(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167785
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】蜂の巣除去装置
(51)【国際特許分類】
A01M 3/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A01M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084108
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】芥屋 光之介
(72)【発明者】
【氏名】楠 智也
(72)【発明者】
【氏名】寺野 滉一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121BB02
2B121BB15
2B121EA21
2B121FA02
2B121FA15
(57)【要約】
【課題】蜂の巣に接近することなく、容易かつ安全に蜂の巣を切断して袋へ収納することが可能な蜂の巣除去装置を提供する。
【解決手段】蜂の巣除去装置1は、上方に開口した網袋2と、網袋2の開口縁部2aに設置された枠体3と、網袋2の内側上部に設置された環状の環状紐部材4と、環状紐部材4に一端が連結されたワイヤ5と、枠体3の一部に固定された支持部材6と、支持部材6に設置されたワイヤ保持具7と、支持部材6に連結された菊座アダプタ8と、雨切りツバ9bを有し、長尺の筒体からなる柄部9aと連結部9cによって構成される絶縁操作棒9と、支持部材6の上面6aに設置されたシリンダユニット及び切断具11と、雨切りツバ12aと限界ツバ12bを有し、支持バンド13によって絶縁操作棒9に固定される油圧ホース12を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形又は多角形の開口部を有する枠体と、
開口状態が維持されるように開口縁部が前記枠体に取り付けられた袋と、
前記枠体に固定された支持部材と、
この支持部材に先端が連結された棒状部材と、
それぞれ基端側に柄部が設けられるとともに先端側に刃部が設けられた一対の刃体と、
この一対の刃体を前記柄部と前記刃部の間において回動自在に連結する軸体と、を備え、前記一対の刃体は、少なくとも前記刃部の一部が前記枠体の前記開口部の上方に配置されるように前記軸体を介して前記支持部材に固定されていることを特徴とする蜂の巣除去装置。
【請求項2】
前記柄部に連結されたピストンロッドと、
このピストンロッドを押し出したり、引き込んだりするシリンダと、を備えたシリンダユニットを有し、
前記一対の刃体は前記ピストンロッドの移動に伴って前記柄部同士のなす角度が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蜂の巣除去装置。
【請求項3】
前記シリンダは油圧シリンダであって、
前記シリンダユニットに加えて、前記油圧シリンダに一端が接続された油圧ホースと、この油圧ホースの他端に接続された油圧ポンプと、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の蜂の巣除去装置。
【請求項4】
前記袋の内側上部に環状をなすように設置された環状紐部材と、
この環状紐部材に一端が連結された紐状部材と、
この紐状部材の挿通孔を有し、前記支持部材に設置された保持具と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の蜂の巣除去装置。
【請求項5】
前記棒状部材と前記紐状部材が絶縁性を有していることを特徴とする請求項4に記載の蜂の巣除去装置。
【請求項6】
前記棒状部材の前記先端が連結される接続部と、菊座部と、によって構成される菊座アダプタを備え、
前記支持部材は、円板状をなして周面から円の中心に向かって切り欠き溝が形成されるとともに複数の第1の凸条が、片面に放射状に形成された第1の菊座を下面に有し、
前記菊座部は、円板状をなして片面に複数の第2の凸条が放射状に形成された第2の菊座と、この第2の菊座の略中心に立設された雄ねじ部と、この雄ねじ部に螺合する蝶ナットと、を備え、
