(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167807
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20241127BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20241127BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20241127BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241127BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301L
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084149
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊
(72)【発明者】
【氏名】清水 建伍
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直人
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB04
3G091BA02
3G091BA07
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4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EC28
4G169EE09
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】高い暖機性及び高いNOx浄化性能を有する排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置は、上流端及び下流端を有する基材と、前記下流端と第一位置との間の第一領域において前記基材上に設けられた、ロジウムを含む第一触媒層と、前記上流端と第二位置との間の第二領域において前記基材上に設けられた、ロジウム及び酸素貯蔵材料を含む第二触媒層と、前記上流端と第三位置との間の第三領域において前記第二触媒上に設けられた、パラジウムを含む第三触媒層とを備える。前記第二触媒層中の酸素貯蔵材料は、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物及び蛍石型Ce-Zr複合酸化物を0.2:1~0.4:1の重量比で含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化装置であって、
全長(Ls)を有する基材であって、排ガスが前記基材に流入する上流端及び前記排ガスが前記基材から流出する下流端を有する前記基材と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離(La)を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に設けられた、ロジウムを含む第一触媒層であって、第一距離(La)が前記基材の全長(Ls)の50%~70%である、第一触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離(Lb)を隔てた第二位置との間の第二領域において前記基材上に設けられた、ロジウム及び酸素貯蔵材料を含む第二触媒層であって、第二距離(Lb)が前記基材の全長(Ls)の50%以上であり、前記酸素貯蔵材料が、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物及び蛍石型Ce-Zr複合酸化物を0.2:1~0.4:1の重量比で含む、第二触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第三距離(Lc)を隔てた第三位置との間の第三領域において前記第二触媒層上に設けられた、パラジウムを含む第三触媒層であって、第三距離(Lc)が前記基材の全長(Ls)の40%以下である、第三触媒層と、を備える、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第一領域における前記基材の容量を基準とした前記第一触媒層の総質量が、170g/L以上である、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第三領域における前記基材の容量を基準とした前記第三触媒層の総質量が、0g/L超105g/L以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第一触媒層が酸素貯蔵材料をさらに含む、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を触媒として含む排ガス浄化装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、暖気性、HC浄化性能、及び耐久性を満足するための排ガス浄化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス浄化装置の暖機性をさらに向上させることが望まれる。また、排ガス浄化装置の使用中の性能劣化をさらに低減させることも望まれる。
