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特開2024-167767蓄電池の仕分けシステム、蓄電池の仕分け端末機、蓄電池の仕分け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167767
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】蓄電池の仕分けシステム、蓄電池の仕分け端末機、蓄電池の仕分け方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20241127BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20241127BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20241127BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20241127BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
G01R31/389
G01R31/387
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084070
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三川 詩乃
(72)【発明者】
【氏名】小松 良
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敦司
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AA08
2G216AB01
2G216BA22
2G216BA23
2G216BA29
2G216BA30
2G216BA34
2G216BA51
2G216BA63
2G216CB35
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】蓄電池の劣化を高精度に判定することができる蓄電池の仕分けシステムを提供すること。
【解決手段】蓄電池2に接続されて、蓄電池2に内蔵された蓄電池管理装置に記録されている蓄電池2の履歴データを収集する仕分け端末機3と、蓄電池2の性能劣化に関する情報が蓄積されているデータベース4と、を備え、データベース4は、蓄電池2の電池容量を蓄電池2の内部抵抗値で割った値に基づいて算出された判定指標を仕分け端末機3に送信し、仕分け端末機3は、履歴データに基づいて算出された蓄電池2の電池使用状態を示す状態値と判定指標に基づいて蓄電池2の劣化度を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池に接続されて、当該蓄電池に内蔵された蓄電池管理装置に記録されている前記蓄電池の履歴データを収集する仕分け端末機と、
前記蓄電池の性能劣化に関する情報が蓄積されているデータベースと、を備え、
通信回線を介して前記仕分け端末機と前記データベースとの間で情報の送受信が可能に構成された蓄電池の仕分けシステムであって、
前記データベースは、前記蓄電池の電池容量を前記蓄電池の内部抵抗値で割った値に基づいて算出された判定指標を前記仕分け端末機に送信し、
前記仕分け端末機は、前記履歴データに基づいて算出された前記蓄電池の電池使用状態を示す状態値と前記判定指標に基づいて前記蓄電池の劣化度を判定する蓄電池の仕分けシステム。
【請求項2】
前記判定指標は閾値であり、
前記仕分け端末機は、前記履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて前記状態値を算出し、当該状態値と前記閾値とを比較して前記蓄電池をランク付けする請求項1に記載の蓄電池の仕分けシステム。
【請求項3】
前記仕分け端末機は、前記履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて前記状態値を算出し、当該状態値と前記閾値とを比較して前記蓄電池をランク付けする請求項2に記載の蓄電池の仕分けシステム。
【請求項4】
前記蓄電池は、車両から回収された蓄電池である請求項2または請求項3に記載の蓄電池の仕分けシステム。
【請求項5】
前記蓄電池は、車両に搭載されている蓄電池である請求項2または請求項3に記載の蓄電池の仕分けシステム。
【請求項6】
蓄電池に接続されて、当該蓄電池に内蔵された蓄電池管理装置に記録されている前記蓄電池の履歴データを収集する仕分け端末機であって、
前記蓄電池の電池容量を前記蓄電池の内部抵抗値で割った値に基づいて算出された判定指標と、前記履歴データに基づいて算出された前記蓄電池の電池使用状態を示す状態値と、に基づいて前記蓄電池の劣化度を判定する仕分け端末機。
【請求項7】
前記判定指標は閾値であり、
前記仕分け端末機は、前記履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて前記状態値を算出し、当該状態値と前記閾値とを比較して前記蓄電池をランク付けする請求項6に記載の仕分け端末機。
【請求項8】
前記仕分け端末機は、前記履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて前記状態値を算出し、当該状態値と前記閾値とを比較して前記蓄電池をランク付けする請求項7に記載の仕分け端末機。
【請求項9】
