(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167737
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】調整力提供方法、制御プログラム及び無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H02J3/32
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084011
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】座馬 知司
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066JA03
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】応動時間が短縮された調整力の提供方法を実現する。
【解決手段】調整力提供方法は、商用電力系統の周波数が所定の閾値以下である場合に、前記商用電力系統に接続されている無停電電源装置から前記商用電力系統に逆潮流電力を供給させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統の周波数が所定の閾値以下である場合に、前記商用電力系統に接続されている無停電電源装置から前記商用電力系統に逆潮流電力を供給させる
調整力提供方法。
【請求項2】
疑似慣性力制御方式に基づき、前記逆潮流電力を供給させる
請求項1に記載の調整力提供方法。
【請求項3】
前記周波数が前記閾値以下である場合に、前記商用電力系統からの入力を遮断させる第2の無停電電源装置が接続されている
請求項1又は請求項2に記載の調整力提供方法。
【請求項4】
前記逆潮流電力の供給量及び供給時間の見込値を予め定めてある
請求項1又は請求項2に記載の調整力提供方法。
【請求項5】
前記無停電電源装置が前記逆潮流電力を供給した場合、前記無停電電源装置の運用者へインセンティブを付与する
請求項1又は請求項2に記載の調整力提供方法。
【請求項6】
前記無停電電源装置から前記商用電力系統に供給される逆潮流電力量を計測し、
計測した前記逆潮流電力量に基づき、前記インセンティブを定める
請求項5に記載の調整力提供方法。
【請求項7】
前記周波数が前記閾値以下となり、第2の無停電電源装置が前記商用電力系統からの入力を遮断させることにより、提供された調整力に応じた電力量を計測し、
計測した前記電力量に基づき、前記逆潮流電力量に基づく前記インセンティブとは異なる算出方法で、インセンティブを定める
請求項6に記載の調整力提供方法。
【請求項8】
前記商用電力系統には複数の前記無停電電源装置が接続され、前記周波数が前記閾値以下となってから前記逆潮流電力を供給開始するまでの待機時間を、前記無停電電源装置毎に設定してある
請求項1又は請求項2に記載の調整力提供方法。
【請求項9】
商用電力系統の周波数が閾値以下である場合に、無停電電源装置に、前記商用電力系統への逆潮流電力を供給させる
制御プログラム。
【請求項10】
商用電力系統の周波数を検知する検知部と、
前記検知部が検知した前記周波数が閾値以下である場合に、前記商用電力系統に逆潮流電力を供給する供給部と
を備える無停電電源装置。
【請求項11】
商用電力系統の周波数が所定の閾値以下である場合に、前記商用電力系統に接続されている無停電電源装置への前記商用電力系統からの入力を遮断する
調整力提供方法。
【請求項12】
入力を遮断していなければ、前記無停電電源装置が前記商用電力系統から供給を受けたであろう電力量に応じて、前記無停電電源装置の運用者へインセンティブを付与する
請求項11に記載の調整力提供方法。
【請求項13】
商用電力系統の周波数が所定の閾値以下である場合に、前記商用電力系統に接続されている無停電電源装置への前記商用電力系統からの入力を遮断させる
制御プログラム。
【請求項14】
商用電力系統の周波数を検知する検知部と、
前記検知部が検知した前記周波数が閾値以下である場合に、前記商用電力系統からの入力を遮断する遮断部と
を備える無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統に対する調整力提供方法、制御プログラム及び無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを利用した発電方法が普及している。これらの電源はインバータを介して電力系統に接続されるために慣性力がない。そのため、電力系統において、再生可能エネルギーを利用した発電による電力供給量が全体の電力供給量に占める割合が大きいほど、電力系統の慣性力が低下する。
