(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167780
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】扉
(51)【国際特許分類】
E06B 7/23 20060101AFI20241127BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
E06B7/23 Z
E06B7/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084098
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】391028694
【氏名又は名称】株式会社ハウテック
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】金子 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】青木 基樹
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA02
2E036BA01
2E036CA01
2E036CA08
2E036DA02
2E036DA16
2E036EB07
2E036EC03
2E036GA02
2E036HB14
(57)【要約】
【課題】開口部を閉止する際の密閉性が確保され得る扉を提供する。
【解決手段】扉は、開口部の周縁に設けられ、第1の縦枠および第2の縦枠を有する枠体と、第1の縦枠にヒンジを介して回動可能に取り付けられ、回動動作に伴って開口部を開閉する扉本体と、枠体に沿って設けられ、閉止位置にある扉本体の一方の面の縁部が対向する戸当たりと、戸当たりの前面に沿って設けられ、扉本体が閉止位置にある場合に扉本体の縁部が当接するパッキンとを備える。戸当たりは、第1の縦枠に設けられる第1の縦部材と第2の縦枠に設けられる第2の縦部材とを含む。パッキンは、第1の縦部材の第1の前面に沿って設けられる第1の縦部分と第2の縦部材の第2の前面に沿って設けられる第2の縦部分とを含む。第1の縦部分は、閉止位置の扉本体の縁部と当接する特定の当接面を含む。特定の当接面は、第1の前面に対して開口部側に傾斜している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁に設けられ、第1の縦枠、および、前記第1の縦枠の左右方向に間隔を開けて配置される第2の縦枠を有する枠体と、
前記第1の縦枠にヒンジを介して回動可能に取り付けられ、回動動作に伴って前記開口部を開閉する扉本体と、
前記枠体に沿って設けられ、閉止位置にある前記扉本体の一方の面の縁部が対向する戸当たりと、
前記戸当たりの前面に沿って設けられ、前記扉本体が前記閉止位置にある場合に、前記扉本体の前記縁部が当接するパッキンと、を備え、
前記戸当たりは、前記第1の縦枠に設けられる第1の縦部材と前記第2の縦枠に設けられる第2の縦部材とを含み、
前記パッキンは、前記第1の縦部材の第1の前面に沿って設けられる第1の縦部分と前記第2の縦部材の第2の前面に沿って設けられる第2の縦部分とを含み、
前記第1の縦部分は、前記閉止位置の前記扉本体の前記縁部と当接する特定の当接面を含み、
前記特定の当接面は、前記第1の前面に対して前記開口部側に傾斜している、
扉。
【請求項2】
前記戸当たりの前記前面には、前記パッキンを取り付けるための溝が形成されており、
前記溝は、前記第1の縦部材の前記第1の前面に形成されている第1の溝部を含み、前記第1の溝部の深さ方向は、前記第1の前面と直交する直交方向に対して傾斜しており、
前記第1の前面のうち、前記第1の溝部の前記開口部側の隣の第1の範囲は、前記第1の範囲以外の特定の範囲より凹んでいる、請求項1に記載の扉。
【請求項3】
前記戸当たりを正面視する場合において、前記溝は前記パッキンの裏側に位置し、前記第1の範囲は前記第1の縦部分の裏側に位置する、請求項2に記載の扉。
【請求項4】
前記枠体は、前記第1の縦枠と前記第2の縦枠の上端部間および下端部間の少なくとも一方を連結する横枠をさらに含み、
前記戸当たりは、前記横枠に沿って設けられる横部材をさらに含み、