前記第1の菊座の前記第1の凸条と前記第2の菊座の前記第2の凸条を噛み合わせた状態で前記雄ねじ部に螺着された前記蝶ナットを締め付けることによって、前記菊座アダプタが前記支持部材に連結されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の蜂の巣除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蜂の巣を袋に収納するようにして除去する装置に係り、特に、蜂の巣に接近せずに切断して安全に袋へ収納することが可能な蜂の巣除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蜂の巣の除去は、上方が開口した袋に蜂の巣を収納した後、袋の開口部を絞った状態で、その上部を切断するようにして行われることが多い。ただし、この作業では、蜂の巣に接近しなければならないため、蜂の巣から出てきた大量の蜂に襲われる可能性があった。このような課題に対処するものして、例えば、特許文献1には「蜂の巣除去装置」という名称で、軽量で安価な構造でありながら、蜂の巣を簡単かつ安全に除去することができる装置に関する考案が開示されている。
特許文献1の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献1に開示された考案は、所定の長さの棒部材1と、その先端に取り付けられた止め具5を有する輪部材2と、止め具5で係止するとともに上方に開口して蜂の巣7を入れた後に口が締まる腹部に輪状針金6を有する円柱状網袋3と、その口縁に輪状に紐を通した紐部材4を備えたことを特徴とする。
このような構造によれば、害虫用防護服や梯子などを使用しなくとも安全かつ簡単に蜂の巣を除去することができる。
【0003】
また、特許文献2には「蜂の巣除去装置」という名称で、電力機器等に作られた蜂の巣を簡単かつ確実に除去することができる装置に関する発明が開示されている。
特許文献2の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献2に開示された発明は、棒状部材12の先端部に取り付けられた輪状部材16に装着されてワイヤ20を巻き取ることによって開口部が閉じる袋網18と、輪状部材16に設けられた三日月状の刃部14を備えたことを特徴とする。
このような構造によれば、野外に設置された電力機器等に作られた蜂の巣を離れた場所から簡単かつ確実に除去することができる。
【0004】
さらに、特許文献3には「蜂の巣捕獲具及び蜂の巣の捕獲方法」という名称で、薬剤を用いることなく、蜂と蜂の子を安全かつ確実に生け捕りするとともに、蜂の巣を壊さずに収穫することができる捕獲道具と捕獲方法に関する発明が開示されている。
特許文献3の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献3に開示された発明は、把持棒20の前端に取り付けられて、紐体3を引っ張ることによって開口部11が閉じられる袋状の収納体10を備えたことを特徴とする。
このような構造によれば、把持棒20を手で持って収納体10を蜂の巣に近づけ、収納体10の開ロ部11内に蜂の巣を挿入させた後、閉鎖手段で収納体10の開口部を閉鎖すると、蜂を収納体10によって確実に生け捕りすることができる。
【0005】
そして、特許文献4には「蜂巣捕獲装置および蜂巣捕獲方法」という名称で、営巣場所によらず、安全に効率良く蜂巣の捕獲作業を行うことができる装置とその方法に関する発明が開示されている。
特許文献4の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献4に開示された発明は、竿部101の先端にループ状部材109を介して取り付けられ、ロープ113を巻き取ることによって開口部105が閉じられる収納袋109と、のこぎり状の刃を有し、ループ状部材101の近傍に設けられている切断部106を備えた構造となっている。
このような構造によれば、ロープ113を巻き取って収納袋109の開口部105を閉じることで、収納袋109から蜂が逃げ出すのを防ぐことができるとともに、切断部106を収納袋109の開口部105付近に設けると、竿部101を蜂巣700に突き刺したり、揺動したりすることによって蜂巣700を切断することができる。
【0006】
また、特許文献5には「捕捉殺蜂具」という名称で、スズメバチの巣を捕捉するとともに、スズメバチを殺す治具に関する発明が開示されている。
