(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167755
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両用入力装置及び車両用入力方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241127BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20241127BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20241127BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/044
G06F3/0354 453
G06F3/041 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084039
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大泉 透
(72)【発明者】
【氏名】上島 宏幸
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AC01
(57)【要約】
【課題】車両の振動時に、ボタン操作を認識し易くした車両用入力装置及び車両用入力方法を提供する。
【解決手段】車両の室内に設けられるボタン3と、ボタン3の背面下に設けられる静電センサ10と、車両の振動を検出する振動検出部と、静電センサの出力に基づき、ボタンの表面上で所定の操作認識範囲内のタッチ操作を認識する操作認識装置40を備え、操作認識装置40は、振動検出部により検出された振動により乗員が感じる振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、主体となった振動成分の大きさに応じて、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に設けられるボタンと、
前記ボタンの背面下に設けられる静電センサと、
前記車両の振動を検出する振動検出部と、
前記静電センサの出力に基づき、前記ボタンの表面上で所定の操作認識範囲内のタッチ操作を認識する操作認識装置を備え、
前記操作認識装置は、
検出された前記車両の振動により乗員が感じる振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、
主体となった振動成分の大きさに応じて、前記操作認識範囲の面積及び/又は前記タッチ操作の感度を大きくする車両用入力装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用入力装置において、
前記操作認識装置は、
前記主体となった振動成分が面方向振動成分である場合には、前記操作認識範囲の面積を大きくし、
前記面方向振動成分は、前記乗員の操作対象となる前記ボタンの表面に沿って振動する成分である車両用入力装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用入力装置において、
前記操作認識装置は、
前記主体となった振動成分が法線方向振動成分である場合には、前記タッチ操作の感度を大きくし、
前記法線方向振動成分は、前記乗員の操作対象となる前記ボタンの表面に対して法線方向に沿って振動する成分である車両用入力装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の車両用入力装置において、
前記操作認識装置は、
前記主体となった振動成分の周波数を特定し、
特定された周波数が人の感じ易い周波数範囲に含まれる場合に、前記操作認識範囲の面積及び/又は前記タッチ操作の感度を大きくする車両用入力装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の車両用入力装置において、
前記操作認識装置は、
前記主体となった振動成分の周波数を特定し、
前記主体となった振動成分が前記鉛直振動の成分である場合には、特定された周波数が第1周波数範囲に含まれるときに、前記操作認識範囲の面積及び/又は前記タッチ操作の感度を大きくし、
前記主体となった振動成分が前記水平振動の成分である場合には、特定された周波数が第2周波数範囲に含まれるときに、前記操作認識範囲の面積及び/又は前記タッチ操作の感度を大きくし、
前記第1周波数範囲及び前記第2周波数範囲は人の感じ易い周波数範囲であり、第1周波数範囲は前記第2周波数範囲より高い周波数の範囲である車両用入力装置。
【請求項6】
プロセッサにより実行される、車両の室内に設けられたボタンへのタッチ操作を検出する車両用入力方法であって、
前記プロセッサは、
前記ボタンの背面下に設けられた静電センサの出力に基づき、前記ボタンの表面上で所定の操作認識範囲内のタッチ操作を認識し、
前記車両の振動を検出し、
検出された前記車両の振動により乗員が感じる振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、
