(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167805
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】制御情報生成装置、ワイヤアーク積層造形システム、制御情報生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20241127BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241127BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241127BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20241127BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B33Y10/00
B33Y30/00
B23K9/04 Z
B23K31/00 K
B23K9/12 331K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084147
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山縣 侑加
(72)【発明者】
【氏名】洪 策符
(57)【要約】
【課題】造形物がオーバーハングしている場合でも、断面プロファイルを測定することができる制御情報生成装置を提供すること。
【解決手段】ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置であって、ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部とを備え、測定器はレーザセンサであり、測定制御情報生成部は、測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、直前の積層パスの接線方向とレーザによるスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、制御情報を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置であって、
前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部と
を備え、
前記測定器はレーザセンサであり、
前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、直前の積層パスの接線方向と前記レーザによるスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、
制御情報生成装置。
【請求項2】
積層造形する際の前記ロボットの制御情報を取得する積層制御情報取得部を備え、
前記測定制御情報生成部は、前記積層制御情報取得部が取得した制御情報を用いて前記制御情報を生成する、請求項1に記載の制御情報生成装置。
【請求項3】
前記測定制御情報生成部は、前記測定器による前記レーザの送出方向が、前記測定器による形状測定の中心位置に対応するビードが形成されたときのトーチの姿勢と一致するように、前記制御情報を生成する、請求項2に記載の制御情報生成装置。
【請求項4】
ワイヤアーク積層造形を行うロボットと、
前記ロボットを制御する制御装置と、
前記制御装置が用いる前記ロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置と
を備えるワイヤアーク積層造形システムであって、
前記制御情報生成装置は、
前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部を備え、
前記測定器はレーザセンサであり、
前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成し、
前記制御装置は、前記制御情報を用いた前記ビードの形状の測定結果を用いて、溶接条件を決定する、
ワイヤアーク積層造形システム。
【請求項5】
ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成方法であって、
前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成するステップ
を有し、
前記測定器はレーザセンサであり、
前記ステップにおいて、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、
制御情報生成方法。
【請求項6】
ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置のコンピュータを、
前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部
として機能させるためのプログラムであって、
前記測定器はレーザセンサであり、
前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御情報生成装置、ワイヤアーク積層造形システム、制御情報生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、WAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)の装置構成として、アーク溶接ロボットを用いて金属材料の積層を行うものが知られている。特許文献1には、レーザセンサを用いて積層されたビードの形状を測定し、測定された形状に応じて積層パス(積層軌道計画)を更新する積層造形方法が開示されている。
