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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167742
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ローゼル内液体又はローゼル内固体
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241127BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20241127BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20241127BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/185
A61Q7/00
A61Q19/00
A61P17/14
A61P9/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084019
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】523189749
【氏名又は名称】SEED有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】523189750
【氏名又は名称】株式会社ベジタリ菜
(71)【出願人】
【識別番号】504017256
【氏名又は名称】株式会社F・E・C
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 香里
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚美
(72)【発明者】
【氏名】福本 康文
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC02
4C083CC37
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE11
4C083EE22
4C083FF01
4C088AB13
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088CA15
4C088MA16
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA42
4C088ZA92
(57)【要約】
【課題】外部からの配合物や混入物がなく熱分解物もない「全て天然由来の液体や固体」を提供すること、また、特定の「乾燥していない対象物」自身を、単に固液分離することで、優れた薬効を示す液体や固体を提供すること。
【解決手段】乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器100内で、撹拌機110を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器300を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して液体側を回収して得られるものであるローゼル内液体;同様にして固体側を回収して得られるローゼル内固体;該ローゼル内液体に該ローゼル内固体側を混合して濾過してなる液体;並びに;それらを含有する発毛育毛剤、美肌剤、血圧調整剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器内で、撹拌機を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して液体側を回収して得られるものであることを特徴とするローゼル内液体。
【請求項2】
前記真空低温分離を、101.3kPa(1気圧)に対し、-80kPa以上低い圧力を維持しつつ行う請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項3】
前記真空低温分離中は、1kPa以上10kPa以下の圧力を維持する請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項4】
前記減圧器が、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタである請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項5】
前記容器の体積をV[L]とし、該容器に投入されるローゼルの質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の5倍以上20倍以下に設定する請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項6】
前記容器の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の固定刃を有すると共に、前記撹拌機は、1個に複数の回転刃を有する回転刃体を有し、該回転刃体を回転させることによって、容器内のローゼルを、該固定刃と該回転刃で粗破砕しつつ真空低温分離する請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項7】
前記ローゼルを、前記真空低温分離中に、該ローゼルの細胞が有する細胞膜を破壊しないように、0.7mm以上10mm以下に粗破砕する請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項8】
前記ローゼルが、ローゼルの、萼(がく)、総苞片、実、又は、葉である請求項1に記載のローゼル内液体。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする発毛育毛剤。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする美肌剤。
【請求項11】
請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする血圧調整剤。
【請求項12】
乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器内で、撹拌機を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して固体側を回収して得られるものであることを特徴とするローゼル内固体。
【請求項13】
請求項12に記載のローゼル内固体を、請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載のローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる発毛育毛剤であって、
該濾過してなる発毛育毛剤全体に対して、該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用して得られるものであることを特徴とする発毛育毛剤。
【請求項14】
請求項12に記載のローゼル内固体を、請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載のローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる美肌剤であって、
該濾過してなる美肌剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用して得られるものであることを特徴とする美肌剤。
【請求項15】
請求項12に記載のローゼル内固体を、請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載のローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる血圧調整剤であって、
該濾過してなる血圧調整剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用して得られるものであることを特徴とする血圧調整剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥していないローゼル(Roselle)を特定の方法で真空低温分離、すなわち固液分離することによって得られるローゼル内液体若しくはローゼル内固体に関するものであり、更に、該ローゼル内液体を含有する発毛育毛剤、美肌剤、又は、血圧調整剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「ローゼル(Roselle)」は、Hibiscus sabdariffaと言う、アオイ科フヨウ属の植物であり、種子は炒めて食用にしたり、萼(がく)や総苞片は煮出して飲用にしたり、葉はサラダや煮物等として食されている。
また、ローゼルからの抽出物は、健康食品や化粧料の原料として、種々の効能が報告されている。
【0003】
引用文献1には、ローゼルの水溶性抽出物を含有する化粧水が記載されている。
引用文献2には、ローゼルを微生物で醗酵させて得られる醗酵物を含有する化粧料が記載されている。
引用文献3には、ローゼルの種子からの熱水抽出画分を有効成分とする血糖値低下組成物が記載されている。
【0004】
引用文献4には、ローゼルの花からの抽出物を有効成分とする皮膚機能改善剤が記載されている。
引用文献5には、ローゼルの萼(がく)を乳酸菌により醗酵させて得られる醗酵物からなる酵素活性化剤が記載されている。
引用文献6には、ローゼルからの溶媒抽出物を有効成分とする自律神経調節剤が記載されている。
【0005】
引用文献7には、フェニルプロパノイドとアントシアニンを含む「食欲低下又は満腹感増加による食物摂取量を調節する組成物」が記載され、該抽出物として、ローゼルからの抽出物が記載されている。
引用文献8には、ローゼルからの有機溶媒抽出物を含む体温上昇剤組成物が記載されている。
引用文献9には、白ローゼルの萼(がく)の細胞壁を溶解した後、溶媒で抽出して得られる白ローゼル抽出物を肌保湿向上に使用することが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記した従来技術は、ローゼルからの抽出に関しては、水や有機溶媒を用いて抽出するものであるか、又は、ローゼルの醗酵物を用いるものであった。
すなわち、従来は、乾燥も醗酵もしていないローゼルを外部から媒体を添加せずに単に固液分離する、すなわちローゼル自体を、単に固体と液体とに固液分離して、その一方を使用すると言う技術思想はなかった。
また、対象物(ローゼル)を粗粉砕しながら、低温で(45℃以下を維持ながら)固液分離すると言う技術思想もなかった。
【0007】
一方、植物から有効成分のみを取り出す方法としては、一般に、水、有機溶媒、加熱水蒸気、(超臨界抽出における)二酸化炭素等の抽出媒体を使用するものが知られている。
また、上記一般的な抽出方法以外の方法として、比較的低温で減圧して抽出する方法(低温真空抽出法)が知られている。
【0008】
引用文献10には、シークワーサーを、破砕・撹拌・加熱・減圧を行って、50℃以下の温度を保ちつつ香気成分を抽出する方法が記載されている。
また、引用文献11には、生薬の原料植物、菊芋、甘茶と言った薬草を、45℃以下で固液分離して薬水を得る方法が記載されている。
【0009】
しかしながら、ローゼルから上記方法で得られる固体又は液体は知られていなかった。
