(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167728
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】素材試験機および素材試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/36 20060101AFI20241127BHJP
D06H 3/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01N33/36 A
D06H3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083991
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 竜文
(72)【発明者】
【氏名】松本 陽香
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AB19
3B154AB31
3B154CA07
3B154CA12
3B154DA16
(57)【要約】
【課題】実際の衣服の着用状況に近い状態で生地の汗処理機能の試験を行える素材試験機を得ること。
【解決手段】素材試験機は、中心軸21aが上下に延びる円柱形状であり、外周面にらせん状に延びる溝21bが形成された柱状体21と、溝21bに沿って柱状体21に巻き付けられた発汗チューブ22と、柱状体21の温度を維持する温度維持部3と、発汗チューブ22の内部に流体を送り込む送出部4と、柱状体21の外側面の周囲の温湿度を測定するセンサ5と、を備え、発汗チューブ22には溝21bが延びる方向に沿って複数の孔22aが並べて形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が上下に延びる円柱形状であり、外周面にらせん状に延びる溝が形成された柱状体と、
前記溝に沿って前記柱状体に巻き付けられた発汗チューブと、
前記柱状体の温度を維持する温度維持部と、
発汗チューブの内部に流体を送り込む送出部と、
前記柱状体の外側面の周囲の温湿度を測定するセンサと、を備え、
前記発汗チューブには前記溝が延びる方向に沿って複数の孔が並べて形成されている素材試験機。
【請求項2】
前記柱状体の上方に設けられ、正面視において前記中心軸から一方側と他方側とに延びる棒体と、
前記棒体を駆動させる駆動部と、をさらに備え、
前記棒体の前記一方側となる端部である一端部と、前記棒体の前記他方側の端部である他端部とに、布状の試験素材を保持する保持部が設けられている請求項1に記載の素材試験機。
【請求項3】
前記駆動部は、前記棒体を前記一端部と前記他端部とを交互に上下に移動させる請求項2に記載の素材試験機。
【請求項4】
前記駆動部は、前記棒体を前記一端部と前記他端部とを同期させて上下に移動させる請求項2に記載の素材試験機。
【請求項5】
前記柱状体の上面に取り付けられて上方に突出する上方突出部をさらに備える請求項1に記載の素材試験機。
【請求項6】
前記柱状体の側面に取り付けられて側方に突出する2つの側方突出部をさらに備え、
2つの前記側方突出部は、前記柱状体を挟んで互いに反対方向に突出する請求項5に記載の素材試験機。
【請求項7】
前記上方突出部と、2つの前記側方突出部とが一体に形成されている請求項6に記載の素材試験機。
【請求項8】
前記発汗チューブの直径は6mm~8mmであり、前記孔の直径は0.3mm~0.5mmであり、複数の前記孔が形成されるピッチは9mm~12mmである請求項1に記載の素材試験機。
【請求項9】
請求項1に記載の素材試験機を用いた素材試験方法であって、
前記柱状体の外周面の間に前記センサを配置させて前記柱状体の外周面を布状の試験素材で覆う工程と、
前記発汗チューブの内部に水を送り込む工程と、
前記柱状体と前記センサとの間の温湿度を測定する工程と、を備える素材試験方法。
【請求項10】
前記柱状体の外周面を前記試験素材で覆う前に、前記柱状体の外周面を布状の補助素材で覆う工程を備え、
前記センサは前記補助素材の外側に設けられる請求項9に記載の素材試験方法。
【請求項11】
請求項2に記載の素材試験機を用いた素材試験方法であって、
前記柱状体の外周面の間に前記センサを配置させて前記柱状体の外周面を布状の試験素材で覆う工程と、
前記保持部で前記試験素材を保持する工程と、
前記発汗チューブの内部に水を送り込む工程と、
前記駆動部によって前記棒体を駆動させる工程と、
