IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167827
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241127BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241127BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241127BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20241127BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241127BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241127BHJP
   C09K 3/16 20060101ALN20241127BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/29
C09J133/00
C09J7/40
B32B7/025
B32B27/00 M
C09K3/16 102J
C09K3/16 102H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084177
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信幸
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 誠司
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25
4F100AK25C
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AK55
4F100AK55B
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA22
4F100CA22B
4F100CB05
4F100CB05C
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JG01
4F100JG01D
4F100JG03
4F100JG03B
4F100JK06
4F100JL13
4F100JL13C
4F100JL14
4F100JL14D
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CD02
4J004DB02
4J004FA04
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040EF282
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA09
4J040NA17
4J040PA08
(57)【要約】
【課題】剥離帯電が抑制された粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の粘着シートは、基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備える粘着シートであって、前記粘着剤層の一方の面には前記帯電防止層aが設けられており、他方の面には前記剥離フィルムが設けられており、前記帯電防止層aの、前記粘着剤層とは逆側の面には前記基材が設けられており、前記帯電防止層aは、導電性ポリマーを含有し、前記帯電防止層の表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備える粘着シートであって、
前記粘着剤層の一方の面には前記帯電防止層aが設けられており、他方の面には前記剥離フィルムが設けられており、
前記帯電防止層aの、前記粘着剤層とは逆側の面には前記基材が設けられており、
前記帯電防止層aは、導電性ポリマーを含有し、
前記帯電防止層aの表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.である、粘着シート。
【請求項2】
前記剥離フィルムを前記粘着剤層から剥がす際に発生する剥離帯電量が-0.2~0.2kVである、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記剥離フィルムには剥離層が形成されており、
前記剥離層の表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、アクリル重合体を含有する、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記基材は、樹脂フィルムである、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、例えば、部材(被着体)どうしを貼り合わせる用途等に使用されており、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、あるいはタッチパネル等の入力装置等の用途など、種々の分野において広く利用されている。
【0003】
粘着シートは通常、粘着剤層を備えるものであるが、斯かる粘着剤層が露出している状態では保管や運搬時に粘着剤層の劣化が起こる場合があり、あるいは他の材料に貼りつく場合がある。このため、粘着剤層を剥離フィルムで保護した状態で粘着シートを保管及び運搬等を行うことが一般的である。剥離フィルムは剥離層を備えて形成されるフィルムであり、いわゆる、セパレーターと称されることもある。
【0004】