すなわち、対象物をローゼルにし、それを粗粉砕下に低温で減圧して固液分離したものは知られていなかった。
【0010】
更に、ローゼルを対象物として、低温で減圧して固液分離して得られる液体が、他の抽出方法と比較して、また、他の植物と比較して、発毛育毛、美肌、血圧調整等の薬効(効能)が優れていることが知られていないことは勿論のこと、当業者が上記薬効(効能)を期待して、種類が無限に存在する生物(植物、動物、藻類、キノコ類等)の中から、低温で減圧して固液分離してみようとすることも、到底できない状況であった。
【0011】
近年、健康増進・美肌・発毛・育毛等が強く要望されるようになり、更に、天然由来物よりなる製品が求められるようになっているが、従来技術では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-346006号公報
【特許文献2】特開2006-347925号公報
【特許文献3】特開2009-062348号公報
【特許文献4】特開2014-129252号公報
【特許文献5】特開2017-001985号公報
【特許文献6】特開2018-158891号公報
【特許文献7】特開2020-535222号公報
【特許文献8】特開2020-094018号公報
【特許文献9】特開2022-117965号公報
【特許文献10】特開2013-209311号公報
【特許文献11】特開2020-200309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、外部からの配合物や混入物がなく熱分解物もない「全て天然由来の液体や固体」を提供することである。
また、特定の「乾燥していない対象物」自身を、単に固液分離することで、すなわち真空低温分離することで、優れた薬効を示す液体や固体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、乾燥していないローゼル(Roselle)を、特定の固液分離方法を使用し、更に特定の条件で固液分離(真空低温分離)して得られる液体(又は固体)が、他の生物(植物、動物、藻類、キノコ類等)を固液分離の対象として得られたものに比較して、また、他の抽出方法を用いて得られたものに比較して、優れた、発毛育毛効果、美肌効果、血圧調整効果等が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器内で、撹拌機を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して液体側を回収して得られるものであることを特徴とするローゼル内液体を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、前記真空低温分離を、101.3kPa(1気圧)に対し、-80kPa以上低い圧力を維持しつつ行う前記のローゼル内液体を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記減圧器が、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタである前記のローゼル内液体を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記容器の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の固定刃を有すると共に、前記撹拌機は、1個に複数の回転刃を有する回転刃体を有し、該回転刃体を回転させることによって、容器内のローゼルを、該固定刃と該回転刃で粗破砕しつつ真空低温分離する前記のローゼル内液体を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記ローゼルが、ローゼルの、萼(がく)、総苞片、実、又は、葉である前記のローゼル内液体を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、前記のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする発毛育毛剤を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、前記のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする美肌剤を提供するものである。
【0022】
また、本発明は、前記のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする血圧調整剤を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器内で、撹拌機を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して固体側を回収して得られるものであることを特徴とするローゼル内固体を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、前記のローゼル内固体を、前記のローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる発毛育毛剤であって、
該濾過してなる発毛育毛剤全体に対して、該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用して得られるものであることを特徴とする発毛育毛剤を提供するものである。
【0025】
また、本発明は、前記のローゼル内固体を、前記のローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる美肌剤であって、
該該濾過してなる美肌剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用して得られるものであることを特徴とする美肌剤を提供するものである。
【0026】
また、本発明は、前記のローゼル内固体を、前記のローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる血圧調整剤であって、
該濾過してなる血圧調整剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用して得られるものであることを特徴とする血圧調整剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、水を含め全て天然由来の成分のみを含有しているので、また、ローゼル内の液体の全てを含有しているので、ローゼルが本来有している発毛育毛効果、美肌効果、又は、血圧調整効果を最大限引き出した、極めて効能が高いローゼル内液体を提供することができる。
本発明のローゼル内液体は、ローゼルから他の公知の抽出方法で抽出した液体に比較して、発毛育毛効果、美肌効果、又は、血圧調整効果を好適に奏する。
【0028】
また、本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、天然由来の成分のみを含有しており、ローゼル内の固体の全ての成分を含有しているので、ローゼルが本来有している発毛育毛効果、美肌効果、又は、血圧調整効果を最大限引き出した、極めて効能が高いローゼル内固体を提供することができる。
【0029】
また、上記ローゼル内固体を特定量上記ローゼル内液体に浸漬後濾過してなる発毛育毛剤、美肌剤、血圧調整剤は、それぞれの効果が極めて高い。
上記ローゼル内固体を純水に浸漬しても、該ローゼル内固体中の有効成分が該純水に好適に溶解して移行しないところ、該ローゼル内固体を該ローゼル内液体に浸漬すると、該ローゼル内固体中の有効成分が該ローゼル内液体に好適に溶解して移行する。そのため、本発明の上記した発毛育毛剤、美肌剤、血圧調整剤は、それぞれの効果が極めて高い。
【0030】
本発明の真空低温分離方法で分離した液体も固体も、他の抽出方法で抽出した抽出液や、他の抽出方法で得られる抽出残渣に比べ、熱分解が起こっていないので熱分解物の含有がない;熱分解による有効成分の損失がない;水、有機溶媒、加熱水蒸気等の抽出媒体を使用していないので、それらの含有(残存)がない;天然物のみが含有されている;容器内で粗破砕しながら真空低温分離するので変質していない有効成分が多く得られる;等と言った効果が得られる。
【0031】
本発明によれば、更に特に、温度の上限や、排気容量(減圧速度)を調整することで、新鮮なローゼルを変質させずに、従って天然由来ではない反応生成物や分解物を含有させずに又は生成させずに真空低温分離(固液分離)ができる。
また、特殊な容器内で操作を行い、該容器内のローゼルを粗破砕しつつ真空低温分離することで、細胞膜の破壊を少なくでき、新鮮な破砕面から、植物内で細胞水に溶解していた有効成分と該細胞水自体を液相として得ることができる。
【0032】
また、本発明における分離条件は、所謂低温真空抽出法と言われている抽出法に比べ、更に条件が限定されているので、本発明における真空低温分離方法で分離された液体も固体も、一般の所謂低温真空抽出法で得られたものより、更に高い上記効果が得られる。
【0033】
本発明によれば、乾燥していないローゼルを用いて固液分離をするので、液相として、該ローゼルが本来内部に有している細胞水が得られる。ローゼルを含めた植物が有する細胞水は、水分子が集合したものの構造(水の有する情報)が異なっているとも考えられ、通常の蒸留水、井戸水、水道水、脱塩水等とは、その性質が異なる。
【0034】
本発明のローゼル内固体を、本発明のローゼル内液体に浸漬後に濾過して得られる発毛育毛剤、美肌剤、血圧調整剤は、その効能が、液体又は固体だけに比べて、更に相乗的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に使用する真空低温分離装置の全体の一形態を示す概略図である。
図2】本発明に使用する真空低温分離装置に具備されている容器、冷却器、回収獲得容器等の一形態を示す概略断面図である。
図3】本発明に使用する真空低温分離装置に具備されている容器が有する破砕撹拌機の一形態を示す概略斜視図である。
図4】本発明に使用する装置に具備されている好ましい減圧器である横噴射型の水エジェクタと水タンクと循環ポンプ等の一形態を示す概略断面図である。
図5】本発明における真空低温分離の対象であるローゼルの、萼(がく)と総苞片、及び、実を示す写真である。 (a)大きさが約2~3cmの萼(がく)と総苞片の写真 (b)大きさが約1.0~1.5cmの実の写真
図6】本発明のローゼル内固体の写真である。 (a)ローゼルの萼(がく)と総苞片を容器内で粗破砕しながら真空低温分離して得られたローゼル内固体の写真 (b)ローゼルの実を容器内で粗破砕しながら真空低温分離して得られたローゼル内固体の写真(倍率は、図6(a)(b)共に図5(a)(b)と同一)
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0037】
<ローゼル内液体>
本発明のローゼル内液体は、乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器内で、撹拌機を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して液体側を回収して得られるものであることを特徴とする。本明細書中において、「固液分離」と「真空低温分離」は互いに読み換えることができる。
【0038】