前記パッキンは、前記横部材に沿って設けられ、前記第1の縦部分と連続して設けられる横部分をさらに含み、
前記特定の当接面は、前記横部分の近傍部分の第1の当接部分と、前記第1の当接部分以外の第2の当接部分とを含み、前記第1の当接部分は前記第1の前面に対して傾斜しておらず、前記第2の当接部分は前記第1の前面に対して前記開口部側に傾斜しており、
前記第1の前面のうち、前記第1の範囲、および、前記第1の溝部の前記第1の範囲と反対側の隣であって前記横枠の近傍部分の第2の範囲は、前記第1の範囲および前記第2の範囲以外の前記特定の範囲より凹んでいる、請求項2に記載の扉。
【請求項5】
前記横枠は、前記第1の縦枠と前記第2の縦枠の上端部間を連結する第1の横枠と、前記第1の縦枠と前記第2の縦枠の下端部間を連結する第2の横枠とを含み、
前記横部材は、前記第1の横枠に沿って設けられる第1の横部材と、前記第2の横枠に沿って設けられる第2の横部材とを含み、
前記横部分は、前記第1の横部材に沿って設けられ、前記第1の縦部分の上端部および前記第2の縦部分の上端部と連続している第1の横部分と、前記第2の横部材に沿って設けられ、前記第1の縦部分の下端部および前記第2の縦部分の下端部と連続している第2の横部分とを含む、請求項4に記載の扉。
【請求項6】
前記戸当たりを正面視する場合において、前記溝は前記パッキンの裏側に位置し、前記第1の範囲と前記第2の範囲は前記第1の縦部分の裏側に位置する、請求項4に記載の扉。
【請求項7】
前記パッキンはマグネットが内蔵されているマグネットパッキンであり、
前記扉本体の前記一方の面の前記縁部は金属部材を備える、請求項1に記載の扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、扉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア枠と、ドア枠の縦枠にヒンジを介して取り付けられるドアパネルと、ドア枠に沿って設けられる戸当たりと、戸当たりに取り付けられるマグネットパッキンとを有するドアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、ドアパネルの閉止の際に、ドアパネルのヒンジ側部分がマグネットパッキンの側部と干渉する場合がある。その結果、マグネットパッキンが変形したままドアパネルが閉止され、閉止時にマグネットパッキンがドアパネルに正対せず、閉止時の密閉性が確保されない可能性がある。
【0005】
本明細書では、開口部を閉止する際の密閉性が確保され得る扉を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される扉は、開口部の周縁に設けられ、第1の縦枠、および、前記第1の縦枠の左右方向に間隔を開けて配置される第2の縦枠を有する枠体と、前記第1の縦枠にヒンジを介して回動可能に取り付けられ、回動動作に伴って前記開口部を開閉する扉本体と、前記枠体に沿って設けられ、閉止位置にある前記扉本体の一方の面の縁部が対向する戸当たりと、前記戸当たりの前面に沿って設けられ、前記扉本体が前記閉止位置にある場合に、前記扉本体の前記縁部が当接するパッキンと、を備える。前記戸当たりは、前記第1の縦枠に設けられる第1の縦部材と前記第2の縦枠に設けられる第2の縦部材とを含む。前記パッキンは、前記第1の縦部材の第1の前面に沿って設けられる第1の縦部分と前記第2の縦部材の第2の前面に沿って設けられる第2の縦部分とを含む。前記第1の縦部分は、前記閉止位置の前記扉本体の前記縁部と当接する特定の当接面を含む。前記特定の当接面は、前記第1の前面に対して前記開口部側に傾斜している。
【0007】
上記の扉では、パッキンの第1の縦部分の特定の当接面が開口部側に傾斜している。そのため、扉本体を回動させて閉止位置に移動させる際に、扉本体のヒンジ寄りの一部が、パッキンの第1の縦部分の一部(特に開口部寄りの側面)と干渉することが抑制される。扉本体が閉止位置にある場合に、パッキンと扉本体の縁部とが正対し得る。開口部を閉止する際の密閉性が確保され得る。
【0008】