蓄電池に内蔵された蓄電池管理装置に前記蓄電池の履歴データが記録されている蓄電池の仕分け方法であって、
データベースが、前記蓄電池の電池容量を前記蓄電池の内部抵抗値で割った値に基づいて算出された判定指標を仕分け端末機に送信する送信ステップと、
前記仕分け端末機が、前記履歴データに基づいて算出された前記蓄電池の電池使用状態を示す状態値と前記判定指標に基づいて前記蓄電池の劣化度を判定する判定ステップと、を備える蓄電池の仕分け方法。
【請求項10】
前記送信ステップは、前記データベースが、前記判定指標である閾値を前記仕分け端末機に送信し、
前記判定ステップは、前記仕分け端末機が、前記履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて前記状態値を算出し、当該状態値と前記閾値とを比較して前記蓄電池をランク付けする請求項9に記載の蓄電池の仕分け方法。
【請求項11】
前記判定ステップは、前記仕分け端末機が、前記履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて前記状態値を算出し、当該状態値と前記閾値とを比較して前記蓄電池をランク付けする請求項10に記載の蓄電池の仕分け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の仕分けシステム、蓄電池の仕分け端末機、蓄電池の仕分け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池の内部抵抗に基づいて電池の劣化を判定する第1判定処理と、電池の初期容量に対する容量比である容量維持率に基づいて電池の劣化を判定する第2判定処理と、の少なくとも一方の判定処理を実行する電池劣化判定装置が記載されている。
【0003】
ところで、初期性能として平均よりも容量が大きい蓄電池は、電極活物質の塗布量も多めになり、内部抵抗値も大きくなる傾向がある。つまり、残存容量の大きい蓄電池は内部抵抗値も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-70920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電池劣化判定装置は、残存容量と内部抵抗値を関連付けて評価できていないため、初期から容量の大きい、いわゆる良い電池も、内部抵抗値が大きいことから不良と誤判定されてしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、蓄電池の劣化を高精度に判定することができる蓄電池の仕分けシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、蓄電池に接続されて、当該蓄電池に内蔵された蓄電池管理装置に記録されている前記蓄電池の履歴データを収集する仕分け端末機と、前記蓄電池の性能劣化に関する情報が蓄積されているデータベースと、を備え、通信回線を介して前記仕分け端末機と前記データベースとの間で情報の送受信が可能に構成された蓄電池の仕分けシステムであって、前記データベースは、前記蓄電池の電池容量を前記蓄電池の内部抵抗値で割った値に基づいて算出された判定指標を前記仕分け端末機に送信し、前記仕分け端末機は、前記履歴データに基づいて算出された前記蓄電池の電池使用状態を示す状態値と前記判定指標に基づいて前記蓄電池の劣化度を判定するものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、蓄電池の劣化を高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る蓄電池の仕分けシステムの全体構成図である。
図2図2は、蓄電池の内部抵抗値と初期容量との関係を示す図である。
図3図3は、蓄電池の充放電積算電力量による電池容量の低下の例を示す図である。
図4図4は、蓄電池の放置時間による内部抵抗値の増加の例を示す図である。
図5図5は、蓄電池の電池容量を内部抵抗値で割った値と放置時間の関係の例を示す図である。
図6図6は、蓄電池の電池容量を内部抵抗値で割った値と充放電積算電力量の関係の例を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る蓄電池の仕分けシステムの蓄電池の電池容量を内部抵抗値で割った値に基づく閾値の例を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る蓄電池の仕分けシステムの蓄電池の電池容量を内部抵抗値で割った値から閾値を求める例を示す図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る蓄電池の仕分けシステムの仕分け端末機による劣化度判定処理の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の一実施例の他の態様に係る蓄電池の仕分けシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る蓄電池の仕分けシステムは、蓄電池に接続されて、蓄電池に内蔵された蓄電池管理装置に記録されている蓄電池の履歴データを収集する仕分け端末機と、蓄電池の性能劣化に関する情報が蓄積されているデータベースと、を備え、通信回線を介して仕分け端末機とデータベースとの間で情報の送受信が可能に構成された蓄電池の仕分けシステムであって、データベースは、蓄電池の電池容量を蓄電池の内部抵抗値で割った値に基づいて算出された判定指標を仕分け端末機に送信し、仕分け端末機は、履歴データに基づいて算出された蓄電池の電池使用状態を示す状態値と判定指標に基づいて蓄電池の劣化度を判定するよう構成されている。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る蓄電池の仕分けシステムは、蓄電池の劣化を高精度に判定することができる。