剥離フィルムを備える粘着シートは、剥離フィルムを剥がして粘着剤層を露出させ、斯かる粘着剤層を対象部材(被着体)に貼り合わせる。粘着シートから剥離フィルムを剥がすと、剥離帯電が生じることがあり、粘着剤層が帯電することがある。この帯電により、粘着剤層に異物が付着しやすくなり、また、帯電した粘着剤層を対象部材に貼り合わせると、対象部材の性能を低下させる可能性もある。このため、粘着シートの剥離帯電を抑制することで、粘着剤層を帯電しにくくすることが求められる。この観点から、例えば、特許文献1には、シリカ等の非導電性金属酸化物微粒子を含有する帯電防止層を、透明支持体上に形成された粘着剤層上に設けることにより、帯電防止性能を高めた保護フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-087434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、金属酸化物微粒子を用いて帯電防止性能を向上させた場合、逆にフィルムの透明性が低下しやすいので、透明性が求められるような光学用途等の分野では、課題を残すものであった。また、特許文献1に開示の技術は、帯電防止層が設けられた透明支持体の帯電防止性能を高めることができるものの、粘着剤層側の帯電防止性能としては十分ではなかった。このため、例えば、粘着剤層に剥離フィルムが貼り合わせられた粘着シートにあっては、剥離フィルムを剥がす際に剥離帯電が起こりやすいものであった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、剥離帯電が抑制された粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の帯電防止層を所定の位置に設けることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備える粘着シートであって、
前記粘着剤層の一方の面には前記帯電防止層aが設けられており、他方の面には前記剥離フィルムが設けられており、
前記帯電防止層aの、前記粘着剤層とは逆側の面には前記基材が設けられており、
前記帯電防止層aは、導電性ポリマーを含有し、
前記帯電防止層aの表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.である、粘着シート。
項2
前記剥離フィルムを前記粘着剤層から剥がす際に発生する剥離帯電量が-0.2~0.2kVである、項1に記載の粘着シート。
項3
前記剥離フィルムには剥離層が形成されており、
前記剥離層の表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.である、項1又は2に記載の粘着シート。
項4
前記粘着剤層aは、アクリル重合体を含有する、項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
項5
前記基材は、樹脂フィルムである、項1~4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シートは剥離帯電が抑制されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本発明の粘着シートは、基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備える粘着シートであって、前記粘着剤層の一方の面には前記帯電防止層aが設けられており、他方の面には前記剥離フィルムが設けられており、前記帯電防止層aの、前記粘着剤層とは逆側の面には前記基材が設けられており、前記帯電防止層aは、導電性ポリマーを帯電防止成分として含有し、前記帯電防止層の表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.である。
【0013】
本発明の粘着シートは、基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備えることで、剥離フィルムを粘着剤層から剥離した際の剥離帯電が抑制される。しかも、本発明の粘着シートは、粘着力にも優れるものであり、透明性も高い。従って、本発明の粘着シートは、各種用途における保護フィルム及びサポートフィルム等に好適に使用することができ、とりわけ、光学用途に好適に使用することができる。
【0014】
基材
基材は本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層を支持するための部材である。基材の種類は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートに使用されている各種フィルムを広く適用することができる。中でも、基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0015】
樹脂フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなどが広く例示される。中でも樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0016】
基材は、透明であってもよく、半透明であってもよい。基材の厚みは特に限定されず、例えば、10~200μmとすることができる。
【0017】
粘着剤層
粘着剤層は、粘着シートに粘着性能を発揮させるための層である。粘着剤層の種類は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートに採用される粘着剤層を本発明でも広く採用することができる。例えば、粘着剤層はアクリル重合体を主成分とする層である。すなわち、前記粘着剤層は、アクリル重合体を含有することができる。
【0018】
アクリル重合体は架橋構造を有していることが好ましい。この場合、粘着シートの粘着力が高まりやすい。例えば、アクリル重合体は架橋性アクリル重合体が後記する架橋剤で架橋された構造を有することが好ましい。
【0019】
架橋性アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を有することができる。本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し構造単位(単量体単位ともいう)である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。アクリル重合体に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は1種を単独とすることができ、2種以上の単位を含むこともできる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル等が好ましい。