前記柱状体と前記センサとの間の温湿度を測定する工程と、を備える素材試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服に用いられる布状の素材を試験する素材試験機および素材試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が進み炎天下で運動が行われる機会が増加する中、スポーツアパレル等の衣服の汗処理機能が重要視されている。衣服の汗処理機能を評価するために、衣服に用いられる生地からなる布状の試験素材を用いた素材試験が行われる。従来の素材試験では、吸水性評価として、試験素材に水滴を垂らし、その水滴が素材に浸透するまでの時間の計測や、速乾性評価として、水に浸した試験素材が乾くまでの時間の計測が行われてきた。しかし、実際の衣服の着用時には、人体から連続して発汗が行われ、生地の片側は肌に接していることから、従来の素材試験方法では、実際の衣服の着用状況が再現できていないという課題があった。
【0003】
そこで、非特許文献1に示すように、加熱した平板の上に試験素材を置き、平板に形成された複数の孔から水を染み出させた状態で、生地と平板の間の温湿度を計測することで、実際の衣服の着用状況に近づけた素材試験機がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“新素材・新商品の機能性・快適性評価|発汗シミュレーター|ユニチカガーメンテック株式会社”、[online]、[令和5年5月18日検索]、インターネット<http://www.unitika-gt.com/evaluation/24/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際の衣服の着用時には生地は縦方向に広げて配置される部分がほとんどであるが、上記非特許文献1に開示された試験機では、生地が横方向に広げて配置されており、実際の衣服の着用状況が十分に再現されているとはいえない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、実際の衣服の着用状況に近い状態で生地の汗処理機能の試験を行える素材試験機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る素材試験機は、中心軸が上下に延びる円柱形状であり、外周面にらせん状に延びる溝が形成された柱状体と、溝に沿って柱状体に巻き付けられた発汗チューブと、柱状体の温度を維持する温度維持部と、発汗チューブの内部に流体を送り込む送出部と、柱状体の外側面の周囲の温湿度を測定するセンサと、を備え、発汗チューブには溝が延びる方向に沿って複数の孔が並べて形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る素材試験機は、実際の衣服の着用状況に近い状態で生地の汗処理機能の試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る素材試験機の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、発汗模擬ユニットの概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、素材試験の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、素材試験を行う際の発汗模擬ユニットの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る素材試験機および素材試験方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。素材試験機は、衣服の着用者が発汗したときの、その衣服に用いられる生地の汗処理能力を試験する装置である。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下の説明において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1に係る素材試験機の概略構成を示すブロック図である。素材試験機100は、発汗模擬ユニット1と、制御部8と、操作部9と、を備える。
【0012】
図2は、発汗模擬ユニットの概略構成を示す図である。発汗模擬ユニット1は、発汗部2と、温度維持部3と、送出部4と、センサ5と、素材移動部6と、送風機7と、を備える。
【0013】
