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特開2024-167746投影システムの制御装置、投影システムの制御方法、プログラム、投影システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167746
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】投影システムの制御装置、投影システムの制御方法、プログラム、投影システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20241127BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H04N5/74 Z
G02B26/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084024
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】推名 兼士
【テーマコード(参考)】
2H045
5C058
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB38
2H045BA12
5C058BA35
5C058EA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡素な構成で故障診断機能を実現する投影システム、その制御装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】投影システムにおいて、制御装置のシステム制御部11は、第1クロック信号を生成するシステム用クロック生成部62と、第2クロック信号を生成する監視クロック生成部61と、第1クロック信号を用いてレーザ光源及び光偏向器の動作を制御する光源駆動制御部52と、第2クロックを用いて制御部の動作を監視する同期信号監視部70と、水平駆動同期信号、垂直駆動同期信号、水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成する第1~第3処理部53~55を含む。同期信号監視部は、水平駆動同期信号又は垂直駆動同期信号の少なくとも一方が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を制御部へ出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源及び光偏向器を備える投影システムにおいて当該レーザ光源及び光偏向器の動作を制御するための装置であって、
第1クロック信号を生成する第1クロック生成部と、
前記第1クロック信号とは異なる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部と、
前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御する制御部と、
前記第2クロックを用いて前記制御部の動作を監視する監視部と、
前記制御部によって制御されて前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成する第1処理部と、
前記制御部によって制御されて前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成する第2処理部と、
前記制御部によって制御されて前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成する第3処理部と、
を含み、
前記監視部は、前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力する、
投影システムの制御装置。
【請求項2】
前記第2クロック信号の周波数は、前記第1クロック信号の周波数と同一又は当該第1クロック信号の周波数よりも大きい、
請求項1に記載の投影システムの制御装置。
【請求項3】
前記監視部は、前記水平映像同期信号又は前記垂直映像同期信号の少なくとも一方の電圧が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間の長さが所定範囲外である場合に異常検出を示す第2エラー信号を前記制御部へ出力する、
請求項1に記載の投影システムの制御装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記水平映像同期信号又は前記垂直映像同期信号の少なくとも一方が前記Hレベル又は前記Lレベルのうちの一方である前記期間の長さが所定範囲外である場合であって、補正可能な条件を満たす場合には前記Hレベル又は前記Lレベルの期間を補正するための補正値を出力する、
請求項3に記載の投影システムの制御装置。
【請求項5】
前記監視部は、
前記第2クロック信号に基づいて動作し、前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号が前記Hレベル又は前記Lレベルのうちの一方である間にカウントアップする第1カウンタと、
前記第1カウンタによる第1カウンタ値が第1閾値以上となった場合に前記第1エラー信号を生成する第1異常検出部と、
を含む、請求項1に記載の投影システムの制御装置。
【請求項6】
前記監視部は、
前記第2クロック信号に基づいて動作し、前記水平映像同期信号又は前記垂直映像同期信号が前記Hレベル又は前記Lレベルのうちの一方である間にカウントアップする第2カウンタと、
前記第2カウンタによる第2カウンタ値が第2閾値以上となった場合に前記第2エラー信号を生成する第2異常検出部と、
を含む、請求項3に記載の投影システムの制御装置。
【請求項7】
投影システムにおけるレーザ光源及び光偏向器の動作を制御する制御装置において実行されるプログラムであって、
前記制御装置に、
(a)前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御すること、
(b)前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成すること、
(c)前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成すること、
(d)前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成すること、
(e)前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方の電圧が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第1クロック信号とは異なる前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力すること、
を実行させる、プログラム。
【請求項8】