【実施例0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る蓄電池の仕分けシステムについて詳細に説明する。
【0013】
図1において、本発明の一実施例に係る蓄電池の仕分けシステム1は、車載等されていた蓄電池2の劣化度を判定する。蓄電池2は、蓄電池管理装置としてのBMS(Battery Management System)を内蔵しており、BMSには、蓄電池2の履歴データとして、例えば、電池異常履歴、使用日数、充放電積算電力量、電池温度履歴、電池回収日、製造番号などが記憶されている。
【0014】
電池異常履歴は、蓄電池2に発生した異常の履歴である。使用日数は、BMSに電源が繋がってからの日数、すなわち蓄電池2が車載状態である車両存在日数である。充放電積算電力量は、充放電された電力の積算値である。電池温度履歴は、蓄電池2の温度の平均値である。電池回収日は、車載等されていた蓄電池2が取り外された日である。製造番号は、蓄電池2の種類や製造日、販売日などを知ることができる識別情報である。なお、電池温度履歴は、所定の温度範囲ごとに、その温度範囲にあった時間に重み付けの値を掛けた値の総和、例えば、40℃以上の時間×10+40℃未満かつ30℃以上の時間×2+30℃未満かつ20℃以上の時間×1などとしてもよい。
【0015】
仕分けシステム1は、仕分け端末機3と、データベース4とを含んで構成される。
仕分け端末機3は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0016】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを仕分け端末機3として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例における仕分け端末機3として機能する。
【0017】
仕分け端末機3の入力ポートには、蓄電池2のBMSの出力ポートと接続し、BMSの履歴データを受信することができるようになっている。
【0018】
仕分け端末機3は、表示部31を備えている。表示部31は、後述する蓄電池2の仕分けの結果を表示する。表示部31は、Aランク表示部31aと、Bランク表示部31bと、Cランク表示部31cと、異常電池表示部31dとを備えている。
【0019】
Aランク表示部31aは、LED(Light Emitting Diode)等のランプで構成され、仕分けの結果がAランクであるときに点灯される。
【0020】
Bランク表示部31bは、LED等のランプで構成され、仕分けの結果がBランクであるときに点灯される。
【0021】
Cランク表示部31cは、LED等のランプで構成され、仕分けの結果がCランクであるときに点灯される。
【0022】
異常電池表示部31dは、LED等のランプで構成され、仕分けの結果が異常電池であるときに点灯される。
なお、表示部31は、ディスプレイ等の表示装置で構成してもよい。
【0023】
データベース4は、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、CPUと、RAMと、ROMと、ハードディスク装置などの不揮発性の記憶媒体と、各種入出力ポートと、表示装置と、ポインティングデバイスやキーボード装置などの入力装置とを備えている。
【0024】
このコンピュータ装置のROM及びハードディスク装置には、コンピュータ装置を制御するためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROM及びハードディスク装置に格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータ装置は、本実施例の制御を行なう。
【0025】
仕分け端末機3とデータベース4は、通信回線を介して信号の送受信や、データの送受信を行なうことができるようになっている。
【0026】
本実施例において、仕分け端末機3は、蓄電池2のBMSに記憶されている履歴データに基づいて、蓄電池2の劣化度を判定する。
【0027】
仕分け端末機3は、蓄電池2のBMSに記憶されている履歴データから蓄電池2の電池使用状態を示す状態値を算出し、その状態値に基づいて蓄電池2の劣化度を判定する。
【0028】
仕分け端末機3は、算出された状態値から蓄電池2の劣化度を判定するための判定指標をデータベース4から取得する。
【0029】
蓄電池2の初期製造では電池容量や内部抵抗値にバラツキがあるが、一般的には、図2に示すように、電池容量が大きく製造された蓄電池2は内部抵抗値も大きい傾向がある。
【0030】
このため、電池容量を内部抵抗値で割って補正することで、劣化推定に及ぼす初期製造のバラツキの影響を低減し、劣化推定の精度を向上させることができる。
【0031】
すなわち、本実施例においては、以下の式(1)の値により蓄電池2の劣化度を測る。
劣化度=電池容量(Ah)/内部抵抗値(mΩ)・・・(1)
蓄電池2の電池容量は、図3に示すように、充放電積算電力量による「充放電サイクル劣化」がある。
【0032】
また、蓄電池2の内部抵抗値は、図4に示すように、蓄電池2が製造されてからの時間経過である放置時間による「放置劣化」がある。
