(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167752
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B25B21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084033
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 真司
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀規
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠也
(57)【要約】
【課題】衝撃及び振動を低減できる電動工具を提供する。
【解決手段】電動工具1は、インパクト機構IM1を有する。インパクト機構IM1は、駆動軸41と、ハンマ本体420を有するハンマ42と、打撃部45と、ハンマーバネ43と、ハンマ本体420とハンマーバネ43との間に挟まれた弾性体50と、を少なくとも備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパクト機構を有した電動工具であって、
前記インパクト機構は、
駆動軸と、
ハンマ本体を有するハンマと、
打撃部と、
ハンマーバネと、
前記ハンマ本体と前記ハンマーバネとの間に挟まれた弾性体と、を少なくとも備えた、
電動工具。
【請求項2】
前記弾性体は、リング状である、
請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
前記ハンマ本体は、後方に向けて開口するリング状をした溝部を有し、
前記溝部に前記弾性体が収容される、
請求項1記載の電動工具。
【請求項4】
前記ハンマーバネと前記弾性体との間に、リング状をした板部材を更に備えた、
請求項1記載の電動工具。
【請求項5】
前記弾性体は、フッ素ゴムである、
請求項1記載の電動工具。
【請求項6】
前記弾性体は、硬度85度以上である、
請求項1記載の電動工具。
【請求項7】
前記ハンマーバネが最も収縮した状態の弾性力が前記弾性体にかかった時のつぶし率が30%以下である、
請求項1記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電動工具に関し、より詳細には、先端工具を保持する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打撃機構を備えたインパクトドライバが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の打撃機構は、スピンドルに外装されるハンマと、そのハンマを前方へ付勢するコイルバネとを含んでなる。まずハンマは、前面に一対の爪を有し、内面に形成した外側カム溝と、スピンドルの表面に形成した内側カム溝とに跨がって嵌合されるボールを介してスピンドルと結合されている。また、ハンマの後面には、リング状の溝が形成されて、ここにコイルバネの前端が挿入されている。コイルバネの後端は、キャリア部の前面に設けられたバネ受けに当接している。溝の底部には、複数のボール(但し、外側カム溝と内側カム溝とに跨がって嵌合されるボールとは別のボール)及びワッシャが収容されてコイルバネの前端を受けるようになっている。
【0003】
以上の如く構成されたインパクトドライバにおいては、トリガを押し込んでスイッチをONさせると、モータに給電されて回転軸が回転し、スピンドルを減速して回転させる。よって、ハンマも回転して爪が係合するアームを介してアンビルを回転させ、ビットによるネジ締めを可能とする。ネジ締めが進んでアンビルのトルクが高まると、ハンマが、ボールをスピンドルの内側カム溝に沿って転動させながらコイルバネの付勢に抗して後退し、爪がアームから離れると、コイルバネの付勢と内側カム溝の案内とにより、ハンマは前進しながら回転して爪を再びアームに係合させ、アンビルに回転打撃力(インパクト)を発生させる。この繰り返しによってさらなる締め付けが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の電動工具では、コイルバネが伸長してハンマを前進させ、ハンマがアンビルのアームに衝突するが、この時、ハンマの後面に形成されたリング状の溝に挿入されているボールがハンマの溝の底部と衝突し、衝撃及び振動が大きい、という問題があった。
【0006】