投影システムにおけるレーザ光源及び光偏向器の動作を制御する制御装置において実行される制御方法であって、
前記制御装置が、
(a)前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御すること、
(b)前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成すること、
(c)前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成すること、
(d)前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成すること、
(e)前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方の電圧が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第1クロック信号とは異なる前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力すること、
を実行する、投影システムの制御方法。
【請求項9】
請求項1に記載の制御装置と、
前記制御装置と接続されたレーザ光源と、
前記制御装置と接続された光偏向器と、
を備える投影システム。
【請求項10】
前記投影システムは、電源投入時において、前記レーザ光源によるレーザ光の出力が行われる以前に、前記制御装置の前記監視部による動作を実行する、
請求項9に記載の投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投影システムの制御装置、投影システムの制御装置、プログラム、投影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-117273号公報(特許文献1)には、光偏向器を備えた照明装置が記載されている。この照明装置は、半導体光源から出射するレーザ光を光偏向器によってスクリーン上へ走査することによって映像を投影するものである。
【0003】
ところで、一般に上記のような照明装置では、システムクロック信号を用いて半導体光源や光偏向器の動作制御を行うとともに、それらの動作に異常がないかを検出するための信号処理についてもシステムクロック信号に基づいて行われる。すなわち、装置全体の動作がシステムクロック信号を基準にして実行される。このため、回路故障等の要因でシステムクロック信号に周波数異常などの不具合が発生した場合には、半導体光源や光偏向器の動作制御に支障をきたすことになるとともに、それらの動作制御の異常を検出する信号処理についても不具合を生じる可能性がある。これに対して、故障診断回路などを備えておくことも考えられるが、装置構成の複雑化やそれに伴う高コスト化を招くため、他の解決策が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-117273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示に係る具体的態様は、レーザ光源及び光偏向器を備える投影システムにおいて簡素な構成によって故障診断機能を実現することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示に係る一態様の制御装置は、レーザ光源及び光偏向器を備える投影システムにおいて当該レーザ光源及び光偏向器の動作を制御するための装置であって、
第1クロック信号を生成する第1クロック生成部と、
前記第1クロック信号とは異なる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部と、
前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御する制御部と、
前記第2クロックを用いて前記制御部の動作を監視する監視部と、
前記制御部によって制御されて前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成する第1処理部と、
前記制御部によって制御されて前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成する第2処理部と、
前記制御部によって制御されて前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成する第3処理部と、
を含み、
前記監視部は、前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力する、
投影システムの制御装置である。
[2]本開示に係る一態様の投影システムは、
前記[1]の制御装置と、
前記制御装置と接続されたレーザ光源と、
前記制御装置と接続された光偏向器と、
を備える投影システムである。
【0007】
上記構成によれば、レーザ光源及び光偏向器を備える投影システムにおいて簡素な構成によって故障診断機能を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の投影システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、システム制御部の詳細な構成を説明するためのブロック図である。
図3図3は、投影システム100における光偏向器30の駆動状態と投影状態を概念的に説明するための図である。
図4図4は、同期信号監視部70の構成例を示すブロック図である。
図5図5は、投影期間の監視動作の内容を示す概念図である。
図6図6は、駆動周波数の監視動作の内容を示す概念図である。
図7図7は、投影期間の監視動作の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、駆動周波数の監視動作の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、各信号の模式的なタイムチャートである。
図10図10は、実施例1の故障モードの内容を説明する図である。
図11図11は、モード1における模式的なタイムチャートである。
図12図12は、モード2における模式的なタイムチャートである。
図13図13は、モード3における模式的なタイムチャートである。
図14図14は、モード4における模式的なタイムチャートである。
図15図15は、実施例2の故障モードの内容を説明する図である。
図16図16は、実施例3の故障モードの内容を説明する図である。
図17図17は、実施例4の故障モードの内容を説明する図である。
図18図18は、変形実施例の故障モードの内容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の投影システムの全体構成を示す図である。図示の投影システム100は、スクリーンSに光を走査することによって映像を投影するものであり、制御装置10、レーザ光源20及び光偏向器30を含んで構成されている。
【0010】
