IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図1
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図2
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図3
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図4
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図5
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図6
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図7
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図8
  • 特開-摩擦攪拌点接合用ツール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167781
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】摩擦攪拌点接合用ツール
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B23K20/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084103
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】波多野 遼一
(72)【発明者】
【氏名】上向 賢一
(72)【発明者】
【氏名】秋野 一輝
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA05
4E167AA06
4E167AA27
4E167BG02
4E167BG06
4E167BG08
4E167BG26
(57)【要約】
【課題】接合対象部材の重ね合わせ部の接合加圧力を低減可能な、ピン先行プロセスを採用する摩擦攪拌点接合用ツールを提供する。
【解決手段】摩擦攪拌点接合用ツールは、軸線回りに回転する円柱型のピン11と、ピン11が内部に挿通される中空部を有するショルダ12と、ピン11を回転させながら接合対象物へ圧入させる一方で、ショルダ12を前記接合対象物に対して退避させるよう駆動する駆動部2と、を備える。ピン11の円形の先端面5の少なくとも一部には、ピン11の回転方向において段差を形成する段差形状部51が備えられている、
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する円柱型のピンと、
前記ピンが内部に挿通される中空部を有するショルダと、
前記ピンを回転させながら接合対象物へ圧入させる駆動と、前記ショルダを前記接合対象物に対して退避させ駆動とを行う駆動部と、を備え、
前記ピンの先端面の少なくとも一部には、前記ピンの回転方向において段差を形成する段差形状部が備えられている、摩擦攪拌点接合用ツール。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌点接合用ツールにおいて、
前記段差形状部の前記段差は、前記先端面の中心点から外周縁へ半径方向に延びる径方向段差である、摩擦攪拌点接合用ツール。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦攪拌点接合用ツールにおいて、
前記径方向段差は、前記ピンの前記先端面の円周方向に複数個が配置されている、摩擦攪拌点接合用ツール。
【請求項4】
請求項3に記載の摩擦攪拌点接合用ツールにおいて、
前記複数個の径方向段差は、前記先端面の円周方向に均等間隔で配置されている、摩擦攪拌点接合用ツール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合用ツールにおいて、
前記段差形状部の前記段差の最大高低差が、前記ピンの直径の1%~10%の範囲に設定されている、摩擦攪拌点接合用ツール。
【請求項6】
請求項1に記載の摩擦攪拌点接合用ツールにおいて、