発汗部2は、発汗する着用者の身体を模したものであり、試験に用いられる布状の試験素材で覆われる。発汗部2は、柱状体21と、発汗チューブ22と、突出部23と、を備える。
【0014】
図3は、柱状体の正面図である。
図4は、柱状体の斜視図である。柱状体21の形状は、中心軸21aが上下に延びる円柱形状となっている。柱状体21の外周面にはらせん状に延びる溝21bが形成されている。柱状体21は、熱伝導性の高い金属材料で形成されていることが好ましい。柱状体21は、例えばアルミニウムで形成されている。その他の金属材料としては、例えば、ステンレスや鉄などを使用できる。柱状体21の内部には、水等の流体が通過可能な循環流路(図示せず)が形成されている。柱状体21の直径は例えば8cm、高さは例えば20cmである。
【0015】
図2に戻って、発汗チューブ22は、内部に水等の流体が通過可能な円筒形状であり、可撓性を有する材料で形成されている。発汗チューブ22は、例えば樹脂で形成されている。発汗チューブ22は、柱状体21に形成された溝21bに嵌め込まれて、柱状体21の外周面にらせん状に巻き付けられている。発汗チューブ22のうち柱状体21に巻き付けられた部分には、溝21bの延びる方向に沿って複数の孔22aが並べて形成されている。複数の孔22aは等間隔、すなわち等ピッチで並べて形成されている。また、複数の孔22aは、溝22bの壁面に覆われずに外部に露出する部分に形成されている。発汗チューブ22の一端は閉塞され、他端は後述する送出部4に接続されている。後述する送出部4から発汗チューブ22の内部に水等の流体が送り込まれると、孔22aから水等の流体が染み出すようになっている。
【0016】
発汗チューブ22の直径(外径)は例えば6mm~8mmであり、例えば7mmとすることができる。発汗チューブ22の内径は例えば3mm~5mmであり、例えば4mmとすることができる。孔22aの直径は例えば0.3mm~0.5mmであり、例えば0.4mmとすることができる。複数の孔22aが形成されるピッチは例えば9mm~12mmであり、例えば10mmとすることができる。柱状体21の外側面に形成された溝21bの幅は、発汗チューブ22の外径とほぼ等しいことが好ましい。上に例示した発汗チューブ22の外径であれば、溝21bの幅も10mm程度であることが好ましい。
【0017】
突出部23は、1つの上方突出部23aと、2つの側方突出部23bと、を備える。1つの上方突出部23aと、2つの側方突出部23bとは一体に形成されている。上方突出部23aは、柱状体21の上面に取り付けられて上方に向けて突出する。2つの側方突出部23bは、柱状体21の側面に取り付けられて側方に突出する。2つの側方突出部23bは、柱状体21を挟んで互いに反対方向に突出する。より具体的には、一方の側方突出部23bは後述する棒体61の一端が延びる方向に突出し、他方の側方突出部23bは棒体61の他端が延びる方向に突出している。なお、上方突出部23aと側方突出部23bとが一体に形成されている例を示したが、別体で形成されていてもよい。
【0018】
温度維持部3は、柱状体21を人の体温程度に温めて、その温度を維持する装置である。温度維持部3は、水槽31と往き用チューブ32aと還り用チューブ32bと加熱部33とポンプ34を備える。温度維持部3は、水槽31に溜められた流体の温度を加熱部33によって上昇させる。水槽31に溜められた流体は、加熱部33によって例えば37℃に温められる。なお、水槽31に溜められた流体の温度をさらに上げれば、例えば走行中に体温が平常時よりも上昇した状態を再現することができる。加熱部33による流体の温度を上昇させる手法は限定されない。加熱部33は例えば電熱線によって温度を上昇させる。
【0019】
往き用チューブ32aは、柱状体21の内部の循環流路への入り口とポンプ34とを連結する。還り用チューブ32bは柱状体21の内部の循環流路からの出口と水槽31の内部とを連結する。ポンプ34は、往き用チューブ32aを介して水槽31に溜められた流体を柱状体21の内部の循環流路に送り込む。循環流路から流出した流体は、還り用チューブ32bを介して水槽31に戻る。水槽31に溜められた流体は例えば水である。温められた流体が柱状体21の循環流路を循環することで柱状体21の温度が維持される。加熱部33およびポンプ34は、制御部8からの指示によって動作する。
【0020】