【0006】
そこで、本開示は、高い暖機性を有するとともに使用による性能劣化の小さい排ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は以下のものを含む。
[態様1]
排ガス浄化装置であって、
全長(Ls)を有する基材であって、排ガスが前記基材に流入する上流端及び前記排ガスが前記基材から流出する下流端を有する前記基材と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離(La)を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に設けられた、ロジウムを含む第一触媒層であって、第一距離(La)が前記基材の全長(Ls)の50%~70%である、第一触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離(Lb)を隔てた第二位置との間の第二領域において前記基材上に設けられた、ロジウム及び酸素貯蔵材料を含む第二触媒層であって、第二距離(Lb)が前記基材の全長(Ls)の50%以上であり、前記酸素貯蔵材料が、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物及び蛍石型Ce-Zr複合酸化物を0.2:1~0.4:1の重量比で含む、第二触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第三距離(Lc)を隔てた第三位置との間の第三領域において前記第二触媒層上に設けられた、パラジウムを含む第三触媒層であって、第三距離(Lc)が前記基材の全長(Ls)の40%以下である、第三触媒層と、を備える、排ガス浄化装置。
[態様2]
前記第一領域における前記基材の容量を基準とした前記第一触媒層の総質量が、170g/L以上である、態様1に記載の排ガス浄化装置。
[態様3]
前記第三領域における前記基材の容量を基準とした前記第三触媒層の総質量が、0g/L超105g/L以下である、態様1又は2に記載の排ガス浄化装置。
[態様4]
前記第一触媒層が酸素貯蔵材料をさらに含む、態様1~3のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示の排ガス浄化装置は、高い暖機性を有するとともに使用による性能劣化が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁及びその近傍の構成を模式的に示している。
【
図2】
図2は、基材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、暖機性能評価試験において、THC浄化率が50%に到達するまでにかかった時間の結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、触媒活性評価試験におけるNOx-T50を示すグラフである。
【
図5】
図5は、降温時の性能評価試験におけるNOx浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。本願において記載された数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。本願において「~上に」との記載は、文脈上特に明記されていない限り、「直接的に~上に」及び「間接的に~上に」の両方を包含する。本願において、「~を含む」は追加の成分を含み得ることを意味し、「~から本質的になる」及び「~からなる」を包含する。「~から本質的になる」は、実質的に悪影響を及ぼさない追加の成分を含み得ることを意味する。「~からなる」は、記載される材料のみを含むことを意味するが、不可避の不純物を含むことを除外しない。
【0011】
実施形態に係る排ガス浄化装置100を、
図1、2を参照しながら説明する。実施形態に係る排ガス浄化装置100は、基材10、第一触媒層20、第二触媒層30、及び第三触媒層40を備える。
【0012】
(1)基材10
基材10の形状は特に限定されないが、例えば、基材10は、
図2に示すように、枠部12と、枠部12の内側の空間を仕切って複数のセル14を画成する隔壁16から構成されてよい。隔壁16は、基材10の第一端(第一端面)Iと第二端(第二端面)Jの間に延設され、第一端Iと第二端Jの間で延伸する複数のセル14を画成する。
【0013】
基材10は、例えば、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の高い耐熱性を有するセラミックス材料、又はステンレス鋼箔等の金属箔から形成されてよい。
【0014】
図1、2において、破線矢印は、排ガス浄化装置100及び基材10中の排ガスの流れ方向を示す。排ガスは、第一端Iを通って基材10のセル14に流入し、第二端Jを通って基材10のセル14から流出する。そのため、以降、適宜、第一端Iを上流端I、第二端Jを下流端Jとも呼ぶ。本明細書において、上流端Iと下流端Jの間の長さ、すなわち基材10の全長をLsと表す。