本発明における「ローゼル内液体」とは、上記方法で製造される液体のことを言い、全体として見たときに均一に液体状態になっているものである。該液体の中には、水と任意の割合では相溶しない油性成分が溶解されていてもよい。また、常温常圧で固体である成分が溶解されていてもよい。
【0039】
なお、本発明における上記ローゼル内液体は、「ローゼルを常法に従い水抽出(熱水抽出)して、その後、該水を留去して得られる液体;ローゼルを常法に従い水蒸気蒸留して得られる液体;圧搾して得られる搾汁;等の従来法で得られる液体」と比較して、そこに含有される構成成分が、熱分解の有無、残留物の有無、揮散物の有無等に関する相違(点)以外にも、各成分の水溶性や沸点(蒸気圧)に関する相違等から、原理的に考えても全く異なることは言うまでもない。
【0040】
「ローゼル(Roselle)」とは、アオイ科フヨウ属に属する植物である「Hibiscus sabdariffa」のことを言う。
本発明においては、乾燥していないローゼルを固液分離の対象として用いるが、ここで「乾燥していない」とは、積極的に乾燥させていない、又は、実質的な乾燥工程を経ていないことを言い、静置により自然に乾燥して水や低沸点成分が僅かに蒸発(揮散)した状態は、ここからは排除されない(本発明の範囲である)。
【0041】
乾燥したローゼルを用いると、ローゼル内液体が得られない。また、半乾燥したローゼルを用いると、含有成分組成が異なって、又は、水が異なって、十分な効能を有さないローゼル内液体しか得られない。
【0042】
本発明においては、固液分離の対象として、乾燥していないローゼルを用いることが必須であるが、該ローゼルの部位は、特に限定されず、ローゼルの、萼(がく)、総苞片、実、種、葉、茎、花弁を含む花、又は、根が挙げられる。特に好ましくは、ローゼルの、萼(がく)、総苞片、実、又は、葉である。
該ローゼルの萼(がく)と総苞片、及び、該ローゼルの実の写真を図5(a)(b)に示す。本発明における「ローゼルの実」には、成熟した種若しくは未成熟の種を含む実も含まれる。
ローゼルの萼(がく)、総苞片、実は、ローゼルの花びらが取れたものから収穫することが好ましい。ローゼルの花が落ちた後に、赤い塊が収穫されるが、該塊を覆っているものが萼(がく)と総苞片であり、該塊の中に入っているものが実である。
萼(がく)の大きさは、約2cm~約3cmであり、萼(がく)の厚みは更に薄い(図5(a))。萼(がく)の中の実の大きさは、約1.5cm~2cmである(図5(b))。
【0043】
以下、単に「ローゼル」と記載したときは、特に好ましくは、「ローゼルの萼(がく)及び/若しくは総苞片」又は「ローゼルの実」又は「ローゼルの葉」である。
【0044】
本発明において、ローゼルの萼(がく)・総苞片、実、葉をそれぞれ真空低温分離して得た液体と固体において、意外にも、著しい発毛育毛効果・美肌効果・血圧調整効果・効能が認められた。また、ローゼルの葉においては、発毛育毛効果・効能等が認められた。
ローゼルの「本発明の条件による真空低温分離」は、本発明において初めて行われたものであり、前記した通り、構成成分は、化学的に全く異なるはずである。従って、従来の抽出方法によって得られたものに「弱い上記効果・効能」があったとしても、それらは、本発明をなすに当たって全く参考にならない。
【0045】
ローゼルの萼(がく)・総苞片、ローゼルの実、ローゼルの葉は、それぞれ真空低温分離することが好ましいが、複数の部位を同時に固液分離してもよい。また、少なくとも、萼(がく)・総苞片、又は、実、又は、葉を固液分離することが好ましいのであって、ローゼルの他の部位が混入していてもよい。例えば、ローゼル全体からある部位を除いたものを固液分離の対象としてもよい。ただし、得られたもの(液体・固体)を後から混合する場合であっても、ローゼルの萼(がく)・総苞片、ローゼルの実、ローゼルの葉を、それぞれ別個に固液分離することが特に好ましい。
【0046】
<ローゼル内固体>
本発明のローゼル内固体は、乾燥していないローゼル(Roselle)を、抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、容器内で、撹拌機を用いて撹拌しながら粗破砕し、外部から熱を加えつつ減圧器を用いて該容器内を減圧して45℃以下を維持するようにして、該ローゼルを真空低温分離して固体側を回収して得られるものであることを特徴とする。
【0047】
本発明における「ローゼル内固体」とは、上記方法で製造される固体のことを言い、混合されている場合は、全て固体状態になっているものである。該固体は、水性成分も油性成分も含まれる。図5(a)にローゼルの萼(がく)と総苞片から得られた「ローゼル内固体」を示し、図5(b)にローゼルの実から得られた「ローゼル内固体」を示す。
【0048】
なお、本発明における上記ローゼル内固体と、「ローゼルを、常法に従った水抽出;水/エタノール抽出、エタノール抽出等の有機溶媒抽出;超臨界抽出;等をして得られる固体」や「圧搾(搾汁)後の残渣」等とを比較して、そこに含有される構成成分が、熱分解の有無、残留物の有無、揮散物の有無等に関する相違(点)以外にも、「各成分の水溶性・相溶性や沸点(蒸気圧)や融点」に関する相違等から、化学的・原理的に考えても全く異なることは言うまでもない。
【0049】
ローゼル内固体における乾燥の定義、乾燥の程度、使用される好ましいローゼルの部位等については、上記ローゼル内液体の場合と同様である。
【0050】
<本発明のローゼル内液体とローゼル内固体における真空低温分離方法と真空低温分離装置>
本発明のローゼル内液体やローゼル内固体の製造に使用される真空低温分離装置は、例えば一例を図1に示したように、低温で真空(減圧)による固液分離が可能で、かつ、実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ容器内を減圧し、45℃以下を維持するように減圧器で容器内を減圧して、ローゼルを真空低温分離することによって液相及び/又は固体を回収できるようになっている。
【0051】
本発明に使用される真空低温分離装置は、本発明のローゼル内液体又は固体の製造に用いられ得る能力を有しているものであり、少なくとも、破砕撹拌機、加熱ユニット及び気体取出口を有する容器;並びに;減圧器を具備する。
【0052】
本発明では、実質的に抽出媒体も水蒸気も使用せずに、撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧して固液分離して、そのうちの液体部分及び/又は固体部分を回収する。
ここで、「抽出媒体」とは、例えば、水;アルコール;水/アルコール等の有機溶媒;二酸化炭素等の超臨界流体・亜臨界流体;等が挙げられる。上記水蒸気とは、水蒸気蒸留法で使用する水蒸気のことを言う。
ここで「実質的に使用しない」とは、対象(ローゼル)の3質量%以下しか使用しないことを言い、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下しか使用しないことであり、特に好ましくは全く使用しないことである。
【0053】
使用される真空低温分離装置は、好ましくは、真空低温分離対象である「乾燥していないローゼル」を破砕しつつ撹拌する破砕撹拌機110、該ローゼル及び容器100内を加熱する加熱ユニット120、該ローゼルから発生する気体を取り出す気体取出口130、及び、好ましくは固液分離後にローゼル内固体の方を取り出す固体粉末取出口140を有する容器100;
該気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200;
該容器100内を減圧する減圧器300;並びに;
該冷却器200で冷却されて液化したローゼル内液体を回収獲得する回収獲得容器400;を具備している。
【0054】
真空低温分離の対象となるローゼルは、植物投入口103から容器100に投入される。投入されるローゼルは、予め裁断しておいてもよいが、該ローゼルの細胞を(特に細胞膜を)、実質的になるべく破壊しないようにする。なお、全く破壊しないようにする必要はなく、破壊された細胞はあってもよい。
【0055】
限定はされないが、真空低温分離の対象となるローゼルは、本発明の前記した効果を発揮させる目的で、すなわち、得られるローゼル内液体が細胞内物質を含有するように、更には該ローゼルに含有される「分離されて液体側に来るべき実質的に全ての成分」を含有するように、投入前に、該ローゼルに対して、乾燥は勿論のこと、加熱、すり潰し、細断及び/又は醗酵も、しないことが好ましい。
本発明のローゼル内液体には、ローゼルの細胞水が含有される。好ましくはそのままの形態・成分比で含有される。言い換えれば、ローゼルに含有されていた細胞水をそのまま含有するように真空低温分離することが好ましい。上記又は下記する真空低温分離装置を用いると、それが可能である。
【0056】
本発明のローゼル内液体では、上記ローゼルの萼(がく)・総苞片又は実又は葉以外のものを、上記容器内に実質的に投入しないで固液分離することが好ましい。
本発明は、外部から「固液分離対象であるローゼル以外のもの」を実質的には投入する必要がなく、投入しないことによって、得られるローゼル内液体は、固液分離対象であるローゼルに含有される成分のみからなり、更には、該ローゼル(の細胞)に含有される成分の実質的に全てを含有させることができる。
本発明によって得られるローゼル内液体は、上記のような天然由来の成分組成であることが好ましい。
【0057】
本発明の範囲は、本願の図に示されたものには限定されないが、図2図3に本発明における真空低温分離装置の容器100の概略図を示す。
容器100は、ローゼルを収容し、破砕撹拌機110で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に、加熱ユニット120によって外部から熱を加えつつ減圧して真空低温分離する容器である。
【0058】
本発明における真空低温分離装置の容器100の破砕撹拌機110は、少なくとも、投入されたローゼルを粗破砕しつつ撹拌できるようになっている。
容器100は、破砕撹拌機110を収容した下部半円筒部101と、その上に形成された上部角形部102とからなる。少なくとも下部半円筒部101の周囲には、容器100の内部に熱を加える蒸気室121がある。
下部半円筒部101の最下部の中央には、固液分離後のローゼル内固体を取り出す固体粉末取出口140が設けられていることが好ましい。
【0059】
図1図2に示すように、上記上部角形部102の上部には、植物投入口103が設けられていると共に、その植物投入口103を塞ぐ植物投入口蓋104が設けられている。
上記上部角形部102の上部には、吸引される蒸気の気体取出口130が設けられ、言い換えれば、ローゼルから発生する気体を取り出す気体取出口130が設けられ、この気体取出口130には、冷却器200につながる気体配管131が接続されている。
【0060】
本発明のローゼル内液体においては、投入されたローゼルを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に固液分離を行う。このようにしながら固液分離することで、有効成分である細胞内物質の熱分解、酸化等による変性を防ぐことができる。
上記破砕・撹拌は、「複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112b」及び「真空低温分離装置の内面(好ましくは上記下部半円筒部101の下内面)に設けられた複数の凸型固定刃111」を備えた真空低温分離装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
