(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167734
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/28 20060101AFI20241127BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20241127BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20241127BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/317 D
B23K26/36
B23K15/00 508
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084003
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】大石 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 昂
【テーマコード(参考)】
4E066
4E168
5C101
【Fターム(参考)】
4E066BA13
4E066BC02
4E168AD18
4E168CB04
4E168CB24
4E168DA37
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA04
4E168EA15
4E168FB06
5C101AA03
5C101AA04
5C101AA16
5C101AA32
5C101BB01
5C101BB03
5C101FF17
5C101FF22
5C101GG05
(57)【要約】
【課題】高精度且つ大面積の加工により、観察対象の広域化された領域の観察を可能とする顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】
顕微鏡装置1は、試料Aを保持するための試料ホルダ2と、試料Aに集束イオンビームを照射するためのビーム照射部3と、超短パルスのレーザ光Lを出力するためのレーザ出力部30と、レーザ光Lを試料Aに照射するためのレーザ光学系40と、試料Aを観察するための第1顕微鏡部4と、を備える。レーザ光学系40は、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lを変調して出射するための空間光変調器41と、空間光変調器41から出射されたレーザ光Lを、試料Aに走査しつつ照射するためのガルバノミラー43と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が配置される配置部と、
前記配置部に配置された前記試料に集束イオンビームを照射するためのビーム照射部と、
超短パルスのレーザ光を出力するためのレーザ出力部と、
前記レーザ出力部から出力された前記レーザ光を、前記配置部に配置された前記試料に照射するためのレーザ照射部と、
前記配置部に配置された前記試料を観察するための顕微鏡部と、
を備え、
前記レーザ照射部は、
前記レーザ出力部から出力された前記レーザ光を変調して出射するための空間光変調器と、
前記空間光変調器から出射された前記レーザ光を、前記配置部に配置された前記試料に走査しつつ照射するための走査部と、
を含む、
顕微鏡装置。
【請求項2】
前記空間光変調器は、前記レーザ光のビームパターンを変更するように前記レーザ光を変調する、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記空間光変調器は、前記レーザ光の照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央を包囲するビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、
請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記空間光変調器は、前記ビームパターンが前記照射領域の中央を環状に包囲するビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、
請求項3に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記空間光変調器は、前記ビームパターンが前記照射領域の中央を包囲するように複数のビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、
請求項3に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記空間光変調器は、前記ビームパターンが前記照射領域の中央にビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、
請求項3に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記空間光変調器は、前記レーザ光の照射領域におけるビームパターンが、一のビームパターンと、前記一のビームパターンと異なる別のビームパターンとで切り替えられるように前記レーザ光を変調する、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記ビーム照射部及び前記顕微鏡部を収容する第1チャンバと、
