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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167829
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20241127BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20241127BHJP
   B60H 1/08 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/03 Z
B60H1/08 621C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084181
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】和田 博文
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA32
3L211BA60
3L211CA14
3L211DA28
3L211DA29
3L211DA44
3L211DA48
3L211GA27
3L211GA28
3L211GA43
3L211GA47
(57)【要約】
【課題】車両の駆動源の廃熱を回収して電力に変換し、前記駆動源の停止時に車室内の冷房を行い、及び、前記駆動源の停止時に車室内の暖房を行うことが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1において、熱媒体が、エンジン10と、空調空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1熱交換器41との間を循環する第2熱媒体循環回路40にはエンジン10をバイパスする第1バイパス流路45が設けられ、廃熱回収回路60は、前記熱媒体と作動流体とを熱交換させる第2熱交換器61と、電動機64に接続された膨張/圧縮機63と、前記作動流体を放熱又は吸熱させる第3熱交換器65と、作動流体ポンプP3と、作動流体ポンプP3をバイパスする第2バイパス流路69と、第2バイパス流路69に設けられた第2膨張弁71と、前記作動流体の流れる方向を切り替える四方弁67と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源が搭載された車両に適用される車両用空調装置であって、
熱媒体ポンプによって熱媒体が前記駆動源と第1熱交換器との間を循環し、前記第1熱交換器が空調空気と前記熱媒体とを熱交換させる熱媒体循環回路と、
圧縮機、凝縮器、第1膨張弁及び蒸発器を含み、冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、
作動流体が循環し、前記駆動源の廃熱を回収して電力に変換可能な廃熱回収回路と、
を含み、
前記熱媒体循環回路には、前記駆動源をバイパスして前記熱媒体を循環させるための第1バイパス流路が設けられ、
前記廃熱回収回路は、前記熱媒体と前記作動流体とを熱交換させる第2熱交換器と、電動機に接続され、前記作動流体を膨張させ又は圧縮する膨張/圧縮機と、前記作動流体を放熱又は吸熱させる第3熱交換器と、前記作動流体を循環させる作動流体ポンプと、前記作動流体ポンプをバイパスする第2バイパス流路と、前記第2バイパス流路に設けられた第2膨張弁と、前記作動流体の流れる方向を切り替える流路切替弁と、を含む、
車両用空調装置。
【請求項2】
前記流路切替弁は四方弁であって、前記第2熱交換器の第1出入口ポートと前記膨張/圧縮機の第1出入口ポートとを連通させると共に前記膨張/圧縮機の第2出入口ポートと前記第3熱交換器の第1出入口ポートとを連通させる第1の状態と、前記第2熱交換器の前記第1出入口ポートと前記膨張/圧縮機の前記第2出入口ポートとを連通させると共に前記膨張/圧縮機の前記第1出入口ポートと前記第3熱交換器の前記第1出入口ポートとを連通させる第2の状態とを切り替え可能に構成され、
前記作動流体ポンプは、前記第2熱交換器の第2出入口ポートと前記第3熱交換器の第2出入口ポートとを繋ぐ流路に配置されている、
請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記熱媒体循環回路において前記熱媒体が前記駆動源を経由して循環しているとき、前記廃熱回収回路において前記作動流体ポンプと前記流路切替弁とによって前記作動流体を前記作動流体ポンプ、前記第2熱交換器、前記膨張/圧縮機及び前記第3熱交換器をこの順に経由して循環させることにより、前記第2熱交換器で前記熱媒体によって加熱された前記作動流体を前記膨張/圧縮機に流入させ、前記膨張/圧縮機を膨張機として動作させて前記電動機で発電する、請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記熱媒体循環回路において前記熱媒体が前記第1バイパス流路を流れることによって前記熱媒体が前記駆動源をバイパスして循環し、前記廃熱回収回路において前記電動機に駆動されて圧縮機として動作する前記膨張/圧縮機と前記流路切替弁とによって前記作動流体を前記膨張/圧縮機、前記第2熱交換器、前記第2膨張弁及び前記第3熱交換器をこの順に経由して循環させることにより、前記第2熱交換器で前記作動流体によって加熱された前記熱媒体を前記第1熱交換器に流し、これによって車室内の暖房を行う、請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