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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167833
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】焼成用スラリー
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/626 20060101AFI20241127BHJP
   C09K 23/42 20220101ALI20241127BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20241127BHJP
   C04B 35/634 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C04B35/626 250
C09K23/42
C08G65/332
C04B35/634 880
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084188
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】北村 匠
(72)【発明者】
【氏名】島林 克臣
【テーマコード(参考)】
4D077
4J005
【Fターム(参考)】
4D077AA01
4D077AB02
4D077AB03
4D077AC05
4D077BA03
4D077CA03
4D077CA12
4D077CA13
4D077DC10Z
4D077DC12Z
4D077DC26Z
4D077DC42Z
4D077DD29X
4D077DD29Z
4D077DE02X
4D077DE08X
4D077DE09X
4D077DE17X
4J005AA12
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる焼成用スラリーを提供することである。
【解決手段】水、分散質及び式(1)で表される分散剤を含むことを特徴とする焼成用スラリーを用いる。
O-(AO)-R (1)
Oは炭素数11~20のアルキルオキシ基又はアルケニルオキシ基、Rはカルボキシル基、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基を含んでもよい炭素数3~8のアシル基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、mは10~30の整数である。式(1)において、Rが式(2)で表されるアシル基であることが好ましい。
-C(=O)-R-COM (2)
は炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基、Mは水素原子又はアンモニウム、Cは炭素原子、Oは酸素原子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、分散質及び式(1)で表される分散剤を含むことを特徴とする焼成用スラリー。

O-(AO)-R (1)

Oは炭素数11~20のアルキルオキシ基又はアルケニルオキシ基、Rはカルボキシル基、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基を含んでもよい炭素数3~8のアシル基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、mは10~30の整数である。
【請求項2】
式(1)において、Rが式(2)で表されるアシル基である請求項1に記載のスラリー。

-C(=O)-R-COM (2)

は炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基、Mは水素原子又はアンモニウム、Cは炭素原子、Oは酸素原子である。
【請求項3】
式(1)において、-(AO)-で表されるポリオキシアルキレン鎖にオキシエチレン基を含み、オキシエチレン基の含有量がオキシアルキレン基の全モル数(m)に対して60~100モル%である請求項1又は2に記載のスラリー。
【請求項4】
分散質が無機粉末である請求項1又は2に記載のスラリー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された焼成用スラリーに使用する分散剤であって、
式(1)で表されることを特徴とする分散剤。

O-(AO)-R (1)

Oは炭素数11~20のアルキルオキシ基又はアルケニルオキシ基、Rはアシル基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、mは10~30の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼成用スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
「(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む重合体のアンモニウム塩又はアミン塩、(メタ)アクリル酸とイソプロパノールとのエステル、及び水を含む分散剤組成物であって、
前記重合体の塩の重量平均分子量が、30000~80000であり、
前記エステルの分散剤組成物中の含有量が、700重量ppm以上1600重量ppm未満である、分散剤組成物」(特許文献1の請求項1)、「請求項1記載の分散剤組成物、粉体、及び水系溶媒を混合して、前記粉体を分散させる工程を有する、スラリー組成物の製造方法。」(特許文献1の請求項6)や、「(メタ)アクリル酸由来の構成単位と不飽和二塩基酸由来の構成単位とを含む共重合体の有機アミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる重合体組成物を含み、
前記重合体組成物に含まれる全カルボキシル基(I)とその中で有機アミン又は第四級アンモニウムと対イオンを形成しているカルボキシル基(II)とのモル比(II)/(I)が0.33以上である、粉体用分散剤組成物。」(特許文献2の請求項1)、「請求項1から12のいずれかに記載の粉体用分散剤組成物、粉体、及び水系溶媒を含む、スラリー組成物。」(特許文献2の請求項16)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-105808号公報
【特許文献2】特開2017-115131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の焼成用スラリーでは、含有する分散剤の熱分解性が劣るため、スラリーを加熱して焼結体を得る際、高温で長時間焼結乾燥する必要があるという問題がある。本発明は、効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる焼成用スラリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の焼成用スラリーの特徴は、水、分散質、式(1)で表される分散剤を含む点を要旨とする。
【0006】

