(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016774
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ハンガー用フック、ハンガー、及び、ハンガーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 25/32 20060101AFI20240131BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A47G25/32 D
F16B45/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119128
(22)【出願日】2022-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】594162490
【氏名又は名称】株式会社タヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】杉田 発雄
(72)【発明者】
【氏名】小俣 雄一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 潔
【テーマコード(参考)】
3J038
3K099
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BA12
3J038BA13
3J038BA24
3J038BB07
3K099BA30
3K099CA49
3K099DA05
(57)【要約】
【課題】ハンガー本体に対してフックをガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフックを回転させることができ、美観性に優れたハンガー用フック及び当該ハンガー用フックを用いたハンガーを提供する。
【解決手段】湾曲する引掛部及び、引掛部の一端に連設した軸部112を備える金属製のフック本体11と、軸部112の貫通穴121を備える弾性円筒部材12と、軸部112を挿入する挿入穴132を備える上側円筒部131、及び、挿入穴132に連通し弾性円筒部材12を嵌入する下側円筒部133を設けてある、中空のコマ13と、を有するハンガー用フックとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲若しくは屈曲する引掛部、及び、当該引掛部の一端に連設した軸部を備える金属製のフック本体と、
前記軸部が嵌入される貫通穴を備える弾性円筒部材と、
前記軸部を挿入する挿入穴を備える上側円筒部、及び、当該挿入穴に連通し前記弾性円筒部材を嵌入する下側円筒部を設けてある、中空のコマと、
を有することを特徴とするハンガー用フック。
【請求項2】
前記上側円筒部に挿入される前記軸部の基端側が、
前記軸部の外径よりも外方に突出し前記軸部の軸方向以外の方向に延びる凸凹状の係合部を備えることを特徴とする請求項1記載のハンガー用フック。
【請求項3】
前記コマが、
前記下側円筒部の内周面に設けられ、前記弾性円筒部材の嵌入方向以外の方向に延びる溝状の切創部
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のハンガー用フック。
【請求項4】
請求項1又は2記載のハンガー用フックと、当該ハンガー用フックにより保持される上衣用のハンガー本体とにより構成されるハンガーであって、
前記ハンガー本体が、断面逆U字状に湾曲する首回り部と、当該首回り部の両側に延設される肩部とにより構成され、
前記コマが前記首回り部の内側に位置するように、前記コマと前記ハンガー本体とを一体として形成することを特徴とするハンガー。
【請求項5】
金属製のフック本体の軸部を嵌入する貫通穴を備える弾性円筒部材を、当該貫通穴が上下方向を向くように配置する工程と、
前記軸部を挿入する挿入穴を備える上側円筒部と当該挿入穴に連通する下側円筒部とを設けてある中空のコマ内に、前記弾性円筒部材を嵌め込む工程と、
凸凹状の係合部を備える前記軸部を、前記挿入穴から前記コマに挿入して、前記弾性円筒部材の内周面に当該係合部を食い込ませる工程と、
を含むことを特徴とするハンガーの製造方法。
【請求項6】