【0021】
架橋性アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の他、カルボキシ基含有単量体単位及びヒドロキシル基含有単量体単位からなる群より選ばれる1種以上の単位をさらに含むこともできる。この場合、架橋性アクリル重合体は、後記する架橋剤との反応により、粘着剤層において架橋構造を形成しやすくなる。
【0022】
カルボキシ基含有単量体単位は、カルボキシ基含有単量体によって形成される単量体単位である。カルボキシ基含有単量体は、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0023】
ヒドロキシル基含有単量体単位は、ヒドロキシル基含有単量体によって形成される単量体単位である。ヒドロキシ基含有アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
【0024】
架橋性アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位及びヒドロキシル基含有単量体単位含むことが好ましい。この場合、粘着剤層は高い透明性及び粘着力を有しやすく、また、剥離帯電も抑制されやすくなる。架橋性アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位及びヒドロキシル基含有単量体単位のみからなるものであってもよい。
【0025】
架橋性アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましく、また、99質量%以下含むことが好ましく、98質量%以下含むことがより好ましい。
【0026】
また、架橋性アクリル重合体は、前記ヒドロキシル基含有単量体単位を0.1質量%以上含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、0.8質量%以上含むことがさらに好ましく、1.0質量%以上含むことが特に好ましく、また、20質量%以下含むことが好ましく、15質量%以下含むことがより好ましく、10質量%以下含むことが特に好ましい。
【0027】
架橋性アクリル重合体の質量平均分子量は特に限定されず、例えば、30万以上、200万以下とすることができる。架橋性アクリル重合体の質量平均分子量は40万以上であることが好ましく、50万以上であることがより好ましく、また、180万以下であることが好ましく、160万以下であることがより好ましく、150万以下であることがさらに好ましく、130万以下であることが特に好ましい。
【0028】
架橋性アクリル重合体の質量平均分子量の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算で求めた値である。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μL
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工製)Mw=1320~2500000迄の10サンプルによる校正曲線を使用する。
【0029】
架橋性アクリル重合体は、例えば、公知の方法で製造することができ、例として、(メタ)アクリルモノマーの重合反応によって製造することができる。この場合、各種の重合方法を採用することができ、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0030】
粘着剤層は粘着剤組成物を用いて形成することができる。斯かる粘着剤組成物は、架橋性アクリル重合体を含むことができ、その他、架橋剤、溶剤等を含むことができる。架橋性アクリル重合体及び架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、架橋構造を有するアクリル重合体を含む層となる。
【0031】
架橋剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートを形成するために使用される架橋剤を広く挙げることができる。架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等を挙げることができる。粘着剤組成物は1種又は2種以上の架橋剤を含むことができる。
【0032】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物の市販品の例としては、綜研化学社の「E-AX」等が挙げられる。
【0033】
イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましく、また、6個以下であることが好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;が挙げられる。イソシアネート化合物は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。イソシアネート化合物の市販品の例としては、トリレンジイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「架橋剤N」等が挙げられる。
【0034】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、その含有割合は特に限定されない。例えば、粘着剤組成物は、前記架橋性アクリル重合体100重量部に対し、前記架橋剤を0.01質量部以上含有することが好ましく、0.1質量部以上含有することがより好ましく、0.3質量部以上含有することがさらに好ましく、また、10質量部以下含有することが好ましく、5質量部以下含有することがより好ましく、1質量部以下含有することがさらに好ましい。
【0035】