制御装置10は、スクリーンSへ映像を投影するために、レーザ光源20及び光偏向器30の動作を制御するものである。この制御装置10は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現可能なものである。
【0011】
プログラム実行により実現される制御装置10の機能を理解しやすくするために機能ブロックを用いて説明すると、制御装置10は、システム制御部11、光源駆動部12、共振駆動信号生成部13、非共振駆動信号生成部14、共振センサ信号処理部15を含んで構成される。
【0012】
システム制御部11は、制御装置10の全体動作を制御するものである。具体的には、システム制御部11は、システム外部の装置(例えばパーソナルコンピューター等)から入力される映像信号に対して所定の情報処理を行うことにより画像データを生成し、光源駆動部12へ供給する。
【0013】
また、システム制御部11は、光偏向器30の振れ角に応じた共振センサ信号を受信して共振駆動信号との位相差を算出し、当該位相差に基づいて共振駆動信号、共振センサ信号及び非共振駆動信号の異常状態を監視する。
【0014】
システム制御部11は、光偏向器30の異常やその他の異常(例えば温度異常など)を検出した場合には、光源駆動部12や光偏向器30の動作を強制停止(例えば電源遮断など)するための異常検出信号を出力する。また、システム制御部11は、光偏向器30に対して共振駆動信号、非共振駆動信号を出力する。
【0015】
光源駆動部12は、レーザ光源20の動作を制御する。具体的には、光源駆動部12は、システム制御部11から供給される画像データ(デジタル信号)の値をアナログ信号に変換してレーザ光源20へ出力する。また、光源駆動部12は、過電流防止等の制御を行う。
【0016】
共振駆動信号生成部13は、システム制御部11から供給される共振駆動信号データ(デジタル信号)をアナログ信号に変換して光偏向器30へ出力する。
【0017】
非共振駆動信号生成部14は、システム制御部11から供給される非共振駆動信号データ(デジタル信号)をアナログ信号に変換して光偏向器30へ出力する。
【0018】
共振センサ信号処理部15は、光偏向器30から共振センサ信号を取得し、これをデジタルデータ(デジタル信号)に変換してシステム制御部11へ出力する。
【0019】
レーザ光源20は、例えばレーザーダイオードなどの半導体光源であり、制御装置10の光源駆動部12から供給される制御信号によって制御されてレーザ光を光偏向器30へ出力する。
【0020】
光偏向器30は、例えばMEMSミラーであり、レーザ光源20から入射する光を反射してスクリーンSへ投影する。光偏向器30は、共振駆動信号によって水平軸方向(H軸方向)、非共振駆動信号によって垂直軸方向(V軸方向)の駆動が制御される。また、光偏向器30は、水平軸方向の振れ角に応じて変化する電圧を共振センサ信号として制御装置10へ出力する。
【0021】
図2は、システム制御部の詳細な構成を説明するためのブロック図である。本実施形態のシステム制御部11は、全体制御部50、画像処理部51、光源駆動制御部52、第1処理部53、第2処理部54、第3処理部55、クロック生成部60、同期信号監視部70を含んで構成されている。
【0022】
全体制御部(制御部)50は、システム制御部11の全体の制御を行う。具体的には、全体制御部50は、共振駆動信号データを生成するための設定パラメータを第1処理部53へ出力するとともに、非共振駆動信号データを生成するための設定パラメータを第2処理部54へ出力する。また、全体制御部50は、第1処理部53、第2処理部54、第3処理部55のそれぞれからの制御信号や異常信号を受信し、レジスタとして値を保持する。また、全体制御部50は、異常信号を受信した場合には外部へ異常信号を出力する。
【0023】
画像処理部51は、外部から入力された映像信号と光偏向器30の走査位置情報に基づいて画像データの生成を行う。
【0024】
光源駆動制御部52は、画像データを光源駆動部12へ出力するためのインタフェース制御、具体的には動作タイミング変換やデータ変換などを行い、光源駆動部12へ光源駆動用画像データを出力する。
【0025】
第1処理部53は、共振駆動信号データを処理する機能ブロックである。詳細には、第1処理部53は、全体制御部50によって設定される共振駆動周波数と振幅に基づいて共振駆動信号データ(一般的に正弦波)を生成する。そして、第1処理部53は、光偏向器30に対して共振駆動信号データを出力するためのデジタルアナログ変換要求を共振駆動信号生成部13へ出力する。
【0026】
また、第1処理部53は、共振駆動信号の共振駆動周波数が予め定める想定範囲から逸脱している場合には、これを異常として検出し、共振駆動周波数異常信号を全体制御部50へ出力する。想定範囲は光偏向器30の特性により予め決定される。
【0027】
第2処理部54は、非共振駆動信号データを処理する機能ブロックである。詳細には、第2処理部54は、全体制御部50によって設定される駆動波形、振幅、およびオフセットに基づいて非共振駆動信号データ(一般的に鋸波)を出力する。そして、第2処理部54は、光偏向器30に対して非共振駆動信号データを出力するためのデジタルアナログ変換要求を非共振駆動信号生成部14へ出力する。
【0028】
また、第2処理部54は、非共振駆動信号の振幅が予め想定している一定の値よりも小さい場合は、これを異常として検出し、振幅異常信号を全体制御部50へ出力する。一定の値は、偏向器30の特性を考慮し想定される共振駆動信号と共振センサ信号の位相差から算出する。
【0029】
第3処理部55は、共振センサ信号データを処理するための機能ブロックである。詳細には、第3理部55、共振センサデータを取得するためのアナログデジタル変換要求を共振センサ信号処理部15へ出力する。このアナログデジタル変換要求は、共振センサデータを定期的に取得するために一定周期で行われる。
【0030】
また、第3処理部55は、共振駆動信号と共振センサ信号を使用して直交検波を行い、共振センサ信号の振幅、共振駆動信号と共振センサ信号の位相差を取得する。直交検波は、共振センサデータを取得するごと(アナログデジタル変換によるデータ取得終了ごと)に行われる。第3処理部55は、共振センサ信号の振幅が想定している一定の値よりも小さい場合は、これを異常として検出し、共振センサ信号振幅異常信号を全体制御部50へ出力する。一定の値は光偏向器30の特性により決定される。
【0031】
クロック生成部60は、システム制御部11の動作に必要なクロック信号を生成するものであり、監視用クロック生成部61とシステム用クロック生成部62を含んで構成されている。監視用クロック生成部61とシステム用クロック生成部62は、それぞれ別体の発振器を用いて構成する等によって互いに独立に動作可能に構成されている。なお、監視クロック生成部61が「第2クロック生成部」に対応し、システム用クロック生成部62が「第1クロック生成部」に対応する。
【0032】
