IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

<>
  • 特開-PCa接合部材 図1
  • 特開-PCa接合部材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167803
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】PCa接合部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241127BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20241127BHJP
   E04C 5/08 20060101ALI20241127BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
E04B1/58 503C
E04B1/21 C
E04C5/08
E04C5/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084143
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】朱 盈
【テーマコード(参考)】
2E125
2E164
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AC02
2E125AC08
2E164AA31
2E164DA03
2E164DA13
(57)【要約】
【課題】アンボンド状態の緊張材によりPCa部材同士が接合されているPCa接合部材において、仮に緊張材が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材同士の一体性を維持することのできる、PCa接合部材を提供すること。
【解決手段】プレキャストコンクリート製で複数のシース管15,25を備えているPCa柱10とPCa仕口20が、相互に接合されているPCa接合部材100であり、連通シース管には緊張材31が挿入され、緊張材31はアンボンド状態で緊張しており、PCa柱10の一部とPCa仕口20の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材40が配設され、PCa柱10とPCa仕口20に対して補剛材40がボルト接合されており、補剛材40が上段リブ42と下段リブ43を備え、上段リブ42がPCa柱10にある上段溝16に嵌合し、下段リブ43がPCa仕口20にある下段溝26に嵌合している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製で複数のシース管を備えているPCa部材である、上PCa柱と下PCa柱が、対応する前記シース管を連通させて連通シース管を形成しながら相互に接合されている、PCa接合部材であって、
前記連通シース管には緊張材が挿入され、該緊張材はアンボンド状態で緊張しており、
前記上PCa柱の一部と前記下PCa柱の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材が配設され、該上PCa柱と該下PCa柱に対して該補剛材がボルト接合されており、
前記補剛材が上段リブと下段リブを備え、該上段リブが前記上PCa柱にある上段溝に嵌合し、該下段リブが前記下PCa柱にある下段溝に嵌合していることを特徴とする、PCa接合部材。
【請求項2】
プレキャストコンクリート製で複数のシース管を備えているPCa部材である、上PCa柱とPCa仕口と下PCa柱が、対応する前記シース管を連通させて連通シース管を形成しながら相互に接合されている、PCa接合部材であって、
前記連通シース管には緊張材が挿入され、該緊張材はアンボンド状態で緊張しており、
前記上PCa柱の一部と前記PCa仕口と前記下PCa柱の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材が配設され、該上PCa柱と該PCa仕口と該下PCa柱に対して該補剛材がボルト接合されており、
前記補剛材が上段リブと中段リブと下段リブを備え、該上段リブが前記上PCa柱にある上段溝に嵌合し、該中段リブが前記PCa仕口にある中段溝に嵌合し、該下段リブが前記下PCa柱にある下段溝に嵌合していることを特徴とする、PCa接合部材。
【請求項3】
プレキャストコンクリート製で複数のシース管を備えているPCa部材である、PCa柱とPCa仕口が、対応する前記シース管を連通させて連通シース管を形成しながら相互に接合されている、PCa接合部材であって、
前記連通シース管には緊張材が挿入され、該緊張材はアンボンド状態で緊張しており、
前記PCa柱の一部と前記PCa仕口の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材が配設され、該PCa柱と該PCa仕口に対して該補剛材がボルト接合されており、
前記補剛材が上段リブと下段リブを備え、該上段リブと該下段リブの一方が前記PCa柱にある上段溝もしくは下段溝の一方に嵌合し、該上段リブと該下段リブの他方が前記PCa仕口にある該上段溝もしくは該下段溝の他方に嵌合していることを特徴とする、PCa接合部材。