送出部4は、シリンダ41と、ピストン42と、アクチュエータ43と、送出用チューブ44と、を備える。シリンダ41とピストン42とによって発汗チューブ22に送出される流体が収容される収容空間45が形成される。発汗チューブ22の他端とシリンダ41とが送出用チューブ44によって接続されている。これにより、発汗チューブ22と収容空間45とが連通する。ピストン42を押し込むことで収容空間45が圧縮され内部の流体が発汗チューブ22に送り込まれる。収容空間45に収容される流体は例えば水である。発汗チューブ22に流体が送り込まれることで、発汗チューブ22の内部の圧力が高まり、孔22aから流体が染み出す。収容空間45の容積は例えば60mlである。ピストン42を押し込む速度を調節することで、単位時間当たりの発汗量を調節することができる。
【0021】
アクチュエータ43は、制御部8からの指示によって駆動し、ピストン42を押し込む。アクチュエータ43は、例えばモータである。アクチュエータ43がモータである場合には、モータの駆動軸の回転運動を、ピストン42を押し込む直線運動に変換する変換機構が必要となるが、変換機構の詳細な説明は省略する。なお、アクチュエータ43は、ピストン42を引き戻す動作も行わせることができる。
【0022】
センサ5は、柱状体21の外周面と対向する位置に設けられている。センサ5は、温度および湿度を測定する温湿度センサである。なお、温度を検出する温度センサと、湿度を検出する湿度センサが別個に設けられていてもよいし、いずれか一方が設けられていてもよい。センサ5によって検出された温湿度情報は、例えば制御部8に向けて送信される。
【0023】
素材移動部6は、棒体61と、駆動部62と、保持部63と、を備える。棒体61は、正面視において柱状体21の中心軸21aから一方側と他方側とに延びる棒上の部材である。駆動部62は、制御部8からの指示によって棒体61を駆動させる。例えば、駆動部62は、駆動軸を中心に矢印Xに示すように往復回転運動をさせて、棒体61の一方の端部と他方の端部とを交互に上下させる。なお、駆動部62は、矢印Yに示すように棒体61を上下に移動させて、棒体61の一方の端部の上下移動と他方の端部の上下移動とを同期させてもよい。駆動部62は、例えばモータである。
【0024】
保持部63は、素材試験機100で試験される布状の試験素材を保持する部材である。保持部63は、例えば試験素材を挟んで保持するクリップである。保持部63によって保持されることで、棒体61の移動に合わせて試験素材も移動する。この試験素材の移動によって、衣服の着用者が運動したときの衣服の移動が再現される。駆動部62は、例えば1Hzから60Hzで棒体61を往復回転運動または上下移動させる。
【0025】
送風機7は、ファン71と、モータ72と、を備える。制御部8からの指示によってモータ72が駆動されることでファン71が回転する。ファン71が回転することで柱状体21に向けた送風が行われる。
【0026】
図1に戻って、制御部8は発汗模擬ユニット1および操作部9と接続されている。制御部8は、操作部9からの操作指令に基づいて、発汗模擬ユニット1に上述したような指示を送信する。また、制御部8は、発汗模擬ユニット1のセンサ5から送信された温湿度情報を、図示を省略した表示部に表示させたり、図示を省略した記憶部に記憶させたりする。なお、制御部8からの指示によって動作される発汗模擬ユニット1の各種構成要素は、試験素材の試験を行う実施者が手動で動作させるように構成されていてもよい。
【0027】
操作部9は、試験素材の試験を行う実施者が操作するためのものである。操作部9は、操作スイッチが画面に表示されたタッチパネルであってもよいし、機械的な操作スイッチが設けられたものであってもよい。実施者は、操作部9を操作することで、発汗模擬ユニットの各種構成要素を動作させて、試験素材の試験を行う。なお、操作部9がタッチパネルであれば、画面に温湿度情報を表示させることで、操作部9に温湿度情報を表示させる表示部の機能を持たせることが可能となる。
【0028】
次に、以上説明した素材試験機を用いた素材試験方法について説明する。
図5は、素材試験の手順を説明するためのフローチャートである。
図6は、素材試験を行う際の発汗模擬ユニットの状態を示す図である。なお、
図6では、発汗模擬ユニット1の一部の構成要素の記載を省略している。また、上半身に着用する衣服を想定した素材試験について説明する。試験素材10は、縦29cm、横31.3cmの布状の生地を縦の辺同士を接合して筒状に形成したものである。試験素材10には、上半身に着用される衣服に形成された首用の開口を模した孔10aが形成されている。また、試験素材10には、上半身に着用される衣服に形成された腕用の開口を模した孔10bが形成されている。
【0029】
まず、
