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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167823
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241127BHJP
   B60H 1/24 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B60H1/00 102C
B60H1/00 102E
B60H1/00 102P
B60H1/24 661A
B60H1/00 102J
B60H1/00 102H
B60H1/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084169
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 英男
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA32
3L211BA34
3L211CA06
3L211DA04
3L211DA05
3L211DA14
3L211EA12
3L211EA13
3L211EA20
3L211EA26
3L211EA28
3L211EA35
3L211GA04
3L211GA05
3L211GA11
(57)【要約】
【課題】空調ケース内の空気の送風効率を向上させつつ、外気導入および内気排出による熱損失を低減して、空調動作時の消費電力を抑制できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、空調ケース21内に、外気入口22から蒸発器32に外気を導く第1通路P1と、内気入口23から蒸発器32に内気を導く第2通路P2とが形成されている。第1および第2通路P1,P2内にはブロアファン31が設けられ、ブロアファン31と蒸発器32の間には全熱交換器34が配置されている。全熱交換器34には、第1通路P1内を流れる外気が導入されるとともに、第2通路P2内を流れる内気の少なくとも一部が導入され、外気および内気の間で熱交換が行われる。熱交換された外気は、第2通路P2内を流れる残りの内気とともに蒸発器32に導入され、熱交換された内気は車室外へ排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気入口および内気を導入する内気入口が一端側に形成され、かつ、車両の窓ガラスに向けて空気を吹き出すデフロスタ出口、並びに、車室内の乗員に向けて空気を吹き出すフェイス出口およびフット出口が他端側に形成されている空調ケースと、
前記空調ケース内を流れる空気を冷却するための冷却用熱交換部と、
前記空調ケース内に、前記外気入口から前記冷却用熱交換部に空気を導く第1通路と、前記内気入口から前記冷却用熱交換部に空気を導く第2通路とを形成する仕切板と、
前記第1および第2通路内に、前記一端側から前記他端側へ向かう空気の流れを発生させる送風部と、
を含む車両用空調装置であって、
前記送風部と前記冷却用熱交換部との間に配置され、前記第1通路内を流れる外気が導入されるとともに、前記第2通路内を流れる内気の少なくとも一部が導入され、該導入された外気および内気の間で熱交換を行う内外気熱交換部を含み、
前記内外気熱交換部で熱交換された外気が前記第2通路内を流れる残りの内気とともに前記冷却用熱交換部に導入され、前記内外気熱交換部で熱交換された内気が車室外へ排出されるように構成されている、車両用空調装置。
【請求項2】
前記内外気熱交換部に導入される外気および内気の各流量を調整する内外気量調整部と、
車室内の二酸化炭素濃度に関する情報が与えられ、該二酸化炭素濃度に応じて前記内外気量調整部の動作を制御する制御部と、
を含む、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記内外気量調整部は、前記外気入口から導入される外気の流量を調整する外気ドアと、前記内気入口から導入される内気の流量を調整する内気ドアと、前記第2通路内を流れる内気のうちで前記内外気熱交換部に導入する内気の流量と前記冷却用熱交換部に送る内気の流量の割合を調整する内気熱交換調整ダンパと、を有し、
前記制御部は、前記二酸化炭素濃度が予め定めた基準値以下となるように、前記外気ドアおよび前記内気ドアの開閉状態を制御するとともに、前記外気ドアの開度に比例させて前記内気熱交換調整ダンパの前記割合を制御する、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記デフロスタ出口、前記フェイス出口および前記フット出口からそれぞれ吹き出される空気の各流量を調整する吹出量調整部を含み、
前記制御部は、前記冷却用熱交換部において冷媒漏れが発生した場合に、前記デフロスタ出口、前記フェイス出口および前記フット出口からそれぞれ吹き出される空気の流量が零になるように前記吹出量調整部を制御するとともに、前記外気ドアが開放状態となり、前記内気ドアが閉塞状態となり、かつ、前記内気熱交換調整ダンパが前記冷却用熱交換部の側から前記内外気熱交換部の側へ空気を送風可能な状態となるように制御する、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調ケース内を流れる空気を加熱するための加熱用熱交換部を含み、
前記制御部は、前記車両の窓ガラスの表面温度を示す情報と、車室内における前記窓ガラス近傍の空気の温度および湿度を示す情報とが与えられ、前記窓ガラスの近傍の温度および湿度を用いて演算した露点温度が前記窓ガラスの表面温度よりも低くなるように、前記内外気量調整部の動作を制御する、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記内外気熱交換部に導入される内気の流量が零になっても前記露点温度が前記窓ガラスの表面温度よりも低くならない場合に、前記外気入口から導入される外気の流量に対する前記内気入口から導入される内気の流量の割合が減少するように、前記内外気量調整部の動作を制御する、請求項5に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を空調する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置として、例えば、特許文献1には、内気を車室外へ排出する内気排出路を流れる内気から吸熱し、外気導入口から導入される外気へ放熱する全熱交換器を設けることにより、外気導入による熱損失を低減して暖房効果を向上させた車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-16531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の車両用空調装置では、外気が導入される第1送風路において、全熱交換器が送風機の上流側に取り付けられており、送風機の下流側にはエバポレータが設置されている。このような第1送風路上の配置では、送風機の上流側が負圧となり、下流側が正圧となってしまうため、送風機の効率が良くなかった。また、内気が導入される第2送風路においては、送風機に導入された内気が車室内側および車室外側の2方向に吹き出されており、2方向への内気の振り分けが難しく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、空調ケース内の空気の送風効率を向上させつつ、外気導入および内気排出による熱損失を低減して、空調動作時の消費電力を抑制できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の一態様は、外気を導入する外気入口および内気を導入する内気入口が一端側に形成され、かつ、車両の窓ガラスに向けて空気を吹き出すデフロスタ出口、並びに、車室内の乗員に向けて空気を吹き出すフェイス出口およびフット出口が他端側に形成されている空調ケースと、前記空調ケース内を流れる空気を冷却するための冷却用熱交換部と、前記空調ケース内に、前記外気入口から前記冷却用熱交換部に空気を導く第1通路と、前記内気入口から前記冷却用熱交換部に空気を導く第2通路とを形成する仕切板と、前記第1および第2通路内に、前記一端側から前記他端側へ向かう空気の流れを発生させる送風部と、を含む車両用空調装置を提供する。この車両用空調装置は、前記送風部と前記冷却用熱交換部との間に配置され、前記第1通路内を流れる外気が導入されるとともに、前記第2通路内を流れる内気の少なくとも一部が導入され、該導入された外気および内気の間で熱交換を行う内外気熱交換部を含み、前記内外気熱交換部で熱交換された外気が前記第2通路内を流れる残りの内気とともに前記冷却用熱交換部に導入され、前記内外気熱交換部で熱交換された内気が車室外へ排出されるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用空調装置によれば、空調ケース内の空気の送風効率を向上させつつ、外気導入および内気排出による熱損失を低減して、空調動作時の消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