主体となった振動成分の大きさに応じて、前記操作認識範囲の面積及び/又は前記タッチ操作の感度を大きくする車両用入力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用入力装置及び車両用入力方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に取り付けて使用される車両用入力装置が知られている。例えば特許文献1記載の車両用入力装置は、不透明な板状部材であって、車両の内装の一部を提供する内装パネルと、内装パネルを車両に対して固定するための固定部と、を備える。内装パネルには、乗員が指示可能な制御内容を示す複数の図柄が配されている操作エリア部と、操作エリア部以外の部分である非操作エリア部とが設定される。操作エリア部の背面側には、 操作エリア部の表面において図柄が配されている部分であるスイッチ部に対するユーザの押下操作を検出するための押下センサと、操作エリア部の表面と直交する方向である操作面直交方向に、操作エリア部を振動させる加振装置と、が配置され、押下センサの検出結果に基づいて乗員の操作内容を特定するとともに、加振装置を振動させる制御部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020-003792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両用入力装置において、車両の振動により、乗員が感じやすい振動が発生している場合には、ユーザが操作エリア部を触りにくくなり、ユーザの操作を認識し難くなるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車両の振動時に、ボタン操作を認識し易くした車両用入力装置及び車両用入力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検出された車両の振動により乗員が感じる振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、主体となった振動成分の大きさに応じて、ボタンの表面上の操作認識範囲の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくすることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、車両の振動時に、タッチ操作を認識し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る車両用入力装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、ボード、静電センサ、振動センサ、及び振動素子の断面図である。
【
図4】
図4は、ボードの一部を表す図であり、(а)はボードの斜視図を、(b)はボードの平面図を示す。
【
図5】
図5は、
図2に示すボードの一部を拡大した拡大平面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す操作認識装置の制御フローを示すフローチャートである。
【
図7】
図7(а)は面方向成分の大きさに対する面積の拡大率の特性を示すグラフであり、
図7(b)は面方向成分の大きさに対する感度の大きさの特性を示すグラフである。
【
図8】
図8(а)は法線方向成分の大きさに対する操作認識範囲の大きさの特性を示すグラフであり、
図8(b)は法線方向成分の大きさに対する感度の増加率の特性を示すグラフである。
【
図9】
図9(а)は、面方向成分の大きさに対する面積の拡大率の特性を示すグラフであり、
図9(b)は、法線方向成分の大きさに対する感度の大きさの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用入力装置及び車両用入力方法の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る車両用入力装置100のブロック図である。車両用入力装置は、静電センサ10、振動センサ20、振動素子30、及び操作認識装置40を備えている。車両用入力装置100は、車両に設けられており、ユーザが車両の室内に設けられたボタンに触れた場合に、ボタンへの入力を検知し、タッチ操作に応じた操作指令をECUに送信する。
【0010】
車両用入力装置100は車室内に設けられている。
図2はダッシュボードの正面図である。なお、
図2に示すxy軸について、x軸は車幅方向(車両の進行方向に対する左右方向)を示しており、y軸は車両の高さ方向を示す。また乗員(運転者又は助手席の乗員)は、
図2に示すダッシュボードを正面にして座席に座るため、乗員の体の軸方向(背骨に沿う方向)がy軸方向となり、座席の座面に沿った方向がx又はz方向となる。
【0011】
図2に示すように、車室前部に位置するインストルメントパネルには、ナビゲーションシステムやオーディオシステム等の車室内のシステムを操作するためのタッチパネル式ディスプレイ1が設けられており、ディスプレイ1の下部には、ボード2が設けられている。またボード2には、タッチ操作による入力を受け付けるための複数のボタン3が配置されている。複数のボタン3は、空調システムを操作用のボタンになっており、例えば、オートエアコンのオン/オフボタン、温度設定用の上下ボタン、風量設定用のプラス/マイナスボタン、デフロスターのオン/オフボタン、デフォッガーのオン/オフボタンなどである。ボード2に設けられるメインスイッチ4がオンになると、ボタン3に含まれるアイコンが点灯し、ユーザにとってアイコンが見やすくなる。メインスイッチ4は、車両全体の電源のオンオフを制御するためのスイッチであり、パワースイッチ又はイグニッションスイッチに相当する。メインスイッチ4は機械的なスイッチである。一方、ボタン3は機械的なスイッチではなく、ボード2と一体になっており、静電容量式のタッチスイッチ(無接点スイッチ)になっている。例えば、ユーザはメインスイッチ4をオンにした後、ユーザが、空調システムをオートエアコンモードで動作させる場合には、ユーザは「AUTO」アイコンのボタンを指で触れればよい。車室前部のステアリングには、ステアリングスイッチ5が設けられている。なお、以下の説明では、車両用入力装置100をボタン3に適用した例を説明するが、車両用入力装置100はステアリングスイッチ5に適用してもよい。車両用入力装置100は、空調システムを操作するためのボタンに限らず、例えばナビゲーションシステムやオーディオシステム等のシステムを操作するためのボタンに適用してもよい。