【請求項4】
前記PCa部材の長手方向に直交する断面形状が矩形であり、
前記補剛材は、対向する一対の鋼板が二対設けられている4枚の鋼板により形成され、
それぞれの前記鋼板に対して、前記上段リブと前記下段リブが固定されていることを特徴とする、請求項1又は3に記載のPCa接合部材。
【請求項5】
前記PCa部材の長手方向に直交する断面形状が矩形であり、
前記補剛材は、対向する一対の鋼板が二対設けられている4枚の鋼板により形成され、
それぞれの前記鋼板に対して、前記上段リブと前記中段リブと前記下段リブが固定されていることを特徴とする、請求項2に記載のPCa接合部材。
【請求項6】
上下にある前記PCa部材の接合界面に第1隙間が設けられ、該第1隙間にグラウトが充填されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPCa接合部材。
【請求項7】
前記PCa部材と前記補剛材の間に施工誤差に起因する第2隙間がある場合に、該第2隙間にグラウトが充填されていることを特徴とする、請求項6に記載のPCa接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCa接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、RC(Reinforced Concrete)造の上下階の柱同士の柱接合部や、RC造の柱と梁の柱梁接合部、RC造の柱とS(Steel)造の梁のハイブリッド構造の柱梁接合部等を、現場におけるコンクリート打設により施工する場合、工期の長期化が課題としてあり、高層建築物の場合はこの課題が一層顕著になる。
【0003】
そこで、上下階の柱、あるいは柱と仕口をいずれもプレキャストコンクリート(以下、適宜「PCa」とする)製とし、PCa柱やPCa仕口(いずれもPCa部材に含まれる)を現場に搬送して組み付けてPCa接合部材とすることにより、最小限のグラウト充填のみで一体化を図る施工方法が適用されることがある。
【0004】
このPCa接合部材の施工方法によれば、高層建築物を含め、工期を格段に短縮できるとともに、上下階に連続する柱や柱梁接合部がPCa部材により形成されることから、構造信頼性の高い建築物を施工することが可能になる。
【0005】
PCa接合部材の施工方法の中でも、PCa部材同士をPC(Prestressed Concrete)鋼棒やPC鋼線等の緊張材にて緊張し、相互に締め付けることによってプレキャストプレストレストコンクリート(以下、適宜「PCaPC」とする)接合部材を施工することにより、工期のより一層の短縮を図ることができる。本明細書では、PCaPC接合部材はPCa接合部材に含まれるものとし、その構成部材であるPCaPC部材はPCa部材に含まれるものとする。
【0006】
上記するPCa部材はその内部に複数のシース管を備えており、相互に接合されるPCa部材は、対応する双方のシース管を連通させて連通シース管を形成し、連通シース管に緊張材が挿入されて緊張された後、連通シース管の内部にグラウトが充填されて緊張材がボンド状態とされることにより、複数の緊張されたボンド状態の緊張材によりPCa部材同士の接続が図られるのが一般的である。
【0007】
しかしながら、連通シース管の内部にグラウトを充填する作業には手間がかかり、連通シース管の本数の増加や、建築物の高層化によりグラウト充填箇所が増加することによって、この課題は一層顕著になる。さらに、連通シース管に充填されたグラウトが所定の強度を発現するまでの養生期間が、工期の長期化に少なからず影響を及ぼし得るといった課題もある。
【0008】
ここで、特許文献1には、プレキャストプレストレストコンクリート柱を備えた高層建物が提案されている。この高層建物は、コンクリート柱体に緊張材が鉛直方向に挿通された複数のプレキャストプレストレストコンクリート柱と、建物の揺れを抑制する複数の制振装置とを備えた高層建物であり、プレキャストプレストレストコンクリート柱は、緊張材がアンボンド状態でコンクリート柱体に配設され、制振装置は、高層建物の揺れによる緊張材の変形が緊張材の弾性範囲内に収まるように高層建物の揺れを抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-19664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載される高層建物によれば、アンボンド状態の緊張材を適用することにより、グラウトを充填する際の上記課題を解消することができる。ところで、緊張材がシース管の内部にアンボンド状態で緊張している形態では、シース管内へのグラウト充填作業が不要になることから、施工性が向上し、工期の短縮を図ることができる。その一方で、引張鉄筋がないことから、仮に緊張材が錆びて切れた際に、上PCa柱と下PCa柱や、上PCa柱、PCa仕口及び下PCa柱の一体性を喪失する恐れがある。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、アンボンド状態の緊張材によりPCa部材同士が接合されているPCa接合部材において、仮に緊張材が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材同士の一体性を維持することのできる、PCa接合部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明によるPCa接合部材の一態様は、