前記戸当たりの前記前面には、前記パッキンを取り付けるための溝が形成されていてもよい。前記溝は、前記第1の縦部材の前記第1の前面に形成されている第1の溝部を含んでいてもよい。前記第1の溝部の深さ方向は、前記第1の前面と直交する直交方向に対して傾斜していてもよい。前記第1の前面のうち、前記第1の溝部の前記開口部側の隣の第1の範囲は、前記第1の範囲以外の特定の範囲より凹んでいてもよい。
【0009】
この構成によると、第1の溝部の深さ方向が直交方向に対して傾斜しているため、パッキンの第1の縦部分を傾斜させた状態で第1の縦部材に取り付けることができる。さらに、第1の範囲が凹んでいるため、傾斜させた状態で取り付けられた第1の縦部分の一部が第1の縦部材の第1の前面と干渉することを抑制することができる。パッキンの第1の縦部分の不自然な変形を抑制することができる。第1の縦部分の特定の当接面が開口部側に傾斜した状態を無理なく維持することができる。
【0010】
前記戸当たりを正面視する場合において、前記溝は前記パッキンの裏側に位置し、前記第1の範囲は前記第1の縦部分の裏側に位置していてもよい。
【0011】
この構成によると、戸当たりを正面視する場合に、溝がパッキンによって隠される。さらに、凹んでいる第1の範囲も第1の縦部分によって隠される。溝や凹みが見える範囲に露出しないため、戸当たりの外観が美しく保たれる。
【0012】
前記枠体は、前記第1の縦枠と前記第2の縦枠の上端部間および下端部間の少なくとも一方を連結する横枠をさらに含んでもよい。前記戸当たりは、前記横枠に沿って設けられる横部材をさらに含んでもよい。前記パッキンは、前記横部材に沿って設けられ、前記第1の縦部分と連続して設けられる横部分をさらに含んでもよい。前記特定の当接面は、前記横部分の近傍部分の第1の当接部分と、前記第1の当接部分以外の第2の当接部分とを含んでもよい。前記第1の当接部分は前記第1の前面に対して傾斜しておらず、前記第2の当接部分は前記第1の前面に対して前記開口部側に傾斜していてもよい。前記第1の前面のうち、前記第1の範囲、および、前記第1の溝部の前記第1の範囲と反対側の隣であって前記横枠の近傍部分の第2の範囲は、前記第1の範囲および前記第2の範囲以外の前記特定の範囲より凹んでいてもよい。
【0013】
この構成によると、枠体が横枠を備え、戸当たりの横部材にもパッキンの横部分が備えられる。そして、パッキンの第1の縦部分の特定の当接面のうち、横部分の近傍の第1の当接部分は第1の前面に対して傾斜しておらず、第2の当接部分が第1の前面に対して傾斜している。第1の前面のうち、第1の範囲と第2の範囲が特定の範囲より凹んでいるため、パッキンの第1の縦部分のうち横部分に近い部分が前方に突出することが抑制される。この結果、戸当たりに沿って設けられているパッキンのうち、第1の縦部材に沿って設けられる第1の縦部分と、第1の縦部分と連続して形成されており、かつ、戸当たりの横部材(即ち横枠に沿う部分)に沿って設けられる横部分との境界部が不自然に捻じれて前方に突出する(立ち上がる)事態を抑制することができる。扉が横枠、横部材、横部分を備える場合においても、開口部を閉止する際の密閉性が適切に確保される。
【0014】
前記横枠は、前記第1の縦枠と前記第2の縦枠の上端部間を連結する第1の横枠と、前記第1の縦枠と前記第2の縦枠の下端部間を連結する第2の横枠とを含んでいてもよい。前記横部材は、前記第1の横枠に沿って設けられる第1の横部材と、前記第2の横枠に沿って設けられる第2の横部材とを含んでいてもよい。前記横部分は、前記第1の横部材に沿って設けられ、前記第1の縦部分の上端部および前記第2の縦部分の上端部と連続している第1の横部分と、前記第2の横部材に沿って設けられ、前記第1の縦部分の下端部および前記第2の縦部分の下端部と連続している第2の横部分とを含んでいてもよい。
【0015】
この構成によると、枠体が開口部の周縁の全周(上下左右)を囲んで設けられる。戸当たり及びパッキンも開口部の周縁の全周(上下左右)を囲んで設けられる。閉止時の扉本体の密閉性をより高めることができる。例えば扉を防音扉として用いる場合における防音性能も高めることができる。
【0016】
上記の扉において、前記戸当たりを正面視する場合において、前記溝は前記パッキンの裏側に位置し、前記第1の範囲と前記第2の範囲は前記第1の縦部分の裏側に位置していてもよい。
【0017】
この構成によると、戸当たりを正面視する場合に、溝と、凹んでいる第1の範囲および第2の範囲がいずれもパッキンによって隠される。溝や凹みが見える範囲に露出しないため、戸当たりの外観が美しく保たれる。