【0061】
例えば、図3は、前記破砕撹拌機110の構成の一例を示す斜視図であり、破砕撹拌機110は、容器100の外部に設けられたモータにより回転されるものであり、容器100の端壁105a、105bに回転可能に支持される左右の端板106a、106bと、その先端間に両端が固定された、ほぼ「く」の字115の形をなす回転刃体112a、112bとによって構成することにより、中心軸を有しない構造(中心軸なしで回転可能の構造)に構成されている。
【0062】
回転刃体112a、112bをほぼ「く」の字形にすることによって、ローゼルを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し易くすると共に、真空低温分離完了後は、ローゼル内固体を容器100の内壁から良好に掻き取り、(容器100の下側のほぼ中央に位置する)固体粉末取出口140に向けて掻き寄せることによって、固体粉末取出口140から取り出すことができる。
上記破砕撹拌機110が2個以上の回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを同方向に回転させることで、ローゼルを破砕しつつ撹拌し、真空低温分離完了後には、ローゼル内固体を上記容器100の内壁から掻き取り、上記固体粉末取出口140に向けて掻き寄せることが好ましい。ただし、回転刃体112は1個でも好ましい。
【0063】
破砕撹拌機110の回転速度、すなわち、容器100の左右の端壁105a、105bに回転可能に支持されている左右の端板106a、106bの回転速度は、1回転/分以上8回転/分以下が好ましく、2回転/分以上6回転/分以下がより好ましく、4回転/分以上5回転/分以下が特に好ましい。
回転速度が小さ過ぎるときは、破砕、撹拌及び/又は真空低温分離の効率が悪くなる場合、容器100内で破砕されつつあるローゼルに温度ムラが生じる場合等があり、一方、回転速度が大き過ぎるときは、破砕撹拌機110に過剰の負荷がかかる場合、細胞膜に障害を与える場合等がある。
【0064】
本発明のローゼル内液体は、好ましくは、上記容器100の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の凸型固定刃111を有すると共に、上記破砕撹拌機110は、1個に複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを回転させることによって、容器100内のローゼルを、該凸型固定刃111と該回転刃113a、113bとで破砕しつつ真空低温分離することで得られる。
【0065】
図3における111は、下部半円筒部101の内面に固着された複数の凸型固定刃であり、回転刃体112a、112bにおける凸型固定刃111に対応する箇所には、回転刃体112a、112bにおける凸型固定刃111の部分を通過するための回転刃溝114a、114bが形成され、その溝の両側に、凸型固定刃111との間でローゼルを破砕するための回転刃113a、113bが設けられている。
なお、図3では、凸型固定刃111と回転刃113a、113bとは、噛み合いが時間をずらして順次行われるように、周方向に位置をずらして配設し、これにより破砕撹拌機110の駆動モータの動力の瞬間的増大が起こらないようにしている。
【0066】
1個の回転刃体に設けられる回転刃の対数は、容器100、破砕撹拌機110、回転刃体112a、112bの大きさや、固液分離の対象となるローゼルの部位等にも依存するが、1個の回転刃体に回転刃が、5対以上20対以下で設けられていることが好ましく、8対以上14対以下が特に好ましい。
1個の回転刃体に設けられた回転刃が少な過ぎると、破砕、撹拌及び/又は固液分離の効率が悪くなる場合、蒸発が抑制されて温度が上昇する場合等があり、一方、多過ぎると、過度の破砕と撹拌が行われるために、回転に負荷がかかる場合、細胞水の固液分離速度が上がり過ぎて水の蒸発熱でローゼルの温度が下がる場合等がある。
【0067】
なお、回転刃体に設けられた回転刃の上記対数は、1個の回転刃溝に1対の回転刃があるとする。例えば、図3では、1個の回転刃体に回転刃溝が10個設けられているので、1個の回転刃体に回転刃は10対設けられていることになる。
【0068】
本発明においては、破砕撹拌機110によって、真空低温分離中に、投入されたローゼルの細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、真空低温分離中のローゼルのサイズは、好ましくは0.7mm以上10mm以下、より好ましくは1.0mm以上7mm以下、特に好ましく1.3mm以上4mm以下である。このようなサイズになるように粗粉砕しつつ真空低温分離することが好ましい。
上記サイズは、粗粉砕されたローゼルの質量平均値(体積平均値)である。平板型の場合は、縦・横・厚みの平均である。
【0069】
上記サイズが小さ過ぎると、ローゼルの細胞膜を破壊する(破壊する細胞膜の割合が大きくなってしまう)場合があり、一方、上記サイズが大き過ぎると、真空低温分離に時間がかかり過ぎる等、効率よく固液分離できない場合がある。
【0070】
容器100には、更に、前記容器100内の真空度を計測する真空計108と温度計109a、109bが設けられている。これらは、固液分離工程における容器内の圧力(減圧度)と温度を測定し、固液分離時のローゼルの温度を間接的に測定するために設けられたものであり、また、固液分離の開始と終了を判定するために設けられている。
【0071】
本発明における容器100には、ローゼル及び容器100内を加熱する加熱ユニット120が設置されている。加熱ユニット120では、蒸気供給装置122によって加熱された水蒸気が、容器100(好ましくは容器100の下部半円筒部101)の周囲に設置された蒸気室121に送り込まれる。
本発明においては、加熱ユニット120による加熱水蒸気の蒸気室への流量によって加熱をコントロールし、ローゼルからの細胞水の蒸発熱を冷却に利用すべく減圧装置の気体排出量によって冷却をコントロールする。
【0072】
真空低温分離中のローゼルの温度は、上記加熱ユニット120によって、該ローゼルが有する酵素、微量成分、水、エクソソーム等を変質又は失活させないように、45℃以下に維持する。特に、固液分離中は、細胞水の蒸発熱でローゼルを冷却し、該加熱ユニット120によって加熱し、温度範囲を10℃以上45℃以下に維持することが好ましい。
固液分離中の該ローゼルの温度は、20℃以上40℃以下がより好ましく、25℃以上38℃以下が更に好ましく、30℃以上37℃以下が特に好ましく、33℃以上36℃以下が最も好ましい。
【0073】
該温度が低過ぎると、商業的規模や工業的規模を考えた場合、蒸発固液分離に時間がかかり過ぎる場合;低い温度における水の蒸気圧の低さに適応した低圧力まで、「商業的規模や工業的規模のローゼルの量に十分に対応した気体排出能力の大きさを有しつつ、真空度(減圧度)を上げられる減圧器」が、そもそも存在しない又は極めて大型(コスト大)になる場合;等がある。
【0074】
一方、該温度が高過ぎると、該ローゼルが有する細胞内物質を変質・分解・失活させてしまう場合、該ローゼルの細胞膜に障害を与えてしまい該細胞膜を正常に通過した細胞水が得られない場合等がある。
上記温度範囲であると、乾燥していないローゼルが有する、成分組成・純度、極微量成分、低沸点成分、不安定物質、エクソソーム含有物質、水等を、変質も分解もさせずに得ることができる。
真空低温分離中のローゼルの温度(範囲)は、本発明の効果を得るために極めて重要であり、たとえ投入するローゼルが個体として死んでいたとしても、通常の植物が正常にその生命を維持できる、又は、細胞が死なない上記温度範囲(特に温度上限)が望ましい。
なお、液体が容器100の気体取出し口から殆ど出てしまった後は、すなわち主たる真空低温分離が終わった後は、残渣を乾燥させる等のために、該ローゼルの温度は上記上限温度よりも高くしてもよい。
【0075】
容器100に設けられた温度計109a、109bは、破砕撹拌機110を含む容器100の熱伝導等を利用して、真空低温分離中のローゼルの温度は十分正確に測定できるようになっており、細胞水の蒸発熱でローゼルが急速に冷却されそうになっても、逆に、上記加熱ユニット120によってローゼルが急速に加熱されそうになっても、真空低温分離中のローゼルの温度は十分正確に測定できるようになっている。
【0076】
減圧器300については後述するが、減圧器300の気体排出能力を、「内容積1mの容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上」とすることによって、加熱ユニット120によってローゼルが急速に加熱されそうになっても、細胞水の蒸発熱で該ローゼルの温度を十分な速度で下げることができる。
本発明においては、細胞水の蒸発熱によって、該ローゼルの温度を前記温度の上限以下に維持するように、該容器100内を減圧しつつ固液分離する。
【0077】
該減圧器300としては、蒸発熱による冷却によって、前記したローゼルの温度範囲を好適に維持するため、上記の気体排出能力を有する水エジェクタ301(特に好ましくは水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301)が用いられる。
【0078】
1回の真空低温分離で使用するローゼルの質量は、使用する容器の体積に依存するので特に限定はないが、200g以上1500kg以下が好ましく、500g以上1000kg以下がより好ましく、1kg以上500kg以下が特に好ましい。
該質量が小さ過ぎると、バッチを繰り返して固液分離することになるので、コストアップになり商業的に使用できなくなる。また、本発明における前記した又は後記する特殊な真空低温分離条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合がある。すなわち、本発明における「真空低温分離中の圧力」、減圧器種類、気体排出能力、蒸発熱を冷却に利用すること、等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。本発明は、ローゼルの量が上記下限以上の時に特にその効果を奏する。上記下限は、本発明の真空低温分離条件が有効に働く(初めて意味を持つ)ようになる点から重要である。
【0079】
一方、1回の真空低温分離で使用するローゼルの質量が大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような、減圧器300が存在しない場合;特に、ローゼルの昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価となる場合;等がある。
【0080】
容器100の実質体積は特に限定はないが、実質体積の範囲は、本発明における細胞水の蒸発による真空低温分離の条件が有効に効くか否かの点から重要である。ローゼルの最大投入容量(L)として、すなわち投入できるローゼルの嵩(L)として、2L以上5000L以下が好ましく、4L以上2000L以下が好ましく、10L以上1000L以下が特に好ましい。なお、ローゼルの最大投入容量(L)は、前記した容器100の下部半円筒部101の体積にほぼ等しいことが好ましい。
【0081】
容器100の実質体積又は下部半円筒部101の体積が小さ過ぎると、1回の処理量が少なくなり過ぎてコストアップになり、商業的に使用できなくなる場合等がある。
