBにも当てはまる。ただし、第2平行板22は、延伸方向がY方向である第2回転軸25を中心として回転するため、第2回転軸25を初期位置から角度θ1回転させると、レーザ光LBの光軸はX方向に沿ってシフトする。つまり、この場合のビームシフト量Dは、X方向に関する値である。
【0051】
以上の説明から明らかなように、第1サーボモータ15の第1回転軸16の回転角度を-θ1から+θ1まで周期的に変化させると、第1平行板13に入射したレーザ光LBの光軸は、初期位置、つまり、θ1=0°の場合の光軸位置からY方向に沿って、-Dから+Dまで周期的に変化する。同様に、第2サーボモータ24の第2回転軸25の回転角度を-θ1から+θ1まで周期的に変化させると、第2平行板22に入射したレーザ光LBの光軸は、初期位置、つまり、θ1=0°の場合の光軸位置からX方向に沿って、-Dから+Dまで周期的に変化する。
【0052】
このことを利用して、第1回転軸16の回転角度と第2回転軸25の回転角度をそれぞれ制御することで、ワークWの表面に所望の軌跡でレーザ光LBを照査させることができる。
【0053】
なお、以降の説明において、第1回転軸16または第2回転軸25、あるいはその両方を-θaから+θbまで周期的に回転させることで、第1ホルダ14及び第1平行板13または第2ホルダ23及び第2平行板22あるいはその両方を同じ角度範囲で周期的に回転させることを「揺動」と言う。ここで、0(°)<|θa|、|θb|≦90(°)である。また、角度θa、θbを揺動角θa、θbと呼ぶことがある。なお、揺動角θaの絶対値は、揺動角θbの絶対値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。揺動角θaの絶対値が、揺動角θbの絶対値と異なっている場合、レーザ光LBのビームシフト量Dは、初期位置に関して非対称となる。
【0054】
次に、ワークWの表面でレーザ光LBを円形に走査する、いわゆるスピン走査について説明する。
【0055】
図8Aは、第2平行板によるレーザ光のビームシフト量の時間変化を示す図である。
図8Bは、第1平行板によるレーザ光のビームシフト量の時間変化を示す図である。
図9は、ワークの表面でのレーザ光の照射軌跡を示す図である。
【0056】
レーザ光LBをスピン走査する場合、第1回転軸16を-θから+θまで周期的に回転させることで、第1平行板13を第1揺動角θで揺動させる。これと同時に、第2回転軸25を-θから+θまで周期的に回転させることで、第2平行板22を第2揺動角θで揺動させる。ここで、-45(°)≦θ≦+45(°)であり、第1揺動角θは、第2揺動角θと同じ角度範囲で変化する。
【0057】
図8A、8Bに示す例では、ビームシフト量Dが時間に関して正弦波状に変化するように、第1平行板13及び第2平行板22をそれぞれ揺動させている。この正弦関数の周期は、1秒であり、振幅の最大値は4.1mmである。ただし、周期や振幅の最大値は特にこれに限定されない。
【0058】
一方、
図8A及び
図8Bから明らかなように、第2揺動角θの時間変化の位相は、第1揺動角θの時間変化の位相と90(°)ずれている。
【0059】
このように第1平行板13及び第2平行板22をそれぞれ揺動させることで、レーザ加工ヘッド50の光出射口10bから出射されたレーザ光LBは、
図9に示すように円形の軌跡を描く。この場合、レーザ光LBは時計回り方向に走査される。円の半径は4.1mmであり、1回転の周期は、第1揺動角θ及び第2揺動角θの時間変化の周期と一致しており、1秒である。つまり、レーザ光LBの回転周波数は1Hzである。
【0060】
なお、第1回転軸16のみを回転させて、第1平行板13を第1揺動角θで揺動させた場合、ワークWの表面において、レーザ光LBは、Y方向に沿って、周期的に直線的に往復するように走査される。また、第2回転軸25のみを回転させて、第2平行板22を第2揺動角θで揺動させた場合、ワークWの表面において、レーザ光LBは、X方向に周期的に直線的に往復するように走査される。
【0061】
また、
図8A,8Bに示す例において、例えば、第2揺動角の角度範囲を第1揺動角の角度範囲よりも小さくなるように設定すると、ワークWの表面において、レーザ光LBは、長軸がY方向に沿う一方、短軸がX方向に沿う楕円形を描くように走査される。また、第1揺動角の角度範囲を第2揺動角の角度範囲よりも小さくなるように設定すると、ワークWの表面において、レーザ光LBは、長軸がX方向に沿う一方、短軸がY方向に沿う楕円形を描くように走査される。
【0062】
本実施形態において、第1サーボモータ15と第2サーボモータ24とは、それぞれ独立して駆動可能に構成されている。したがって、第1揺動角θ及び第2揺動角θのそれぞれの角度範囲や時間変化の周期を適宜設定することにより、ワークWの表面において、所望の軌跡でレーザ光LBを走査させることができる。