【0018】
前記パッキンはマグネットが内蔵されているマグネットパッキンであってもよい。前記扉本体の前記一方の面の前記縁部は金属部材を備えていてもよい。
【0019】
この構成によると、磁力によってマグネットパッキンと扉本体とを密着させることができる。扉本体を閉止した際の密閉性が高い。扉を防音扉として適切に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図1のIII-III間の断面を示す断面説明図。
【
図4】
図1のIV-IV間の断面を示す断面説明図。
【
図7】戸当たり30の第1の縦部材32を示す正面説明図。(a)はA-A間の断面を示す断面説明図。(b)はB-B間の断面を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例)
図1~
図7を参照して、実施例の扉2について説明する。
図1は本実施例の扉2を示す。
図2は
図1の扉2から扉本体20を除いた状態を示す。
図1に示されるように、本実施例の扉2は、防音室等の出入口である開口部4を密閉可能な構造を有する扉である。
図1、
図2に示されるように、扉2は、開口部4の周縁に設けられる枠体10と、開口部4を開閉する扉本体20と、枠体10に設けられる戸当たり30と、戸当たり30の前面50に設けられ、閉止時の扉本体20の背面20Bと当接するパッキン70とを備える。
【0022】
枠体10は、開口部4の周縁の全周に亘って設けられている。枠体10は開口部4の周縁の全周(上下左右)を囲んでいる。枠体10は、第1の縦枠12と、第2の縦枠14と、第1の横枠16と、第2の横枠18とを有する。第1の縦枠12は、開口部4の左右方向の一方の周縁に設けられる縦枠である。第1の縦枠12には扉本体20を取り付けるためのヒンジ22が設けられる。第1の縦枠12をヒンジ側縦枠と呼んでもよい。第2の縦枠14は、第1の縦枠12の左右方向に間隔を開けて配置されるもう一つの縦枠である。第2の縦枠14をラッチ側縦枠と呼んでもよい。第1の横枠16は、いわゆる鴨居であり、開口部4の上側の周縁に設けられる横枠である。第1の横枠16は、第1の縦枠12と第2の縦枠14の上端部間を連結する。第2の横枠18は、いわゆる敷居であり、開口部4の下側の周縁に設けられるもう一つの横枠である。第2の横枠18は、第1の縦枠12と第2の縦枠14の下端部間を連結する。
【0023】
扉本体20は、第1の縦枠12にヒンジ22を介して回動可能に取り付けられている。扉本体20の回動動作に伴って開口部4が開閉される。
図3、
図4は、それぞれ
図1のIII-III間とIV-IV間の断面を模式的に示す。
図3、
図4に示されるように、扉本体20は前面20Fと背面20Bを有する。背面20Bの縁部26は、扉本体20が閉止位置にある場合に、戸当たり30と対向する。本実施例では、背面20Bの縁部26には細長の金属板24が取り付けられている。金属板24は背面20Bから露出するように設けられている。他の例では、金属板24は背面20Bの縁部26内に内蔵されていてもよい。さらに他の例では、背面20B全面に金属板が配置されていてもよいし、背面20B全面に金属板が内蔵されていてもよい。
【0024】
戸当たり30は、枠体10の全周に沿って設けられている部材であって、閉止位置の扉本体20の背面20Bの縁部26が対向する部材である。戸当たり30の前面50(
図2参照)は、閉止位置の扉本体20の背面20Bの縁部26と対向する。
【0025】
図2に示されるように、戸当たり30は、第1の縦部材32と、第2の縦部材34と、第1の横部材36と、第2の横部材38とを有する。第1の縦部材32、第2の縦部材34、第1の横部材36、第2の横部材38は、それぞれ、第1の縦枠12、第2の縦枠14、第1の横枠16、第2の横枠18に沿って設けられている。なお、
図3に示されるように、第2の横部材38は第2の横枠18と一体に設けられている。他の例では、第2の横部材38は第2の横枠18と別体であってもよい。
図2、