記熱媒体循環回路において前記熱媒体が前記第1バイパス流路を流れることによって前記熱媒体が前記駆動源をバイパスして循環し、前記廃熱回収回路において前記電動機に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機と前記流路切替弁とによって前記作動流体を前記膨張/圧縮機、前記第3熱交換器、前記第2膨張弁及び前記第2熱交換器をこの順に経由して循環させることにより、前記第2熱交換器で前記作動流体によって冷却された前記熱媒体を前記第1熱交換器に流し、これによって車室内の冷房を行う、請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記熱媒体循環回路において前記熱媒体が前記駆動源を経由して循環し、前記廃熱回収回路において前記電動機に駆動されて圧縮機として動作する前記膨張/圧縮機と前記流路切替弁とによって前記作動流体を前記膨張/圧縮機、前記第2熱交換器、前記第2膨張弁及び前記第3熱交換器をこの順に経由して循環させることにより、前記第2熱交換器で前記作動流体によって加熱された前記熱媒体を前記駆動源に流し、これによって前記駆動源の加熱を行う、請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記廃熱回収回路は、前記車両の着脱可能な筐体に収容されている、請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、車両の駆動源の廃熱を回収して電力に変換可能な廃熱回収回路を有する車両空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの駆動力によって駆動される圧縮機を含む冷凍サイクルと、前記エンジンの廃熱(エンジン冷却水の熱)を回収して利用するランキンサイクルとを有し、前記エンジンの動作時には前記冷凍サイクルによる冷房及び/又は前記ランキンサイクルによる発電とを行うと共に、前記エンジンの停止時においても冷房の継続を可能とする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-125770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、前記エンジン冷却水が流れるヒータコアが空調ユニットの空調ケース内に配設されている。そのため、前記エンジンの動作時に暖房を行うことは可能である。しかし、特許文献1に記載された技術では、前記エンジンの停止時に暖房を行うことができず、この点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は、車両の駆動源の廃熱を回収し電力に変換すること、前記駆動源の停止時に車室内の冷房を行うこと、及び、前記駆動源の停止時に車室内の暖房を行うことが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、駆動源が搭載された車両に適用される車両用空調装置が提供される。この車両用空調装置は、熱媒体ポンプによって熱媒体が前記駆動源と第1熱交換器との間を循環し、前記第1熱交換器が空調空気と前記熱媒体とを熱交換させる熱媒体循環回路と、圧縮機、凝縮器、第1膨張弁及び蒸発器を含み、冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、作動流体が循環し、前記駆動源の廃熱を回収して電力に変換可能な廃熱回収回路と、を含む。前記熱媒体循環回路には、前記駆動源をバイパスして前記熱媒体を循環させるための第1バイパス流路が設けられている。前記廃熱回収回路は、前記熱媒体と前記作動流体とを熱交換させる第2熱交換器と、電動機に接続され、前記作動流体を膨張させ又は圧縮する膨張/圧縮機と、前記作動流体を放熱させ又は吸熱させる第3熱交換器と、前記作動流体を循環させる作動流体ポンプと、前記作動流体ポンプをバイパスする第2バイパス流路と、前記第2バイパス流路に設けられた第2膨張弁と、前記作動流体の流れる方向を切り替える流路切替弁と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の駆動源の廃熱を回収して利用すること、前記駆動源の停止時に冷房を行うこと、及び、前記駆動源の停止時に暖房を行うことが可能な車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両用空調装置の要部構成を示す模式図である。
図2】実施形態に係る車両用空調装置の制御系構成を示すブロック図である。
図3】廃熱回収モードでの車両用空調装置の動作を説明するための図である。
図4】停車時暖房モードでの車両用空調装置の動作を説明するための図である。
図5】停車時冷房モードでの車両用空調装置の動作を説明するための図である。
図6】エンジン加熱モードでの車両用空調装置の動作を説明するための図である。
図7】廃熱回収ユニット(ユニット化された廃熱回収回路)の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。以下の「第1」、「第2」などの用語は、単に類似の要素を区別するために用いられ、それらが付された要素を限定するものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の要部構成を示す模式図である。実施形態に係る車両用空調装置1は、駆動源、特に動作時に熱を発生させる駆動源を搭載した車両(図示省略)に適用される。前記駆動源にはエンジン(内燃機関)や燃料電池などが含まれ得るが、ここでは前記駆動源がエンジンである場合について説明する。なお、前記駆動源が例えば燃料電池である場合には以下の説明における「エンジン」が「燃料電池」と適宜読み替えられればよい。
