(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167741
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084017
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB01
(57)【要約】
【課題】アタッチメントを使って移動させた物の重量をより正確に算出できる作業機械を提供すること。
【解決手段】作業機械100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回機構を介して搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントと、アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出するコントローラ30と、を備えている。コントローラ30は、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちたことを検知するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちたことを検知する、
作業機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出した後で、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちたことを検知した場合に、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出し直す、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御装置は、空間認識装置及びシリンダ圧センサの少なくとも一つの出力に基づいて前記アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御装置は、空間認識装置及びシリンダ圧センサの少なくとも一つの出力に基づき、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちたことを検知する、
請求項1又は請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記制御装置は、前記アタッチメントから落ちた部分の重量を算出する、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記制御装置は、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちたことを検知した場合に、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちたことを外部に知らせる、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制御装置は、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちて目的場所に達しなかったことを検知する、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アタッチメントの一回の動作によって持ち上げられる物の重量に基づき、ダンプトラックの荷台に積み込まれた物の重量(積載重量)を算出するショベルが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このショベルでは、アタッチメントによって持ち上げられたもののその後にアタッチメントから落ちてしまいダンプトラックの荷台に入らなかった物の重量までもが積載重量に含まれてしまうおそれがある。そのため、積載重量を正確に算出することができないおそれがある。
【0005】
そこで、アタッチメントを使って移動させた物の重量をより正確に算出できる作業機械を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アタッチメントによって持ち上げられた物の一部が前記アタッチメントから落ちたことを検知する。
【発明の効果】
【0007】
上述の作業機械は、アタッチメントを使って移動させた物の重量をより正確に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す作業機械に搭載される駆動系の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る作業機械100の側面図である。作業機械100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメント(作業具)としてのリフティングマグネット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びリフティングマグネット6はアタッチメントの一例である作業アタッチメントを構成している。そして、ブーム4はブームシリンダ7で昇降駆動され、アーム5はアームシリンダ8で開閉駆動され、リフティングマグネット6はリフティングマグネットシリンダ9で開閉駆動される。なお、エンドアタッチメント(作業具)は、グラップル、バケット、フォーク、又はレーキ等、リフティングマグネット6以外の他の作業具であってもよい。
【0010】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、リフティングマグネット6にはリフティングマグネット角度センサS3が取り付けられている。上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、空間認識装置80、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5が取り付けられている。
【0011】
ブーム角度センサS1は、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出するように構成されている。ブーム角度センサS1は、例えば、ブームフートピン回りのブーム4の回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量(ブームストローク量)を検出するシリンダストロークセンサ、又は、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等であってもよく、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよい。ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出するアーム角度センサS2、及び、アーム5に対するリフティングマグネット6の回動角度であるリフティングマグネット角度を検出するリフティングマグネット角度センサS3についても同様である。なお、以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びリフティングマグネット角度センサS3は、作業アタッチメントの姿勢を検出する姿勢センサとも称される。
【0012】
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜(機体傾斜角度)を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸及び左右軸回りの傾斜角度を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交して作業機械100の旋回軸上の一点である機械中心点を通る。
【0013】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、旋回角速度センサS5はジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ又はロータリエンコーダ等であってもよい。
【0014】
空間認識装置80は作業機械100の周囲の空間にある物体の位置又は大きさ等を認識するように構成されている。空間認識装置80は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、赤外線カメラ、ミリ波レーダ、超音波センサ、レーザレーダ、又はLIDAR等である。
【0015】
図1に示す例では、空間認識装置80は、上部旋回体3(キャブ10)の上面前端に取り付けられた前カメラ80F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後カメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右カメラ80R(
図1では不可視。)を含む。後カメラ80B、前カメラ80F、左カメラ80L、及び右カメラ80Rのそれぞれは、例えば、CCD又はCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。
【0016】
空間認識装置80は、空間認識装置80又は作業機械100と認識された物体との間の距離を算出するように構成されていてもよく、その物体が存在する方向を特定するように構成されていてもよい。空間認識装置80としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等が利用される場合には、空間認識装置80は、多数の信号(レーザ光等)を物体に向けて発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から距離を算出し或いは方向を特定してもよい。