【0012】
静電センサ10はボタン3の背面下に設けられ、ユーザのボタン3へのタッチ操作を検出する。ユーザの指がボタン3に触れる、又は、ボタン3に近づくと、静電センサ10に含まれる電極と指との間で電流が流れ、静電容量が変化する。静電センサ10は、この静電容量の変化を検知して検出値を操作認識装置40に出力する。
【0013】
振動センサ20は、車両の振動を検出する。振動センサ20はボディ(車体)に設けられている。振動センサ20は検出値を操作認識装置40に出力する。振動センサ20は、例えばGセンサ(加速度センサ)やジャイロセンサである。振動センサ20は、ナビゲーションシステムに含まれるジャイロセンサ、シャシ系やエアバックなどの制御に利用されるセンサなどでもよい。
【0014】
振動素子30は、ボタン3の付近に設けられており、操作認識装置40によりタッチ操作を認識した時に振動素子30を振動させる。振動素子30は、圧電素子等を有している。ユーザは、振動素子30の振動を通じて、タッチ操作が正常に認識されたことを把握できる。
【0015】
静電センサ10の周囲の構造を、
図3を参照して説明する。
図3は、ボード2、静電センサ10、振動センサ20、及び振動素子30の断面図である。
図3に示すyz軸について、x軸は車幅方向を示しており、z軸は車両の前後方向(車両の進行方向)を示す。なお、
図4以下の図面において、xyzの軸方向は、
図2及び
図3に示すxyz軸と同一の方向である。静電センサ10は、電極11及び誘電体12を有している。静電センサ10の表面は、ボード2に覆われている。複数の電極11は、複数のボタン3に対応して、誘電体12の底面に設けられている。誘電体12の表面には、複数のボタン3はボード2に埋め込まれている。すなわち、複数のボタン3及び複数の電極11は誘電体12を介して対向する。また電極11の裏面には、振動素子30が設けられている。なお、
図3には図示されていないが、バックライトが、複数のボタン3の下にそれぞれ設けてもよく、バックライトでボタン3の下から照射してもよい。
【0016】
操作認識装置40は、静電センサ10の出力に基づき、ボタン3の表面上で所定の操作認識範囲内のタッチ操作を認識する。また操作認識装置40は、振動センサ20により乗員が感じる振動(以下、人感振動とも称する)が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、主体となった振動成分の大きさに応じて、操作認識範囲の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。操作認識装置40は、コントローラであり、操作認識装置40の有する機能を発揮するための機能ブロックとして、振動成分判定部41と、操作認識部42と、操作認識範囲制御部43と、感度制御部44とを有している。操作認識装置40は、プログラムを記憶するメモリと、プログラムを実行するためのプロセッサを有しており、プロセッサがプログラムを実行することで、機能ブロックの処理が実行される。
【0017】
振動成分判定部41は振動センサ20により検出された検出値から、人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定する。車両が振動すると、その振動は乗員にも伝わる。振動センサ20は車両の振動を検出しているため、振動成分判定部41は、振動センサ20により検出された振動を人感振動とする。人の感じ易い振動は、鉛直振動と水平振動と異なっており、例えば鉛直振動であれば、人は4~8KHzの周波数範囲で振動を感じ易く、水平振動であれば、人は3KHz以下の周波数範囲で振動を感じ易い。つまり、3KHz以下の周波数であれば水平振動の方が感じやすく、3KHzより高い周波数であれば鉛直振動の方が感じやすい。なお鉛直方向は、体の軸方向(背骨に沿う方向)であり、水平方向は座席の座面に沿った方向に相当する。なお、人が感じ易い周波数範囲(3KHz以下と4~8KHz)は一例であり、人が感じ易い振動の周波数と鉛直方向と水平方向で比較した場合には、鉛直振動の周波数範囲(本発明の「第1周波数範囲」に相当)が、水平振動の周波数範囲(本発明の「第2周波数範囲」に相当)より高ければよい。以下の説明において、鉛直振動は、人感振動のうち鉛直方向を振動成分とする振動を示し、水平振動は人感振動のうち水平方向を振動成分とする振動を示す。
【0018】
振動成分判定部41は、振動センサ20の検出値から車両の振動成分を抽出し、抽出した振動成分のうち、鉛直振動に影響する振動成分と、水平振動に影響する振動成分とを特定する。振動成分判定部41は、鉛直振動に影響する振動成分と、水平振動に影響する振動成分とを比較することで、車両が振動した時の人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定する。例えば、振動成分判定部41は、鉛直振動に影響する振動成分のうち人が感じ易い周波数範囲の鉛直振動の振幅と、水平振動に影響する振動成分のうち人が感じ易い周波数範囲の水平振動の振幅とを比較し、振幅の大きい方の振動を、主体となった振動成分として判定する。また、振動成分判定部41は、所定時間あたりに、人が感じ易い周波数範囲の鉛直振動と、人が感じ易い周波数範囲の水平振動とを比較し、振動の発生回数が多い方を、主体となった振動成分として判定してもよい。また振動成分判定部41は、判定を簡素化するために、比較対象となる振動成分を周波数で区切ることなく、特定した鉛直振動の振幅と特定した水平振動の振幅とを比較し、振幅の大きい方を、主体となった振動成分として判定してもよい。同様に、振動成分判定部41は、鉛直振動及び水平振動の所定時間あたりの振動発生回数から、主体となった振動成分を判定してもよい。