図7に示されるように、第1の縦部材32の上端部は斜めに切り欠かれ、同様に斜めに切り欠かれた第1の横部材36の一方の端部と当接している。同様に、第2の縦部材34の上端部も斜めに切り欠かれ、同様に斜めに切り欠かれた第1の横部材36の他方の端部と当接している。第1の縦部材32の下端部は、第2の横部材38の一方の端部に設けられた切り欠き部と嵌合している。同様に、第2の縦部材34の下端部も、第2の横部材38の他方の端部に設けられた切り欠き部と嵌合している。ただし、上述の縦部材32、34と横部材36、38の連結構造はあくまで一例であり、実際には縦部材32、34と横部材36、38は他の任意の構造で連結されていてもよい。
【0026】
図2に示されるように、戸当たり30の前面50は、第1の縦部材32の第1の前面52と、第2の縦部材34の第2の前面54と、第1の横部材36の第3の前面56と、第2の横部材38の第4の前面58とを含む。戸当たり30の前面50には、パッキン70を取り付けるための溝40が全周に亘って形成されている。溝40は、第1の前面52に形成されている第1の溝部42と、第2の前面54に形成されている第2の溝部44と、第3の前面56に形成されている第3の溝部46と、第4の前面58に形成されている第4の溝部48とを含む。各溝部42、46、44、48が連続して形成されることで一つの連続する溝40が形成されている。
【0027】
パッキン70は、戸当たり30の前面50の全周に亘って設けられる緩衝部材である。パッキン70の本体は、例えばゴムや樹脂など、加圧に応じて変形可能であり、加圧の解除とともに元の形状に復元可能な弾性材料によって形成されている。
図3、
図4に示されるように、パッキン70は、閉止位置にある扉本体20の金属板24と当接する当接面80を有する。扉本体20が閉止位置にある場合、パッキン70は扉本体20によって加圧されて変形する。これによりパッキン70が扉本体20の背面20Bと密に当接し、開口部4が密閉される。さらにパッキン70は、戸当たり30の溝40に嵌入させる嵌入部90を有する。嵌入部90を溝40に嵌入させることによって、パッキン70が戸当たり30の前面50に取り付けられる。
【0028】
図5、
図6はそれぞれ
図4のV部分、VI部分を拡大して示す。
図5、
図6にさらに示されるように、本実施例のパッキン70は本体内に細長のマグネット100を内蔵している。即ちパッキン70はマグネットパッキンである。扉本体20が閉止位置にある場合、金属板24はパッキン70のマグネット100に吸引される。磁力によってパッキン70と扉本体20とを密着させることができる。
【0029】
図2に示されるように、パッキン70は、第1の前面52に沿って設けられる第1の縦部分72と、第2の前面54に沿って設けられる第2の縦部分74と、第3の前面56に沿って設けられる第1の横部分76と、第4の前面58に沿って設けられる第2の横部分78とを含む。各部分72、76、74、78は一体に形成され、連続する一つのパッキン70を形成している。
図4に示されるように、第1の縦部分72は当接面82と嵌入部92を有する。当接面82は「特定の当接面」の一例である。第2の縦部分74は当接面84と嵌入部94を有する。
図3に示されるように、第1の横部分76は当接面86と嵌入部96を有する。第2の横部分78は当接面88と嵌入部98を有する。嵌入部92、94、96、98はそれぞれ溝部42、44、46、48に嵌入されている。嵌入部92、94、96、98が溝部42、44、46、48に嵌入されることにより、パッキン70が戸当たり30の前面50に取り付けられる。
【0030】
図5に示されるように、パッキン70の第2の縦部分74の当接面84は、第2の前面54と略平行である。当接面84は第2の前面54に対して傾いていない。第2の溝部44の深さ方向は、第2の前面54と直交する直交方向に対して傾斜していない。第2の溝部44の深さ方向は第2の前面54に対して直交している。第2の溝部44に第2の縦部分74の嵌入部94が嵌入されることにより、当接面84が第2の前面54に対して傾斜しないように(即ち当接面84と第2の前面54が略平行となるように)、第2の縦部分74が第2の縦部材34に取り付けられる。
【0031】
同様に、パッキン70の第1の横部分76の当接面86も、第3の前面56と略平行である(
図3参照)。第3の溝部46の深さ方向は第3の前面56に対して直交している。さらに、パッキン70の第2の横部分78の当接面88も、第4の前面58と略平行である。第4の溝部48の深さ方向は第4の前面58に対して直交している。