図2】車両用空調装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】全熱交換器に用いられる全熱交換エレメントを模式的に示す斜視図である。
図4】夏季・冷房機能ONの初期状態における空気の流れを示す図である。
図5】夏季・乗員2人の場合の空気の流れを示す図である。
図6】夏季・乗員4人の場合の空気の流れを示す図である。
図7】冷媒漏れの場合の空気の流れを示す図である。
図8】冬季・乗員2人で結露の可能性が低い場合の空気の流れを示す図である。
図9】冬季・乗員4人で結露の可能性が低い場合の空気の流れを示す図である。
図10】冬季・乗員2人で結露の可能性が高い場合の空気の流れを示す図である。
図11】冬季・乗員2人で結露の可能性が更に高い場合の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置1の構成を示している。図1は、本実施形態による車両用空調装置1の全体構成の概略図であり、図2は、本実施形態による車両用空調装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態による車両用空調装置1は、自動車などの車両に搭載され、車両の車室内に空調風を吹き出すことで車室内を空調するように構成されている。車両用空調装置1は、空調ユニット2(図1)と空調制御装置5(図2)とを含む。
【0011】
空調ユニット2は、車両(図示せず)の車室内の前部に配置されており、空調ケース21を含んでいる。空調ケース21の一端側(図1の左側)には、外気入口22および内気入口23が形成されている。外気入口22は、車室外空気(以下「外気」という)を空調ケース21内に導入するための吸込口である。外気入口22は、外気ダクト22Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。内気入口23は、車室内空気(以下「内気」という)を空調ケース21内に導入するための吸込口である。内気入口23は、内気ダクト23Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。
【0012】
外気入口22および内気入口23には、外気ドア22Bおよび内気ドア23Bがそれぞれ設けられている。また、後述する第1および第2通路P1,P2の各上流側端部を互いに接続する連絡通路P12における外気入口22寄りには、内外気ドア28が設けられている。外気ドア22B、内気ドア23Bおよび内外気ドア28は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する各々に対応した電動アクチュエータ61,62,63によってそれぞれ駆動される(図2)。外気ドア22B、内気ドア23Bおよび内外気ドア28は、各々の回動位置の組み合わせに応じて、車両用空調装置1の吸込口モードを、内気モード、外気モードまたは内外気モードに切り替えることが可能に構成されている。例えば、図1に実線で示すように、外気ドア22Bが外気入口22を開放した位置にあり、内気ドア23Bが内気入口23を開放した位置にあり、内外気ドア28が連絡通路P12を閉塞した位置にある場合、車両用空調装置1の吸込口モードは内外気モードとなる。
【0013】
空調ケース21の他端側(図1の右側)には、デフロスタ出口24、フェイス出口25およびフット出口26が形成されている。デフロスタ出口24は、空調ケース21内の空気を車両の窓ガラス(図示せず)に向けて吹き出すための吹出口である。デフロスタ出口24は、デフロスタダクト24Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。フェイス出口25は、空調ケース21内の空気を車室内の乗員の上半身に向けて吹き出すための吹出口である。フェイス出口25は、フェイスダクト25Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。フット出口26は、空調ケース21内の空気を車室内の乗員の足元に向けて吹き出すための吹出口である。フット出口26は、フットダクト26Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。
【0014】
フェイス出口25およびフット出口26には、フェイスドア25Bおよびフットドア26Bがそれぞれ設けられている。また、デフロスタ出口24とフット出口26の間の空間には、出口切替ドア27が配置されている。フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する各々に対応した電動アクチュエータ64,65,66によってそれぞれ駆動される(図2)。フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27は、各々の回動位置の組み合わせに応じて、車両用空調装置1の吹出口モードを、デフロスタモード、フェイスモード、フットモード、フェイス・フットモード、デフロスタ・フットモードまたは閉塞モードに切り替えることが可能に構成されている。例えば、図1に実線で示すように、フェイスドア25Bがフェイス出口25を閉塞した位置にあり、フットドア26Bがフット出口26を開放した位置にあり、出口切替ドア27がデフロスタ出口24およびフット出口26の双方から離れた中立の位置にある場合、車両用空調装置1の吹出口モードは、デフロスタ・フットモードとなる。なお、本実施形態では、フェイスドア25B、フットドア26B、出口切替ドア27および電動アクチュエータ64~66が本発明の「吹出量調整部」に相当する。
【0015】
空調ケース21内には、空調ケース21の内壁および複数の仕切板29によって区画された第1通路P1、第2通路P2および連絡通路P12が形成されている(図1)。第1通路P1は、外気入口22から後述する蒸発器32(冷却用熱交換部)に空気を導く通路である。第2通路P2は、内気入口23から蒸発器32に空気を導く通路である。つまり、空調ケース21内における蒸発器32よりも上流側の空間は、複数の仕切板29により、図1で概ね上側に位置する第1通路P1と概ね下側に位置する第2通路P2との二層に仕切られており、第1通路P1の上流側端部と第2通路P2の上流側端部とが連絡通路P12を介して連通されている。
【0016】
空調ケース21における第1通路P1の下流側端部を臨む部分には、排気口30が形成されている(図1)。排気口30は、排気ダクト30Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。排気ダクト30Aは、排気口30とは反対側に位置する端部(図示せず)が車両後部まで延びて車室外の空間に連通している。つまり、空調ケース21の排気口30から排気ダクト30Aに導かれた空気は、排気ダクト30A内を通って車室側に排出される。
【0017】
空調ケース21内における一端側部位には、第1および第2通路P1,P2に亘ってブロアファン31が設けられている(図1)。ブロアファン31は、電動モータを有した電動送風機である。ブロアファン31(電動モータ)は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作し(図2)、空調ケース21の一端側から他端側へ向かう空気の流れを発生させる。つまり、ブロアファン31は、外気入口22から導入された外気および/または内気入口23から導入された内気を車室内に向けて送風するように構成されている。なお、本実施形態では、ブロアファン31が本発明の「送風部」に相当する。
【0018】