【0033】
このように、蓄電池2の劣化が進むと、電池容量は減少し、内部抵抗値は増加し、式(1)の値は小さくなっていく。
【0034】
例えば、電池容量10Ah内部抵抗値10mΩの蓄電池Aと、電池容量10.2Ah内部抵抗値10.2mΩの蓄電池Bとの場合、式(1)の値は、どちらも1000となる。
【0035】
その後、使用することにより、放置劣化は図5に示すように進み、充放電サイクル劣化は図6に示すように進む。
【0036】
蓄電池Aと蓄電池Bの放置劣化と充放電サイクル劣化が同程度(放置時間及び充放電積算電力量が同程度)となった場合、蓄電池Aの電池容量が9.8Ah、内部抵抗値が10.2mΩとなると、蓄電池Bの電池容量は10.0Ah、内部抵抗値は10.4mΩとなる。このとき、蓄電池Aの式(1)の値は960となり、蓄電池Bの式(1)の値は961となり、同程度の劣化度とすることができる。
【0037】
データベース4には、蓄電池2の開発過程で得られた蓄電池2の性能劣化に関する情報が蓄積されている。さらに、車両の量産後には、使用済みで回収された蓄電池2の性能劣化に関する情報も追加で蓄積される。
【0038】
蓄積される情報としては「電池容量」と「内部抵抗値」が含まれる。また、充放電サイクル劣化に関連する充放電積算電力量や、放置劣化に関連する放置時間なども含まれる。
【0039】
データベース4には、例えば、図7に示すような、式(1)の値と、放置時間×充放電積算電力量との関係が記憶されている。
【0040】
図7に示すような関係にある場合、例えば、性能下限を9.0Ahの11.0mΩと決めることで、放置時間×充放電積算電力量で見たときの閾値3が決まり、式(1)の値の代わりに、この閾値3により劣化度の判定を行なうことができる。
【0041】
同様に、式(1)の値による劣化度をランク付けする場合も、ランクを分ける閾値として、閾値1や閾値2が決まり、放置時間×充放電積算電力量により劣化度のランク付けをすることができる。
【0042】
本実施例においては、以下の式(2)の値を蓄電池2の電池使用状態を示す状態値として蓄電池2の劣化度の判定を行なう。
【0043】
【数1】
式(2)において、電池存在日数は、例えば、蓄電池2が車載状態であった日数である車両存在日数、すなわちBMSに電源が繋がってから始まったBMSに記録されている日数と、車両が解体されて蓄電池2が単品で保管された日数とを加算した日数、すなわち放置時間を使う。電池存在日数として、車両存在日数を使ってもよい。
【0044】
データベース4には、蓄電池2の製造番号などにより、蓄電池2の製造日や、蓄電池2が車両に組付けられた日、車両の販売日、蓄電池2が車両から取り外された日、車両が廃棄された日などが分かるようになっている。
【0045】
データベース4は、これらの情報により電池存在日数を算出する。データベース4は、例えば、工場で蓄電池2が車両に組付けられた日またはそれに近い日、または車両の販売日、から、蓄電池2が車両から取り外された日、または車両が廃棄された日、までを電池存在日数とする。
【0046】
仕分け端末機3では、BMSに記録されている使用日数を電池存在日数として使ってもよい。
【0047】
図8は、電池存在日数として放置時間を使用したときの式(2)の値を横軸に、式(1)の値を縦軸にとり、同じ種類の複数の蓄電池2の個々の値の位置に〇を記したものである。
【0048】
このような蓄電池2において、回収したい蓄電池2のランク分けの劣化度Y1、Y2、Y3が入力されると、データベース4は、例えば、図8の個々の値から近似曲線を算出し、劣化度Y1、Y2、Y3と近似曲線との交点を閾値X1、X2、X3とする。
【0049】
データベース4は、仕分け端末機3からの要求により、蓄電池2の劣化度の判定指標として閾値X1、X2、X3を送信する。
【0050】
仕分け端末機3は、蓄電池2のBMSに記憶されている電池履歴データから蓄電池2の電池使用状態を示す状態値として式(2)の値を算出し、その値とデータベース4から取得した閾値とを比較して蓄電池2の劣化度を判定する。
【0051】
仕分け端末機3は、状態値が閾値X1以下であれば劣化度の低いAランクと判定する。仕分け端末機3は、状態値が閾値X1より大きく閾値X2以下であればAランクより劣化度の高いBランクと判定する。仕分け端末機3は、状態値が閾値X2より大きく閾値X3以下であればBランクより劣化度の高いCランクと判定する。仕分け端末機3は、状態値が閾値X3より大きい場合は再利用不可能な劣化品と判定する。
仕分け端末機3は、判定した結果を表示部31により表示する。
【0052】
なお、仕分け端末機3は、蓄電池2の電池使用状態を示す状態値を、電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて算出すればよい。
【0053】
また、仕分け端末機3は、判定指標をデータベース4から取得するのではなく、予め記憶しておいてもよい。
【0054】
以上のように構成された本実施例に係る蓄電池の仕分けシステム1の仕分け端末機3による劣化度判定処理について、図9を参照して説明する。なお、以下に説明する劣化度判定処理は、仕分け端末機3への操作により劣化度判定が選択されると開始される。
【0055】
ステップS1において、仕分け端末機3は、蓄電池2のBMSに記録されている履歴データを収集する。ステップS1の処理を実行した後、仕分け端末機3は、ステップS2の処理を実行する。
【0056】
ステップS2において、仕分け端末機3は、履歴データの電池異常履歴に電池異常が有るか否かを判定する。