【0017】
空間認識装置80は、作業機械100の周囲に存在する物体を検知するように構成されていてもよい。物体は、例えば、ダンプトラック、地形(傾斜、穴等)、電線、電柱、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、ヘルメット、安全ベスト、作業服、又は、ヘルメットにおける所定のマーク等である。空間認識装置80は、物体の種類、位置、及び形状等の少なくとも1つを識別できるように構成されていてもよい。例えば、空間認識装置80は、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
【0018】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6b、及び、ブームシリンダストロークセンサS7が取り付けられていてもよい。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS6c、アームボトム圧センサS6d、及び、アームシリンダストロークセンサS8が取り付けられていてもよい。リフティングマグネットシリンダ9にはリフティングマグネットロッド圧センサS6e、リフティングマグネットボトム圧センサS6f、及び、リフティングマグネットシリンダストロークセンサS9が取り付けられていてもよい。
【0019】
ブームロッド圧センサS6aはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS6bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS6cはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS6dはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。リフティングマグネットロッド圧センサS6eはリフティングマグネットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットロッド圧」とする。)を検出し、リフティングマグネットボトム圧センサS6fはリフティングマグネットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットボトム圧」とする。)を検出する。
【0020】
以下では、ブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6b、アームロッド圧センサS6c、アームボトム圧センサS6d、リフティングマグネットロッド圧センサS6e、及びリフティングマグネットボトム圧センサS6fの少なくとも一つはシリンダ圧センサとも称される。
【0021】
上部旋回体3には、運転室としてのキャブ10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。上部旋回体3には、測位装置又は通信装置等が取り付けられていてもよい。
【0022】
また、上部旋回体3にはキャブ10がキャブ昇降装置90を介して昇降可能に設けられている。以下では、このように昇降可能なキャブを「エレベータキャブ」と称する場合がある。なお、
図1は、キャブ昇降装置90によりキャブ10が最高位置まで上昇したときの作業機械100の状態を示す。キャブ10は、ブーム4の左側に配置されている。
【0023】
図2は、作業機械100に搭載される駆動系の構成例を示す図である。
図2では、機械的動力伝達系は二重線で示され、作動油ラインは太実線で示され、パイロットラインは破線で示され、電気制御系は一点鎖線で示され、電気駆動系は太点線で示されている。
【0024】
作業機械100の駆動系は、主に、エンジン11、メインポンプ14、油圧ポンプ14G、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、コントローラ30、及びエンジン制御装置74を含む。
【0025】
エンジン11は、作業機械100の動力源である。本実施形態では、エンジン11は、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、オルタネータ11a、メインポンプ14、油圧ポンプ14G、及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に接続されている。
【0026】
メインポンプ14は、作動油ライン16を介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0027】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0028】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0029】
コントロールバルブユニット17は、作業機械100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブユニット17は、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対し、メインポンプ14が吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、及び旋回用油圧モータ2Aは集合的に「油圧アクチュエータ」と称される。
【0030】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットポンプ15からの作動油をコントロールバルブユニット17内にある対応する流量制御弁のパイロットポートに供給してパイロット圧を生成する。具体的には、操作装置26は、旋回操作及びアーム操作のための左操作レバーと、ブーム操作及びリフティングマグネット操作のための右操作レバーと、走行ペダルと、走行レバーとを含む。パイロット圧は、操作装置26の操作内容(例えば操作方向及び操作量を含む。)に応じて変化する。
【0031】
操作圧センサ29は、操作装置26が生成するパイロット圧を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、操作装置26が生成したパイロット圧を検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26のそれぞれの操作内容を把握する。
【0032】
コントローラ30は、各種演算を実行する制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたマイクロコンピュータである。コントローラ30は、例えば、各種機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、それらプログラムのそれぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0033】
油圧ポンプ14Gは作動油ライン16aを介して作動油を油圧モータ60に供給する。本実施形態では、油圧ポンプ14Gは固定容量型油圧ポンプであり、切換弁61を通じて油圧モータ60に作動油を供給する。
【0034】
切換弁61は、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油の流れを切り換えるように構成されている。本実施形態では、切換弁61はコントローラ30からの制御指令に応じて弁位置が切り換わる電磁弁である。切換弁61は、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を連通させる第1弁位置と、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を遮断する第2弁位置とを有する。
【0035】
コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモードに切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第1弁位置に切り換える。また、コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモード以外に切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第2弁位置に切り換える。
図2は、切換弁61が第2弁位置にある状態を示す。
【0036】
モード切換スイッチ62は、作業機械100の動作モードを切り換えるスイッチである。本実施形態では、キャブ10内に設置されるロッカスイッチである。操作者はモード切換スイッチ62を操作してショベルモードとリフティングマグネットモードとの間で動作モードを切り換える。ショベルモードは作業機械100を掘削機(ショベル)として作動させるときの動作モードであり、例えばリフティングマグネット6の代わりにバケットがアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。リフティングマグネットモードは作業機械100をリフティングマグネット付き作業機械として作動させるときのモードであり、リフティングマグネット6がアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。なお、コントローラ30は各種センサの出力に基づいて作業機械100の動作モードを自動的に切り換えてもよい。
【0037】