本開示は、衝撃及び振動を低減できる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電動工具は、インパクト機構を有した電動工具である。前記インパクト機構は、駆動軸と、ハンマ本体を有するハンマと、打撃部と、ハンマーバネと、前記ハンマ本体と前記ハンマーバネとの間に挟まれた弾性体と、を少なくとも備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電動工具にあっては、衝撃及び振動を低減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具の要部の断面図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具の要部の、後側から見た分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の電動工具の要部の、前側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、実施形態に係る電動工具について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(1)概要
図3に示すように、本実施形態の電動工具1は、インパクト機構IM1を有する。インパクト機構IM1は、駆動軸41と、ハンマ本体420を有するハンマ42と、打撃部45と、ハンマーバネ43と、ハンマ本体420とハンマーバネ43との間に挟まれた弾性体50と、を少なくとも備える。
【0012】
本実施形態に係る電動工具1にあっては、衝撃及び振動を低減できる。
【0013】
(2)詳細
電動工具1は、作業者が片手で把持可能な可搬型の電動工具である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態の電動工具1は、モータ3と、伝達機構4と、ケース6と、ハウジング2と、を備える。伝達機構4は、モータ3の回転軸311の回転を先端工具72(
図1参照)に伝達する。ケース6は、伝達機構4の少なくとも一部を収容している。ハウジング2は、モータ3、伝達機構4及びケース6を収容している。
【0015】
電動工具1は、先端工具72であるビット(ドライバービット)を保持するための保持部71を備える。保持部71には、先端工具72が着脱可能に装着される。伝達機構4は、モータ3の回転を利用して先端工具72を駆動する。本実施形態の電動工具1では、伝達機構4は、インパクト機構IM1を含む。本実施形態の電動工具1は、インパクト機構IM1による打撃力でねじ締め作業を行う電動式のインパクトドライバーである。
【0016】
電動工具1には、充電式の電池パック9(
図1参照)が着脱可能に取り付けられる。電動工具1は、電池パック9を電源として動作する。電池パック9は、電動工具1の構成要素ではない。ただし、電動工具1は、電池パック9を備えていてもよい。電池パック9は、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を直列接続して構成された組電池と、組電池を収容した電池パックケース90と、を備えている。電池パック9は、電池パック9の情報を示す電池情報を通信するための、通信用コネクタを備える。電池情報には、例えば、温度情報、残容量情報、定格電圧情報、定格容量情報、充電回数の情報等が含まれる。
【0017】
図1、
図2に示すように、電動工具1のハウジング2は、胴体部21と、グリップ部22と、ベース部23と、を有する。胴体部21の形状は、中空の筒状である。グリップ部22は、胴体部21の外周面から胴体部21の一径方向に沿った一方向に突出している。
【0018】
グリップ部22は、上記一方向に長い中空の筒形状に形成されている。グリップ部22の内部空間は、胴体部21の内部空間とつながっている。グリップ部22の長手方向の一端には、胴体部21がつながっており、他端には、ベース部23がつながっている。ベース部23には、電池パック9が着脱可能に取り付けられる。
【0019】
図2に示すように、電動工具1は、スイッチ回路モジュール81と、操作部82と、正逆切換スイッチ83と、を更に備える。また、電動工具1は、制御回路モジュールを更に備える。
【0020】
スイッチ回路モジュール81は、グリップ部22の内部空間に配置されている。スイッチ回路モジュール81は、制御回路モジュールと接続されている。制御回路モジュールは、ベース部23に収容されている。
【0021】
スイッチ回路モジュール81は、メインスイッチを含む。メインスイッチは、電池パック9からモータ3に電力を供給するための電力供給路を開閉する。操作部82は、電動工具1の使用者の指によって操作されるトリガレバーである。操作部82は、スイッチ回路モジュール81に連結されている。操作部82は、操作者の指による操作によってグリップ部22に引き込まれる。
【0022】
