IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特開2024-167793筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体
<>
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図1
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図2
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図3
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図4
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図5
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図6
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図7
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図8
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図9
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図10
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図11
  • 特開-筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167793
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/397 20210101AFI20241127BHJP
【FI】
A61B5/397
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084123
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 弘
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA04
4C127BB05
4C127CC01
4C127DD03
4C127GG15
4C127HH06
(57)【要約】
【課題】刺激電流に異常が発生した場合に、対応しやすい筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラム、筋弛緩監視プログラムを記録したコンピューターで読み取り可能な記録媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の筋弛緩監視装置は、被検者の生体に取り付けた刺激電極を介して神経を刺激する刺激出力部と、前記刺激出力部による神経への刺激に反応して筋肉から生じる生体信号を、生体に貼付した導出電極を介して電気信号として検出する信号検出部と、前記電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定部と、を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の生体に取り付けた刺激電極を介して神経を刺激する刺激出力部と、
前記刺激出力部による神経への刺激に反応して筋肉から生じる生体信号を、生体に貼付した導出電極を介して電気信号として検出する信号検出部と、
前記電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定部と、
を備えることを特徴とする筋弛緩監視装置。
【請求項2】
前記刺激出力部の刺激電流異常を判定して刺激電流異常報知を行う刺激異常判定部と、を備え、
前記外来ノイズ判定部が外来ノイズを検出した場合に、刺激電流異常報知を抑制する、
ことを特徴とする請求項1に記載された筋弛緩監視装置。
【請求項3】
前記外来ノイズ判定部は、前記電気信号を二階微分した結果が、所定の判定対象期間内において、所定範囲の外側にあるデータ数が閾値を超えた場合に、外来ノイズありと判定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載された筋弛緩監視装置。
【請求項4】
前記所定範囲は、非ノイズ範囲である、
ことを特徴とする請求項3に記載された筋弛緩監視装置。
【請求項5】
電気メスを駆動する電気メス装置からの電気メス作動信号により、前記刺激電流異常報知を抑制することを特徴とする、請求項2に記載された筋弛緩監視装置。
【請求項6】
前記刺激電流異常は、筋弛緩監視時において、前記刺激電極に流れた電流値が設定した電流値との差がある異常であることを特徴とする、
請求項2に記載された筋弛緩監視装置。
【請求項7】
コンピューターに、
生体に貼付した刺激電極を介して、刺激出力部により神経を刺激する刺激手順と、