特許文献5の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献5に開示された発明は、ロッド11の先端に取り付けられた袋状の捕捉網25と、先段のロッド11aの先端に取り付けられたノズル13に殺虫剤を供給するボンベ16が下段のロッド11cに取り付けられた構造となっている。
このような構造によれば、捕捉網25によって蜂の巣を安全かつ確実に覆うことができる。そして、この状態で殺虫剤噴霧のノズルを蜂の巣に突き刺して殺虫剤を噴霧することにより、スズメバチを確実に殺すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3233919号公報
【特許文献2】特開2012-60926号公報
【特許文献3】特開2003-250418号公報
【特許文献4】特開2020-92631号公報
【特許文献5】特開2007-175001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された考案では、円柱状網袋3に入れた蜂の巣7の根元を切断する場合には、蜂の巣7に近づかなければならず、その際に蜂の巣7の外に出ている蜂に刺されるおそれがあった。
特許文献2に開示された発明では、蜂の巣の基部に対して刃部14によって切り込みを入れた後、この切り込みを入れた部分にワイヤ20を食い込ませて切断する構造となっているが、刃部14を押し当てるだけでは蜂の巣に切り込みを入れることは難しく、また、切り込みを入れた部分にワイヤ20を食い込ませるだけでは、蜂の巣を容易に切断することができないという課題があった。
特許文献3に開示された発明は、蜂の巣が入れられた状態の収納体10を引き寄せるようにして蜂の巣の付け根部位を引き千切る構造となっているが、蜂の巣が大きい場合には、収納体10を引き寄せるだけでは、その付け根部位を引き千切ることができないという課題があった。
また、特許文献4に開示された発明では、切断部106を収納袋109の開口部105付近に設けた切断部106で蜂巣700に突き刺したり、揺動したりすることによって蜂巣700を切断する構造となっているが、蜂巣700が大きい場合、のこぎり状の刃を押し当てるだけでは蜂巣700が切断されないおそれがある。
さらに、特許文献5に開示された発明では、蜂の巣の内部に居る蜂を殺すことはできるものの、蜂の巣を切断する機構を備えていないため、蜂の巣を切断する場合には蜂の巣に近づく必要があり、その際に蜂の巣の外に居る蜂に刺されるおそれがあるという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、蜂の巣に接近することなく、容易かつ安全に蜂の巣を切断して袋へ収納することが可能な蜂の巣除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1の発明は、円形又は多角形の開口部を有する枠体と、開口状態が維持されるように開口縁部が枠体に取り付けられた袋と、枠体に固定された支持部材と、この支持部材に先端が連結された棒状部材と、それぞれ基端側に柄部が設けられるとともに先端側に刃部が設けられた一対の刃体と、この一対の刃体を柄部と刃部の間において回動自在に連結する軸体と、を備え、一対の刃体は、少なくとも刃部の一部が枠体の開口部の上方に配置されるように軸体を介して支持部材に固定されていることを特徴とする。
第1の発明においては、袋の内部に収納された蜂の巣の一部が枠体の開口部よりも上方に突出している場合に、その部分を2つの刃部の間に配置した状態で2つの刃部が閉じられるように柄部を操作すると、上記部分(枠体の開口部から上方に突出している蜂の巣の一部)が一対の刃体によって切断されるという作用を有する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、柄部に連結されたピストンロッドと、このピストンロッドを押し出したり、引き込んだりするシリンダと、を備えたシリンダユニットを有し、一対の刃体はピストンロッドの移動に伴って柄部同士のなす角度が変化するように構成されていることを特徴とする。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、シリンダを操作してピストンロッドを移動させることによって、一対の刃体が開閉するという作用を有する。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、シリンダは油圧シリンダであって、シリンダユニットに加えて、油圧シリンダに一端が接続された油圧ホースと、この油圧ホースの他端に接続された油圧ポンプと、を備えていることを特徴とする。