【0019】
車両が振動すると、車両の振動はボタン3を配置したボード2に伝わるため、ボタン3も振動することがある。また車両の振動する方向に応じて、ボタン3は、ボタン3の表面に沿った方向に揺れたり、ボタン3の表面に対して法線方向に揺れたりする。
図4を参照して、ボタン3の振動成分について説明する。
図4は、複数のボタン3を配置したボード2の一部を表す図であり、(а)はボード2の斜視図を、(b)は平面図を示す。なお、
図4では、複数のボタン3を含むボード2の一部のみを図示しており、例えば電極11、誘電体12等の図示を省略している。xy平面は、ボタン3の表面(パネル面)に沿う平面であり、z軸はボタン3の表面(パネル面)に対して垂直な方向である。なお、ボタン3が、
図2に示すようなインストルメントパネルに配置された場合には、乗員の体の軸方向(背骨に沿う方向、鉛直方向)が、ボタン3の表面(パネル面)に沿う方向(面方向)となり、座席の座面に沿った方向(水平方向)が、ボタン3の表面(パネル面)に対して垂直な方向(法線方向)となる。なお、ボタン3がコンソールボックスなどに配置され、ボタン3の表面が水平あるいは水平に対して少し傾いた状態となる場合には、乗員の体の軸方向(背骨に沿う方向、鉛直方向)が、ボタン3の表面(パネル面)に対して垂直な方向(法線方向)となり、座席の座面に沿った方向(水平方向)が、ボタン3の表面(パネル面)に沿う方向(面方向)となる。なお、以下の説明では、ボタン3が、
図2に示すようなインストルメントパネルに配置され、ボタン3の面方向が人感振動における鉛直方向に対応し、ボタン3の法線方向が人感振動における水平方向に対応する。
【0020】
車両の振動は複数方向の振動成分を含んでいるため、ボタン3は、xy平面に沿う方向や、z軸に沿う方向に振動する。そして、xy平面に沿う方向の振動成分がボタン3の面方向振動成分に相当し、z軸に沿う方向の振動成分が法線方向振動成分に相当する。また車両の振動に含まれる振動成分の大きさに応じて、面方向振動成分と法線方向振動成分の大きさが異なる。例えば、
図2に示すように、複数のボタン3が乗員の正面を向くように配置されており、車両が上下方向(
図4のx軸方向)の揺れが大きい場合、又は、車両が左右方向(車幅方向、
図4のy軸方向)の揺れが大きい場合には、ボタン3の振動成分のうち面方向振動成分が大きくなる。また、車両が前後方向(車両進行方向、
図4のz軸方向)の揺れが大きい場合には、ボタン3の振動成分のうち法線方向振動成分が大きくなる。つまり、車両の振動成分の方向と大きさは、ボタン3の振動成分の方向と大きさに対応する。
【0021】
また車両の振動はボタン3だけでなく乗員にも伝わるため、ボタン3の振動成分の方向と大きさは、人感振動の振動成分の方向と大きさとも対応する。例えば、車両の振動により、鉛直振動を主体とする人感振動が発生した場合には、ボタン3の表面に沿う方向にも振動が発生する。このとき、乗員は、揺れを感じつつ、ボタン3が面方向に揺れていることになり、ボタン3を操作しにくくなる。また、車両の振動により、水平振動を主体とする人感振動が発生した場合には、ボタン3の表面に対して法線方向にも振動が発生する。このとき、乗員は、揺れを感じつつ、ボタン3が法線方向に揺れていることになり、ボタン3を操作しにくくなる。このように、車両の振動した場合には、振動の方向によって人は振動の感じ易さが異なり、ボタン3の振動する方向も異なる。
【0022】
振動成分判定部41は、人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定すると、主体となった振動成分が、ボタン3の面方向振動成分であるか法線方向振動成分であるか特定する。ボタン3の面方向振動成分は、乗員の操作対象となるボタン3の表面に沿って振動する成分である。ボタン3の法線方向振動成分は、乗員の操作対象となるボタン3の表面に対して法線方向に沿って振動する成分である。上記のとおり、人感振動における鉛直振動及び水平方向の各成分と、ボタン3の面方向及び法線方向の振動成分は、座席に座った状態の乗員の姿勢と、ボタン3の配置によって、相関性をもつ。例えば、
図2に示すようボタン3の配置において、振動成分判定部41は、鉛直振動を主体となった振動成分として判定した場合には、主体となった振動成分はボタン3の面方向振動成分であると判定する。また、振動成分判定部41は、水平振動を主体となった振動成分として判定した場合には、主体となった振動成分はボタン3の法線方向振動成分であると判定する。
【0023】
操作認識部42は、静電センサ10の出力値に基づき、ボタン3のタッチ操作を認識する。具体的には、操作認識部42は、静電センサ10の出力から静電センサ10の静電容量を取得する。ユーザがボタン3へのタッチ操作をした場合には、静電センサ10の静電容量が増加する。操作認識部42は、取得した静電容量と所定の判定閾値を比較し、静電容量が判定閾値以上である場合に、タッチ操作有りと判定し、出力値が判定閾値未満である場合には、タッチ操作なしと判定する。なお、ノイズのような短時間あたりの静電容量変化を、タッチ操作有りと判定しないように、操作認識部42は、所定期間の静電容量が判定閾値以上である場合に、タッチ操作有りと判定してもよい。なお、静電センサ10は、タッチ操作時に静電容量を減少させる構造である場合には、操作認識部42は、静電容量が判定閾値未満である場合に、タッチ操作有りと判定すればよい。なお、操作認識部42は、静電容量の変化量と変化量閾値とを比較して、タッチ操作の有無を判定してもよい。
【0024】