一方、大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような減圧器300がそもそも存在しない場合;具体的には、特に、ローゼルの昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しないか又は極めて高価となる場合;容器100の筐体に減圧負荷がかかり過ぎる場合;等がある。
【0082】
本発明のローゼル内液体においては、上記容器の体積をV[L]とし、該容器に投入されるローゼルの質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の5倍以上20倍以下に設定して得られたものであることが好ましく、7倍以上18倍以下がより好ましく、9倍以上16倍以下が特に好ましい。
V[L]/M[kg]の値が小さ過ぎると、破砕、撹拌等を良好に実行できない場合がある。
一方、V[L]/M[kg]の値が大き過ぎると、大きな容器100が無駄になる場合;容器100が大き過ぎて、減圧器300の気体排出能力が十分に発揮できず、その結果、蒸発熱によるローゼルの冷却ができず、該ローゼルの温度が前記温度範囲の上限を超えてしまう場合;等がある。
【0083】
本発明における容器100には、ローゼルから発生する気体を取り出す気体取出口130が設置されている。気体取出口130の近傍も、十分な熱伝導等で前記温度範囲に維持して、気体取出口130の近傍で水滴が生じないようにする(結露させないようにする)ことが好ましい。
【0084】
本発明のローゼル内液体の製造における真空低温分離装置には、例えば図1に示したように、容器100の工程的に後段に、気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200が具備されている。
該冷却器200の冷却媒体としては、「0℃以上であり、上記容器100の気体取出口130から取り出された気体の温度より5℃以上低い(特に好ましくは7℃以上低い)温度」の水を用いることが、冷却して液化する効率の点から好ましい。
冷却媒体である水の温度が高過ぎると、固液分離気体の一部が液化されず収率が落ちる場合がある。このような冷却器200としては、公知のものが用いられ得る。
【0085】
本発明のローゼル内液体の製造における真空低温分離装置には、例えば図1に示したように、冷却器200の後ろに、容器100内を減圧する減圧器300が具備されている。
該減圧器300としては、水の蒸発熱による吸熱で、該ローゼルの温度が45℃を超えないように、又は、所定の好ましい温度を超えないように、内容積が1mの容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する減圧器300を用いることが好ましい。
【0086】
容器100の内容積が大きければ、より大きい気体排出能力を有する減圧器300を用いる必要がある。容器100の内容積に比較して、小さい気体排出能力しか有さない減圧器300を用いると(容器100の内容積に応じて気体排出能力を大きくしていかないと)、水の蒸発熱でローゼルを冷却することができ難くなり、該ローゼルが昇温してしまう場合がある。
【0087】
内容積が1mの容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力が好ましく、常圧体積22m/時間以上300m/時間以下がより好ましく、常圧体積25m/時間以上200m/時間以下が更に好ましく、常圧体積27m/時間以上150m/時間以下が特に好ましい。
減圧器300の気体排出能力が小さ過ぎると、固液分離効率が落ちる場合、水の蒸発熱によるローゼルの過昇温防止効果が得られ難くなって、該ローゼルの温度が上がり過ぎる場合等がある。
減圧器300の気体排出能力が大き過ぎると、そもそも下記する減圧度を達成しつつ、このような大きな気体排出能力を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価若しくは極めて大型となる場合がある。
【0088】
図1に一例を示したように、水タンク303に水(好ましくは、予め水チリングユニットで冷却した水)を貯め、水循環ポンプ302で加圧した水を送液し、水エジェクタ301において該加圧水を噴出させることにより減圧することが好ましい。流動液体は静止液体より圧力が低い性質(ベルヌーイの定理)を用いて減圧して気体を排出する。
【0089】
本発明においては、上記真空低温分離を、101.3kPa(1気圧)に対し、-80kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことが好ましい。減圧器300による減圧度は、真空低温分離中は、該容器内の圧力を、101.3kPa(1気圧)に対し、-80kPa以上低くすることが好ましい。
減圧器300による減圧度(圧力の絶対値)は、真空低温分離中は、該容器内の圧力を1kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-100.3kPa]以上10kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-91.3kPa]以下に維持することがより好ましい。
更に好ましくは1.3kPa(1気圧に対して、-100kPa)以上9kPa(1気圧に対して、-92.3kPa)以下であり、特に好ましくは2kPa(1気圧に対して、-99.3kPa)以上8.6kPa(1気圧に対して、-92.7kPa)以下であり、特に好ましくは3.3kPa(1気圧に対して、-98kPa)以上8.3kPa(1気圧に対して、-93kPa)以下である。
【0090】
減圧度が低過ぎると(圧力が高過ぎると)、水の蒸発熱によるローゼルの冷却が期待できずに、ローゼルの温度が高くなり過ぎる場合、真空低温分離に時間がかかり過ぎる場合等があり、その結果、細胞に含まれる酵素等の細胞内物質が失活する場合がある。また、細胞膜を通過して細胞水を水蒸気として真空低温分離できない場合がある。
一方、減圧度が高過ぎると(圧力が低過ぎると)、下記する「該圧力における水の沸点」と「ローゼルの前記温度範囲」との関係で、そこまで低圧力にする必要がない場合があり、また、そもそも前記した気体排出能力を有した上に、そこまで減圧度を上げられる減圧器300が存在しない又は極めて大型で極めて高価になる場合等がある。
【0091】
温度(℃) 水の蒸気圧(kPa)
10 1.2
20 2.3
30 4.2
40 7.4
50 12.3
【0092】
減圧器300による容器内圧力(減圧度)は、真空低温分離中は、固液分離対象であるローゼルの温度における水の蒸気圧の0.1倍以上1倍以下が好ましく、0.2倍以上0.99倍以下がより好ましく、0.4倍以上0.95倍以下が更に好ましく、0.6倍以上0.9倍以下が特に好ましい。
容器内圧力が上記下限以上であると、過度の蒸発熱によるローゼルや細胞水の冷却がない。一方、容器内圧力が上記上限以下であると、商業的規模で十分な気体排出能力を有することを条件で、そのような圧力を実現できる減圧器が商業的規模で存在可能であり、また、細胞水が穏やかに沸騰して細胞膜を破損しない。
【0093】
上記減圧器300は、水を噴射することによって減圧を達成する水エジェクタ301であることが前記理由から好ましく、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301であることが、高い減圧度と共に高い気体排出能力を有するために特に好ましい。すなわち、減圧度と気体排出能力の両立ができ、前記本発明の効果を奏し易い点から好ましい。水循環ポンプ302を有して横噴射型であると、特に気体排出能力を上げ易い。
【0094】
減圧器には、一般的に、ロータリーポンプ、オイル拡散ポンプ、水銀拡散ポンプ、差動ポンプ等がある。例えば、ロータリーポンプでは約1Pa(10-2mmHg)、オイル拡散ポンプでは約0.1mPa(10-6mmHg)という何れも高真空度は達成できるものの気体排出能力が極めて低い。一方、一般的なエジェクタでは、通常は10kPaより高い圧力にしかならない場合が多い。
【0095】
上記気体排出能力と減圧度(真空度)の両立は、「水エジェクタ301」で好適に達成でき、特に、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタを用いることによって、好適に両立が可能である。
前記した高い気体排出能力の数値は、かかる水エジェクタで達成できるとは言っても汎用的な数値ではない。前記した高い気体排出能力の数値は、(例えば好ましい態様を下記する)水エジェクタを有する減圧器の構造(特に、吸引孔、水位、消音器等);噴射する水の温度;噴射速度;噴射ノズル径;単位時間当たりの噴射量;噴射距離等を調整して得る。
【0096】
本発明においては、上記減圧器が、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタであることが、真空低温分離中の容器内の圧力や気体排気能力等の点から好ましい。
本発明における特に好ましい「横噴射型の水エジェクタ」の態様を図4に示す。
図4に示した「横噴射型の水エジェクタ」は、水を受ける筒形の水入口片1と、該水入口片1の下流側に設けられ、該水入口片1から流入する水と吸引ガスとを混合する主管スロート6と、該主管スロート6の下流側端部に接続して設けられ、内径が末広がり形状をなすパイプからなる出力片7を有している。
更に要すれば、円筒形状をなし、該出力片7の下流側端部に設けられ、水と吸引ガスとの混合物を流す消音器12と、該消音器12に取付けられ、水が流出する際に該消音器12内に空気を取り入れて、該消音器12内の気圧の急変を防止する吸気管11とを備えている。
【0097】
また、上記した水エジェクタ301においては、水入口片1と主管スロート6と出力片7とを収容する外被管8を備え、該外被管8に、細胞水と酵素の気体を供給する吸引管3を取付け、該外被管8を消音器12に接続し、主管スロート6は、水入口片1の終端部に連接して設けられ複数個のガス吸引孔4を有する円筒形パイプからなる。
また、前記水タンク303からの水を吸込んで水入口片1より吐出する水循環ポンプ302、前記水入口片1、前記主管スロート6、前記出力片7、及び、前記消音器12を含む循環路を、前記水タンク302内の水位17より低く設定してあることが好ましい。
【0098】
図4は、水エジェクタ301とそれに連結される消音器12の概略を、水エジェクタ301を横方向に設置して水タンク303に接続する形態を示す。図4の水エジェクタ301において、水入口片1は、水の流れ抵抗を減少させるため面取りが施されている。
該水入口片1よりも直径の太い主管スロート6が入口片1に接続されている。該主管スロート6の形状は単純なパイプ形状である。
該主管スロート6の入口部には、パイプ管壁を貫通する複数個の吸引孔4が開けられており、該吸引孔4は、吸引管3を通じ真空引き(減圧)する際に、吸込みガス(細胞水と酵素の気体)を主管スロート6内に吸引するためのものである。
【0099】
主管スロート6の終端付近には、直径が主管スロート6より太いパイプ状の出方片7が連結されている。該出口片7は、出口方向に向かって末広がり状に広がる内部形状を有している。
また、水入口片1、主管スロート6、及び、出口片7を被覆する外被管8が、外側に円筒状に接続されている。これらにより、水エジェクタ301が構成される。
図4のように、該消音器12の内径は、水エジェクタ301の出力片7の出口の内径より太いパイプ形状を有する。
【0100】
図4に示す水エジェクタ入口片1には、水循環ポンプ302からの吐出配管15を、入口側フランジ2を介して接続されている。