前記刺激出力部による神経への刺激に反応して筋肉から生じる生体信号を、生体に貼付した導出電極を介して電気信号として信号検出部により検出する検出手順と、
前記電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定手順と、
を実行させるための筋弛緩監視プログラム。
【請求項8】
コンピューターに、
生体に貼付した刺激電極を介して、刺激出力部により神経を刺激する刺激手順と、
前記刺激出力部による神経への刺激に反応して筋肉から生じる生体信号を、生体に貼付した導出電極を介して電気信号として信号検出部により検出する検出手順と、
前記電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定手順と、
を実行させるための筋弛緩監視プログラムを記録したコンピューターで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者を手術する際には麻酔を使用することが一般的であるが、麻酔により患者に意識や感覚がなくても反射等により筋肉の収縮が起きる可能性がある。そのため、大きな手術の際には筋弛緩薬を患者に投与し、患者が動かないようにして手術を行いやすくしている。手術開始前に麻酔薬を投与する等の手術準備が行われるが、この際に筋弛緩薬も投与する。筋弛緩薬を投与した後には患者が筋弛緩状態になったか確認するため、筋弛緩状態の監視が行われる。また、筋弛緩薬の効果は時間と共に低下するため、筋弛緩状態を監視して手術の進捗状況に応じた筋弛緩薬の再投与を行う。筋弛緩状態を監視する装置としては、特許文献1、2に示すような、患者の神経に対して刺激を行い、刺激による筋肉の収縮を測定する筋弛緩監視装置が使用される。特許文献1は、神経刺激による筋収縮によって生じた運動を加速度で測定する筋弛緩監視装置である。
【0003】
一方、特許文献2には、神経を電気的に刺激して、その反応として筋肉に生じる生体信号を測定する筋電図方式の筋弛緩監視装置が示されている。この筋弛緩監視装置では、神経の近傍に2つの刺激電極を貼り付け、その神経により収縮する筋肉の近傍に2つの導出電極を貼り付ける。そして、刺激出力部から刺激電極を介して刺激電流を流すことにより神経を刺激し、その際に筋肉で発生する生体信号を、導出電極を介して得られる電気信号として信号検出部で検出する。
【0004】
筋弛緩薬が十分に作用している場合には、刺激電流を流して神経を刺激しても筋肉に生体信号が現れず、信号検出部で電気信号の電位差は捉えられない。しかし、刺激電極の貼り付けが不十分であったり、刺激電極への配線が途切れていたりして、刺激電流が神経に付与されていない場合にも、筋肉に生体電位が現れず導出電極で電位差を捉えることができない。そのため、刺激電流のタイミングで信号検出部により電気信号の電位差を捉えていない状態は、筋弛緩薬が作用している状態であるのか、刺激電流が神経に付与されていない状態であるのか区別できない。
【0005】
そこで、筋弛緩監視装置では、刺激電極の貼り付け状態等をモニターするために、刺激出力部の電流値を監視している。刺激出力部の電流値が0であれば刺激電流は生体に付与されておらず、刺激電極が剥がれかけている等により電流値が小さければ刺激電流としては不十分である。刺激出力部の電流値を監視すると、筋電図が電位変化を捉えていない場合に、筋弛緩薬の作用によって筋肉に生体信号が現れずに電位変化していない状態であるのか、刺激電極が剥がれる等して神経に刺激電流が十分に伝わっていない状態であるのかを見分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-326050号公報
【特許文献2】特開2021-69724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
刺激出力部の電流値に異常が生じると筋弛緩監視が正常に行われないことから、刺激電極の貼り付け直しなどの対処をする必要がある。そのため、刺激出力部の電流値を監視して、異常の報知などが行われる。しかし、強い外来ノイズが生じた場合、その影響により刺激電流が異常であると判定してしまう可能性がある。外来ノイズにより刺激電流の異常を誤判定して異常の報知などを行うと、手術の進行に支障となる。
【0008】
外来ノイズとしては、手術中に使用する電気メスによるノイズが考えられる。電気メスは、使用時に数千Vの高周波電圧を患者の体に用いるため、筋弛緩監視装置における刺激電流の測定に対して大きなノイズ源となる。
【0009】
本発明の一実施形態は、刺激電流に異常が発生した場合に、対応しやすい筋弛緩監視装置、筋弛緩監視プログラム、筋弛緩監視プログラムを記録したコンピューターで読み取り可能な記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例における筋弛緩監視装置は、被検者の生体に取り付けた刺激電極を介して神経を刺激する刺激出力部と、前記刺激出力部による神経への刺激に反応して筋肉から生じる生体信号を、生体に貼付した導出電極を介して電気信号として検出する信号検出部と、前記電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