タッチ操作有りと判定した場合には、操作認識部42は、タッチ操作を認識したボタンの操作指令を、空調を制御するECUに出力する。例えば、ECUは、デフロスターがオフの状態で、操作認識部42から、デフロスター操作用のボタン3を操作した旨の操作指令を受信した場合には、デフロスターをオフからオンに切り替える。
【0025】
操作認識範囲制御部43は、振動成分判定部41の判定結果に応じて、操作認識範囲70の面積を設定する。操作認識範囲70は、ボタン3の表面上で、タッチ操作を有効に認識できる範囲を示しており、複数のボタン3毎に決められている。
図5を参照し、ボタン3の操作認識範囲70について説明する。
図5はボード2の一部を拡大した拡大平面図である。操作認識範囲70は、ボタン3の表面上の閉空間で規定され、
図5に示すように、ボタン3のアイコンを中心とした所定範囲である。なお、
図5の実線で囲う操作認識範囲70は拡大前を示し、点線で囲う操作認識範囲70は拡大後を示す。操作認識装置40は、操作認識範囲70の大きさを変えることができる。例えば、電極11が平面に沿って縦方向と横方向にアレイ上に配置されており、静電センサ10は、ボタン3へのタッチ操作の位置に応じて静電容量の変化を検出できるような構造になっている。操作認識部42は、アレイ状に配置された電極11の座標のうち、操作認識範囲70に対応する部分で、静電容量の変化を検出した場合には、タッチ操作有りと判定する。操作認識範囲制御部43は、静電容量の変化を検出可能な、電極11の座標範囲を広げることで、操作認識範囲70の面積を大きくする。
【0026】
操作認識範囲制御部43は、静電容量の変化を検出可能な電極11の座標範囲の面積
を変えることで、操作認識範囲70の面積を変えることができる。なお、操作認識範囲制御部43は、操作認識範囲70の面積を変えるためには、必ずしも電極11の構造を利用する必要はなく、例えば、タッチ操作の位置に応じた閾値の設定を利用してもよい。操作認識範囲制御部43は、アレイ状に配置された電極11の座標位置毎に、タッチ操作の有無を判定するための閾値を設定する。操作認識部42は、静電センサ10の静電容量が判定閾値以上である場合にタッチ操作有りと判定し、静電センサ10の静電容量が判定閾値未満である場合にタッチ操作無しと判定する。操作認識範囲制御部43は、ボタン3の表面上に位置する、静電センサ10の検出可能範囲のうち操作認識範囲70に該当する部分では、タッチ操作の有無を検出できるように判定閾値を初期値に設定する。静電センサ10の検出可能範囲は、電極11の配列された範囲に対応する。一方、操作認識範囲制御部43は、ボタン3の表面上に位置する、静電センサ10の検出可能範囲のうち操作認識範囲70に該当しない部分では、タッチ操作の有りと検出しないように判定閾値を初期値より高くする。このとき、操作認識範囲制御部43は、タッチ操作の有りと検出しないように、判定閾値を、タッチ操作で変化する静電容量の上限値以上の値に設定する。これにより、操作認識部42は、操作認識範囲70に該当しない部分のタッチ操作により、静電容量が変化した場合でも、タッチ操作無しと判断できる。そして、操作認識範囲制御部43は、電極11の座標位置毎に、判定閾値を変えることで、操作認識範囲70の拡大及び縮小を可能とする。
【0027】
また操作認識範囲制御部43は、操作認識範囲70の面積を変えるために、例えば静電センサ10の出力波形に対する信号処理を用いてもよい。操作認識装置40は、静電センサ10の出力波形からタッチ操作の位置を特定できる。操作認識範囲制御部43は、静電センサ10の出力波形に対してフィルタリング処理を行い、静電センサ10の検出可能範囲のうち操作認識範囲70に該当しない電極位置からの信号波形をカットする。そして、操作認識範囲制御部43は、カットする部分を変える、言い換えると、フィルタリング処理で通過させる信号波形の範囲を変えることで、操作認識範囲70の拡大及び縮小を可能とする。
【0028】
操作認識範囲制御部43及び感度制御部44は、振動成分判定部41の判定結果から、主体となった振動成分の大きさ(振幅)を特定する。主体となった振動成分がボタン3の面方向振動成分である場合には、操作認識範囲制御部43は操作認識範囲70の面積を大きくする。
図2の例では、人感振動が鉛直振動の成分を主体とする場合には、鉛直振動がボタン3の面方向の振動と対応するため、操作認識範囲制御部43は鉛直振動の振動成分の大きさに応じて、操作認識範囲70の面積を大きくする。車両の振動により、人感振動が発生している場合に、ボタン3が面方向に沿って振動するときには、ユーザがボタン3に触れる位置に対して、ボタン3が表面に沿う方向にずれることで、タッチする位置がずれてしまう。特に、ユーザにとって感じやすい振動が発生した場合には、タッチする際の位置ずれはさらに大きくなる。例えば、車両の走行中に、車室内のユーザが、デフロスターのアイコンに触れたつもりが、デフロスターのボタン3の操作部分が表面に沿って振動することで、タッチの位置がずれて、デフロスターのボタン3に触れていない、あるいは、別のボタン3やボタン3を配置していない位置を触れてしまう。このように、ボタン3の表面に沿う方向の振動が支配的な場合は、指がボタン3から上下左右にずれ易くなるため、ボタン3の誤操作の可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、振動センサ20を用いて、車両の振動を検出し、人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、主体となった振動成分の大きさ(振幅)が大きい場合には、操作認識範囲70の面積を大きくする。これにより、車両振動時のボタン3の位置ずれ、又は、タッチ位置の位置ずれにより、ユーザがボタン3を押し損なうことを防止できる。
【0029】