図6に示すように、筒状に形成された布状の試験素材10で柱状体21およびセンサ5を覆う(ステップS1)。これにより、センサ5は、柱状体21の外周面と試験素材10の間に配置されることになる。また、ステップS1において、孔10aには上方突出部23aが貫通され、孔10bには側方突出部23bが貫通される。すなわち、上方突出部23aは着用者の首を模して設けられたものであり、側方突出部23bは着用者の腕を模したものであるといえる。
【0030】
次に、素材移動部6の保持部63で試験素材10を保持する(ステップS2)。これにより、棒体61の動作に連動して試験素材10が移動するようになる。次に、温度維持部3の水槽31で温められた流体を循環させて(ステップS3)、柱状体の温度を着用者の体温に近づけ、その温度に維持する。
【0031】
次に、素材移動部6の駆動部62が駆動される(ステップS4)。これにより、試験素材10が移動される。試験素材10の移動は、着用者の動作時、例えば走行時の衣服の揺れが再現される。
【0032】
次に、送出部4のアクチュエータ43を駆動させて、発汗チューブ22に流体を送り込む(ステップS5)。これにより、発汗チューブ22に形成された孔22aから流体が染み出す。孔22aから染み出す流体によって着用者が発汗した状況が再現される。
【0033】
次に、送風機7を駆動して(ステップS6)、柱状体21に向けて送風する。これにより、試験素材10の表面に空気が吹き付けられる。試験素材10の表面に空気が吹き付けられることで、着用者が運動したとき、特に歩行時や走行時に衣服に空気が吹き付けられる状況が再現される。
【0034】
次に、センサ5によって温湿度を測定する(ステップS7)。ここで測定される温湿度は、柱状体21の外側面と試験素材10との間の温湿度である。柱状体21の外側面と試験素材10との間は、着用者が運動中に発汗したときの身体と衣服の間の状況が再現されている。したがって、ここで測定される温湿度は、運動中の着用者の衣服の内側の温湿度が再現されている。
【0035】
以上説明したように、実施形態1に係る素材試験機100および素材試験方法によれば、柱状体21に発汗チューブ22を巻き付けるという簡素な構成で、試験素材を縦方向に広げた、実際の衣服の着用状態が十分に再現された状態で、汗処理機能を試験して評価することができる。また、試験素材10は筒状に形成されているため、より実際の衣服に近い状況を再現することができる。
【0036】
また、柱状体21の外周面から流体が直接に染み出すように形成する場合には、金属製の柱状体21の外周面に微細な孔を多く形成する必要があるため、製造が難しく、製造したとしてもコストが増大してしまう。一方、本実施の形態に係る素材試験機100では、柱状体21に巻き付けた発汗チューブ22に形成された孔22aから流体が染み出すようになっているので、製造も容易でコストの低減も図ることができる。
【0037】
また、素材移動部6によって試験素材10が移動されるので、着用者が運動したときの衣服の揺れが再現され、実際の衣服の着用状況がより再現された状態で試験を行うことができる。
【0038】
また、柱状体21を挟んでセンサ5の反対側に送風機7を配置することで、センサ5が設けられた側には空気が吹き付けられない状況、すなわち、着用者の背面側の衣服の内側が再現された領域の温湿度を測定することができる。一方、柱状体21に対してセンサ5と同じ側に送風機7を配置することで、センサ5が設けられた側に空気が吹き付けられる状況、すなわち着用者の前面側の衣服の内側が再現された領域の温湿度を測定することができる。このように、送風機7の配置を変えるという簡単な作業で着用者の前面側と背面側の両方の温湿度を測定することができる。なお、センサ5を前面側と背面側の両方に設けて、前面側と背面側の両方の温湿度を同時に測定できるように構成してもよい。
【0039】
また、突出部23が設けられることで、首用の孔および腕用の孔が形成され、それに首および腕が貫通された状況が再現されるため、実際の着用状況がより再現された状態で試験を行うことができる。
【0040】
また、突出部23を取り外すことで、首用の孔および腕用の孔が形成されていない衣服、すなわち下半身に着用される衣服の着用状況を再現することができる。このように、実施形態1に係る素材試験機100では、突出部23の着脱という簡単な作業で、上半身に着用される衣服を想定した試験と、下半身に着用される衣服を想定した試験の両方を行うことができる。
【0041】