真空引き機能は、吸引管3だけを通じて行うように、中空円形状の仕切板5が設けられている。該仕切板5の内側部は、主管スロート6の外側部に固着され、該仕切板5の外周部は、外被管8に固着され十分な気密性が保たれるようになっている。
【0101】
本発明における減圧器300の好ましい態様は、図4に示すように、水エジェクタの極めて高い気体排出能力を図るために、消音器12を漬ける水を溜めた水タンク303を備え、水エジェクタ301で使用された水は、一旦、水タンク303に蓄えられる構造になっている。水タンク303の水は、冷却水で20℃以下に冷却されることが好ましい(図1)。
水エジェクタ301は、その終端の出力側フランジ9を使い、該水タンク303の外側より固着されている。
消音器12は、フランジ10で水タンク303の内側より、出力側フランジ9と同位置に固着されている。これにより水タンク303内では、水エジェクタ301と消音器12は、水タンク303の内部で連結されている。
【0102】
消音器12は、水平部12aとその先端で直角に下方に曲げた垂直部12bとを有し、終端12cからは、吸引ガスが混合された水が水タンク303内の水中に流出する構成となっている。
また、水流を作る水循環ポンプ302に接続されている戻り配管14を通じて、水が循環して再利用される構造となっている。
戻り配管14、水循環ポンプ302、吐出配管15、水エジェクタ301、及び、消音器12からなる循環路は、水タンク303内の水位17より低く設定されている。
【0103】
消音器12における水エジェクタ301の連接部近くに、空気を取入れる吸気管11が設けられ、吸気管11の吸気口は、水タンク水位17より上部に位置させることにより、吸気口が水面下に浸らない構造とする。水タンク303には、水位17の設定のためのオーバーフロー通風口18が設置されている。
本発明における好ましい水エジェクタ301は、図4に示したように、主管スロート6に吸引孔4が設けられている。それによって、管同士の隙間からガスを吸込む従来の水エジェクタと比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
また、本発明の好ましい水エジェクタ301とそれに連結される消音器12は、図4のように、水の循環路が水タンク303の水位17より低く、横向き水平に使用設置することが可能となり、該「水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタ」は、従来のエジェクタや水エジェクタの減圧器と比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
【0104】
本発明のローゼル内液体は、45℃以下という比較的低温での水の蒸気圧を勘案しても、該蒸気圧に対し必要以上に容器100内の圧力(減圧度)を低くすることに拘らず、その分を気体排出能力の向上に振り向けて、対象となるローゼルを細胞水等の蒸発熱で冷却することで得られた。また、そのように条件設定することで、商業的工業的規模のローゼルの量(処理量)でも、十分な圧力(減圧度)と十分な気体排出能力を有する減圧器300が存在し得る。
【0105】
ローゼル内液体は、減圧器300として、該ローゼルが有する細胞内物質を失活させないために、細胞水等の水の蒸発熱で該ローゼルの温度が45℃を超えないように(好ましくは前記した上限温度を超えないように)、内容積が1mの容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用い、該水エジェクタ301によって、該容器内の圧力を10kPa以下に維持して該ローゼルを真空低温分離して得られたものが好ましい。
【0106】
主たる真空低温分離(固液分離初期から、容器に投入した固液分離対象のローゼルの90質量%が固液分離されるまで)に要する時間は、投入量にもより特に限定はされないが、1時間以上24時間以下が好ましく、3時間以上20時間以下がより好ましく、4時間以上16時間以下が特に好ましい。
【0107】
時間が短過ぎる場合は、蒸発熱による冷却ができないで昇温する場合、そもそも本格生産規模で、50℃以下(好ましくは前記温度以下)と言う比較的低温で、短時間で細胞水を蒸発させるだけの減圧器がない又は極めて大型になる場合等がある。
一方、時間が長過ぎる場合は、時間が無駄でコストアップになる場合;本発明における前記又は後記した特殊な固液分離条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合;等がある。すなわち、本発明における、真空低温分離中の圧力、減圧器種類、気体排出能力、「蒸発熱を冷却に利用すること」等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。
【0108】
本発明における真空低温分離装置には、例えば図1図2に示したように、上記冷却器200で冷却されて液化した液体(液相)を回収し、そこからローゼル内液体を獲得する回収獲得容器400が具備されている。
一般に、上記冷却器200からの液体を回収獲得容器400に貯めると、下層に水相(水層)401が、上層に油相(油層)402が位置する場合があるが、ローゼルの場合、水相(水層)401のみであるので、液体取出しバルブ405を開いて、水相(水層)取出し口404から、水相(水層)401であるローゼル内液体を最終容器(図示せず)に抜き出すことができる。
本発明のローゼル内液体では、上記回収獲得容器400に回収された液体Bから、比重の差を利用して、下層の水相401と上層の油相402を別々に獲得することも好ましく、その水相401だけをローゼル内液体として用いることもできる。
【0109】
本発明のローゼル内液体は、下記に限定はされないが、具体的には例えば下記のようにして得られる。
まず、真空低温分離作業開始に当り、冷却水供給装置に冷却水を充填し、冷却器200に冷却水を循環させる。次いで、ローゼルを植物投入口103から容器100内に投入して植物投入口蓋104を閉じる。
そして、破砕撹拌機110は、図2の矢印Rの回転方向に回転させ、容器100内のローゼルを撹拌しながら、回転刃113a、113bと凸型固定刃111との間でローゼルを破砕する。
かかる破砕撹拌機110によって破砕することで、細胞膜を殆ど破壊せず、また破砕しながら真空低温分離することで、細胞水等の細胞内物質の「変性」や「散逸による減量」を防ぐことができる。
【0110】
上記撹拌・破砕と同時に、蒸気供給装置から蒸気室121内に加熱用蒸気を供給することにより、外部から熱を加える。容器100に加えられた熱は、ローゼルに伝達され、ローゼルが破砕撹拌機110によって撹拌されることにより、真空低温分離が促進されると共に温度等が均一になる。この真空低温分離は、ローゼルが、回転刃113a、113bと凸型固定刃111とによって粗破砕されて小さくなることによって更に促進され均一になる。
その際、蒸気室121内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調整したり、減圧器300である水エジェクタ301に供給する水の量・圧力・噴射速度等を調整して気体排出能力や容器内の圧力を適切に設定したりして、ローゼルの温度を45℃以下(更には、上記した(より)好ましい範囲)に維持する。
【0111】
水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301等の減圧器300で吸引することにより、容器100内の気体、すなわち、固液分離液の蒸気及び空気を、気体配管131を通じて吸引し、容器100内のローゼルに含まれている「揮発成分である細胞内物質」と細胞水の蒸発を開始させる。その際、減圧器300で吸引する量や吸引力を調節して、固液分離時の圧力(減圧度)を、前記した好ましい範囲にする。
容器100内のローゼルに含まれる「揮発成分である細胞内物質の蒸気」及び「細胞水の主成分である水の蒸気」は、気体配管131を通して吸引され、冷却器200に導入され液化されて、回収液となって回収獲得容器400内に溜まる。
【0112】
回収獲得容器400内に、回収液が所定量まで貯まったら、減圧器300での吸引を停止し回収液を回収する。回収液は、要すれば静置して分液をして、水相(水層)401を水相(水層)取出し口404から獲得してローゼル内液体とする。
ローゼル内液体を獲得後、容器100内に残ったローゼル内固体を、固体粉末取出し口140から回収する、又は、容器100の上から、さじ等ですくい出して回収する。該ローゼル内固体は、容器100の上から、さじ等ですくい出して回収することが、残水が入らない等のために好ましい。
【0113】
前記した通り、固液分離方法や抽出方法としては、前記した通り、水蒸気蒸留法、直接抽出法、溶媒抽出法、圧搾法、超臨界抽出法、フリーズドライ法等、種々の方法が知られている。
このうち、水蒸気蒸留法や直接抽出法では、ローゼルと媒体を(通常は60℃以上に)加熱するため、酵素を含め細胞内物質(有効成分)が変性・熱分解する、散逸する等で、細胞内物質(有効成分)をそのまま含むものが十分に得られない。なお、ローゼルが45℃より高くなると、酵素等の細胞内物質が失活する。
また、水蒸気蒸留法では、抽出に用いた水蒸気が液化した水が細胞水に混合することで、全て天然由来の抽出液ではなくなるし、抽出残渣物に外部からの水(水蒸気(由来物))が混入することになる。
【0114】
また、溶媒抽出法では、水溶性成分が抽出され難い、抽出溶媒が抽出液中に残留する、等により、ローゼル内液体として好適に使用することが困難になり、また、その溶媒を除去する際に有効成分である細胞内物質も除去されてしまう。
また、溶媒抽出法では、溶媒を使用することが必須であるため、植物由来の細胞水を得ることが難しい。
更に、従来の方法では、得られる液体の収量が一般には少ない。抽出溶媒として水を用いる場合、抽出のために加えた水が残留するので、全て天然由来であるとは言えない。
【0115】
圧搾法でも、抽出溶媒として用いた油性成分が抽出液中に残留し、抽出残渣物を有効活用することが困難であり、また、その油性成分を完全に除去することが不可能である。また、抽出溶媒を使用するため、植物由来の水溶性の細胞内物質を得ることが難しい。
抽出溶媒を使用しない圧搾法は、採取するときに沸点が100℃より高い油(例えば、ごま油、つばき油等)を通常は用いるが、水性液を採取する場合や揮発性物質を採取する場合は、収率が著しく落ちるため使用できない。
超臨界抽出法では、高圧を要するので高価な設備を必要とする、媒体由来の極微量の不純物が混入する等の問題点がある。
また、フリーズドライ法では、水が氷になるのでその際に細胞膜が破壊される。
【0116】
また、ローゼルを破砕・撹拌をしながらではなく、一旦破砕・撹拌をした後に固液分離する方法では、細胞内物質(有効成分)が効率的に固液分離できない場合、ローゼル内液体の収率が落ちる場合等がある。
また、ローゼルを「破砕しつつではなく加熱・減圧」して固液分離する通常の方法では、好適に固液分離できない場合、すなわち、ローゼルの組織や細胞の中に含まれている種々の成分を効率的に獲得できない場合等がある。
【0117】
なお、本発明のローゼル内液体は、水が特定の情報を有して存在している可能性があり、また、極めて多くの成分が含有されているところ、それらの成分を同定すること、それらの成分から本発明の効果を奏する有効成分を特定すること、それらの成分含有比を求めること等は、不可能であるか又はおよそ実際的でない(「不可能・非実際的事情」がある)。
従って、本発明のローゼル内液体もローゼル内固体も、製造方法を用いて特定する以外に方法がない。
【0118】
<発毛育毛剤>