前記段差形状部の前記段差は、前記先端面の外周縁の一部を切り欠いて形成された段差である、摩擦攪拌点接合用ツール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピンおよびショルダを備えた摩擦攪拌点接合用ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材や繊維強化熱可塑性樹脂部材等からなる二以上の部材を重ね合わせて接合する手法として、摩擦攪拌を用いた接合が知られている。摩擦攪拌接合には、ピンと当該ピンを収容する中空部を有するショルダとを備えた摩擦攪拌点接合用のツールが用いられることがある。例えばショルダ先行プロセスでは、ショルダを突出させて接合対象部材の重ね合わせ部に圧入させる一方、ピンを退行させて前記圧入により溢れる材料を収容する(例えば特許文献1参照)。一方、ピン先行プロセスでは、ピンを前記重ね合わせ部に圧入させる一方、ショルダを退行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-186869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上掲のピン先行プロセスにおいて、前記重ね合わせ部の摩擦攪拌点接合に高い接合加圧力を要する場合に、接合用ツールを含む設備の大型化や高コスト化が問題となる。例えば、繊維強化熱可塑性樹脂部材の重ね合わせ部の接合の場合、内包されている連続繊維の切断に大きな加圧力を要する。この場合、前記加圧力の反力による撓み量を低減させるため、接合用ツールが取り付けられるアーム類として、大型で高い剛性を有するものを採用せねばならない。
【0005】
本開示は、ピン先行プロセスを採用する摩擦攪拌点接合用ツールにおいて、接合対象部材の重ね合わせ部の接合加圧力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、軸線回りに回転する円柱型のピンと、前記ピンが内部に挿通される中空部を有するショルダと、前記ピンを回転させながら接合対象物へ圧入させる駆動と、前記ショルダを前記接合対象物に対して退避させる駆動とを行う駆動部と、を備え、前記ピンの先端面の少なくとも一部には、前記ピンの回転方向において段差を形成する段差形状部が備えられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接合対象部材の重ね合わせ部の接合加圧力を低減可能な、ピン先行プロセスを採用する摩擦攪拌点接合用ツールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係る摩擦攪拌点接合ツールを含む、摩擦攪拌点接合装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、摩擦攪拌点接合される第1部材及び第2部材の構成を示す図である。
図3図3は、摩擦攪拌点接合ツールを用いた、ピン先行プロセスによる接合手順を示す図である。
図4図4は、本開示の実施例に係る摩擦攪拌点接合ツールのピンおよびその先端面の形状を、比較例と共に示す斜視図および側面図である。
図5図5は、試験片へのピンの圧入量と接合時間との関係を、実施例および比較例について示すグラフである。
図6図6は、実施例のピンに与える加圧力を変更して試験片へ圧入させたときの、圧入量と接合時間との関係を示すグラフである。
図7図7(A)は、ショルダ先行プロセスにおける攪拌材料の挙動を、図7(B)は、ピン先行プロセスにおける攪拌材料の挙動を各々示す図である。
図8図8(A)~(C)は、摩擦攪拌点接合ツールのピン先端形状の他の例を示す斜視図である。
図9図9(A)~(F)は、図4に示したピン先端面の形状の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態を詳細に説明する。本開示に係る摩擦攪拌点接合ツールを備えた摩擦攪拌点接合装置は、金属や樹脂製、あるいは繊維材が混合された熱可塑性の樹脂成形体のプレート、フレーム、外装材或いは柱状材等の構造材を、二つ以上重ね合わせて点接合してなる各種接合体の製造に適用することができる。製造される接合体は、例えば、航空機、鉄道車両または自動車などの構造物の構成部材となる。
【0010】
[摩擦攪拌点接合装置の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る摩擦攪拌点接合装置Mの構成を示す模式図である。摩擦攪拌点接合装置Mは、複動式の摩擦攪拌点接合用のツール1と、ツール1を回転および昇降駆動するツール駆動部2と、摩擦攪拌点接合装置Mの各部の動作を制御するコントローラ20とを含む。なお、図1には「上」「下」の方向表示を付しているが、これは説明の便宜のためであり、実際のツール1の使用方向を限定する意図ではない。
【0011】
ツール1は、各種のツール固定部によって支持される。例えば前記ツール固定部は、多関節ロボットの先端部である。ツール1の下端面に対向して、バックアップ15が配置されている。ツール1とバックアップ15との間には、接合対象物3が配置される。接合対象物3は、少なくとも二つの部材が重ね合わされてなる。図1では、平板プレートからなる第1部材31の一部と、同じく平板プレートからなる第2部材32の一部とが上下方向に重なり合った重なり部30が、接合対象物3としてツール1とバックアップ15との間に配置されている例を示している。
【0012】