監視用クロック生成部61は、同期信号監視部70における監視動作に用いるための監視用クロック信号(第2クロック信号)を生成し出力する。システム用クロック生成部62は、全体制御部50、画像処理部51、光源駆動制御部52、第1処理部53、第2処理部54、第3処理部55のそれぞれにおける動作に用いるためのシステム用クロック信号(第1クロック信号)を生成し出力する。これらの監視用クロック生成部61とシステム用クロック生成部62は、互いに別系統の機能ブロックとして構成されており、互いに独立に動作する。監視用クロック信号は、少なくともシステム用クロック信号と同じ周波数に設定され、より好ましくはシステム用クロック信号よりも高い周波数に設定される。
【0033】
同期信号監視部(監視部)70は、監視用クロック信号を使用して動作し、水平駆動同期信号及び垂直駆動同期信号が想定範囲内の駆動周波数であるかを監視するとともに、水平映像同期信号及び垂直映像同期信号が想定している投影範囲の期間で動作しているかを監視する。同期信号監視部70は、監視結果が想定範囲外の場合には、駆動周波数エラー信号や投影期間エラー信号を全体制御部50へ出力するとともに、補正可能な監視結果である場合には投影範囲の補正値を全体制御部50へ出力する。
【0034】
図3は、投影システム100における光偏向器30の駆動状態と投影状態を概念的に説明するための図である。一般的に、光偏向器30を駆動させる範囲である走査範囲(図中、一点鎖線で示す)と投影範囲(図中、点線で示す)は同一ではなく、走査範囲の端の部分に対して投影を行わないブランク期間(レーザ光源をオフにする期間)が設けられる。これは、光偏向器30の走査を行う投影システム100の特性によるもので、端の部分の輝度が中心よりも高くなるからである。そのため、投影画像の見た目に生じる違和感を軽減するためにブランク期間が設けられる。
【0035】
第1処理部53と第2処理部54にて、水平駆動同期信号及び垂直駆動同期信号の生成を行う処理時間と、画像処理部51で水平映像同期信号及び垂直映像同期信号の生成を行う処理時間にはそれぞれ差分があるため、実際には光偏向器30の駆動の状態と投影状態が一致するようにタイミング調整を行う必要がある。
【0036】
システム制御部11で生成される水平駆動信号や垂直駆動信号など各種制御信号は、システム用クロック信号の周波数を基準にして生成される。同様に、投影状態を確認するための水平駆動同期信号と垂直駆動同期信号、及び水平映像同期信号と垂直映像同期信号は、システム用クロック信号の周波数を基準にしてカウンタ回路などで動作タイミングが制御されて生成される。
【0037】
ここで、基準となるシステム用クロック信号が回路故障などにより周波数の異常が発生した場合、システム用クロック信号を基準にして生成される制御信号の生成タイミングにも異常が発生し、投影システム100が正常に動作しなくなることが考えられる。また、投影時に異常が発生した場合は水平駆動信号及び垂直駆動信号をもとに動作する光偏向器30の振れ角が異常となる可能性もある。そこで、本実施形態では、監視用クロック生成部61を設けるとともに同期信号監視部70を設けることでこれらの不都合を解消している。
【0038】
図4は、同期信号監視部70の構成例を示すブロック図である。図示の同期信号監視部70は、監視用クロック生成部61によって生成される監視用クロック信号に基づいて動作するものであり、映像期間監視部71と駆動周波数監視部72を有する。
【0039】
映像期間監視部71は、監視カウンタ73と異常検出部74を有する。監視カウンタ73は、水平映像同期信号及び垂直映像同期信号のそれぞれについて、相対的に高い電圧の期間であるHレベル期間(ハイレベル期間)又は相対的に低い電圧の期間であるLレベル期間(ローレベル期間)の数を計数する。例えば本実施形態ではHレベル期間を計数するものとする。計数された数であるカウンタ値はHレベル期間の長さに相当する。
【0040】
異常検出部74は、監視カウンタ73によって計数されるHレベル期間の計数結果に基づいて、投影期間が想定範囲内の期間であるか否かを検出する。そして異常検出部74は、投影期間が想定範囲外である場合には投影期間監視エラー信号を出力する。また、異常検出部74は、投影期間が想定外である場合であってもそれが補正可能な場合には、投影期間の補正を行うための補正値である投影期間補正値を出力する。投影期間の補正可否については、例えば投影期間に対して閾値を設けることで判断できる。投影期間の補正は垂直駆動同期信号によって検出した映像の先頭で行う。
【0041】
駆動周波数監視部72は、監視カウンタ75と異常検出部76を有する。監視カウンタ75は、水平駆動同期信号と垂直駆動同期信号のそれぞれについて、相対的に高い電圧の期間であるHレベル期間(ハイレベル期間)及び相対的に低い電圧の期間であるLレベル期間(ローレベル期間)の数を計数する。例えば本実施形態ではHレベル期間を計数するものとする。計数された数であるカウンタ値はHレベル期間の長さに相当する。
【0042】
異常検出部76は、監視カウンタ75によって計数されるHレベル期間の計数結果に基づいて、水平駆動周波数と垂直駆動周波数が想定範囲内の期間であるか否かを検出する。そして異常検出部74は、水平駆動周波数又は垂直駆動周波数が想定範囲外である場合には駆動周波数監視エラー信号を出力する。
【0043】
図5は、投影期間の監視動作の内容を示す概念図である。ここでは一例として水平映像同期信号の監視動作の内容を示すが垂直映像同期信号の監視動作についても同様である。図中では、上側に水平駆動信号と水平映像同期信号が示され、下側に水平映像同期信号の一部が拡大して示されるとともに監視用クロック信号と水平投影期間監視カウンタの計数例が示されている。
【0044】
図示のように、システム用クロック信号を基準にして生成される水平映像同期信号に対して、監視用クロック信号を用いて投影期間(図中ではHレベル期間)の監視が行われ、監視した期間が想定範囲外である場合には異常(エラー)と判断される。詳細には、水平映像同期信号のHレベル期間が続く間、水平投影期間の監視カウンタが計数され、そのカウンタ値が0、1、2、・・・A-2、A-1、Aと増加を続ける。この計数されるカウンタ値に基づいて異常判定を行うことができる。すなわち、予め定められる想定範囲の上限を超える場合や下限を下回る場合には監視した期間が想定範囲外と判断できる。
【0045】
さらに、取得した水平方向、垂直方向の各投影期間から、想定した画角比率(例えば16:9)となっているかを確認することもできる。想定する画角比率は、光偏向器30の特性(電圧と振れ角の関係)や、水平駆動信号と垂直駆動信号に印加する電圧値によって決定される。
【0046】
図6は、駆動周波数の監視動作の内容を示す概念図である。ここでは一例として水平駆動同期信号の監視動作の内容を示すが垂直映像同期信号の監視動作についても同様である。図中では、上側に水平駆動信号と水平駆動同期信号が示され、下側に水平駆動同期信号の一部が拡大して示されるとともに監視用クロック信号と水平投影期間監視カウンタの計数例が示されている。
【0047】