【0063】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工ヘッド50は、レーザ光LBが入射される光入射口10aとレーザ光LBが出射される光出射口10bとを有し、複数の部品が内部に収容された筐体10を少なくとも備えている。
【0064】
複数の部品には、コリメーションレンズ11とフォーカスレンズ12と第1平行板13と第1ホルダ14と第2平行板22と第2ホルダ23と、が少なくとも含まれる。
【0065】
コリメーションレンズ11は、光入射口10aから入射されるレーザ光LBを平行化する。コリメーションレンズ11に入射される時点で、レーザ光LBの光軸は、Z方向に沿った第1光軸である。
【0066】
フォーカスレンズ12は、コリメーションレンズ11で平行化されたレーザ光LBを集光する。さらに言うと、フォーカスレンズ12は、レーザ加工対象であるワークWの表面で所定の大きさのスポットとなるように、コリメーションレンズ11で平行化されたレーザ光LBをワークWの表面に集光する。
【0067】
第1ホルダ14は、第1平行板13を保持し、第2ホルダ23は、第2平行板22を保持する。
【0068】
レーザ加工ヘッド50は、第1サーボモータ15と第2サーボモータ24とをさらに備えている。
【0069】
第1サーボモータ15は、第1ホルダ14が回転一体に接続された第1回転軸16を有し、かつ第1回転軸16を中心に第1ホルダ14を第1揺動角で揺動させる。
【0070】
第1平行板13は、第1揺動角に応じて、フォーカスレンズ12で集光されたレーザ光LBの光軸を第1光軸からシフトさせる。具体的には、第1平行板13は、第1揺動角に応じて、レーザ光LBの光軸を第1光軸からY方向にシフトさせる。
【0071】
第2サーボモータ24は、第2ホルダ23が回転一体に接続された第2回転軸25を有し、かつ第2回転軸25を中心に第2ホルダ23を第2揺動角で揺動させる。
【0072】
第2平行板22は、第2揺動角に応じて、第1平行板13を透過したレーザ光LBの光軸をシフトさせる。具体的には、第2平行板22は、第2揺動角に応じて、第1平行板13を透過したレーザ光LBの光軸をX方向にシフトさせる。
【0073】
第1回転軸16の延伸方向であるX方向及び第2回転軸25の延伸方向であるY方向は、それぞれ第1光軸と平行なZ方向と直交している。また、X方向はY方向と直交している。
【0074】
本実施形態によれば、例えば、従来のガルバノミラーを用いたレーザ光走査機構をレーザ加工ヘッド50に搭載する場合に比べて、レーザ加工ヘッド50の小型化及び軽量化が図れる。
【0075】
さらに、本実施形態によれば、特許文献1に開示される従来の構成に比べて、レーザ加工ヘッド50に搭載される部品点数を低減でき、レーザ加工ヘッド50の小型化及び軽量化が図れる。
【0076】
図10は、比較に係るレーザ加工ヘッドの断面模式図であり、特許文献1に開示される従来のレーザ加工ヘッド50に対応している。
【0077】
図10に示すレーザ加工ヘッド50は、以下に示す点で、
図2~5に示す本実施形態のレーザ加工ヘッド50と異なる。
【0078】
まず、
図10に示すレーザ加工ヘッド50では、第1平行板13を保持する円筒状の第1ホルダ18と第2平行板22を保持する円筒状の第2ホルダ27とがZ方向に沿って、かつZ方向に間隔をあけて第2筐体2の内部に収容されている。また、第1ホルダ18は、ベアリング31を介して第2筐体2に保持されている。第2ホルダ27は、ベアリング32を介して第2筐体2に保持されている。
【0079】
第1平行板13は第1ホルダ18に対し、第2平行板22は第2ホルダ27に対して、それぞれ位置が固定されている。また、第1平行板13及び第2平行板22は、レーザ光LBの光軸に対して45°傾いて配置されている。
【0080】
第1ホルダ18及び第2ホルダ27は、それぞれ第1サーボモータ15や第2サーボモータ24で直接回転されるのではなく、別の部材を介して、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24により回転される。
【0081】
第1サーボモータ15の第1回転軸16は、第2筐体2の外周面に設けられた第1タイミングベルトプーリー20に連結されており、第1回転軸16の回転とともに第1タイミングベルトプーリー20も回転する。第1タイミングベルトプーリー20と第1ホルダ18とに第1タイミングベルト19が掛け回されており、第1タイミングベルトプーリー20が回転すると第1タイミングベルト19を介して第1ホルダ18がZ方向に平行な軸回りに回転する。第1サーボモータ15と第1タイミングベルトプーリー20と第1タイミングベルト19とをあわせて第1回転機構21と呼ぶことがある。
【0082】