O-(AO)-R (1)
【0007】
Oは炭素数11~20のアルキルオキシ基又はアルケニルオキシ基、Rはカルボキシル基、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基を含んでもよい炭素数3~8のアシル基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、mは10~30の整数である。
【0008】
本発明の分散剤の特徴は、上記焼成用スラリーに使用する分散剤であって、
式(1)で表される点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の焼成用スラリーは、効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる。
【0010】
本発明の分散剤を上記のスラリーに適用すると、効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<水>
水としては、水道水、工業用水、蒸留水、イオン交換水及び超純水等が挙げられる。
【0012】
水には、水と混和性のある溶剤を含んでもよい。このような溶剤としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール及びプロピレングリコール等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、エーテル(ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル等)及びアミド(ジメチルホルムアミド及びN-メチル-ピロリドン等)等が挙げられる。溶剤を含む場合、この含有量(重量%)は水の重量に基づいて、1~20が好ましい。なお、水を炭化水素(ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等)等に替えても、本発明の効果に近い効果を奏する。
【0013】
水の含有量(重量%)は、水、分散質及び式(1)で表される分散剤の重量に基づいて、10~98が好ましく、さらに好ましくは15~94、特に好ましくは25~89である。この範囲であると、さらに効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる。
【0014】
<分散質>
分散質としては、無機物(アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノチューブ等)及び金属(金、銀及び銅等)が含まれる。これらのうち、無機物が好ましく、さらに好ましくは酸化チタンである。
【0015】
分散質の大きさに制限はないが、この体積平均粒子径(μm)は0.01~100程度が好ましく、さらに好ましくは0.03~50程度、特に好ましくは0.05~20程度である。
【0016】
体積平均粒子径は、JIS Z?8825:2022「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」又はJIS Z8828:2019「粒子径解析-動的光散乱法」に準拠して測定される。
【0017】
分散質の含有量(重量%)は、水、分散質及び式(1)で表される分散剤の重量に基づいて、1~85が好ましく、さらに好ましくは5~80、特に好ましくは10~70である。この範囲であると、さらに効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる。
【0018】
<式(1)で表される分散剤>
炭素数11~20のアルキルオキシ基又はアルケニルオキシ基(RO)のうち、アルキルオキシ基を構成するアルキル基としては、直鎖アルキル基(n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル及びn-イコシル等)及び分岐アルキル基(2-メチル-ノニル、2-メチルトリデシル、2-ヘプチルヘプシル及び2-メチルヘプタデシル等)等が挙げられる。
【0019】
アルケニルオキシ基を構成するアルケニル基としては、n-ウンデセニル、n-ドデセニル、n-トリデセニル、n-テトラデセニル、n-ペンタデセニル、n-ヘキサデセニル、n-ヘプタデセニル及びn-オクタデセニル等が挙げられる。これらのうち、分散性及び熱分解性の観点から、直鎖アルキル基及び直鎖アルケニル基が好ましく、さらに好ましくは直鎖アルキル基である。
【0020】
炭素数3~8のアシル基(R)としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基を含んでもよい炭素数3~8のアシル基であれば制限はないが、分散性及び熱分解性の観点から、カルボキシル基、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基を含まない炭素数3~8のアシル基;カルボキシル基を含む炭素数3~8のアシル基;ヒドロキシ基を含む炭素数3~8のアシル基;アミノ基を含む炭素数3~8のアシル基;カルボキシル基、ヒドロキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも2種を含む炭素数3~8のアシル基が好ましく、さらに好ましくはカルボキシ基を含む炭素数3~8のアシル基、特に好ましくは式(2)で表されるアシル基である。
【0021】