【0011】
エンジン10(駆動源)には、熱媒体(ここではエンジン冷却水)が循環する熱媒体回路20が設けられている。熱媒体回路20は、エンジン冷却用の第1熱媒体循環回路30と、車室空調用の第2熱媒体循環回路40とを含む。第1熱媒体循環回路30にはラジエータ31が設けられ、第2熱媒体循環回路40には第1熱交換器41が設けられている。なお、本実施形態においては第2熱媒体循環回路40が本発明の「熱媒体循環回路」に相当する。
【0012】
第1熱媒体循環回路30は、第1熱媒体ポンプP1によって前記熱媒体がエンジン10とラジエータ31との間を循環する回路である。ラジエータ31は、エンジン10を通過する際にエンジン10の熱を吸収した前記熱媒体と外気とを熱交換させて前記熱媒体を冷却する熱交換器であり、前記熱媒体が流入する入口ポート31aと前記熱媒体が流出する出口ポート31bとを有する。第1熱媒体ポンプP1は、電動ポンプ又はエンジン10によって駆動される機械式ポンプであり、ラジエータ31の出口ポート31bとエンジン10の熱媒体流入部10aとの間に配置されている。
【0013】
第2熱媒体循環回路40は、第1熱媒体ポンプP1によって前記熱媒体が(ラジエータ31を経由せずに)エンジン10と第1熱交換器41との間を循環する回路である。本実施形態において、第2熱媒体循環回路40は、第1熱媒体循環回路30の一部と、第1熱媒体循環回路30から分岐して第1熱交換器41を経由した後に第1熱媒体循環回路30に接続(合流)する流路部43とによって形成されている。流路部43は、具体的には、第1熱媒体循環回路30におけるエンジン10の熱媒体出口部10bとラジエータ31の入口ポート31aとの間の第1分岐部B1から分岐し、第1熱交換器41を経由し、第1熱媒体循環回路30におけるラジエータ31の出口ポート31bと第1熱媒体ポンプP1との間の第1接続部C1に接続している。
【0014】
第1熱交換器41は、ヒータコアに相当し、空調ユニット100の空調ケース110(空気通路)内に配置されている。第1熱交換器41は、内部を通過する前記熱媒体と、送風機120によって送風されて前記車室に向かう空気(以下「空調空気」という。)とを熱交換させる熱交換器である。第1熱交換器41は、前記熱媒体が流入する入口ポート41aと前記熱媒体が流出する出口ポートと41bとを有する。なお、図示省略されているが、空調ケース110内の第1熱交換器41の近傍には第1熱交換器41を通過する前記空調空気の量を調整するエアミックスドアが設けられている。
【0015】
本実施形態において、第2熱媒体循環回路40にはエンジン10をバイパスして前記熱媒体を循環させるための第1バイパス流路45が設けられている。第1バイパス流路45は、第1熱交換器41の出口ポート41bと第1接続部C1との間の第2分岐部B2から分岐し、第1分岐部B1と第1熱交換器41の入口ポート41aとの間の第2接続部C2に接続している。第1バイパス流路45には第2熱媒体ポンプP2が設けられている。第2熱媒体ポンプP2は、電動ポンプであり、前記熱媒体を第2分岐部B2から第2接続部C2に向けて送出するように構成されている。つまり、第2分岐部B2は第1バイパス流路45に前記熱媒体が流入する第1バイパス流路45の入口部であり、第2接続部C2は第1バイパス流路45から前記熱媒体が流出する第1バイパス流路45の出口部である。
【0016】
なお、流路部43が第1熱媒体循環回路30から分岐する第1分岐部B1にはサーモスタット(三方弁)TSが設けられている。サーモスタットTSは、前記熱媒体の温度に応じて、第1熱媒体循環回路30を流れる前記熱媒体の量と、第2熱媒体循環回路40を流れる前記熱媒体の量とを調整するように構成されている。
【0017】
実施形態に係る車両用空調装置1は、前記車両の車室の空調を行うだけでなく、エンジン10の廃熱を回収して電力に変換することが可能に構成されている。実施形態に係る車両用空調装置1は、上述の第2熱媒体循環回路40と、冷凍サイクル回路50と、廃熱回収回路60とを含む。
【0018】
冷凍サイクル回路50は、圧縮機51、凝縮器53、第1膨張弁55及び蒸発器57を含み、冷媒が循環する回路である。なお、冷凍サイクル回路50は、冷媒循環回路とも称され得る。
【0019】
圧縮機51は、前記冷媒を高温高圧に圧縮する流体機械である。本実施形態において、圧縮機51は、エンジン10によって駆動されるように構成されている。但し、これに限られるものではなく、圧縮機51は、電動圧縮機であってもよい。凝縮器53は、圧縮機51で圧縮された前記冷媒と外気とを熱交換させて前記冷媒を放熱(凝縮)させる熱交換器である。第1膨張弁55は、凝縮器53から送られてきた前記冷媒を減圧膨張させる減圧装置である。蒸発器57は、第1熱交換器41と同様、空調ユニット100の空調ケース110内に配置されている。蒸発器57は、第1膨張弁55によって減圧膨張された前記冷媒と前記空調空気とを熱交換させて前記冷媒を吸熱(蒸発)させる熱交換器であり、前記冷媒の吸熱作用によって前記車室に向かう空気を冷却する。
【0020】
廃熱回収回路60は、作動流体が循環する回路であり、エンジン10の廃熱を回収して電力に変換可能に構成されている。特に限定されないが、前記作動流体は、冷凍サイクル回路50の冷媒と同種の冷媒であり得る。廃熱回収回路60は、第2熱交換器61、膨張/圧縮機63、第3熱交換器65、流路切替弁としての四方弁67及び作動流体ポンプP3を含む。