前記レーザ光の入射部が形成された第2チャンバと、を備える、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記ビーム照射部及び前記顕微鏡部を収容し、前記レーザ光の入射部が形成されたチャンバを備える、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
前記ビーム照射部と前記配置部との間、及び/又は、前記顕微鏡部と前記配置部との間に設けられ、前記レーザ光を透過するカバーを備える、
請求項9に記載の顕微鏡装置。
【請求項11】
前記顕微鏡部は、走査電子顕微鏡の少なくとも一部である、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項12】
前記空間光変調器には、p偏光の前記レーザ光が入射される、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項13】
前記空間光変調器には、コリメートされた前記レーザ光が入射される、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項14】
前記レーザ照射部は、前記空間光変調器と前記レーザ出力部との間に配置され、前記レーザ光の出力及び/又はビーム径を調整する調整部を含む、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項15】
前記空間光変調器を冷却するための冷却部を備える、
請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項16】
前記走査部は、前記空間光変調器から出射された前記レーザ光の入射を受け、当該レーザ光を前記配置部に配置された前記試料に走査しつつ照射するように出射する光学要素であり、
前記レーザ照射部は、前記空間光変調器と前記走査部との間に配置され、前記空間光変調器において変調された前記レーザ光の像を転像するためのリレー光学系を含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集束イオンビーム加工装置が記載されている。この装置では、イオンビーム鏡筒、電子ビーム鏡筒、二次電子検出器、反射電子検出器、及び試料ステージが真空チャンバ内に設けられている。この装置では、資料の加工を行う際には、イオンビーム鏡筒内の遮断バルブを開き、イオン源から発したイオンビームを試料表面上に集束させる。また、加工断面の観察を行う場合、電子ビーム鏡筒内の電子銃から発した電子ビームを収束して試料表面上を走査し、試料で発生した反射電子を反射電子検出器で検出して画像化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、上述したような加工装置では、観察対象の領域が広域化しており、大面積の加工を行う要求がある。これに対して、集束イオンビーム加工は、高精度な加工が可能である一方で、大面積の加工には適していない。したがって、上述したような加工装置では、観察対象の広域化された領域の観察が困難であった。
【0005】
本開示は、高精度且つ大面積の加工により、観察対象の広域化された領域の観察を可能とする顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る顕微鏡装置は[1]「試料が配置される配置部と、前記配置部に配置された前記試料に集束イオンビームを照射するためのビーム照射部と、超短パルスのレーザ光を出力するためのレーザ出力部と、前記レーザ出力部から出力された前記レーザ光を、前記配置部に配置された前記試料に照射するためのレーザ照射部と、前記配置部に配置された前記試料を観察するための顕微鏡部と、を備え、前記レーザ照射部は、前記レーザ出力部から出力された前記レーザ光を変調して出射するための空間光変調器と、前記空間光変調器から出射された前記レーザ光を、前記配置部に配置された前記試料に走査しつつ照射するための走査部と、を含む、顕微鏡装置」である。
【0007】
この顕微鏡装置は、試料に集束イオンビームを照射するためのビーム照射部と、試料を観察するための顕微鏡部とを備えている。したがって、集束イオンビームを用いた試料の加工により、試料の高精度な加工及び観察が可能となる。また、この顕微鏡装置は、超短パルスのレーザ光を試料に照射するためのレーザ出力部及びレーザ光学系を備えている。これにより、レーザ光を用いた試料の加工が可能となる。レーザ加工は、集束イオンビームを用いた加工に比べて、高スループットでの大面積の加工が可能である。よって、この顕微鏡装置によれば、高精度且つ大面積の加工により、広域化された領域の観察が可能となる。なお、レーザ加工を用いることにより、試料への熱影響を低減可能であると共に、綺麗な加工断面を取得することも可能となる。
【0008】
さらに、この顕微鏡装置では、レーザ光学系が空間光変調器を有しているため、試料に照射されるレーザ光に対して種々の変調を行うことが可能である。これにより、例えば、試料に照射されるレーザ光のビームパターンを変更して加工断面の平坦化及び加工スピードの高速化等を図ったり、試料に対するレーザ光の集光位置を変更したりすることも可能となる。レーザ光のビームパターンの変更には、例えばDOE(回折光学素子)を利用することも考えられるが、この場合、DOEを備えた可動ステージを動かす必要がある等、機械的な動作に関連する振動が発生し、顕微鏡部での微小領域の観察に影響をおよぼすおそれがある。これに対して、この顕微鏡装置では、ビームパターンの変更に際して空間光変調器を用いることにより、当該振動の発生を抑制し、顕微鏡部での微小領域の観察への影響を低減することが可能である。
【0009】