本発明は、前記のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする発毛育毛剤でもある。
全てローゼル由来の成分であることを生かすために、本発明の発毛育毛剤は、前記のローゼル内液体からなるものであることが好ましい。すなわち、本発明の発毛育毛剤は、その他の成分を含有しないものであることが特に好ましい。
【0119】
本発明は、前記ローゼル内固体を、前記ローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる発毛育毛剤であって、該発毛育毛剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用することを特徴とする発毛育毛剤であることが好ましい。なお、上記したように、ローゼル内固体を使用(浸漬、濾過)しないものも好ましい。
該濾過に関しては、該ローゼル内液体に該ローゼル内固体を、所定量浸漬後に撹拌し、その後に、該ローゼル内固体の抽出残渣を濾過してなる発毛育毛剤であることが特に好ましい。
【0120】
ローゼル内固体を使用する場合には、濾過後の完成品の発毛育毛剤全体に対して、萼(がく)や総苞片由来であっても、実由来であっても、葉由来であっても、0.5質量%以上20質量%以下で浸漬して得ることが好ましいが、0.7質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上4質量%以下が特に好ましい。
ローゼル内固体の使用(浸漬)量が多過ぎても、それ以上の効果が出ない等の場合がある。また、特に萼(がく)・総苞片由来のローゼル内固体は、固体が赤色であるため(図5(a))、萼(がく)・総苞片由来のローゼル内固体を使用する場合は、発毛育毛剤が赤く着色してしまう等の場合がある。
【0121】
上記浸漬時間は、剤の効果が上がれば特に限定はないが、液温が15℃~35℃の場合には(に換算して)、30分~2日が好ましく、1時間~24時間がより好ましく、2時間~8時間が特に好ましい。
【0122】
前記ローゼル内固体を、蒸留水、脱塩水等の純水に浸漬後に、該ローゼル内固体の抽出残渣を濾過してなる液体は、全く発毛育毛剤としての効果を奏さなかった(実施例を参照)。
このことから、蒸留水には、ローゼル内固体の有効成分が殆ど溶解しない;ローゼル内液体の効果が極めて大きい;等の事実が示唆された。
【0123】
<美肌剤>
本発明は、前記のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする美肌剤でもある。
全てローゼル由来の成分であることを生かすために、本発明の美肌剤は、前記のローゼル内液体からなるものであることが好ましい。すなわち、本発明の美肌剤は、その他の成分を含有しないものであることが特に好ましい。従って、本発明の美肌剤は、特に粘度の低い美容液や化粧水等として有用である。
【0124】
本発明は、前記ローゼル内固体を、前記ローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる美肌剤であって、該美肌剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用することを特徴とする美肌剤であることが好ましい。なお、上記したように、ローゼル内固体を使用(浸漬、濾過)しないものも好ましい。
該濾過に関しては、該ローゼル内液体に該ローゼル内固体を、所定量浸漬後に撹拌し、その後に、該ローゼル内固体の抽出残渣を濾過してなる美肌剤であることが特に好ましい。
【0125】
その他、ローゼル内固体の(特に)好ましい使用量(浸漬量)、(特に)好ましい理由、(特に)好ましい浸漬時間等は、発毛育毛剤の箇所で上記したものと同様である。
【0126】
前記ローゼル内固体を、蒸留水、脱塩水等の純水に浸漬後に、該ローゼル内固体の抽出残渣を濾過してなる液体は、全く美肌剤としての効果を奏さなかった(実施例を参照)。
このことから、蒸留水には、ローゼル内固体の有効成分が殆ど溶解しない;ローゼル内液体の効果が極めて大きい;等の事実が示唆された。
【0127】
<血圧調整剤>
本発明は、前記のローゼル内液体を含有するものであることを特徴とする血圧調整剤でもある。
全てローゼル由来の成分であることを生かすために、本発明の血圧調整剤は、前記のローゼル内液体からなるものであることが好ましい。すなわち、本発明の血圧調整剤は、その他の成分を含有しないものであることが特に好ましい。従って、本発明の血圧調整剤は、舌下剤、経口剤として特に有用である。
【0128】
本発明は、前記ローゼル内固体を、前記ローゼル内液体に浸漬後に濾過してなる血圧調整剤であって、該美肌剤全体に対して該ローゼル内固体を、0.5質量%以上20質量%以下で使用することを特徴とする血圧調整剤であることが好ましい。なお、上記したように、ローゼル内固体を使用(浸漬、濾過)しないものも好ましい。
該濾過に関しては、該ローゼル内液体に該ローゼル内固体を、所定量浸漬後に撹拌し、その後に、該ローゼル内固体の抽出残渣を濾過してなる美肌剤であることが特に好ましい。
【0129】
その他、ローゼル内固体の(特に)好ましい使用量(浸漬量)、(特に)好ましい理由、(特に)好ましい浸漬時間等は、発毛育毛剤の箇所で上記したものと同様である。
【0130】
前記ローゼル内固体を、蒸留水、脱塩水等の純水に浸漬後に、該ローゼル内固体の抽出残渣を濾過してなる液体は、全く血圧調整剤としての効果を奏さなかった(実施例を参照)。
このことから、蒸留水には、ローゼル内固体の有効成分が殆ど溶解しない;ローゼル内液体の効果が極めて大きい;等の事実が示唆された。
【0131】
<作用・原理>
従来行われていた抽出法では、本発明の効果を奏しない。以下の作用・原理に限定されるものではないが、その原因として以下が考えられる。
(1)生物的・生化学的活性の保持、(2)非耐熱性物質の保持、(3)酵素変質の抑制、(4)低沸点成分の保持、(5)真空低温分離中のコンタミ防止、等が重要であるが、従来法では、何れもできていない。
【0132】
しかしながら、本発明では、細胞水(液体)が低温で分離できるため、細胞にストレスを与えず、細胞水の活性が保持されつつ固液分離できる。
ローゼルの細胞水は、人の細胞浸透液に似通っているため、本発明のローゼル内液体は、ヒトにおいても浸透性や親水性が極めて高いと考えられる。
【実施例0133】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
製造例1
<ローゼルの萼(がく)と総苞片からローゼル内液体の調製>
乾燥していないローゼルの萼(がく)と総苞片を、そのままの状態で、約30L(約3kg)を、図1~3に示した容器100(投入可能容量V=450L)に投入し、図3に示したような回転刃体112a、112bを有する破砕撹拌機110によって、回転刃体を4回転/分で回転させ、粗破砕しながら真空低温分離した。
その際、該破砕撹拌機110(1.5kW)によって、少なくとも主たる真空低温分離中は、ローゼルの萼や総苞片の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該ローゼルを撹拌しつつ、容器100内で、1.4mm~15mm(厚さと長さの平均値)に粗破砕した。
【0135】
蒸気量28~140kg/hrの加熱ユニット120で加熱すると共に、水エジェクタ301で真空引きし、水の蒸発熱でローゼルの萼(がく)や総苞片の温度を35℃±2℃に保った。水エジェクタ301の水温と、冷却器200の冷却水の水温は、共に10℃±2℃に保った。
使用した水エジェクタ301は、横噴射型の水エジェクタ(3.7kW)であり、引かれる方がオープンの場合、常圧体積20m/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタであった。
【0136】
容器100内の圧力は、真空低温分離中は、3.3kPa(1気圧に対して、-98.0kPa)以上6.3kPa(1気圧に対して、-95.0kPa)以下に常に保った。主たる真空低温分離時間は6時間であった。
【0137】
真空低温分離した後の液体Bを回収獲得容器400に回収した後、液体取出しバルブ405を開いて、水相(水層)取出し口404からローゼル内液体Bを回収・獲得した。
原料のローゼルの萼・総苞片と得られたローゼル内液体は、容器内でも冷却・回収時でも獲得時でも、常に35℃±2℃を保った。
【0138】
得られた「ローゼル内液体」は、水を加えて約50~80℃で加熱抽出した液や水蒸気蒸留法で得た液とは、異なった香りがした。成分組成が異なっているものと推認された。
また、常に35℃±2℃を保ったので、細胞水、エクソソーム構成物質、酵素等の細胞内物質が失活・分解・変質しないで残っている可能性が高い。
【0139】
製造例2
<ローゼルの萼(がく)と総苞片からローゼル内固体の調製>
製造例1でローゼル内液体を獲得した後、容器100内に残ったローゼル内固体Cを、容器100の上から、さじを用いて、すくい出すことにより回収・獲得した。図6(a)に、その写真を示す。
【0140】
製造例3
<ローゼルの実からローゼル内液体の調製>
ローゼルの萼(がく)と総苞片をローゼルの実に替えて、更に、「差し渡し長さ約1.5mm~約7mmに予め切ったもの」を使用した以外は製造例1と同様にして、ローゼルの実からローゼル内液体を回収・獲得した。
【0141】
製造例4
<ローゼルの実からローゼル内固体の調製>
ローゼルの萼(がく)と総苞片をローゼルの実に替えた以外は製造例2と同様にして、ローゼルの実からローゼル内固体を回収・獲得した。図6(b)に、その写真を示す。
【0142】
比較製造例1
<ローゼルの萼(がく)と総苞片から溶媒(エタノール)抽出して液体を調製>
製造例1と同様のローゼルの萼(がく)と総苞片を、製造例1と同様に、そのまま、エタノールを溶媒として、78℃で環流させながらエタノール抽出をした。
抽出後、濾過して液体を得て、該液体中のエタノールを留去したが、得られた水溶液は少量であり、殆どの細胞水は揮散してしまった。得られた液体を「比較液体G」とする。
【0143】
比較製造例2
<ローゼルの萼(がく)と総苞片から溶媒(エタノール)抽出して固体を調製>
比較製造例1で抽出後、固体残渣を濾別し、25℃で風乾した。得られた固体を「比較固体G」とする。
【0144】
比較製造例3
<ローゼルの実から溶媒(エタノール)抽出して液体を調製>
ローゼルの萼(がく)と総苞片をローゼルの実に替えた以外は、比較製造例1と同様にして、液体を得た。すなわち、ローゼルの実を製造例1と同様に裁断して、エタノールを溶媒として、78℃で環流させながらエタノール抽出をした。
抽出後、濾過して液体を得て、該液体中のエタノールを留去したが、得られた水溶液は少量であり、殆どの細胞水は揮散してしまった。得られた液体を「比較液体M」とする。
【0145】
比較製造例4
<ローゼルの実から溶媒(エタノール)抽出して固体を調製>
ローゼルの萼(がく)と総苞片をローゼルの実に替えた以外は、比較製造例2と同様にして、固体を得た。すなわち、ローゼルの実から比較製造例1で抽出後、固体残渣を濾別し、25℃で風乾した。得られた固体を「比較固体M」とする。
【0146】
比較製造例5
<ローゼルの萼(がく)と総苞片又はローゼルの実から水蒸気蒸留で液体と固体を調製>
ローゼルの萼(がく)と総苞片、又は、ローゼルの実から、水蒸気蒸留で液体と固体を調製しようとしたが、媒体の水蒸気由来の水を留去するときに、ローゼル内の液体も留去されて、殆どの細胞水は揮散してしまい、殆ど液体を獲得できなかった。