前記弾性円筒部材を前記コマ内に嵌め込む際に、前記下側円筒部の内周面に設けてある溝状の切創部に、前記弾性円筒部材を食い込ませることを特徴とする請求項5記載のハンガーの製造方法。
【請求項7】
前記弾性円筒部材を嵌め込んだ前記コマの前記下側円筒部の底側開口部に対して、ハンガー本体を固定することにより、当該底側開口部を塞ぐ工程を含むことを特徴とする請求項5又は6記載のハンガーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガー用フック、当該ハンガー用フックを用いたハンガー、及び、ハンガーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類やシューズ等を吊り下げて保持する用具として、フック付きのハンガーがある。フック付きハンガーは、ハンガーラック等に引っ掛けられるフックと、当該フックにより保持されるハンガー本体とにより構成される。フック付きハンガーには、用途や価格等に応じて多種多様のものが存在し、針金を折り曲げたりプラスチック樹脂で一体成型したりしてフックとハンガー本体とを一体として製造するものの他、フックとハンガー本体とを別体として作製した後、これらを連結することにより製造するものがある。後者の例としては、フックとハンガー本体とが異質な材料(例えばフックが金属製、ハンガー本体が木製)である場合、ジャケット等の衣類の形状に合わせて厚みのあるハンガー本体にフックを取り付ける場合や、注文者の要望に応じて適宜組み合わせて使用できるようにバリエーションの異なるフックやハンガー本体を事前に複数種類用意しておく場合などが挙げられる。
【0003】
別体として作製された互いに金属製であるフックとハンガー本体との連結方法として、従来、溶接により連結する方法や、ハンガー本体にフックの軸部を挿入した後にカシメを施す方法(特許文献1の段落0002、
図6参照)、フックの軸部にネジ溝を設けて螺合する方法(特許文献1の段落0003参照)や、特殊な抜け止め部材を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の連結方法のうち、前述のカシメを施す方法では、カシメを施した部分とハンガー本体との間に生じる隙間分だけ軸方向(上下方向)にガタつきが生じてしまうとともに、軸回り(軸部円周方向)の回転を規制できないため、洋服を吊り下げて陳列したときに僅かな接触で各々のハンガーが意図しない方向に勝手に向いてしまい洋服を整然と陳列することができないといった問題がある。この点、特許文献1に開示される抜け止め部材を用いる場合であっても、ハンガー用フックが下側にずれることを防止するストッパ部がカシメなどによって設けられているため(特許文献1の段落0027参照)、前述の軸方向のガタつきを防止できず、また、ハンガー本体に対してフック本体が軸回りに回転自在であることから、同様の問題が生じる。加えて、特許文献1に示される技術では、抜け止め部材の軸部を挿入するための被挿入穴をフック本体の直線部に深く穿設するものとされるが(特許文献1の段落0016,0017参照)、フックの軸部は細く、加工が困難であり、強度が低下するといった問題もある。
【0006】
高級な洋服等を吊り下げるためのフック付きハンガーとしては、前述のガタつきがなく、また、フックが意図しない方向に勝手に回転しないことが求められる。この点、洋服等を展示・陳列する向きに応じて、ハンガー本体に対してフックを軸回りに所望の回転角で回転させて、その状態を保持することができれば更に好ましい。即ち、フックはハンガー本体に対して完全に固定されておらず、洋服等の被吊下物の自重や風では回転しないが、意図的にフックを把持して捻ることにより所望の回転角で軸回りにフックを回転させて、その状態を保持することが可能なハンガーがあれば更に好ましい。また、高級なハンガーには美観性が求められることから、カシメのような加工痕(特許文献1の段落0027参照)が外部から視認できないことが望ましい。
【0007】