第2サーボモータ24の第2回転軸25は、第2筐体2の外周面に設けられた第2タイミングベルトプーリー29に連結されており、第2回転軸25の回転とともに第2タイミングベルトプーリー29も回転する。第2タイミングベルトプーリー29と第2ホルダ27とに第2タイミングベルト28が掛け回されており、第2タイミングベルトプーリー29が回転すると第2タイミングベルト28を介して第2ホルダ27がZ方向に平行な軸回りに回転する。第2サーボモータ24と第2タイミングベルトプーリー29と第2タイミングベルト28とをあわせて第2回転機構30と呼ぶことがある。また、第1ホルダ18の回転軸は、Z方向から見て第2ホルダ27の回転軸に一致している。
【0083】
ワークWの表面でレーザ光LBをスピン走査する場合は、第1サーボモータ15または第2サーボモータ24を動作させて、第1ホルダ18または第2ホルダ27を回転させる。
図7に示した原理により、式(1)において、θ1=45°とした場合のビームシフト量Dを半径とする円を描くようにレーザ光LBが走査される。第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24の両方を動作させる場合は、前述したビームシフト量Dの2倍の長さを半径とする円を描くようにレーザ光LBが走査される。なお、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24は、それぞれ独立して動作させることができる。この点は、
図2~5に示す本実施形態のレーザ加工ヘッド50も同様である。
【0084】
図10に示すレーザ加工ヘッド50は、第1回転機構21及び第2回転機構30をそれぞれ独立して、あるいは連動して動作させることにより、ワークWの表面において、所望の軌跡でレーザ光LBを走査させることができ、レーザ加工を行う上で有用である。
【0085】
一方で、第1平行板13及び第2平行板22をZ方向に沿った軸回りに回転させるため、第1ホルダ18及び第2ホルダ27のサイズが大きくなる。また、レーザ加工ヘッド50に第1タイミングベルトプーリー20や第1タイミングベルト19、また、第2タイミングベルトプーリー29や第2タイミングベルト28を別途取り付ける必要がある。このため、レーザ加工ヘッド50が大型化し、また重量が大きくなってしまう。
【0086】
また、
図10に示すように、第2筐体2の内部にベアリング31,32が収容されている。前述したように、ベアリング31,32に塗布されるグリスの粘性の影響により起動トルクが高くなり、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の発熱量が大きくなる。その結果、意図せずに第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が停止してしまうおそれがある。
【0087】
また、第1タイミングベルト19や第2タイミングベルト28が収容されており、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24を動作させると、前述したように、摩擦によって、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が摩耗して摩耗粉が発生する。摩耗粉の発生量が大きくなりすぎると、摩耗粉の光学部品への付着量も多くなり、レーザ加工ヘッド50から出射されるレーザ光LBの品質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0088】
一方、本実施形態によれば、第1平行板13を保持する第1ホルダ14を第1サーボモータ15で直接に揺動させている。また、第2平行板22を保持する第2ホルダ23を第2サーボモータ24で直接に揺動させている。このようにすることで、前述したベアリング31,32が不要となる。また、第1タイミングベルトプーリー20や第1タイミングベルト19、また、第2タイミングベルトプーリー29や第2タイミングベルト28が不要となる。また、
図10に示す構成に比べて、第1ホルダ14や第2ホルダ23のサイズを小さくできる。これらのことにより、レーザ加工ヘッド50の小型化、軽量化が図れる。
【0089】
また、ベアリング31,32が不要となるため、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24における起動トルクの増大、ひいては過度の発熱が抑制される。このことにより、意図せずに第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が停止するのを防止できる。また、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の寿命低下を抑制できる。
【0090】