【0003】
慣性力の低下は、電力系統事故により、電力供給量が急激に低下した場合、周波数を一定に保つことが困難となる。周波数の低下が著しいと、大規模な停電に発展するおそれがある。
【0004】
停電等の支障を発生させないためには、需要と供給を一致させる必要がある。この需要の変化に合わせて発電所等で需要と供給を一致させるために必要な電力を「調整力」という。調整力は、需給調整市場という全国一体的な市場で取引されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在取引される三次調整力は応動時間(指令を出してから指令値まで出力を変化するのに要する時間)は15分から45分である。今後取引予定の二次調整力、一次調整力でも最短応動時間が、10秒と時間を要する。本発明は、応動時間が瞬時へ短縮された調整力提供方法、制御プログラム及び無停電電源装置を実現することを目的とする。なお、瞬時とは従来の応動時間よりも短い時間のことであり、例えば10秒未満をいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の一態様に係る調整力提供方法は、商用電力系統の周波数が所定の閾値以下である場合に、前記商用電力系統に接続されている無停電電源装置から前記商用電力系統に逆潮流電力を供給させる。
【発明の効果】
【0008】
本願の一態様にあっては、応動時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】UPSシステムを含む電源系統図の例を示す説明図である。
【
図3】周波数低下負荷遮断方式の動作を示す説明図である。
【
図4】UPS疑似慣性力制御方式の動作を示す説明図である。
【
図5】UPSのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図6】UPSのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図7】調整力提供処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図8】調整力提供処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、UPSシステムを含む電源系統図の例を示す説明図である。商用電源系統から引き込まれた高圧の交流電力は、図示しない受電回路、特高変圧器を経て、フィーダを介して、分配される。UPSシステム1の前段には、遮断器2が配されている。
図1の四角形は遮断器を示し、白塗りは遮断状態であることを、黒塗りは通電状態であることを示す。UPSシステム1には、UPS入力盤、UPS変圧器盤、UPS本体、及び、UPS出力盤等が含まれる。
【0011】
本明細書で提案する調整力は、UPSを用いることが特徴である。本明細書におけるUPSは、常時インバータ給電方式UPSを想定している。常時インバータ給電方式UPSは、通常時において、商用電力系統からの入力を、インバータを経由して、接続機器へ供給する。インバータを経由することにより、商用電力系統の状態に関わらず、常に調整された電力を安定的に供給可能となる。常時インバータ給電方式UPSでは、インバータ回路が常に給電することになるため、常時インバータ給電方式と呼ばれている。
【0012】
図2は、UPS回路構成図の例を示す説明図である。
図2に示したUPSは常時インバータ給電方式の中でも、ダブルコンバージョン方式を採用したUPSである。
図2に示したように、入力される商用電力をコンバータにより直流電力に変換し、蓄電池の充電に使用すると共にインバータを介し、もう一度交流に変換して設備へ供給する。交流から直流への変換と、直流から交流への変換との、二回の変換を行うため、ダブルコンバージョン方式と呼ばれている。以下の説明において、ダブルコンバージョン方式UPSを、単にUPSと呼ぶ。
【0013】
本明細書で提案する調整力は、UPSが有する3つの機能を用いて、調整力を提供する。第1は商用同期機能、第2は遮断機能、第3は電力供給機能である。
【0014】
商用同期機能は、商用電力に同期しながら、CVCF(Constant Voltage Constant Frequency:定電圧定周波数)電源を供給する機能である。例えば、UPSは商用電源から供給される電力の周波数が、所定の範囲内、例えば、定格周波数の前後数%(一般的には1、2、3、4又は5%の設定が可能)の場合、商用電源に追従し同じ周波数の電力を出力する。商用電源から供給される電力の周波数が、所定の範囲内ではない場合、インバータで周波数を定格周波数に補正して、電力を設備へ供給する。このような商用同期機能を実現するために、UPSは商用電力の周波数を監視し、周波数が閾値を上回った場合、又は、下回った場合、制御を変更する能力を備えている。ここでは、周波数が閾値を下回った場合、制御を変更する能力を、調整力の提供に利用する。