第3の発明においては、電動シリンダを用いる場合とは異なり、雨水の侵入を防ぐなどの対策を施す必要がないため、第2の発明の作用に加え、シリンダユニットが小型化され、全体として軽量構造になるとともに、製造コストが安くなるという作用を有する。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、袋の内側上部に環状をなすように設置された環状紐部材と、この環状紐部材に一端が連結された紐状部材と、この紐状部材の挿通孔を有し、支持部材に設置された保持具と、を備えていることを特徴とする。
なお、第4の発明における紐状部材及び保持具は、後述の発明の実施の形態において説明する「ワイヤ5」及び「ワイヤ保持具7」の上位概念にそれぞれ相当する。
第4の発明においては、第1の発明の作用に加え、蜂の巣の収納用袋が環状紐部材の内側に配置されるようにして袋の内部に設置された状態で紐状部材の他端を引っ張ると、紐状部材に一部が引っ張られて環状紐部材の開口部が小さくなることに伴って、収納用袋が環状紐部材によって外側から締め付けられるようにして、その開口部が閉じられるという作用を有する。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、棒状部材と紐状部材が絶縁性を有していることを特徴とする。
第5の発明においては、第4の発明の作用に加え、電力設備等に蜂の巣が作られている場合に袋や枠体、あるいは支持部材が誤って電力設備等に接触した場合でも棒状部材と紐状部材が絶縁性を有しているため、感電するおそれがないという作用を有する。
【0015】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれかにおいて、棒状部材の先端が連結される接続部と、菊座部と、によって構成される菊座アダプタを備え、支持部材は、円板状をなして周面から円の中心に向かって切り欠き溝が形成されるとともに複数の第1の凸条が片面に放射状に形成された第1の菊座を下面に有し、菊座部は、円板状をなして片面に複数の第2の凸条が放射状に形成された第2の菊座と、この第2の菊座の略中心に立設された雄ねじ部と、この雄ねじ部に螺合する蝶ナットと、を備え、第1の菊座の第1の凸条と第2の菊座の第2の凸条を噛み合わせた状態で雄ねじ部に螺着された蝶ナットを締め付けることによって、菊座アダプタが支持部材に連結されることを特徴とする。
なお、第6の発明では、第1の菊座が円板の周面から円の中心に向かって切り欠き溝が形成されているような略円板をなす場合も「第1の菊座が円板状をなす」と表現するものとする。
第6の発明では、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の作用に加え、菊座アダプタの菊座部における雄ねじ部の中心軸の周りに第1の菊座を相対的に回転させて第1の菊座の第1の凸条に対する第2の菊座の第2の凸条の噛み合わせ方(第1の菊座において周面から円の中心に向かって切り欠き溝が形成されている方向と菊座アダプタの接続部に先端が連結された棒状部材の長手方向がなす角度)を変えると、支持部材に対する棒状部材の取付角度が変化するという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、ワイヤを食い込ませたり、鋸状の刃を押し付けたりする従来の方法とは異なり、一対の刃体が軸体によって回動自在に連結された構造の鋏状の切断具によって蜂の巣が切断されることから、蜂の巣の切断が容易である。また、一対の刃体は柄部の操作によって開閉するため、蜂の巣に接近することなく、その切断作業を安全に行うことが可能である。
【0017】
第2の発明では、一対の刃体によって蜂の巣を切断する際に、柄部を手で持つなどして直接操作する必要がないため、第1の発明の場合よりも更に蜂の巣から遠く離れた状態で、その切断作業を行うことができる。したがって、第2の発明によれば、蜂の巣の切断作業を安全に行うことができるという第1の発明の効果がより一層発揮される。
【0018】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加え、シリンダユニットが小型化されて全体として軽量構造になるため、作業時の取扱いが容易になるという効果を奏する。また、第3の発明によれば、製造コストの削減を図ることもできる。