さらに本実施形態によれば、第1タイミングベルト19や第2タイミングベルト28が不要となるため、前述した摩耗粉が発生しない。このことにより、前述したレーザ光LBの品質低下を抑制できる。
【0091】
第1揺動角及び第2揺動角の少なくとも一方は、所定の角度範囲で周期的に変化することが好ましい。このようにすることで、ワークWの表面において、所望の軌跡で繰り返しレーザ光LBを走査させることができる。
【0092】
例えば、第1揺動角及び第2揺動角が、それぞれ、-θ(°)から+θ(°)まで周期的に変化する(-45≦θ≦+45)ように、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24の動作をそれぞれ制御する。一方、第2揺動角の時間変化の位相が、第1揺動角の時間変化の位相と90(°)ずれるように、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24の動作をそれぞれ制御する。このようにすることで、ワークWの表面において、繰り返しレーザ光LBをスピン走査させることができる。つまり、光入射口10aに入射され、かつ光出射口10bから出射されたレーザ光LBは、レーザ加工対象であるワークWの表面において、円を描くように照射される。
【0093】
また、特許文献1に開示される従来の構成では、以下に示す3つの理由により、この回転周波数を所定値以上に高めることが難しかった。
【0094】
第1に、レーザ光をスピン走査して円形を1周描くためには、平行板を1回転させる必要がある。しかし、この走査周波数は、サーボモータの最高回転速度により制約を受け、所定値以上に高めることが難しかった。
【0095】
第2に、従来の構成では、平行板を保持するホルダの両端にベアリングが取り付けられている。このベアリングは、平行板を含む複数の光学部品とともに、レーザ加工ヘッドの筐体の内部に収容されている。ベアリングに用いられるグリスが揮発して光学部品に付着すると、レーザ光に悪影響を及ぼすため、揮発しにくい粘性の高いグリスが用いられる。
【0096】
しかし、グリスの粘性の影響によりホルダに連結されたサーボモータの起動トルクが高くなり、サーボモータを回転させた場合の発熱量が大きくなる。通常、サーボモータは所定の温度よりも高くなると動作停止するように保護機能が付与されている。よって、サーボモータの回転周波数を上げ過ぎると、グリスの粘性の影響によってサーボモータが過度に発熱し、意図せずにサーボモータが停止してしまうおそれがある。
【0097】
最後に、タイミングベルトで発生する摩耗粉の影響が挙げられる。従来の構成では、サーボモータの回転駆動力を平行板の回転力に変換する伝達部材の一部として、前述のタイミングベルトを用いており、タイミングベルトの一部は、レーザ加工ヘッドの筐体の内部に収容されている。サーボモータの回転周波数が高くなると、タイミングベルトで発生する摩擦力も大きくなる。この摩擦力の影響により、タイミングベルトが摩耗して摩耗粉が発生する。摩耗粉の発生量が大きくなりすぎると、摩耗粉の光学部品への付着量も多くなり、レーザ光に悪影響を及ぼす。
【0098】
一方、本実施形態によれば、
図10に示す構成に比べて、レーザ光LBをスピン走査した場合の走査周波数を高められる。ここで、スピン走査時の走査周波数は、ワークWの表面において、円に沿ってレーザ光LBが1周する期間Tの逆数である。また、本実施形態において、期間Tは、第1揺動角及び第2揺動角の時間変化の周期に一致している。
【0099】
図10に示すレーザ加工ヘッド50を用いて、レーザ光LBをスピン走査する場合、第1平行板13または第2平行板22あるいはその両方を1回転させる必要がある。しかし、これらの回転周期は、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の最高回転速度により制約を受け、所定値以上に短くすることはできない。言い換えると、
図10に示すレーザ加工ヘッド50を用いて、レーザ光LBをスピン走査する場合、走査周波数を所定値以上に高めることができない。例えば、
図10に示す例で言えば、走査周波数を40Hzよりも高くすることができない。
【0100】
一方、本実施形態によれば、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24のそれぞれにおいて、第1揺動角及び第2揺動角が、それぞれ、-θ(°)から+θ(°)まで周期的に変化する(-45≦θ≦+45)ように、第1ホルダ14や第2ホルダ23を揺動させればよい。この揺動周波数、つまり、第1揺動角及び第2揺動角の時間変化の周期の逆数は、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24の最高回転速度で制約される値よりもさらに高めることができる。本実施形態のレーザ加工ヘッド50を用いてレーザ光LBをスピン走査する場合、走査周波数を、