本開示に係る顕微鏡装置は、[2]「前記空間光変調器は、前記レーザ光のビームパターンを変更するように前記レーザ光を変調する、上記[1]に記載の顕微鏡装置」であってもよい。このように、空間光変調器を用いてレーザ光の照射領域におけるビームパターンを変更することが可能である。
【0010】
本開示に係る顕微鏡装置は、[3]「前記空間光変調器は、前記レーザ光の照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央を包囲するビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、上記[2]に記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、加工断面の平坦度の向上を図ることが可能となる。
【0011】
本開示に係る顕微鏡装置は、[4]「前記空間光変調器は、前記ビームパターンが前記照射領域の中央を環状に包囲するビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、上記[3]に記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、加工断面の平坦度の向上を確実に図ることが可能となる。
【0012】
本開示に係る顕微鏡装置は、[5]「前記空間光変調器は、前記ビームパターンが前記照射領域の中央を包囲するように複数のビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、上記[3]に記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、加工断面の平坦度の向上を確実に図ることが可能となる。
【0013】
本開示に係る顕微鏡装置は、[6]「前記空間光変調器は、前記ビームパターンが前記照射領域の中央にビーム強度のピークを有するように前記レーザ光を変調する、上記[3]~[5]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。このように、照射領域の中央にもビーム強度のピークを有するように、レーザ光のビームパターンを変更してもよい。
【0014】
本開示に係る顕微鏡装置は、[7]「前記空間光変調器は、前記レーザ光の照射領域におけるビームパターンが、一のビームパターンと、前記一のビームパターンと異なる別のビームパターンとで切り替えられるように前記レーザ光を変調する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、例えば、加工効率の向上が要求される第1の場合及び加工断面の平坦度が要求される第2の場合といったように、互いに異なる要求の2つの場合のそれぞれにおいて、互いに異なるビームパターンとなるようにレーザ光を変調することで、適切な加工が可能となる。
【0015】
本開示に係る顕微鏡装置は、[8]「前記ビーム照射部及び前記顕微鏡部を収容する第1チャンバと、前記レーザ光の入射部が形成された第2チャンバと、を備える、上記[1]~[7]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。このように、ビーム照射部及び顕微鏡部を収容する第1チャンバに対して、レーザ光の入射部が形成された第2チャンバ(すなわちレーザ加工用のチャンバ)を別に用いることにより、レーザ加工時に発生するパーティクルのビーム照射部及び顕微鏡部への影響や、レーザ加工時の振動の顕微鏡部への影響を抑制することが可能となる。
【0016】
本開示に係る顕微鏡装置は、[9]「前記ビーム照射部及び前記顕微鏡部を収容し、前記レーザ光の入射部が形成されたチャンバを備える、上記[1]~[7]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、集束イオンビームでの加工、顕微鏡部による観察、及び、レーザ光での加工を、同一のチャンバ内で行うことが可能となる。このため、各段階における試料の移動が不要となり、高精度な加工及び観察が可能となる。
【0017】
本開示に係る顕微鏡装置は、[10]「前記ビーム照射部と前記配置部との間、及び/又は、前記顕微鏡部と前記配置部との間に設けられ、前記レーザ光を透過するカバーを備える、上記[9]に記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、集束イオンビームでの加工、顕微鏡部による観察、及び、レーザ光での加工を、同一のチャンバ内で行うに際して、レーザ加工時に発生するパーティクルのビーム照射部及び/又は顕微鏡部への付着を抑制することが可能となる。
【0018】
本開示に係る顕微鏡装置は、[11]「前記顕微鏡部は、走査電子顕微鏡の少なくとも一部である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、走査電子顕微鏡による微小領域の観察が可能となる。
【0019】
本開示に係る顕微鏡装置は、[12]「前記空間光変調器には、p偏光の前記レーザ光が入射される、上記[1]~[11]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、空間光変調器により効果的にレーザ光を変調することが可能となる。
【0020】
本開示に係る顕微鏡装置は、[13]「前記空間光変調器には、コリメートされた前記レーザ光が入射される、上記[1]~[12]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、空間光変調器により効果的にレーザ光を変調することが可能となる。