【0032】
これに対し、
図6に示されるように、パッキン70の第1の縦部分72の当接面82(すなわち特定の当接面)は第1の前面52と平行ではない。当接面82は、第1の前面52に対して開口部4側に傾斜している。このため、扉本体20を回動させて閉止位置に移動させる際に、扉本体20のヒンジ22寄りの一部が、パッキン70の第1の縦部分72の一部(特に開口部4寄りの側面部分)と干渉することが抑制される。扉本体20の閉止時において、いわゆるパッキン70の“かじり”が防止される。第1の縦部分72の意図しない変形が防止される。その結果、扉本体20が閉止位置にある場合に、パッキン70と扉本体20の背面20Bの縁部26とが正対し得る。開口部4を閉止する際の密閉性を確保することができる。
【0033】
当接面82の第1の前面52に対する傾斜角度θ1は例えば0°より大きく10°以下である。傾斜角度θ1の値はあくまで一例であり実際はこれ以外であってもよい。傾斜角度θ1は、回動する扉本体20の一部がパッキン70の第1の縦部分72の一部と干渉せず、かつ、扉本体20の閉止時にパッキン70と扉本体20の縁部26を正対させ得る角度であれば、上記以外の任意の角度であってもよい。
【0034】
上述のような当接面82の傾斜の実現のために、戸当たり30の第1の縦部材32も他部材34、36、38とは異なる構成を有する。第1の溝部42の深さ方向は、第1の前面52と直交する直交方向に対して傾斜している。すなわち第1の溝部42の深さ方向は第1の前面52に対して傾いている。第1の溝部42の深さ方向の直交方向に対する傾斜角度θ2は例えば0°より大きく10°以下であることが好ましい。傾斜角度θ2の値はあくまで一例であり実際はこれ以外であってもよい。このような第1の溝部42に第1の縦部分72の嵌入部92が嵌入されることで、第1の縦部分72が第1の縦部材32に取り付けられる。そして、上述のように、当接面82が第1の前面52に対して開口部4側に傾斜する(
図6参照)。
【0035】
図7は第1の縦部材32を拡大して示す正面図である。
図7では第1の縦枠12の図示が省略されている。
図7中の(a)(b)は、それぞれ図中のA-A間断面とB-B間断面を示す。
図6と
図7の(b)に示されるように、第1の縦部材32の第1の前面52は、第1の溝部42の開口部4側の隣(
図7の左側)の範囲である第1の範囲52Aを含む。第1の範囲52Aは、第1の前面52のうちの第1の範囲52A以外の部分である特定の範囲52Sよりも後方に凹んで形成されている。第1の範囲52Aの凹み量G(
図6参照)は例えば0mmより大きく3mm以下である。凹み量Gは例えば0.5mmである。凹み量Gの値はあくまで一例であり実際はこれ以外であってもよい。
図7に示されるように、第1の範囲52Aは、第1の縦部材32の長手方向(上下方向)の全長に亘って形成されている。
【0036】
このように、第1の範囲52Aが特定の範囲52Sよりも凹んでいることで、傾斜した状態で第1の縦部材32に取り付けられた第1の縦部分72の一部が第1の前面52と干渉することを抑制することができる。すなわち第1の範囲52Aの凹みは、傾斜する第1の縦部分72の一部を逃がすためのスペースとして機能する。即ち、第1の縦部分72が傾斜することで第1の縦部分72の一部が第1の前面52に近接するが、第1の範囲52Aの凹みによって当該第1の縦部分72の一部が第1の前面52と干渉することが抑制される。パッキン70の第1の縦部分72の不自然な変形を抑制することができる。当接面82が開口部4側に傾斜した状態を無理なく維持することができる。
【0037】
ただし、
図7と
図7中の(a)に示されるように、第1の縦部材32のうち、第1の横部材36の近傍部分(第1の縦部材32の上端の近傍部分)の第1の前面52は、第1の範囲52Aに加えて第2の範囲52Bを備えている。第2の範囲52Bは、第1の溝部42の第1の範囲52Aと反対側の隣(
図7の右側)であって、第1の横部材36の近傍部分(第1の縦部材32の上端の近傍部分)の範囲である。第2の範囲52Bは、第1の範囲52Aと同様に、特定の範囲52Sよりも後方に凹んで形成されている。特定の範囲52Sは、第1の前面52のうち、第1の範囲52Aおよび第2の範囲52B以外の範囲と言うことができる。第2の範囲52Bの凹み量は第1の範囲52Aの凹み量G(