図10に示す例に比べて、例えば、2倍以上に高めることが可能である。このことにより、より高速でワークWをレーザ加工することができる。
【0101】
なお、本実施形態において、スピン走査時の円の半径は、第1揺動角及び第2揺動角の変化幅に依存する。変化幅を大きくすると、円の半径を大きくすることができるが、走査周波数は低下する。ただし、その場合も、-45≦θ≦+45の関係が維持されていれば、
図10に示す例よりも走査周波数を高めることができる。
【0102】
本実施形態に係るレーザ加工装置100は、レーザ光LBを出射するレーザ発振器80と、レーザ光LBをワークWに向けて出射するレーザ加工ヘッド50と、レーザ加工ヘッド50の動作を制御する制御装置70と、を少なくとも備えている。
【0103】
本実施形態によれば、レーザ加工ヘッド50の小型化、軽量化が図れるため、レーザ加工装置100を小型化できる。また、
図1に示すように、レーザ加工ヘッド50をマニピュレータ60で移動させてワークWをレーザ加工する場合に、マニピュレータ60の負荷が低減され、高速でのレーザ加工が可能となる。
【0104】
また、本実施形態によれば、第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24が意図せずに停止するのを防止できるため、加工不良の発生を抑制できる。また、レーザ加工ヘッド50から出射されるレーザ光LBの品質低下を抑制できるため、加工品質の低下を抑制できる。
【0105】
また、本実施形態によれば、レーザ光LBの走査周波数、特にスピン走査時の操作周波数を高められるため、従来に比べて高速でレーザ加工を行うことができる。
【0106】
(実施形態2)
図11Aは、実施形態2に係るレーザ加工装置の要部であって、レーザ加工中のエアーの流れを示すブロック図である。
図11Bは、実施形態2に係るレーザ加工装置の要部であって、レーザ加工のインターバルにおけるエアーの流れを示すブロック図である。
図12は、実施形態2に係るレーザ加工ヘッドを示す斜視図である。
【0107】
なお、説明の便宜上、
図11A及び以降に示す各図面において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、
図11A及び
図11Bにおいて、レーザ加工ヘッド50を含む各部品は簡略化して図示している。また、マニピュレータ60,制御装置70、レーザ発振器80及び光ファイバ90については、図示を省略している。
【0108】
また、
図2及び
図4と同様に、
図12において、第2筐体2は、外形のみを二点鎖線で図示し、レーザ加工ヘッド50の内部構造を可視化できるようにしている。
【0109】
図12に示すように、第1サーボモータ15は、第2筐体2の外周面に取り付けられた第1カバー17の内部に収容されている。また、第2サーボモータ24は、第2筐体2の外周面に取り付けられた第2カバー26の内部に収容されている。なお、
図12において、第1カバー17及び第2カバー26は、第1エアー導入口17a及び第2エアー導入口26aを除いて、外形のみを二点鎖線で図示し、第1カバー17及び第2カバー26の内部を可視化できるようにしている。
【0110】
図12に示す本実施形態のレーザ加工ヘッド50は、以下に示す点で、
図2~5に示す実施形態1のレーザ加工ヘッド50と異なる。
【0111】
まず、第1サーボモータ15には第1カバー17が、第2サーボモータ24には第2カバー26が、それぞれ取り付けられている、また、第1カバー17には第1エアー導入口17aが、第2カバー26には第2エアー導入口26aが、それぞれ設けられている。また、筐体10の第3筐体3には、エアー導入口3aが設けられている。なお、
図2~5では図示していないが、実施形態1に示すレーザ加工ヘッド50の第3筐体3にも、エアー導入口3aが設けられている。
【0112】
また、
図11A、11Bに示すように、第1エアー導入口17aには第1エアー配管131が、第2エアー導入口26aには第2エアー配管132が、エアー導入口3aには筐体側エアー配管133がそれぞれ接続されている。また、第1エアー配管131、第2エアー配管132及び筐体側エアー配管133は、それぞれエアー電磁弁120に接続されている。エアー電磁弁120はエアー配管130を介してエアー供給源110に接続されている。
【0113】
なお、エアー供給源110は、レーザ加工装置100の外部に配置されていてもよい。また、エアー供給源110から供給されるエアーは、湿度と温度とが設定された範囲となるように調整されている。
【0114】
図11Aに示すように、レーザ加工中、言い換えると、レーザ加工ヘッド50からワークWに向けてレーザ光LBが出射されている期間は、エアー電磁弁120を動作させることで、エアーが筐体側エアー配管133に供給される。
【0115】