スイッチ回路モジュール81では、操作部82の引き込み量が所定量以下の場合にはメインスイッチがオフし、操作部82の引き込み量が所定量を超えるとメインスイッチがオンする。これにより、スイッチ回路モジュール81は、電池パック9からモータ3への電力の供給と遮断とを切り換える。また、スイッチ回路モジュール81は、操作部82の引き込み量が上記の所定量を超えると、操作部82の引き込み量に応じた操作信号を、制御回路モジュールに送信する。これにより、操作部82の引き込み量に応じて、モータ3へ供給される電力の大きさが変化し、これにより、モータ3の回転軸311の回転速度が変化する。
【0023】
また、スイッチ回路モジュール81は、正逆切換スイッチ83に接続されている。正逆切換スイッチ83は、モータ3の回転軸311の回転方向を切り換えるためのスイッチである。正逆切換スイッチ83は、胴体部21とグリップ部22との境界付近に設けられている。
【0024】
制御回路モジュールは、スイッチ回路モジュール81及びモータ3と接続されている。制御回路モジュールは、電池パック9が電動工具1に取り付けられた状態で、電池パック9の一対の電源端子及び通信コネクタに接続される。これにより、制御回路モジュールには、一対の電源端子を介して電池パック9から電力が供給される。また、制御回路モジュールは、通信コネクタを介して電池パック9から電池情報を取得する。また、制御回路モジュールは、スイッチ回路モジュール81からの操作信号に基づいて、モータ3を制御する。より詳細には、制御回路モジュールは、モータ3の回転軸311の回転速度及び回転方向等を制御する。
【0025】
モータ3は、ブラシレスモータである。モータ3は、ロータ31と、ステータ32と、を有する。ロータ31は、ロータ本体310と、回転軸311と、複数の永久磁石312と、を有する。ステータ32は、ステータ本体320と、複数のコイル321と、を有する。
【0026】
ロータ本体310は、磁性材料により形成されたロータコアである。回転軸311及び複数の永久磁石312は、ロータ本体310に保持されている。回転軸311及び複数の永久磁石312は、ロータ本体310と共に回転する。
【0027】
ステータ本体320は、磁性材料により形成されたステータコアである。ステータ本体320は、ロータ本体310の周囲に配置されている。すなわち、ステータ本体320は、ロータ本体310を囲んでいる。複数のコイル321は、ステータ本体320に巻かれている。
【0028】
ロータ31は、ステータ32に対して回転する。すなわち、複数のコイル321から発生する磁束が複数の永久磁石312に作用することにより、ロータ31が回転する。ロータ31の回転力(駆動力)は、回転軸311から伝達機構4へ伝達される。
【0029】
電動工具1は、ファン33と、駆動回路モジュール34と、を備える。ファン33及び駆動回路モジュール34は、ハウジング2に収容されている。より詳細には、ファン33及び駆動回路モジュール34は、ハウジング2の胴体部21に収容されている。
【0030】
図3、
図4に示すように、ファン33は、複数の羽根331と、円環部332と、ハブ333と、を有する。ハブ333の形状は、有底筒状である。ハブ333の底面3330には、モータ3の回転軸311が通される貫通孔3331が形成されている。ハブ333は、モータ3の回転軸311に連結されている。これにより、ファン33は、回転軸311及びロータ本体310と共に回転する。
【0031】
円環部332の形状は、平面視円環形の板状である。ハブ333は、円環部332の内縁からロータ本体310側へ突出している。複数の羽根331は、円環部332の表面(ロータ本体310側の面)からロータ本体310側へ突出している。複数の羽根331は、放射状に設けられている。
【0032】
図2に示す駆動回路モジュール34は、制御回路モジュールにより制御されてモータ3を駆動する。駆動回路モジュール34は、回路基板と、回路基板に実装された複数のトランジスタと、回路基板及び複数のトランジスタを封止している封止部と、を含む。
【0033】
回転軸311の軸方向(長さ方向)において、駆動回路モジュール34、ロータ本体310、ファン33及び伝達機構4がこの順に並んでいる。
【0034】
ハウジング2は、モータ3及び伝達機構4を収容している。ハウジング2は、ケース6を更に収容している。より詳細には、モータ3、伝達機構4及びケース6は、ハウジング2の胴体部21に収容されている。胴体部21は、複数の通気孔211、212(
図1参照)を有している。通気孔211、212は、回転体R1と対向する位置と、回転体R1から見て伝達機構4側とは反対側(駆動回路モジュール34側)の位置と、のうち少なくとも一方に設けられている。本実施形態では、回転体R1と対向する位置に複数の通気孔211が設けられ、回転体R1から見て伝達機構4側とは反対側の位置に複数の通気孔212が設けられている。
【0035】
図3に示すように、伝達機構4は、駆動軸41と、ハンマ42と、ハンマーバネ43と、スピンドル44と、打撃部45と、第1軸受46と、第2軸受47と、遊星歯車機構48と、2つの鋼球49と、を有する。
【0036】