空調ケース21内におけるブロアファン31の下流側には、前述した蒸発器32が設けられている。蒸発器32には、第1通路P1を通過した空気(外気)が後述する全熱交換器34を介して導入されるとともに、第2通路P2を通過した空気(内気)が導入される。蒸発器32は、ここでは図示を省略するが、圧縮機、凝縮器、液分離器および膨張弁などと共に、冷媒が循環する冷媒循環路に配置されて冷媒回路(冷凍サイクル)を構成している。蒸発器32は、圧縮機の動作に伴って、蒸発器32に導入された空気と冷媒とを熱交換させることにより、空調ケース21内を流れる空気を冷却するように構成されている。つまり、蒸発器32は、空調ケース21内を流れる空気を冷却する冷却用熱交換部として機能する。なお、蒸発器32(冷媒回路の圧縮機)は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する(図2)。
【0019】
空調ケース21内における蒸発器32の下流側には、ヒータコア33が設けられている。また、ヒータコア33の周辺(図1でヒータコア33の背後)には、バイパス通路B(図1の点線)が形成されている。バイパス通路Bは、空調ケース21内を流れる空気がヒータコア33をバイパスするための通路である。
【0020】
ヒータコア33は、空調ケース21内における蒸発器32の下流側の空間でバイパス通路B以外を流れる空気を加熱する加熱器である。特に限定されないが、本実施形態において、ヒータコア33は、ここでは図示を省略するが、電気ヒータを内蔵した熱媒体加熱装置と共に、電動ポンプによって水などの熱媒体が循環する熱媒体循環路に配置されている。そして、ヒータコア33は、熱媒体加熱装置の電気ヒータによって加熱された熱媒体と空調ケース21内(バイパス通路Bを除く)を流れる空気とを熱交換させることで、当該空気を加熱するように構成されている。つまり、ヒータコア33は、空調ケース21内(バイパス通路Bを除く)を流れる空気を加熱する加熱用熱交換部として機能する。ヒータコア33(熱媒体加熱装置の電気ヒータおよび電動ポンプ)は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する(図2)。
【0021】
ヒータコア33の上流側には、エアミックスドア33Aが設けられている。エアミックスドア33Aは、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する電動アクチュエータ67によって駆動される(図2)。エアミックスドア33Aは、その回動位置に応じて、空調ケース21内を流れる空気のうち、ヒータコア33を通過させる空気の流量とバイパス通路Bを通過させる空気の流量の割合(風量割合)を調節する。
【0022】
空調ケース21内におけるブロアファン31と蒸発器32との間には、第1通路P1の下流側端部に亘って前述した全熱交換器34が設けられている。全熱交換器34には、第1通路P1内を流れる空気(外気)が導入されるとともに、第2通路P2内を流れる空気(内気)の少なくとも一部が導入される。全熱交換器34は、導入される2種類の空気(外気、内気)の間で顕熱および潜熱を交換する。つまり、全熱交換器34は、導入される外気と内気の間で全熱(温度および湿度)を交換可能に構成されている。本実施形態では、全熱交換器34が本発明の「内外気熱交換部」に相当する。
【0023】
図3は、全熱交換器34に用いられる全熱交換エレメントを模式的に示す斜視図である。図3において、全熱交換器34に用いられる全熱交換エレメントは、例えば、繊維質基材に高分子収着材を塗布して形成された仕切部材341と、波型加工された間隔部材342とが一方向に積層されている。全熱交換エレメントは、外気OAを導入して給気SAとして送り出す方向と、還気(内気)RAを導入して排気EAとして送り出す方向とが各層間で交互に90°異なるように構成されている。仕切部材341に使用される高分子収着材は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体などから構成されている。このような高分子収着材は、水分を吸収する速度が高く、保持する水分を低い加熱温度で脱離(放出)することができ、かつ、水分を長時間保持することができる。したがって、繊維質基材に高分子収着材を塗布して形成された仕切部材341は伝熱性および透湿性を有している。
【0024】
本実施形態では、図3の全熱交換エレメントにおける外気OA-給気SA側の流れ方向が、空調ケース21における第1通路P1内の空気(外気)の流れ方向に沿うように、全熱交換器34が第1通路P1の下流側端部に配置されている(図1)。言い換えると、図3の全熱交換エレメントにおける還気(内気)RA-排気EA側の流れ方向が、空調ケース21における第1通路P1内の外気の流れ方向と直交し、全熱交換エレメントにおける内気の導入面が第2通路P2を臨み、かつ、排気EAの排出面が排気口30を臨むように、全熱交換器34が第1通路P1の下流側端部に配置されている(図1)。このように配置された全熱交換器34では、外気OA-給気SA側の流れと還気(内気)RA-排気EA側の流れとが混ざり合うことなく、外気および内気(給気および排気)の間で全熱(温度および湿度)が効率良く交換される。本実施形態における全熱交換器34の交換効率は50%程度である。ただし、全熱交換器34の交換効率はこれに限定されない。
【0025】
全熱交換器34における内気の導入面の外方(図1で下方)には、内気熱交換調整ダンパ34Aが設けられている。内気熱交換調整ダンパ34Aは、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する電動アクチュエータ68によって駆動される(図2)。内気熱交換調整ダンパ34Aは、その回動位置に応じて、第2通路P2内を流れる空気(内気)のうちで全熱交換器34に導入する空気の流量と蒸発器32に導入する空気の流量の割合(風量割合)を調節する。例えば、図1に実線で示すように、内気熱交換調整ダンパ34Aが、第2通路P2内の空気の流れ方向に対して略45°の角度をなす位置にある場合、風量割合は略1対1となる。なお、本実施形態では、外気ドア22B、内気ドア23B、内外気ドア28、内気熱交換調整ダンパ34Aおよび電動アクチュエータ61~63,68が本発明の「内外気量調整部」に相当する。
【0026】
空調制御装置5(図2)は、CPU、ROMやRAMなどのメモリ、および、I/Oポートなどを含むマイクロコンピュータで構成されている。また、空調制御装置5は、ROMに記憶された空調制御プログラム、入力される各種センサの検出信号および入力される各種スイッチの操作信号に基づいて各種の演算等を行い、空調制御装置5に電気的に接続された各種機器、例えば、前述したブロアファン31や蒸発器32(冷媒回路の圧縮機)、ヒータコア33(熱媒体加熱装置の電気ヒータおよび電動ポンプ)、各電動アクチュエータ61~68などに制御信号を出力して、これらの機器の動作を制御するように構成されている。なお、本実施形態では、空調制御装置5が本発明の「制御部」に相当する。
【0027】
空調制御装置5に接続される各種センサは、例えば、空調ユニット2内外の各所に設置されている温度センサ群71および湿度センサ群72、並びに、座席重量センサ73およびCO濃度センサ74などを含む。温度センサ群71は、外気の温度を検出する外気温センサ、内気の温度を検出する内気温センサ、車両の窓ガラス(例えば、フロントガラス等)の表面温度を検出する温度センサ、車室内における窓ガラス近傍の空気の温度を検出する温度センサ等を有している。湿度センサ群72は、外気の湿度を検出する外気湿度センサ、内気の湿度を検出する内気湿度センサ、車室内における窓ガラス近傍の空気の湿度を検出する湿度センサ等を有している。座席重量センサ73は、車室内に設置されている各座席の重量を検出するセンサである。空調制御装置5は、座席重量センサ73で検出される各座席の重量の変化に基づいて、車室内の乗員数を判断することが可能である。CO濃度センサ74は、車室内の二酸化炭素(CO)の濃度を検出するセンサである。
【0028】
また、空調制御装置5に接続される各種スイッチは、乗員が操作可能なように、例えば車室内の前部に設置された操作パネル75に設けられている。操作パネル75には、例えば、車両用空調装置1をON/OFFするON・OFFスイッチ、車両用空調装置1の自動制御をON/OFFするAUTOスイッチ、冷房機能をON/OFFするA/Cスイッチ、暖房機能をON/OFFするHEATスイッチ、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ、ブロアファン31の風量を設定する風量設定スイッチなどが設けられている。