【0021】
第2熱交換器61は、第2熱媒体循環回路40の前記熱媒体と前記作動流体とを熱交換させる熱交換器である。本実施形態において、第2熱交換器61は、第2熱媒体循環回路40における第2接続部C2(第1バイパス流路45の出口部)と第1熱交換器41(の入口ポート41a)との間に配置されている。つまり、本実施形態において、第2熱交換器61は、第2熱媒体循環回路40における第1バイパス流路45の出口部よりも第1熱交換器41側の前記熱媒体と前記作動流体とを熱交換させるように構成されている。第2熱交換器61は、前記作動流体が流出入する第1出入口ポート61aと、前記作動流体が流出入する第2出入口ポート61bと、前記熱媒体が流入する入口ポート61cと、前記熱媒体が流出する出口ポート61dとを有する。
【0022】
膨張/圧縮機63は、膨張機としての機能及び圧縮機構としての機能を有する流体機械であり、前記作動流体を膨張させ又は圧縮するように構成されている。膨張/圧縮機63は、前記作動流体が流出入する第1出入口ポート63a及び第2出入口ポート63bを有する。
【0023】
膨張/圧縮機63には電動機64が接続されている。電動機64は、発電機としても動作する。また、電動機64は、第1配線W1を介して電力変換器68に電気的に接続されており、電力変換器68は、図示省略の配線を介して図示省略のバッテリやエンジン10をアシストするアシストモータなどに電気的に接続されている。電動機64は、膨張機として動作する膨張/圧縮機63によって駆動されると発電機として動作して発電を行う。発電された電力は、電力変換器68を介して前記バッテリに充電され、及び/又は、前記アシストモータに供給される。また、前記バッテリから電力変換器68を介して電動機64に電力が供給されると、電動機64は、膨張/圧縮機63を駆動して膨張/圧縮機63を圧縮機として動作させる。
【0024】
第3熱交換器65は、外気と前記作動流体とを熱交換させて前記作動流体を放熱させ又は吸熱させる熱交換器である。第3熱交換器65は、前記作動流体が流出入する第1出入口ポート65aと、前記作動流体が流出入する第2出入口ポート65bとを有する。第3熱交換器65には第3熱交換器65に向けて送風する送風ファン66が付設されている。
【0025】
四方弁67(流路切替弁)は、廃熱回収回路60における前記作動流体の流れる方向を変更(切替)可能に構成されている。四方弁67は、電磁弁であり、第1~第4ポート67a~67dを有する。本実施形態において、四方弁67の第1ポート67aは第1配管L1を介して第2熱交換器61の第1出入口ポート61aに接続され、四方弁67の第2ポート67bは第2配管L2を介して膨張/圧縮機63の第1出入口ポート63aに接続されている。また、四方弁67の第3ポート67cは第3配管L3を介して膨張/圧縮機63の第2出入口ポート63bに接続され、四方弁67の第4ポート67dは第4配管L4を介して第3熱交換器65の第1出入口ポート65aに接続されている。
【0026】
そして、四方弁67は、第1ポート67aと第2ポート67bとを連通させると共に第3ポート67cと第4ポート67dとを連通させることにより、第2熱交換器61の第1出入口ポート61aと膨張/圧縮機63の第1出入口ポート63aとを連通させると共に膨張/圧縮機63の第2出入口ポート63bと第3熱交換器65の第1出入口ポート65aとを連通させる(第1の状態)。また、四方弁67は、第1ポート67aと第3ポート67cとを連通させると共に第2ポート67bと第4ポート67dとを連通させることにより、第2熱交換器61の第1出入口ポート61aと膨張/圧縮機63の第2出入口ポート65bとを連通させると共に膨張/圧縮機63の第1出入口ポート63aと第3熱交換器65の第1出入口ポート65aとを連通させる(第2の状態)。すなわち、四方弁67は、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え可能に構成されている。
【0027】
なお、第2熱交換器61の第2出入口ポート61bと第3熱交換器65の第2出入口ポート65bとは第5配管L5を介して接続されている。
【0028】
作動流体ポンプP3は、廃熱回収回路60内の前記作動流体を循環させる。作動流体ポンプP3は、電動ポンプでもよいが、本実施形態において、作動流体ポンプP3は、膨張/圧縮機63及び電動機64に連結されており、電動機64によって駆動されること、及び、膨張機として動作する膨張/圧縮機63によって駆動されることが可能である。本実施形態において、作動流体ポンプP3は、第2熱交換器61の第2出入口ポート61bと第3熱交換器65の第2出入口ポート65bとを繋ぐ流路(第5配管L5)に設けられており、第3熱交換器65からの前記作動流体を第2熱交換器61に向けて送出するように構成されている。
【0029】
本実施形態において、廃熱回収回路60には作動流体ポンプP3をバイパスする第2バイパス流路69が設けられている。第2バイパス流路69は、第3熱交換器65の第2出入口ポート65bと作動流体ポンプP3との間の第3分岐部B3から分岐して作動流体ポンプP3と第2熱交換器61の第2出入口ポート61bとの間の第3接続部C3に接続している。第2バイパス流路69には第2膨張弁71が設けられている。
【0030】