従来の連結方法のうち、前述のフックの軸部にネジ溝を設けて螺合する方法では、ネジの緩みに伴ってガタつき等の問題が生じてしまう。また、フックを所望の回転角で回転させて、その状態を保持することが困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ハンガー本体に対してフックをガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフックを回転させることができ、美観性に優れたハンガー用フック、当該ハンガー用フックを用いたハンガー、及び、ハンガーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のハンガー用フックは、
湾曲若しくは屈曲する引掛部、及び、当該引掛部の一端に連設した軸部を備える金属製のフック本体と、
前記軸部が嵌入される貫通穴を備える弾性円筒部材と、
前記軸部を挿入する挿入穴を備える上側円筒部、及び、当該挿入穴に連通し前記弾性円筒部材を嵌入する下側円筒部を設けてある、中空のコマと、
を有することを特徴とする。
【0010】
前記ハンガー用フックは、好ましくは、前記上側円筒部に挿入される前記軸部の基端側が、
前記軸部の外径よりも外方に突出し前記軸部の軸方向以外の方向に延びる凸凹状の係合部を備えるものである。
【0011】
前記ハンガー用フックは、更に好ましくは、前記コマが、
前記下側円筒部の内周面に設けられ、前記弾性円筒部材の嵌入方向以外の方向に延びる溝状の切創部
を備えるものである。
【0012】
本発明のハンガーは、前述のハンガー用フックと、当該ハンガー用フックにより保持される上衣用のハンガー本体とにより構成されるハンガーであって、
前記ハンガー本体が、断面逆U字状に湾曲する首回り部と、当該首回り部の両側に延設される肩部とにより構成され、
前記コマが前記首回り部の内側に位置するように、前記コマと前記ハンガー本体とを一体として形成することを特徴とするものである。
【0013】
本発明のハンガーの製造方法は、
金属製のフック本体の軸部を嵌入する貫通穴を備える弾性円筒部材を、当該貫通穴が上下方向を向くように配置する工程と、
前記軸部を挿入する挿入穴を備える上側円筒部と当該挿入穴に連通する下側円筒部とを設けてある中空のコマ内に、前記弾性円筒部材を嵌め込む工程と、
凸凹状の係合部を備える前記軸部を、前記挿入穴から前記コマに挿入して、前記弾性円筒部材の内周面に当該係合部を食い込ませる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
前記ハンガーの製造方法は、好ましくは、前記弾性円筒部材を前記コマ内に嵌め込む際に、前記下側円筒部の内周面に設けてある溝状の切創部に、前記弾性円筒部材を食い込ませるものである。
【0015】
前記ハンガーの製造方法は、前記弾性円筒部材を嵌め込んだ前記コマの前記下側円筒部の底側開口部に対して、ハンガー本体を固定することにより、当該底側開口部を塞ぐ工程を含むものであっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハンガー本体に対してフックをガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフックを回転させることができ、美観性に優れたハンガー用フック、当該ハンガー用フックを用いたハンガー、及び、ハンガーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のハンガー用フックの実施例1の構成を示す図である。
【
図2】本発明のハンガー用フックの実施例1の内部構成及び組立手順を示す図である。
【
図3】本発明のハンガーの実施例1の正面図である。
【
図4】本発明のハンガーの実施例1の右側面図である。
【
図5】本発明のハンガーの実施例2の正面図である。
【
図7】本発明のハンガーの実施例3の正面図である。
【
図8】本発明のハンガーの実施例3の内部構成及び組立手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明を具体的に説明するが、本発明は図面に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更可能である。
【0019】
{ハンガー用フックの実施例1}
図1は、本発明のハンガー用フックの実施例1の構成を示す図である。