【0029】
次に、本実施形態による車両用空調装置1の動作について説明する。
一般に、外気温が高くなる夏季などにおいて、空調装置の冷房機能を使用する際には、冷房効率を高めるために、吸込口モードを内気モードに設定して、空調装置による空調風を車室内で循環させる内気循環とするのが望ましい。内気循環100%で冷房機能を使用した場合、乗員の呼気等によって車室内のCO濃度が上昇するため、車室内の換気が必要になる。すなわち、高温の外気を吸い込み冷却して車室内へ供給し、それと同量の内気を車室外に排出することで車室内の換気が行われる。このような換気に伴う高温の外気の導入と低温の内気の排出とによる熱損失は、冷房効率を低下させることになる。そこで、本実施形態による車両用空調装置1は、ブロアファン31と蒸発器32との間に全熱交換器34を配置し、この全熱交換器34に導入される外気および内気の各流量を車室内のCO濃度に応じて制御することで、外気導入および内気排出による熱損失を低減して冷房時の消費電力を抑制できるようにしている。
【0030】
具体的に、車両用空調装置1では、まず、操作パネル75のON・OFFスイッチがONされることにより車両用空調装置1の各部が起動する。そして、操作パネル75のA/CスイッチがONされて風量設定スイッチが所望の風量に設定されるか、または、AUTOスイッチがONされることにより、空調制御装置5からの制御信号に従ってブロアファン31および蒸発器32が作動して冷房機能がONとなる。なお、HEATスイッチはOFFされておりヒータコア33は作動していない。冷房機能ONの初期状態では、冷房効率を高めるために、吸込口モード切替スイッチが内気モードに設定されるか、または、AUTOスイッチONによる自動制御により吸込口モードが内気モードに設定される。これにより、車両用空調装置1が内気循環100%で冷房動作を開始する。
【0031】
図4は、夏季・冷房機能ONの初期状態における空気の流れを示している。吸込口モードが内気モードに設定されることにより、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ61~63が駆動されて、外気ドア22B、内気ドア23Bおよび内外気ドア28が図4に実線で示す位置に制御される。すなわち、外気ドア22Bが外気入口22を閉塞した位置となり、内気ドア23Bが内気入口23を開放した位置となり、内外気ドア28が連絡通路P12を開放した位置となる。
【0032】
さらに、吹出口モードスイッチがフェイスモードに設定されることにより、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ64~66が駆動されて、フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27が図4に実線で示す位置に制御される。すなわち、フェイスドア25Bがフェイス出口25を開放した位置となり、フットドア26Bがフット出口26を閉塞した位置となり、出口切替ドア27がデフロスタ出口24側に最も近づいた位置となる。
【0033】
このとき、全熱交換器34に対応して配置された内気熱交換調整ダンパ34Aは、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する電動アクチュエータ68によって駆動され、図4に実線で示すように第2通路P2内の空気の流れ方向に沿う位置となり、全熱交換器34の内気導入面を閉塞する。また、ヒータコア33の上流側に配置されたエアミックスドア33Aは、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ67が駆動されることで、空調ケース21内を流れる空気の全量がバイパス通路Bを通るようにする位置となる。さらに、風量設定に応じて空調制御装置5から出力される制御信号に従ってブロアファン31が駆動されることで、例えば、200m/h等の流量の内気RAが、内気入口23から内気ダクト23Aを介して空調ケース21内に導入される。
【0034】
内気入口23から空調ケース21内に導入された内気RAは、連絡通路P12側と第2通路P2側とに分かれ、連絡通路P12および第1通路P1を通る空気の流れと、第2通路P2を通る空気の流れとなる。第1通路P1を流れる空気は全熱交換器34を介して蒸発器32に導入され、第2通路P2を流れる空気は蒸発器32に直接導入される。蒸発器32は、冷房の温度設定に応じて空調制御装置5から出力される制御信号に従って駆動されており、第1および第2通路P1,P2からの空気をまとめて冷却する。蒸発器32で冷却された空気は、バイパス通路Bを通過してフェイス出口25から空調風CAとして200m/hの流量で吹き出される。これにより、冷房機能ONの初期状態において、車両用空調装置1が内気循環100%で冷房動作を開始する。
【0035】
本実施形態による車両用空調装置1では、冷房動作の開始とともに、若しくは所定の待機時間が経過した後に、空調制御装置5が、座席重量センサ73で検出される各座席の重量の変化を基に車室内の乗員数を判断する。車室内の乗員数は、車室内のCO濃度が上昇する度合いを推定可能なパラメータとして利用される。すなわち、車室内のCO濃度は主に乗員の呼気によって上昇するので、車室内の乗員数または乗員の総重量などに比例してCO濃度の上昇度合いも変化する。このような特性を利用して、本実施形態では、冷房時における車室内のCO濃度の変化を乗員数から推定して換気量の制御を行うようにしている。ただし、CO濃度センサ74で検出される車室内のCO濃度を用いて換気量の制御を行うことも勿論可能である。つまり、車室内の乗員数(または乗員の総重量)に応じた換気量の制御は、CO濃度センサが車両に設けられていないような場合に、CO濃度に応じた換気量の制御を実現するための代替手段として有効である。
【0036】
空調制御装置5は、座席重量センサ73からの情報を基に車室内の乗員数を判断すると、該乗員数に応じて換気(外気導入および内気排出)が行われるように、車両用空調装置1の各部を制御する。本実施形態では、乗員の呼気等による車室内のCO濃度上昇を考慮し、空調使用時に必要な車室内の換気量として、例えば、乗員一人当たり30cfm(ft/min)=51m/hを制御目標値に設定する。なお、この換気量の制御目標値は、文献:Gursaran D. Mathur, ”Power Savings by Operating HVAC Unit in Partial Recirculation Mode”, Automotive Air-Conditioning Technical Review 2022 - HVAC Systems for Vehicle Electrification等に基づくものである。以下では、夏季において車室内の乗員数が2人の場合と4人の場合とに分けて、本実施形態による車両用空調装置1の具体的な動作を説明する。
【0037】
(夏季・乗員2人の場合)
図5は、夏季・乗員2人の場合の空気の流れを示している。本実施形態による車両用空調装置1では、空調制御装置5が、座席重量センサ73からの情報を基に乗員2人を判断すると、51m/h×2=102m/hの換気量で外気導入および内気排出が行われるように、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aにそれぞれ対応した電動アクチュエータ61,63,68を制御する。これにより、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aは、図5の実線に示す各位置にそれぞれ調整される。すなわち、外気ドア22Bは、外気入口22から導入される外気OAの流量を102m/hとする中間位置に調整される。内外気ドア28は、連絡通路P12を閉塞した位置に調整される。この内外気ドア28により、内気入口23から200m/hの流量で導入される内気RA1の全てが第2通路P2を流れるようになる。内気熱交換調整ダンパ34Aは、第2通路P2を流れる内気のうち、全熱交換器34に導入する内気RA2-1の流量を102m/hとし、蒸発器32に送る内気RA2-2の流量を98m/hとする中間位置に調整される。つまり、空調制御装置5は、外気ドア22Bの開度に比例させて、内気熱交換調整ダンパ34Aにおける内気RA2-1の流量と内気RA2-2の流量との割合を制御する。