ツール1は、ピン11、ショルダ12、クランプ13およびスプリング14を含む。ピン11は円柱型の部材であり、その軸線が上下方向に延びるように配置されている。ピン11は、前記軸線を回転軸Rとして回転が可能であり、且つ、回転軸Rに沿って上下方向に進退が可能である。なお、ツール1の使用時には、回転軸Rと重なり部30における点接合位置Wとが位置合わせされる。
【0013】
ショルダ12は、ピン11が内部に挿通される中空部を有する、円筒状に形成された部材である。ショルダ12の軸線は、ピン11の軸線、つまり回転軸Rと同軸上にある。ショルダ12は、回転軸R回りに回転が可能であり、且つ、回転軸Rに沿って上下方向に進退可能である。本実施形態のツール1は、ピン11およびショルダ12が独立して軸方向に移動する複動式のツールである。すなわち、ショルダ12と、前記中空部に内挿されたピン11とは、共に回転軸Rの軸回りに回転しつつ、回転軸R方向に相対移動が可能である。具体的には、ピン11およびショルダ12は、回転軸Rに沿って同時に昇降するだけでなく、一方が下降し他方が上昇するという独立移動が可能である。
【0014】
クランプ13は、ショルダ12が内挿される中空部を備え、円筒状に形成された部材である。クランプ13の軸線も、回転軸Rと同軸上にある。クランプ13は、軸回りに回転はしないが、回転軸Rに沿って上下方向に昇降、つまり進退する。クランプ13は、ピン11またはショルダ12が摩擦攪拌を行う際に、これらの外周を囲う役目を果たす。クランプ13の囲いによって、摩擦攪拌材料を四散させず、摩擦攪拌点接合部分を平滑に仕上げることができる。
【0015】
スプリング14は、クランプ13の上端側に取り付けられ、クランプ13を重なり部30に向かうよう下方に付勢している。クランプ13は、スプリング14を介して、前記ツール固定部に取り付けられている。バックアップ15は、接合対象の重なり部30の下面側に当接する平面を備える。バックアップ15は、ピン11またはショルダ12が重なり部30に圧入される際に、当該重なり部30を支持する裏当て部材である。スプリング14で付勢されたクランプ13は、重なり部30をバックアップ15に押し当てる。
【0016】
ツール駆動部2は、回転駆動部21、ピン駆動部22、ショルダ駆動部23およびクランプ駆動部24を含む。回転駆動部21は、モーターおよび駆動ギア等を含み、ピン11およびショルダ12を回転軸R回りに回転駆動する。ピン駆動部22は、回転軸Rに沿ってピン11を進退移動させる機構である。ピン駆動部22は、ピン11の重なり部30への圧入並びに重なり部30からの退避を行うように、ピン11を駆動する。ショルダ駆動部23は、回転軸Rに沿ってショルダ12を進退移動させる機構であって、ショルダ12の重なり部30への圧入並びに退避を行わせる。クランプ駆動部24は、回転軸Rに沿ってクランプ13を進退移動させる機構である。クランプ駆動部24は、クランプ13を重なり部30に向けて移動させ、重なり部30をバックアップ15に押圧させる。この際、スプリング14の付勢力が作用する。
【0017】
コントローラ20は、マイクロコンピュータ等からなり、所定の制御プログラムを実行することで、ツール駆動部2の動作を制御する。具体的にはコントローラ20は、回転駆動部21を制御して、ピン11およびショルダ12に所要の回転動作を行わせる。また、コントローラ20は、ピン駆動部22、ショルダ駆動部23およびクランプ駆動部24を制御して、ピン11、ショルダ12およびクランプ13に、所要の進退移動動作を行わせる。
【0018】
図2は、摩擦攪拌点接合される第1部材31および第2部材32の構成を示す図である。ここでは、プレート状の第1部材31の一部とプレート状の第2部材32の一部とが上下に重ね合わされた重なり部30を例示している。重なり部30は、プレートとフレーム(又は柱状材)との重なり部、或いはフレーム同士の重なり部等であっても良い。重なり部30には、第1部材31の下面の接合面31Aと、第2部材32の上面の接合面32Aとが直接接触した合わせ面BDが形成されている。第1部材31と第2部材32との間に、他のプレートが1枚以上介在されても良い。
【0019】
図2では、第1部材31および第2部材32として、連続繊維の配列体に熱可塑性樹脂を含浸したプリプレグを多層に積層してなる成形体を用いる例が示されている。図2には、第1部材31を構成しているシート積重体33の一部が示されている。シート積重体33は、それぞれ連続繊維の配列体に熱可塑性樹脂を含浸したシートからなる第1シート層33A、第2シート層33Bおよび第3シート層33Cを含む。第1シート層33Aは、連続繊維34の多数本が所定の配列方向に配列され、その配列体に熱可塑性樹脂を含浸して一体化した、厚さ0.1mm~0.5mm程度のシートである。第2シート層33B及び第3シート層33Cも上記と同様なシートであるが、連続繊維34の配列方向が相互に異なる方向とされている。第2部材32も、第1部材31と同様なシートの多層積層体からなるプレートである。