リフティングマグネットモードが選択された場合、切換弁61は第1弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させる。一方、リフティングマグネットモード以外の動作モードが選択された場合、切換弁61は第2弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させることなく作動油タンクに流出させる。
【0038】
油圧モータ60の回転軸は発電機63の回転軸に機械的に連結されている。発電機63は、リフティングマグネット6を励磁するための電力を生成する。本実施形態では、発電機63は電力制御装置64からの制御指令に応じて動作する交流発電機である。
【0039】
電力制御装置64はリフティングマグネット6を励磁するための電力の供給及び遮断を制御する。本実施形態では、電力制御装置64は、コントローラ30からの発電開始指令に応じて発電機63による交流電力の発電を開始させ、コントローラ30からの発電停止指令に応じて発電機63による交流電力の発電を停止させる。また、電力制御装置64は発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給する。また、電力制御装置64はリフティングマグネット6に印加される電圧の大きさ、及び、リフティングマグネット6を流れる電流の大きさを制御できる。
【0040】
コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオン操作されると電力制御装置64に対して吸着指令を出力する。吸着指令を受けた電力制御装置64は、発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給し、リフティングマグネット6を励磁する。励磁されたリフティングマグネット6は物(磁性体)を吸着可能な吸着状態となる。
【0041】
また、コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオフ操作されると電力制御装置64に対して釈放指令を出力する。釈放指令を受けた電力制御装置64は、発電機63による発電を中止させ、吸着状態にあるリフティングマグネット6を非吸着状態(釈放状態)にする。リフティングマグネット6の釈放状態は、リフティングマグネット6への電力供給が中止されてリフティングマグネット6が発生させていた電磁力が消失した状態を意味する。
【0042】
リフティングマグネットスイッチ65は、吸着状態と釈放状態との間でリフティングマグネット6の状態を切り換えるスイッチである。本実施形態では、リフティングマグネットスイッチ65は、左操作レバー26Lの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての弱励磁ボタン65A及び強励磁ボタン65Bと、右操作レバー26Rの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての釈放ボタン65Cとを含む。
【0043】
弱励磁ボタン65Aは、リフティングマグネット6に所定の電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(弱吸着状態)にするための入力装置の一例である。所定の電圧は、例えば、磁力調節ダイヤル66を通じて設定される電圧である。
【0044】
強励磁ボタン65Bは、リフティングマグネット6に許容最大電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(強吸着状態)にするための入力装置の一例である。
【0045】
釈放ボタン65Cは、リフティングマグネット6を釈放状態にするための入力装置の一例である。
【0046】
磁力調節ダイヤル66は、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、磁力調節ダイヤル66はキャブ10内に設置され、弱励磁ボタン65Aが押されたときのリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、磁力調節ダイヤル66は、第1レベルから第4レベルの4段階でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を切り換えできるように構成されている。
図2は、磁力調節ダイヤル66で第3レベルが選択された状態を示す。
【0047】
リフティングマグネット6は、磁力調節ダイヤル66で設定されたレベルの磁力(吸着力)を発生させるように制御される。磁力調節ダイヤル66は、磁力(吸着力)のレベルを示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0048】
この構成により、操作者は、左手で左操作レバー26Lを操作し且つ右手で右操作レバー26Rを操作して油圧アクチュエータを動作させながら、指でリフティングマグネット6による物(磁性体)の吸着及び釈放を実行できる。典型的には、操作者は、物(例えば鉄屑等)にリフティングマグネット6を接触させた状態で弱励磁ボタン65Aを押して鉄屑をリフティングマグネット6に吸着させる。その後、操作者は、ブーム4を緩やかに上昇させ、鉄屑を吸着したリフティングマグネット6を持ち上げた後で、強励磁ボタン65Bを押してリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を増大させる。リフティングマグネット6の磁力(吸着力)を増大させるのは、アタッチメント操作(ブーム操作、アーム操作、及びバケット操作の少なくとも1つを含む操作)又は旋回操作による鉄屑の運搬中において、鉄屑がリフティングマグネット6から落ちるのを抑制或いは防止するためである。
【0049】
また、操作者は、磁力調節ダイヤル66でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節することで、物の仕分けを行うことができる。操作者は、例えば、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いてスクラップの山から比較的軽い物を選択的に持ち上げて移動させることで、比較的軽い物と比較的重い物とを仕分けることができる。操作者は、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いることで、比較的重い物を持ち上げてしまうのを抑制或いは防止できるためである。
【0050】
作業機械100は、弱励磁ボタン65A又は強励磁ボタン65Bが押されたときに、動作モードを自動的に速度制限モードに切り換えるように構成されていてもよい。速度制限モードは、例えば、リフティングマグネットモードにおいて、旋回速度及びアタッチメントの駆動速度が制限される動作モードである。
【0051】
また、作業機械100は、弱励磁ボタン65Aが押された後で、所定の操作が行われた場合、或いは、所定の状態になった場合、リフティングマグネット6の状態を、強励磁ボタン65Bが押されたときの状態である強吸着状態に自動的に移行させてもよい。所定の操作は、例えば、旋回操作である。所定の状態は、例えば、アタッチメントが所定の姿勢になった状態、具体的には、ブーム角度が所定角度になった状態である。この場合、作業機械100は、例えば、弱励磁ボタン65Aが押されて弱吸着状態となっているリフティングマグネット6がブーム上げ操作に応じて持ち上げられた後で旋回操作が行われたときに、強励磁ボタン65Bが押されなくとも、リフティングマグネット6の状態を強吸着状態に自動的に移行させることができる。旋回中に鉄屑がリフティングマグネット6から落ちてしまうのを抑制或いは防止するためである。
【0052】
表示装置40は、各種情報を表示する装置である。本実施形態では、表示装置40は、運転席が設けられたキャブ10の右前部のピラー(図示せず。)に固定されている。また、
図2に示すように、表示装置40は、作業機械100に関する情報を画像表示部41に表示して操作者に情報を提示できる。また、表示装置40は、入力装置としてのスイッチパネル42を含む。操作者はスイッチパネル42を利用して各種指令をコントローラ30に対して入力できる。
【0053】
スイッチパネル42は、各種スイッチを含むパネルである。本実施形態では、スイッチパネル42は、ハードウェアボタンとしてのライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウインドウォッシャスイッチ42cを含む。
【0054】
表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70はオルタネータ11aで発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置40以外の電装品72等にも供給される。エンジン11のスタータ11bは蓄電池70からの電力で駆動されてエンジン11を始動する。
【0055】
エンジン制御装置74は、エンジン11を制御する。本実施形態では、エンジン制御装置74は、エンジン11の状態を示す各種データを収集し、収集したデータをコントローラ30に送信する。エンジン制御装置74とコントローラ30とは別体として構成されているが一体的に構成されていてもよい。例えば、エンジン制御装置74は、コントローラ30に統合されてもよい。
【0056】
ダイヤル75は、エンジン回転数を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、ダイヤル75はキャブ10内に設置され、エンジン11の回転数モードを4段階で切り換えできるように構成されている。
【0057】
エンジン11は、ダイヤル75で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数が維持されるように制御される。ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0058】