プレキャストコンクリート製で複数のシース管を備えているPCa部材である、上PCa柱と下PCa柱が、対応する前記シース管を連通させて連通シース管を形成しながら相互に接合されている、PCa接合部材であって、
前記連通シース管には緊張材が挿入され、該緊張材はアンボンド状態で緊張しており、
前記上PCa柱の一部と前記下PCa柱の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材が配設され、該上PCa柱と該下PCa柱に対して該補剛材がボルト接合されており、
前記補剛材が上段リブと下段リブを備え、該上段リブが前記上PCa柱にある上段溝に嵌合し、該下段リブが前記下PCa柱にある下段溝に嵌合していることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、上PCa柱の一部(下方)と下PCa柱の一部(上方)の外周に跨がるように配設されている補剛材の備える上段リブと下段リブがそれぞれ、上PCa柱にある上段溝と下PCa柱にある下段溝に嵌合していることにより、アンボンド状態で緊張している複数の第1緊張材の一部が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材同士の一体性を維持することができる。尚、上記するように、本態様のPCa接合部材はPCaPC接合部材を含み、PCa部材はPCaPC部材を含み、PCa仕口はPCaPC仕口を含み、PCa柱はPCaPC柱を含み、PCa梁はPCaPC梁を含んでいる。
【0014】
また、本発明によるPCa接合部材の他の態様は、
プレキャストコンクリート製で複数のシース管を備えているPCa部材である、上PCa柱とPCa仕口と下PCa柱が、対応する前記シース管を連通させて連通シース管を形成しながら相互に接合されている、PCa接合部材であって、
前記連通シース管には緊張材が挿入され、該緊張材はアンボンド状態で緊張しており、
前記上PCa柱の一部と前記PCa仕口と前記下PCa柱の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材が配設され、該上PCa柱と該PCa仕口と該下PCa柱に対して該補剛材がボルト接合されており、
前記補剛材が上段リブと中段リブと下段リブを備え、該上段リブが前記上PCa柱にある上段溝に嵌合し、該中段リブが前記PCa仕口にある中段溝に嵌合し、該下段リブが前記下PCa柱にある下段溝に嵌合していることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、上PCa柱の一部とPCa仕口と下PCa柱の一部の外周に跨がるように配設されている補剛材の備える上段リブと中段リブと下段リブがそれぞれ、上PCa柱にある上段溝とPCa仕口にある中段溝と下PCa柱にある下段溝に嵌合していることにより、アンボンド状態で緊張している複数の第1緊張材の一部が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材同士の一体性を維持することができる。
【0016】
また、本発明によるPCa接合部材の他の態様は、
プレキャストコンクリート製で複数のシース管を備えているPCa部材である、PCa柱とPCa仕口が、対応する前記シース管を連通させて連通シース管を形成しながら相互に接合されている、PCa接合部材であって、
前記連通シース管には緊張材が挿入され、該緊張材はアンボンド状態で緊張しており、
前記PCa柱の一部と前記PCa仕口の一部のそれぞれの外周に跨がるように補剛材が配設され、該PCa柱と該PCa仕口に対して該補剛材がボルト接合されており、
前記補剛材が上段リブと下段リブを備え、該上段リブと該下段リブの一方が前記PCa柱にある上段溝もしくは下段溝の一方に嵌合し、該上段リブと該下段リブの他方が前記PCa仕口にある該上段溝もしくは該下段溝の他方に嵌合していることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、PCa柱の一部とPCa仕口の一部の外周に跨がるように配設されている補剛材の備える上段リブと下段リブがそれぞれ、PCa柱にある上段溝もしくは下段溝とPCa仕口にある下段溝もしくは上段溝に嵌合していることにより、アンボンド状態で緊張している複数の第1緊張材の一部が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材同士の一体性を維持することができる。本態様は、PCa柱がPCa仕口の上方にある上PCa柱である場合の上PCa柱とPCa仕口との組合せと、PCa柱がPCa仕口の下方にある下PCa柱である場合のPCa仕口と下PCa柱との組合せの双方を含んでおり、相対的に上方に位置するPCa部材が上段溝を備え、下方に位置するPCa部材が下段溝を備える。
【0018】