外来ノイズによる刺激電流の異常が生じた場合に、手術等の進行に支障が生じにくい筋弛緩監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における筋弛緩監視装置を備えた筋弛緩監視システムの構成を示す図。
図2】実施形態において、筋弛緩薬を投与していない生体から得た筋電図。
図3】実施形態において、筋弛緩薬を投与していない生体のTOF法による筋電図。
図4】実施形態において、筋弛緩薬が不完全に作用しているときのTOF法による筋電図。
図5】刺激電流異常報知の抑制に関する実施形態のフロー図。
図6】実施形態における刺激電流値の変化と刺激電流異常報知を行うタイミングを示す図。
図7】実施形態における電気メスノイズ例1の筋電図。
図8】実施形態における電気メスノイズ例1の一階微分。
図9】実施形態における電気メスノイズ例1の二階微分。
図10】実施形態における電気メスノイズ例2の筋電図。
図11】実施形態における電気メスノイズ例2の一階微分。
図12】実施形態における電気メスノイズ例2の二階微分。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、患者である被検者の上肢Lに取り付けた実施形態における筋弛緩監視システムの構成を示す。筋弛緩監視システムは、筋弛緩監視装置1、表示装置2、スピーカー3、刺激電極41、配線42、導出電極51、信号線52、接地電極61、接地線62を有している。刺激電極41と配線42は一対が設けられ、導出電極51と信号線52も一対が設けられる。表示装置2とスピーカー3は、筋弛緩監視装置1の中に組み込んでもよい。
【0014】
筋弛緩監視装置1は、制御部11、記憶部12、刺激出力部13、信号検出部14、表示出力部15、音声出力部16、操作部17を備えている。制御部11はCPUにより構成される。刺激電流を出力する刺激出力部13は、一対の刺激電極41の間に流れる刺激電流を測定する電流測定部131を有している。刺激出力部13は、一対の配線42を介して、上肢Lの腕に取り付ける一対の刺激電極41に接続する。
【0015】
刺激出力部13が刺激電流を出力するタイミングであっても、刺激電極41が上肢Lから剥がれていたり、配線42の接続が不十分であったりすると、所定の刺激電流は流れない。電流測定部131では、刺激電流の電流値を測定することによって、これらの状態を検出することができる。表示出力部15、音声出力部16は、筋弛緩監視の結果を報知するための報知出力部であるが、刺激電流の異常、電極等の設置異常原因、設置異常原因に応じた対応内容を報知するための報知出力部としても機能する。
【0016】
記憶部12、刺激出力部13、信号検出部14、表示出力部15、音声出力部16、操作部17は、制御部11に接続する。また、刺激出力部13は、一対の配線42を介して一対の刺激電極41に接続し、信号検出部14は、一対の信号線52を介して一対の導出電極51に接続する。さらに、信号検出部14は、接地線62を介して接地電極61に接続する。刺激電極41と導出電極51、接地電極61は人体に貼付する表面電極である。筋弛緩監視装置1の表示出力部15は表示装置2に接続し、音声出力部16はスピーカー3に接続する。
【0017】
図1に示す被検者の上肢Lは、腕の内部に尺骨神経が延在している。尺骨神経は、手における母子内転筋や小指外転筋等を収縮させる神経である。筋弛緩監視装置1を使用する際には、刺激電極41と導出電極51、接地電極61を、生体に貼付する。一対の刺激電極41は、尺骨神経に対応する位置に貼付され、一対の導出電極51は、小指外転筋とその近傍の腱に対応する位置に貼付されている。また、刺激電極41と導出電極51との間には、接地電極61が貼付される。
【0018】
信号検出部14では、信号線52を介して入力された小指外転筋と腱に生じる2つの生体信号の電位差を検出している。一対の刺激電極41は、尺骨神経に沿って貼付され、刺激出力部13は配線42と刺激電極41を介してパルス状の刺激電流を流し、尺骨神経を刺激する。本実施形態では、刺激電流を流す期間は0.2msecである。そして、尺骨神経への刺激に反応した筋肉から生じる生体信号を、一対の導出電極51の間の電気信号として信号検出部14が検出する。信号検出部14は差動増幅器を有しており、一対の導出電極51の間の電位差を増幅する。そして、信号検出部14は、増幅した電圧値をA/D変換して制御部11へ送る。接地電極61は、被検者の体から上肢Lを伝わるノイズ電圧が、導出電極51を経た検出電位へ影響することを抑制する。ノイズ電圧は主に、刺激電流による電圧パルスや、刺激電流による電圧パルスが被検者の体で伝搬することにより生じる。
【0019】
信号検出部14で検出してA/D変換された導出データは制御部11に入力され、筋弛緩状態の監視が行われる。監視結果は表示出力部15を介して表示装置2に表示され、音声出力部16を介してスピーカー3から音声報知される。
【0020】