次に、
図3を参照し、表示装置40に表示されるメイン画面41Vの構成例について説明する。
図3のメイン画面41Vに表示される情報は、例えば、リフティングマグネット6に吸着された物の重量(現重量)、ダンプトラックに積載された物の重量(累積重量)、ダンプトラックの残積載量(残重量)、及びダンプトラックの最大積載量(最大積載重量)等に関する情報を含む。
【0059】
メイン画面41Vは、日時表示領域41a、走行モード表示領域41b、アタッチメント表示領域41c、燃費表示領域41d、エンジン制御状態表示領域41e、エンジン稼働時間表示領域41f、冷却水温表示領域41g、燃料残量表示領域41h、回転数モード表示領域41i、尿素水残量表示領域41j、作動油温表示領域41k、カメラ画像表示領域41m、現重量表示領域41p、累積重量表示領域41q、残重量表示領域41s、及び最大積載重量表示領域41tを含む。
【0060】
走行モード表示領域41b、アタッチメント表示領域41c、エンジン制御状態表示領域41e、及び回転数モード表示領域41iは、作業機械100の設定状態に関する情報である設定状態情報を表示する領域である。燃費表示領域41d、エンジン稼働時間表示領域41f、冷却水温表示領域41g、燃料残量表示領域41h、尿素水残量表示領域41j、作動油温表示領域41k、現重量表示領域41p及び累積重量表示領域41qは、作業機械100の稼動状態に関する情報である稼動状態情報を表示する領域である。
【0061】
具体的には、日時表示領域41aは、現在の日時を表示する領域である。走行モード表示領域41bは、現在の走行モードを表示する領域である。アタッチメント表示領域41cは、現在装着されているエンドアタッチメントを表す画像を表示する領域である。
図3は、リフティングマグネット6を表す画像が表示された状態を示している。
【0062】
燃費表示領域41dは、コントローラ30によって算出された燃費情報を表示する領域である。燃費表示領域41dは、生涯平均燃費又は区間平均燃費を表示する平均燃費表示領域41d1、瞬間燃費を表示する瞬間燃費表示領域41d2を含む。
【0063】
エンジン制御状態表示領域41eは、エンジン11の制御状態を表示する領域である。エンジン稼働時間表示領域41fは、エンジン11の累積稼働時間を表示する領域である。冷却水温表示領域41gは、現在のエンジン冷却水の温度状態を表示する領域である。燃料残量表示領域41hは、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を表示する領域である。回転数モード表示領域41iは、ダイヤル75によって設定された現在の回転数モードを表示する領域である。尿素水残量表示領域41jは、尿素水タンクに貯蔵されている尿素水の残量状態を表示する領域である。作動油温表示領域41kは、作動油タンク内の作動油の温度状態を表示する領域である。
【0064】
カメラ画像表示領域41mは、空間認識装置80としての撮像装置が撮像した画像を表示する領域である。
図3の例では、カメラ画像表示領域41mは、後カメラ80Bが撮像した画像を表示している。後カメラ80Bが撮像した画像は、作業機械100の後方の空間を映し出す後方画像であり、カウンタウェイトの上面の画像3aを含む。
【0065】
現重量表示領域41pは、リフティングマグネット6に吸着された物の重量(現重量)を表示する領域である。
図3は、現重量が550kgであることを示している。
【0066】
累積重量表示領域41qは、ダンプトラックの積載量(累積重量)を表示する領域である。
図3は、累積重量が9500kgであることを示している。
【0067】
累積重量は、積み込み対象のダンプトラックが入れ替わる度にリセットされる。本実施形態では、コントローラ30は、ダンプトラックの入れ替わりを自動的に認識して累積重量を自動的にリセットするように構成されている。具体的には、コントローラ30は、空間認識装置80としての撮像装置が撮像した画像を利用してダンプトラックの入れ替わりを認識する。コントローラ30は、通信装置を利用してダンプトラックの入れ替わりを認識してもよい。或いは、コントローラ30は、リセットボタンが押されたときに累積重量をリセットしてもよい。リセットボタンは、タッチパネルに表示されるソフトウェアボタンであってもよく、入力装置、左操作レバー、又は右操作レバー等に配置されるハードウェアボタンであってもよい。
【0068】
この構成により、作業機械100は、ダンプトラックの最大積載重量を超えて、ダンプトラックの荷台に物が積み込まれてしまうのを防止できる。最大積載重量を超えて物が積み込まれていることが台貫での重量測定によって検知されると、ダンプトラックの運転者は、積み込みヤードに戻り、荷台に積み込まれた積載物の一部を下ろす作業を行う必要がある。作業機械100は、このような積載重量の調整作業の発生を防止できる。
【0069】
コントローラ30は、所定の期間中に積み込みヤード等の作業現場から運び出された物の総重量を算出するように構成されていてもよい。所定の期間は、例えば、1日の作業を開始する時刻から1日の作業を終了する時刻までの期間であってもよい。1日の作業によって運び出された物の総重量を操作者又は管理者が容易に認識できるようにするためである。
【0070】
また、コントローラ30は、空間認識装置80としての撮像装置が撮像した画像に基づき、リフティングマグネット6に吸着された物がダンプトラックの荷台に積み込まれたことを認識した上で、現重量を累積重量に加算するように構成されていてもよい。ダンプトラックの荷台以外の場所に移された物の重量がダンプトラックに積み込まれた物の重量として加算されてしまうのを防止するためである。
【0071】
コントローラ30は、アタッチメントの姿勢に基づき、リフティングマグネット6に吸着された物がダンプトラックの荷台に積み込まれたか否かを判定してもよい。具体的には、コントローラ30は、例えば、リフティングマグネット6の高さが所定値(例えば、ダンプトラックの荷台の高さHd)を超え且つリフティングマグネットスイッチ65がオフ操作された場合に、その物がダンプトラックの荷台に積み込まれたと判定してもよい。
【0072】
残重量表示領域41sは、残重量を表示する領域である。最大積載重量表示領域41tは、最大積載重量を表示する領域である。
図3は、累積重量が9500kgで、残重量が500kgで、且つ、最大積載重量が10000kgであることを示している。但し、表示装置40は、残重量を表示させずに最大積載重量を表示させてもよい。
【0073】
メッセージ表示領域41m1には、必要に応じてメッセージが表示される。例えば、累積重量が最大積載重量を超過した場合にその旨を伝えるメッセージが表示される。これにより、コントローラ30は、操作者に積載重量の調整作業を促すことができ、過積載状態のダンプトラックの走行が行われてしまうのを防止することができる。
【0074】
次に、
図2を再び参照し、コントローラ30の詳細について説明する。具体的には、コントローラ30は、目標重量設定部31と、重量算出部32と、吸着力制御部33と、最大積載量設定部34と、累積重量算出部35と、残重量算出部36と、落下検知部37と、を有している。
【0075】
目標重量設定部31は、アタッチメントによって持ち上げられる物の目標重量を取得するように構成されている。本実施形態では、目標重量設定部31は、リフティングマグネット6によって吸着される物の目標重量を取得するように構成されている。目標重量は、操作者により入力されてもよく、残重量算出部36の残重量に基づいて設定されてもよく、予め設定されていてもよい。
【0076】
重量算出部32は、アタッチメントによって持ち上げられた物の重量(現重量)を算出するように構成されている。本実施形態では、重量算出部32は、リフティングマグネット6によって吸着された物の重量(現重量)を算出するように構成されている。具体的には、コントローラ30は、空間認識装置80が出力する情報に基づいて物の種類を判定する。例えば、コントローラ30は、空間認識装置80が撮像した画像に基づき、リフティングマグネット6に吸着された物が鉄片であると判定する。そして、コントローラ30は、物の種類の判定結果から、その物の密度(単位体積当たりの質量)を導き出す。本実施形態では、物の密度は、かさ密度(物を一定容積の容器に一定の方法で充填したときに、物の間の空隙も含めた体積で物の重量を除した値)であり、物の種類毎に予めコントローラ30の不揮発性記憶装置等に記憶されている。但し、物の密度は、真密度であってもよい。そして、重量算出部32は、空間認識装置80が出力する情報に基づき、リフティングマグネット6に吸着された物の体積を算出し、その物の体積と密度からその物の重量を算出する。図示例では、重量算出部32は、空間認識装置80が撮像した画像に対し、既知の画像解析技術、画像認識技術、及び画像処理技術等(以下、「画像解析技術等」とする。)を適用してリフティングマグネット6に吸着された物の体積を算出する。画像解析技術は、例えば、画像分類技術、画像検出技術、又は、画像セグメンテーション技術等である。画像認識技術は、例えば、マシンラーニング又はディープラーニング等による画像認識技術を含む。画像処理技術は、例えば、エッジ抽出技術、ハフ変換技術、又は特徴量抽出技術等である。
【0077】
重量算出部32は、空間認識装置80が出力する情報に基づいて算出される物の体積と、アタッチメントの姿勢とブームシリンダ7における作動油の圧力とに基づいて算出される物の重量とに基づいて物の密度を算出してもよい。そして、重量算出部32は、このように算出した物の密度が同じ種類の物の密度として利用されるようにその算出した物の密度をその物の種類に対応付けて不揮発性記憶装置に記憶してもよい。