また、本発明によるPCa接合部材の他の態様は、
前記PCa部材の長手方向に直交する断面形状が矩形であり、
前記補剛材は、対向する一対の鋼板が二対設けられている4枚の鋼板により形成され、
それぞれの前記鋼板に対して、前記上段リブと前記下段リブが固定されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、補剛材である二対の鋼板に設けられている上段リブと下段リブが上下に積層されるPCa部材の上段溝と下段溝に嵌め込まれていることにより、可及的にシンプルな構成にて効果的にPCa接合部材を補強することができる。例えば、鋼板に対してブロック状で鋼製の上段リブと下段リブが溶接接合されている形態や、鋼板と上段リブと下段リブが一体成形にて製作されている形態等を挙げることができる。
【0020】
また、本発明によるPCa接合部材の他の態様は、
前記PCa部材の長手方向に直交する断面形状が矩形であり、
前記補剛材は、対向する一対の鋼板が二対設けられている4枚の鋼板により形成され、
それぞれの前記鋼板に対して、前記上段リブと前記中段リブと前記下段リブが固定されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、補剛材である二対の鋼板に設けられている上段リブと中段リブと下段リブが上下に積層される3つのPCa部材の上段溝と中段溝と下段溝に嵌め込まれていることにより、可及的にシンプルな構成にて効果的にPCa接合部材を補強することができる。
【0022】
また、本発明によるPCa接合部材の他の態様は、
上下にある前記PCa部材の接合界面に第1隙間が設けられ、該第1隙間にグラウトが充填されていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、PCa部材の接合界面に設けられている第1隙間にグラウトが充填されていることにより、第1緊張材の防錆性を高めることができる。
【0024】
また、本発明によるPCa接合部材の他の態様は、
前記PCa部材と前記補剛材の間に施工誤差に起因する第2隙間がある場合に、該第2隙間にグラウトが充填されていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、PCa部材と補剛材の間にある施工誤差に起因する第2隙間にグラウトが充填されていることにより、施工誤差がある場合でもPCa部材と補剛材の一体性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明から理解できるように、本発明のPCa接合部材によれば、アンボンド状態の緊張材によりPCa部材同士が接合されているPCa接合部材において、仮に緊張材が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材同士の一体性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係るPCa接合部材の一例の縦断面図である。
図2図1のII-II矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係るPCa接合部材の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[実施形態に係るPCa接合部材]
図1及び図2を参照して、実施形態に係るPCa接合部材の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係るPCa接合部材の一例の縦断面図であり、図2は、図1のII-II矢視図である。
【0030】
PCa接合部材(PCaPC接合部材)100は、不図示の下階のPCa柱(PCaPC柱)(PCa部材(PCaPC部材)の一例)に接合されるPCa仕口(PCa部材(PCaPC部材)の一例)20と、上階のPCa柱(PCaPC柱)10(PCa部材(PCaPC部材)の一例)が相互に接合されることにより形成される。ここで、図示を省略するが、PCa接合部材は図示例の他にも、上PCa柱と下PCa柱の接合部材やPCa梁(PCaPC梁)とPCa梁(PCaPC梁)の接合部材があり、これら様々なPCa接合部材により、複数階の建築物を構成するハイブリッド架構体が形成される。
【0031】
PCa仕口20には、その側方に延びる鉄骨梁27(レンコン部材、PCa梁)が予め取り付けられており、従って、PCa仕口20は、詳細には、鉄骨梁27を備えているSRC(Steel Reinforced Concrete)造の仕口とも言える。ここで、「ハイブリッド架構体」とは、プレキャストのRC(Reinforced Concrete)造の柱であるPCa柱10、PCa仕口20と、PCa仕口20の側方に延びる鉄骨梁27とを備えた構造である。
【0032】
図1図2に示すように、PCa柱10は、細長の直方体状のPCaコンクリート体11を有し、PCaコンクリート体11の内部には複数(図示例は8本)のシース管15が埋設されており、各シース管15にはアンボンドPC鋼材31(緊張材の一例)が挿通されている。ここで、アンボンドPC鋼材31はPC鋼棒であるが、その他、PC鋼線等であってもよい。尚、図示を省略するが、PCa柱10やPCa仕口20はいずれも、鉛直方向に延設する複数の柱主筋を有し、各柱主筋の外周を包囲する複数の矩形枠状の帯筋を有している。