図示のように、システム用クロック信号を基準にして生成される水平駆動同期信号に対して、監視用クロック信号を用いてHレベル期間及びLレベル期間の監視が行われ、監視した期間が想定外である場合には異常(エラー)と判断される。詳細には、水平駆動同期信号のHレベル期間が続く間、監視カウンタが計数され、そのカウンタ値が0、1、2、・・・A-2、A-1、Aと増加を続ける。この計数されるカウンタ値に基づいて異常判定を行うことができる。すなわち、予め定められる想定範囲の上限を超える場合や下限を下回る場合には監視した期間が想定範囲外と判断できる。Lレベル期間についても同様であり、水平駆動同期信号のLレベル期間が続く間、水平投影期間の監視カウンタが計数され、そのカウンタ値が0、1、2、・・・B-2、B-1、Bと増加を続ける。この計数されるカウンタ値に基づいて異常判定を行うことができる。すなわち、予め定められる想定範囲の上限を超える場合や下限を下回る場合には監視した期間が想定範囲外と判断できる。水平駆動同期信号のHレベル期間に相当する監視用クロック信号の期待値は、水平駆動信号の半周期に相当する値であるので、この期待値に基づいて閾値が設定される。
【0048】
図7は、投影期間の監視動作の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは水平映像同期信号の場合を例に示すが垂直映像同期信号の場合も処理の流れは同じである。
【0049】
映像を投影可能な状態である場合において(ステップS10;YES)、水平映像同期信号の立ち上がり(LレベルからHレベルへの変化エッジ)が検出されると(ステップS11;YES)、監視カウンタ73において監視カウンタのカウンタ値が初期化され(ステップS12)、監視カウンタ73においてカウンタ値のカウントアップが行われる(ステップS13)。
【0050】
なお、映像を投影可能な状態ではない場合(ステップS10;NO)、水平映像同期信号の立ち上がりが検出されていない場合(ステップS11;NO)のそれぞれにおいてはステップS10ないしステップS11へ戻る。
【0051】
カウンタ値が想定範囲を超過していない場合(想定範囲内)である場合において(ステップS14;NO)、水平映像同期信号の立ち下がり(HレベルからLレベルへの変化エッジ)が検出されない間は(ステップS15;NO)、ステップS13へ戻り、監視カウンタ73によるカウンタ値のカウントアップが継続される。なお、「想定範囲」とは、カウンタ値として適正と考えられる数値範囲を予め定めたものであり、例えば下限値50、上限値150というように定めることができる。想定範囲を超過するというのは、この上限値を超えることをいう(以下においても同様)。
【0052】
また、水平映像同期信号の立ち下がりが検出された場合において(ステップS15;YES)、カウンタ値が想定範囲内である場合には(ステップS16;YES)、監視カウンタ73は、ステップS11へ戻り、以降の処理を実行する。
【0053】
他方、水平映像同期信号の立ち下がりが検出された場合において、カウンタ値が想定範囲内ではない場合に(ステップS16;NO)、異常検出部74は、投影範囲が補正可能であれば(ステップS17;YES)、投影期間の補正指示を行う(ステップS18)。その後、ステップS11へ戻る。
【0054】
なお、ここでの「想定範囲内」ではない場合には、上記した上限値を超える場合と、下限値を下回る場合の両方があり得る。前者は水平映像同期信号が想定以上に長い場合を示しており、後者は水平映像同期信号が想定以上に短い場合を示している。
【0055】
また、投影範囲の補正が可能ではない場合(ステップS17;NO)、又は上記したステップS14においてカウンタ値が想定範囲を超過した場合に(ステップS14;YES)、異常検出部74による異常検出動作が実行される(ステップS19)。
【0056】
図8は、駆動周波数の監視動作の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは水平駆動同期信号の場合を例に示すが垂直映像同期信号の場合も処理の流れは同じである。
【0057】
光偏向器30が共振状態である場合において(ステップS30;YES)、水平駆動同期信号の立ち上がり(LレベルからHレベルへの変化エッジ)が検出されると(ステップS31;YES)、監視カウンタ75においてカウンタ値が初期化され(ステップS32)、監視カウンタ75においてカウンタ値のカウントアップが行われる(ステップS33)。
【0058】
なお、共振状態ではない場合(ステップS30;NO)、水平駆動同期信号の立ち上がりが検出されていない場合(ステップS31;NO)のそれぞれにおいてはステップS30ないしステップS31へ戻る。
【0059】
カウンタ値が想定範囲を超過していない場合(想定範囲内)である場合において(ステップS34;NO)、水平駆動同期信号の立ち下がり(HレベルからLレベルへの変化エッジ)が検出されない間は(ステップS35;NO)、ステップS33へ戻り、監視カウンタ75によるカウンタ値のカウントアップが継続される。
【0060】
また、水平駆動同期信号の立ち下がりが検出された場合において(ステップS35;YES)、カウンタ値が想定範囲内である場合には(ステップS36;YES)、監視カウンタ75は、ステップS31へ戻り、以降の処理を実行する。
【0061】
他方、水平駆動同期信号の立ち下がりが検出された場合において、カウンタ値が想定範囲内ではない場合(ステップS36;NO)、又は上記したステップS34においてカウンタ値が想定範囲を超過した場合には(ステップS34;YES)、異常検出部76による異常検出動作が実行される(ステップS37)。
【0062】
図9は、各信号の模式的なタイムチャートである。上段側には、水平駆動同期信号、垂直駆動同期信号、水平映像同期信号、垂直映像同期信号のタイムチャートが示されている。水平駆動同期信号は、例えば数十kHzの周波数を有する矩形波信号である。垂直駆動同期信号は、例えば数十Hzの周波数を有する矩形波信号である。また、下段側にはシステム用クロック信号、監視用クロック信号が示されている。システム用クロック信号は、例えば100MHzオーダーの周波数を有する矩形波信号である。監視用クロック信号は、例えば1000MHzオーダーの周波数を有する矩形波信号である。さらに下段には、監視カウンタのカウンタ値が模式的に示されている。各同期信号に特段の不具合が生じていない場合には、各同期信号は図示のようになる。ここに示す一例のように、例えば監視クロック信号の周波数は、システム用クロック信号の周波数の10倍ないしそれ以上に設定することができる。
【0063】
図10は、実施例1の故障モードの内容を説明する図である。図示のように、実施例1の故障モードは、モード1~モード6の6つのモードを含む。なお、図中では、動作に異常がないことを「OK」と表記し、動作に異常があることを「NG」と表記する(後述する図15図18においても同様)。
【0064】