【0021】
本開示に係る顕微鏡装置は、[14]「前記レーザ照射部は、前記空間光変調器と前記レーザ出力部との間に配置され、前記レーザ光の出力及び/又はビーム径を調整する調整部を含む、上記[1]~[13]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、レーザ光の出力及び/又はビーム径を調整することが可能となる。
【0022】
本開示に係る顕微鏡装置は、[15]「前記空間光変調器を冷却するための冷却部を備える、上記[1]~[14]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、空間光変調器における熱影響が抑制される。
【0023】
本開示に係る顕微鏡装置は、[16]「前記走査部は、前記空間光変調器から出射された前記レーザ光の入射を受け、当該レーザ光を前記配置部に配置された前記試料に走査しつつ照射するように出射する光学要素であり、前記レーザ照射部は、前記空間光変調器と前記走査部との間に配置され、前記空間光変調器において変調された前記レーザ光の像を転像するためのリレー光学系を含む、上記[1]~[15]のいずれかに記載の顕微鏡装置」であってもよい。この場合、レーザ光の照射領域において、所望のビームパターンを好適に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、高精度且つ大面積の加工により、観察対象の広域化された領域の観察を可能とする顕微鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る顕微鏡装置の一部を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された顕微鏡装置の残部を示す模式図である。
【
図3】
図3は、加工断面にLIPSSが形成されることを説明するための概略図である。
【
図4】
図4は、ガウシアンビームでの加工を示す図である。
【
図5】
図5は、ビームパターンを調整した場合の加工を示す図である。
【
図6】
図6は、ビームパターンの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、一実施形態に係る顕微鏡装置について、図面を参照して説明を行う。なお、図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0027】
図1は、本実施形態に係る顕微鏡装置の一部を示す模式図である。
図2は、
図1に示された顕微鏡装置の残部を示す模式図である。
図1及び
図2に示される顕微鏡装置1は、後述するように、集束したイオン(例えばGaイオン)を試料に照射して試料のエッチング加工を行う集束イオンビーム(FIB)装置と、電子線を試料に照射して試料の観察を行う走査型電子顕微鏡(SEM)装置と、レーザ光を試料に照射して試料のレーザ加工(例えばアブレーション加工)を行うレーザ装置と、を含み、FIB装置及び/又はレーザ装置による加工によって形成された試料の加工断面をSEM装置により観察可能な装置とされている。
【0028】
顕微鏡装置1は、試料ホルダ(配置部)2、ビーム照射部3、第1顕微鏡部(顕微鏡部)4、第2顕微鏡部(顕微鏡部)5、カバー7、チャンバ10、及び、レーザ装置20を備えている。試料ホルダ2には、試料Aが配置される。試料ホルダ2は、試料Aが単に置かれる場合のように試料Aを固定せずに支持してもよいし、例えば貼り付け等により試料Aを固定して保持してもよい。ここでは、試料ホルダ2は、試料Aを保持している。ビーム照射部3は、試料ホルダ2に保持された(配置された(以下同様))試料Aに集束イオンビームを照射するためのものである。したがって、ビーム照射部3は、少なくとも、FIB装置のうちの集束イオンビームの出射部を含み得る。
【0029】
第1顕微鏡部4は、試料ホルダ2に保持された試料Aを観察するためのものである。より具体的には、第1顕微鏡部4は、試料ホルダ2に保持された試料Aに電子線を照射すると共に、試料Aで発生した二次電子等を検出することにより、試料Aの画像を取得する(試料Aを観察する)ことが可能に構成されている。したがって、第1顕微鏡部4は、少なくとも、SEM装置のうちの電子線の出射部及び検出部を含む一部であり得る。
【0030】
第2顕微鏡部5は、第1顕微鏡部4と同様に、試料ホルダ2に保持された試料Aを観察するためのものである。より具体的には、第2顕微鏡部5は、試料ホルダ2に保持された試料Aに電子線を照射すると共に、試料Aにより散乱された電子線を検出することで、試料Aの結晶構造等に関する情報を取得する(試料Aを観察する)ことが可能とされている。すなわち、第2顕微鏡部5の一例としては、電子線後方散乱回折(EBSD)法を利用したSEM装置の一部であって、少なくとも電子線の出射部及び検出部を含む一部であり得る。なお、顕微鏡装置1は、SEM装置に代えて(或いは加えて)透過型電子顕微鏡(TEM)装置を備えてもよい。この場合、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5は、TEM装置の少なくとも一部であり得る。
【0031】
カバー7は、後述するレーザ光Lを透過する材料により構成されており、試料ホルダ2に保持された試料Aを覆うように設けられている。これにより、カバー7は、試料ホルダ2と、ビーム照射部3、第1顕微鏡部4、及び第2顕微鏡部5との間、及びレーザ光Lの光路に介在する基準位置に配置され得る。なお、カバー7は、試料ホルダ2と、ビーム照射部3、第1顕微鏡部4、及び第2顕微鏡部5との間に介在しないように、基準位置から移動可能に構成されている。