また、筋弛緩監視装置1は操作部17のスイッチ操作により刺激電流値の調整等を行う。制御部11と記憶部12は、手術の準備段階において刺激電流の調整を行って刺激電流値を設定する刺激電流設定部としても機能する。さらに、制御部11と記憶部12は、信号検出部14により検出した電気信号により導出電極51等の設置異常原因を判定する原因判定部としても機能する。
【0021】
以上のように、筋弛緩監視システムでは、図1に示したように筋弛緩監視装置1を被検者の上肢Lに接続して、刺激出力部13から刺激電流を流す。そして、筋肉に生じた生体信号を信号検出部14により電気信号として検出し、筋電図を得る。刺激出力部13による刺激電流は2つの刺激電極41の間に流れて尺骨神経を刺激し、尺骨神経に繋がった筋肉に生じた生体信号を2つの導出電極51の間の電圧の電気信号として信号検出部14で検出する。筋弛緩薬の作用による筋弛緩状態によって、生体信号は変化する。
【0022】
図2に、筋弛緩薬を投与していない生体の筋電図の例を示す。筋電図は、被検者の上肢Lに貼付の2つの導出電極51から得られた電気信号の電位差を示している。縦軸は電位差、横軸は時間を示す。刺激電流による直接的なノイズが図に現れることを避けるため、図2の筋電図は、0.2msecの刺激電流のパルスが終了した直後以降の2つの導出電極51の電位差を示している。図2の筋電図は、筋弛緩薬を投与していない生体の非投与波形Eを示す。
【0023】
図2に示す非投与波形Eは、刺激電流による残留電圧の負電位から始まり、6msecあたりで6mVの正ピーク電位PPeとなり、11msecあたりで-4mVの負ピーク電位NPeとなった後に20msecあたりで0mVの電位に収束する。図2では、神経への刺激電流により筋肉に生体信号が生じる期間である生体信号期間Tpは、0~約20msecとなっている。非投与波形Eは、電極の貼り付け状況や生体の特性等によりピーク電位の電圧値やタイミング等が多少異なるが、概ね図2に示すような形状となる。
【0024】
一方、筋弛緩薬を投与すると、最高の筋弛緩度では生体信号は生じずに電気信号の電位は0となり、正ピーク電位PPe、負ピーク電位NPeは生じない。また、筋弛緩度が低くなると生体信号は生じるが、短時間に複数の刺激を行った場合の各回の生体信号は、徐々に小さくなる。このことを利用して、実施形態の筋弛緩監視装置1では、TOF法(Train of Four)によって、筋弛緩度を監視することができる。なお、TOF法に限らず、筋弛緩監視装置1は種々の刺激による筋電図を得ることができる。
【0025】
図3に、筋弛緩薬の投与前に、TOF法による刺激を行った際の生体信号を表す筋電図を示す。実施形態ではTOF法を用いて、筋弛緩度を算出する。実施形態のTOF法では、500msecおきの4回の連続する刺激を1群として、15sec毎に1群を繰り返して刺激を行う。刺激を行う刺激電流の期間は、0.2msecである。刺激は、図1に示す刺激電極41の間に刺激出力部13から刺激電流を流すことにより行う。図3は、4回の連続する刺激により順次発生した4つの筋電位波形W1~W4を示している。縦軸は電圧値Vを、横軸は時間tを示す。
【0026】
なお、筋電位波形W1~W4の電位が変動する時間幅である生体信号期間Tpは、刺激の間隔である500msecに対して小さい。そのため、図3の筋電位波形W1~W4は、便宜的に刺激のタイミングをつめた上で、始点を時間tの正の方向に少しずつずらして表示している。図3における時間tの数値は、最初の刺激に対応する筋電位波形W1の時間を示す。筋電位波形W1の始点W1Sは0msecである。筋電位波形W2の始点W2Sは、t方向に500msecの時間位置にあるが、-t方向に詰めて図3のように記載している。筋電位波形W3、W4も同様であり、始点W3SとW4Sはそれぞれ1000msec、1500msecの時間位置である。また、刺激電流によるノイズを避けるため、図2と同様に、筋電位波形W1~W4は、刺激電流のパルスが終了した直後からの電位差を示している。
【0027】
筋弛緩薬の投与前は、筋電位波形W1~W4は、図2に示した非投与波形Eの形状となり、筋電位波形W1~W4における生体信号期間Tpも同じ長さである。図3には筋電位波形W1の生体信号期間Tpのみを示す。そして、図3に示すように、筋電位波形W1~W4における、生体信号期間Tpの最高電位と最低電位の差である振幅f1~f4は、同じ大きさである。筋弛緩薬の投与前は、1群の刺激電流を付与する間に筋電位波形の振幅は減少しない。
【0028】
TOF法では、第1刺激による筋電位波形W1の振幅f1と第4刺激による筋電位波形W4の振幅f4の比(TOF比)を%で表して、筋弛緩度の指標とする。振幅f1、f4は、それぞれ筋電位波形W1、W4における生体信号期間Tpの最高電位と最低電位の差の電圧値である。筋弛緩薬が全く作用していない時には、TOF比は100%となる。筋弛緩薬の投与前の筋電図である図3ではf1=f4であり、TOF比は100%となっている。
【0029】
筋弛緩薬が投与されて筋弛緩度が最高になると、図示しないが、筋電位波形W1~W4は全て0mVとなる。そして、振幅f1~f4も全て0mVとなる。この状態では、刺激電流により神経を刺激しても、筋肉では生体信号が発生せず、一対の導出電極51の間の電位差は0mVとなっている。