若干得られた液体を「比較液体G’」、水蒸気蒸留で残ったものを風乾して得られた固体を「比較固体M’」とする。
【0147】
調製例1
<評価サンプルの調製>
以下のサンプルA、B、C、D;比較サンプルP、Q、Rを、以下のように調製した。
【0148】
サンプルA:製造例1で得られた萼(がく)と総苞片由来のローゼル内液体単身(100質量%)である液体。
サンプルB:製造例1で得られた萼(がく)と総苞片由来のローゼル内液体98質量%と、製造例2で得られた萼(がく)と総苞片由来のローゼル内固体2質量%とを混合して、25℃で6時間撹拌混合し、その後、ろ紙で濾過して得た液体。
サンプルC:製造例3で得られた実由来のローゼル内液体単身(100質量%)である液体。
サンプルD:製造例3で得られた実由来のローゼル内液体98質量%と、製造例4で得られた実由来のローゼル内固体2質量%とを混合して、25℃で6時間撹拌混合し、その後、不織布フィルターで濾過して得た液体。
【0149】
比較サンプルP:蒸留水。
比較サンプルQ:蒸留水98質量%と、製造例2で得られた萼(がく)と総苞片由来のローゼル内固体2質量%とを混合して、25℃で6時間撹拌混合し、その後、ろ紙で濾過して得た液体。
比較サンプルR:蒸留水98質量%と、製造例4で得られた実由来のローゼル内固体2質量%とを混合して、25℃で6時間撹拌混合し、その後、ろ紙で濾過して得た液体。
【0150】
評価例1
<発毛・育毛効果の評価>
調製例1で得られたサンプルA、B、C、D、比較サンプルP、Q、Rの計7種類を、髪の薄い成人男性10名に対し、以下のように評価してもらった。
【0151】
7種類の(比較)サンプルを、頭皮の7カ所に、30日間に亘り、毎日、それぞれ塗布してもらい、発毛効果と育毛効果を以下の基準でそれぞれ判定してもらった。発毛効果と育毛効果を合計した得点を7カ所ごとに集計し、10名の合計点を算出した(100点満点、最低点20点)。
【0152】
<<発毛効果の判定基準>>
5点:発毛効果が明らかに得られた。
4点:発毛効果が得られた。
3点:発毛効果がやや得られた。
2点:発毛効果が殆ど得られなかった。
1点:発毛効果が全く得られなかった。
【0153】
<<育毛効果の判定基準>>
5点:育毛効果が明らかに得られた。
4点:育毛効果が得られた。
3点:育毛効果がやや得られた。
2点:育毛効果が殆ど得られなかった。
1点:育毛効果が全く得られなかった。
【0154】
<<発毛・育毛効果の結果>>
以下の表1から分かる通り、ローゼルの萼と総苞片、又は、ローゼルの実を、真空低温分離して得られたローゼル内液体を含有するサンプルA~Dは、何れも発毛・育毛効果が認められた。
特に、該ローゼル内液体中に、ローゼルの萼と総苞片、又は、ローゼルの実を、真空低温分離して得られたローゼル内固体を2質量%含有させたサンプルB、Dは、ローゼル内液体のみからなるサンプルA、Cより、発毛・育毛効果が上昇した。
【0155】
一方、蒸留水(比較サンプルP)では効果がなく、蒸留水にローゼルの萼と総苞片、又は、実を真空低温分離して得られたローゼル内固体を2質量%含有させたサンプルQ、Rも、蒸留水(比較サンプルP)と比べて、発毛・育毛効果にほとんど差がなかった(上昇しなかった)。
【0156】
このことから、蒸留水には、ローゼル内固体の有効成分が殆ど溶解しない;ローゼル内液体の効果が大きい;等が示唆された。
サンプルA~Dは、何れも、発毛・育毛剤として効果を発揮することが分かった。
【0157】
【表1】
【0158】
評価例2
<美肌効果の評価>
調製例1で得られたサンプルA、B、C、D、比較サンプルP、Q、Rの計7種類を、成人男性と女性の計10名に対し、以下のように評価してもらった。
【0159】
7種類の(比較)サンプルを、二の腕の7カ所に、30日間に亘り、毎日、それぞれ塗布してもらい、美肌効果を以下の基準でそれぞれ判定してもらった。「さらさら感向上効果」と「きめが整う効果」を合計した得点を7カ所ごとに集計し、10名の合計点を算出した(100点満点、最低点20点)。
【0160】
<<さらさら感向上効果の判定基準>>
5点:肌が元気になり、明らかに肌がさらさらになった。
4点:肌がやや元気になり、肌がややさらさらになった。
3点:肌が若干さらさらになった。
2点:肌のさらさら感の向上が殆ど得られなかった。
1点:肌のさらさら感の向上が全く得られなかった。
【0161】
<<肌のきめ向上の判定基準>>
5点:肌が元気になり、肌のきめが整った。
4点:肌がやや元気になり、肌のきめがやや整った。
3点:肌のきめが若干整った。
2点:肌のきめが整う効果が殆ど得られなかった。
1点:肌のきめが整う効果が全く得られなかった。
【0162】
<<美肌効果の結果>>
以下の表2から分かる通り、ローゼルの萼と総苞片、又は、実を、真空低温分離して得られたローゼル内液体を含有するサンプルA~Dは、何れも美肌効果が認められた。
特に、該ローゼル内液体中に、ローゼルの萼と総苞片、又は、実を、真空低温分離して得られたローゼル内固体を2質量%含有させたサンプルB、Dは、ローゼル内液体のみからなるサンプルA、Cより、美肌効果が上昇した。
【0163】
一方、蒸留水(比較サンプルP)では効果がなく、蒸留水にローゼルの萼と総苞片、又は、実を真空低温分離して得られたローゼル内固体を2質量%含有させたサンプルQ、Rも、蒸留水(比較サンプルP)と比べて、美肌効果にほとんど差がなかった(上昇しなかった)。
【0164】
このことから、蒸留水には、ローゼル内固体の有効成分が殆ど溶解しない;ローゼル内液体の効果が大きい;等が示唆された。
サンプルA~Dは、何れも、美肌剤として効果を発揮することが分かった。
【0165】
【表2】
【0166】
評価例3
<血圧調整効果の評価>
調製例1で得られたサンプルA、B、C、D、比較サンプルP、Q、Rの計7種類を、血圧が高めの成人男性と女性計10名に対し、それぞれのサンプルを30日間、7サンプルで計7カ月間、以下のように摂取してもらい、以下のように評価してもらった。
【0167】
1種類の(比較)サンプルを、1日に1回、舌下に2~3mLを2分間保持してもらい、その後、飲み込んでもらった。
【0168】
収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)を1回に5回測定してもらい平均値を出し、血圧調整効果を以下の基準でそれぞれ判定してもらった。収縮期血圧と拡張期血圧の評価点を合計し、10名の合計点を算出した(100点満点、最低点20点)。
【0169】
<<収縮期血圧の低下の判定基準>>
5点:10mmHg以上低下した。
4点:約8mmHg低下した。
3点:約5mmHg低下した。
2点:殆ど低下しなかったか、2mmHg以下低下した。
1点:全く低下しなかった。
【0170】
<<拡張期血圧の低下の判定基準>>
5点:7mmHg以上低下した。
4点:約5mmHg低下した。
3点:約3mmHg低下した。
2点:殆ど低下しなかったか、1mmHg以下低下した。
1点:全く低下しなかった。
【0171】
<<血圧調整効果の結果>>
以下の表3から分かる通り、ローゼルの萼・総苞片又は実を真空低温分離して得られたローゼル内液体を含有するサンプルA~Dは、何れも血圧調整効果が認められた。
特に、該ローゼル内液体中に、ローゼルの萼と総苞片又は実を真空低温分離して得られたローゼル内固体を2質量%含有させたサンプルB、Dは、ローゼル内液体のみからなるサンプルA、Cより、血圧調整効果が上昇した。
【0172】
一方、蒸留水(比較サンプルP)では効果がなく、蒸留水にローゼルの萼と総苞片、又は、ローゼルの実を、真空低温分離して得られたローゼル内固体を2質量%含有させたサンプルQ、Rも、蒸留水(比較サンプルP)と比べて、血圧調整効果にほとんど差がなかった(上昇しなかった)。
【0173】
このことから、蒸留水には、ローゼル内固体の有効成分が殆ど溶解しない;ローゼル内液体の効果が大きい;等が示唆された。
サンプルA~Dは、何れも、血圧調整剤として効果を発揮することが分かった。
【0174】
【表3】
【0175】
調製例2
前記した比較製造例1~5で製造した(溶媒抽出で製造した)液体と固体を使用して、以下の表4の内容(組成)で、比較サンプルS、T、U、Vを調製した。比較サンプルT、Vでは、調製例1と同様に、固体を液体中に懸濁させ、25℃で6時間、撹拌混合し、その後、不織布フィルターで濾過して液体を得た。。
なお、比較製造例5の水蒸気蒸留では、ローゼル内の液体が得られなかったので評価できなかった。
【0176】
【表4】
【0177】
評価例4
<発毛・育毛効果、美肌効果、血圧調整効果>
評価例1~3と同様に評価したところ、比較サンプルS、T、U、Vは何れも、発毛・育毛効果、美肌効果、血圧調整効果の何れもが殆ど見られなかった(何れも30点未満であった)。
【0178】
「本発明における真空低温分離方法で分離したローゼル内液体」、及び、「該ローゼル内液体に、本発明における真空低温分離方法で分離したローゼル内固体を混合して濾過して得られる液体」によって初めて著しい発毛・育毛効果、美肌効果、血圧調整効果が得られたのであって、従来の抽出方法では該効果が得られなかった。
【0179】
製造例5、調製例3、評価例5
<ローゼルの葉からローゼル内液体とローゼル内固体の調製>
<発毛・育毛効果>
ローゼルの萼(がく)と総苞片又は実を、ローゼルの葉に替えた以外は、上記と同様にして、ローゼル内液体とローゼル内固体を回収・獲得した。
「葉由来液体98質量%+葉由来固体2質量%」で、上記と同様にして評価したところ、著しい発毛・育毛効果が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明のローゼル内液体やローゼル内固体は、今までの他の抽出方法によるローゼルからの抽出物や、乾燥物からの抽出物とは、成分(組成)を異にしていると考えられ、また、実質的に完全にローゼル由来のものであり、また、真空低温分離工程において細胞内の物質を分解させるような熱をかけず、溶媒も使用しないので、剤として極めて優れている。
従って、本発明は、一般食品、健康食品、化粧品、医薬品等の製造分野や応用分野;農業等の生産分野等においても、広く実施・利用されるものである。
【符号の説明】
【0181】
1 水入口片
2 入口側フランジ
3 吸引管
4 吸引孔
5 仕切板
6 主管スロート
7 出方片
8 外被管
9 出力側フランジ
10 フランジ
11 吸気管
12 消音器
12a 水平部
12b 垂直部
12c 終端
14 戻り配管
15 吐出配管
17 水タンク水位
18 オーバーフロー通風口
100 容器
101 下部半円筒部
102 上部角形部
103 植物投入口
104 植物投入口蓋
105a 端壁
105b 端壁
106a 端板
106b 端板
107 傾斜面
108 真空計
109a 温度計
109b 温度計
110 破砕撹拌機
111 凸型固定刃
112a 回転刃体
112b 回転刃体
113a 回転刃
113b 回転刃
114a 回転刃溝
114b 回転刃溝
115a 「く」の字
115b 「く」の字
120 加熱ユニット(蒸気室121+蒸気供給装置122)
121 蒸気室
122 蒸気供給装置
130 気体取出口
131 気体配管
140 固体粉末取出口
200 冷却器
300 減圧器
301 水エジェクタ
302 水循環ポンプ
303 水タンク
400 回収獲得容器
401 水相(水層、ローゼル内液体)
404 水相(水層、ローゼル内液体)取出し口
405 液体取出しバルブ
B ローゼル内液体
C ローゼル内固体
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6