【0038】
ここで、外気および内気の各状態の具体的な一例として、温度が35℃、相対湿度が60%、絶対湿度が0.0215kg/kgの状態にある外気OAが、外気入口22から空調ケース21内に導入されるとともに、温度が25℃、相対湿度が30%、絶対湿度が0.0059kg/kgの状態にある内気(還気)RA1が、内気入口23から空調ケース21内に導入される状況を想定する。このような状況において、空調制御装置5の各部を流れる空気の状態は、次の表1に示すように変化する。
【表1】
【0039】
図5および表1を参照しながら、夏季・乗員2人の場合の空調制御装置5の動作を詳細に説明すると、外気入口22から102m/hの流量で空調ケース21内に導入された外気OAは、第1通路P1を通過して全熱交換器34に導入される。また、内気入口23から200m/hの流量で空調ケース21内に導入された内気RAは、第2通路P2を通過した後に内気熱交換調整ダンパ34Aで2方向に分けられ、102m/hの流量の内気RA2-1が全熱交換器34に導入されるとともに、98m/hの流量の内気RA2-2が蒸発器32に送られる(図5)。
【0040】
全熱交換器34では、同じの流量(102m/h)で導入された外気OAと内気RA2-1との間で全熱(温度および湿度)が交換される。本実施形態における全熱交換の効率は50%である。このような全熱交換により、外気OAの温度および絶対湿度が低下して、温度が30℃、相対湿度が51.4%、絶対湿度が0.0137kg/kgの状態にある給気SA(表1)が、全熱交換器34から吹き出されて蒸発器32に送られる。また、上記全熱交換により、内気RA2-1の温度および絶対湿度が上昇して、温度が30℃、相対湿度が51.4%、絶対湿度が0.0137kg/kgの状態にある排気EA(表1)が、全熱交換器34から排気口30および排気ダクト30Aを通って車室外に排出される。
【0041】
したがって、蒸発器32には、全熱交換器34から102m/hの流量で送られてくる給気SAと、第2通路P2から98m/hの流量で送られてくる内気RA2-2とが混合された状態で導入される(図5)。具体的には、状態の異なる給気SAおよび内気RA2-2が混合されることで、温度が27.5℃、相対湿度が42.8%、絶対湿度が0.0098kg/kgの状態にある空気CA1(表1)が蒸発器32に導入される。蒸発器32に導入される空気CA1の流量は200m/hとなる。そして、空気CA1は、蒸発器32で冷却された後にバイパス通路Bを通過してフェイス出口25から空調風CA2として吹き出される。本実施形態では、温度が5℃、相対湿度が100%、絶対湿度が0.0054kg/kgの状態にある空調風CA2(表1)が、フェイス出口25およびフェイスダクト25Aを介して車室内の乗員の上半身に向けて吹き出される。
【0042】
上記のように全熱交換器34を利用して外気導入および内気排出を行った場合、蒸発器32に導入される空気CA1の比エンタルピーは52.7kJ/kgとなる(表1の全熱交換器:有)。一方、同様な条件の下で全熱交換器34を設けずに外気導入および内気排出を行った場合に、蒸発器32に導入される空気CA1は、温度が30℃、相対湿度が51.4%、絶対湿度が0.0137kg/kg、比エンタルピーが65.2kJ/kgとなる(表1の全熱交換器:無)。フェイス出口25から前述した状態で吹き出される空調風CA2の比エンタルピーは18.6kJ/kgである(表1)。これらの値を用いて全熱交換器34による省エネルギー効果を計算すると、{1-(52.7-18.6)/(65.2-18.6)}=1-(34.1/46.6)=26.8%となる。
【0043】
また、本実施形態による車両用空調装置1では、ブロアファン31の上流側が第1および第2通路P1,P2の双方とも自由空間(外気入口22、内気入口23)からの吸込みとなっている。さらに、ブロアファン31に導入された外気および内気の流れも双方ともに一方向になっている。このため、上述した従来技術と比べてブロアファン31を効率良く駆動することができる。したがって、車両用空調装置1によれば、空調ケース21内の空気の送風効率を向上させつつ、外気導入および内気排出による熱損失を低減して、冷房時の消費電力を効果的に抑制することが可能になる。なお、本実施形態では、全熱交換器34に導入される外気OAと内気RA2-1を同じ流量としたが、外気OAに比較して内気RA2-1の流量を若干量減らしてもよい。この場合、外気OAおよび内気RA2-1の差分量は車両後部の換気口から排出されることになる。ただし、外気OAに比較して内気RA2-1の流量を増やすことは、車両の隙間から外気を車室内に引き込むこととなり、それは蒸発器32を通らず冷却されないので避ける必要がある。
【0044】
(夏季・乗員4人の場合)
図6は、夏季・乗員4人の場合の空気の流れを示している。本実施形態による車両用空調装置1では、空調制御装置5が、座席重量センサ73からの情報を基に乗員4人を判断すると、51m/h×4=204m/hの換気量で外気導入および内気排出が行われるように、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aにそれぞれ対応した電動アクチュエータ61,63,68を制御する。これにより、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aは、図6の実線に示す各位置にそれぞれ調整される。前述した乗員2人の場合との相違点は、乗員4人の場合、外気ドア22Bが外気入口22を開放した位置に調整され、内気熱交換調整ダンパ34Aが第2通路P2内の内気の流れ方向に直交する位置に調整されている点である。このような乗員4人に対応した制御により、外気OAが204m/hの流量で外気入口22から空調ケース21内に導入される。また、内気RA1が204m/hの流量で内気入口23から空調ケース21内に導入され、第2通路P2内を通過した内気RA2の全量(204m/h)が全熱交換器34に導入される。
【0045】
前述した乗員2人の場合と同様な温湿度状態の外気OAおよび内気RA1が空調ケース21内に導入される状況において、空調制御装置5の各部を流れる空気の状態は、次の表2に示すように変化する。
【表2】
【0046】
図6および表2を参照しながら、夏季・乗員4人の場合の空調制御装置5の動作を詳細に説明すると、前述した夏季・乗員2人の場合と異なり、全熱交換器34には、204m/hの流量の外気OAが導入されるとともに、204m/hの流量の内気RA2が導入され、外気OAと内気RA2との間で全熱(温度および湿度)が交換される(図6)。この全熱交換により、外気OAの温度および絶対湿度が低下するとともに、内気RA2-1の温度および絶対湿度が上昇する。全熱交換器34から蒸発器32に送られる給気SAの状態、および、全熱交換器34から排気口30および排気ダクト30Aを通って車室外に排出される排気EAの状態は、前述した夏季・乗員2人の場合と同様である(表2)。
【0047】
夏季・乗員4人の場合、蒸発器32には、全熱交換器34から204m/hの流量で送られてくる給気SAだけが導入される。つまり、温度が30℃、相対湿度が51.4%、絶対湿度が0.0137kg/kgの状態にある空気CA1(=SA)が、204m/hの流量で蒸発器32に導入される。そして、空気CA1は、蒸発器32で冷却された後にバイパス通路Bを通過してフェイス出口25から空調風CA2として吹き出される。フェイス出口25から吹き出される空調風CA2の状態も、前述した夏季・乗員2人の場合と同様である(表2)。これにより、夏季・乗員4人の場合についても、前述した夏季・乗員2人の場合と同様な省エネルギー効果が得られるようになる。
【0048】
本実施形態による空調制御装置5では、上述したような車室内の乗員数に応じた換気(外気導入および内気排出)が冷房時に行われるのに加えて、空調制御装置5により、CO濃度センサ74で検出される車室内のCO濃度が監視され、該CO濃度が基準値以下となるように、乗員数に応じた換気量が補正制御される。上記基準値は、乗員に害を与えることがないCO濃度の上限値として空調制御装置5に予め定められており、例えば1100ppm等に設定されている。つまり、空調制御装置5は、CO濃度センサ74で検出される車室内のCO濃度が基準値に近づくか、或いは基準値を上回った場合に、前述した乗員一人当たりの換気量の制御目標値を増加させる補正を行うことで、車室内のCO濃度が基準値以下に制御された状態を実現する。