【0015】
(2)第一触媒層20
第一触媒層20は、下流端Jと、下流端Jから上流端Iに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向と反対の方向に)第一距離Laを隔てた第一位置Pとの間の第一領域Xにおいて、基材10上に形成される。第一距離Laは、基材10の全長Lsの50%~70%である。第一触媒層20は、セル14の延伸方向において、第一距離Laと等しい長さを有してよい。
【0016】
第一触媒層20は、ロジウムを含む。ロジウムは、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。ロジウムは粒子状であってよい。ロジウムは担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子は、金属酸化物を含んでよい。
【0017】
第一触媒層20は、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を貯蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出する酸素貯蔵材料を含んでよい。酸素貯蔵材料の例としては、セリア(CeO2)、セリア及び他の酸化物の複合酸化物(例えば、セリア及びジルコニア(ZrO2)の複合酸化物(Ce-Zr複合酸化物)、アルミナ(Al2O3)、セリア、及びジルコニアの複合酸化物(Al-Ce-Zr複合酸化物))、これらに添加物を加えた材料、並びにこれらの混合物が挙げられる。添加物は、例えば、ランタナ(La2O3)、イットリア(Y2O3)、ネオジミア(Nd2O3)、又はプラセオジミア(Pr6O11)の少なくともいずれか1種であってよく、これらの材料は酸素貯蔵材料の耐熱性を向上させることができる。添加物は、酸素貯蔵材料の主成分と共に複合酸化物を形成していてよい。特に、高い酸素貯蔵能(Oxygen storage capacity、OSC)を有し且つ比較的安価であることから、Ce-Zr複合酸化物を酸素貯蔵材料として用いてよい。Ce-Zr複合酸化物は、パイロクロア型又は蛍石型の構造を有してよい。第一触媒層20中の酸素貯蔵材料は、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物及び蛍石型Ce-Zr複合酸化物を含んでよい。
【0018】
第一触媒層20は、さらに、その他の任意成分を含んでもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0019】
第一触媒層20の総質量は、第一領域Xにおける基材10の容量を基準として、170g/L以上であってよい。それにより第一触媒層20が大きな熱容量を有するため、排ガス浄化装置100に低温の排ガスが流入したときに、第一触媒層20の温度の低下が緩和されて、排ガス浄化装置100が良好な排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0020】
第一触媒層20は、例えば以下のようにして形成することができる。まず、ロジウム塩の水溶液、酸素貯蔵材料、及び任意成分を混合してスラリーを調製する。スラリーを第一領域Xにおいて基材10上に塗布してスラリー層を形成する。加熱によりスラリー層を乾燥及び焼成する。こうして、第一領域Xにおいて、第一触媒層20が基材10上に形成される。
【0021】
(3)第二触媒層30
第二触媒層30は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第二距離Lbを隔てた第二位置Qとの間の第二領域Yにおいて基材10上に形成される。第二距離Lbは、基材10の全長Lsの50%以上である。第一距離Laと第二距離Lbの合計は、基材10の全長Ls以上である。それにより、基材10の全ての領域が第一触媒層20又は第二触媒層30の少なくとも一方により被覆されるため、排ガス浄化装置100が良好な排ガス浄化性能を有することができる。第二触媒層30は、セル14の延伸方向において、第二距離Lbと等しい長さを有してよい。
【0022】
第二触媒層30は、ロジウムを含む。ロジウムは、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。ロジウムは粒子状であってよい。ロジウムは、担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子は、金属酸化物を含んでよい。
【0023】
第二触媒層30は、酸素貯蔵材料を含む。酸素貯蔵材料の例は上述した通りである。第二触媒層30中の酸素貯蔵材料は、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物及び蛍石型Ce-Zr複合酸化物を0.2:1~0.4:1の重量比で含む。それにより、排ガス浄化装置100が高い暖機性能を有するとともに、使用中の排ガス浄化装置の性能の劣化を低減することができる。
【0024】