【0019】
第4の発明によれば、第1の発明の効果に加え、蜂の巣に近づくことなく、紐状部材の操作のみによって収納用袋の開口部が閉じられることから、収納用袋の内部に収納された蜂の巣から蜂が逃げ出すことを安全かつ確実に防止できるという効果を奏する。
【0020】
第5の発明によれば、第4の発明の効果に加え、電力設備等に蜂の巣が作られている場合でも作業者の感電事故を防ぐことができるため、蜂の巣の除去作業における安全性が高まるという効果を奏する。
【0021】
第6の発明では、支持部材に対する棒状部材の取付角度を容易に調節できるため、蜂の巣が作られている高さや作業者の体格に応じて、上記取付角度を調節することで蜂の巣に対して袋を適切な箇所に配置することが可能である。したがって、第6の発明によれば、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の効果に加え、蜂の巣を除去する作業の効率が格段に高まるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る蜂の巣除去装置の外観を示した図である。
【
図2】(a)及び(b)はそれぞれ支持部材とワイヤ保持具の正面図及び平面図であり、(c)及び(d)はそれぞれ菊座アダプタ及び絶縁操作棒の連結部の拡大図であり、(e)は
図1において支持部材、ワイヤ保持具及び菊座アダプタをB方向に見た図であり、(f)は同図(a)において支持部材にシリンダユニットが設置された状態を示した図である。
【
図3】(a)は
図1におけるA方向矢視図であり、(b)は同図(a)において切断具の刃先を閉じた状態を表した図である。
【
図4】(a)は
図3(a)において切断具とシリンダユニットを取り外した状態を示した図であり、(b)は同図(a)において破線で囲まれた部分を拡大した図である。
【
図5】(a)は
図4(a)においてワイヤを引っ張ることで環状紐部材によって形成される開口部を小さくした状態を示した図であり、(b)は
図1(a)において網袋の内部に設置された蜂の巣の収納用袋の開口部が閉じられた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態に係る蜂の巣除去装置の構造とその作用及び効果について、
図1乃至
図5を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明では、本実施の形態に係る蜂の巣除去装置が実際に使用される状態を想定して「上面」や「下面」、あるいは「上方」などの表現を用いている。
【実施例0024】
図1は本発明の実施の形態に係る蜂の巣除去装置1の外観を示した図である。
図2(a)及び
図2(b)はそれぞれ支持部材6とワイヤ保持具7の正面図及び平面図であり、
図2(c)及び
図2(d)はそれぞれ菊座アダプタ8及び絶縁操作棒9の連結部9cの拡大図である。また、
図2(e)は
図1において支持部材6、ワイヤ保持具7及び菊座アダプタ8をB方向に見た図であり、
図2(f)は
図2(a)において支持部材6にシリンダユニット10が設置された状態を示した図である。
図1及び
図2(a)乃至
図2(f)に示すように蜂の巣除去装置1は、円形の開口部3a(後述の
図5(a)を参照)を有する環状の枠体3と、開口状態が維持されるように開口縁部2aが枠体3に取り付けられた網袋2と、この網袋2の内側上部に環状をなすように設置された環状紐部材4と、この環状紐部材4に一端5a(後述の
図4(b)を参照)が連結されたワイヤ5と、枠体3に固定された支持部材6と、この支持部材6に設置されたワイヤ保持具7と、支持部材6に連結された菊座アダプタ8と、この菊座アダプタ8が連結部9cに取り付けられた絶縁操作棒9と、支持部材6の上面6aに設置されたシリンダユニット10及び切断具11と、シリンダユニット10に作動油を供給する油圧ホース12を備えている。