【0078】
吸着力制御部33は、リフティングマグネット6に供給される電流の電流指令値を制御して、リフティングマグネット6の吸着力を制御する。
【0079】
最大積載量設定部34は、物を積み込むダンプトラックの最大積載量を設定する。本実施形態では、最大積載量は、操作者により入力される。但し、最大積載量設定部34は、空間認識装置80で撮像されたダンプトラックの画像に基づいてダンプトラックの車種(サイズ等)を判定し、判定した車種(サイズ等)に基づいて最大積載量を設定してもよい。
【0080】
累積重量算出部35は、ダンプトラックの荷台に積み込まれた物の重量の累積値である累積重量を算出する。本実施形態では、累積重量算出部35は、各回の積み込み作業によってダンプトラックの荷台に積み込まれた物の重量を合計して累積重量を算出する。各回の積み込み作業によってダンプトラックの荷台に積み込まれた物の重量は、各回の積み込み作業の際にアタッチメントによって持ち上げられた物の重量に相当し、重量算出部32によって算出される。
【0081】
残重量算出部36は、最大積載量と累積重量との差である残重量を算出する。本実施形態では、残重量算出部36は、最大積載量設定部34によって設定されたダンプトラックの最大積載量から、累積重量算出部35によって算出された累積重量を差し引いて残重量を算出する。
【0082】
落下検知部37は、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落下したことを検知するように構成されている。本実施形態では、落下検知部37は、空間認識装置80が出力する情報に基づいてリフティングマグネット6によって吸着された物の一部がリフティングマグネット6から落下したか否かを検知する。落下検知部37は、リフティングマグネット6に吸着された物の一部がリフティングマグネット6から落下したことを検知した場合、その落下した物の体積を算出してもよい。そして、落下検知部37は、算出した体積とその物の密度(不揮発性記憶装置等に記憶されている値)とに基づいてその物の重量を算出してもよい。
【0083】
落下検知部37は、落下した物の量(体積又は重量等)が所定値以上の場合、所定の処理を実行するように構成されていてもよい。本実施形態では、所定値は予め記憶された値である。但し、所定値は動的に算出される値であってもよい。所定の処理は、現重量の再計算を促す処理である。具体的には、現重量の再計算を促す処理は、現重量の再計算を促す画像情報及び音声情報の少なくとも一方を出力する処理を含む。画像情報は、「現重量の再計算を実行してもよいですか?」といったテキストメッセージであってもよい。この場合、操作者は、入力装置を通じて現重量の再計算を開始させる指令をコントローラ30に与えるか否かを決定してもよい。例えば、操作者は、物の落下位置がダンプトラックの荷台の外側である場合には現重量の再計算を開始させればよい。一方で、操作者は、物の落下位置がダンプトラックの荷台の内側である場合には現重量の再計算を開始させる必要はない。リフティングマグネット6に吸着された物(途中で落下した部分を含む。)の全てがダンプトラックの荷台に積み込まれるためである。
【0084】
このように、落下検知部37は、現重量の再計算を実行することについて、事前に操作者の確認を求めることにより、操作者の意に反して現重量の再計算が実行されてしまうのを防止できる。そのため、この構成は、例えば、物の落下位置がダンプトラックの荷台の内側であるにもかかわらず、すなわち、リフティングマグネット6に吸着された物(途中で落下した部分を含む。)の全てがダンプトラックの荷台に積み込まれたために現重量の再計算が不要であるにもかかわらず、落下検知部37が現重量の再計算という無駄な処理を実行してしまうのを防止できる。
【0085】
なお、落下検知部37は、操作者に確認を求めることなく、現重量の再計算を実行してもよい。この場合、落下検知部37は、空間認識装置80の出力に基づいて物の落下位置がダンプトラックの荷台の外側であるか否かを自動的に判定してもよい。そして、落下検知部37は、物の落下位置がダンプトラックの荷台の外側であると判定した場合に現重量の再計算を実行し、物の落下位置がダンプトラックの荷台の内側であると判定した場合には現重量の再計算を省略する。
【0086】
次に、
図4を参照し、積み込み作業の際にコントローラ30がダンプトラックDTに積み込まれた物の重量を算出し且つ表示する機能について説明する。
図4は、作業機械100によるダンプトラックDTへの鉄屑等の物の積み込みが行われている作業現場の様子を示す。具体的には、
図4は、ダンプトラックDTの後方から作業現場を見たときの図である。
図4では、明瞭化のため、作業機械100(リフティングマグネット6を除く。)の図示が省略されている。また、
図4において、実線で描かれたリフティングマグネット6Aは地面に置かれた鉄屑SCに上から押し付けられたときのリフティングマグネット6の状態を表し、破線で描かれたリフティングマグネット6Bは真上に持ち上げられたリフティングマグネット6の状態を表し、一点鎖線で描かれたリフティングマグネット6Cは旋回動作が行われているときのリフティングマグネット6の状態を表し、二点鎖線で描かれたリフティングマグネット6Dは釈放状態になる直前のリフティングマグネット6の状態を表す。
【0087】
まず、操作者は、目標重量設定部31を通じ、リフティングマグネット6に吸着させようとしている物である鉄屑SCの目標重量を設定する。また、操作者は、最大積載量設定部34を通じ、鉄屑SCを積み込むダンプトラックDTの最大積載量を設定する。
【0088】
次に、操作者は、操作装置26を操作してリフティングマグネット6を吸着対象の物である鉄屑SCの上に移動させる。
図4のリフティングマグネット6Aは、上から鉄屑SCに押し付けられたリフティングマグネット6を示す。
【0089】
次に、操作者は、弱励磁ボタン65Aを操作し、リフティングマグネット6において磁力(吸着力)を発生させる。これにより、鉄屑SCの一部はリフティングマグネット6に吸着される。この際、吸着力制御部33は、電力制御装置64に対して電流指令値としての第1電流指令値を出力する。第1電流指令値は、例えば、リフティングマグネット6に吸着される鉄屑SCの重量が目標重量以上となるのに十分な電流値である。電力制御装置64は、第1電流指令値に応じてリフティングマグネット6へ供給される電流を制御する。
【0090】
次に、操作者は、操作装置26を操作してリフティングマグネット6を上昇させる。これにより、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCの一部である鉄屑SC1は、リフティングマグネット6とともに持ち上げられる。
図4のリフティングマグネット6Bは、ブーム4及びアーム5によって真上に持ち上げられたリフティングマグネット6を示す。
【0091】
次に、重量算出部32は、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC1の重量(現重量)を算出する。本実施形態では、重量算出部32は、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC1が持ち上げられたとコントローラ30が判定した後で、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC1の現重量を算出する。具体的には、コントローラ30は、リフティングマグネット6が所定の高さまで上昇したときに、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC1が持ち上げられたと判定する。より具体的には、コントローラ30は、リフティングマグネット6の位置(座標値)に基づいてリフティングマグネット6が所定の高さまで上昇したか否かを判定する。リフティングマグネット6の位置(座標値)は、例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、リフティングマグネット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、及び測位装置等の出力に基づいて算出される。コントローラ30は、作業アタッチメントの姿勢、作業アタッチメントの各連結ピンの位置、リフティングマグネット6の上昇を開始してからの経過時間、又は、リフティングマグネットスイッチ65の操作状態等に基づいてリフティングマグネット6が所定の高さまで上昇したか否かを判定してもよい。
【0092】
次に、吸着力制御部33は、現重量が目標重量より重い場合、リフティングマグネット6へ供給される電流の調整を行う。例えば、吸着力制御部33は、電流指令値を減少させることによってリフティングマグネット6へ供給される電流を減少させる。これにより、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)が減少し、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCの一部が落下する。すなわち、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCの重量が減少する。
【0093】
本実施形態では、吸着力制御部33は、現重量と目標重量とが等しくなるまで、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCの現重量の算出と電流指令値の調整(減少)とを繰り返す。なお、現重量と目標重量とが等しくなったときの電流指令値は第2電流指令値と称される。また、現重量と目標重量とが等しくなったときは、現重量と目標重量との差が所定値未満となったときであってもよい。