図2は、実施形態に係る車両用空調装置1の制御系構成を示すブロック図である。車両用空調装置1は、制御装置80を含む。制御装置80は、CPU、メモリ(ROMやRAMなど)及びI/Oポートなどを含むマイクロコンピュータで構成されている。制御装置80は、熱媒体回路20(第1熱媒体循環回路30、第2熱媒体循環回路40)の第1熱媒体ポンプP1及び第2熱媒体ポンプP2、冷凍サイクル回路50の圧縮機51、廃熱回収回路60の作動流体ポンプP3、電動機64、送風ファン66及び四方弁67、並びに、空調ユニット100の送風機120及び前記エアミックスドアなどの動作を制御するように構成されている。ここで、本実施形態においては、圧縮機51の制御に関し、制御装置80は、エンジン10の回転駆動力を圧縮機51に伝達/遮断することにより圧縮機51の動作/停止させる。また、電動機64の制御に関し、制御装置80は、電力変換器68を介して電動機64に電力を供給することにより電動機64を動作させる。さらに、作動流体ポンプP3の制御に関し、制御装置80は、例えば、電動機64をモータとして機能させることで作動流体ポンプP3を起動及び動作させ、膨張/圧縮機63が膨張機として動作すると、電動機64を発電機として動作させるとともに、膨張/圧縮機63の回転仕事の一部によって作動流体ポンプP3を動作させる。
【0031】
次に、実施形態に係る車両用空調装置1の動作例について説明する。
【0032】
実施形態に係る車両用空調装置1は、通常暖房モード、通常冷房モード、廃熱回収モード、停車時暖房モード、停車時冷房モード及びエンジン加熱モードで動作可能に構成されている。以下、各モードを順に説明する。なお、熱媒体回路20(第1熱媒体循環回路30、第2熱媒体循環回路40)の第1熱媒体ポンプP1は、前記車両の停車中(エンジン10の停止時)は停止するが、前記車両の走行中(エンジン10の動作時)は常時動作する。つまり、前記車両の走行中、熱媒体回路20では第1熱媒体ポンプP1によって前記熱媒体が第1熱媒体循環回路30及び第2熱媒体循環回路40を循環しており、第2熱媒体循環回路40の第1熱交換器41にはエンジン10の熱を吸収した前記熱媒体(高温)が流れる。
【0033】
[通常暖房モード]
通常暖房モードは、前記車両の走行中(エンジン10の動作時)に前記車室内の暖房を行う動作モードである。
【0034】
この場合、制御装置80は、空調ユニット100の送風機120を動作させ、前記エアミックスドアを制御して第2熱媒体循環回路40の第1熱交換器41を通過する前記空調空気の量を調整する。エンジン10の熱を吸収した前記熱媒体(高温)が流れる第1熱交換器41は空調ユニット100の空調ケース110内に配置されている。そのため、前記空調空気は、第1熱交換器41を通過する際に前記熱媒体によって加熱される。これにより、前記車室内が暖房される。
【0035】
[通常冷房モード]
通常冷房モードは、前記車両の走行中(エンジン10の動作時)に前記車室内の冷房を行う動作モードである。
【0036】
この場合、制御装置80は、空調ユニット100の送風機120を動作させ、エンジン10の回転駆動力を冷凍サイクル回路50の圧縮機51に伝達して圧縮機51を動作させる。また、制御装置80は、前記エアミックスドアを制御して第1熱交換器41を通過する前記空調空気量を制限する。第1膨張弁55によって減圧膨張された前記冷媒(低温)が流れる蒸発器57は空調ユニット100の空調ケース110内に配置されている。そのため、前記空調空気は、蒸発器57を通過する際に前記冷媒の吸熱作用によって冷却される。これにより、前記車室内が冷房される。
【0037】
[廃熱回収モード(図3)]
廃熱回収モードは、前記車両の走行中(エンジン10の動作時)にエンジン10の廃熱(前記熱媒体の熱)を回収して電力に変換する動作モードである。
【0038】
この場合、制御装置80は、廃熱回収回路60において、作動流体ポンプP3を動作させ、送風ファン66を動作させ、及び、四方弁67の第1ポート67aと第2ポート67bとを連通させると共に四方弁67の第3ポート67cと第4ポート67dとを連通させる(前記第1の状態)。
【0039】
上述のように、前記車両の走行中、熱媒体回路20では第1熱媒体ポンプP1によって前記熱媒体が第1熱媒体循環回路30及び第2熱媒体循環回路40を循環している。すなわち、第2熱媒体循環回路40において前記熱媒体はエンジン10を経由して循環しており、第1熱交換器41にはエンジン10を通過する際にエンジン10の熱(廃熱)を吸収した前記熱媒体(高温)が流れる。具体的には、熱媒体回路20において前記熱媒体は図3中の矢印方向に循環する。また、廃熱回収回路60では、作動流体ポンプP3と四方弁67とによって、前記作動流体が図3中の矢印方向に循環する。つまり、廃熱回収回路60において、前記作動流体は、作動流体ポンプP3→第2熱交換器61→膨張/圧縮機63→第3熱交換器65(→作動流体ポンプP3)の順に流れる。
【0040】
そのため、廃熱回収回路60において、前記作動流体は第2熱交換器61を通過することで前記熱媒体に加熱されて過熱蒸気となり、過熱蒸気状態の前記作動流体が膨張/圧縮機63に流入する。すると、過熱蒸気状態の前記作動流体の膨張によって膨張/圧縮機63で駆動力が発生する。つまり、膨張/圧縮機63が膨張機として動作する。そして、この発生した駆動力によって電動機64が駆動され、電動機64が発電する。このようにして、エンジン10の廃熱が回収されて電力に変換される。
【0041】
なお、変換によって得られた電力は、上述のように、電力変換器68を介して前記バッテリに充電され、及び/又は、エンジン10をアシストする前記アシストモータに供給される。また、ここでは車両用空調装置1が前記廃熱回収モード単独で動作する場合について説明したが、車両用空調装置1は、前記通常暖房モード及び前記廃熱回収モードでも動作することができるし、前記通常冷房モード及び前記廃熱回収モードでも動作することができる。