モード1は、水平駆動同期信号、垂直駆動同期信号、水平映像同期信号、垂直映像同期信号のいずれにも異常がなく、動作の判定結果としては「正常」であることを示すモードである。この場合、補正は不要であり、同期信号監視部70の異常検出部74、76から全体制御部50へのエラー信号等の通知も不要である。
【0065】
モード2は、水平駆動同期信号、垂直駆動同期信号、垂直映像同期信号のいずれにも異常がないが、水平映像同期信号に異常があることを示すモードである。同様に、モード3は、水平駆動同期信号、垂直駆動同期信号、水平映像同期信号のいずれにも異常がないが、垂直映像同期信号に異常があることを示すモードである。この場合、異常の原因は特定できないが推測される原因としては、クロック生成部60の故障、レーザ光源20の故障(固着、短絡など)がある。
【0066】
これらのモード2、3では、動作の判定結果としては、補正可能である場合には「正常」、補正不可能である場合には「異常」となる。補正可能である場合の補正方法としては、監視した結果に基づいて投影期間の補正値を算出し、投影の先頭において補正値を反映して補正が行われる。同期信号監視部70から全体制御部50へは、補正可能な場合には補正値の通知が行われ、補正不可能である場合には投影期間監視エラー信号が出力される。
【0067】
モード4は、垂直駆動同期信号、水平映像同期信号、垂直映像同期信号のいずれにも異常がないが、水平駆動同期信号に異常があることを示し、動作の判定結果としては「異常」であることを示すモードである。同様に、モード5は、水平駆動同期信号、水平映像同期信号、垂直映像同期信号のいずれにも異常がないが、垂直駆動同期信号に異常があることを示し、動作の判定結果としては「異常」であることを示すモードである。
【0068】
これらの場合、異常の原因は特定できないが推測される原因としては、クロック生成部60の故障や光偏光器30の故障がある。これらのモード4、5では、光偏光器30の正常な動作が確保できないので、補正値による対応ではなく、レーザ光源20の出光停止あるいは電源遮断といった対応が必要である。同期信号監視部70から全体制御部50へは、駆動期間監視エラー信号が出力される。
【0069】
モード6は、水平駆動同期信号、垂直駆動同期信号、水平映像同期信号、垂直映像同期信号のいずれも異常を示し、動作の判定結果としては「異常」であることを示すモードである。これらの場合、異常の原因は特定できないが推測される原因としては、クロック生成部60の故障やPLL内部回路の故障がある。これらのモード6においても、光偏光器30の正常な動作が確保できないので、補正値による対応ではなく、レーザ光源20の出光停止あるいは電源遮断といった対応が必要である。同期信号監視部70から全体制御部50へは、駆動期間監視エラー信号、投影期間監視エラー信号が出力される。
【0070】
図11は、モード1における模式的なタイムチャートである。上段側に水平駆動同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平駆動期間の監視カウンタ75のカウンタ値が示され、下段側に水平映像同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平投影期間の監視カウンタ73のカウンタ値が示されている。
【0071】
まず、水平駆動期間の監視カウンタ75の動作を説明する。監視カウンタ75は、監視用クロック信号の立ち上がりに対応して動作する。監視カウンタ75は、水平駆動同期信号がLレベルのときには、カウンタ値が変化せず値を保持する。監視カウンタ75は、水平駆動同期信号がLレベルからHレベルに変化したときに、その後最初の監視用クロック信号の立ち上がりでカウンタ値を0にクリアする(すなわち初期化する)。
【0072】
その後、水平駆動同期信号がHレベルを維持している期間内においては、監視用クロック信号の立ち上がりを検出するたびにカウンタ値を1、2、・・・とカウントアップする。他方、水平駆動同期信号がHレベルからLレベルに変化した場合、監視用クロック信号の立ち上がりを検出しても監視カウンタ75のカウンタ値は変化しない。異常検出部76では、このときのカウンタ値が許容範囲内であるかを予め定められた上限値及び下限値に基づいて判断する。
【0073】
なお、水平映像期間の監視カウンタ73並びに異常検出部74の動作についても上記した監視カウンタ75の動作と同様であるので、ここでは説明を省略する(以下の図12図14の説明においても同様)。また、垂直駆動同期信号、垂直映像同期信号に対する監視動作も上記と同様であるので、ここでは説明を省略する(以下の図12図14の説明においても同様)。
【0074】
図12は、モード2における模式的なタイムチャートである。図11と同様に、上段側に水平駆動同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平駆動期間の監視カウンタ75のカウンタ値が示され、下段側に水平映像同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平投影期間の監視カウンタ73のカウンタ値が示されている。モード2では、水平映像同期信号に異常が発生しているので、監視カウンタ73のカウンタ値が「1」から増加しない状態が繰り返されている。このとき、わずかな投影範囲の異常であれば、投影期間の補正により正常な状態に復帰させることが可能と考えられる。
【0075】
以下に、補正値の算出方法を説明する。設定されている投影期間をもとに、想定される水平映像同期信号のHレベルの期間を算出する。例えば、投影期間を光偏光器30の走査範囲の60%と設定していて、その設定から想定される水平映像同期信号のHレベルの期間が監視用クロック信号の60サイクルに相当する期間であるとする。この場合、異常によりHレベルの期間が短く、例えば50サイクル相当の期間になったとすると、投影期間を「想定期間/実際の期間」(一例では60/50)に広げるように補正値を算出する。
【0076】
この場合における補正値の反映タイミングについては、投影の先頭、すなわち垂直駆動同期信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで投影期間を算出するための設定パラメータに対して補正値を加算し、映像に反映させることが好ましい。投影の途中、すなわち垂直駆動信号の中間領域に補正値を加算させて映像に反映させた場合、映像の途中で急に投影範囲が広がったり縮まったりするため見た目に違和感を生じるが、投影の先頭で補正値を反映することでこの違和感が軽減される。
【0077】
図13は、モード3における模式的なタイムチャートである。図11と同様に水平駆動同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平駆動期間の監視カウンタ75のカウンタ値が示されている。モード3では、具体的な故障原因については特定しにくいがレーザ光源20の速やかな出光停止が望まれる。水平駆動同期信号(あるいは垂直駆動同期信号)に異常が生じた場合には、水平駆動期間の監視カウンタ73のカウンタ値に基づいて当該異常が検出される。この場合に、本実施形態の異常検出部74は、駆動周波数監視エラー信号にレーザ光源20の出光を停止させる旨を示すエラー信号を含ませて全体制御部50へ出力する。