【0032】
チャンバ10は、試料ホルダ2、ビーム照射部3、第1顕微鏡部4、第2顕微鏡部5、及び、カバー7を収容している。チャンバ10には、レーザ光Lを透過する材料により窓状に構成されたレーザ光Lの入射部11が形成されている。また、チャンバ10には、チャンバ10内を排気して減圧する(真空とする)ための排気部12が形成されている。さらに、チャンバ10内には、試料ホルダ2に保持された試料Aに対して加工又は観察を行うための別のユニット6が設けられていてもよい。
【0033】
レーザ装置20は、レーザ出力部30とレーザ光学系40とを有している。レーザ出力部30は、低フルーエンスで超短パルスのレーザ光Lを出力するためのものである。レーザ出力部30から出力されるレーザ光Lのパルス幅は、例えば、1ps以下である。また、レーザ光Lが低フルーエンスであるとは、一例として、レーザ光Lのエネルギー密度が、試料Aのレーザ加工時にアブレーション加工となるように定められた試料Aの加工閾値近傍のエネルギー密度であるとされてもよい。レーザ光学系40は、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lを、試料ホルダ2に保持された試料Aに照射するためのレーザ照射部である。レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lは、レーザ光学系40により導光され、入射部11からチャンバ10内に入射させられる。
【0034】
レーザ光学系40は、空間光変調器41とガルバノミラー(走査部)43とを有している。空間光変調器41は、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lを、変調パターンに応じて変調して出射する。より具体的には、空間光変調器41は、例えばLCOS-SLM(Liquid Crystal On Silicon - Spatial Light Modulator)であり、液晶層に変調パターンを表示することで、当該液晶層に入出射するレーザ光Lを当該変調パターンに応じて変調する。
【0035】
ガルバノミラー43は、ミラー43a,43bを含み、当該ミラー43a,43bを駆動することによって、空間光変調器41から出射されたレーザ光Lを、試料ホルダ2に保持された試料Aに走査しつつ照射する。このように、本実施形態では、レーザ光学系40は、空間光変調器41から出射されたレーザ光Lの入射を受け、当該レーザ光Lを試料ホルダ2に保持された試料Aに走査しつつ照射するように出射する光学要素であるガルバノミラー43を走査部として含む。なお、レーザ照射部としては、ガルバノミラーに代えて(或いは加えて)、空間光変調器41から出射されたレーザ光を試料Aに走査しつつ照射するように試料ホルダ2(すなわち試料A)を機械的に移動させる構成を走査部として含んでもよい。ガルバノミラー43から出射されたレーザ光Lは、レンズ42により試料Aに向けて集光される。レンズ42は、例えばfθレンズである。
【0036】
レーザ光学系40は、リレー光学系44を有している。リレー光学系44は、空間光変調器41とガルバノミラー43との間に配置されている。リレー光学系44は、一対のレンズ44a,44bを含み、空間光変調器41において変調されたレーザ光Lの像をレンズ42に転像するためのものである。空間光変調器41から出射されてリレー光学系44を経たレーザ光Lは、所定のミラー56,57により光路が調整されてガルバノミラー43に供される。
【0037】
レーザ光学系40は、さらに、レーザ出力部30から空間光変調器41に向かうレーザ光Lの光路上に順に配置されたコリメート用レンズ51、出力制御部(調整部)52、ビーム径制御部(調整部)53、1/2波長板54、及び、偏光ビームスプリッタ55を有している。コリメート用レンズ51は、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lをコリメートして出射する。したがって、空間光変調器41には、コリメートされたレーザ光Lが入射される。コリメート用レンズ51は省略され得る。
【0038】
出力制御部52は、例えばアッテネータであり、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lの出力を調整する。ビーム径制御部53は、例えばビームエキスパンダであり、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lのビーム径を調整する。このように、出力制御部52及びビーム径制御部53は、空間光変調器41とレーザ出力部30との間に配置され、レーザ光Lの出力及びビーム径を調整する調整部として機能する。
【0039】
1/2波長板54は、レーザ出力部30から出力されたレーザ光Lの偏光方向を変更する。偏光ビームスプリッタ55は、レーザ出力部30から出力されて1/2波長板54を介して入射するレーザ光Lを、s偏光成分とp偏光成分とに分離する。空間光変調器41には、p偏光成分(p偏光のレーザ光L)が入射させられる。上述したように、空間光変調器41に入射したレーザ光Lは、変調された後にガルバノミラー43を経てチャンバ10内に入射させられ、試料Aの走査に供される。
【0040】
以上の顕微鏡装置1では、ビーム照射部3からの集束イオンビームを用いた試料Aの加工と、レーザ装置20からのレーザ光Lを用いた試料Aの加工とを行うことができる。集束イオンビームを用いた場合、試料Aの高精度な加工が可能である。一方、レーザ光Lを用いた場合、高スループットにて試料Aの大面積の加工が可能である。