なお、網袋2は合成繊維や天然繊維が網目をなすように編まれた構造となっているが、網袋2の代わりに網目の無い袋を用いることもできる。ただし、網袋2を用いると、内部に収納された蜂の巣の状態を目視で容易に確認できることに加え、袋が軽量構造となるため、蜂の巣除去装置1の取り扱いが容易になるというメリットがある。また、枠体3の開口部3aは円形に限らず、多角形をなしていても良い。さらに、蜂の巣除去装置1には、絶縁操作棒9の代わりに金属やプラスチックなどによって形成された棒状部材を用いることもできるし、ワイヤ5として絶縁性を有しない紐状部材を用いることもできる。ただし、電力設備等に蜂の巣が作られている場合には、網袋2や枠体3、あるいは支持部材6が誤って電力設備等に接触することにより作業者が感電してしまうおそれがあるため、感電事故が発生する可能性のある場所に作られた蜂の巣を除去する場合には、絶縁操作棒9及び絶縁性を有するワイヤ5を用いることが望ましい。このような構造であれば、電力設備等に蜂の巣が作られている場合でも作業者が感電するおそれがないため、蜂の巣の除去作業における安全性を高めることができる。
【0025】
絶縁操作棒9は、繊維強化プラスチックなどで形成された長尺の筒体からなる柄部9aと、柄部9aに設置され略円錐台状をなす雨切りツバ9bと、柄部9aの先端から長手方向に延設された連結部9cを備えている。すなわち、絶縁操作棒9の先端には連結部9cが設けられている。
また、略円錐台状をなす雨切りツバ12aと限界ツバ12bを有し、柄部9aに沿うように配置されて支持バンド13によって絶縁操作棒9に固定される油圧ホース12は、先端側がシリンダユニット10に接続されるとともに、基端側がカプラ(図示せず)を介して油圧ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)に示すように平面視長方形状をなす支持部材6は、略円板状をなして周面14cから円の中心に向かって切り欠き溝14aが形成されるともに複数の第1の凸条14bが片面14d(
図2(e)を参照)に放射状に形成された第1の菊座14が下面6b(
図2(e)を参照)に設けられており、枠体3に対する当接面6cには、側面視半円形をなし、枠体3の一部が嵌合する凹溝15が円弧状に設けられている。
また、支持部材6の上面6aには、平面視長穴状をなすガイド溝16aが上述の長方形の長辺と平行をなすように設けられるとともに、切断具11の軸体29(
図1を参照)が嵌入される有底孔16bが当接面6cの側の端縁6dとガイド溝16aの間に設けられている。
さらに、ワイヤ保持具7はワイヤ5の挿通孔7aを有する角筒体であり、支持部材6の当接面6cに垂直な側面6eに挿通孔7aがガイド溝16aの長手方向と平行をなすように設置されている。なお、ワイヤ保持具7は角筒体に限定されるものではなく、例えば、円筒体であっても良い。
【0027】
図2(c)及び
図2(e)に示すように菊座アダプタ8は、底面が開口した円筒状に形成され、一対のT字溝17a、17aを有する接続部17と、菊座部18によって構成されている。菊座部18は、円板状をなして片面19bに複数の第2の凸条19aが放射状に形成された第2の菊座19と、この第2の菊座19の略中心に立設された雄ねじ部20と、この雄ねじ部20に螺合する蝶ナット21を備えている。
図2(d)に示すように絶縁操作棒9の連結部9cは、円柱状の基体22と、基体22の直径方向と平行であって、かつ、相反する方向へ突出するように基体22の外周面に設けられ、菊座アダプタ8の接続部17のT字溝17aに係合する一対の係止ピン22a、22aと、連結部9cに内蔵された圧縮コイルバネ(図示せず)によって基体22の先端面から突出する方向へ付勢されているプッシュロッド23と、基体22の下方に設けられた雄ネジ部(図示せず)に螺合するリングナット24と、上記雄ネジ部の下方に設けられるツバ部25を備えている。
【0028】
すなわち、蜂の巣除去装置1では、第1の菊座14の第1の凸条14bと第2の菊座19の第2の凸条19aを噛み合わせた状態で雄ねじ部20に螺着された蝶ナット21を締め付けることによって、絶縁操作棒9の先端(連結部9c)が菊座アダプタ8を介して支持部材6に連結される構造となっている。
このような構造の蜂の巣除去装置1において、菊座アダプタ8の菊座部18の雄ねじ部20の中心軸の周りに第1の菊座14を相対的に回転させて第1の菊座14の第1の凸条14bに対する第2の菊座19の第2の凸条19aの噛み合わせ方(第1の菊座14において周面14cから円の中心に向かって切り欠き溝14aが形成されている方向と菊座アダプタ8の接続部17に先端が連結された絶縁操作棒9の長手方向がなす角度)を変えると、支持部材6に対する絶縁操作棒9の取付角度が変化する。すなわち、蜂の巣除去装置1では、支持部材6に対する絶縁操作棒9の取付角度の調節が容易であることから、蜂の巣が作られている高さや作業者の体格に応じて上記取付角度を調節することが可能である。これにより、蜂の巣を除去する作業の効率が格段に高まる。