【0015】
UPSは、商用電源が不安定になった場合や、電源の供給が途絶えた(停電となった)場合、一定時間、蓄電池に蓄えた電力を設備へ供給する。その際、UPSは無瞬断切換器を動作させ、電力の供給元を商用電力系統から蓄電池に切り換える。
【0016】
改めて説明するまでもなく、UPSは、蓄電池を使用して電力供給する電力供給機能を備えている。調整力の実現に、当該電力供給機能を利用する。
【0017】
次に、UPSを用いた調整力の提供方法について説明する。本明細書では新たな調整力として、2つの方式の調整力を提案する。2つの方式は、周波数低下負荷遮断方式と、UPS疑似慣性力制御方式である。
【0018】
図3は周波数低下負荷遮断方式の動作を示す説明図である。周波数低下負荷遮断方式では、商用電力系統の周波数が、所定の閾値を下回って低い場合、遮断器2(遮断部)を動作させ、商用電力系統からUPSシステム1への電力供給を遮断する。それにより、UPSシステム1が商用電力系統の電力を消費しなくなり、下げDRによる調整力の提供となる。なお、UPSシステム1に接続されている各種機器への電力供給は、UPSが内蔵している蓄電池から行う。
【0019】
図4はUPS疑似慣性力制御方式の動作を示す説明図である。疑似慣性力制御方式では、商用電力系統の周波数が、所定の閾値を下回って低い場合、UPS10は接続されている各種機器への電力供給を、内蔵している蓄電池から行うとともに、蓄電池が供給可能な電力の一部を、商用電力系統に逆潮流させる。それにより、UPSシステム1が商用電力系統へ電力を供給し、上げ調整力の提供となる。
【0020】
続いて、周波数低下負荷遮断方式、疑似慣性力制御方式それぞれについて、UPS10の動作を詳細に説明する。
図5はUPSのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5は周波数低下負荷遮断方式を実行するUPS10の通常状態を示すブロック図である。
【0021】
UPS10は制御部11、検出素子12、監視部13、コンバータ14、インバータ15、蓄電池16、スイッチ17及びスイッチ18を含む。制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有する。制御部11は、図示しない制御プログラム1P(プログラム、プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。
【0022】
検出素子12は、例えば、検出抵抗等で構成され、入力電源である商用電力系統の状態(周波数、電圧のレベル等)を検出する。検出素子12は検出結果を監視部13に出力する。
【0023】
監視部13は、検出素子12(検知部)の検出結果に基づいて商用電力系統の状態を監視し、その監視の結果を制御部11へ出力する。例えば、監視部13は、商用電力系統の周波数が所定の閾値を下回る異常を検出した場合、その異常の内容を示す情報を生成し、制御部11へ出力する。
【0024】
コンバータ14は、商用電力系統から供給された交流電力を、所定のレベルの直流電力に変換して、蓄電池16に供給する。蓄電池16はコンバータ14からの出力により、充電される。また、コンバータ14は直流電力をインバータ15へ出力する。
【0025】
インバータ15は、コンバータ14が出力した直流電力を、商用電力系統と同一の周波数(関東以北は50Hz、関西以西は60Hz)、かつほぼ同一レベルの電圧の交流電力へ変換し、出力する。
【0026】
蓄電池16は、商用電力系統に異常が発生した場合、外部機器に電力を供給する予備電源である。蓄電池16は、リチウムイオン電池、ニカド電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池等で構成する。
【0027】
スイッチ17はノーマリークローズ、すなわち通常は接点が閉じている状態のスイッチである。通常状態では、商用電力系統からの交流入力をUPS10に供給する。監視部13が商用電力系統の異常を検知した場合、制御部11からの制御により、スイッチ17は接点が閉じている状態から、開いている状態に遷移する。それによって、商用電力系統からUPS10は遮断され、商用電力系統からの交流入力はUPS10へ供給されなくなる。それによって、下げDRによる調整力が商用電力系統に提供される。