【0030】
一方、筋弛緩薬が投与されて時間が経過したときなどの、筋弛緩薬の作用が弱い筋弛緩度では、1群の刺激の中で刺激の回数が増える毎に筋電位波形の振幅fが小さくなる。図4に、この時にTOF法による刺激を行った際の生体信号を表す筋電図を示す。図4では、500msecおきの4回の連続する刺激を1群として、15sec毎に1群を繰り返して刺激を行う。刺激を行う刺激電流の期間は、0.2msecである。刺激は、図1に示す刺激電極41の間に刺激電流を流すことにより行う。
【0031】
図4は、4回の連続する刺激により順次発生した4つの筋電位波形W1~W4を示している。縦軸は電圧値Vを、横軸は時間tを示す。筋電位波形W1~W4における生体信号期間Tpも同じ長さである。図4には筋電位波形W1の生体信号期間Tpのみを示す。筋電位波形W1~W4の生体信号期間Tpは、刺激の間隔である500msecに対して小さいため、図4においても便宜的に刺激のタイミングを詰めて、始点を時間tの正の方向に少しずつずらして表示している。図4における時間tの数値は、最初の刺激に対応する筋電位波形W1の時間を示す。また、図2、3と同様に、筋電位波形W1~W4は、刺激電流のパルスが終了した直後からの電位差を示している。図4において、筋電位波形W2~W4における振幅f2~f4は、振幅f1、f4のみ記載し、振幅f2、f3の記載は省略している。
【0032】
筋弛緩薬の作用が弱い筋弛緩度において、図4に示すように、筋電位波形W1の振幅f1は筋電図が生じる生体信号期間Tpの最高電位と最低電位の差である。図4に示す生体信号期間Tpは、筋電位波形W1に対するものを示している。そして、筋電位波形W2~W4における振幅f2~f4も同様に筋電図が生じる期間の最高電位と最低電位の差を示す。図4に示す筋弛緩薬の作用が弱い筋弛緩度の筋電位波形W1~W4において、振幅f1~f4はf1>f2>f3>f4となっており、徐々に小さくなる。
【0033】
図4に示す筋弛緩薬の作用が弱い筋弛緩度において、TOF比=f4/f1は、50%弱である。TOF比>70%で筋弛緩状態から回復しているとされるため、図4の筋電図の状態では、筋弛緩状態から回復する途中であり、筋弛緩状態から回復してはいない。なお、図4では、筋電位波形W1を非投与波形Eと同様の波形であるが、筋電位波形W1の振幅f1は非投与波形Eの振幅feよりも小さくなることがある。しかし、振幅f1が小さくなっても、それ以上に振幅f4が小さくなるため、TOF比を筋弛緩度の指標として用いることができる。
【0034】
TOF比は、手術中に監視することにより、筋弛緩薬の再投与等の判断に用いる。例えば、TOF比が40%以上になったら、筋弛緩薬を再投与する等の判断を行う。また、手術の準備段階では、TOF比により、患者が手術できる筋弛緩状態になっているか確認することができる。なお、TOF比>70%では、筋弛緩状態から回復している状態とされるが、近年では、80%や90%を基準とする場合もある。
【0035】
<筋弛緩監視装置の使用形態>
手術の過程において、筋弛緩度の監視は次のように行われる。まず、手術の準備段階において、図1に示すように、一対の刺激電極41と一対の導出電極51、接地電極61を被検者の上肢Lに貼付する。そして、筋弛緩薬を投与する前に、筋弛緩監視装置1の刺激電流の電流値設定を行う。操作部17で刺激電流値設定スイッチをオンにすると、筋弛緩監視装置1は刺激電流の電流値設定を行う。刺激電流の電流値設定では、刺激電流の電流値を徐々に上昇させ、自動的に適切な値に調節する。調整が終了した筋弛緩監視装置1でTOF法により筋電図を測定すると図3のようになり、TOF比は100%である。
【0036】
刺激電流の電流値設定が終了した後に、被検者には筋弛緩薬が投与される。筋弛緩薬により、被検者は徐々に筋弛緩状態となる。完全な筋弛緩状態では、筋電図の電圧は0mVとなる。筋弛緩薬を投与した後において、完全な筋弛緩状態になる途上のTOF法による筋電図は、図4のように、筋電位波形W1~W4の振幅f1~f4が、徐々に小さくなる。筋電位波形W1~W4は、500msecおきの刺激電流により順次発生した筋電図の波形である。
【0037】
完全な筋弛緩状態となる途上では、筋弛緩薬の作用により、図4のように、筋電位波形の振幅は連続刺激の遅い回になるほど小さくなる。図4では、TOF比は70%よりも小さいため、筋弛緩状態であるといえる。更に筋弛緩薬の作用が進むと、筋電位波形W1~W4はほぼ0mVとなり、筋電位波形W1~W4の振幅f1~f4もほぼ0mVとなって、完全な筋弛緩状態となる。十分な筋弛緩状態となったことを筋弛緩監視装置1で確認した後に、手術が開始される。
【0038】
筋弛緩薬の投与から時間が経過して筋弛緩薬の作用が弱くなると、再び図4のように筋電位波形W1からW4の電位変化が現れる。そして、TOF比が一定値よりも大きくなった場合に、手術の進捗状況等に応じて、再び筋弛緩薬を投与するか否かの判断が行われる。
【0039】