【0029】
また、
図2(f)に示すようにシリンダユニット10は、支持部材6の上面6aに直交するとともにガイド溝16aの内部にその長手方向へスライド可能に配置される円柱状のガイド部材26と、このガイド部材26が先端27aに設置されたピストンロッド27と、このピストンロッド27を押し出し、又は引き込むことでガイド溝16aの長手方向と平行にピストンロッド27が移動するように支持部材6の上面6aに設置される油圧シリンダ28によって構成されている。
【0030】
図3(a)は
図1におけるA方向矢視図であり、
図3(b)は
図3(a)において切断具の刃先を閉じた状態を表した図である。なお、
図3(a)及び
図3(b)では網袋2おける網目の図示を省略している。
図3(a)に示すように切断具11は、前述したように支持部材6の有底孔16bに嵌入される軸体29と、支持部材6の上面6aと平行に設置され、軸体29を介して回動自在に連結される一対の刃体30、30と、一対の刃体30、30の基端30a、30aに両端が回動可能にそれぞれ連結され、一対の刃体30、30の先端30b、30bを開く方向に付勢する捩じりコイルバネ31を備えている。
なお、刃体30は、基端30a側と先端30b側にそれぞれ柄部32a及び刃部32bが設けられており、捩じりコイルバネ31は、コイル部31aの内部にシリンダユニット10のガイド部材26が配置されている。すなわち、柄部32aと刃部32bの間が軸体29を介して回動自在に連結されている一対の刃体30、30は、刃部32bが枠体3の上方に位置するように軸体29を介して支持部材6に固定されている。なお、
図3(a)及び
図3(b)には、刃部32bのほぼ全体が枠体3の開口部3a(
図5(a)を参照)の上方に配置されているが、蜂の巣除去装置1の構造は、これに限定されるものではなく、一対の刃体30、30は刃部32bの少なくとも一部が枠体3の開口部3a(
図5(a)を参照)の上方に配置されていれば良い。
【0031】
図3(a)に示した状態において、油圧シリンダ28に作動油を供給してピストンロッド27を押し出すと、ピストンロッド27の先端27a(
図2(f)を参照)に取り付けられたガイド部材26がガイド溝16aの内部をその長手方向に沿って軸体29から離れる方向へ移動し、このガイド部材26の移動に伴って捩じりコイルバネ31のコイル部31aがガイド溝16aの長手方向と平行に軸体29から離れる方向へ移動する。その結果、一対の刃体30、30は柄部32a、柄部32aのなす角度が小さくなる方向へ回動し、最終的に
図3(b)に示すように刃部32b、32bが閉じられた状態になる。
一方、
図3(b)に示した状態において、油圧シリンダ28に対し、作動油による油圧を開放すると、一対の刃体30、30の基端30a、30aを開く方向に付勢している捩じりコイルバネ31によって、一対の刃体30、30は柄部32a、柄部32aのなす角度が大きくなる方向へ回動する結果、
図3(a)に示すように刃部32b、32bが開いた状態になる。
【0032】
このように、蜂の巣除去装置1は、油圧シリンダ28を操作してピストンロッド27を移動させることにより、切断具11を構成する一対の刃体30、30が閉じられる方向へ軸体29を中心としてそれぞれ回動する構造となっている。そのため、網袋2の内部に収納された蜂の巣の一部が枠体3の開口部3aよりも上方に突出している場合に、その部分を一対の刃体30、30における2つの刃部32b、32bの間に配置した状態で当該刃部32b、32bが閉じられるように柄部32a、32aを操作すると、上記部分(枠体3の開口部3aから上方に突出している蜂の巣の一部)が一対の刃体30、30によって切断されることになる。
【0033】
すなわち、蜂の巣除去装置1では、ワイヤを食い込ませたり、鋸状の刃を押し付けたりする従来の方法とは異なり、一対の刃体30、30が軸体29によって回動自在に連結された構造の鋏状の切断具11によって蜂の巣が切断されることから、蜂の巣の切断が容易となっている。また、蜂の巣除去装置1では、一対の刃体30、30が柄部32a、32aの操作によって開閉するため、柄部32a、32aを手で持って直接、操作したとしても蜂の巣に接近する必要がないため、その切断作業を安全に行うことができる。