図2は、本発明のハンガー用フックの実施例1の内部構成及び組立手順を示す図である。本発明のハンガー用フックの実施例1であるハンガー用フック1は、金属製のフック本体11と、ナイロン樹脂から成る弾性円筒部材12と、中空のコマ13と、を有する。弾性円筒部材12は、他の弾性のある樹脂材であってもよい。なお、コマ13は金属製であるが、これに限られない。フック本体11は、湾曲する引掛部111、及び、引掛部111の一端に連設した軸部112を備える。弾性円筒部材12は、軸部112が嵌入される貫通穴121を備える。コマ13には、軸部112を挿入する挿入穴132を備える上側円筒部131、及び、挿入穴132に連通し弾性円筒部材12を嵌入する下側円筒部133を設けてある、以下、各構成につき詳細に説明する。なお、「ハンガー用フック」は、説明の簡略のため、「フック」と略して説明することがある。
【0020】
フック本体11は、直線状の軸部112と、軸部112の先端側に連設され湾曲する引掛部111とを有する。引掛部111は図示しないハンガーラック等に掛け留められる。軸部112は、先端(上端)側が引掛部111に連設され、基端(下端)側が、コマ13の下側円筒部133側からコマ13内に嵌め込まれた弾性円筒部材12の貫通穴121に、嵌め込まれる。軸部112は、貫通穴121と同径若しくは僅かに太く形成されることにより、コマ13内の挿入穴132に挿入された基端側の先端が、弾性円筒部材12の貫通穴121に嵌め込まれる。上側円筒部131側から貫通穴121に挿入される軸部112は、貫通穴121に嵌め込まれた状態において、弾性円筒部材12からの反力を受け、容易に抜け落ちないようになっている。上側円筒部131に挿入される軸部112の基端部には、好ましくは、図示するように係合部113が形成される。係合部113は、弾性円筒部材12の貫通穴121に嵌入された状態において、弾性円筒部材12の内壁(内周面)に食い込んで、係合部113がいわゆる返しとして作用し、弾性円筒部材12から抜け落ちにくい構成となっている。フック1は、金属製であり、例えば鉄製で、転造機を用いて、軸部112の基端側をヤジリ状に外方に突出するように、表面を凸凹に加工することにより形成される。なお、引掛部は、への字状等に屈曲した形状であっても良い。
【0021】
この点、係合部113は、軸部112の軸方向以外の方向に延びる凸凹部を含むこと、即ち、軸部112が、径方向或いは斜め方向に延びる凸凹状の係合部を備えることが更に好ましい。前述のとおり、係合部113は、軸部112が弾性円筒部材12の貫通穴121から抜け落ち難くするために設けられることから、貫通穴121の貫通方向に一致する軸部112の軸方向とは異なる方向に延びる凸凹状の係合部113に含まれることにより、係合部113は、貫通穴121に嵌入された状態において、弾性円筒部材12に食い込むとともに、軸部112に作用する引き抜き力に抗してより抜け落ち難い構成とすることができる。係合部113は、径方向に延びる凸凹状の係合部であり、さらに、凸である部分がヤジリのように軸部112の外面から外方に突き出した形状である。すなわち、軸部12の周方向にヤジリ状の出っ張りが設けられている。かかる形状であることにより、弾性円筒部材12の内側の面に係合部113の凸である部分がくさび状に突き刺さり、抜け落ちにくくなる。
【0022】
円筒弾性部材12は、ナイロン製チューブを所定の長さの円筒体に成形してなる円筒形であり、その中空の内部がフック本体11の軸部112が嵌入可能な貫通穴121となる。円筒弾性部材12は、後説するとおり、中空のコマ13の底側開口部134からコマ13の内部(下側円筒部133の内側)に嵌め込まれる。すなわち、円筒弾性部材12としては、その内径が、係合部113が形成された軸部112を嵌め込むことができ、かつ、嵌め込まれた軸部112を引っ張っても容易に抜くことができない程度の寸法のものが選定され、その外径が、底側開口部134からコマ13の内部に嵌め込まれた状態において、コマ13に嵌合して、下側円筒部133の内周面を押圧するものが選定される。かかる特徴を有する円筒弾性部材12を既製品から選定することが容易でない場合には、金属製であるコマ13の内径を適宜の寸法で切削加工することにより、その内部に嵌め込まれた円筒弾性部材12がコマ11(下側円筒部133)の内周面を押圧する状態を実現するようにしても良く、上記状態が実現するように、弾性円筒部材12及びコマ13のそれぞれを適宜設計するようにしても良い。
【0023】