以上のように、筋弛緩監視装置1では、TOF法によって、刺激手順と検出手順が行われる。刺激手順は、刺激出力部13により生体に貼付した刺激電極41を介して神経を刺激する。検出手順は、刺激出力部13による神経への刺激に反応して筋肉から生じる生体信号を、生体に貼付した導出電極51を介して電気信号として信号検出部14により検出する。刺激手順と検出手順の制御は記憶部12に記憶されたプログラムにより制御部11で処理を行うことにより実行される。
【0040】
<刺激電流異常の検出>
手術中等に刺激電極41が上肢Lから剥離したり、配線42等で断線したりすると、発生する筋電図が得られず、筋弛緩度の監視が行われていない状態となる。筋弛緩監視装置1では、刺激出力部13の電流測定部131で刺激電流を測定している。そして、刺激電流の電流値が下がった場合には警告を行う。また、刺激電流の回路の異常等により、刺激電流の電流値が上がった場合にも警告を行う。
【0041】
刺激出力部13の電流測定部131で測定した刺激電流値は、制御部11に送られて刺激電流異常が判定される。刺激電流異常は、筋弛緩監視時において、刺激電極41に流れた刺激電流値が設定した電流値と異なることによる異常である。制御部11と記憶部12は、刺激電流異常を判定する刺激異常判定部としても機能する。本実施形態では、刺激電流値が設定値よりも低くなった場合や高くなった場合に刺激電流異常と判定する。刺激電流異常の判定を行う刺激電流異常判定手順の制御も、記憶部12に記憶されたプログラムにより制御部11で処理を行うことにより実行される。
【0042】
刺激電流異常を判定すると、筋弛緩監視装置1は制御部11が、表示出力部15と音声出力部16に異常報知表示信号と異常報知音声信号を送って刺激電流異常報知を行う。刺激電流異常報知は、刺激電流の異常を報知するための情報送出であって、実施形態において、異常報知表示信号と異常報知音声信号の送出は刺激電流異常報知である。
【0043】
表示信号を受けた表示出力部15は表示装置2に刺激電流異常表示を行い、音声出力部16はスピーカー3から警告音を鳴動させる。表示装置2では「刺激電流が流れていません。」と表示する。表示の際には音声出力部16から音声信号を出力し、スピーカー3から「ピピピ」という警告音を出して注意喚起する。実施形態では、これらの表示と音声により刺激電流の異常が報知される。
【0044】
<刺激電流異常の誤検出>
刺激電流異常は、刺激出力部13の電流測定部131で刺激電流を測定することにより検出される。しかし、外来ノイズが刺激電極41から配線42を介して刺激出力部13に入り、筋弛緩監視装置1が刺激電流異常を誤検出する可能性がある。例えば、電気メスは数千Vの電圧を高周波で使用しており、刺激電流の測定に対して大きなノイズ源となって誤検出を引き起こす可能性がある。電気メスの使用等により刺激電流異常を誤検出して異常を報知すると、本来は不要な刺激電流異常への対応が行われることになり、手術の進行に支障が生じる。また、不要な異常報知が生じるだけでも、繊細な作業を行っている手術とって障害となる。
【0045】
<刺激電流異常報知の抑制>
そこで、筋弛緩監視装置1では、外来ノイズを検出した際には、刺激電流異常報知を行わないようにする。本実施形態では、筋弛緩監視装置1は、信号検出部14により導出電極51からの筋電図によって、電気信号に重畳する外来ノイズを判定して刺激電流異常報知を抑制する。筋弛緩監視装置1の制御部11と記憶部12は、電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定部としても機能する。電気信号に重畳する外来ノイズを判定する外来ノイズ判定手順の制御も、記憶部12に記憶されたプログラムにより制御部11で処理を行うことにより実行される。本実施形態では、外来ノイズがあると判定した際に刺激電流異常報知を行わないようにする。
【0046】
<刺激電流異常報知の抑制に関するフロー>
図5に、刺激電流異常報知の抑制に関する一実施形態のフロー図を示す。フロー図の各ステップによる手順は筋弛緩監視方法を示す。また、この手順の制御は記憶部12に記憶された筋弛緩監視プログラムにより制御部11で処理を行うことにより実行される。また、この筋弛緩監視プログラムはコンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することができる。
【0047】
図5に示すステップS1では、筋弛緩監視装置1は、刺激電流値を測定しており、刺激電流を流すタイミングで刺激電流値が所定値以上かを監視している。刺激電流値が所定値以上であるYESの場合には、引き続き監視を続ける。刺激電流値が所定値以上でないNOの場合には、ステップS2に進む。
【0048】
ステップS2では、外来ノイズがあるかを判定する。外来ノイズの有無の判定には、信号検出部14で検出した導出電極51の電位を用いる。外来ノイズがあると判定したYESの場合には、ステップS3を行わずに終了する。外来ノイズがないと判定したNOの場合には、ステップS3に進む。ステップS3では、刺激電流異常報知を行う。そして、終了する。終了後は、再びステップS1に戻る。
【0049】
図5のフロー図では、ステップS2で外来ノイズがあると判定したYESの場合にはステップS3を行わずに終了するため、刺激電流異常報知を行わない。このように、ステップS2でYESの場合には、刺激電流異常報知を抑制Sとする。また、NOの場合にはステップS3で刺激電流異常報知を行うため、非抑制NSとしている。