【0003】
また、WAAMの積層パスを決めるための、造形対象の3Dモデルのスライス方法として、水平面でスライスする平面スライスと、非平面でスライスする非平面スライスがある。平面スライスでは、積層パスの生成が容易であるが、オーバーハング形状の造形には、オーバーハング部から台座までのサポート材が必要となる。一方、非平面スライスでは、オーバーハング部でもサポート材が不要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように鉛直方向など、レーザセンサの向きが固定されていると、オーバーハングしている場合など、レーザがビードにより遮られてしまい、断面プロファイルが測定できないことがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、造形物がオーバーハングしている場合でも、断面プロファイルを測定することができる制御情報生成装置、ワイヤアーク積層造形システム、制御情報生成方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置であって、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部とを備え、前記測定器はレーザセンサであり、前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、直前の積層パスの接線方向と前記レーザによるスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、制御情報生成装置である。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上述した制御情報生成装置であって、積層造形する際の前記ロボットの制御情報を取得する積層制御情報取得部を備え、前記測定制御情報生成部は、前記積層制御情報取得部が取得した制御情報を用いて前記制御情報を生成する。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、上述した制御情報生成装置であって、前記測定制御情報生成部は、前記測定器による前記レーザの送出方向が、前記測定器による形状測定の中心位置に対応するビードが形成されたときのトーチの姿勢と一致するように、前記制御情報を生成する。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットと、前記ロボットを制御する制御装置と、前記制御装置が用いる前記ロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置とを備えるワイヤアーク積層造形システムであって、前記制御情報生成装置は、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部を備え、前記測定器はレーザセンサであり、前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成し、前記制御装置は、前記制御情報を用いた前記ビードの形状の測定結果を用いて、溶接条件を決定する、ワイヤアーク積層造形システムである。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成方法であって、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成するステップを有し、前記測定器はレーザセンサであり、前記ステップにおいて、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、制御情報生成方法である。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置のコンピュータを、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部として機能させるためのプログラムであって、前記測定器はレーザセンサであり、前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、制御情報生成装置、ワイヤアーク積層造形システム、制御情報生成方法、およびプログラムは、造形物がオーバーハングしている場合でも、断面プロファイルを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施形態によるワイヤアーク積層造形システム100の構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態におけるワイヤアーク積層造形システム100の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】同実施形態における測定器32のスキャンを説明する模式図である。
【
図4】同実施形態における測定器32の姿勢を説明する模式図(その1)である。
【
図5】同実施形態における測定器32の姿勢を説明する模式図(その2)である。
【
図6】同実施形態におけるトーチ31と測定器32の姿勢の関係を説明する模式図(その1)である。
【
図7】同実施形態におけるトーチ31と測定器32の姿勢の関係を説明する模式図(その2)である。
【
図8】同実施形態における制御情報記憶部21が記憶する測定制御情報の例を示す表である。
【