図6)と同様である。さらに、第2の範囲52Bは、第2の横部材38の近傍部分(第1の縦部材32の下端の近傍部分)にも形成されている。
【0038】
このように、第1の縦部材32のうちの横部材36、38の近傍部分では、第1の範囲52Aと第2の範囲52Bの両方が特定の範囲52Sよりも凹んでいる。そのため、パッキン70の第1の縦部分72のうちの横部分76、78に近い部分が捻じれて前方に突出することが抑制される。第1の縦部分72と、第1の縦部分72と連続する横部分76、78との境界部が不自然に捻じれて前方に突出する(立ち上がる)事態を抑制することができる。第1の縦部分72のうちの横部分76、78に近い部分の当接面82は、第1の前面52に対して傾斜していない。当接面82のうちの横部分76、78に近い部分(
図7の(a)参照)のことを第1の当接部分82Aと呼んでもよい。当接面82のうち第1の当接部分82A以外の部分(
図7の(b)参照)のことを第2の当接部分82Bと呼んでもよい。
図7の(a)に示されるように、第1の当接部分82Aは第1の前面52に対して傾斜していない。第1の当接部分82Aは第1の前面52と略平行である。一方、
図6、
図7の(b)に示されるように、第2の当接部分82Bは第1の前面52に対して開口部4側に傾斜している。
図6に示されている当接面82は第2の当接部分82Bのことである。
【0039】
さらに、
図2、
図7に示されるように、戸当たり30を正面視する場合において、溝40、第1の範囲52A、第2の範囲52Bはいずれもパッキン70の裏側に位置する。
【0040】
以上、本実施例の扉2の構成について説明した。上記の通り、本実施例では、パッキン70の第1の縦部分72の当接面82(特定の当接面。特に、第2の当接部分82B)が、第1の前面52に対して開口部4側に傾斜している(
図6等参照)。そのため、扉本体20を回動させて閉止位置に移動させる際に、扉本体20のヒンジ22寄りの一部が、パッキン70の第1の縦部分72の一部(特に開口部4寄りの側面部分)と干渉することが抑制される。扉本体20の閉止時において、いわゆるパッキン70の“かじり”が防止される。扉本体20の閉止時に、扉本体20と干渉することによる第1の縦部分72の意図しない変形が防止される。パッキン70が変形した状態のままで扉本体20が閉止されることが防止される。このため、扉本体20が閉止位置にある場合に、パッキン70と扉本体20の縁部26とが正対し得る。開口部4を閉止する際の密閉性を確保することができる。
【0041】
また、扉本体20と第1の縦部分72の干渉が抑制されることで、扉本体20の回動もスムーズに行われる。パッキン70の破損も防止される。パッキン70の交換頻度が少なく済む。また、開口部4の密閉性も確保されるため、例えば扉2を防音扉として用いる場合における防音性能も高めることができる。
【0042】
さらに本実施例では、
図6に示されるように、第1の溝部42の深さ方向が第1の前面52と直交する直交方向に対して傾斜している。これにより、第1の縦部分72が傾斜した状態で第1の縦部材32に取り付けられる。そして、第1の範囲52Aが特定の範囲52Sよりも凹んでいる。これにより、傾斜した状態で第1の縦部材32に取り付けられた第1の縦部分72の一部が第1の前面52と干渉することを抑制することができる。パッキン70の第1の縦部分72の不自然な変形を抑制することができる。当接面82(第2の当接部分82B)が開口部4側に傾斜した状態を無理なく維持することができる。
【0043】
また上記の通り、第1の縦部分72のうち、第1の当接部分82Aは第1の前面52に対して傾斜しておらず、第2の当接部分82Bが第1の前面52に対して傾斜している(
図7参照)。第1の縦部材32のうちの横部材36、38の近傍部分では、第1の範囲52Aと第2の範囲52Bの両方が特定の範囲52Sよりも凹んでいる。そのため、パッキン70のうち、第1の縦部分72と、第1の縦部分72と連続して形成されている横部分76、78との境界部が不自然に捻じれて前方に突出する(立ち上がる)事態を抑制することができる。従って、扉本体20を閉止して開口部4を閉止する際のパッキン70による密閉性が適切に確保される。
【0044】