前述のとおり、蜂の巣除去装置1では、油圧シリンダ28を介して間接的に柄部32a、32aを操作する構造となっている。したがって、柄部32a、32aを手で持って直接、操作する場合よりも更に蜂の巣から遠く離れた状態で、その切断作業を行うことができる。すなわち、蜂の巣除去装置1は、シリンダユニット10によって切断具11を開閉させる構造により、蜂の巣の切断作業を行う際の安全性がより一層高められるという効果を有しているのである。
なお、蜂の巣除去装置1において、油圧シリンダ28の代わりに電動シリンダを用いることもできる。ただし、シリンダユニット10に油圧シリンダ28を用いると、電動シリンダに用いる場合とは異なり、雨水の侵入を防ぐなどの対策を施す必要がないため、シリンダユニット10が小型化され、全体として軽量構造になるとともに、製造コストが安くなるというメリットがある。
また、一対の刃体30、30の基端30a、30aを開く方向に付勢する部材として、捩じりコイルバネ31以外の形状のバネを用いることもできる。さらに、捩じりコイルバネ31を用いずに、シリンダユニット10を用いて一対の刃体30、30の基端30a、30aを開閉する構造とすることもできる。
【0034】
図4(a)は
図3(a)において切断具11とシリンダユニット10を取り外した状態を示した図であり、
図4(b)は
図4(a)において破線で囲まれた部分を拡大した図である。また、
図5(a)は
図4(a)においてワイヤ5を引っ張ることで環状紐部材4によって形成される開口部4bを小さくした状態を示した図であり、
図5(b)は
図1(a)において網袋2の内部に設置された蜂の巣34の収納用袋33の開口部33aが閉じられた状態を示した図である。なお、
図4(a)及び
図4(b)並びに
図5(a)及び
図5(b)では網袋2における網目の図示を省略している。
図4(a)及び
図4(b)に示すように環状紐部材4は、略円形の開口部4bを形成するように網袋2の内側上部に設置されており、一対の端部4a、4aはワイヤ5の一端5aに接合されることによって連結されている。ワイヤ保持具7の挿通孔7aの内径は、環状紐部材4の一対の端部4a、4aを一体としてワイヤ5とともに挿通可能な大きさを有している。そのため、ワイヤ5の他端を引っ張ると環状紐部材4の一対の端部4a、4aはワイヤ保持具7の挿通孔7aの内部を
図4(b)に矢印Dで示す方向に移動する。その結果、
図5(a)に示すように環状紐部材4の開口部4bは絞られて小さくなる。
なお、環状紐部材4の一対の端部4a、4aはワイヤ5の一端5aに対し、互いに接合された状態で一体として連結されていても良いし、互いに接合される代わりに、それぞれが個別に連結されていても良い。
【0035】
図5(b)に示すように、蜂の巣34の収納用袋33が環状紐部材4の内側に配置されるようにして網袋2の内部に設置された状態でワイヤ5の他端を引っ張ると、環状紐部材4はワイヤ5に一部が引っ張られることにより、開口部4bが小さくなる。その結果、収納用袋33は環状紐部材4によって外側から締め付けられるようにして、その開口部33aが閉じられる。このように、蜂の巣除去装置1では、蜂の巣34に近づくことなく、ワイヤ5の操作のみによって収納用袋33の開口部33aが閉じられることから、収納用袋33の内部に収納された蜂の巣34から蜂が逃げ出すことを安全かつ確実に防止することができる。
1…蜂の巣除去装置 2…網袋 2a…開口縁部 3…枠体 3a…開口部 4…環状紐部材 4a…端部 4b…開口部 5…ワイヤ 5a…一端 6…支持部材 6a…上面 6b…下面 6c…当接面 6d…端縁 6e…側面 7…ワイヤ保持具 7a…挿通孔 8…菊座アダプタ 9…絶縁操作棒 9a…柄部 9b…雨切りツバ 9c…連結部 10…シリンダユニット 11…切断具 12…油圧ホース 12a…雨切りツバ 12b…限界ツバ 13…支持バンド 14…第1の菊座 14a…切り欠き溝 14b…第1の凸条 14c…周面 14d…片面 15…凹溝 16a…ガイド溝 16b…有底孔 17…接続部 17a…T字溝 18…菊座部 19…第2の菊座 19a…第2の凸条 19b…片面 20…雄ねじ部 21…蝶ナット 22…基体 22a…係止ピン 23…プッシュロッド 24…リングナット 25…ツバ部 26…ガイド部材 27…ピストンロッド 27a…先端 28…油圧シリンダ 29…軸体 30…刃体 30a…基端 30b…先端 31…捩じりコイルバネ 31a…コイル部 32a…柄部 32b…刃部 33…収納用袋 33a…開口部 34…蜂の巣