感度制御部44は、振動成分判定部41の判定結果に応じて、タッチ操作の感度(静電センサ10の検出感度)を設定する。静電センサ10は、タッチ操作時の静電容量の変化量に対して、静電センサ10の出力値を増加するための増幅回路を有している。感度制御部44は、静電センサ10に含まれる増幅回路のゲインを設定する。感度を高くする際には、感度制御部44は、ゲインを大きくするための制御指令を、静電センサ10の増幅回路に送信する。ゲインが大きくなると、静電センサ10は、検出した静電容量の変化量に対して、操作認識装置40への出力を大きくする。
【0030】
主体となった振動成分がボタン3の法線方向振動成分である場合には、感度制御部44は、操作認識範囲70内のタッチ操作の感度を大きくする。
図2の例では、人感振動が水平振動の成分を主体とする場合には、水平振動がボタン3の法線方向の振動と対応するため、感度制御部44は水平振動の振動成分の大きさに応じて、タッチ操作の感度を大きくする。車両の振動により、人感振動が発生している場合に、ボタン3が表面の法線方向に沿って振動するときには、ユーザがボタン3に触れようとしたときに、ボタン3が指の位置から離れる方向に移動し、タッチ操作時のボタン3への押圧が小さくなったり、ボタン3への指の接触範囲が小さくなることがある。このような場合には、静電センサの出力値が小さくなってしまう。このように、ボタン3の表面に対して法線方向の振動が支配的な場合は、指とボタン3との間の距離がずれ易くなるため、振動の無い通常時に比べて、ユーザがボタン3を押すことが難しい状況となる。そのため、本実施形態では、振動センサ20を用いて、車両の振動を検出し、人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、主体となった振動成分の大きさ(振幅)が大きい場合には、タッチ操作の感度を大きくする。これにより、タッチ操作に対して迅速にレスポンスできるようにして、ボタン3の操作性を高める。
【0031】
次に、操作認識装置40の制御フロー(車両用入力方法)を説明する。
図6は、操作認識装置40の制御フローを示すフローチャートである。なお、
図6の制御フローは、例えば車両のメインスイッチのオン状態で繰り返し実行される。また以下の説明において、制御対象(ユーザの捜査対象)となるボタン3は、
図2に示すように、ボタン3はインストルメントパネルに配置され、ボタン3の面方向が人感振動における鉛直方向に対応し、ボタン3の法線方向が人感振動における水平方向に対応する。なお、ボタン3の面方向が人感振動における水平方向に対応し、ボタン3の法線方向が人感振動における鉛直方向に対応する場合には、ステップ3の判定処理で鉛直振動が主体である(ステップSの判定で「Yes」)と判定後に、ステップS8~S11の制御フローを実行すればよく、ステップ3の判定処理で水平振動が主体である(ステップSの判定で「No」)と判定後に、ステップS4~S7の制御フローを実行すればよい。
【0032】
ステップS1にて、振動成分判定部41は、振動センサ20の検出値(検出信号)を取得する。ステップS2にて、振動成分判定部41は車両の振動成分を抽出し、抽出した振動成分のうち鉛直振動に影響する振動成分と水平振動に影響する振動成分とを特定する。
【0033】
ステップS3にて、振動成分判定部41は、人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定する。人感振動が鉛直振動の成分を主体とする判定した場合には、ステップS4にて、操作認識範囲制御部43は操作認識範囲70の面積を大きくする(操作認識範囲70を拡大する)。操作認識範囲制御部43は、鉛直振動の大きさが大きいほど、操作認識範囲70の面積が大きくなるよう、操作認識範囲70の面積を大きくする。ただし、操作認識範囲制御部43には、操作認識範囲70の面積の拡大率を決めるための面積閾値が設定されている。例えば、
図4又は
図5に示すように、複数のボタン3が列状に並んでいる場合に、操作認識範囲70を拡大しすぎると、隣同士に配置されたボタンにおける各操作認識範囲70の距離が短くなり、ボタン3の押し間違いの発生確率が高くなる。そのため、隣同士の操作認識範囲70が接近し過ぎないようにするために、面積閾値が設定されており、面方向振動成分(鉛直振動の振動成分に相当)の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を大きくする場合に、操作認識範囲70の面積が所定の面積閾値に達するときには、操作認識範囲制御部43は、面積の拡大率を高い第1拡大率から、第1拡大率よりも低い第2拡大率に変更する。すなわち、ステップS5にて、操作認識範囲制御部43は、面方向振動成分の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を第1拡大率で大きくする場合に、操作認識範囲70の面積が面積閾値以上になるか否かを判定する。操作認識範囲70の面積が面積閾値以上になる場合には、ステップS6にて、操作認識範囲制御部43は、操作認識範囲70の面積の拡大率を、第1拡大率から第2拡大率に変更することで、面積拡大率を小さくする。すなわち、操作認識範囲制御部43は、拡大率をなまらせて、拡大率の上昇を抑えている。
【0034】
また、ステップS7にて、面方向振動成分の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を大きくする場合に、操作認識範囲70の面積が所定の面積閾値に達するときには、感度制御部44は面方向振動成分の大きさに応じてタッチ操作の感度を大きくする。すなわち、感度制御部44は、面方向振動成分の大きさが大きいほど感度が大きくなるように、感度の大きさを設定してもよい。操作認識範囲70の面積が所定の面積閾値に達するときには、操作認識範囲70の面積の拡大率が低い拡大率に抑えられるため、面積の拡大率を抑える代わりに、タッチ操作の感度が増大する。