【0050】
<刺激電流異常報知を行うタイミング>
図6は、刺激電流値Iの変化と刺激電流異常報知を行うタイミングを示す。筋弛緩監視装置1では、2つの導出電極51間の電位差の電圧値Vを随時測定して記憶している。ステップS1において、電流測定部131で測定している刺激電流値Iが所定値Ith以上でなくなる(t2)と、所定遅延時間Dが経過する(t3)まで待ってからステップS2の外来ノイズの有無についての判定を行う。ステップS2の判定には、所定遅延時間Dが終了するタイミング(t3)より前における、所定の長さの判定対象期間J(t1-t3)で記憶した電圧値Vを用いる。判定対象期間Jは所定遅延時間Dよりも長い期間である。この実施形態では、判定対象期間Jは所定遅延時間Dの2倍の長さとしている。
【0051】
所定遅延時間Dが経過するタイミング(t3)では、筋弛緩監視装置1は記憶部12に判定対象期間Jにわたる電圧値Vを記憶している。ステップS2の判定とステップS3の刺激電流異常報知を行うために、制御部11で計算等を行うことから、判定結果が得られるまでに判定遅延時間Dcの遅れが生じる。判定遅延時間Dcが終了した時(t4)に、報知状態ALは図6のように抑制Sか非抑制NSとなる。ステップS2でYESとして外来ノイズがあるとの判定結果が得られると、報知状態ALは抑制Sとなり、刺激電流異常報知は行わない。また、ステップS2でNOとして外来ノイズがないと判定されると、報知状態ALは非抑制NSとなって、ステップS3で刺激電流異常報知を行う。
【0052】
本実施形態においては、所定遅延時間Dは25msecであり、判定対象期間Jは50msecである。また、判定遅延時間Dcは7msecである。
【0053】
<外来ノイズの判定>
本実施形態では、判定対象期間J内において、電気信号を二階微分した二階微分値V”が所定範囲である非ノイズ範囲Aの外側となるデータ数Nが閾値Nthを超えた場合に、外来ノイズありと判定する。外来ノイズありと判定すると刺激電流異常報知を抑制する。判定対象期間Jは50msecであり、閾値Nthは3である。二階微分やデータ数Nの取得、閾値Nthとの比較は、判定遅延時間Dcの間に行われる。以下に、電気メスによる出力が外来ノイズとなる電気メスノイズ例による刺激電流異常報知の抑制を示す。
【0054】
<電気メスノイズ例1>
図7に、筋電図として信号検出部14で検出した電気メスノイズ例1を示す。四角で示す点は、時間tが経過するに従い取得された、2つの導出電極51間の電位差の電圧値V1を示している。図7の筋電図では、電気メスから発する外来ノイズによって電圧値V1が激しく変動している。電気メスには複数のモードがあり、電気メスノイズ例1における電圧値V1は、連続使用モードの筋電図の例を示している。
【0055】
図8は、図7に示した電気メスノイズ例1を時間tで一階微分した一階微分値V1’である。本実施形態では、さらにもう一度、時間tで微分して、図9に示す二階微分値V1”を得る。そして、判定対象期間J内において、非ノイズ範囲Aの外側にあるデータ数Nが閾値Nthを越えた場合に、外来ノイズありと判定する。本実施形態では閾値Nthは3である。
【0056】
電気メスノイズ例1では、図9に示す二階微分値V1”において、判定対象期間J内における多数のデータが非ノイズ範囲Aの外側に越えている。非ノイズ範囲Aの外側にあるデータ数Nは閾値Nthの3越えているため、図5のステップS2では外来ノイズありと判定する。そして、外来ノイズありの判定により、刺激電流異常報知を抑制する。その結果、電気メスノイズによる外来ノイズにより刺激電流値に異常が生じても、刺激電流異常報知を行わず、不要な対応をする必要がないことから手術の進行等の支障とならない。
【0057】
<電気メスノイズ例2>
図10に、筋電図として信号検出部14で検出した電気メスノイズ例2を示す。四角で示す点は、時間tが経過するに従い取得された、2つの導出電極51間の電位差の電圧値V2を示している。図10の筋電図では、ノイズによって電位差が上方に変動し、さらに下方に変動している。電気メスには複数のモードがあり、電気メスノイズ例2は間欠使用モードの筋電図の例を示している。
【0058】
図11は、図10に示した電気メスノイズ例2を時間で一階微分した一階微分値V2’を示している。本実施形態では、さらにもう一度、時間tで微分して、図12に示す二階微分値V2”を得る。そして、判定対象期間J内において、非ノイズ範囲Aの外側にあるデータ数Nが閾値Nthである3を越えた場合に、外来ノイズありと判定する。
【0059】
電気メスノイズ例2では、図12に示す二階微分値V2”は、判定対象期間J内において矢印で示す4つのデータが非ノイズ範囲Aの外側に越えている。非ノイズ範囲Aの外側にあるデータ数Nは4であって閾値Nthの3越えているため、図5のステップS2ではYESの外来ノイズありと判定する。そして、刺激電流異常報知を抑制する。その結果、電気メスノイズによる外来ノイズにより刺激電流値に異常が生じても、刺激電流異常報知を行わず、不要な対応をする必要がない。