また、本実施例では、枠体10が開口部4の周縁の全周(上下左右)を囲んで設けられている。そして、枠体10の全周に沿って戸当たり30が設けられ、戸当たり30の前面50の全周に沿ってパッキン70が設けられている。枠体10が、縦枠のみを備える場合や、縦枠と一方の横枠(鴨居と敷居の一方)のみを備える場合と比べて、閉止時の扉本体20の密閉性を高めることができる。例えば扉2を防音扉として用いる場合における防音性能も高めることができる。
【0045】
また、戸当たり30を正面視する場合において、溝40、第1の範囲52A、第2の範囲52Bはいずれもパッキン70の裏側に位置する(
図2、
図7参照)。戸当たり30を正面視する場合において、溝40と凹んでいる第1の範囲52Aおよび第2の範囲52Bはいずれもパッキン70の裏側に隠れ、外観上視認されない。溝40や凹みが見える範囲に露出しないため、戸当たり30の外観が美しく保たれる。
【0046】
さらに、本実施例のパッキン70は本体内にマグネット100を内蔵している(
図5、
図6参照)。扉本体20が閉止位置にある場合、磁力によってパッキン70と扉本体20とを密着させることができる。扉本体20を閉止した際の密閉性が確保される。扉2を防音扉として用いる場合の防音性能も高い。
【0047】
以上、本明細書で開示する技術の実施例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を含んでもよい。
【0048】
(変形例1)金属板24は扉本体20の背面20Bの縁部26に内蔵されていてもよい。金属板24は扉本体20の背面20Bの全面に内蔵されていてもよい。
【0049】
(変形例2)パッキン70はマグネットパッキンでなくてもよい。パッキン70はマグネット100を内蔵していなくてもよい。その場合、扉本体20の金属板24も省略されてもよい。本変形例でも、扉本体20の閉止時にパッキン70が扉本体20の背面20Bの縁部26と当接すればよい。
【0050】
(変形例3)第1の縦部材32の第1の前面52に設けられている第1の範囲52Aと第2の範囲52Bのうちの一方又は双方が省略されてもよい。第2の範囲52Bが省略される場合には、戸当たり30を正面視したときに第1の範囲52Aがパッキン70の裏側に隠れていればよい。第1の範囲52Aが省略される場合には、戸当たり30を正面視したときに第2の範囲52Bがパッキン70の裏側に隠れていればよい。
【0051】
(変形例4)枠体10の2つの横枠(第1の横枠16、第2の横枠18)のうちの一方が省略されてもよい。例えば、第1の横枠16(鴨居)が省略されてもよい。その場合、戸当たり30の第1の横部材36とパッキン70の第1の横部分76も併せて省略されてもよい。一方、第2の横枠18(敷居)が省略される場合には、第2の横部材38と第2の横部分78が併せて省略されてもよい。
【0052】
(変形例5)枠体10の2つの横枠(第1の横枠16、第2の横枠18)がともに省略されてもよい。その場合、枠体10は第1の縦枠12と第2の縦枠14のみを備えていればよい。戸当たり30は、第1の縦部材32と第2の縦部材34のみを備え、パッキン70も第1の縦部分72と第2の縦部分74のみを備えていればよい。第1の縦部材32と第2の縦部材34は連続していなくてもよい。第1の縦部分72と第2の縦部分74も連続していなくてもよい。本変形例でも、当接面82が第1の前面52に対して開口部4側に傾斜していればよい。
【0053】
また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
2:扉
4:開口部
10:枠体
12:第1の縦枠
14:第2の縦枠
16:第1の横枠
18:第2の横枠
20:扉本体
22:ヒンジ
24:金属板
26:縁部
30:戸当たり
32:第1の縦部材
34:第2の縦部材
36:第1の横部材
38:第2の横部材
40:溝
42:第1の溝部
50:(戸当たりの)前面
52:第1の前面
52A:第1の範囲
52B:第2の範囲
52S:特定の範囲
54:第2の前面
70:パッキン
72:第1の縦部分
74:第2の縦部分
76:第1の横部分
78:第2の横部分
80:(パッキンの)当接面
82:当接面(特定の当接面)
82A:第1の当接部分
82B:第2の当接部分
100:マグネット