【0035】
図7を参照し、面方向振動成分の大きさに対する、面積の拡大率の関係と、感度の関係について説明する。
図7(а)は面方向成分の大きさに対する面積の拡大率の特性を示すグラフであり、
図7(b)は面方向成分の大きさに対する感度の大きさの特性を示すグラフである。
図7(а)に示すように、面方向振動成分の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を大きくする場合に、操作認識範囲70の面積が面積閾値に達するときには、操作認識範囲70の面積の拡大率を小さくする。また、
図7(b)に示すように、面方向振動成分の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を大きくする場合に、操作認識範囲70の面積が面積閾値に達するときには、感度を大きくする。
【0036】
ステップS7のフローの後、操作認識装置40はステップS12の制御処理を実行する。またステップS5の判定において、操作認識範囲70の面積が面積閾値未満であると判定された場合には、操作認識装置40はステップS12の制御処理を実行する。
【0037】
ステップS3の判定において、人感振動が水平振動の成分を主体とする判定した場合には、ステップS8にて、感度制御部44はタッチ操作の感度を大きくする。感度制御部44は、水平振動の大きさが大きいほど、感度が大きくなるようにする。ただし、感度制御部44には、感度の増加率を決めるための感度閾値が設定されている。タッチ操作の感度、すなわち静電センサ10の検出感度が高くなりすぎると、ノイズによるゴーストタッチが発生する可能性が高まる。そのため、ゴーストタッチの発生を防止するために、感度閾値が設定されており、法線方向振動成分(水平振動の振動成分に相当)の大きさに応じて感度を大きくする場合に、感度が所定の感度閾値に達するときには、感度制御部44は、感度の増加率を高い第1増加率から、第1増加率よりも低い第2増加率に変更する。すなわち、ステップS9にて、感度制御部44は、法線方向振動成分の大きさに応じて感度を第1増加率で大きくする場合に、感度が感度閾値以上になるか否かを判定する。感度が感度閾値以上になる場合には、ステップS10にて、感度制御部44は、感度の増加率を、第1増加率から第2増加率に変更することで、感度増加率を小さくする。すなわち、感度制御部44は、増加率をなまらせて、感度の上昇を抑えている。
【0038】
また、ステップS11にて、水平振動の振動成分の大きさに応じて感度を大きくする場合に、タッチ操作の感度が所定の感度閾値に達するときには、操作認識範囲制御部43は法線方向振動成分の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を大きくする。すなわち、操作認識範囲制御部43は、法線方向振動成分の大きさが大きいほど操作認識範囲70の面積が大きくなるように、操作認識範囲70の面積の大きさを設定する。感度が所定の感度閾値に達するときには、感度の増加率が低い増加率に抑えられるため、感度の増加率を抑える代わりに、操作認識範囲70の面積を大きくする。
【0039】
図8を参照し、法線方向振動成分の大きさに対する、感度の増加率の関係と、操作認識範囲70の関係について説明する。
図8(а)は法線方向成分の大きさに対する操作認識範囲70の大きさの特性を示すグラフであり、
図8(b)は法線方向成分の大きさに対する感度の増加率の特性を示すグラフである。
図8(b)に示すように、法線方向振動成分の大きさに応じて感度を大きくする場合に、感度が感度閾値に達するときには、感度の増大率を小さくする。また、
図8(а)に示すように、法線方向振動成分の大きさに応じて感度を大きくする場合に、感度が感度閾値に達するときには、操作認識範囲70の面積を大きくする。
【0040】
ステップS11のフローの後、操作認識装置40はステップS12の制御処理を実行する。またステップS9の判定において、感度が感度閾値未満であると判定された場合には、操作認識装置40はステップS12の制御処理を実行する。
【0041】
ステップS12にて、操作認識部42は、静電センサ10の検出値(静電容量)が判定閾値以上であるか否かを判定する。静電センサ10の検出値(静電容量)が判定閾値以上である場合には、ステップS13にて、操作認識部42はタッチ操作有りと認識し、制御フローは終了する。静電センサ10の検出値(静電容量)が判定閾値未満である場合には、操作認識部42は、タッチ操作有りと認識せずに、制御フローは終了する。すなわち、操作認識装置40はステップS12~S14の制御フローを実行することで、静電センサの出力に基づき、ボタン3の表面上で所定の操作認識範囲70内のタッチ操作を認識する。また、操作認識装置40はステップS1~S11の制御フローを繰り返し実行すること、車両が振動した場合に、振動成分の大きさに応じて、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。なお、ステップS1~S14の制御フローを繰り返し実行している間に、車両の振動が無くなった場合、あるいは、鉛直振動の成分又は水平振動の成分を主体とするような振動が無くなった場合には、操作認識装置40は、拡大させた操作認識範囲70の面積及び増加させた感度を初期値に戻せばよい。初期値に戻す場合には、時間の経過と共に徐々に初期値になるように、操作認識範囲70の面積と感度が設定されればよい。
【0042】