【0057】
電池異常が有ると判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS12の処理を実行する。電池異常が無いと判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS3の処理を実行する。
【0058】
ステップS3において、仕分け端末機3は、データベース4に記録されている電池存在日数と閾値を取得する。ステップS3の処理を実行した後、仕分け端末機3は、ステップS4の処理を実行する。
【0059】
ステップS4において、仕分け端末機3は、電池使用状態を示す状態値を算出する。ステップS4の処理を実行した後、仕分け端末機3は、ステップS5の処理を実行する。
【0060】
ステップS5において、仕分け端末機3は、状態値が閾値X1以下であるか否かを判定する。
【0061】
状態値が閾値X1以下であると判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS8の処理を実行する。状態値が閾値X1以下でないと判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS6の処理を実行する。
【0062】
ステップS6において、仕分け端末機3は、状態値が閾値X2以下であるか否かを判定する。
【0063】
状態値が閾値X2以下であると判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS9の処理を実行する。状態値が閾値X2以下でないと判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS7の処理を実行する。
【0064】
ステップS7において、仕分け端末機3は、状態値が閾値X3以下であるか否かを判定する。
【0065】
状態値が閾値X3以下であると判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS10の処理を実行する。状態値が閾値X3以下でないと判定した場合には、仕分け端末機3は、ステップS11の処理を実行する。
【0066】
ステップS8において、仕分け端末機3は、蓄電池2をAランクと判定する。ステップS8の処理を実行した後、仕分け端末機3は、劣化度判定処理を終了する。
【0067】
ステップS9において、仕分け端末機3は、蓄電池2をBランクと判定する。ステップS9の処理を実行した後、仕分け端末機3は、劣化度判定処理を終了する。
【0068】
ステップS10において、仕分け端末機3は、蓄電池2をCランクと判定する。ステップS10の処理を実行した後、仕分け端末機3は、劣化度判定処理を終了する。
【0069】
ステップS11において、仕分け端末機3は、蓄電池2を劣化品と判定する。ステップS11の処理を実行した後、仕分け端末機3は、劣化度判定処理を終了する。
【0070】
ステップS12において、仕分け端末機3は、蓄電池2を異常品と判定する。ステップS12の処理を実行した後、仕分け端末機3は、劣化度判定処理を終了する。
【0071】
このように、本実施例では、データベース4は、蓄電池2の電池容量を内部抵抗値で割った値と蓄電池2の電池使用状態を示す状態値との関係を記憶し、電池容量を内部抵抗値で割った値に基づいて電池使用状態を示す状態値における判定指標を算出する。仕分け端末機3は、蓄電池2のBMSに記憶されている履歴データに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、データベース4から取得した判定指標により蓄電池2の劣化度を判定する。
【0072】
これにより、仕分け端末機3において、履歴データに基づいて算出された電池使用状態を示す状態値と、データベース4から取得された電池容量を内部抵抗値で割った値に基づいて算出された電池使用状態を示す状態値における判定指標により蓄電池2の劣化度が判定されるため、蓄電池2の劣化を高精度に判定することができる。
【0073】
また、データベース4において、電池容量を内部抵抗値で割った値に基づいて電池使用状態を示す状態値における判定指標を算出しており、電池容量と内部抵抗値の二つの特性を個別に評価していないため、電池容量と内部抵抗値の二つの特性を個別に評価する場合の複雑さを解消することができる。
【0074】
また、判定指標は閾値であり、仕分け端末機3は、電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、データベース4から取得した閾値と比較して蓄電池2をランク付けする。
【0075】
これにより、仕分け端末機3は、蓄電池2の履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、状態値と閾値とを比較して蓄電池2をランク付けするため、使用済み蓄電池2の電池容量、内部抵抗値が実測されていない場合でも、改めて電池容量、内部抵抗値を実測することなく蓄電池2の劣化度を判定することができる。
【0076】
また、仕分け端末機3は、蓄電池2の履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、状態値と閾値とを比較して蓄電池2をランク付けするため、初期性能が不明な蓄電池2であっても劣化度を判定することができる。
【0077】
また、判定指標は閾値であるため、機密度の高い電池容量、内部抵抗値を仕分け端末機3とデータベース4との間で送受信しない。このため、機密度の高い電池容量、内部抵抗値が漏洩するリスクが無い。閾値と電池容量や内部抵抗値との関係性は秘匿されるため、仮に閾値が漏洩しても漏洩による被害は無い。