【0041】
ここで、
図3に示されるように、試料Aの加工閾値付近の低フルーエンスで超短パルスのレーザ光Lを用いて試料Aの加工を行うと、試料Aの加工断面Lsにレーザ誘起表面周期構造(LIPSS:Laser Induced Periodic Surface Structure)が形成されるおそれがある。SEM装置での観察には、加工断面Lsの平坦性が要求されるところ、加工断面LsにLIPSSが形成されることは好ましくない。
【0042】
加工断面LsにおけるLIPSSを軽減するための手法として、円偏光を利用する方法が考えられるが、円偏光はp偏光とs偏光との合成であり、試料Aへのレーザ光Lの吸収率(加工レート)は直線偏光(p偏光)と比較して低下してしまう。また、上述したレーザ光学系40において、ガルバノミラー43を用いて試料Aの広範囲にレーザ光Lを走査する場合、レンズ42におけるレーザ光Lの入射位置が、レンズ42の中心から外れてくることが考えられる。したがって、円偏光を利用する場合には、レンズ42の端部において偏光が楕円化することにより、LIPSSの低減が十分でない等、加工品質が低下するおそれもある。
【0043】
LIPSSが形成される原理の1つの仮説として、プラズマとレーザ光との相互作用によるものが提唱されている。この仮説の概略は以下の通りである。すなわち、超短パルスのレーザ光が試料に照射されると、試料表面から原子・イオンが除去される。原子・イオンが除去されると、レーザ光の照射点の直上にシールド効果を有するプラズマが生成される。これにより、試料表面から除去された原子・イオンが、プラズマのシールド効果により拡散されずに加工断面に堆積する。この結果、堆積物により加工断面にLIPSSが形成される。
【0044】
これに対して、本発明者は、試料Aにおけるレーザ光Lの照射領域でのレーザ光Lのビームパターンを制御することで、LIPSSを低減することが可能であるとの知見を得た。引き続いて、この点について説明する。
【0045】
図4は、ガウシアンビームでの加工を示す図である。
図4の(a)はガウシアンビームのビームプロファイルを示し、
図4の(b)、当該ガウシアンビームによる加工後の加工断面のSEM画像(二次電子)を示し、
図4の(c)は、当該ガウシアンビームによる加工後の加工断面のSEM画像(反射電子像)を示している。
図4に示されるように、ガウシアンビームであるレーザ光により加工を行った場合には、加工断面にLIPSSが形成されると共に(
図4の(b)参照)、LIPSSよりも大きなスケールでも加工断面に凹凸が形成されている(
図4の(c)参照)。
【0046】
図5は、ビームパターンを調整した場合の加工を示す図である。
図5の(a)は、ビームパターン調整後のレーザ光Lのビームプロファイルの一例を示し、
図5の(b)は、ビームパターン調整後のレーザ光Lのビームプロファイルの別の一例を示している。いずれの場合についても、
図5及び
図6に示されるように、レーザ光Lの照射領域の中央Coを包囲するようにビーム強度のピークVbを有する領域Db,Dcを含むビームパターンとされている。
【0047】
図5の(a)の例は、中心Cоを環状に包囲するビーム強度のピークVbを有するビームパターンB1であり、
図5の(b)の例は、中央Coを(断続的に)包囲するように複数のビーム強度のピークVbを有するビームパターンB2である。また、ビームパターンB1は、中央Coにビーム強度のピークVa(ここではピークVa>ピークVb)を有する領域Daを含む。一方、この例では、ビームパターンB2は、中央Coにビーム強度のピークを有していない(有していてもよい)。
【0048】
このようにレーザ光Lのビームパターンの調整を行うことにより、すなわち、レーザ光LのビームパターンをビームパターンB1,B2とすることにより、
図5の(c)に示されるように加工断面のLIPSSが抑制されると共に、
図5の(d)に示されるようにLIPSSよりも大きなスケールでも加工断面が平坦化されていることが理解される。
【0049】
以上の知見に基づけば、レーザ光Lのビームパターンを調整することで、LIPSSの形成を抑制可能と考えられるが、レーザ光Lのビームパターンの調整の手法は種々考えられる。レーザ光Lのビームパターンの調整の一例としては、例えば、DOE(回折光学素子)を利用することも考えられるが、この場合、DOEを備えた可動ステージを動かす必要がある等、機械的な動作に関連する振動が発生し、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5での微小領域の観察に影響をおよぼすおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態に係る顕微鏡装置1では、空間光変調器41を用いてレーザ光Lのビームパターンの調整を行う。すなわち、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lのビームパターンを変更するようにレーザ光Lを変調する。より具体的には、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央Coを環状に包囲するビーム強度のピークVbを有するビームパターンB1となるように、レーザ光L1を変調することができる。
【0051】