第二触媒層30は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0025】
第二触媒層30は、例えば以下のようにして形成することができる。まず、ロジウム塩の水溶液、酸素貯蔵材料、及び任意成分を混合してスラリーを調製する。スラリーを第二領域Yにおいて基材10上に塗布してスラリー層を形成する。加熱によりスラリー層を乾燥及び焼成する。こうして、第二領域Yにおいて、第二触媒層30が基材10上に形成される。
【0026】
(4)第三触媒層40
第三触媒層40は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第三距離Lcを隔てた第三位置Rとの間の第三領域Zにおいて、第二触媒層30上に形成される。第三触媒層40が第二触媒層30上に形成されることにより、排ガス浄化装置100が高い暖機性を有すことができる。第三距離Lcは、基材10の全長Lsの40%以下、特に30%以下である。それにより、排ガス浄化装置100が高い暖機性を有すことができる。第三触媒層40は、セル14の延伸方向において、第三距離Lcと等しい長さを有してよい。
【0027】
第三触媒層40は、パラジウムを含む。パラジウムは、主に、HCを酸化させるための触媒として機能する。パラジウムは粒子状であってよい。パラジウムは、担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子は、金属酸化物を含んでよい。
【0028】
第三触媒層40は、酸素貯蔵材料を含んでよい。酸素貯蔵材料の例は上述した通りである。第三触媒層40中の酸素貯蔵材料は、蛍石型Ce-Zr複合酸化物を含んでよい。
【0029】
第三触媒層40は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0030】
第三触媒層40の総質量は、第三領域Zにおける基材10の容量を基準として、0g/L超105g/L以下であってよい。それにより第三触媒層40が小さな熱容量を有するため、暖機時に第三触媒層40の温度が短時間で上がり、良好な排ガス浄化性能を発揮できる。すなわち、排ガス浄化装置100が高い暖機性を有すことができる。
【0031】
第三触媒層40は、例えば以下のようにして、形成することができる。まず、パラジウム塩の水溶液、酸素貯蔵材料、及び任意成分を混合してスラリーを調製する。スラリーを第三領域Zにおいて第二触媒層30上に塗布してスラリー層を形成する。加熱によりスラリー層を乾燥及び焼成する。こうして、第三領域Zにおいて、第三触媒層40が第二触媒層30上に形成される。
【0032】
実施形態に係る排ガス浄化装置100は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想又は技術的範囲を逸脱することなく、種々の変更、追加、及び削除を行うことができる。
【実施例0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(1)実施例及び比較例で使用した材料
a)基材(ハニカム基材)
材質:コージェライト
容量:875cc
隔壁の厚さ:2mil(50.8μm)
セル密度:1平方インチ当たり600個
セル断面形状:六角形
【0036】
b)材料1
Al2O3にLa2O3を添加して得られた材料(La2O3:1wt%~10wt%)。
【0037】
c)材料2(蛍石型Ce-Zr複合酸化物)
Al2O3-CeO2-ZrO2複合酸化物に、微量のNd2O3、La2O3、及びY2O3を添加して得られた、蛍石型構造を有する材料(CeO2:15wt%~30wt%)。
【0038】
d)材料3(パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物)
CeO2とZrO2を略等しい分子量で含有する複合酸化物に、微量の希土類金属の酸化物、例えばPr6O11、La2O3、Y2O3、及びNd2O3を添加し、高温で還元処理して得られた、パイロクロア型構造を有する材料(CeO2:45mol%~65mol%、ZrO2:45mol%~65mol%)。
【0039】
e)材料4
硝酸パラジウム水溶液
【0040】
f)材料5
硝酸ロジウム水溶液
【0041】
g)材料6
硫酸バリウム
【0042】
(2)排ガス浄化装置の作製
実施例1
攪拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料3、及び材料5を加えて混合し、懸濁したスラリー1を調製した。スラリー1を基材の下流端からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の下流端と、基材の下流端から基材の上流端に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第一位置との間の第一領域において、基材の隔壁がスラリー1でコーティングされた。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー1中の水を蒸発させた。次いで電気炉にて500℃で2時間の焼成を行った。それにより、第一触媒層を形成した。