【0020】
ツール1による重なり部30の摩擦攪拌点接合の際には、ツール1の圧入により連続繊維34を切断しながら、含浸材の熱可塑性樹脂を摩擦攪拌することになる。なお、プリプレグ成形体は第1部材31および第2部材32の構成材の一例である。例えば、アルミニウム材や鋼材などの金属プレートを2枚以上用いて重なり部30が構成されても良い。一例として、ツール1が最初に圧入される側の第1部材31がアルミニウム合金、第2部材32が高張力鋼である例を挙げることができる。
【0021】
[ツールの使用方法]
続いて、本実施形態で例示しているツール1の使用方法について説明する。摩擦攪拌点接合装置Mの使用方法としては、大略的に、ツール1のピン11を先行して接合対象物3の重なり部30へ圧入させるピン先行プロセスと、ショルダ12を先行して重なり部30へ圧入させるショルダ先行プロセスとがある。本実施形態では、コントローラ20がツール1を、ピン先行プロセスで動作するように駆動する。
【0022】
図3は、前記ピン先行プロセスによる摩擦攪拌点接合方法のプロセスP11~P14を示す図である。ここでは、第1部材31と第2部材32との重なり部30を、摩擦攪拌点接合する場合のプロセスを簡略的に示している。プロセスP11は、重なり部30の予熱工程を示している。第1部材31の表面にツール1の下端を当接させた状態で、ピン11およびショルダ12を軸回りに所定の回転数で高速回転させる。
【0023】
プロセスP12は、ピン11の圧入工程を示している。図中に白抜き矢印にて示すように、ピン11を軸回りに回転させながら下降させて重なり部30へ圧入させる一方、ショルダ12を上方へ退避させる。この動作により、ピン11の圧入領域の材料が攪拌される。また、前記圧入によって重なり部30から溢れ出した溢れ出し材料OFが、ショルダ12の退避によって生じた、ピン11とクランプ13との間の環状領域に逃がされる(矢印a1参照)。
【0024】
プロセスP13は、溢れ出し材料OFの埋め戻し工程を示している。埋め戻し工程では、ピン11を上昇させて退避させる一方で、ショルダ12を下降させる。ショルダ12の下降により、矢印a2で示すように、前記環状領域に逃がされた溢れ出し材料OFが、ピン11の圧入領域に埋め戻される。
【0025】
プロセスP14は、ならし工程を示している。ピン11およびショルダ12の下端面を第1部材31の表面の高さ位置に復帰させた状態で両者を回転させ、点接合部分を平滑化する。なお、第1部材31が熱可塑性樹脂である場合、プロセスP14においてピン11およびショルダ12を回転させず、単に点接合部分を押圧させる場合もある。以上のプロセスにより、攪拌接合部4aが形成され、第1部材31及び第2部材32が重なり部30において点接合される。
【0026】
[ツールのピンの実施形態]
図4は、本開示の実施例に係る摩擦攪拌点接合ツール1のピン11およびその先端部11Tの形状を、比較例と共に示す斜視図および側面図である。従来、ピン11の先端部11Tは、<比較例>の箇所に示す通り、平面からなる円形の先端面50を有する形状とされている。つまり、先端面50は、段差などが存在しない平坦な面である。このような先端面50を有するピン11を具備するツール1を用いてピン先行プロセスを実行させた場合、高い接合加圧力を要することがある。
【0027】
高い接合加圧力を要する一例が、接合対象物3が図2に例示したような、連続繊維34で強化された熱可塑性樹脂のプリプレグ(例えば熱可塑性CFRP)からなるシート積重体33で、少なくとも第1部材31が構成されている場合である。このような第1部材31である場合、摩擦攪拌の際に連続繊維34を切断しながらピン11を圧入させることになる。この連続繊維34の切断のためには、大きな加圧力をツール1に与える必要がある。本開示者らの実験によれば、熱可塑性CFRPの連続繊維の切断のために、ツール1に加えられる全加圧力のうちの60%程度が使用されていることが判明した。なお、全加圧力の残りの40%程度は、専ら溢れ出し材料OFをピン11の外周の前記環状領域に押し出すために使用されている。
【0028】
高い接合加圧力を要する場合、その反力対策が必要となる。例えば、ロボットアームの先端にツール1を搭載する場合、反力によって撓み変形等が生じないように、ロボットアームの剛性を高く設定する必要がある。剛性の強化には、ロボットアームの大型化もしくは高強度のアーム材の採用が必要となり、結果としてツール1を含む摩擦攪拌点接合装置Mの設備の大型化や高コスト化を招来する。
【0029】
本開示に係るピン11の先端部11Tは、接合加圧力を抑制できる先端面5の形状を有している。図4の<実施例>の箇所に示す通り、軸方向視で円形の先端面5であることは従来と同じであるが、先端面5には、ピン11の回転方向Fにおいて段差を形成する段差形状部51が備えられている。段差形状部51の前記段差は、円形の先端面5の中心点CPから円の外周縁へ半径方向に延びる径方向段差である。段差形状部51は、先端面5の円周方向に複数個が配置されている。図4では、8個の径方向段差が、先端面5の円周方向に均等間隔で配置されている例が示されている。