或いは、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央Coを包囲するように複数のビーム強度のピークVbを有するビームパターンB2となるように、レーザ光Lを変調することができる。また、空間光変調器41は、ビームパターンB1が、レーザ光Lの照射領域の中央Coにビーム強度のピークVaを有するようにレーザ光Lを変調することができる。また、空間光変調器41は、ビームパターンB2についても、レーザ光Lの照射領域の中央Coにビーム強度のピークを有するようにレーザ光Lを変調してもよい。
【0052】
さらには、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、一のビームパターン(例えばビームパターンB1やビームパターンB2)と、当該一のビームパターンと異なる別のビームパターン(例えばビームパターンB1やビームパターンB2と異なるビームパターン)とで切り替えられるように、レーザ光Lを変調してもよい。
【0053】
なお、空間光変調器41は、カバー7や入射部11といった透過部材をレーザ光Lが通過することにより生じる収差を補正するように、レーザ光Lを変調してもよい。これにより、レーザ光Lの集光位置でのスポット径の広がりを抑制することができる。
【0054】
以上説明したように、顕微鏡装置1は、試料Aに集束イオンビームを照射するためのビーム照射部3と、試料Aを観察するための第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5とを備えている。したがって、集束イオンビームを用いた試料Aの加工により、試料Aの高精度な加工及び観察が可能となる。また、顕微鏡装置1は、超短パルスのレーザ光Lを試料Aに照射するためのレーザ出力部30及びレーザ光学系40を備えている。これにより、レーザ光Lを用いた試料Aの加工が可能となる。レーザ加工は、集束イオンビームを用いた加工に比べて、高スループットでの大面積の加工が可能である。よって、顕微鏡装置1によれば、高精度且つ大面積の加工により、広域化された領域の観察が可能となる。なお、レーザ加工を用いることにより、試料Aへの熱影響を低減可能であると共に、綺麗な加工断面を取得することも可能となる。
【0055】
さらに、この顕微鏡装置では、レーザ光学系が空間光変調器41を有しているため、試料Aに照射されるレーザ光Lに対して種々の変調を行うことが可能である。これにより、例えば、試料に照射されるレーザ光Lのビームパターンを変更し、上述したようにLIPSS等を抑制して加工断面の平坦化を図ることが可能となる。また、レーザ光Lのビームパターンを変更し、加工スピードの高速化等を図ったり、試料に対するレーザ光Lの集光位置を変更したりすることも可能となる。
【0056】
上述したように、レーザ光Lのビームパターンの変更には、例えばDOE(回折光学素子)を利用することも考えられるが、この場合、DOEを備えた可動ステージを動かす必要がある等、機械的な動作に関連する振動が発生し、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5での微小領域の観察に影響をおよぼすおそれがある。これに対して、顕微鏡装置1では、ビームパターンの変更に際して空間光変調器41を用いることにより、当該振動の発生を抑制し、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5での微小領域の観察への影響を低減することが可能である。
【0057】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lのビームパターンを変更するようにレーザ光Lを変調することができる。このように、空間光変調器41を用いてレーザ光Lの照射領域におけるビームパターンを変更することが可能である。
【0058】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央Coを包囲するビーム強度のピークVbを有するようにレーザ光Lを変調することができる。こんため、LIPSS等の抑制により加工断面の平坦度の向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央Coを環状に包囲するビーム強度のピークVbを有するようにレーザ光Lを変調することができる。このため、LIPSS等の抑制により加工断面の平坦度の向上を図ることが可能となる。
【0060】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央Coを包囲するように複数のビーム強度のピークVbを有するようにレーザ光Lを変調することができる。この場合にも、LIPSS等の抑制により加工断面の平坦度の向上を図ることが可能となる。
【0061】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、当該照射領域の中央Coにビーム強度のピークVaを有するようにレーザ光Lを変調することができる。このように、照射領域の中央Coにもビーム強度のピークVaを有するように、レーザ光Lのビームパターンを変更してもよい。
【0062】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41は、レーザ光Lの照射領域におけるビームパターンが、一のビームパターンと、一のビームパターンと異なる別のビームパターンとで切り替えられるようにレーザ光Lを変調することができる。このため、例えば、加工効率の向上が要求される第1の場合及び加工断面の平坦度が要求される第2の場合といったように、互いに異なる要求の2つの場合のそれぞれにおいて、互いに異なるビームパターンとなるようにレーザ光Lを変調することで、適切な加工が可能となる。
【0063】