つまり、レーザ加工中は、筐体側エアー配管133からエアー導入口3aに所定の流量のエアーが供給される。エアー導入口3aから筐体10の内部に導入されたエアーは、図示しない排出口または光出射口10bあるいはその両方から筐体10の外部に排出される。
【0116】
筐体10の内部に導入されたエアーは、第1保護ガラス41及び第2保護ガラス42に吹き付けられるように流路が設定されている。
【0117】
スパッタやヒュームが第1保護ガラス41や第2保護ガラス42に所定量以上に付着すると、前述したレーザ光LBのけられが発生し。レーザ光LBのパワー低下やビーム品質低下が起こるおそれがある。
【0118】
本実施形態に示すように、レーザ加工中に第1保護ガラス41及び第2保護ガラス42に所定の流量のエアーを吹き付けることで、第1保護ガラス41や第2保護ガラス42にスパッタやヒュームが付着するのを抑制でき、レーザ光LBのパワー低下やビーム品質低下を抑制できる。なお、実施形態1においても、本実施形態で示すのと同様に、レーザ加工中に第1保護ガラス41及び第2保護ガラス42に所定の流量のエアーを吹き付けることで、第1保護ガラス41や第2保護ガラス42にスパッタやヒュームが付着するのを抑制している。
【0119】
一方、
図11Bに示すように、レーザ加工のインターバル、言い換えると、レーザ加工ヘッド50からレーザ光LBが出射されていない期間は、エアー電磁弁120によりエアーの供給経路が切り替えられ、第1エアー配管131と第2エアー配管132とに設定される。なお、この場合、レーザ加工ヘッド50からレーザ光LBが出射されていない期間では、レーザ発振器80に設けられた電源がオン状態である一方、レーザ発振器80ではレーザ発振の準備中である。
【0120】
つまり、レーザ加工のインターバルでは、第1エアー配管131から第1エアー導入口17aに所定の流量のエアーが、第2エアー配管132から第2エアー導入口26aに所定の流量のエアーが、それぞれ供給される。また、第1エアー導入口17aから供給されたエアーは、第1サーボモータ15に向けて導入され、第2エアー導入口26aから供給されたエアーは、第2サーボモータ24に向けて導入される。第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24に向けて導入されたエアーは、図示しない排出口から第1カバー17の外部に排出される。
【0121】
前述したように、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が動作中に過度に発熱すると、意図せずに第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が停止したり、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の寿命が低下したりする場合がある。
【0122】
実施形態1に示すレーザ加工ヘッド50やレーザ加工装置100では、ベアリング31,32を不要とすることで、これらに塗布されるグリスの粘性の影響で第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の起動トルクが増加するのを防止している。
【0123】
一方、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が小型で定格トルクが小さい場合、第1回転軸16や第2回転軸25に接続される負荷の重量によっては、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が過負荷となり、過度の発熱が起こることがある。なお、この負荷とは、第1平行板13を保持する第1ホルダ14や第2平行板22を保持する第2ホルダ23である。
【0124】
本実施形態によれば、レーザ加工のインターバルでは、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24にエアーを導入することにより、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24を冷却することができる。このことにより、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24における過度の発熱が抑制される。その結果、意図しない第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の停止を防止でき、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の寿命低下を抑制できる。
【0125】