【0060】
なお、非ノイズ範囲Aの外側にあるデータ数Nが閾値Nthである3を越えないような静電気等の単発的なノイズでは、ノイズを原因とした刺激電流値の誤検出は起きにくいため、ステップS2では外来ノイズがあるとは判定しない。そして、ステップS3で刺激電流異常報知を行う。
【0061】
判定対象期間Jや所定遅延時間Dは、電気メスノイズ等の誤検出を生じる外来ノイズの特徴を勘案して設定する。例えば、電気メスノイズ例2では、図12に示すように、二階微分値V2”として20msecの間隔が開いたパルスが生じる。実施形態では、このようなパルスを捉えることができる時間として判定対象期間Jと所定遅延時間Dを設定している。
【0062】
<変形例>
実施形態の筋弛緩監視装置1では、判定対象期間Jにおいて、二階微分値V”の所定範囲である非ノイズ範囲Aの外側にあるデータ数Nが閾値Nthである3を越えた場合に、外来ノイズありと判定するが、閾値Nthは3以外の値でもよい。また、外来ノイズのように急激な変化を有する電気信号を二階微分すると、図12に示すように二階微分値V”は上下に突出する。そのため、上側の突出部のみを利用して、二階微分値V”が正の所定値を上回ったデータ数Nが閾値Nthを越えた場合に外来ノイズがあると判定してもよい。また、下側の突出部のみを利用して、二階微分値V”が負の所定値を下回ったデータ数Nが閾値Nthを越えた場合に外来ノイズがあると判定してもよい。これらの場合の所定範囲は正の所定値以下の範囲や負の所定値以上の範囲である。
【0063】
実施形態の筋弛緩監視装置1では、外来ノイズを検出した際には、表示と音声による異常報知を行わないことにより、刺激電流異常報知を抑制している。しかし、刺激電流異常表示や筋弛緩監視装置1に備えられた発光素子等の点灯のみ行って音声による注意喚起を行わない等により、刺激電流異常報知を抑制してもよい。また、音声による異常報知の音の大きさを小さくしたり、音の長さを短くしたり、音を消音し、筋弛緩監視装置1に備えられた振動装置を振動させる等、異常報知の形態を変化させることにより刺激電流異常報知を抑制してもよい。
【0064】
実施形態において、図5に示したステップS2の判定を行った後や、フローが終了した後に、所定時間の休止期間を経てから再びステップS1を行ってもよい。
【0065】
実施形態の筋弛緩監視装置1は、信号検出部14により導出電極51からの筋電図によって外来ノイズを判定して刺激電流異常報知を抑制した。しかし、刺激電極41を介した電流値または電圧値を刺激出力部13で検出して、波形等から制御部11で外来ノイズを判定してもよい。また、導出電極51と刺激電極41からの電圧値や電流値等により外来ノイズを判定してもよい。
【0066】
さらに、筋弛緩監視装置1以外から外来ノイズが生じている旨の信号を得て、筋弛緩監視装置1が刺激電流異常報知を抑制する構成としてもよい。例えば、電気メスを駆動する電気メス装置からの電気メス作動信号により、刺激電流異常報知を抑制してもよい。電気メス装置からの電気メス作動信号により、刺激電流異常報知を抑制する構成では、電気メス作動信号により、刺激電流の異常判定を一時的に停止する構成としてもよい。停止時間は所定値として事前に設定しておくことが考えられる。この構成において、刺激電流の回路を一時的に切断することにより、刺激出力部13等の回路を外来ノイズから保護するようにしてもよい。また、電気メス作動信号により信号検出部14の回路を一時的に切断して、信号検出部14の回路を外来ノイズから保護するようにしてもよい。
【0067】
実施形態では、刺激電極41と導出電極51は配線42と信号線が筋弛緩監視装置1に接続している。しかし、刺激電極41を刺激装置に接続して、刺激装置と筋弛緩監視装置の間をワイヤレスで接続しても良い。また、導出電極51を信号検出装置に接続して、信号検出装置と筋弛緩監視装置をワイヤレスで接続してもよい。ワイヤレスで接続することにより手術の際の配線を減少させることができる。
【0068】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施形態及び変形例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
L 上肢
E 非投与波形
PPe 非投与波形Eの正ピーク電位
NPe 非投与波形Eの負ピーク電位
fe 非投与波形Eの振幅
W1~W4 TOF法の4つの筋電位波形
f1~f4 TOF法の4つの筋電位波形の振幅
Tp 生体信号期間
D 所定遅延時間
Dc 判定遅延時間
J 判定対象期間
AL 報知状態
S 抑制
NS 非抑制
A 非ノイズ範囲
N データ数
Nth 閾値
Sp 抑制期間
1 筋弛緩監視装置
11 制御部
12 記憶部
13 刺激出力部
131 電流測定部
14 信号検出部
15 表示出力部
16 音声出力部
17 操作部
2 表示装置
3 スピーカー
41 刺激電極
42 配線
51 導出電極
52 信号線
61 接地電極
62 接地線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12