また、顕微鏡装置1は、ビーム照射部3、第1顕微鏡部4、及び第2顕微鏡部5を収容し、レーザ光Lの入射部11が形成されたチャンバ10を備える。このため、集束イオンビームでの加工、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5による観察、並びに、レーザ光Lでの加工を、同一のチャンバ10内で行うことが可能となる。このため、各段階における試料Aのチャンバ間の移動が不要となり、高精度な加工及び観察が可能となる。
【0064】
また、顕微鏡装置1は、ビーム照射部3と試料ホルダ2との間、並びに、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5と試料ホルダ2との間に設けられ、レーザ光Lを透過するカバー7を備える。このため、集束イオンビームでの加工、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5による観察、並びに、レーザ光Lでの加工を、同一のチャンバ内で行うに際して、レーザ加工時に発生するパーティクルのビーム照射部3、第1顕微鏡部4、及び第2顕微鏡部5への付着を抑制することが可能となる。
【0065】
また、顕微鏡装置1では、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5は、走査電子顕微鏡の少なくとも一部である。このため、走査電子顕微鏡による微小領域の観察が可能となる。
【0066】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41には、p偏光のレーザ光Lが入射される。このため、空間光変調器41により効果的にレーザ光Lを変調することが可能となる。
【0067】
また、顕微鏡装置1では、空間光変調器41には、コリメートされたレーザ光Lが入射される。このため、空間光変調器41により効果的にレーザ光を変調することが可能となる。
【0068】
また、顕微鏡装置1では、レーザ光学系40は、空間光変調器41とレーザ出力部30との間に配置され、レーザ光Lの出力及びビーム径を調整する調整部(出力制御部52及びビーム径制御部53)を含む。このため、レーザ光Lの出力及びビーム径を調整することが可能となる。
【0069】
さらに、顕微鏡装置1では、レーザ光学系40は、空間光変調器41とガルバノミラー43との間に配置され、空間光変調器41において変調されたレーザ光Lの像を転像するためのリレー光学系44を含む。このため、レーザ光Lの照射領域において、所望のビームパターンを好適に形成することが可能となる。
【0070】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、任意に変形され得る。引き続いて、顕微鏡装置1の変形例について説明する。
【0071】
例えば、顕微鏡装置1は、ビーム照射部3、第1顕微鏡部4、及び第2顕微鏡部5を収容する第1チャンバと、レーザ光Lの入射部11が形成された第2チャンバと、を備えてもよい。この場合、ビーム照射部や第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5を収容する第1チャンバ(すなわち、FIB加工及び観察用のチャンバ)に対して、レーザ光Lの入射部11が形成された第2チャンバ(すなわちレーザ加工用のチャンバ)を別に用いることにより、レーザ加工時に発生するパーティクルのビーム照射部3、第1顕微鏡部4、及び第2顕微鏡部5への影響や、レーザ加工時の振動の第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5への影響を抑制することが可能となる。
【0072】
なお、この場合、第1チャンバと第2チャンバとは、互いに独立したチャンバとして構成されたものに限定されず、1つのチャンバに仕切り等を設けることにより構成されてもよい。換言すれば、顕微鏡装置1では、1つのチャンバを仕切ることによって、FIB加工及び観察用のチャンバ部分(第1チャンバ)とレーザ加工用のチャンバ部分(第2チャンバ)とを構成してもよい。また、顕微鏡装置1では、レーザ装置20の少なくとも一部がチャンバ10(或いは第2チャンバ)内に配置されてもよい。一例として、レーザ出力部30及びレーザ光学系40がチャンバ10(或いは第2チャンバ)内に配置されてもよい。
【0073】
また、顕微鏡装置1は、空間光変調器41を冷却するための冷却部を備えてもよい。この場合、空間光変調器41における熱影響が抑制される。
【0074】
また、顕微鏡装置1では、レーザ光学系40が、空間光変調器41にコリメートされたレーザ光Lを入射させるためにコリメート用レンズ51を有していた。しかし、レーザ出力部30からコリメート光が出力される場合には、コリメート用レンズ51を省略してもよい。
【0075】
また、顕微鏡装置1では、第1顕微鏡部4及び第2顕微鏡部5のうちの一方を省略してもよく、少なくとも1つの顕微鏡部を備えていればよい。さらに、顕微鏡装置1では、出力制御部52及びビーム径制御部53の一方又は両方、並びに、リレー光学系44を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…顕微鏡装置、2…試料ホルダ、3…ビーム照射部、4…第1顕微鏡部(顕微鏡部)、5…第2顕微鏡部(顕微鏡部)、7…カバー、10…チャンバ、11…入射部、30…レーザ出力部、40…レーザ光学系、41…空間光変調器、43…ガルバノミラー(走査部)、44…リレー光学系、52…出力制御部(調整部)、53…ビーム径制御部(調整部)、L…レーザ光。