なお、通常、レーザ加工の加工速度は、数m/minと高速であり、1回の連続加工時間、つまり、連続してワークWにレーザ光LBを照射する期間は、1分程度である。この後は、次の加工箇所へのレーザ加工ヘッド50の移動等を行うため、所定のインターバルが取られる。同じワークWのレーザ加工中であれば、このインターバルは、数秒~十数秒程度である。エアーの流量を適切に設定すれば、この期間でも第1サーボモータ15や第2サーボモータ24を適度に冷却することができる。
【0126】
また、本実施形態によれば、従来、利用されてきた筐体10へのエアー供給機構を改良し、第1カバー17と第2カバー26,さらに第1エアー配管131と第2エアー配管132を追加することで、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24を冷却する機構を簡便に構成できる。
【0127】
なお、本実施形態では、エアー供給源110からのエアーの供給経路を切り替えるにあたって、エアー電磁弁120を用いたが、特にこれに限定されない。別の経路切り替え機構を用いてもよい。
【0128】
また、レーザ加工装置100の運転を停止する場合は、エアー供給源110からのエアー供給が停止されるか、エアー電磁弁120から以降へのエアー供給が停止される。
【0129】
また、本実施形態によれば、実施形態1に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができる。つまり、特許文献1に開示されるような従来の構成に比べて、レーザ加工ヘッド50の小型化及び軽量化が図れる。過度の発熱を防止して、意図せずに第1サーボモータ15や第2サーボモータ24が停止するのを防止できる。また、第1サーボモータ15や第2サーボモータ24の寿命低下を抑制できる。さらに、レーザ光LBの品質低下を抑制できる。また、レーザ光LBの走査周波数、特にスピン走査時の操作周波数を高められるため、従来の構成に比べて高速でレーザ加工を行うことができる。
【0130】
(その他の実施形態)
第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24を、マニピュレータ60の関節軸を駆動するサーボモータ(図示せず)と同じタイプに揃えるようにしてもよい。このようにすることで、レーザ加工装置100を構成する部品の種類が増加するのを防止できる。また、同じタイプのサーボモータを駆動制御できるため、制御装置70のシステム構成を簡略化することができる。
【0131】
また、実施形態1,2において、第1ホルダ14及び第2ホルダ23に直接接続され、これらを揺動させる機構を第1サーボモータ15及び第2サーボモータ24としている。しかし、当該機構は、特にこれに限定されず、例えば、ステッピングモータを用いて第1ホルダ14及び第2ホルダ23をそれぞれ揺動してもよい。当該機構は、発生した駆動力により、第1ホルダ14及び第2ホルダ23をそれぞれ第1揺動角及び第2揺動角で揺動させるアクチュエータであればよい。つまり、本願明細書において、第1サーボモータ15は第1アクチュエータ15と、第2サーボモータ24は第2アクチュエータ24と、それぞれ読み替えることができる。
【0132】
また、実施形態1,2において、筐体10の内部に2枚の平行板が設けられる構成を示したが、平行板の枚数は特にこれに限定されず、3枚以上であってもよい。平行板を追加することで、ビームシフト量Dを大きくすることができ、より大きな半径の円を描いてレーザ光LBをスピン走査させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示のレーザ加工ヘッドは、小型化、軽量化が図れるとともに、レーザ光をスピン走査する場合の走査周波数を高められ
【符号の説明】
【0134】
1 第1筐体
2 第2筐体
3 第3筐体
3a エアー導入口(別の導入口)
4 コネクタ
10 筐体
10a 光入射口
10b 光出射口
11 コリメーションレンズ
12 フォーカスレンズ
13 第1平行板
14 第1ホルダ
15 第1サーボモータ(第1アクチュエータ)
16 第1回転軸
17 第1カバー
17a 第1エアー導入口(導入口)
18 第1ホルダ
19 第1タイミングベルト
20 第1タイミングベルトプーリー
21 第1回転機構
22 第2平行板
23 第2ホルダ
24 第2サーボモータ(第2アクチュエータ)
25 第2回転軸
26 第2カバー
26a 第2エアー導入口(導入口)
27 第2ホルダ
28 第2タイミングベルト
29 第2タイミングベルトプーリー
30 第2回転機構
31 ベアリング
32 ベアリング
41 第1保護ガラス
42 第2保護ガラス
50 レーザ加工ヘッド
60 マニピュレータ
70 制御装置
80 レーザ発振器
90 光ファイバ
100 レーザ加工装置
110 エアー供給源
120 エアー電磁弁(経路切り替え機構)
130 エアー配管
131 第1エアー配管
132 第2エアー配管
133 筐体側エアー配管