【0042】
[停車時暖房モード(図4)]
停車時暖房モードは、前記車両の停車中(エンジン10の停止時)に前記車室内の暖房を行う動作モードである。
【0043】
この場合、制御装置80は、空調ユニット100の送風機120を動作させ、前記エアミックスドアを制御して第2熱媒体循環回路40の第1熱交換器41を通過する前記空調空気の量を調整し、第2熱媒体循環回路40の第2熱媒体ポンプP2を動作させる。また、制御装置80は、廃熱回収回路60において、電動機64に電力を供給して電動機64を動作させ、電動機64によって膨張/圧縮機63を駆動して膨張/圧縮機63を圧縮機として動作させ、送風ファン66を動作させ、及び、四方弁67の第1ポート67aと第2ポート67bとを連通させると共に四方弁67の第3ポート67cと第4ポート67dとを連通させる(前記第1の状態)。なお、制御装置80は、第1熱媒体ポンプP1及び作動流体ポンプP3を動作させない。
【0044】
すると、第2熱媒体循環回路40では第2熱媒体ポンプP2によって前記熱媒体が図4中の矢印方向に循環する。つまり、第2熱媒体循環回路40において、前記熱媒体は第1バイパス流路45を流れることによってエンジン10をバイパスして循環する。具体的には、前記熱媒体は第2熱媒体ポンプP2→廃熱回収回路60の第2熱交換器61→第1熱交換器41(→第2熱媒体ポンプP2)の順に流れる(エンジン10を通過しない)。また、廃熱回収回路60では、電動機64に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機63と、四方弁67とによって前記作動流体が図4中の矢印方向に循環する。つまり、廃熱回収回路60において、前記作動流体は膨張/圧縮機63→第2熱交換器61→第2膨張弁71→第3熱交換器65(→膨張/圧縮機63)の順に流れる。
【0045】
そのため、第2熱媒体循環回路40において、前記熱媒体は、第2熱交換器61を通過する際に、膨張/圧縮機63で圧縮された前記作動流体(高温)によって加熱され、この加熱された前記熱媒体(高温)が第1熱交換器41を流れることになる。したがって、前記空調空気が第1熱交換器41を通過する際に前記熱媒体によって加熱される。これにより、エンジン10が発生する熱を利用できない前記車両の停車中(エンジン10の停止時)においても前記車室内が暖房され得る。
【0046】
[停車時冷房モード(図5)]
停車時冷房モードは、前記車両の停車中(エンジン10の停止時)に前記車室内の冷房を行う動作モードである。
【0047】
この場合、制御装置80は、空調ユニット100の送風機120を動作させ、前記エアミックスドアを制御して第2熱媒体循環回路40の第1熱交換器41を通過する前記空調空気量を制限し、第2熱媒体循環回路40の第2熱媒体ポンプP2を動作させる。また、制御装置80は、廃熱回収回路60において、電動機64に電力を供給して電動機64を動作させ、電動機64によって膨張/圧縮機63を駆動して膨張/圧縮機63を圧縮機として動作させ、送風ファン66を動作させ、及び、四方弁67の第1ポート67aと第3ポート67cとを連通させると共に四方弁67の第2ポート67bと第4ポート67dとを連通させる(前記第2の状態)。なお、制御装置80は、第1熱媒体ポンプP1及び作動流体ポンプP3を動作させない。
【0048】
すると、第2熱媒体循環回路40では第2熱媒体ポンプP2によって前記熱媒体が図5中の矢印方向に循環する。つまり、第2熱媒体循環回路40において、前記熱媒体は第1バイパス流路45を流れることによってエンジン10をバイパスして循環する。具体的には、前記熱媒体は第2熱媒体ポンプP2→廃熱回収回路60の第2熱交換器61→第1熱交換器41(→第2熱媒体ポンプP2)の順に流れる(エンジン10を通過しない)。また、廃熱回収回路60では、電動機64に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機63と、四方弁67とによって前記作動流体が図5中の矢印方向に循環する。つまり、廃熱回収回路60において、前記作動流体は膨張/圧縮機63→第3熱交換器65→第2膨張弁71→第2熱交換器61(→膨張/圧縮機63)の順に流れる。
【0049】
そのため、第2熱媒体循環回路40において、前記熱媒体は、第2熱交換器61を通過する際に、第2膨張弁71で減圧膨張された前記作動流体(低温)の吸熱作用によって冷却され、冷却された前記熱媒体(低温)が第1熱交換器41を流れることになる。したがって、前記空調空気は第1熱交換器41を通過する際に前記熱媒体によって冷却される。これにより、冷凍サイクル回路50の圧縮機51が駆動されない前記車両の停車中(エンジン10の停止時)においても前記車室内が冷房され得る。
【0050】
[エンジン加熱モード(図6)]
エンジン加熱モードは、エンジン10の始動性の向上、燃費の改善、排気ガスの浄化性能の向上などのため、前記車両の停車中(走行前)や始動直後のエンジン10が十分に暖まっていないときなどにエンジン10を加熱(加温)する動作モードである。
【0051】