コマ13は、上側円筒部131と、下側円筒部133とを有し、ハンガー本体2に固定される、ほぼ円筒形の中空部材である。なお、後述する実施例2におけるハンガー本体3に固定されるコマ13でも、コマの構成は共通する。ハンガー用フック1は、コマ13を介して、ハンガー本体と連結される。下側円筒部133は、弾性円筒部材12を嵌合可能な形状にくり抜かれており、コマ13の底側開口部134からその内部に弾性円筒部材12を嵌め入れることができる。コマ13は、好ましくは、図示するように、円筒の部材であり、その中心軸を基準に左右対称に形成される。コマ13の外側面に横溝136を設けることにより意匠性を高めるようにしても良い。横溝136は、コマ13に対してハンガー本体2を溶接する際の目印として利用することもできる(
図4参照)。
【0024】
底側開口部134は、円筒弾性部材12の形状に対応して円形に開口し、挿入穴132よりも大径である。従って、円筒弾性部材12は、底側開口部134から嵌め込むことは可能であるが、挿入穴132から抜き出すことはできない。また、挿入穴132は、係合部113が形成された軸部112を挿入することが可能な内径に設定される。フック本体11の軸部112が嵌入されるとともにコマ13の内部に嵌め込まれた円筒弾性部材12は、フック本体11により吊り下げられた状態において、その肩部分がコマ13の上側円筒部131(挿入穴132の周縁部)に当接することになる。従って、フック本体11を吊り上げたとき、軸部112の基端部を嵌め込んだ円筒弾性部材12が、コマ13の上側円筒部131に当接することにより、円筒弾性部材12及びコマ13が一体として持ち上がる。
【0025】
上述したような状態を実現する円筒弾性部材12及びコマ13の各寸法を例示すると、円筒弾性部材12の外径が約6mm、内径が約4mm、肉厚1mm、コマ13の挿入穴132が約4.3mm、底側開口部134の内径が約6mm、フック1の軸部112のうち係合部113の外径(ヤジリのように突き出した部分)が約4.3mmであり係合部以外の部分の外径が約3.7mmである。各サイズは一例であり、これに限定されない。
【0026】
コマ13の下側円筒部133の内周面には、好ましくは、
図2(a)に示すように、切創部135が設けられる。この切創部135に対して、下側円筒部133に嵌め込まれた弾性円筒部材12の外壁(外周面)側が食い込むことにより、フック本体11に対して下方向の外力が作用した場合でも、弾性円筒部材12が切創部135により係止され、コマ13から脱落し難い。前述のとおり、切創部135は、弾性円筒部材12が底側開口部134から抜け落ち難くするために設けられることから、弾性円筒部材12の嵌入方向すなわち下側円筒部133の貫通方向とは異なる方向(例えば、周方向や斜め方向)に延びる溝状の切創部であることが更に好ましい。かかる切創部は、下側円筒部133に任意の切削工具を入れてその内周面に切創を施すことにより形成することができる。フック1の係合部113が弾性円筒部材12の貫通穴121の内壁を圧迫し、弾性円筒部材12の外側へ押す一方で弾性円筒部材12の外壁はコマ13の下側円筒部133の挿入穴132の内壁に押され、弾性円筒部材12の外側方向への圧迫は切創部135内に弾性円筒部材12が膨らむ力となるため、フック1の係合部113と弾性円筒部材12とコマ13とは、一体となって、より脱落し難い。
【0027】
上記構成のハンガー用フック1によれば、ハンガー本体2に対してフック本体11をガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフック本体11を回転させることができ、美観性に優れる。すなわち、1点目として、ハンガー用フック1は、ハンガー本体に固定されるコマ13の内部に嵌め込まれる弾性円筒部材12を介してハンガー本体2に連結されることから、軸方向(上下方向)にガタつきが生じない。2点目として、上述のとおり、ハンガー用フック1は弾性円筒部材12を介してハンガー本体2に連結されていることから、ハンガー本体2に対してフック本体11を軸回りに所望の回転角で回転させて、その状態を保持することができる。即ち、弾性円筒部材12はコマ13に嵌め込まれており、フック本体11はハンガー本体2に対して完全に固定されておらず、洋服等の被吊下物の自重や風では回転しないが、意図的にフック本体11を把持して捻ることにより所望の回転角で軸回りにフック本体11を回転させて、その状態を保持することが可能である。3点目として、カシメのような加工痕が外部から視認できないことから、美観性に優れる。