粘着剤組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。粘着剤組成物が溶剤を含むことで粘着剤組成物の塗工性が向上し、粘着剤層を形成しやすくなる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0036】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は特に限定されず、前記架橋性アクリル重合体100質量部に対し、25~500質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましい。加えて、粘着剤組成物の全質量に対する溶剤の含有割合は、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。粘着剤組成物は、1種又は2種以上の溶剤を含むことができる。
【0037】
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、架橋促進剤、架橋遅延剤ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0038】
ただし、粘着剤組成物は、帯電防止剤を含まないことが好ましい。すなわち、粘着剤層は、帯電防止剤を含まないことが好ましい。これにより、粘着剤層の粘着力が高まりやすい。
【0039】
粘着剤組成物を調製する方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着剤組成物の調製方法を広く採用することができる。
【0040】
粘着剤層は、粘着剤組成物を硬化することで形成することができる。すなわち、粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化物を含むことができる。斯かる硬化物は、前記架橋性アクリル重合体が架橋剤で架橋されてなる架橋構造体を含む。
【0041】
粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する方法(すなわち、粘着剤組成物の硬化方法)は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く採用することができる。中でも、粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、この塗膜を加熱する工程を含む製造方法により、粘着剤層を形成することが好ましい。粘着剤組成物に溶剤が含まれる場合は、前記加熱する工程で溶剤が除去されると同時に架橋性アクリル重合体と架橋剤の反応が進行して硬化物が形成される。
【0042】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、アプリケーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0043】
粘着剤組成物を塗工は、粘着剤層を形成する部位に直接行うことができる。従って、本発明の粘着シートでは、例えば、粘着剤組成物を基材上に形成された帯電防止層上に塗工することができ、あるいは、剥離フィルムの剥離層側の面に塗工することができる。
【0044】
粘着剤組成物の塗工後の厚みも特に制限されず、目的とする粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。
【0045】
塗膜を加熱する工程では、加熱温度は特に限定されず、例えば、50~150℃とすることが好ましい。この加熱により、硬化反応が進行すると共に粘着剤組成物中の溶剤等の揮発分は可能な限り除去される。加熱時間は、加熱温度、塗膜の厚み及び粘着剤組成物の溶剤の含有量によって適宜調節することができ、例えば、1~60分とすることができる。塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。また、加熱後は、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施すことが好ましい。エージング処理は、例えば、23℃で7日間静置して行うことができる。
【0046】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層は単層構造とすることができ、あるいは、単層の粘着剤層を複数積層した多層構造を有することもできる。粘着剤層の厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。例えば、粘着剤層の厚みは1~150μmとすることができ、3~100μmであることが好ましく、5~40μmであることがより好ましい。なお、粘着剤層の厚みとは、粘着剤層が多層の積層構造を有する場合は、各層の厚みの総合計を意味する。
【0047】
帯電防止層a
帯電防止層aは、粘着シートに帯電防止性能を付与するための層であって、少なくとも粘着剤層の一方の面に設けられる層である。特に本明細書において、帯電防止層aとは、粘着剤層と基材との間に配置されている帯電防止層を意味する。
【0048】
帯電防止層aは、導電性ポリマーを帯電防止成分として含有する層である。斯かる導電性ポリマーの種類は特に限定されず、例えば、公知の導電性ポリマーを広く挙げることができる。導電性ポリマーとしては、アニオン性を有するポリマー、カチオン性を有するポリマー、その他、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等のπ共役系を有するポリマーを挙げることができる。
【0049】
前記アニオン性を有するポリマーとしては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸等が挙げられる。アニオン性を有するポリマーは、例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩であってもよい。前記カチオン性を有するポリマーとしては、第四級アンモニウムカチオンを有するポリマーを挙げることができる。
【0050】
帯電防止層aに含まれる導電性ポリマーは、ポリスチレンスルホン酸を含むことが好ましい。帯電防止層に含まれる導電性ポリマーは、1種又は2種以上とすることができる。帯電防止層aは、導電性ポリマーのみで形成することもできる。
【0051】