この場合、制御装置80は、熱媒体回路20の第1熱媒体ポンプP1を動作させる。また、制御装置80は、廃熱回収回路60において、電動機64に電力を供給して電動機64を動作させ、電動機64によって膨張/圧縮機63を駆動して膨張/圧縮機63を圧縮機として動作させ、送風ファン66を動作させ、及び、四方弁67の第1ポート67aと第2ポート67bとを連通させると共に四方弁67の第3ポート67cと第4ポート67dとを連通させる(前記第1の状態)。なお、制御装置80は、第2熱媒体ポンプP2及び作動流体ポンプP3を動作させない。また、熱媒体回路20においては、サーモスタットTSにより前記熱媒体の全部又は大部分が第2熱媒体循環回路40を循環する。
【0052】
すると、第2熱媒体循環回路40では第1熱媒体ポンプP1によって前記熱媒体が図6中の矢印方向に循環する。つまり、第2熱媒体循環回路40において、前記熱媒体はエンジン10を経由して循環する。具体的には、前記熱媒体は第1熱媒体ポンプP1→エンジン10→廃熱回収回路60の第2熱交換器61→第1熱交換器41(→第1熱媒体ポンプP1)の順に流れる。また、廃熱回収回路60では、電動機64に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機63と、四方弁67とによって前記作動流体が図6中の矢印方向に循環する。つまり、廃熱回収回路60において、前記作動流体は膨張/圧縮機63→第2熱交換器61→第2膨張弁71→第3熱交換器65(→膨張/圧縮機63)の順に流れる。
【0053】
そのため、第2熱媒体循環回路40において、前記熱媒体は、第2熱交換器61を通過する際に、膨張/圧縮機63で高温高圧に圧縮された前記作動流体によって加熱され、加熱された前記熱媒体(高温)がエンジン10を流れることになる。これにより、前記車両の停車中(さらに言えば、前記車両の走行前)にエンジン10が加熱され得る。
【0054】
なお、制御装置80がさらに空調ユニット100の送風機120を動作させ、前記エアミックスドアを制御して前記空調空気が第2熱媒体循環回路40の第1熱交換器41を通過するようにすることにより、エンジン10の加熱に加えて車室内の暖房も行われ得る。また、ここでは車両用空調装置1が前記車両の停車中(前記車両の走行前)にエンジン10を加熱する場合について説明したが、車両用空調装置1は、始動直後などのエンジン10が十分に暖まっていない場合にもエンジン10を加熱することができる。そして、前者の場合には主にエンジン10の始動性の向上を図ることができ、後者の場合には主に燃費の改善や排気の浄化性能の向上を図ることができる。
【0055】
以上説明したように、実施形態に係る車両用空調装置1では、前記車両の走行中など第2熱媒体循環回路40において前記熱媒体がエンジン10を経由して循環しているとき、廃熱回収回路60において作動流体ポンプP3及び四方弁67によって前記作動流体を作動流体ポンプP3→第2熱交換器61→膨張/圧縮機63→第3熱交換器65(→作動流体ポンプP3)のように循環させることにより、前記熱媒体によって加熱された前記作動流体を膨張/圧縮機63に流入させ、膨張/圧縮機63を膨張機として動作させて電動機64で発電することができる。したがって、実施形態に係る車両用空調装置1によれば、エンジン10の廃熱(前記熱媒体の熱)を回収して電力に変換することができる。
【0056】
また、実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱媒体循環回路40において前記熱媒体が第1バイパス流路45を流れることによって前記熱媒体がエンジン10をバイパスして循環し、廃熱回収回路60において電動機64に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機63と四方弁67とによって前記作動流体を膨張/圧縮機63→第2熱交換器61→第2膨張弁71→第3熱交換器65(→膨張/圧縮機63)のように循環させることにより、第2熱交換器61で前記熱媒体を前記作動流体によって加熱し、加熱された前記熱媒体を第1熱交換器41に流すことで前記車室内の暖房を行うことができる。したがって、実施形態に係る車両用空調装置1によれば、エンジン10が発生する熱を利用できない前記車両の停車中(エンジン10の停止時)においても前記車室内を暖房することができる。なお、第2熱媒体循環回路40及び/又は廃熱回収回路60に電気ヒータや燃焼式ヒータなどの暖房補助機器を接続し、外気温度が低い場合など、圧縮機として動作する膨張/圧縮機63だけは十分な暖房能力が得られない場合は前記暖房補助機器を利用するようにしてもよい。
【0057】
また、実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱媒体循環回路40において前記熱媒体が第1バイパス流路45を流れることによって前記熱媒体がエンジン10をバイパスして循環し、廃熱回収回路60において電動機64に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機63と四方弁67とによって前記作動流体を膨張/圧縮機63→第3熱交換器65→第2膨張弁71→第2熱交換器61(→膨張/圧縮機63)のように循環させることにより、第2熱交換器61で前記熱媒体を前記作動流体によって冷却し、冷却された前記熱媒体を第1熱交換器41に流すことで前記車室内の冷房を行うことができる。したがって、実施形態に係る車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル回路50の圧縮機51が駆動されない前記車両の停車中(エンジン10の停止時)においても前記車室内を冷房することができる。
【0058】