【0028】
次に、ハンガー用フック1の組立手順、及び、本発明に係るハンガーの製造方法について説明する。
【0029】
本発明に係るハンガーの製造方法は、金属製のフック本体11の軸部112が嵌入される貫通穴121を備える弾性円筒部材12を、貫通穴121が上下方向を向くように配置する第1工程と、軸部112を挿入する挿入穴132を備える上側円筒部131と挿入穴132に連通する下側円筒部133とを設けてある中空のコマ13内に、弾性円筒部材12を嵌め込む第2工程と、凸凹状の係合部113を備える軸部112を、挿入穴132からコマ13に挿入して、弾性円筒部材12の内周面に係合部113を食い込ませる第3工程と、を含むものである。また、第2工程において、弾性円筒部材12をコマ13内に嵌め込む際に、下側円筒部133の内周面に設けてある溝状の切創部135を、弾性円筒部材12に食い込ませるものである。なお、後述する実施例2のハンガーを作製する場合には、第3工程終了後、弾性円筒部材12を嵌め込んだコマ13の下側円筒部133の底側開口部134に対して、ハンガー本体3を溶接して固定することにより、底側開口部134を塞ぐ第4工程を含むものであっても良い。以下、
図2に基づいて、第1工程ないし第3工程を詳細に説明する。
【0030】
先ず、ハンガー用フック1を組み立てる場合には、第1工程として、
図2(a)に示すように、作業面T上に、フック本体11の軸部112が嵌入される貫通穴121を備える弾性円筒部材12を、貫通穴121が上下方向を向くように配置する。次に、第2工程として、
図2(b)に示すように、軸部112を挿入する挿入穴132を備える上側円筒部131と挿入穴132に連通する下側円筒部133とを設けてある中空のコマ13に、作業面T上に配置された弾性円筒部材12を嵌め込むが、この際に、下側円筒部133の内周面に設けてある溝状の切創部135に、弾性円筒部材12の外壁側を食い込ませるものである。次いで、第3工程として、
図2(c)に示すように、凸凹状の係合部113を備える軸部112を、挿入穴132からコマ13に挿入して、弾性円筒部材12の内周面に係合部113を食い込ませる。以上述べた手順により、フック本体11の軸部112に対して弾性円筒部材12及びコマ13を装着し、ハンガー用フック1を組み立てることができる。ハンガー用フック1は、例えば溶接等の手段でハンガー本体に連結することにより、フック付きのハンガーを製造することができる。なお、後述する実施例3のハンガーのように、コマ13とハンガー本体4とが軽金属又は軽合金で一体として形成されている場合には、小さな台の上面を作業面として上記手順が実行される。
【0031】
上述の第1工程ないし第3工程によれば、ハンガー本体に対してフック本体11をガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフック本体11を回転させることができ、美観性に優れたハンガー用フックの製造方法を提供することができる。かかる方法により製造されるハンガー用フック1の効果は上述のとおりであり省略する。
【0032】
{ハンガーの実施例1}
図3は、本発明のハンガーの実施例1の正面図である。
図4は、本発明のハンガーの実施例1の右側面図である。なお、左側面図は右側面図と対称に表れる。本発明のハンガーの実施例1であるハンガー7は、ハンガー本体2に対して、上述したハンガー用フックの実施例1に係るハンガー用フック1が、ハンガー用フック1の係合部113を内部に保持したコマ13をハンガー本体2に溶接して固定することにより、間接的に接続され、したがって、ハンガー用フック1はハンガー本体2に対して完全には固定されずに向きを手で変えられる状態で、互いに連結されている。実施例1のハンガー7は、ハンガー用フック1を上述した第1工程から第3工程の手順で組み立てて製造したハンガーである。コマ13は溶接以外の方法でハンガー本体2に固定してもよい。ハンガー本体2は意匠性に富んだ形状であり、上衣の形状に合わせて左右対称に湾曲するハンガー本体2a、及び、これと同形のハンガー本体2b及び補強部材であるハンガー本体2cにより構成される。ハンガー本体2a、2bのそれぞれは正面視で重なるように配置されている。