【0030】
段差形状部51は、先端面5の中心点Cで最も浅く、先端面5の外周縁で最も深い形状を有する。つまり、段差形状部51は、中心点Cから先端面5の径方向外側に向かうに連れて、徐々に段差高さhが大きくなる形状を有している。このような段差形状部51が均等間隔で8個形成された結果として、先端面5には同サイズの8面の扇面52が円周方向に並んでいる。これらの扇面52は、段差形状部51の段差高さhに応じた傾きを持つ面である。
【0031】
図4の<側面図>も参照して、扇面52は、ピン11の回転方向Fの前端521が高く、後端522が低くなる傾きを有している。前端521が「高い」とは、先端面5がピン11の下端面であるとすると、前端521の方が後端522よりも下方へ突出していることを意味する。<側面図>に付記されているラインHoは、ピン11の軸線と直交する水平ラインである。扇面52は、このラインHoに対して、段差高さhによって定まる傾きを持っている。段差高さhが最大となるのは、先端面5の外周縁の位置である。前端521の高さと中心点CPの高さとは、同じ高さである。一方、後端522の高さは、中心点CPの位置においては当該中心点CPと同じ高さであるが、先端面5の外周縁の位置では最大の段差高さhの分だけ低い高さにある。
【0032】
上記のような形状的特徴から判る通り、先端面5の中心点CPは下方に突出していない。つまり、段差形状部51の加工が施されているとはいえ、マクロ的に見て先端面5には平坦性を担保させている。これは、上述したように図3のプロセスP14において、ピン11の先端面5を攪拌接合部4の表面に押し当てて仕上げる工程があり、当該工程で先端面5の形状が攪拌接合部4の表面に転写されることを考慮しているからである。すなわち、先端面5に顕著な凸部が存在すると、攪拌接合部4の表面に前記凸部に対応した凹部が形成されるため、接合対象物3の平坦性が担保できない。これを回避するため、先端面5には顕著な突出部が存在しないことが望ましい。
【0033】
段差形状部51は、円周方向に隣接する一対の扇面52の前端521と後端522との高低差に基づく段差面を有している。この段差面は、回転方向Fに対して直交する方向に延びる面である。当該段差面と、前端521の直角のエッジとがあたかも刃の形状を為し、接合対象物を削る役目を果たす。このような刃は、接合対象物の攪拌性や攪拌材料の径方向外側への押し出し性を向上させると共に、上述の連続繊維34の切断にも寄与する。
【0034】
段差形状部51の段差高さhは、適宜設定して良いが、高すぎると圧入抵抗を大きくしてしまい、低すぎると「刃」としての効果が低減する。段差高さhは、ピン11の直径φを基準に定めることができる。例えば段差高さhは、前端521と後端522との段差の最大高低差が、ピン11の直径φの1%~10%の範囲、好ましくは1.5%~7%の範囲に設定することができる。
【0035】
段差形状部51の段差面は、ピン11の軸線Zoに平行な鉛直面としても良いが、図4に示すように軸線Zoに対して傾き角θを持つ面としても良い。図例の段差形状部51の段差面は、ラインHoに対して傾きを持つ扇面52に対して直角に交差する面である。傾き角θは、例えば2度~7度の範囲から選択することができる。
【0036】
[圧入試験例]
<試験1>
ピン11の先端部11Tに、図4の<実施例>に係る先端面5を有するツール1と、<比較例>に係る先端面50を有するツール1とを用い、同一の試験片に同一のピン圧入量を達成するのに要する加圧力を調査した。接合対象物3の試験片として、厚さ2.5mmの熱可塑性CFRP樹脂シートを2枚重ね合わせた重なり部30を準備した。実施例および比較例とも、ピン11の直径φ=9mmのものを使用した。実施例の先端面5が有する段差形状部51の段差高さhの最大高低差=0.28mm、段差面の傾き角θ=5度とした。比較例の先端面50は、平坦な水平面である。
【0037】
ピン11の圧入目標値=3.87mmとして、実施例および比較例のツール1で各々重なり部30にピン11を圧入させた。実施例および比較例とも、圧入目標値を達成するピン11の圧入を行うことができた。但し、圧入目標値を達成するのに要した加圧力は、
実施例=4[kN]、比較例=9[kN]
であり実施例のツール1の方が比較例よりも大幅に低い加圧力で重なり部30の摩擦攪拌点接合を行い得ることが確認された。
【0038】
<試験2>
試験1と同じ実施例の先端面5を有するツール1および比較例の先端面50を有するツール1を用い、同じ加圧力で同じ金属試料へのピン11の圧入させる試験を行った。金属試料として、JIS-H-4040に規定されたA7075アルミニウム合金にT6処理を施した、厚さ1mmの試料を用いた。ピン11の試料への圧入目標値=0.5mm、加圧力=5.5kNに設定して、実施例および比較例のツール1のピン11を前記金属試料にそれぞれ圧入させた。