また、実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱媒体循環回路40において前記熱媒体がエンジン10を経由して循環し、廃熱回収回路60において電動機として動作する電動機64に駆動されて圧縮機として動作する膨張/圧縮機63と四方弁67とによって前記作動流体を膨張/圧縮機63→第2熱交換器61→第2膨張弁71→第3熱交換器65(→膨張/圧縮機63)のように循環させることにより、第2熱交換器61で前記熱媒体を前記作動流体によって加熱し、加熱された前記熱媒体をエンジン10に流すことでエンジン10を加熱することができる。したがって、実施形態に係る車両用空調装置1によれば、前記車両の走行前にエンジン10を予め加熱(加温)することができる。
【0059】
なお、上述の実施形態では、第2熱媒体ポンプP2によって第2熱媒体循環回路40において前記熱媒体がエンジン10をバイパスして循環するようになっている。しかし、これに限られるものではない。第2熱媒体循環回路40においてエンジン10を経由する前記熱媒体の循環と、エンジン10をバイパスする前記熱媒体の循環とが切替可能になっていればよい。例えば、第1熱媒体ポンプP1が第1熱交換器41と第2分岐部B2との間に配置され、第2熱媒体ポンプP2が省略され、第1接続部C1及び第2分岐部B2にそれぞれ流量調整部等が設けられてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、四方弁67によって廃熱回収回路60における前記作動流体の流れる方向が変更されている。しかし、これに限られるものではない。廃熱回収回路60において前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え可能であればよく、四方弁67以外の流路切替弁(複数の弁で構成される場合を含む。)が用いられてもよい。
【0061】
さらに、図7に示されるように、廃熱回収回路60は、前記車両に着脱可能に形成された筐体91内に収容されて廃熱回収ユニット90として形成されてもよい。この場合、筐体91は、例えば、前記熱媒体が流入する熱媒体入口部91aと、前記熱媒体が流出する熱媒体出口部91bと、電力入出力部91cとを有する。熱媒体入口部91aは、例えば第6配管L6を介して第2熱交換器61の入口ポート61cに連通し、熱媒体出口部91b、例えば第7配管L7を介して第2熱交換器61の出口ポート61dに連通し、電力入出力部91cは、例えば第2配線W2を介して電力変換器68に接続される。このようにすると、廃熱回収回路60を車両に取り付けること、及び/又は、交換や修理などのために廃熱回収回路60を車両から取り外すことが容易になるので便宜である。
【0062】
ここで、従来技術と比較した実施形態に係る車両用空調装置1の従来技術と比較した有利な効果についてさらに説明する。例えば特許文献1に記載された技術では、冷凍サイクルとランキンサイクルとが共通の凝縮器を利用している。そのため、冷房とエンジンの廃熱回収とが同時に行われると、それぞれが他方の圧力の影響を受けることになって本来の性能を発揮することができない。具体的には、ランキンサイクルの影響によって冷凍サイクルにおける圧縮機の吐出側圧力が増加する。その結果、圧縮機の動力が増加し、ひいては燃費の悪化を招く。他方、ランキンサイクル側においては、冷房負荷の影響によって凝縮器側の圧力が増加し、膨張機の流入する冷媒の圧力差が充分に確保できない。その結果、発電量が減少し、ひいては燃費向上効果が減少する。つまり、特許文献1に記載された技術では、エンジンの廃熱回収による車両燃費の改善が充分に見込めないだけでなく、冷房時に燃費そのものが悪化してしまうおそれがあるという課題がある。また、車両停車時の空調のために、車両停車時の利用に特化した空調装置もあるが、このような空調装置は、車両走行時にエンジンの廃熱回収などに利用されないため、単に車両の重量が増加することになって、燃費の悪化を招くという課題がある。
【0063】
これに対し、実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル回路50に加えて、上述のような構成の第2熱媒体循環回路40及び廃熱回収回路60を有することにより、車両停車時に車室内の冷房/暖房を行うこと及び車両走行時にエンジンの排熱を回収して発電することが可能であり、また、車両走行時に冷房とエンジンの廃熱回収とが同時に行われた場合であっても圧縮機の動力の上昇や発電量の減少を招くことがない。したがって、実施形態に係る車両用空調装置1によれば、車両停車時における車室内の冷房/暖房を可能としつつ、燃費の改善に大きく寄与することができるという従来技術と比較した有利な効果を有するものである。
【0064】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形等が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0065】
1…車両用空調装置、10…エンジン(駆動源)、30…第1熱媒体循環回路、40…第2熱媒体循環回路、41…第1熱交換器、45…第1バイパス流路、50…冷凍サイクル回路、51…圧縮機、53…凝縮器、55…第1膨張弁、57…蒸発器、60…廃熱回収回路、61…第2熱交換器、63…膨張/圧縮機、64…電動機、65…第3熱交換器、66…送風ファン、67…四方弁(流路切替弁)、68…電力変換器、90…廃熱回収ユニット、91…筐体、100…空調ユニット、110…空調ケース、P1…第1熱媒体ポンプ、P2…第2熱媒体ポンプ、P3…作動流体ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7