【0043】
第一領域における基材の容量を基準とした第一触媒層に含まれる材料1の量は80g/L、材料2の量は60g/L、材料3の量は30g/L、材料5に由来するRh粒子の量は0.3g/Lであった。
【0044】
次に、攪拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料3、及び材料5を加えて混合し、懸濁したスラリー2を調製した。スラリー2を基材の上流端からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の上流端と、基材の上流端から基材の下流端に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、基材の隔壁がスラリー2でコーティングされた。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー2中の水を蒸発させ、次いで電気炉にて500℃で2時間の焼成を行った。それにより、第二触媒層を形成した。
【0045】
第二領域における基材の容量を基準とした第二触媒層に含まれる材料1の量は66g/L、材料2の量は45g/L、材料3の量は9g/L、材料5に由来するRh粒子の量は0.3g/Lであった。
【0046】
次に、攪拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料4、及び材料6を加えて混合し、懸濁したスラリー3を調製した。スラリー3を基材の上流端からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の上流端と、基材の上流端から基材の下流端に向かって基材全長の30%の長さの距離を隔てた第三位置との間の第三領域において、スラリー3の層が形成された。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー3中の水を蒸発させ、次いで電気炉にて500℃で2時間の焼成を行った。それにより、第二触媒層上に第三触媒層を形成した。
【0047】
第三領域における基材の容量を基準とした第三触媒層に含まれる材料1の量は30g/L、材料2の量は50g/L、材料4に由来するPd粒子の量は5.0g/L、材料6の量は20g/Lであった。
【0048】
こうして実施例1の排ガス浄化装置を得た。
【0049】
実施例2
第二領域における基材の容量を基準とした第二触媒層に含まれる材料1の量が58g/L、材料2の量が45g/L、材料3の量が17g/L、材料5に由来するRh粒子の量が0.3g/Lであったこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0050】
比較例1
第二領域における基材の容量を基準とした第二触媒層に含まれる材料1の量が70g/L、材料2の量が45g/L、材料3の量が4.5g/L、材料5に由来するRh粒子の量が0.3g/Lであったこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0051】
比較例2
第二領域における基材の容量を基準とした第二触媒層に含まれる材料1の量が41g/L、材料2の量が45g/L、材料3の量が34g/L、材料5に由来するRh粒子の量が0.3g/Lであったこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0052】
比較例3
第一領域における基材の容量を基準とした第一触媒層に含まれる材料1の量が60g/L、材料2の量が60g/L、材料3の量が30g/L、材料5に由来するRh粒子の量が0.3g/Lであったことと、第三触媒層を形成した後に第二触媒層を形成した(すなわち、基材と第二触媒層の間に第三触媒層を形成した)こと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0053】
比較例4
第三領域における基材の容量を基準とした第三触媒層に含まれる材料1の量が50g/L、材料2の量が50g/L、材料4に由来するPd粒子の量が5.0g/L、材料6の量が20g/Lであったことと、第三触媒層を形成した後に第二触媒層を形成した(すなわち、基材と第二触媒層の間に第三触媒層を形成した)こと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0054】
各実施例及び比較例における、第二触媒層中の材料2(蛍石型Ce-Zr複合酸化物)と材料3(パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物)の重量比(P:F)、第二触媒層と第三触媒層の上下関係、第一領域における基材の容量を基準とした第一触媒層の総量、第二領域における基材の容量を基準とした第二触媒層の総量、及び第三領域における基材の容量を基準とした第三触媒層の総量を、表1にまとめた。
【0055】
【0056】
(3)エージング処理