導電性ポリマーの質量平均分子量は特に限定されず、例えば、公知の導電性ポリマーの質量平均分子量と同様とすることができ、具体的には、2000~100万、好ましくは5000~50万とすることができる。
【0052】
帯電防止層aの形成方法は特に限定されず、例えば、公知の帯電防止層の形成方法を広く採用することができる。例えば、導電性ポリマーを含む導電性組成物を用いて帯電防止層aを形成することができる。導電性組成物は、導電性ポリマーを含む限り、その種類は限定されず、例えば、導電性ポリマーの分散液又は溶液が挙げられる。この場合において、溶媒の種類は特に限定されず、水、炭素数1~3のアルコール化合物を挙げることができる。前記分散液又は溶液において、導電性ポリマーの濃度は特に限定されず、例えば、0.1~5.0質量%とすることができる。導電性組成物は、溶媒とともに又は溶媒に替えてその他の成分を含むことできる。
【0053】
前記導電性組成物を、例えば、前記基材に塗布することで、基材上に前記導電性組成物の塗膜を形成することができ、斯かる塗膜を帯電防止層aとして得ることができる。塗布の方法は特に限定されず、例えば、公知の塗布手段を広く採用することができる。塗膜を形成するにあたっては、適宜、加熱処理等を施すこともできる。
【0054】
帯電防止層aの厚みは所望の帯電防止効果が発揮される限り特に限定されず、例えば、0.1~2.0μmとすることができる。
【0055】
帯電防止層の表面電気抵抗は、1.0×10~1.0×1012Ω/sq.(すなわち、1.0×10Ω/sq.以上、1.0×1012Ω/sq.以下)である。帯電防止層の表面電気抵抗が1.0×10未満になると粘着剤層との密着性が低下しやすくなり、1.0×1012Ω/sq.を超過すると帯電が起こりやく、剥離帯電を抑制することが難しくなる。帯電防止層の表面電気抵抗は、1.2×10Ω/sq.以上であることが好ましく、また、1.0×1011Ω/sq.以下であることが好ましく、1.0×1010Ω/sq.以下であることがより好ましく、1.0×10Ω/sq.以下であることがさらに好ましい。
【0056】
剥離フィルム
剥離フィルムの種類は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートに使用されている剥離フィルムを広く適用することができる。例えば、フィルムの片面に剥離層が形成されてなる剥離性積層シートを剥離フィルムとして使用することができる。
【0057】
剥離フィルムを形成するためのフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等の各種樹脂フィルムを挙げることができる。前記剥離層は、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物で形成された層を挙げることができる。
【0058】
剥離フィルムの厚みは特に限定されず、例えば、38~100μmとすることができる。
【0059】
前記剥離フィルムには前記剥離層が形成されており、かつ、当該剥離層の表面電気抵抗が1.0×10~1.0×1012Ω/sq.(すなわち、1.0×10Ω/sq.以上、1.0×1012Ω/sq.以下)であることが好ましい。この場合、前記剥離フィルムを粘着シート(粘着剤層)から剥がした際に発生する剥離帯電量を特に小さくすることができる。前記剥離層の表面電気抵抗は、1×10Ω/sq.以上であることが好ましく、また、1×1011Ω/sq.以下であることが好ましい。
【0060】
剥離フィルムは帯電防止層を備えることができる。この場合、帯電防止層は、剥離フィルムにおいて、前記剥離層と前記フィルムとの間に設けることができ、あるいは、前記フィルムの前記剥離層とは逆側の面に設けることもできる。好ましくは帯電防止層が前記剥離層と前記フィルムとの間に設けられていることである。剥離フィルムが帯電防止層を備える場合、前記剥離フィルムを粘着シート(粘着剤層)から剥がした際に発生する剥離帯電量を特に小さくすることができ、また、剥離層の表面電気抵抗が上述した範囲となりやすい。
【0061】
剥離フィルムが帯電防止層を備える場合、斯かる帯電防止層の種類は特に限定されず、公知の帯電防止層を広く適用することができ、例えば、前述の帯電防止層aと同じ帯電防止層を剥離フィルムにも適用することができる。
【0062】
剥離フィルムは市販品から入手することもでき、例えば、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。また、帯電防止層を備える剥離フィルムの具体例としては、例えば、藤森工業製の「75E0010KFAS」を挙げることができる。
【0063】
粘着シート
本発明の粘着シートは、前述のように、前記粘着剤層の一方の面には前記帯電防止層aが、他方の面には前記剥離フィルムが設けられており、前記帯電防止層aの、前記粘着剤層とは逆側の面には前記基材が設けられている。すなわち、本発明の粘着シートは、基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとがこの順に積層されてなる積層構造を有する。本発明の粘着シートにおいて、剥離フィルムの剥離層側の面が、前記粘着剤層に直接貼り合わされる。
【0064】
本発明の粘着シートにおいて、基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとの各層の間には他の層が介在せずに、直接貼り合わされ得る。従って、例えば、粘着剤層は、一方の面が、前記帯電防止層aに直接貼り合わせられ、粘着剤層の他方の面は、剥離フィルムの剥離層に直接貼り合わせられている。また、前記帯電防止層aは前記基材上に直接設けられている。
【0065】
本発明の粘着シートは、基材の粘着剤層と逆側の面にも帯電防止層が設けられていてもよい。すなわち、基材は両面に帯電防止層が設けられていてもよい。この場合、本発明の粘着シートにおいて、前記剥離フィルムを前記粘着剤層から剥がす際に発生する剥離帯電量をより小さくすることができる。
【0066】