上記のように、本実施形態において、車両用入力装置100は、ボタン3と、静電センサ10と、振動センサ20と、ボタン3の表面上で所定の操作認識範囲70内のタッチ操作を認識する操作認識装置40を備える。操作認識装置40は、振動センサ20により検出された車両の振動により乗員が感じる振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定し、主体となった振動成分の大きさに応じて、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。これにより、車両の振動により乗員が感じやすい振動が発生している場合に、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度が調整されるため、ボタン操作を認識し易くすることができる。その結果として、乗員が揺れを感じて、乗員がボタン3を押すことが難しい状況においても、快適なボタン操作を行うことができる。
【0043】
また本実施形態において、操作認識装置40は、主体となった振動成分が面方向振動成分である場合には、操作認識範囲70の面積を大きくする。これにより、車両の振動により乗員が感じやすい振動が発生している場合に、ボタン操作の位置がボタン3の表面に沿ってずれやすいときでも、快適なボタン操作を行うことができる。
【0044】
また本実施形態において、操作認識装置40は、主体となった振動成分が法線方向振動成分である場合には、タッチ操作の感度を大きくする。車両の振動により乗員が感じやすい振動が発生している場合に、ユーザの指の位置とボタン3の位置との間の距離が離れやすい状況においても、快適なボタン操作を行うことができる。
【0045】
また操作認識装置40は、主体となった振動成分の周波数を特定し、特定された周波数が人の感じ易い周波数範囲に含まれる場合に、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。これにより、車両の振動により、乗員の感じ易い周波数範囲をもつ振動が発生している状況においても、快適なボタン操作を行うことができる。
【0046】
なお本実施形態の変形例では、操作認識装置40は、主体となった振動成分の周波数を特定し、主体となった振動成分が鉛直振動の成分である場合には、特定された周波数が第1周波数範囲(例えば、4~8KHzの周波数範囲)に含まれるときに、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。また操作認識装置40は、主体となった振動成分が水平振動の成分である場合には、特定された周波数が第2周波数範囲に含まれるときに、操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。
【0047】
例えば、操作認識装置40は、鉛直振動に影響する振動成分の振幅と、水平振動に影響する振動成分の振幅とを比較することで、車両が振動した時の人感振動が鉛直振動と水平振動のどちらの成分を主体とするか判定する。操作認識装置40は、主体となった振動成分の周波数を特定する。主体となった振動成分が鉛直振動の成分である場合には、操作認識装置40は、特定された周波数が第1周波数範囲に含まれる判定する。特定された周波数が第1周波数範囲に含まれる場合には、操作認識装置40は操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。一方、特定された周波数が第1周波数範囲に含まれない場合には、操作認識装置40は操作認識範囲70の面積及びタッチ操作の感度を調整しない。
【0048】
主体となった振動成分が水平振動の成分である場合には、操作認識装置40は、特定された周波数が第2周波数範囲(例えば、3KHz以下の周波数範囲)に含まれる判定する。特定された周波数が第2周波数範囲に含まれる場合には、操作認識装置40は操作認識範囲70の面積及び/又はタッチ操作の感度を大きくする。一方、特定された周波数が第2周波数範囲に含まれない場合には、操作認識装置40は操作認識範囲70の面積及びタッチ操作の感度を調整しない。これにより、車両の振動により、乗員の感じ易い周波数範囲をもつ振動が発生している状況においても、快適なボタン操作を行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態において、操作認識装置40は、
図6に示す制御フローを全て実行する必要はなく、例えばステップS5~S7、S9~S11の制御フローを省いてもよい。また人感振動が鉛直振動の成分を主体とする判定した場合に、操作認識装置40は、操作認識範囲70の面積及びタッチ操作の感度を大きくしてもよい。また人感振動が水平振動の成分を主体とする判定した場合に、操作認識装置40は、操作認識範囲70の面積及びタッチ操作の感度を大きくしてもよい。
【0050】
なお変形例において、操作認識装置40は、面方向振動成分の大きさに応じて操作認識範囲70の面積を大きくする場合に、操作認識範囲70の面積が所定の面積閾値に達するときには、第2拡大率をゼロにして、操作認識範囲70の面積が面積閾値を超えて拡大しないようにしてもよく、あるいは、面積の拡大の代わりに感度を大きくしてもよい。また、操作認識装置40は、法線方向振動成分の大きさに応じて感度を大きくする場合に、感度が所定の感度閾値に達するときには、第2増加率をゼロにして、感度が感度閾値を超えて上昇しないようにしてもよく、あるいは、感度上昇の代わりに操作認識範囲70の面積を大きくしてもよい。
【0051】
なお本実施形態における振動センサ20が本発明の「振動検出部」に相当する。なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0052】
1 ディスプレイ
2 ボード
3 ボタン
4 メインスイッチ
5 ステアリングスイッチ
10 静電センサ
20 振動センサ
30 振動素子
40 操作認識装置
41 振動成分判定部
42 操作認識部
43 操作認識範囲制御部
44 感度制御部
70 操作認識範囲
100 車両用入力装置