【0049】
ところで、蒸発器32を含む冷媒回路(冷凍サイクル)の冷媒としてCOが使用されている場合、冷媒回路の異常等により冷媒漏れが発生すると、上記換気量の補正制御が限界に達して、車室内のCO濃度が基準値を大幅に上回ってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、CO濃度センサ74の検出される車室内のCO濃度が所定の閾値(>基準値)を超えた場合に、空調制御装置5が、冷媒漏れの発生を推定して、空調ケース21内の空気を強制的に車室外へ排出させる制御を行う。
【0050】
(冷媒漏れの場合)
図7は、冷媒漏れの場合の空気の流れを示している。上記のように車室内のCO濃度が閾値を超えて冷媒漏れの発生が推定された場合、空調制御装置5は、まず、吹出口モードが閉塞モードとなるように、フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27にそれぞれ対応した電動アクチュエータ64,65,66を制御する。これにより、図7の実線に示すように、フェイスドア25Bは、フェイス出口25を閉塞した位置に調整され、フットドア26Bは、フット出口26を閉塞した位置に調整され、出口切替ドア27は、デフロスタ出口24側に最も近づいた位置に調整される。
【0051】
そして、空調制御装置5は、外気入口22から導入される外気OAだけが第1通路P1を流れ、空調ケース21内を循環して排気口30から車室外に排出されるように、外気ドア22B、内気ドア23Bおよび内気熱交換調整ダンパ34Aにそれぞれ対応した電動アクチュエータ61,62,68を制御する。これにより、図7の実線に示すように、外気ドア22Bは、外気入口22を全開にした位置に調整され、内気ドア23Bは、内気入口23を閉塞した位置に調整される。また、内気熱交換調整ダンパ34Aは、蒸発器32の側から全熱交換器34の側へ空気を送風可能な状態となるように制御される。具体的には、内気熱交換調整ダンパ34Aは、第2通路P2内の空気の流れ方向に対して略45°傾斜した位置に調整され、前述した風量割合が略1対1に制御される。なお、内気熱交換調整ダンパ34Aの風量割合は概ね1対1であればよく厳密に1対1である必要はない。
【0052】
上記のような冷媒漏れに対応した制御により、外気入口22から導入された外気OAは、第1通路P1、全熱交換器34、蒸発器32およびヒータコア33を順に通過する。そして、出口切替ドア27の手前で流れ方向が反転し、ヒータコア33、蒸発器32、内気熱交換調整ダンパ34Aおよび全熱交換器34を順に通過して、排気口30から車室外に排出される。このとき、冷媒回路の異常等により空調ケース21内に漏れ出した冷媒(CO)も、空調ケース21内を循環する外気OAと一緒に車室外に排出される。これにより、冷媒漏れに起因した車室内のCO濃度の上昇を防ぐことができる。
【0053】
なお、上記のような冷媒漏れに対応した空調ケース21内の強制的な換気のための制御は、CO以外の冷媒(例えば、炭化水素など)が蒸発器32を含む冷媒回路(冷凍サイクル)に使用されている場合にも有効である。この場合、空調ケース21内に取り付けた冷媒漏れセンサの検知信号、或いは冷凍サイクルの異常を知らせる信号が空調制御装置5に与えられたときに、空調ケース21内の強制的な換気が行われるようにすればよい。
【0054】
次に、冬季における車両用空調装置1の動作について説明する。
一般に、外気温が低くなる冬季などにおいて、吸込口モードを内気モード(内気循環)にして暖房機能を使用すると、内気の絶対湿度が外気の絶対湿度に対して比較的大きくなるため車両の窓ガラスに結露が生じ易くなる。この暖房時の結露による窓ガラスの曇りを防ぐためには、車室内に外気を導入するのが有効であるが、外気導入による熱損失が課題となる。そこで、本実施形態による車両用空調装置1は、上述した冷房時と同様な車室内のCO濃度の上昇を防ぐための換気量を確保しつつ、外気の導入量を窓ガラスが曇らない程度の最小限の範囲に制御することで、外気導入による熱損失を低減して暖房時の消費電力を抑制できるようにしている。
【0055】
具体的に、車両用空調装置1では、ヒータコア33が作動して(蒸発器32は作動せず)暖房動作が開始されると、暖房動作の開始とともに若しくは所定の待機時間が経過した後に、空調制御装置5は、座席重量センサ73で検出される各座席の重量の変化を基に車室内の乗員数を判断する。また、空調制御装置5は、温度センサ群71および湿度センサ群72のうちで窓ガラス近傍に設置された温度センサおよび湿度センサの各検出値を用いて、窓ガラス近傍の空気の露点温度を演算する。そして、空調制御装置5は、車室内の乗員数に応じた換気(外気導入および内気排出)が行われ、かつ、露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低くなるように、車両用空調装置1の各部を制御する。なお、暖房時、吹出口モードはフットモード等に設定される。
【0056】
(冬季・乗員2人で結露の可能性が低い場合)
図8は、冬季・乗員2人で結露の可能性が低い場合の空気の流れを示している。本実施形態による車両用空調装置1では、空調制御装置5が、座席重量センサ73からの情報を基に乗員2人を判断するとともに、演算した露点温度が窓ガラスの表面温度よりも十分に低く結露しないと判断すると、上述した夏季・乗員2人の場合と同様に、51m/h×2=102m/hの換気量で外気導入および内気排出が行われるように、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aにそれぞれ対応した電動アクチュエータ61,63,68を制御する。これにより、図8の実線に示すように、外気ドア22Bは、外気入口22から導入される外気OAの流量を102m/hとする中間位置に調整され、内外気ドア28は、連絡通路P12を閉塞した位置に調整され、内気熱交換調整ダンパ34Aは、第2通路P2を流れる内気のうち、全熱交換器34に導入する内気RA2-1の流量を102m/hとし、蒸発器32を介してヒータコア33に送る内気RA2-2の流量を98m/hとする中間位置に調整される。
【0057】
ここで、外気および内気の各状態の具体的な一例として、温度が5℃、相対湿度が50%、絶対湿度が0.0027kg/kgの状態にある外気OAが、外気入口22から空調ケース21内に導入されるとともに、温度が25℃、相対湿度が30%、絶対湿度が0.0059kg/kgの状態にある内気(還気)RA1が、内気入口23から空調ケース21内に導入される状況を想定する。このような状況において、空調制御装置5の各部を流れる空気の状態は、次の表3に示すように変化する。
【表3】
【0058】
図8および表3を参照しながら、冬季・乗員2人で結露の可能性が低い場合の空調制御装置5の動作を詳細に説明すると、外気入口22から102m/hの流量で空調ケース21内に導入された外気OAは、上述した夏季・乗員2人の場合と同様に、第1通路P1を通過して全熱交換器34に導入される。また、内気入口23から200m/hの流量で空調ケース21内に導入された内気RAは、第2通路P2を通過した後に内気熱交換調整ダンパ34Aで2方向に分けられ、102m/hの流量の内気RA2-1が全熱交換器34に導入されるとともに、98m/hの流量の内気RA2-2が蒸発器32を介してヒータコア33に送られる(図8)。
【0059】
全熱交換器34では、上述した夏季・乗員2人の場合と同様に、同じの流量(102m/h)で導入された外気OAと内気RA2-1との間で全熱(温度および湿度)が交換される。これにより、外気OAの温度および絶対湿度が上昇して、温度が15℃、相対湿度が40.8%、絶対湿度が0.0043kg/kgの状態にある給気SA(表3)が、全熱交換器34から吹き出され、蒸発器32を介してヒータコア33に送られる。また、内気RA2-1の温度および絶対湿度が低下して、温度が15℃、相対湿度が40.8%、絶対湿度が0.0043kg/kgの状態にある排気EA(表3)が、全熱交換器34から排気口30および排気ダクト30Aを通って車室外に排出される。
【0060】