【0028】
スイッチ18は無瞬断切換器であり、電力の供給元を商用電力系統から蓄電池に切り換える。スイッチ18は、通常状態では、コンバータ14とインバータ15とを通電させている。監視部13が商用電力系統の異常を検知した場合、制御部11からの制御により、スイッチ18は接点が切り換わり、蓄電池16からの出力がインバータ15に供給される。なお、蓄電池16が供給する電力は、UPS10が動作するための電源にもなる。
【0029】
図6はUPSのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図6は疑似慣性力制御方式を実行するUPS10の異常状態を示すブロック図である。異常状態とは、商用電力系統の周波数が所定の閾値を下回ったことを言う。UPS10の構成要素は
図5と同様であるので説明を省略する。
【0030】
UPS10の動作について説明する。監視部13が商用電力系統の異常を検知した場合、制御部11からの制御により、スイッチ18は接点が切り換わり、蓄電池16からの出力がインバータ15に供給される。
【0031】
また、スイッチ17は接点が閉じている状態を維持する。蓄電池16からの電力をコンバータ14へ逆流させる。コンバータ14は入出力が逆になることにより、インバータとして動作する。インバータとして動作するコンバータ14により交流に変換された電力は、商用電力系統へ供給される。すなわち、上げ調整力が商用電力系統に提供される。蓄電池16及びインバータとして動作するコンバータ14は、供給部の一例である。
【0032】
次に、UPS10で行われる情報処理について説明する。
図7及び
図8は調整力提供処理の手順例を示すフローチャートである。
図7は周波数低下負荷遮断方式における調整力提供処理の手順を示す。UPS10の制御部11は監視部13から商用電力系統の周波数を取得する(ステップS1)。制御部11は取得した周波数が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS2)。制御部11は取得した周波数が所定の閾値を超えていると判定した場合(ステップS2でNO)、ステップS1を再実行する。制御部11は取得した周波数が所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS2でYES)、スイッチ17を切り換え(ステップS3)、処理を終了する。スイッチ17を切り換えることにより、UPS10は商用電力系統から遮断されることにより、調整力が提供される。
【0033】
図8は疑似慣性力制御方式における調整力提供処理の手順を示す。UPS10の制御部11は監視部13から商用電力系統の周波数を取得する(ステップS11)。制御部11は取得した周波数が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS12)。制御部11は取得した周波数が所定の閾値を超えていると判定した場合(ステップS12でNO)、ステップS11を再実行する。制御部11は取得した周波数が所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS12でYES)、スイッチ18を切り換える(ステップS13)。制御部11は蓄電池16から商用電力系統への逆潮流を開始させ(ステップS14)、処理を終了する。UPS10は接続されている各種機器へ蓄電池16から電力を供給するとともに、逆潮流により商用電力系統へ調整力を提供する。
【0034】
図7及び
図8は、制御部11が周波数をポーリングする処理となっているが、監視部13による割り込み処理としてもよい。
図7のステップS3を実行する割り込みルーチン、
図8のステップS13及びS14を実行する割り込みルーチンを用意する。監視部13に閾値を設定する。監視部13が、商用電力系統の周波数が所定の閾値以下となったことを検知すると、割り込みを実行し、割り込みルーチンを実行する。
【0035】
上述の説明において、調整力の提供方式として、周波数低下負荷遮断方式と疑似慣性力制御方式とを説明した。両方式は同一のUPS10で同時には実行できないが、複数台のUPS10が設置されている場合、周波数低下負荷遮断方式で動作するUPS10(第2の無停電電源装置)と、疑似慣性力制御方式で動作するUPS10(無停電電源装置)とを混在させてもよい。
【0036】