【0078】
また、仕分け端末機3は、状態値と閾値とを比較して蓄電池2をランク付けするため、電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴はデータベース4に送信されない。このため、これらの情報が漏洩するリスクが無い。
【0079】
また、仕分け端末機3は、電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、データベース4から取得した閾値と比較して蓄電池2をランク付けする。
【0080】
これにより、仕分け端末機3は、蓄電池2の履歴データである電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、データベース4から取得した閾値と比較して蓄電池2をランク付けするため、電池使用状態を示す状態値を精度良く算出することができる。
【0081】
また、蓄電池2は、車両から回収された蓄電池である。
これにより、蓄電池2を回収する際、蓄電池2を回収する回収業者が車両から蓄電池2を取り出す解体業者に仕分け端末機3を持ち込んでランク分けが可能であり、その際に仕分け端末機3には閾値の情報しか内蔵されない。このため、機密度の高い電池容量、内部抵抗値が漏洩するリスクが無い。
【0082】
また、仕分け端末機3は、蓄電池2のBMSに記憶されている履歴データに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、電池容量を内部抵抗値で割った値に基づいて算出された電池使用状態を示す状態値における判定指標により蓄電池2の劣化度を判定する。
【0083】
これにより、仕分け端末機3は、履歴データに基づいて算出された電池使用状態を示す状態値と、電池容量を内部抵抗値で割った値に基づいて算出された電池使用状態を示す状態値における判定指標により蓄電池2の劣化度を判定しているため、蓄電池2の劣化を高精度に判定することができる。
【0084】
また、仕分け端末機3は、電池容量を内部抵抗値で割った値に基づいて算出された電池使用状態を示す状態値における判定指標により蓄電池2の劣化度を判定しており、電池容量と内部抵抗値の二つの特性を個別に評価していないため、電池容量と内部抵抗値の二つの特性を個別に評価する場合の複雑さを解消することができる。
【0085】
また、判定指標は閾値であり、仕分け端末機3は、電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、閾値と比較して蓄電池2をランク付けする。
【0086】
これにより、仕分け端末機3は、蓄電池2の履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、状態値と閾値とを比較して蓄電池2をランク付けするため、使用済み蓄電池2の電池容量、内部抵抗値が実測されていない場合でも、改めて電池容量、内部抵抗値を実測することなく蓄電池2の劣化度を判定することができる。
【0087】
また、仕分け端末機3は、蓄電池2の履歴データの電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の少なくとも一つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、状態値と閾値とを比較して蓄電池2をランク付けするため、初期性能が不明な蓄電池2であっても劣化度を判定することができる。
【0088】
また、判定指標は閾値であるため、仕分け端末機3には閾値の情報しか内蔵されない。このため、機密度の高い電池容量、内部抵抗値が漏洩するリスクが無い。
【0089】
また、仕分け端末機3は、電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、閾値と比較して蓄電池2をランク付けする。
【0090】
これにより、仕分け端末機3は、蓄電池2の履歴データである電池存在日数、充放電積算電力量、電池温度履歴の三つに基づいて電池使用状態を示す状態値を算出し、閾値と比較して蓄電池2をランク付けするため、電池使用状態を示す状態値を精度良く算出することができる。
【0091】
本実施例の他の態様としては、図10に示すように、仕分け端末機3は、車両10に搭載された蓄電池2のBMSに記憶されている履歴データから蓄電池2の電池使用状態を示す状態値を算出し、その状態値に基づいて蓄電池2の劣化度を判定する。
【0092】
仕分け端末機3は、算出された状態値から蓄電池2の劣化度を判定するための判定指標をデータベース4から取得する。
【0093】
このように、本実施例の他の態様では、蓄電池2は、車両10に搭載された蓄電池である。
【0094】
これにより、中古車販売業者が車両10の価格を決定する際に、搭載されている蓄電池2の劣化度を判断できるので、蓄電池2の劣化度に応じた適正な価格で車両10を販売することができる。
【0095】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0096】
1 蓄電池の仕分けシステム
2 蓄電池
3 仕分け端末機
4 データベース
10 車両
図1
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図7
図8
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図10