図4に示すように、ハンガー本体2aとハンガー本体2bとの間にコマ13が挟み込まれ、コマ13はハンガー本体2a、2bに、溶接により固定される。ハンガー本体2cは、ハンガー本体2a及びハンガー本体2bの間に架け渡された補強部材である。前述のとおり、横溝136は、コマ13に対してハンガー本体2を溶接する際の目印として利用することもできる(
図4参照)。
【0033】
ハンガー用フック1を用いて組み立てられたハンガー7は、ハンガーラック(図示省略)に掛け留められ衣服等を吊り下げた通常の使用状態において、衣服等の重み程度の引張力が作用しても、弾性円筒部材12の貫通穴121内に嵌め込んだフック本体11の軸部112が、弾性円筒部材12の内壁(内周面)に食い込んでいるため、当該引張力によりフック本体11が脱落するおそれがない。加えて、係合部113や切創部135を設ける場合には、より強固に連結することができる。
【0034】
上記構成のハンガーによれば、ハンガー本体2に対してハンガー用フック1をガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフック本体11を回転させることができ、美観性に優れる。
【0035】
{ハンガーの実施例2}
図5は、本発明のハンガーの実施例2の正面図である。
図6は、
図5に示すA-A線方向の断面図である。ハンガー本体3は1本の鉄棒により構成される。実施例2のハンガー8は、上述したハンガー用フックの実施例1に係るハンガー用フック1を上述した第1工程から第4工程の手順で組み立てて製造したハンガーである。すなわち、本発明のハンガーの実施例2であるハンガー8は、上述の第1工程ないし第3工程に続き、第4工程を実行することにより製造されるものであり、弾性円筒部材12を嵌め込んだコマ13の下側円筒部133の底側開口部134に対してハンガー本体3を構成する鉄棒が溶接して固定されることにより、ハンガー用フック1とハンガー本体3とが連結されている。底側開口部134とハンガー本体3とは、溶接以外の方法で固定してもよい。フック1は、ハンガー本体3に対して完全には固定されずに向きを手で変えられる状態で、互いに連結されている。なお、ハンガー本体3には、クリップ5が装着されている。
【0036】
実施例2に係るハンガーによれば、ハンガー本体3に対してハンガー用フック1をガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフック本体11を回転させることができ、美観性に優れる。また、特に、底側開口部134が溶接により塞がれるため、弾性円筒部材12が底側開口部134から脱落するおそれがない。
【0037】
{ハンガーの実施例3}
図7は、本発明のハンガーの実施例3の正面図である。
図8は、本発明のハンガーの実施例3の内部構成及び組立手順を示す図であり、特に、ハンガー本体の縦断面図を示すことによりその内部構成を示した図である。本発明のハンガーの実施例3であるハンガー9は、ハンガー用フック6と、ハンガー用フック6により保持される上衣用のハンガー本体4とにより構成されるハンガーである。なお、ハンガー用フック6は、ハンガー用フック1と同様の構成であり、湾曲する引掛部611、及び、引掛部611の一端に連設した軸部612を備える金属製のフック本体61と、軸部612が嵌入される貫通穴621を備える弾性円筒部材62と、軸部612を挿入する挿入穴632を備える上側円筒部631、及び、挿入穴632に連通し弾性円筒部材62を嵌入する下側円筒部633を設けてある、中空のコマ63と、を有するが、ハンガー用フック1とは異なり、コマ63がハンガー本体4と一体として形成されている。
【0038】