図9】同実施形態におけるロボット制御部22の積層造形処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態によるワイヤアーク積層造形システム100の構成を示す模式図である。ワイヤアーク積層造形システム100は、WAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)により積層造形を行う。ワイヤアーク積層造形システム100は、制御情報生成装置10、制御装置20、ロボット30、サーモカメラ50を備える。ロボット30は、トーチ31、測定器32を備える。ビード40は、ワイヤアーク積層造形システム100により積層造形されている造形物である。
【0016】
制御情報生成装置10は、ロボット30を制御するための制御情報を生成する。制御装置20は、制御情報生成装置10が生成した制御情報を用いて、ロボット30を制御して、ワイヤアーク積層造形を行わせる。制御装置20は、サーモカメラ50により測定されたビード40の温度を、ワイヤアーク積層造形する際に用いてもよい。制御情報生成装置10と、制御装置20とは、それぞれ1つまたは複数のコンピュータがプログラムを読み込み実行することで実現されてもよい。制御情報生成装置10と、制御装置20とで、1つの装置を構成しており、該1つ装置は、1つまたは複数のコンピュータがプログラムを読み込み実行することで実現されてもよい。
【0017】
ロボット30は、先端部に備えるトーチ31を用いて金属ワイヤをアーク溶接することで、金属の積層を行う。また、ロボット30は、先端部に備える測定器32を用いて、ビード40の形状を測定する。トーチ31は、金属ワイヤをアーク溶接によりビードに積層する。測定器32は、レーザによるスキャンで形状を測定するプロファイル測定器である。サーモカメラ50は、ビード40の温度を測定する。なお、ビード40は、水平面内で回転可能な回転テーブル上に造形され、制御情報生成装置10が生成した制御情報を用いて制御装置20が該回転テーブルを制御してもよい。また、
図1においてロボット30は、6軸であるが、測定器32の根元に追加軸を設けてもよい。また、トーチ31の根元に追加軸を設けてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態におけるワイヤアーク積層造形システム100の機能構成を示す概略ブロック図である。制御情報生成装置10は、3Dモデル取得部11、3Dモデルスライス部12、積層制御情報生成部13、測定制御情報生成部14を備える。制御装置20は、制御情報記憶部21、ロボット制御部22を備える。
【0019】
3Dモデル取得部11は、ワイヤアーク積層造形する造形物の形状を示す3Dモデルデータを取得する。3Dモデルスライス部12は、3Dモデル取得部11が取得した3Dモデルデータが示す形状を、積層パスを決めるために非平面スライス方式によりスライスする。非平面スライス方式では、一般的な平面スライス方式とは異なり、スライス面が平面とは限らない方式である。非平面スライス方式では、例えば、造形物の表面に対して垂直方向にスライスすることで、水平面でスライスした場合にサポート材が必要となるオーバーハング形状であっても、サポート材が不要とすることができる。
【0020】
積層制御情報生成部13(積層制御情報取得部)は、積層造形する際のロボット30の制御情報(積層制御情報)を取得する。積層制御情報生成部13は、取得した積層制御情報を、制御情報記憶部21に記憶させる。本実施形態では、積層制御情報生成部13は、積層造形する際に、3Dモデルスライス部12によるスライス結果に沿って、トーチ31の先端を動かしていくための積層パスと、積層パスの各位置におけるトーチ31の姿勢とを表す積層制御情報を生成することで、積層制御情報を取得する。なお、制御情報生成装置10が、積層制御情報を他装置から取得するようにしてもよい。
【0021】
測定制御情報生成部14は、ロボット30により積層造形されたビード40の形状を測定する測定器32の位置と姿勢を制御するための制御情報(測定制御情報)を、積層制御情報生成部13が取得した制御情報を用いて生成する。測定制御情報生成部14は、生成した測定制御情報を、制御情報記憶部21に記憶させる。測定制御情報生成部14は、測定器32の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、直前の積層パスの接線方向と前記レーザによるスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、測定制御情報を生成する。
【0022】
なお、測定制御情報生成部14は、測定器32によるレーザの送出方向が、測定器32による形状測定の中心位置に対応するビードが形成されたときのトーチの姿勢と一致するように、測定制御情報を生成してもよい。また、測定制御情報生成部14は、複数層(N層)分の積層パスの積層制御情報に対して、1つの測定パスの測定制御情報を生成するようにしてもよい。Nの値は、固定であってもよいし、積層回数当たりの積層方向の変化に応じて変えるようにしてもよい。例えば、積層方向の変化が大きいほど、Nの値が小さくなるようにしてもよい。
【0023】
制御情報記憶部21は、積層制御情報と、測定制御情報とを記憶する。ロボット制御部22は、積層制御情報を用いてロボット30を制御して積層造形を行わせ、測定制御情報を用いてロボット30を制御して積層造形されたビード40の形状(断面プロファイル)を測定させる。なお、ロボット制御部22は、積層造形をロボット30に行わせる際に、サーモカメラ50が測定したビード40の温度を用いてもよい。
【0024】