【0039】
図5は、金属試料へのピン11の圧入量(mm)と接合時間(秒)との関係を、実施例および比較例について示すグラフである。特性A1は、実施例のツール1によるピン11の圧入挙動を示す。金属試料へのピン11の圧入開始から2.5秒程度で、圧入目標値の圧入が完了していることが判る。一方、特性B1は、比較例のツール1によるピン11の圧入挙動を示す。結果として、設定された加圧力=5.5kNでは、圧入目標値を達成するピン11の圧入を行うことができなかった。特性B2は、試験2の実行に用いた試験装置で設定可能な加圧力=8.7kNを比較例のツール1に与えて、前記金属試料へピン11の圧入を行わせたときの圧入挙動を示す。比較例のツール1では、特性B2に示すように、設定加圧力の約60%増しの加圧力を与えても0.2mm程度の圧入しか行えず、圧入目標値は未達であった。
【0040】
<試験3>
試験1で用いた熱可塑性CFRP樹脂シートで形成された重なり部30と、実施例の先端面5を有するツール1とを用いて、ピン圧入量と接合時間との関係を調べた。試験1では、ツール1の加圧力=4kNで圧入目標値=3.87mmを達成できることが確認できたが、さらに加圧力を下げての圧入が可能か否かを調査した。
【0041】
図6は、実施例のツール1に与える加圧力を変更して重なり部30へ圧入させたときの、ピン圧入量(mm)と接合時間(秒)との関係を示すグラフである。グラフに示されている特性A11、A12、A13、A14は、それぞれ加圧力=4kN、3.5kN、3kN、2kNとしたときの圧入挙動を示す。このグラフから判るように、ピン11の圧入速度を小さくし、結果として接合時間を長く取れば、加圧力=2kNまで低下させても圧入目標値が達成できることが確認された。因みに、比較例のツール1では、ピン11の圧入速度をいくら低下させても、4kNレベルの加圧力では圧入目標値を達成することはできなかった。
【0042】
以上の試験1~3により、ピン先行プロセスによるピン11の圧入による接合対象物の接合に際し、段差形状部51が接合加圧力の低減に寄与することが確認された。ピン11を圧入する一方でショルダ12を退避させるピン先行プロセスでは、図3のプロセスP12で説明した通り、ピン11の直下の材料を攪拌して流動化し、当該ピン11の外周に存在するショルダ退避で生じた環状空間へ押し出すこととなる。ピン11の先端面5の段差形状部51は、ピン11の回転方向Fにおいて段差を形成している。このため、ピン11を軸線回りに回転させながら接合対象物3へ圧入させると、段差形状部51が積極的にピン11直下の材料を削る。接合対象物3が図2に例示したようなシート積重体33であっても、段差形状部51が刃の役目を果たして連続繊維34を切断するので、接合加圧力を低減できる。
【0043】
さらに段差形状部51は、ピン11直下で削られた材料の、積極的なショルダ退避空間への押し出しにも貢献する。すなわち、段差形状部51はピン11の回転方向Fを直交する方向、つまり径方向に延びる段差面を有する。ピン11の回転に伴って、前記段差面が攪拌材料を径方向外側へ押し出す機能を果たす。この機能は、平坦な先端面50しか持たない比較例のピン11では奏することができない。上掲の段差形状部51による積極的な材料の削り、攪拌材料の押し出しの機能を有する実施例のピン11に用いれば、ピン11直下の材料の攪拌、ならびにピン11の径方向外側へ向けた攪拌材料の流動がスムースとなる。従って、摩擦攪拌点接合時における接合対象物3に対するピン11の加圧力、つまりツール1に加えねばならない接合加圧力を低減することができる。
【0044】
上記の確認結果を踏まえて、ピン先行プロセスに代えてショルダ先行プロセスを採用すると共に、ショルダ12の先端面に、本実施形態の段差形状部51に準じた段差形状部を設けることも考えられる。しかし、ピン先行プロセスを採用し、且つピン11の先端面5に段差形状部51を設ける方が、ショルダ先行プロセスよりも利点が多い。この点について、図7を用いて説明する。
【0045】
図7(A)は、ショルダ先行プロセスにおける攪拌材料の挙動を、図7(B)は、ピン先行プロセスにおける攪拌材料の挙動を各々示す図である。ショルダ先行プロセスを採用するツール100では、矢印a3で示すように、ピン110の上昇によって生じたショルダ120内の空間に溢れ出し材料OFが逃がすことを想定している。しかし、ショルダ120の先端面に段差形状部を設け、これにより攪拌材料の流動が増加した場合、溢れ出し材料OFの逃げ場がなくなり、矢印a4で示すように、クランプ130の下方でショルダ120の径方向外側へ材料が流出する流動が生じ得る。このような材料流出に伴い、摩擦攪拌点接合部にへこみが発生し易くなる。これに対し、ピン先行プロセスでは矢印a5で示すように、元々ピン11の径方向外側に溢れ出し材料OFを逃がす設定である。従って、段差形状部51の施与によって攪拌材料の流動が増加しても、攪拌範囲内に溢れ出し材料OFが戻り易く、摩擦攪拌点接合部にへこみは発生しない。