すなわち、ハンガー本体4は、ジャケット等の上衣用のハンガーに用いられて好適なものであり、断面逆U字状に湾曲する首回り部43と、首回り部43の両側に延設される肩部41、42とにより構成される。首回り部43は、断面逆U字状に連設される前面部431、上面部432、及び、裏面部433を備え、肩部41、42は首回り部43の両側に斜め下方に向けてなだらかに湾曲するように延設される。コマ63は、前面部431、上面部432、及び、裏面部433により覆われた首回り部43の内側の内部空間内に位置するように、コマ63とハンガー本体4とをアルミニウム合金で一体として形成してある。コマ63とハンガー本体4は、アルミニウム合金の他、他の軽合金又は軽金属でもよい。コマ63とハンガー本体4とはダイカスト成型により製造可能である。コマ63は、その前後左右が、首回り部43と肩部41、42とにより覆い隠されるように配置されるのでシンプルな印象の外観を呈することができ、また、アルミニウム製であることによる特有の光沢感を持たせることができ、実施例1や2とは異なる美観を創出することができる。コマ63とハンガー本体4は、他の金属であってもよく、また、木やプラスチックであってもよい。なお、ハンガー用フック6の各構成要素は、ハンガー用フック1の各構成要素と同様であるので、説明を両略する。
【0039】
実施例3のハンガー9は、ハンガー用フック6を上述した第1工程から第3工程の手順で組み立てて製造したハンガーである。前述の第1工程ないし第3工程により、ハンガー本体4と一体として形成されたコマ63に対して、前述のフック本体61及び弾性円筒部材62を組み付けることができる。
図8に示すようにハンガー用フック6をコマ63の挿入穴632に挿入する際には、首回り部43の内部空間に入る程度の大きさの台の上にコマ63を置いた状態で挿入作業を行う。
【0040】
実施例3に係るハンガー9によれば、ハンガー本体4に対してハンガー用フック6をガタつき無く連結することができ、必要に応じて所望の回転角でフック本体61を回転させることができ、特有の金属光沢をもつ美観性に優れる。
【0041】
本発明は、上記実施の形態ないし実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。ハンガー用フック1、6においては、弾性円筒部材12、62の底面とコマ13、63の底面とが面一となるようにコマ13、63及び弾性円筒部材12、62の寸法が設定されているが、これに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、金属製のフックを備えた金属製のハンガーに利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ハンガー用フック
11 フック本体
111 引掛部
112 軸部
113 係合部
114 突起
12 弾性円筒部材
121 貫通穴
13 コマ
131 上側円筒部
132 挿入穴
133 下側円筒部
134 底側開口部
135 切創部
136 横溝
2 ハンガー本体(実施例1)
3 ハンガー本体(実施例2)
4 ハンガー本体(実施例3)
41 肩部
42 肩部
43 首回り部
431 前面部
432 上面部
433 裏面部
5 クリップ
6 ハンガー用フック
61 フック本体
611 引掛部
612 軸部
62 弾性円筒部材
621 貫通穴
63 コマ
631 上側円筒部
632 挿入穴
633 下側円筒部
7 ハンガー(実施例1)
8 ハンガー(実施例2)
9 ハンガー(実施例3)
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
湾曲若しくは屈曲する引掛部、及び、当該引掛部の一端に連設した軸部を備える金属製のフック本体と、
前記軸部が嵌入される貫通穴を備える弾性円筒部材と、
前記軸部を挿入する挿入穴を備える上側円筒部、及び、当該挿入穴に連通し前記弾性円筒部材を嵌入する下側円筒部を設けてある、中空のコマと、
を有し、
前記上側円筒部の前記挿通穴の内径が前記弾性円筒部材の外径よりも小さい、ことを特徴とするハンガー用フック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
金属製のフック本体の軸部を嵌入する貫通穴を備える弾性円筒部材を、当該貫通穴が上下方向を向くように配置する工程と、
前記軸部を挿入する挿入穴を備える上側円筒部と当該挿入穴に連通する下側円筒部とを設けてある中空のコマの前記下側内筒部内に、前記弾性円筒部材を嵌め込む工程と、
凸凹状の係合部を備える前記軸部を、前記挿入穴から前記コマに挿入して、前記弾性円筒部材の内周面に当該係合部を食い込ませる工程と、
を含み、前記上側円筒部の前記挿通穴の内径が前記弾性円筒部材の外径よりも小さい、ことを特徴とするハンガーの製造方法。