図3は、本実施形態における測定器32のスキャンを説明する模式図である。測定器32は、レーザを1方向にスキャンし、ビード40で反射されたレーザが返ってくるまでの時間を用いるタイムオブフライト方式、あるいはビード40で反射されたレーザの角度を用いる三角測量方式などにより、ビード40の断面形状を測定する。そして、ロボット制御部22は、測定器32をビード40に沿って移動させながら、
図3のスキャンS1、S2、・・・S5のように、測定器32にスキャンを繰り返させることで、ビード40の形状(断面プロファイル)を測定させる。
【0025】
図3のビード40は、積層40a、40b、40c、40dという順に積層されているが、非平面スライス方式で積層パスが決められているため、その積層方向は、積層によって異なる。例えば、積層40aの積層方向Aaは、鉛直方向であるが、積層40dの積層方向Adは、鉛直方向より右に傾いたものとなっている。ビード40の積層された高さ、幅を測定するには、測定器32からのレーザの送出方向Lが、直前の積層の積層高さ方向であり、スキャン方向が直前の積層パスの接線方向と垂直(ビード40の厚み方向)であることが望ましい。例えば、測定器32のスキャン方向が積層パスの接線方向と垂直でない場合、断面プロファイルから算出される積層幅は、
図3の場合よりも大きな値となってしまう恐れがある。また、測定器32からのレーザの送出方向Lが、鉛直方向になっていると、断面プロファイルから算出される積層高さは、
図3の場合と異なる値となってしまう恐れがある。なお、レーザの送出方向Lは、ここでは、測定器32のスキャン幅の中心の方向である。
【0026】
図4、
図5は、本実施形態における測定器32の姿勢を説明する模式図である。n番目の積層が終わった後の測定における測定器32の姿勢は、
図4に示すように、レーザの送出方向Lが、n番目の積層パスP
n上の点と、n-1番目の積層パスP
n-1上の点を通るような姿勢である。すなわち、測定器32の姿勢は、スキャン方向Sが、n番目の積層パスP
n上の点とn-1番目の積層パスP
n-1上の点を通る直線と、垂直になる姿勢である。さらに、スキャン方向Sは、
図5に示すように、その積層パスP
nとの交点における積層パスP
nの接線と、垂直になる。
【0027】
図6、
図7は、本実施形態におけるトーチ31と測定器32の姿勢の関係を説明する模式図である。
図4、
図5で示した条件を満たすために、本実施形態では、測定器32のレーザの送出方向Lが、積層時のトーチ31の先端部分の軸方向と一致するように、測定制御情報生成部14は、積層制御情報に基づき測定制御情報を生成する。
【0028】
すなわち、
図6に示すトーチ31の先端部分の軸方向と水平面Hとがy-z平面で成す角αが、
図7に示す測定器32のレーザの送出方向Lと水平面Hとがy-z平面で成す角αと一致するように、測定制御情報生成部14は、測定制御情報を生成する。同様に、
図6に示すトーチ31の先端部分の軸方向と水平面Hとがx-z平面で成す角βが、
図7に示す測定器32のレーザの送出方向Lと水平面Hとがx-z平面で成す角βと一致するように、測定制御情報生成部14は、測定制御情報を生成する。このようにすることで、測定制御情報生成部14は、トーチ31と測定器32の位置関係を用いれば、積層制御情報を測定制御情報に変換することができる。
【0029】
図8は、本実施形態における制御情報記憶部21が記憶する測定制御情報の例を示す表である。
図8に示すように、制御情報記憶部21は、番号「1」、X座標「2.5」、Y座標「3.7」、Z座標「12.6」、X軸回り「0.4」、Y軸回り「0.3」、Z軸回り「0.0」を対応付けて記憶する。同様に、制御情報記憶部21は、番号「2」、X座標「4.3」、Y座標「3.2」、Z座標「13.5」、X軸回り「0.4」、Y軸回り「0.25」、Z軸回り「0.3」を対応付けて記憶する。制御情報記憶部21は、番号「3」、X座標「7.6」、Y座標「0.2」、Z座標「12.2」、X軸回り「0.3」、Y軸回り「0.23」、Z軸回り「0.0」を対応付けて記憶する。制御情報記憶部21は、番号「4」、X座標「9.5」、Y座標「4.8」、Z座標「10.6」、X軸回り「0.4」、Y軸回り「0.2」、Z軸回り「0.4」を対応付けて記憶する。
【0030】
番号は、測定パスを構成する点のシリアル番号である。X座標、Y座標、Z座標は、測定器32の位置を表す情報であり、例えば測定器32が設置されているロボット30の先端部の3次元座標を示す。X軸回り、Y軸回り、Z軸回りは、測定器32の姿勢を表す情報であり、例えば測定器32が設置されているロボット30の先端部の姿勢を表す各軸回りの角度である。
【0031】
図9は、本実施形態におけるロボット制御部22の積層造形処理を説明するフローチャートである。まず、ロボット制御部22は、積層造形処理を開始すると、トーチ31のアークをONにし(ステップSa1)、制御情報記憶部21が記憶するN層分の積層制御情報を用いて、ロボット30にN層の積層を行わせる(ステップSa2)。次に、ロボット制御部22は、トーチ31のアークをOFFにし(ステップSa3)、積層造形が終了したか否かを判定する(ステップSa4)。終了したと判定したときは(ステップSa4-Yes)、ロボット制御部22は、積層造形処理を終了する。
【0032】
一方、終了していないと判定したときは(ステップSa4-No)、ロボット制御部22は、制御情報記憶部21が記憶する測定制御情報を用いて、ロボット30を制御し、ビード40の断面プロファイルを測定させる(ステップSa5)。次に、ロボット制御部22は、ステップSa5の測定結果より、次のN層の積層における溶接条件を決定する(ステップSa6)。溶接条件は、例えば、金属ワイヤの送出速度、アークの電圧、トーチ31の移動速度である。また、ロボット制御部22は、ステップSa5の測定結果より、ステップSa2による積層の積層高さと、積層幅とを算出し、これらと設計値とを比較して、溶接条件を決定するようにしてもよい。