【0046】
また、ショルダ先行プロセスによる接合径Wsとピン先行プロセスによる接合径Wpとが同じである場合、ピン先行プロセスの方が溢れ出し材料OFの体積が大きくなる。例えば、ピン11の直径φが9mmである場合、ピン先行プロセスを採用した場合の溢れ出し材料OFは、ショルダ先行プロセスの1.8倍となる。このように、攪拌時に押し出すべき材料が多くなるピン先行プロセスにおいて、ピン11の先端面5に段差形状部51を形成して押し出し力を高める意義は、ショルダ先行プロセスよりも大きいと言える。
【0047】
[ピン先端形状の他の例]
図8(A)~(C)は、摩擦攪拌点接合ツール1のピン11における先端部11Tの形状の他の例を示す斜視図である。図8(A)~(C)では、段差形状部の段差が、ピン先端面5A、5B、5Cの外周縁の一部を切り欠いて形成された段差である例が示されている。これらの段差は、溝状の切り欠きによって形成されている。
【0048】
図8(A)に示す先端部11Tの先端面5Aには、複数の斜行溝53が形成されている。斜行溝53は、先端面5Aに形成される凹溝であって、先端面5Aの外周縁から、先端面5Aの径方向内側に直線状に延びている。斜行溝53は、円形の先端面5Aの直径に相当する仮想線に対して外周縁へ近づく方向の傾きを持つ溝である。前記傾きは、ピン11の回転方向Fに倣う方向に斜行溝53を指向させる傾きである。このような斜行溝53の形成によって、先端面5Aの外周縁付近には、段差形状が存在している。図8(A)では、短尺の8個の斜行溝53が、先端面5Aの外周縁に沿って均等間隔で配置されている例を示している。斜行溝53の長さや半径、深さ、配置ピッチ、傾きなどは適宜変更できる。
【0049】
図8(B)に示す先端部11Tには、先端面5Bを起点として、ピン11の軸方向に延びる複数の螺旋溝54が形成されている。螺旋溝54は、先端部11Tの側周面に形成される凹溝であって、先端面5Bの外周縁から、回転方向Fの上流側へ螺旋状に延びている。先端面5Bの外周縁付近には、螺旋溝54の形成に伴う径方向内側への切り欠きによって、段差形状が形成されている。図8(B)の螺旋溝54は一例であり、螺旋溝54の長さや半径、深さ、配置ピッチ、螺旋角度などは適宜変更できる。
【0050】
図8(C)に示す先端部11Tには、先端面5Cを起点として、ピン11の軸方向に直線状に延びる軸方向溝55が形成されている。軸方向溝55は、先端部11Tの側周面に形成される凹溝であって、先端面5Bの外周縁からピン11の軸方向に所定長延びている。軸方向溝55を有する先端部11Tを備えたピン11では、時計方向および半時計方向の双方を回転方向FAに設定できる。先端面5Cの外周縁付近には、軸方向溝55の形成に伴う径方向内側への切り欠きによって、段差形状が形成されている。図8(C)の軸方向溝55は一例であり、軸方向溝55の長さや半径、深さ、配置ピッチなどは適宜変更できる。
【0051】
以上例示したように、斜行溝53、螺旋溝54および軸方向溝55の形成により、ピン先端面の外周縁の一部を切り欠いた段差を形成できる。当該段差によっても、ピン11直下の材料の削り込み、および前記材料のショルダ退避空間への押し出しを促進でき、ツール1の接合加圧力を低減できる。
【0052】
図9(A)~(F)は、図4に例示した段差形状部51を、ピン11の先端面に形成する場合の各種変形例を示している。図9(A)は、1つの段差形状部51だけを備える先端面5Dを示している。段差形状部51は、図4の例と同様に、中心点Cから先端面5Dの外周縁に向けて直線状に延び、径方向外側に向かうに連れて徐々に段差高さが大きくなる形状を有している。
【0053】
図9(B)は、2つの段差形状部51を備える先端面5Eを示している。2つの段差形状部51は、中心点Cを挟んで直線状に並んでいる。結果として、先端面5Eには2面の半円面が存在する。これらの半円面は、段差形状部51の段差に応じた傾きを持つ面である。図9(C)は、4つの段差形状部51を備える先端面5Fを示している。4つの段差形状部51は、円周方向に90度の均等間隔で配置されている。先端面5Fには、同サイズの4面の扇面が円周方向に並んでいる。図9(D)は、4つの段差形状部51が、円周方向にランダムな間隔で配置されている先端面5Gを示している。図9(D)の例のように、段差形状部51は円周方向に均等間隔で配置されていなくても良い。
【0054】