上記のように、基材の粘着剤層と逆側の面にも帯電防止層が設けられている場合(すなわち、基材の帯電防止層aと逆側の面にも帯電防止層が設けられている場合)、当該帯電防止層は、帯電防止層aと同一であってもよいし、帯電防止層aとは異なる帯電防止層であってもよい。好ましくは、基材の両面の帯電防止層の種類が同一であることである。従って、基材の両面に帯電防止層が設けられている場合は、両帯電防止層は、帯電防止層aであることが好ましい。基材の両面の帯電防止層は、ポリスチレンスルホン酸を含有する層であることが好ましい。基材の両面に設けられている帯電防止層の厚みは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
本発明の粘着シートの層構成の一実施形態として、基材/帯電防止層a/粘着剤層/剥離フィルムが挙げられる。本発明の粘着シートの層構成の他の一実施形態として、帯電防止層a/基材/帯電防止層a/粘着剤層/剥離フィルムが挙げられる。いずれの実施形態においても剥離フィルムは帯電防止層を有していてもよく、この場合、剥離フィルムにおける剥離層とフィルムとの間に帯電防止層がa形成されていることが好ましい。また、いずれの実施形態においても剥離層と粘着剤層とが貼り合わされるものである。
【0068】
本発明の粘着シートは、基材と、帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備えることで、前記剥離フィルムを前記粘着剤層から剥がす際に発生する剥離帯電量が小さいものであり、すなわち、剥離帯電が起こりにくいものである。粘着シートから剥離フィルムを剥がしても剥離帯電が生じにくいことで、粘着剤層が帯電しにくく、このため、粘着剤層への異物の付着が抑制され、また、粘着剤層を対象部材(被着体)に貼り合わせても対象部材の性能低下を抑制しやすいものである。しかも、本発明の粘着シートは、従来のような金属酸化物微粒子等の帯電防止剤を含まずとも、剥離帯電を抑制することができるので、粘着シートの透明性にも優れるものであり、また、粘着シートから帯電防止剤がブリードアウトするというおそれもない。
【0069】
本発明の粘着シートは、剥離フィルムを前記粘着剤層から剥がす際に発生する剥離帯電量が、-0.2~0.2kV(すなわち、-0.2kV以上、0.2kV以下)であることが好ましい。これによって、本発明の粘着シートは、剥離フィルムを前記粘着剤層から剥がす際に剥離帯電がより生じにくいものとなる。
【0070】
本発明の粘着シートは、剥離帯電が抑制され、また、透明性に優れ、粘着力にも優れるので、各種用途の適用することが可能であり、とりわけ光学用部材の保護フィルム、サポートフィルム等の使用に好適である。
【0071】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0073】
(製造例1-1;アクリル重合体A)
アクリル酸ブチル(BA)及びヒドロキシルエチルアクリレート(HEA)の質量比が95:5である混合モノマーを、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が30質量%である架橋性アクリル重合体Aの溶液を得た。架橋性アクリル重合体Aの質量平均分子量(Mw)は50万であった。
【0074】
(製造例1-2;アクリル重合体B)
混合モノマーを、BA及びHEAの質量比が85:15である混合モノマーに変更したこと以外は製造例1-1と同様の方法で固形分濃度が30質量%であるMw50万の架橋性アクリル重合体Bの溶液を得た。
【0075】
(製造例1-3;アクリル重合体C)
混合モノマーを、BA及びHEAの質量比が70:30である混合モノマーに変更したこと以外は製造例1-1と同様の方法で固形分濃度が30質量%であるMw50万の架橋性アクリル重合体Cの溶液を得た。
【0076】
(製造例2)
製造例1で得た100質量部の架橋性アクリル重合体Aに対して、エポキシ架橋剤として綜研化学社製「E-AX」を0.5質量部とを含む原料に、当該原料の濃度が25質量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物を調製した。
【0077】
(製造例3)
製造例1で得た100質量部のアクリル重合体Aに対して、エポキシ架橋剤として綜研化学社製「E-AX」を0.5質量部と、帯電防止剤としてコルコート社製「コルコートPS169」を1.0質量部とを含む原料に、当該原料の濃度が25質量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物を調製した。
【0078】
(実施例1)
基材である50μmポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「U403」)の片面の全領域に、1.0質量%濃度のポリスチレンスルホン酸の水溶液を塗布し、100℃で処理することで、厚さ0.5μmの帯電防止層aを形成した。このように得た片面に帯電防止層aが形成された基材を「基材A」とした。製造例2で得た粘着剤組成物を、前記基材Aの帯電防止層a上に塗布し、アプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃にて3分間乾燥させることで、厚さ25μmの粘着剤層を形成させた。次に、厚さ75μmの剥離フィルム(東洋紡社製:E7002)の剥離層側の面を、上記粘着剤層上の露出面に貼り合わせることで、基材、帯電防止層a、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0079】
(実施例2)
基材である50μmポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「U403」)の両面の全領域にそれぞれ、0.5質量%濃度のポリスチレンスルホン酸の水溶液を塗布し、100℃で処理することで、厚さ0.5μmの帯電防止層aを形成した。このように得た両面に帯電防止層aが形成された基材を「基材B」とした。製造例2で得た粘着剤組成物を、前記基材Bの一方の帯電防止層a上に塗布し、アプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃にて3分間乾燥させることで、厚さ25μmの粘着剤層を形成させた。次に、厚さ75μmの剥離フィルム(東洋紡社製:E7002)の剥離層側の面を、上記粘着剤層上の露出面に貼り合わせることで、帯電防止層a、基材、帯電防止層a、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0080】