【0094】
現重量と目標重量とが等しくなったときに、吸着力制御部33は、電流指令値を第3電流指令値としてもよい。第3電流指令値は、第2電流指令値よりも大きな電流指令値である。これにより、吸着力制御部33は、現重量と目標重量とが等しくなった後で、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCがリフティングマグネット6から落下するのを抑制する。
【0095】
次に、コントローラ30は、現重量と目標重量とが等しくなったことを操作者に知らせる。本実施形態では、コントローラ30は、現重量と目標重量とが等しくなったことを表示装置40に表示させる。コントローラ30は、現重量と目標重量とが等しくなったことを知らせる音声メッセージを出力させてもよい。
【0096】
次に、現重量と目標重量とが等しくなったことを知らされた操作者は、強励磁ボタン65Bを操作してリフティングマグネット6を強吸着状態とする。次に、操作者は、操作装置26を操作して上部旋回体3及び作業アタッチメントを動かし、リフティングマグネット6をダンプトラックDTの荷台の上まで移動させる。
【0097】
落下検知部37は、リフティングマグネット6がリフティングマグネット6Aの位置からリフティングマグネット6Dの位置まで移動する際に、リフティングマグネット6によって吸着された鉄屑SC1の一部がリフティングマグネット6から落下したことを検知する。具体的には、落下検知部37は、空間認識装置80が撮像した画像に対して既知の画像解析技術等を適用し、リフティングマグネット6によって吸着された鉄屑SC1の一部がリフティングマグネット6から落下したことを検知する。
図4は、リフティングマグネット6がリフティングマグネット6Cの位置に達したときに、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC1の一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6から落下したことを示す。また、
図4は、鉄屑SP1が落下した後もリフティングマグネット6(リフティングマグネット6C)に吸着したままの鉄屑SC2を示す。また、
図4は、リフティングマグネット6がリフティングマグネット6Dの位置に達したときに、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC2の一部である鉄屑SP2が吸着状態にあるリフティングマグネット6から落下したことを示す。また、
図4は、鉄屑SP2が落下した後もリフティングマグネット6(リフティングマグネット6D)に吸着したままの鉄屑SC3を示す。
【0098】
落下検知部37は、リフティングマグネット6から落下した鉄屑がダンプトラックDTの荷台の内側に入ったか否かを検知してもよい。具体的には、落下検知部37は、空間認識装置80が撮像した画像に対して既知の画像解析技術等を適用し、リフティングマグネット6から落下した鉄屑がダンプトラックDTの荷台の内側に入ったか否かを検知してもよい。
図4に示す例では、落下検知部37は、鉄屑SP1がダンプトラックDTの荷台の外側に落ちたことを検知し、且つ、鉄屑SP2がダンプトラックDTの荷台の内側に落ちたことを検知する。なお、重量算出部32は、空間認識装置80が撮像した画像に対して既知の画像解析技術等を適用し、鉄屑SP1及び鉄屑SP2のそれぞれの量(体積又は重量等)を算出してもよい。
【0099】
リフティングマグネット6がダンプトラックDTの荷台の上に移動した後で、操作者は、釈放ボタン65Cを操作してリフティングマグネット6を釈放状態とする。これにより、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SC3はダンプトラックDTの荷台に積み込まれる。
【0100】
このとき、累積重量算出部35は、前回までの累積重量に今回の現重量を加算して、累積重量を更新する。また、残重量算出部36は、更新された累積重量に基づいて、残重量を算出する。図示例では、今回の現重量は、現重量の再計算が実行された場合には、再計算後の現重量(鉄屑SC2の現重量)であり、現重量の再計算が実行されていない場合には、リフティングマグネット6が持ち上げられた直後に算出された現重量(鉄屑SC1の現重量)である。
【0101】
これらの動作を繰り返すことにより、操作者は、ダンプトラックDTの荷台に所望の累積重量分の鉄屑SCを積み込むことができる。
【0102】
なお、コントローラ30は、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCが持ち上げられた後で、現重量と目標重量とが等しくなるまでの間(現重量の算出と電流指令値の調整とを繰り返す間)、上部旋回体3の旋回を禁止してもよく、上部旋回体3の旋回を所定の角度範囲内に制限してもよい。現重量と目標重量とが等しくなるように電流指令値を調整する際にリフティングマグネット6から落下する鉄屑SCが周囲に散乱してしまうのを抑制するためである。
【0103】
また、上述の説明は、リフティングマグネット6に吸着された鉄屑SCをダンプトラックDTの荷台に積み込む場合の作業機械100の動作に関するが、ダンプトラックDTの荷台にある鉄屑SCを降ろす場合の作業機械100の動作にも同様に適用される。この場合、操作者は、リフティングマグネット6を用い、ダンプトラックDTの荷台から所望の重量分の鉄屑SCを降ろすことができる。
【0104】
また、上述の説明は、グラップルによって把持された物をダンプトラックDTの荷台に積み込む場合の作業機械100の動作に適用されてもよく、バケットに取り込まれた土砂をダンプトラックDTの荷台に積み込む場合の作業機械100としての掘削機(ショベル)の動作に適用されてもよい。この場合、目標重量設定部31及び吸着力制御部33は省略されてもよい。
【0105】
例えば、バケットに取り込まれた土砂をダンプトラックDTの荷台に積み込む場合、操作者は、操作装置26を操作して掘削動作を実行する。具体的には、操作者は、ブーム4、アーム5、及びバケットの少なくとも一つを動作させてバケット内に土砂を取り込む。
【0106】
次に、操作者は、操作装置26を操作してブーム4を上昇させることにより、土砂を取り込んだバケットを持ち上げる。これにより、バケット内に取り込まれた土砂はバケットとともに持ち上げられる。
【0107】
次に、重量算出部32は、バケット内に取り込まれた土砂の重量(現重量)を算出する。本実施形態では、重量算出部32は、バケットが空中に持ち上げられたとコントローラ30が判定した後で、バケット内に取り込まれた土砂の現重量を算出する。具体的には、コントローラ30は、バケットが所定の高さまで上昇したときに、バケットが持ち上げられたと判定する。そして、重量算出部32は、空間認識装置80が撮像した画像に対し、既知の画像解析技術等を適用してバケット内に取り込まれた土砂の体積を算出し、算出した土砂の体積とその密度から土砂の重量を算出する。土砂の密度は、予めコントローラ30の不揮発性記憶装置等に記憶されていてもよく、空間認識装置80が撮像した土砂の画像から動的に導き出されてもよい。なお、重量算出部32は、アタッチメントの姿勢とブームシリンダ7における作動油の圧力とに基づき、バケット内に取り込まれた土砂の重量(現重量)を算出してもよい。
【0108】
操作者は、現重量が目標重量より重い場合、操作装置26を操作してバケットを開閉させ、バケット内にとり込まれた土砂の一部を地面に落とすことにより、現重量の調整を行ってもよい。この際、コントローラ30は、重量算出部32が算出した土砂の現重量を表示装置40に表示させてもよい。また、この調整(バケットの開閉)は、自動的に行われてもよい。また、コントローラ30は、現重量と目標重量とが等しくなったことを操作者に知らせてもよい。例えば、コントローラ30は、現重量と目標重量とが等しくなったことを表示装置40に表示させてもよい。或いは、コントローラ30は、現重量と目標重量とが等しくなったことを知らせる音声メッセージを出力させてもよい。
【0109】
次に、操作者は、操作装置26を操作して上部旋回体3及び掘削アタッチメントを動かし、バケットをダンプトラックDTの荷台の上まで移動させる。
【0110】
落下検知部37は、バケットがダンプトラックDTの荷台の上まで移動する際に、バケット内に取り込まれた土砂の一部がバケットから落下したことを検知する。落下検知部37は、バケットから落下した土砂がダンプトラックDTの荷台の内側に入ったか否かを検知してもよい。
【0111】
具体的には、落下検知部37は、空間認識装置80が撮像した画像に対して既知の画像解析技術等を適用することにより、バケット内に取り込まれた土砂の一部がバケットから落ちたことを検知するように構成されている。また、コントローラ30は、バケットから落ちた土砂の重量を算出するように構成されていてもよい。具体的には、コントローラ30の重量算出部32は、空間認識装置80が撮像した画像に対して既知の画像解析技術等を適用することにより、バケットから落ちた土砂の体積を算出してもよい。そして、重量算出部32は、算出した体積とその密度からバケットから落ちた土砂の重量を算出してもよい。土砂の密度は、予めコントローラ30の不揮発性記憶装置等に記憶されていてもよい。
【0112】
落下検知部37は、落下した土砂の量(体積又は重量等)が所定値以上の場合、所定の処理を実行するように構成されていてもよい。所定値は、典型的には、予め記憶された値である。但し、所定値は動的に算出される値であってもよい。所定の処理は、リフティングマグネット6の場合と同様、現重量の再計算を促す処理である。具体的には、現重量の再計算を促す処理は、現重量の再計算を促す画像情報及び音声情報の少なくとも一方を出力する処理を含む。