【0078】
図14は、モード6における模式的なタイムチャートである。図11と同様に水平駆動同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平駆動期間の監視カウンタ75のカウンタ値が示され、下段側に水平映像同期信号と監視用クロックが示され、対応する水平投影期間の監視カウンタ73のカウンタ値が示されている。上記したモード3で説明した通り、水平駆動同期信号(又は垂直駆動同期信号)に異常が検出された場合には、レーザ光源20の出光停止を示すエラー信号が異常検出部74から全体制御部50へ出力され、レーザ光源20が動作を停止する。このため、水平駆動同期信号(又は垂直駆動同期信号)と水平映像同期信号(又は垂直映像同期信号)の両方が異常となるモード4については優先順位が低くてもよい。モード6自体を動作モードから削除してもよい。
【0079】
図15は、実施例2の故障モードの内容を説明する図である。水平駆動同期信号と水平映像同期信号だけを用いても異常を検出することができるので、この実施例2の故障モードでは、上記した実施例1の故障モードから垂直駆動同期信号と垂直映像同期信号を対象外としている。その他の箇所は実施例1と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0080】
図16は、実施例3の故障モードの内容を説明する図である。この実施例3の故障モードでは、上記した実施例1の故障モードからモード6、すなわち4つの同期信号(水平駆動同期信号、水平映像同期信号、垂直駆動同期信号、垂直映像同期信号)すべてがNGとなるモードを削除したものである。その他の箇所は実施例1と同様であるので詳細な説明を省略する。なお、同様に上記した実施例2の故障モードからもモード6を削除してもよい。
【0081】
図17は、実施例4の故障モードの内容を説明する図である。この実施例4の故障モードでは、水平駆動同期信号のみを監視対象としている。光偏光器30の駆動制御に関わる回路の故障のみを検知したい場合には、このように水平駆動同期信号のみを監視対象としてもよい。
【0082】
図18は、変形実施例の故障モードの内容を説明する図である。ここでは、上記した実施例1の故障モードでのモード4及び5において、水平駆動同期信号ないし垂直駆動同期信号が想定範囲内より短い場合と長い場合でさらに出力内容を分けた故障モードを示す。なお、モード4から派生する各モードをモード4-1、4-2、4-3、4-4と表記し、モード5から派生する各モードをモード5-1、5-2、5-3、5-4と表記する。図示のように、水平駆動同期信号ないし垂直駆動同期信号の長さはカウンタ値の大小に置き換えることができるので、各モードについては、カウンタ値が想定範囲内である場合、想定範囲より小さい場合、想定範囲よりも大きい場合の3つで場合分けがなされている。また、各モードについては、緊急性の高さに応じて左欄から順に示されている。以下、この緊急性の順で各モードを説明する。
【0083】
モード4-3は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より小さく、かつ垂直駆動同期信号のカウンタ値も想定範囲より小さいという異常を示すモードである。この場合に予想される不具合は、水平方向及び垂直方向の走査角度が狭くなることでスポット光が発生することであり、対応の緊急性が最も高い。この場合には、同期信号監視部70から全体制御部50へ出力される内容としては、レーザ光源20の出光停止を指示する信号、駆動周波数監視エラー信号である。また、エラー表示としては、投影システム100の使用禁止・要修理といった内容である。このエラー表示は、投影システム100が表示部を備える場合はその表示部に表示され、そうでない場合には投影システム100と接続された外部機器の表示部に表示される(以下においても同様)。
【0084】
モード4-4は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より小さく、垂直駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より大きいという異常を示すモードである。また、モード4-1は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より小さく、垂直駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲内という異常を示すモードである。これらの場合に予想される不具合は、水平方向の走査角度が狭くなることで縦に細長い投影像になることである。これらの場合には、同期信号監視部70から全体制御部50へ出力される内容としては駆動周波数監視エラー信号である。また、エラー表示としては、投影システム100の要修理といった内容である。
【0085】
モード5-1は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲内であり、垂直駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より小さいという異常を示すモードである。また、モード5-3は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より大きく、垂直駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より小さいという異常を示すモードである。これらの場合に予想される不具合は、垂直方向の走査角度が狭くなることで横に細長い投影像になることである。これらの場合には、同期信号監視部70から全体制御部50へ出力される内容としては駆動周波数監視エラー信号である。また、エラー表示としては、投影システム100の要修理といった内容である。
【0086】
モード4-2は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲よりも大きく、垂直駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲内という異常を示すモードである。また、モード5-2は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲内であり、垂直駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲より大きいという異常を示すモードである。また、モード5-4は、水平駆動同期信号のカウンタ値が想定範囲よりも大きく、垂直駆動同期信号のカウンタ値も想定範囲より大きいという異常を示すモードである。これらの場合に予想される不具合は、横に細長い投影像及び/又は横に細長い投影像になることである。これらの場合には、同期信号監視部70から全体制御部50へ出力される内容としては、補正可能である場合には補正値であり、補正不可納である場合には駆動周波数監視エラー信号である。また、エラー表示としては、補正可能である場合には表示なしであり、補正不可納である場合には投影システム100の要修理といった内容である。