(実施例3)
製造例2で得た粘着剤組成物を、実施例2で用意した前記基材Bの一方の帯電防止層a上に塗布し、アプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃にて3分間乾燥させることで、厚さ25μmの粘着剤層を形成させた。次に、厚さ75μmの帯電防止剥離フィルム(藤森工業製:75E0010KFAS)の剥離層側の面を、上記粘着剤層上の露出面に貼り合わせることで、帯電防止層a、基材、帯電防止層a、粘着剤層、帯電防止剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。帯電防止剥離フィルムは、剥離層、帯電防止層(ポリスチレンスルホン酸)及びフィルムがこの順に形成されてなるものを使用した。
【0081】
(実施例4)
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の代わりに、0.5質量%濃度のポリチオフェン水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で基材、帯電防止層a、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0082】
(比較例1)
基材に帯電防止層を設けなかったこと以外は実施例1と同様の方法により、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0083】
(比較例2)
基材である50μmポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「U403」)の片面の全領域に、0.5質量%濃度のポリスチレンスルホン酸の水溶液を塗布し、100℃で処理することで、厚さ0.5μmの帯電防止層を形成した。このように得た片面に帯電防止層が形成された基材を「基材C」とした。製造例2で得た粘着剤組成物を、前記基材Cの帯電防止層が形成されていない面上に塗布し、アプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃にて3分間乾燥させることで、厚さ25μmの粘着剤層を形成させた。次に、厚さ75μmの剥離フィルム(東洋紡社製:E7002)を、上記粘着剤層上の露出面に貼り合わせることで、帯電防止層、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0084】
(比較例3)
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の代わりに、20質量%濃度のコロイダルシリカ分散液(日産化学社製「スノーテックスN」)に変更したこと以外は比較例2と同様の方法により、コロイダルシリカ含有帯電防止層、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0085】
(比較例4)
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の代わりに、20質量%濃度のコロイダルシリカ分散液(日産化学社製「スノーテックスN」)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、基材、コロイダルシリカ含有帯電防止層、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0086】
(参考例1)
製造例2で得られた粘着剤組成物の代わりに、製造例3で得られた粘着剤組成物を使用したこと以外は比較例1と同様の方法で基材、帯電防止剤含有粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる積層体を粘着シートとして得た。
【0087】
(評価方法)
<表面電気抵抗>
表面電気抵抗は、抵抗率計(三菱化学アナリティック製、Hiresta MCP-HT800型)を用いて、JIS-K-6911に準じて、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で測定した。測定サンプルは、23℃×50%RH環境下で60分間静置して処理を行った。
【0088】
<剥離帯電量>
各実施例、比較例で得られた粘着シートを予め除電し、幅70mm、長さ130mmサイズにカットし、剥離フィルムが上方側に配置されるように、温度23℃、湿度50%RH環境に水平面上に載置した。この粘着シートを、剥離角度90度、剥離速度300mm/分で剥離フィルムを剥離し、この剥離の際に生じる基材の粘着剤層側の帯電圧を、30mm離れた位置に固定した静電電位測定器(シシド静電気株式会社、STATIRON DZ4)にて測定し、剥離帯電量を計測した。
【0089】
<粘着シートの対ガラス粘着力>
JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じた。まず、得られた粘着シートを幅25mm、長さ50mmの大きさにカットし、粘着シートから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層側の面をソーダガラスに貼合し、2kgローラーで圧着した。そして、圧着24時間後に300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定し、この粘着力を対ガラス粘着力とした。
【0090】
【表1】
【0091】
表1から、各実施例で得られた粘着シートのように、基材(樹脂フィルム)と、導電性ポリマー含有する帯電防止層aと、粘着剤層と、剥離フィルムとを備える粘着シートは、剥離帯電が抑制されており、また、優れた透明性及び粘着性能を有していることが明らかとなった。一方、比較例で得られた粘着シートは、少なくとも粘着剤層と基材との間に帯電防止層aが形成されていないため、剥離帯電量が大きいものであった。参考例1では、粘着剤層の中に帯電防止剤が含まれるので、剥離帯電は抑制されるものの、粘着力は十分ではなかった。