【0113】
次に、バケットがダンプトラックDTの荷台の上に移動した後で、操作者は、操作装置26を操作してバケットを開いてバケットから土砂を放出する。これにより、バケット内の土砂はダンプトラックDTの荷台に積み込まれる。
【0114】
このとき、累積重量算出部35は、前回までの累積重量に今回の現重量を加算して、累積重量を更新する。また、残重量算出部36は、更新された累積重量に基づいて、残重量を算出する。図示例では、今回の現重量は、現重量の再計算が実行された場合には、再計算後の現重量であり、現重量の再計算が実行されていない場合には、バケットが持ち上げられた直後に算出された現重量である。
【0115】
これらの動作を繰り返すことにより、操作者は、ダンプトラックDTの荷台に所望の累積重量分の土砂を積み込むことができる。
【0116】
なお、コントローラ30は、バケットが持ち上げられた後で、現重量と目標重量とが等しくなるまでの間(現重量の算出とバケットの開閉による現重量の調整とを繰り返す間)、上部旋回体3の旋回を禁止してもよく、上部旋回体3の旋回を所定の角度範囲内に制限してもよい。現重量と目標重量とが等しくなるようにバケットを開閉する際にバケットから落下する土砂が周囲に散乱してしまうのを抑制するためである。
【0117】
次に、
図5を参照し、重量算出部32がリフティングマグネット6に吸着された物の重量(現重量)を算出する別の方法について説明する。
【0118】
図5は、作業機械100の側面図である。具体的には、
図5は、リフティングマグネット6に吸着された物の現重量の算出に関するパラメータを説明する模式図である。
【0119】
ピンP1は、上部旋回体3とブーム4とを連結する連結ピンであり、ピンP2は、上部旋回体3とブームシリンダ7とを連結する連結ピンであり、ピンP3は、ブーム4とブームシリンダ7とを連結する連結ピンである。また、ピンP4は、ブーム4とアームシリンダ8とを連結する連結ピンであり、ピンP5は、アーム5とアームシリンダ8とを連結する連結ピンであり、ピンP6は、ブーム4とアーム5とを連結する連結ピンであり、ピンP7は、アーム5とリフティングマグネット6とを連結する連結ピンである。
【0120】
重心G1はブーム4の重心であり、重心G2はアーム5の重心であり、重心G3はリフティングマグネット6の重心であり、重心GSはリフティングマグネット6に吸着された物(鉄屑SC)の重心である。なお、重心GSの位置は、重心G3の位置に対する相対的な位置として予め登録されていてもよく、動的に算出されてもよい。
【0121】
距離D1は、ピンP1とブーム4の重心G1との間の距離である。距離D2は、ピンP1とアーム5の重心G2との間の距離である。距離D3は、ピンP1とリフティングマグネット6の重心G3との間の距離である。距離DSは、ピンP1と鉄屑SCの重心GSとの間の距離である。距離DcはピンP2とピンP3とを結ぶ直線とピンP1との間の距離である。
【0122】
推力Fbは、ブームシリンダ7における作動油の圧力によってもたらされる推力である。本実施形態では、推力Fbは、ブームボトム圧とブームロッド圧との間の差圧にブームシリンダ7内のピストンの受圧面積を乗じることによって算出される。垂直成分W1aは、ブーム4の重量に基づく力(ブーム4の重力)のうちの、ピンP1と重心G1とを結ぶ直線に対して垂直な方向における成分である。垂直成分W2aは、アーム5の重量に基づく力(アーム5の重力)のうちの、ピンP1と重心G2とを結ぶ直線に対して垂直な方向における成分である。重力W3はリフティングマグネット6の重量に基づく力であり、重力WSは、リフティングマグネット6に吸着された物(鉄屑SC)の重量に基づく力である。
【0123】
ピンP7の位置は、ブーム角度及びアーム角度により算出される。すなわち、ピンP7の位置は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2の検出値に基づいて算出される。
【0124】
コントローラ30は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びリフティングマグネット角度センサS3のそれぞれの検出値に基づいて、重心GSの位置を推定することができる。
【0125】
リフティングマグネット6に吸着された物の現重量は、例えば、ブームフートピンであるピンP1の回りのトルクの釣り合いに基づいて算出される。具体的には、物の現重量は、作業アタッチメントの重量から算出されるトルク(ブーム4を下げようとするトルク)の大きさと、ブームシリンダ7の推力から算出されるトルク(ブーム4を上げようとするトルク)の大きさとが等しいという関係に基づいて算出される。より具体的には、物の現重量は、リフティングマグネット6によって吸着された物が持ち上げられたときに、ブーム4を下げようとするトルクの大きさと、ブーム4を上げようとするトルクの大きさとが等しいという関係に基づいて算出される。
【0126】
図5に示す例では、ピンP1の回りの各モーメントとブームシリンダ7との釣り合いの式は、以下の式(A1)で表される。
【0127】
WS×DS+W1a×D1+W2a×D2+W3×D3=Fb×Dc ・・・(A1)
式(A1)を重力WSについて展開すると、以下の式(A2)で表すことができる。
【0128】
WS=(Fb×Dc-(W1a×D1+W2a×D2+W3×D3))/DS ・・・(A2)
ここで、ブームシリンダ7における作動油の圧力による推力Fbは、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bの少なくとも一方の検出値より算出される。距離Dc及び垂直成分W1aは、ブーム角度センサS1の検出値より算出される。垂直成分W2a及び距離D2は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2のそれぞれの検出値より算出される。距離D1及び重力W3は既知の値である。また、距離DSは重心GSの位置に基づいて算出され、距離D3は重心G3の位置に基づいて算出される。
【0129】
したがって、重力WSは、ブームシリンダ7における作動油の圧力の検出値(ブームロッド圧センサS6aの検出値及びブームボトム圧センサS6bの検出値)、ブーム角度(ブーム角度センサS1の検出値)、並びにアーム角度(アーム角度センサS2の検出値)に基づいて算出される。これにより、コントローラ30は、重心GSの位置に基づいて重力WSを算出することができる。
【0130】
このように、重量算出部32は、ブームシリンダ7の推力Fbと重心GSの位置とに基づいて、リフティングマグネット6に吸着された物の現重量を算出することができる。なお、図示例では、重量算出部32は、ブーム上げ動作中に現重量を算出するように構成されている。他の動作が行われている場合に比べ、ブームシリンダ7における作動油の圧力による現重量の検出精度が高いためである。
【0131】
上述のように、本発明の実施形態に係る作業機械100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回機構を介して搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントと、アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出する制御装置としてのコントローラ30と、を備えている。そして、コントローラ30は、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちたことを検知できるように構成されている。
図4に示す例では、コントローラ30は、作業アタッチメントの先端に取り付けられるリフティングマグネット6によって吸着され且つ作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SCの一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6から落ちたことを検知できるように構成されている。
【0132】
この構成は、アタッチメントを使って移動させた物の重量がより正確に算出されるようになるという効果をもたらす。鉄屑SP1がリフティングマグネット6から落ちたことを検知することにより、リフティングマグネット6を使って地面からダンプトラックDTの荷台の上に移動させた鉄屑の累積重量に鉄屑SP1の重量が含まれてしまうのを防止できるためである。
【0133】
例えば、コントローラ30は、アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出した後で、その物の一部がアタッチメントから落ちたことを検知した場合に、その物の重量を算出し直すように構成されていてもよい。
図4に示す例では、コントローラ30は、鉄屑SC1の重量を算出した後で、鉄屑SC1の一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6から落ちたことを検知した場合に、リフティングマグネット6に吸着されたままとなっている鉄屑SC2の重量を算出し直すように構成されていてもよい。
【0134】
この構成は、落下した鉄屑SP1を除いた、リフティングマグネット6に吸着されたままの鉄屑SC2の重量を算出できるようにするため、作業アタッチメントを使って移動させた鉄屑の重量がより正確に算出されるようになるという効果をもたらす。
【0135】