図9(E)は、湾曲部51Aを有する4つの段差形状部51を備える先端面5Hを示している。上掲の例では、径方向に直線的に延びる段差形状部51を例示したが、図9(E)の例のように湾曲部51Aを有していても良い。湾曲部51Aは、先端面5Hの外周縁付近の段差形状部51を、回転方向Fに倣うように湾曲させた部分である。図9(F)も、湾曲部51Bを有する4つの段差形状部51を備える先端面5Iを示している。ここでの湾曲部51Bは、先端面5Hの外周縁付近の段差形状部51を、回転方向Fとは逆方向に湾曲させた部分である。以上示した先端面5D~5Iをピン11に具備させることによっても、ツール1の接合加圧力を低減できる。
【0055】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0056】
本開示の第1の態様に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、軸線回りに回転する円柱型のピンと、前記ピンが内部に挿通される中空部を有するショルダと、前記ピンを回転させながら接合対象物へ圧入させる駆動と、前記ショルダを前記接合対象物に対して退避させる駆動とを行う駆動部と、を備え、前記ピンの円形の先端面の少なくとも一部には、前記ピンの回転方向において段差を形成する段差形状部が備えられている。
【0057】
第1の態様によれば、ピンの圧入による接合対象物の接合に際し、段差形状部が接合加圧力の低減に寄与する。すなわち、ピンを圧入する一方でショルダを退避させるピン先行プロセスでは、ピンの直下の材料を当該ピンの外周に存在するショルダ退避空間へ押し出すこととなる。段差形状部は、ピンの回転方向において段差を形成している。このため、ピンを軸線回りに回転させながら接合対象物へ圧入させると、段差形状部が積極的にピン直下の材料を削りながら前記ショルダ退避空間へ押し出す挙動を示す。このため、ピン直下の材料の攪拌、ならびにピンの径方向外側へ向けた攪拌材料の流動がスムースとなる。従って、摩擦攪拌点接合時における接合対象物に対するピンの加圧力、つまりツールに加えねばならない接合加圧力を低減することができる。接合加圧力の低減により反力も抑制できるので、小型ロボットや小型の専用装置への摩擦攪拌点接合用ツールの搭載が可能となる。これにより、摩擦攪拌点接合用ツールを含む設備の大型化や高コスト化を回避できる。
【0058】
第2の態様に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、第1の態様のツールにおいて、前記段差形状部の前記段差は、前記先端面の中心点から外周縁へ半径方向に延びる径方向段差である。
【0059】
第2の態様によれば、前記段差が径方向段差とされるので、ピンの圧入による攪拌時における材料のピン外周方向への押し出しを効率的に行わせることができる。
【0060】
第3の態様に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、第2の態様のツールにおいて、前記径方向段差は、前記ピンの前記先端面の円周方向に複数個が配置されている。
【0061】
第3の態様によれば、径方向段差が円周方向に複数個配置されているので、材料のピン外周方向への押し出し力をより高めることができ、ピンの加圧力をより低減することが可能となる。
【0062】
第4態様に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、第3の態様のツールにおいて、前記複数個の径方向段差は、前記先端面の円周方向に均等間隔で配置されている。
【0063】
第4の態様によれば、複数個の径方向段差が均等間隔で配置されているので、ピン直下の材料の削り込みや、当該材料のピン外周方向への押し出しをバランス良く行わせることができる。
【0064】
第5態様に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、第1から第4の態様のツールにおいて、前記段差形状部の前記段差の最大高低差が、前記ピンの直径の1%~10%の範囲に設定されている。
【0065】
第5の態様によれば、段差形状部の段差高さの適正化を図ることができる。
【0066】
第6態様に係る摩擦攪拌点接合用ツールは、第1の態様のツールにおいて、前記段差形状部の前記段差は、前記先端面の外周縁の一部を切り欠いて形成された段差である。
【0067】
第6の態様によれば、外周縁の一部の切り欠きによる段差でも、ピン直下の材料の削り込み、および前記材料のショルダ退避空間への押し出しを促進でき、ツールの接合加圧力を低減できる。
【符号の説明】
【0068】
1 ツール(摩擦攪拌点接合ツール)
11 ピン
12 ショルダ
13 クランプ
2 ツール駆動部(駆動部)
3 接合体3
4 攪拌接合部
5、5A~5I 先端面
51 段差形状部
53 斜行溝(段差形状部)
54 螺旋溝(段差形状部)
55 軸方向溝(段差形状部)
F 回転方向
M 摩擦攪拌点接合装置
R 回転軸(軸線)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9