実施例及び比較例の排ガス浄化装置を、それぞれ、排気量4.6LのV型8気筒エンジンの排気系に接続した。50時間にわたって、排ガス浄化装置の床温を950℃に維持しながら、該エンジンにストイキの混合気(空燃比A/F=14.6)及び過剰な酸素を含むリーンな混合気(A/F>14.6)を時間比3:1で一定の周期で交互に導入した。それにより、排ガス浄化装置をエージング処理した。
【0057】
(4)暖機性能評価
エージング処理した排ガス浄化装置の中央の温度を50℃に冷ました後、排気量2.5LのL型4気筒エンジンの排気系に接続した。エンジンにA/Fが14.4の混合気を導入し、エンジンからの約500℃の排気を排ガス浄化装置に導入した。排ガス浄化装置の上流端及び下流端における排気のTHC含有量を測定してTHC浄化率を求めた。500℃の排気を排ガス浄化装置に導入しはじめてからTHC浄化率が50%に到達するまでにかかった時間を表2及び
図3に示す。THC浄化率が50%に到達するまでにかかった時間が短いほど、暖機性能が高いことを意味する。
【0058】
図3に示すように、P:Fが0.1:1~0.4:1であった実施例1、2及び比較例1の排ガス浄化装置は、P:Fが0.75:1であった比較例2の排ガス浄化装置よりも高い暖機性能を示した。
【0059】
第三触媒層の総量が125g/Lであった比較例4の排ガス浄化装置は、第三触媒層の総量が105g/Lであった比較例3の排ガス浄化装置よりも低い暖機性能を示した。これは、比較例4では、第三触媒層の総量がより多い、すなわち熱容量がより大きく、それにより排ガス浄化装置の温度の上昇により多くの時間を要したためと考えられる。なお、比較例3と比較例4では第一触媒層の総量も異なっていたが、暖機性能評価試験の間、第一触媒層は比較的低温に保たれたため、第一触媒層によるTHC浄化量は小さかったと考えられる。したがって、第一触媒層の総量の相違による暖機性能への影響は小さかったと考えられる。
【0060】
第二触媒層が下層、第三触媒層が上層であった比較例1の排ガス浄化装置は、第二触媒層が上層、第三触媒層が下層であった比較例3の排ガス浄化装置よりも高い暖機性能を示した。なお、比較例1と比較例3では第一触媒層の総量も異なっていたが、上述のように、第一触媒層の総量の相違による暖機性能への影響は小さかったと考えられる。
【0061】
(5)触媒活性評価
エージング処理した排ガス浄化装置を排気量2.5LのL型4気筒エンジンの排気系に接続した。エンジンにA/Fが14.4の混合気を導入し、エンジンからの600℃の排気を熱交換器により200℃に冷却し、排ガス浄化装置に導入した。熱交換器を制御して、排ガス浄化装置に導入される排気の温度を200℃から一定の速度で上昇させ、この間、排ガス浄化装置の上流端及び下流端における排気のNOx含有量を測定してNOx浄化率を求めた。なお排ガス浄化装置がガスの流れ方向において常に一様な温度を有するように、排気の流速を十分に大きくするとともに排気の昇温速度を十分に小さくした。NOx浄化率が50%に到達したときの排気の温度(NOx-T50)を表2及び
図4に示す。NOx-T50が低いほど、排ガス浄化装置の触媒活性が高いことを意味する。
【0062】
図4に示すように、P:Fが0.2:1~0.75:1であった実施例1、2及び比較例2の排ガス浄化装置は、P:Fが0.1:1であった比較例1の排ガス浄化装置よりも高い触媒活性を示した。これは、実施例1、2及び比較例2では、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物の高い酸素貯蔵放出能により、エージング処理による排ガス浄化装置の劣化が低減されたためと考えられる。
【0063】
なお、比較例1の排ガス浄化装置は、第二触媒層が上層、第三触媒層が下層であった比較例3、4の排ガス浄化装置よりも低い触媒活性を示した。しかし、実施例1、2及び比較例2の排ガス浄化装置は、比較例3、4の排ガス浄化装置以上の触媒活性を示した。
【0064】
(6)降温時の性能評価
エージング処理した排ガス浄化装置を排気量2.5LのL型4気筒エンジンの排気系に接続した。エンジンにA/Fが14.4の混合気を導入し、エンジンからの排気を排ガス浄化装置に導入した。排ガス浄化装置の上流端における排気の温度をまずは600℃とし、その後500℃以下まで低下させ、この間、排ガス浄化装置の上流端及び下流端における排気のNOx含有量を測定してNOx浄化率を求めた。排ガス浄化装置の上流端における排気の温度が500℃になったときのNOx浄化率を表2及び
図5に示す。NOx浄化率が高いほど降温時性能が高いことを意味する。
【0065】
図5に示すように、第一触媒層の総量が170.3g/Lであった実施例1、2及び比較例1、2、4の排ガス浄化装置は、第一触媒層の総量が150.3g/Lであった比較例3の排ガス浄化装置よりも、高い降温時性能を示した。これは、実施例1、2及び比較例1、2、4では、第一触媒層の総量がより多い、すなわち熱容量がより大きく、それにより排気の降温中に排ガス浄化装置の温度が低下することが緩和されたためと考えられる。
【0066】
10:基材、12:枠部、14:セル、16:隔壁、20:第一触媒層、30:第二触媒層、40:第三触媒層、100:排ガス浄化装置、I:上流端(第一端)、J:下流端(第二端)、P:第一位置、Q:第二位置、R:第三位置、X:第一領域、Y:第二領域、Z:第三領域