モータ3の回転軸311は、遊星歯車機構48に連結されている。モータ3の回転軸311の回転は、遊星歯車機構48を介して駆動軸41に伝達される。伝達機構4におけるインパクト機構IM1は、駆動軸41、ハンマ42、ハンマーバネ43、スピンドル44、打撃部45及び2つの鋼球49を含む。モータ3の回転軸311の回転は、インパクト機構IM1によりスピンドル44に伝達される。スピンドル44の先端は、保持部71(
図2参照)の一部を兼ねている。
【0037】
モータ3と第2軸受47との間の距離は、モータ3と第1軸受46との間の距離よりも短い。駆動軸41は、第2軸受47に回転可能に支持されている。スピンドル44は、第1軸受46に回転可能に支持されている。駆動軸41は、スピンドル44と連結されている。よって、スピンドル44は、駆動軸41と共に回転する。
【0038】
ハンマ42は、ハンマ本体420を有する。ハンマ本体420は、駆動軸41を通す貫通孔421を有する。ハンマ本体420は、貫通孔421の内周面に溝部423を有する。溝部423と、駆動軸41の外周面に設けられた溝部413との間に2つの鋼球49が挟まれている。2つの鋼球49が溝部413を移動し、これに伴い、ハンマ42は、駆動軸41に対して、駆動軸41の軸方向に移動可能であり、かつ、駆動軸41に対して回転可能である。伝達機構4では、ハンマ42が駆動軸41に対して回転すると、その角度に応じてハンマ42が駆動軸41の軸方向に沿ってスピンドル44に近づく方向又はスピンドル44から遠ざかる方向に移動する。
【0039】
ハンマ42は、ハンマ本体420のスピンドル44側の面424(
図5参照)から突出した2つの突起425(
図5参照)を有する。ハンマ本体420の外形形状は円柱状である。2つの突起425は、ハンマ本体420の周方向において略等間隔で配置されている。2つの突起425は、打撃部45を打撃可能(打撃部45と衝突可能)である。駆動軸41の軸方向の一方から見て、2つの突起425の各々の形状は、扇状である。打撃部45は、スピンドル44と一体に形成されている。
【0040】
ハンマ本体420は、後方に向けて開口するリング状をした溝部426を有する。溝部426に、ハンマーバネ43、弾性体50及び板部材51が収容される。
【0041】
ハンマーバネ43は、ハンマ42と遊星歯車機構48との間に配置されている。ハンマーバネ43は、例えば円錐コイルばねである。ハンマーバネ43の少なくとも前端部は、溝部426に収容され、ハンマ本体420の溝部426の底部を前方に押す。
【0042】
インパクト機構IM1は、ハンマ本体420とハンマーバネ43との間に挟まれた弾性体50を備える。本実施形態では更に、インパクト機構IM1は、ハンマ42とハンマーバネ43との間に挟まれた、リング状をした板部材51を更に含む。
【0043】
弾性体50は、金属よりも弾性係数の小さい部材により形成される。なお、弾性体50は、一部に金属を含んでも構わない。弾性体50は、本実施形態ではリング状をした部材により構成される。具体的には、弾性体50は、Oリングにより構成される。
【0044】
弾性体50の材質としては、ゴムが好適に用いられる。特に、フッ素ゴムが弾性体50の材質として好適に用いられる。
【0045】
弾性体50の硬度は、85度以上である。なお、ここでいう硬度とは、「JIS K6253デュロメータ タイプA」で規定される硬度である。更に好ましくは、弾性体50の硬度は、90度以上である。
【0046】
ハンマーバネ43が最も収縮した状態の弾性力が弾性体50にかかった時のつぶし率が30%以下である。
【0047】
インパクト機構IM1では、駆動軸41が略半回転するごとにハンマ42と打撃部45とが衝突する。衝突後、駆動軸41がモータ3の駆動力によって回転し続け、ハンマ42は、ハンマーバネ43を圧縮させながら、スピンドル44から遠ざかる方向に移動するので、ハンマ42が打撃部45を乗り越えて次の衝突が発生する。
【0048】
遊星歯車機構48は、モータ3の回転軸311の回転速度とトルクとを、ねじ回し動作に必要な回転速度とトルクとに変換する。遊星歯車機構48は、減速装置である。遊星歯車機構48は、太陽歯車481と、2つの遊星歯車482と、リングギア483と、を含む。太陽歯車481は、モータ3の回転軸311に連結されている。2つの遊星歯車482は、太陽歯車481の外側で太陽歯車481に噛み合う。リングギア483は、2つの遊星歯車482に噛み合い、2つの遊星歯車482を支持している。
【0049】
電動工具1は、軸受53(第3軸受)と、第4軸受54(
図2参照)と、を更に備えている。伝達機構4と軸受53との間の距離は、伝達機構4と第4軸受54との間の距離よりも短い。軸受53及び第4軸受54は、モータ3の回転軸311を回転可能に支持している。第4軸受54は、ハウジング2に保持されている。
【0050】