【0087】
以上のような実施形態によれば、レーザ光源及び光偏向器を備える投影システムにおいて簡素な構成によって故障診断機能を実現することが可能となる。
【0088】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
【0089】
本開示は、以下に付記する特徴を有する。
(付記1)
レーザ光源及び光偏向器を備える投影システムにおいて当該レーザ光源及び光偏向器の動作を制御するための装置であって、
第1クロック信号を生成する第1クロック生成部と、
前記第1クロック信号とは異なる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部と、
前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御する制御部と、
前記第2クロックを用いて前記制御部の動作を監視する監視部と、
前記制御部によって制御されて前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成する第1処理部と、
前記制御部によって制御されて前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成する第2処理部と、
前記制御部によって制御されて前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成する第3処理部と、
を含み、
前記監視部は、前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力する、
投影システムの制御装置。
(付記2)
前記第2クロック信号の周波数は、前記第1クロック信号の周波数と同一又は当該第1クロック信号の周波数よりも大きい、
付記1に記載の投影システムの制御装置。
(付記3)
前記監視部は、前記水平映像同期信号又は前記垂直映像同期信号の少なくとも一方の電圧が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間の長さが所定範囲外である場合に異常検出を示す第2エラー信号を前記制御部へ出力する、
付記1又は2に記載の投影システムの制御装置。
(付記4)
前記監視部は、前記水平映像同期信号又は前記垂直映像同期信号の少なくとも一方が前記Hレベル又は前記Lレベルのうちの一方である前記期間の長さが所定範囲外である場合であって、補正可能な条件を満たす場合には前記Hレベル又は前記Lレベルの期間を補正するための補正値を出力する、
付記3に記載の投影システムの制御装置。
(付記5)
前記監視部は、
前記第2クロック信号に基づいて動作し、前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号が前記Hレベル又は前記Lレベルのうちの一方である間にカウントアップする第1カウンタと、
前記第1カウンタによる第1カウンタ値が第1閾値以上となった場合に前記第1エラー信号を生成する第1異常検出部と、
を含む、付記1~4の何れかに記載の投影システムの制御装置。
(付記6)
前記監視部は、
前記第2クロック信号に基づいて動作し、前記水平映像同期信号又は前記垂直映像同期信号が前記Hレベル又は前記Lレベルのうちの一方である間にカウントアップする第2カウンタと、
前記第2カウンタによる第2カウンタ値が第2閾値以上となった場合に前記第2エラー信号を生成する第2異常検出部と、
を含む、付記3に記載の投影システムの制御装置。
(付記7)
投影システムにおけるレーザ光源及び光偏向器の動作を制御する制御装置において実行されるプログラムであって、
前記制御装置に、
(a)前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御すること、
(b)前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成すること、
(c)前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成すること、
(d)前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成すること、
(e)前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方の電圧が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第1クロック信号とは異なる前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力すること、
を実行させる、プログラム。
(付記8)
投影システムにおけるレーザ光源及び光偏向器の動作を制御する制御装置において実行される制御方法であって、
前記制御装置が、
(a)前記第1クロック信号を用いて前記レーザ光源及び前記光偏向器の動作を制御すること、
(b)前記光偏向器へ供給するための水平駆動同期信号を生成すること、
(c)前記光偏向器へ供給するための垂直駆動同期信号を生成すること、
(d)前記レーザ光源へ供給するための水平映像同期信号及び垂直映像同期信号を生成すること、
(e)前記水平駆動同期信号又は前記垂直駆動同期信号の少なくとも一方の電圧が相対的に高いHレベル又は相対的に低いLレベルのうちの一方である期間の長さを前記第1クロック信号とは異なる前記第2クロック信号に基づいて計測し、当該期間が所定範囲外である場合に異常検出を示す第1エラー信号を前記制御部へ出力すること、
を実行する、投影システムの制御方法。
(付記9)
付記1~6の何れかに記載の制御装置と、
前記制御装置と接続されたレーザ光源と、
前記制御装置と接続された光偏向器と、
を備える投影システム。
(付記10)
前記投影システムは、電源投入時において、前記レーザ光源によるレーザ光の出力が行われる以前に、前記制御装置の前記監視部による動作を実行する、
付記9に記載の投影システム。
【符号の説明】
【0090】
10:制御装置、11:システム制御部、12:光源駆動部、13:共振駆動信号生成部、14:非共振駆動信号生成部、15:共振センサ信号生成部、20:光源、30:光偏向器、50:全体制御部、51:画像処理部、52:光源駆動制御部、53:第1処理部、54:第2処理部、55:第3処理部、60:クロック生成部、61:監視用クロック生成部、62:システム用クロック生成部、70:同期信号監視部、71:映像期間監視部、72:駆動周波数監視部、73、75:監視カウンタ、74、76:異常検出部、100:投影システム、S:スクリーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18