本実施の形態においては、次の効果を奏する。周波数低下負荷遮断方式による調整力は、スイッチ17の切り換えにより、提供される。疑似慣性力制御方式による調整力は、スイッチ18の切り換えにより、提供される。スイッチ17及びスイッチ18の切り換えに要する時間は、監視部13が商用電力系統の異常を検知してから、200ミリ秒程度である。したがって、従来の調整力に比べて応動時間が短縮された調整力の提供が可能となる。また、調整力を提供するために、新たな機器の追加は不要であり、UPS10の制御プログラムを変更するだけで、実現可能である。その結果、安心・安全なまちづくりの安価な実現に寄与する。
【0037】
(インセンティブ付与)
UPSシステム1により調整力を提供した場合は、UPSシステム1の運用者へインセンティブを付与してもよい。インセンティブの付与量は調整力として提供した電力量、提供時間に応じて定めるのが妥当である。調整力として提供可能な電力量、提供時間については、UPS10の性能や運用環境より推定可能であるから、UPSシステム1毎に見込まれる提供電力量(供給量の見込値)、提供時間(供給時間の見込値)に基づいて、インセンティブの付与量を定めておき、調整力を提供した際には、定めた付与量のインセンティブを与えてもよい。
【0038】
また、調整力として提供した電力量(逆潮流電力量)、提供時間(供給時間)を計測して、インセンティブの付与量を与えてもよい。この場合、UPSシステム1と商用電力系統とを結んでいる系統において、UPSシステム1に近い位置の電力測定器を設置する。この場合、電力測定器の設置が必要となるものの、インセンティブの付与量をより正確に求めることが可能となる。なお、UPS10を周波数低下負荷遮断方式で動作させて調整力を提供する場合と、UPS10を疑似慣性力制御方式で動作させて調整力を提供する場合とでは、電力の安定供給に対する貢献度が異なる。したがって、インセンティブの算出方法を異なる方法として、疑似慣性力制御方式の場合のほうが、インセンティブの量が相対的に大きくなるようにすることが望ましい。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態1では、商用電力系統の周波数が閾値以下となったことをUPS10が検出した場合、直ちに、UPSシステム1は調整力を提供する。本実施の形態においては、配電網における異なる位置に複数のUPSシステム1が設置されており、それらが調整力を提供する形態に関する。
【0040】
本実施の形態においては、複数のUPSシステム1による調整力の提供において、各UPSシステム1の位置により、商用電力系統の周波数が所定の閾値以下となったことを検出してから、調整力を提供するまでの時間(以下、「待機時間」)を異ならせる。
図9は待機時間の設定例を示す説明図である。
図9では変電所から近い順にUPSシステム1-1、UPSシステム1-2、UPSシステム1-3が存在している。周波数の低下は、わずかな時間差で変電所から順次伝搬していくとの前提で、変電所の最も近いUPSシステム1-1は周波数の低下を検出したら、直ちに調整力を提供する。次に近いUPSシステム1-2は周波数の低下を検出してから、100ミリ秒待機した後に、調整力を提供する。次のUPSシステム1-3は周波数の低下を検出してから、200ミリ秒待機した後に、調整力を提供する。説明等を簡略化するため、各時間に調整力を提供するUPS10は1台ずつとしているが、複数台であってもよい。すなわち、第1群を構成する複数台のUPS10は周波数の低下を検出したら、直ちに調整力を提供し、第2群を構成する複数台のUPS10は周波数の低下を検出してから、200ミリ秒待機した後に、調整力を提供するという具合である。
【0041】
各UPS10の待機時間は、配電網のトポロジー、各UPS10が調整力として提供可能な電力と、提供時間によって計画する。各UPSシステム1の運営者又は所有者が同一人とは限らない。したがって、複数台のUPS10における各待機時間の調整を図る役目を担うアグリゲータが存在していることが望ましい。
【0042】
本実施の形態においては、複数台のUPS10が異なる待機時間で調整力を提供するので、UPS10が同時に調整力の提供開始する場合と比較すると、調整力の提供時間を長くすることが可能となる。それにより、周波数の低下直後から提供可能であって、他の調整力の提供が開始されるまでの間の時間帯に系統運用者が必要とする調整力が提供可能となる。
【0043】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
また、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 :UPSシステム
10 :UPS(無停電電源装置)
11 :制御部
12 :検出素子
13 :監視部
14 :コンバータ
15 :インバータ
16 :蓄電池
17 :スイッチ
18 :スイッチ
1P :制御プログラム
2 :遮断器