ケース6は、取付ベース61と、カバー62と、を有する。カバー62は、合金により形成されている。カバー62の形状は、筒状である。カバー62は、伝達機構4の少なくとも一部を囲んでいる。
【0051】
取付ベース61は、電気絶縁性を有する。取付ベース61は、合成樹脂により形成されている。取付ベース61には、軸受53が取り付けられる。取付ベース61の内側には、遊星歯車機構48が配置されている。取付ベース61は、カバー62の一端(モータ3側の端)を覆うようにカバー62に結合されている。
【0052】
図4、
図5に示すように、取付ベース61の外形形状は円柱状である。取付ベース61は、モータ3の回転軸311の軸方向に沿った方向において、ロータ本体310から離れるにつれて外径が段階的に大きく形成されている。
【0053】
取付ベース61は、互いに外径が異なる大径部611と中径部612と小径部613とを含む。大径部611、中径部612及び小径部613のうち大径部611の外径が最も大きく、小径部613の外径が最も小さい。モータ3の回転軸311の軸方向に沿った方向において、大径部611、中径部612及び小径部613のうち小径部613がロータ本体310に最も近い位置に配置され、大径部611がロータ本体310から最も遠い位置に配置される。大径部611、中径部612及び小径部613の形状は、同心の有底円筒状である。大径部611には貫通孔6110が、中径部612には貫通孔6120が、小径部613には貫通孔6130が形成されている。貫通孔6110、6120、6130はつながっている。貫通孔6110、6120、6130には、回転軸311が通されている。
【0054】
また、取付ベース61は、複数(
図4では4つ)の突出部615を有する。複数の突出部615は、中径部612の周囲に等間隔に設けられている。複数の突出部615は、中径部612とつながっている。
【0055】
図3に示すように、回転軸311を支持する軸受53は、小径部613の貫通孔6130内に配置されている。軸受53の外径は貫通孔6130の内径と略同じである。
【0056】
小径部613は、中径部612側とは反対側の端に、凸部6131を有している。小径部613は、凸部6131においてロータ本体310側へ突出している。凸部6131の形状は、環状(より詳細には、円環状)である。
【0057】
駆動軸41を支持する第2軸受47は、中径部612の貫通孔6120内に配置されている。第2軸受47の外径は、貫通孔6120の内径と略同じである。
【0058】
遊星歯車機構48のリングギア483は、取付ベース61に保持されている。リングギア483は、取付ベース61にインサート成形されている。したがって、リングギア483は、取付ベース61に固定されている。リングギア483は、大径部611の貫通孔6110内に配置されている。
【0059】
(3)潤滑剤
伝達機構4のうち、例えば、遊星歯車機構48及びハンマ42等には、潤滑剤が塗られている。したがって、ケース6には、潤滑剤が収容されている。潤滑剤は、伝達機構4の摩擦及び摩耗等を抑制するために用いられる。潤滑剤は、電気絶縁性を有する。潤滑剤は、例えば、半固体潤滑剤である。より詳細には、潤滑剤は、合成炭化水素油系のグリスである。
【0060】
(4)利点
弾性体50が設けられることにより、ハンマ本体420の溝部426の底部に対して衝突する部材が、金属ではなく弾性体50となる。このため、ハンマ本体420とハンマーバネ43との間に衝撃力がかかる場合でも、ハンマ本体420の溝部426の底部とハンマーバネ43とが直接接触することなく、金属同士の衝突による大きな衝撃及び振動が発生しにくくなる。これにより、弾性体50の代わりに鋼球が用いられているものと比較して、衝撃及び振動が低減される。
【0061】
板部材51が設けられることにより、ハンマ42(ハンマ本体420)は、板部材51との間で相対的に回転可能となるため、ハンマーバネ43に対して回転しやすくなる。ハンマ42は、駆動軸41の軸方向に沿った方向において打撃部45側への力をハンマーバネ43から受けている。
【0062】
弾性体50がリング状であることにより、ハンマ42に対してハンマーバネ43がどのように回転していても、ハンマーバネ43と溝部426の底部との衝突を確実に阻止することができる。
【0063】
溝部426に弾性体50が収容されることにより、弾性体50が所定の位置からずれにくくなる。
【0064】
弾性体50がフッ素ゴムで構成されることにより、弾性体50の劣化が抑制される。
【0065】
弾性体50の硬度が85度以上であることにより、弾性体50の剛性を確保でき、弾性体50の代わりに鋼球が用いられる場合と比較して、ハンマ42及び打撃部45の動作への影響が抑えられる。
【0066】
ハンマーバネ43が最も収縮した状態の弾性力が弾性体50にかかった時のつぶし率が30%以下であることにより、弾性体50の剛性及び耐久性を確保できる。
【0067】
(実施形態の変形例)