また、コントローラ30は、空間認識装置80及びシリンダ圧センサの少なくとも一つの出力に基づいてアタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出するように構成されていてもよい。コントローラ30は、シリンダ圧センサ及び姿勢センサの出力に基づいてアタッチメントによって持ち上げられた物の重量を算出するように構成されていてもよい。
図4に示す例では、コントローラ30は、空間認識装置80の出力に基づいて作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SC1の重量を算出するように構成されている。
【0136】
この構成は、アタッチメントによって持ち上げられた物の重量を簡易且つ正確に算出できるようにするという効果をもたらす。例えば、この構成は、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SC1の重量を簡易且つ正確に算出できるようにするという効果をもたらす。また、空間認識装置80の出力に基づいて物の重量を算出する構成は、シリンダ圧センサの出力に基づいて物の重量を算出する構成に比べて高い精度で重量を算出できるという利点がある。シリンダ圧センサの出力は、旋回中等の作業機械100の動作中における変動が大きいためである。
【0137】
また、コントローラ30は、空間認識装置80及びシリンダ圧センサの少なくとも一つの出力に基づき、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちたことを検知するように構成されていてもよい。
図4に示す例では、コントローラ30は、空間認識装置80の出力に基づき、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SC1の一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6にから落ちたことを検知するように構成されている。
【0138】
この構成は、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちたことを簡易且つ正確に検知できるようにするという効果をもたらす。例えば、この構成は、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SC1の一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6にから落ちたことを簡易且つ正確に検知できるようにするという効果をもたらす。また、空間認識装置80の出力に基づいて物の一部の落下を検知する構成では、コントローラ30は、シリンダ圧センサの出力に基づいて物の一部の落下を検知する構成に比べ、物の一部がどこに落ちたかを容易に検知できるという利点を有する。
図4に示す例では、コントローラ30は、空間認識装置80が撮像した画像を利用することで、鉄屑SP1がダンプトラックDTの荷台の外側に落ちたこと、及び、鉄屑SP2がダンプトラックDTの荷台の内側に落ちたことを容易に検知できる。空間認識装置80は、リフティングマグネット6の真下の地面等を含むリフティングマグネット6の周囲の空間を撮像範囲内に含めることができるためである。
【0139】
また、コントローラ30は、アタッチメントから落ちた部分の重量を算出するように構成されていてもよい。
図4に示す例では、コントローラ30は、リフティングマグネット6から落ちた部分である鉄屑SP1の重量を算出するように構成されている。具体的には、コントローラ30の重量算出部32は、空間認識装置80が撮像した画像に対して既知の画像解析技術等を適用することにより、鉄屑SP1の体積を算出する。そして、重量算出部32は、算出した体積とその密度から鉄屑SP1の重量を算出する。鉄屑SP1の密度は、予めコントローラ30の不揮発性記憶装置等に記憶されている。
【0140】
この構成は、例えば、アタッチメントから落ちた部分の量と所定値との比較が可能になり、その比較結果に基づいた所定の処理の実行の要否の判定が可能になるという効果をもたらす。所定の処理は、例えば、現重量の再計算を促す処理である。そのため、この構成は、アタッチメントを使って移動させた物の重量がより正確に算出されるようになるという効果をもたらす。
【0141】
また、コントローラ30は、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちたことを検知した場合に、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちたことを外部に知らせるように構成されていてもよい。
図4に示す例では、コントローラ30は、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SC1の一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6から落ちたことを検知した場合に、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SC1の一部である鉄屑SP1がリフティングマグネット6から落ちたことを外部に知らせるように構成されている。
【0142】
この構成は、作業機械100の操作者にリフティングマグネット6による鉄屑SCの吸着のやり直しを促すことができ、或いは、操作者に現重量の再計算を促すことができるため、アタッチメントを使って移動させた物の重量がより正確に算出されるようになるという効果をもたらす。
【0143】
また、コントローラ30は、アタッチメントによって持ち上げられた物の一部がアタッチメントから落ちて目的場所に達しなかったことを検知するように構成されていてもよい。
図4に示す例では、コントローラ30は、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SCの一部がリフティングマグネット6から落ちて目的場所であるダンプトラックDTの荷台の上に達しなかったか否かを検知するように構成されている。具体的には、コントローラ30は、リフティングマグネット6に吸着されていた鉄屑が、リフティングマグネット6が釈放状態になる前に、鉄屑SP1のようにダンプトラックDTの荷台の外側に落ちたか、或いは、鉄屑SP2のようにダンプトラックDTの荷台の内側に落ちたかを検知できるように構成されている。より具体的には、コントローラ30は、空間認識装置80が撮像した画像に対し、既知の画像解析技術等を適用することにより、作業アタッチメントによって持ち上げられた鉄屑SCの一部がリフティングマグネット6から落ちてダンプトラックDTの荷台の上に達しなかったか否かを検知するように構成されている。
【0144】
この構成は、アタッチメントを使って移動させた物の重量がより正確に算出されるようになるという効果をもたらす。ダンプトラックDTの荷台の外側に落ちた鉄屑SP1の重量が累積重量に加算されてしまうのを防止できるためである。また、ダンプトラックDTの荷台の内側に落ちた鉄屑SP2の重量が累積重量から除外されてしまうのを防止できるためである。
【0145】
以上、本発明の好ましい実施形態が説明された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0146】
1・・・下部走行体 1L・・・左側走行用油圧モータ 1R・・・右側走行用油圧モータ 2・・・旋回機構 2A・・・旋回用油圧モータ 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・リフティングマグネット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・リフティングマグネットシリンダ 10・・・キャブ 11・・・エンジン 11a・・・オルタネータ 11b・・・スタータ 13・・・レギュレータ 14・・・メインポンプ 14G・・・油圧ポンプ 15・・・パイロットポンプ 16、16a・・・作動油ライン 17・・・コントロールバルブユニット 25・・・パイロットライン 26・・・操作装置 26L・・・左操作レバー 26R・・・右操作レバー 29・・・操作圧センサ 30・・・コントローラ 31・・・目標重量設定部 32・・・重量算出部 33・・・吸着力制御部 34・・・最大積載量設定部 35・・・累積重量算出部 36・・・残重量算出部 37・・・落下検知部 40・・・表示装置 41・・・画像表示部 42・・・スイッチパネル 42a・・・ライトスイッチ 42b・・・ワイパースイッチ 42c・・・ウインドウォッシャスイッチ 60・・・油圧モータ 61・・・切換弁 63・・・発電機 64・・・電力制御装置 65・・・リフティングマグネットスイッチ 65A・・・弱励磁ボタン 65B・・・強励磁ボタン 65C・・・釈放ボタン 66・・・磁力調節ダイヤル 70・・・蓄電池 72・・・電装品 74・・・エンジン制御装置 75・・・ダイヤル 80・・・空間認識装置 80B・・・後カメラ 80F・・・前カメラ 80L・・・左カメラ 80R・・・右カメラ 100・・・作業機械 DT・・・ダンプトラック S1・・・ブーム角度センサ S2・・・アーム角度センサ S3・・・リフティングマグネット角度センサ S4・・・機体傾斜センサ S5・・・旋回角速度センサ S6a・・・ブームロッド圧センサ S6b・・・ブームボトム圧センサ S6c・・・アームロッド圧センサ S6d・・・アームボトム圧センサ S6e・・・リフティングマグネットロッド圧センサ S6f・・・リフティングマグネットボトム圧センサS6f S7・・・ブームシリンダストロークセンサ S8・・・アームシリンダストロークセンサ S9・・・リフティングマグネットシリンダストロークセンサ SC、SC1、SC2、SC3、SP1、SP2・・・鉄屑