【0033】
PCa仕口20は、直方体状のPCaコンクリート体21を有し、PCaコンクリート体21の内部には、PCa柱10のシース管15と連通する複数(図示例は8本)のシース管25が埋設されており、各シース管25にはアンボンドPC鋼材31(緊張材の一例)が挿通されている。
【0034】
図1に示す組立状態において、PCa仕口20のシース管25に挿通されているアンボンドPC鋼材31の上方が、PCa仕口20の上面23から上方に突出し、緊張された状態でナット33を締め付けることにより、定着プレート32にてPCaコンクリート体21の上面23に定着され、アンボンドPC鋼材31の緊張状態が保持される。
【0035】
さらに、PCa仕口20の上面23から上方に突出しているアンボンドPC鋼材31の上端は、PCa柱10の対応するシース管15に挿通されるアンボンドPC鋼材31の下端と、機械式継手34を介して相互に接合され、PCa柱10の下端のシース管15に機械式継手34が埋設される。
【0036】
このように、PCa柱10とPCa仕口20の備える相互に対応した各シース管15,25は連通シース管を形成し、緊張状態の複数のアンボンドPC鋼材31が機械式継手34を介して相互に接合されている。各シース管15,25の内部の隙間にはグラウトが充填されておらず、従って、アンボンドPC鋼材31は、文字通り連通シース管の内部においてアンボンド状態となっている。
【0037】
PCa仕口20の上面(接合界面)23とPCa柱10の下面(接合界面)13の間の第1隙間G1には、目地材としてモルタル等のグラウト51が充填されている。
【0038】
PCa柱10の下方の側面12からPCa仕口20の上方の側面22の外周に跨がるように、補剛材40が配設されている。
【0039】
補剛材40は、鋼板41と、鋼板41の上方と下方にそれぞれ設けられている上段リブ42と下段リブ43とを有する。図1図2に示すように、PCa柱10の4つの側面12の下方にはそれぞれ4つの上段溝16が設けられており、PCa仕口20の4つの側面22の上方にはそれぞれ4つの下段溝26が設けられており、上段溝16と上段リブ42は相補的な形状を有し、下段溝26と下段リブ43も相補的な形状を有している。
【0040】
ここで、補剛材40は、鋼板41に対してブロック状で鋼製の上段リブ42と下段リブ43が溶接接合されている形態や、鋼板41と上段リブ42と下段リブ43が一体成形にて製作されている形態がある。
【0041】
対応する側面12,22に跨がるようにして補剛材40を配設した際に、上段リブ42が上段溝16に嵌合し、下段リブ43が下段溝26に嵌合した状態で、複数のボルト48により、側面12,22に対して補剛材40が固定される。
【0042】
PCa柱10とPCa仕口20の側面12,22の外周に4つの補剛材40を配設した際に、施工誤差に起因して各側面12,22と鋼板41の間には第2隙間G2が往々にして生じ得る。そこで、第2隙間G2には、モルタル等のグラウト52が充填されることにより隙間が閉塞される。ここで、「施工誤差」とは、文字通りの施工誤差の他に、鋼板41の製作誤差や、鋼板41等の温度変化に起因する材料変形に基づく誤差等を含んでいる。
【0043】
図1図2に示すように、PCa柱10とPCa仕口20が複数の連通シース管に挿通される複数のアンボンドPC鋼材31にて一体とされ、PCa柱10の下方とPCa仕口20の上方に跨がる4つの補剛材40の上段リブ42と下段リブ43が上段溝16と下段溝26に嵌合されることにより、PCa接合部材100が形成される。
【0044】
PCa接合部材100によれば、PCa柱10の一部とPCa仕口20の一部の外周に跨がるように配設されている補剛材40の上段リブ42と下段リブ43がそれぞれ、PCa柱10とPCa仕口20の上段溝16と下段溝26に嵌合していることにより、補剛材40を介してPCa仕口20とPCa柱10との間で上下方向の力の伝達を図ることが可能になり、アンボンド状態で緊張している複数の緊張材31の一部が錆びて切れた場合でも、相互に接合されるPCa部材10,20同士の一体性を維持することができる。
【0045】
さらに、PCa柱10の一部とPCa仕口20の一部の外周に跨がるように配設されている補剛材40により、各PCa部材10,20のかぶりコンクリートの剥がれを効果的に防止できる。
【0046】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0047】
10:PCa柱(PCa部材)
11:PCaコンクリート体
12:側面
13:下面(接合界面)
15:シース管(連通シース管)
16:上段溝
20:PCa仕口(PCa部材)
21:PCaコンクリート体
22:側面
23:上面(接合界面)
25:シース管(連通シース管)
26:下段溝
27:鉄骨梁
31:緊張材(アンボンドPC鋼材)
32:定着プレート
33:ナット
34:機械式継手
40:補剛材
41:鋼板
42:上段リブ
43:下段リブ
48:ボルト
51,52:グラウト
100:PCa接合部材
G1:第1隙間
G2:第2隙間
図1
図2