したがって、ヒータコア33には、全熱交換器34から102m/hの流量で送られてくる給気SAと、第2通路P2から98m/hの流量で送られてくる内気RA2-2とが混合された状態で蒸発器32を介して導入される(図8)。具体的には、状態の異なる給気SAおよび内気RA2-2が混合されることで、温度が20℃、相対湿度が35.2%、絶対湿度が0.0051kg/kgの状態にある空気CA1(表3)が蒸発器32を介してヒータコア33に導入される。ヒータコア33に導入される空気CA1の流量は200m/hとなる。そして、ヒータコア33で加熱された空気CA1はフット出口26から空調風CA2として吹き出される。本実施形態では、温度が50℃、相対湿度が6.7%、絶対湿度が0.0051kg/kgの状態にある空調風CA2(表3)が、フット出口26およびフットダクト26Aを介して車室内の乗員の足元に向けて吹き出される。このような暖房時の車室内における窓ガラス近傍の空気の露点温度は4.2℃となり、外気温の5℃よりも低いので、窓ガラスの曇りを防ぐことができる。
【0061】
上記のように全熱交換器34を利用して外気導入および内気排出を行った場合、蒸発器32を介してヒータコア33に導入される空気CA1の比エンタルピーは33.1kJ/kgとなり、フット出口26から前述した状態で吹き出される空調風CA2の比エンタルピーは63.5kJ/kgとなる(表3の全熱交換器:有)。一方、同様な条件の下で全熱交換器34を設けずに外気導入および内気排出を行った場合に、蒸発器32を介してヒータコア33に導入される空気CA1の比エンタルピーは26kJ/kgとなり、フット出口26から前述した状態で吹き出される空調風CA2の比エンタルピーは61.5kJ/kgとなる(表3の全熱交換器:無)。これらの値を用いて全熱交換器34による省エネルギー効果を計算すると、{1-(63.5-33.1)/(61.5-26)}=1-(30.4/35.5)=14.4%となる。
【0062】
(冬季・乗員4人で結露の可能性が低い場合)
図9は、冬季・乗員4人で結露の可能性が低い場合の空気の流れを示している。本実施形態による車両用空調装置1では、空調制御装置5が、座席重量センサ73からの情報を基に乗員4人を判断するとともに、演算した露点温度が窓ガラスの表面温度よりも十分に低く結露しないと判断すると、上述した夏季・乗員4人の場合と同様に、51m/h×4=204m/hの換気量で外気導入および内気排出が行われるように、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aにそれぞれ対応した電動アクチュエータ61,63,68を制御する。これにより、外気ドア22B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aは、図9の実線に示す各位置にそれぞれ調整される。前述した冬季・乗員2人の場合との相違点は、乗員4人の場合、外気ドア22Bが外気入口22を開放した位置に調整され、内気熱交換調整ダンパ34Aが第2通路P2内の内気の流れ方向に直交する位置に調整されている点である。このような乗員4人に対応した制御により、外気OAが204m/hの流量で外気入口22から空調ケース21内に導入される。また、内気RA1が204m/hの流量で内気入口23から空調ケース21内に導入され、第2通路P2内を通過した内気RA2の全量(204m/h)が全熱交換器34に導入される。
【0063】
前述した冬季・乗員2人の場合と同様な温湿度状態の外気OAおよび内気RA1が空調ケース21内に導入される状況において、空調制御装置5の各部を流れる空気の状態は、次の表4に示すように変化する。
【表4】
【0064】
図9および表4を参照しながら、冬季・乗員4人の場合の空調制御装置5の動作を詳細に説明すると、前述した冬季・乗員2人の場合と異なり、全熱交換器34には、204m/hの流量の外気OAが導入されるとともに、204m/hの流量の内気RA2が導入され、外気OAと内気RA2との間で全熱(温度および湿度)が交換される(図9)。この全熱交換により、外気OAの温度および絶対湿度が上昇するとともに、内気RA2-1の温度および絶対湿度が低下する。全熱交換器34から蒸発器32を介してヒータコア33に送られる給気SAの状態、および、全熱交換器34から排気口30および排気ダクト30Aを通って車室外に排出される排気EAの状態は、前述した冬季・乗員2人の場合と同様である(表4)。
【0065】
冬季・乗員4人の場合、ヒータコア33には、全熱交換器34から204m/hの流量で送られてくる給気SAだけが蒸発器32を介して導入される。つまり、温度が15℃、相対湿度が40.8%、絶対湿度が0.0043kg/kgの状態にある空気CA1(=SA)が、204m/hの流量で蒸発器32を介してヒータコア33に導入される。そして、空気CA1は、ヒータコア33で加熱されてフット出口26から空調風CA2として吹き出される。フット出口26から吹き出される空調風CA2の状態は、温度が50℃、相対湿度が5.6%、絶対湿度が0.0043kg/kgとなる(表4)。このような暖房時の車室内における窓ガラス近傍の空気の露点温度は1.8℃となり、外気温の5℃よりも低いので、窓ガラスの曇りを防ぐことができる。また、冬季・乗員4人の場合についても、前述した冬季・乗員2人の場合と同様な省エネルギー効果を得ることが可能である。
【0066】
上記のように本実施形態による車両用空調装置1では、暖房時に結露の可能性が低い場合、全熱交換器34に導入される外気および内気の各流量を乗員数に応じた値に維持した状態で、外気および内気の間での全熱交換を行いながら車室内の換気(外気導入および内気排出)が実施される。一方、結露の可能性が高まる、すなわち、空調制御装置5で演算される露点温度が窓ガラスの表面温度に近づいて結露が発生しそうな場合には、全熱交換器34に導入される内気の流量を乗員数に応じた値から徐々に減らし、最終的に全熱交換器34への内気の導入量が零となるように、内気熱交換調整ダンパ34Aの位置などが調整される。これにより、露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低い状態が保たれるようになり、窓ガラスの曇りを防ぐことが可能になる。ここでは、結露の可能性が高い場合の一例として、冬季・乗員2人における車両用空調装置1の動作を具体的に説明する。
【0067】
(冬季・乗員2人で結露の可能性が高い場合)
図10は、冬季・乗員2人で結露の可能性が高い場合の空気の流れを示している。前述したような乗員2人に応じた換気量で暖房動作する車両用空調装置1において、空調制御装置5で演算される露点温度が窓ガラスの表面温度に近づいて結露の可能性が高まった状況になると、空調制御装置5は、全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が102m/hから0m/hに徐々に減少するように、内気熱交換調整ダンパ34Aの位置を調整する。このとき、全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量の減少に合わせて、内気入口23から導入される内気RAの流量が200m/hから98m/hに徐々に減少するように、内気ドア23Bの位置も調整される。
【0068】
このように全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が徐々に減少することにより、全熱交換器34における外気および内気の間での潜熱の交換量が減少するので、車室内側に送られる空気の絶対湿度が低下するようになる。このような絶対湿度の低下した空気がヒータコア33で加熱されてフット出口26から車室内に吹き出されることにより、車室内における窓ガラス近傍の空気の露点温度も低下するため、該露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低い状態を保ちやすくなる。
【0069】
具体的に、前述の表3に例示したような空気の状態において、全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が0m/hまで減らされた場合、フット出口26から吹き出される空気CA2の状態は、温度が50℃、相対湿度が5.6%、絶対湿度が0.0043kg/kgとなる。このときの窓ガラス近傍の空気の露点温度は1.8℃となり、前述した全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が102m/hのときの露点温度(=4.2℃)よりも低くなる。
【0070】