【0033】
次に、ロボット制御部22は、サーモカメラ50でビード40の最高温度を測定する(ステップSa7)。ロボット制御部22は、測定したビード40の最高温度が、予め設定された閾値以下になるまで待機し(ステップSa8)、閾値以下になるとステップSa1に戻る。
【0034】
上述のステップSa6では、ロボット制御部22が、ステップSa5の測定結果より、溶接条件を決定しているが、ロボット制御部22が、溶接条件ではなく、積層制御情報、測定制御情報を変更するようにしてもよい。あるいは、ロボット制御部22が、溶接条件とともに、積層制御情報、測定制御情報を変更するようにしてもよい。
【0035】
測定制御情報生成部14は、測定器32の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、直前の積層パスの接線方向とレーザによるスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、測定制御情報を生成する。これにより、造形物がオーバーハングしている場合でも、レーザがビード40に遮られることなく、断面プロファイルを測定することができる。
【0036】
また、下記のような実施形態であってもよい。
(1)一実施形態は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置であって、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を、生成する測定制御情報生成部とを備え、前記測定器はレーザセンサであり、前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、直前の積層パスの接線方向と前記レーザによるスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、制御情報生成装置である。
【0037】
(2)また、他の一実施形態は、(1)に記載の制御情報生成装置であって、積層造形する際の前記ロボットの制御情報を取得する積層制御情報取得部を備え、前記測定制御情報生成部は、前記積層制御情報取得部が取得した制御情報を用いて前記制御情報を生成する。
【0038】
(3)また、他の一実施形態は、(2)に記載の制御情報生成装置であって、前記測定制御情報生成部は、前記測定器による前記レーザの送出方向が、前記測定器による形状測定の中心位置に対応するビードが形成されたときのトーチの姿勢と一致するように、前記制御情報を生成する。
【0039】
(4)また、他の一実施形態は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットと、前記ロボットを制御する制御装置と、前記制御装置が用いる前記ロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置とを備えるワイヤアーク積層造形システムであって、前記制御情報生成装置は、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部を備え、前記測定器はレーザセンサであり、前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成し、前記制御装置は、前記制御情報を用いた前記ビードの形状の測定結果を用いて、溶接条件を決定する、ワイヤアーク積層造形システムである。
【0040】
(5)また、他の一実施形態は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成方法であって、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成するステップを有し、前記測定器はレーザセンサであり、前記ステップにおいて、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、制御情報生成方法である。
【0041】
(5)また、他の一実施形態は、ワイヤアーク積層造形を行うロボットの制御情報を生成する制御情報生成装置のコンピュータを、前記ロボットにより積層造形されたビードの形状を測定する測定器の位置と姿勢を制御するための制御情報を生成する測定制御情報生成部として機能させるためのプログラムであって、前記測定器はレーザセンサであり、前記測定制御情報生成部は、前記測定器の姿勢が、直前の積層高さ方向にレーザが送出され、ビードの形成方向とスキャン方向が垂直になる姿勢となるように、前記制御情報を生成する、プログラムである。
【0042】
また、
図1における制御情報生成装置10、制御装置20の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより制御情報生成装置10、制御装置20を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0043】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0044】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 制御情報生成装置
11 3Dモデル取得部
12 3Dモデルスライス部
13 積層制御情報生成部
14 測定制御情報生成部
20 制御装置
21 制御情報記憶部
22 ロボット制御部
30 ロボット
31 トーチ
32 測定器
40 ビード
50 サーモカメラ
100 ワイヤアーク積層造形システム