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0068】
電動工具1は、ファン33を備えていなくてもよい。
【0069】
ファン33は、ロータ本体310の後方に配置されていてもよい。つまり、ファン33と伝達機構4との間に、ロータ本体310が配置されていてもよい。
【0070】
回転体R1は、ロータ本体310に加えて、中間部材を含んでいてもよい。中間部材は、ロータ本体310と伝達機構4との間に配置されロータ31と共に回転する。実施形態のファン33は、中間部材の一例である。
【0071】
軸受53として、異物の侵入を抑制するシールを有したシールベアリングを用いてもよい。
【0072】
潤滑剤は、半固体潤滑剤に限らず、例えば、液体潤滑剤(潤滑油等)であってもよい。
【0073】
伝達機構4は、実施形態で説明した構成に限らず、遊星歯車機構48とは異なる歯車機構であってもよい。また、伝達機構4は、歯車に限らず、クラッチ板等を含んでいてもよい。
【0074】
電動工具1は、インパクトドライバーに限らず、例えば、インパクトレンチ、ドリルドライバー、ハンマドリル又はジグソー等でもよい。
【0075】
先端工具72は、保持部71に着脱可能に取り付けられてもよいし、保持部71に一体的に固定されていてもよい。
【0076】
弾性体50は、Oリングにより構成されなくてもよく、例えばDリング等、断面が円形状以外の形状をしたリング状の部材により構成されてもよい。また、弾性体50は、リング状をした部材により構成されなくてもよい。例えば、弾性体50は、複数の球状部材により構成されてもよい。
【0077】
弾性体50の材質は、フッ素ゴムに限定されず、シリコンゴム、NBR(Nitrile butadiene rubber)等の各種のゴムが用いられる。また、弾性体50の材質は、例えばエラストマーであってもよく、ゴムに限定されない。
【0078】
弾性体50の硬度は、85度以上に限定されない。
【0079】
ハンマーバネ43が最も収縮した状態の弾性力が弾性体50にかかった時のつぶし率は、30%以下に限定されない。
【0080】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0081】
第1の態様に係る電動工具(1)は、インパクト機構(IM1)を有する。インパクト機構(IM1)は、駆動軸(41)と、ハンマ本体(420)を有するハンマ(42)と、打撃部(45)と、ハンマーバネ(43)と、ハンマ本体(420)とハンマーバネ(43)との間に挟まれた弾性体(50)と、を少なくとも備える。
【0082】
上記の構成によれば、弾性体(50)の代わりに鋼球が用いられているものと比較して、衝撃及び振動が低減される。
【0083】
また、第2の態様に係る電動工具(1)は、第1の態様において、弾性体(50)は、リング状である。
【0084】
上記の構成によれば、ハンマ(42)に対してハンマーバネ(43)がどのように回転していても、ハンマーバネ(43)と溝部(426)の底部との衝突を確実に阻止することができる。
【0085】
また、第3の態様に係る電動工具(1)は、第1又は第2の態様において、ハンマ本体(420)は、後方に向けて開口するリング状をした溝部(426)を有する。溝部(426)に弾性体(50)が収容される。
【0086】
上記の構成によれば、弾性体(50)が所定の位置(溝部426)からずれにくくなる。
【0087】
また、第4の態様に係る電動工具(1)は、第1~第3のいずれかの態様において、ハンマーバネ(43)と弾性体(50)との間に、リング状をした板部材(51)を更に備える。
【0088】
上記の構成によれば、ハンマ本体(420)は、ハンマーバネ(43)に対して回転しやすくなる。
【0089】
また、第5の態様に係る電動工具(1)は、第1~第4のいずれかの態様において、弾性体(50)は、フッ素ゴムである。
【0090】
上記の構成によれば、弾性体(50)の劣化が抑制される。
【0091】
また、第6の態様に係る電動工具(1)は、第1~第5のいずれかの態様において、弾性体(50)は、硬度85度以上である。
【0092】
上記の構成によれば、ハンマ(42)及び打撃部(45)の動作への影響が抑えられる。
【0093】
また、第7の態様に係る電動工具(1)は、第1~第6のいずれかの態様において、ハンマーバネ(43)が最も収縮した状態の弾性力が弾性体(50)にかかった時のつぶし率が30%以下である。
【0094】
上記の構成によれば、弾性体(50)の剛性及び耐久性を確保することができる。
【0095】
第1の態様以外の構成については、電動工具(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 電動工具
41 駆動軸
42 ハンマ
420 ハンマ本体
426 溝部
43 ハンマーバネ
45 打撃部
50 弾性体
51 板部材
IM1 インパクト機構