上記のような全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量を減少させる制御を行っても、露点温度が窓ガラスの表面温度に近づいてしまうような結露の可能性が更に高い状況においては、内気入口23から導入される内気RA1の流量を徐々に減らし、最終的に内気入口23からの内気の導入量が零となるように、内気ドア23Bの位置などが調整される。すなわち、空調制御装置5は、全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が零になっても露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低くならない場合に、外気入口22から導入される外気OAの流量に対する内気入口23から導入される内気RA1の流量の割合(内気導入比率)が減少するように、外気ドア22B、内気ドア23Bおよび内外気ドア28の各位置を制御する。
【0071】
(冬季・乗員2人で結露の可能性が更に高い場合)
図11は、冬季・乗員2人で結露の可能性が更に高い場合の空気の流れを示している。具体的に、結露の可能性が更に高まった状況において、空調制御装置5は、内気入口23から導入される内気RA1の流量が98m/hから0m/hに徐々に減少するように、内気ドア23Bの位置を調整する。このとき、内気入口23から導入される内気RA1の流量の減少に対応させて、外気入口22から導入される外気OAの流量が102m/hから200m/hに徐々に増加するように、外気ドア22Bの位置も調整される。そして、内気入口23から導入される内気RA1の流量が0m/hになると、内外気ドア28が連絡通路P12を開放する位置に調整される。
【0072】
このように内気入口23から導入される内気RA1の流量が徐々に減少し、外気入口22から導入される外気OAの流量が徐々に増加することにより、絶対湿度が内気RA1よりも低い外気OAの導入比率が増加するので、車室内側に送られる空気の絶対湿度が低下するようになる。このような絶対湿度の低下した空気がヒータコア33で加熱されてフット出口26から車室内に吹き出されることにより、車室内における窓ガラス近傍の空気の露点温度も低下するため、該露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低い状態を更に保ちやすくなる。
【0073】
具体的に、前述の表3に例示したような空気の状態において、全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が0m/hまで減らされ、かつ、内気入口23から導入される内気RA1の流量も0m/hまで減らされた場合、フット出口26から吹き出される空気CA2の状態は、温度が50℃、相対湿度が3.5%、絶対湿度が0.0027kg/kgとなる。このときの窓ガラス近傍の空気の露点温度は-4.0℃まで低下する。なお、上記のような内気入口23から導入される内気RAの流量を減少させる制御を行っても、露点温度が窓ガラスの表面温度に近づいてしまうような場合には、吹出口モードを、フットモードからデフロスタ・フットモードまたはデフロスタモードに切り替えるのがよい。
【0074】
以上説明したように本実施形態による車両用空調装置1では、ブロアファン31と蒸発器32との間に全熱交換器34が配置され、第1通路P1内を流れる外気OAと、第2通路P2内を流れる内気の少なくとも一部(RA2-1)が導入され、該導入された外気OAおよび内気RA2-1の間で全熱交換を行いながら、外気導入および内気排出による車室内の換気が実施される。このような車両用空調装置1は、ブロアファン31の上流側が第1および第2通路P1,P2の双方とも自由空間(外気入口22、内気入口23)からの吸込みとなり、かつ、ブロアファン31に導入された外気および内気の流れも双方ともに一方向になっている。このため、上述した従来技術と比べてブロアファン31を効率良く駆動することができる。したがって、車両用空調装置1によれば、空調ケース21内の空気の送風効率を向上させつつ、外気導入および内気排出による熱損失を全熱交換器34により低減することができ、空調動作時の消費電力を抑制することが可能になる。
【0075】
また、本実施形態による車両用空調装置1では、空調制御装置5が、車室内の乗員数から推定可能な車室内のCO濃度に応じて、外気ドア22B、内気ドア23B、内外気ドア28および内気熱交換調整ダンパ34Aの各位置を調整して、全熱交換器34に導入される外気OAおよび内気RA2-1の各流量を制御するように構成されている。このように全熱交換器34における外気OAおよび内気RA2-1の間での全熱(温度および湿度)の交換量が車室内のCO濃度(乗員数)に応じて制御されることにより、車室内の換気(外気導入および内気排出)を効率的に行うことができ、空調動作時の消費電力を効果的に抑制することが可能になる。
【0076】
さらに、本実施形態による車両用空調装置1では、空調制御装置5が、車室内のCO濃度が予め定めた基準値以下となるように、外気ドア22Bおよび内気ドア23Bの開閉状態が制御されるとともに、外気ドア22Bの開度に比例させて内気熱交換調整ダンパ34Aにおける全熱交換器34側への内気の導入量を制御するように構成されている。これにより、外気OAおよび内気RA2-1の間での全熱交換を効率良く行いながら、CO濃度が基準値以下に保たれた良好な車室内環境を実現することができる。特に、冷媒回路の異常等により冷媒漏れが発生した場合に、空調ケース21内の空気を強制的に車室外へ排出させる制御を行うようにすれば、冷媒漏れに起因した車室内環境の悪化を防いで乗員の安全を確保することが可能になる。
【0077】
加えて、本実施形態による車両用空調装置1では、暖房時、空調制御装置5が、窓ガラスの近傍の温度および湿度を用いて露点温度を演算し、その露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低くなるように、全熱交換器34に導入される外気OAおよび内気RA2-1の各流量を制御するように構成されている。窓ガラスの表面温度および露点温度に基づいて外気および内気の導入量が制御されることにより、窓ガラスの結露を防ぐことが可能になり、窓晴れ性を高めることができる。さらに、空調制御装置5は、全熱交換器34に導入される内気RA2-1の流量が零になっても露点温度が窓ガラスの表面温度よりも低くならない場合、内気導入比率が減少するように、外気ドア22B、内気ドア23Bおよび内外気ドア28の各位置を制御するように構成されている。これにより、窓ガラスの結露を確実に防ぐことができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、全熱交換器34を用いて外気OAおよび内気RA2-1の間で全熱(温度および湿度)が交換される一例を説明したが、全熱交換器34に代えて顕熱交換器を適用するようにしてもよい。顕熱交換器を適用した場合、顕熱交換器に導入される外気および内気の間で顕熱(温度)が交換される。この場合にも、外気導入および内気排出による熱損失を低減することができ、空調動作時の消費電力を抑制することが可能になる。
【0079】
また、上述した実施形態では、冷却用熱交換部として蒸発器32が使用され、暖房用熱交換部としてヒータコア33が使用される場合を説明したが、例えば、蒸発器32に代えて、クーラントの循環路に配置されたクーラーコアを使用してもよい。このクーラーコアには、冷却されたクーラントが流通している。また、ヒータコア33に代えて、上述した冷媒回路(冷凍サイクル)と同様な冷媒が循環する冷媒循環路に配置された凝縮器を使用してもよい。この凝縮器には、高温の冷媒が流通している。
【符号の説明】
【0080】
1…車両用空調装置、2…空調ユニット、5…空調制御装置、21…空調ケース、22…外気入口、23…内気入口、24…デフロスタ出口、25…フェイス出口、26…フット出口、28…内外気ドア、29…仕切板、30…排気口、31…ブロアファン(送風部)、32…蒸発器(冷却用熱交換部)、33…ヒータコア(加熱用熱交換部)、33A…エアミックスドア、34…全熱交換器(内外気熱交換部)、34A…内気熱交換調整ダンパ、61~68…電動アクチュエータ、71…温度センサ群、72…湿度センサ群、73…座席重量センサ、74…CO濃度センサ、75…操作パネル、B…バイパス通路、P1…第1通路、P2…第2通路、P12…連絡通路、OA…外気、RA…内気(還気)、SA…給気、EA…排気、CA…空調風
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11