なお、試験素材10で柱状体21を覆う前に、伸縮性が高く着用者の肌を模した補助素材で柱状体21を覆ってもよい。このとき、センサ5は補助素材によって覆われない。このように補助素材で柱状体21を覆うことによって、発汗チューブ22の孔22aから染み出た水などの液体を補助素材全体に拡散することができる。これにより、例えば着用者の肌全体が汗で湿っているような状態に近い状態を作り出すことができ、実際の衣服の着用状態のバリエーションを増やすことができる。補助素材は、例えばポリエステル、ポリエステルとポリウレタンの混繊などからなる。
【0042】
また、素材移動部6、突出部23、送風機7が設けられていなくてもよい。このような構成では、衣服が揺れる状況、首および腕が貫通した状況、運動時に空気が吹き付けられる状況は再現できなくなるものの、縦方向に広げられた生地によって実際の着用状況が再現された状態で試験を行うことができる。
【0043】
以下、本発明の諸態様を記載する。
【0044】
第1の態様に係る素材試験機は、中心軸が上下に延びる円柱形状であり、外周面にらせん状に延びる溝が形成された柱状体と、前記溝に沿って前記柱状体に巻き付けられた発汗チューブと、前記柱状体の温度を維持する温度維持部と、発汗チューブの内部に流体を送り込む送出部と、前記柱状体の外側面の周囲の温湿度を測定するセンサと、を備え、前記発汗チューブには前記溝が延びる方向に沿って複数の孔が並べて形成されている。
【0045】
第2の態様に係る素材試験機は、第1の態様に係る素材試験機において、前記柱状体の上方に設けられ、正面視において前記中心軸から一方側と他方側とに延びる棒体と、前記棒体を駆動させる駆動部と、をさらに備え、前記棒体の前記一方側となる端部である一端部と、前記棒体の前記他方側の端部である他端部とに、布状の試験素材を保持する保持部が設けられている。
【0046】
第3の態様に係る素材試験機は、第2の態様に係る素材試験機において、前記駆動部が、前記棒体を前記一端部と前記他端部とを交互に上下に移動させる。
【0047】
第4の態様に係る素材試験機は、第2の態様に係る素材試験機において、前記駆動部が、前記棒体を前記一端部と前記他端部とを同期させて上下に移動させる。
【0048】
第5の態様に係る素材試験機は、第1から第4の態様のいずれかの態様に係る素材試験機において、前記柱状体の上面に取り付けられて上方に突出する上方突出部をさらに備える。
【0049】
第6の態様に係る素材試験機は、第5の態様に係る素材試験機において、前記柱状体の側面に取り付けられて側方に突出する2つの側方突出部をさらに備え、2つの前記側方突出部は、前記柱状体を挟んで互いに反対方向に突出する。
【0050】
第7の態様に係る素材試験機は、第6の態様に係る素材試験機において、前記上方突出部と、2つの前記側方突出部とが一体に形成されている。
【0051】
第8の態様に係る素材試験機は、第1から第7の態様のいずれかの態様に係る素材試験機において、前記発汗チューブの直径は6mm~8mmであり、前記孔の直径は0.3mm~0.5mmであり、複数の前記孔が形成されるピッチは9mm~12mmである。
【0052】
第1の態様に係る素材試験機を用いた第1の態様に係る素材試験方法は、前記柱状体の外周面の間に前記センサを配置させて前記柱状体の外周面を布状の試験素材で覆う工程と、前記発汗チューブの内部に水を送り込む工程と、前記柱状体と前記センサとの間の温湿度を測定する工程と、を備える。
【0053】
第2の態様に係る素材試験方法は、第1の態様に係る素材試験方法において、前記柱状体の外周面を前記試験素材で覆う前に、前記柱状体の外周面を布状の補助素材で覆う工程を備え、前記センサは前記補助素材の外側に設けられる。
【0054】
第2の態様に係る素材試験機を用いた第3の態様に係る素材試験方法は、前記柱状体の外周面の間に前記センサを配置させて前記柱状体の外周面を布状の試験素材で覆う工程と、前記保持部で前記試験素材を保持する工程と、前記発汗チューブの内部に水を送り込む工程と、前記駆動部によって前記棒体を駆動させる工程と、前記柱状体と前記センサとの間の温湿度を測定する工程と、を備える。
【符号の説明】
【0055】
1 発汗模擬ユニット、2 発汗部、21 柱状体、21a 中心軸、21b 溝、22 発汗チューブ、22a 孔、23 突出部、23a 上方突出部、23b 側方突出部、3 温度維持部、31 水槽、32a 往き用チューブ、32b 還り用チューブ、33 加熱部、34 ポンプ、4 送出部、41 シリンダ、42 ピストン、43 アクチュエータ、44 送出用チューブ、45 収容空間、5 センサ、6 素材移動部、61 棒体、62 駆動部、63 保持部、7 送風機、71 ファン、72 モータ、8 制御部、9 操作部、10 試験素材、10a,10b 孔。