-C(=O)-R-COM (2)
【0022】
は炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基、Mは水素原子又はアンモニウム、Cは炭素原子、Oは酸素原子である。
【0023】
炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基(R)のうち、アルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、1-プロピルエチレン、1-メチルエチレン、2-メチルトリメチレン及び2,2-ジメチルトリメチレン等が挙げられる。
【0024】
アルケニレン基としては、エチニレン、プロピニレン、1-メチルエチニレン及び3-ヘキセン-1,6-ジイル(-CHCHCH=CHCHCH-)等が挙げられる。これらのうち、分散性及び熱分解性の観点から、エチレン及びエチニレンが好ましい。
【0025】
水素原子又はアンモニウム(M)のうち、アンモニウムとしてはアンモニウム(NH )及び炭素数2~16の有機アンモニウムが含まれる。
有機アンモニウムとしては、第一級アンモニウム(エチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、1-メチル-1-ヒドロキシメチルエチルアンモニウム等)、第二級アンモニウム(ジエチルアンモニウム及びジエタノールアンモニウム等)、第三級アンモニウム(トリエチルアンモニウム及びトリエタノールアンモニウム等)及び第四級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム及びテトラブチルアンモニウム等)が挙げられる。これらのうち、分散性及び熱分解性の観点から、アンモニウム及び水素原子が好ましく、さらに好ましくは水素原子である。
【0026】
炭素数2~4のオキシアルキレン基(AO)としては、オキシエチレン(EO)、オキシプロピレン(PO)及びオキシブチレン(BO)等が挙げられる。
【0027】
-(AO)-で表されるポリオキシアルキレン鎖には、複数種類のオキシアルキレン基(AO)を含んでもよく、複数種類を含む場合、結合様式はブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、少なくともブロック状を含むことが好ましい。
【0028】
-(AO)-で表されるポリオキシアルキレン鎖にオキシエチレン基を含むことが好ましい。
【0029】
-(AO)-で表されるポリオキシアルキレン鎖にオキシエチレン基を含む場合、オキシエチレン基の含有量(モル%)は、分散性及び熱分解性の観点から、オキシアルキレン基の全モル数(m)に対して、60~100が好ましく、さらに好ましくは70~100、特に好ましくは80~100である。
【0030】
mは、分散性及び熱分解性の観点から、10~30の整数が好ましく、さらに好ましくは12~26の整数、特に好ましくは16~24の整数である。
【0031】
式(1)で表される分散剤は、モノオールとカルボン酸(ジカルボン酸が好ましい)とのエステル化反応;又はモノオールとカルボン酸エステル(ジカルボン酸エステルが好ましい)とのエステル交換反応により調製できる。また、カルボン酸無水物(ジカルボン酸無水物が好ましい)とモノオールとのハーフエステル化反応によっても得ることができる。
【0032】
モノオールとしては、式(3)で表されるアルコールが好ましい。
【0033】

O-(AO)-H (3)
【0034】
O、AO、mは式(1)と同じであり、Hは水素原子である。
【0035】
カルボン酸としては、炭素数3~8のカルボン酸であれば制限ないが、ジカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは式(4)で表されるジカルボン酸である。
【0036】

HO-C(=O)-R-COH (4)
【0037】
、C、Oは式(2)と同じであり、Hは水素原子である。
【0038】
カルボン酸エステルとしては、炭素数3~8のカルボン酸と低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びブチルアルコール等)とのエステルであれば制限ないが、ジカルボン酸と低級アルコールとのエステルが好ましく、さらに好ましくは式(4)で表されるジカルボン酸と低級アルコールとのエステルである。
【0039】
カルボン酸無水物としては、炭素数3~8のカルボン酸の酸無水物であれば制限ないが、ジカルボン酸の酸無水物が好ましく、さらに好ましくは式(4)で表されるジカルボン酸の酸無水物である。
【0040】
分散剤の含有量(重量%)は、水、分散質及び式(1)で表される分散剤の重量に基づいて、0.01~14が好ましく、さらに好ましくは0.05~10、特に好ましくは1~5である。この範囲であると、さらに効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる。
【0041】
本発明のスラリーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により他の添加剤(消泡剤、湿潤剤、粘度調整剤等)等を含有してもよい。
【0042】
消泡剤としてはSNデフォーマー170及びノプコ DF-281(サンノプコ株式会社)等、湿潤剤としてはSNウエット366及び同984(サンノプコ株式会社)等、粘度調整剤としてはSNシックナー612及び同625N(サンノプコ株式会社)が挙げられる。なお、他の添加剤を含有する場合、これらの含有量はスラリーの重量に基づいて、0.01~10重量%程度が好ましい。
【0043】
本発明の焼成用スラリーは、水分散媒、分散質及び式(1)で表される分散剤、並びに必要に応じて他の添加剤を均一混合分散できれば、製造方法に制限はなく、公知の混合分散機でスラリー化することにより得ることができる。
【0044】
本発明の焼成用スラリーは、セラミックス分野(積層セラミックコンデンサ、電池用セパレータ、電池用負極材、排ガス触媒、センサー及び半導体等)及び塗料分野(焼付け塗料等)へ使用でき、これらのうち、セラミックス分野用として適しており、積層セラミックコンデンサ用として好適であり、さらにチタン酸バリウムコンデンサ用として最適である。すなわち、酸化チタンスラリーを炭酸バリウム等と共に焼成することにより得られるチタン酸バリウム用として最適である。
【実施例0045】
以下、特記しない限り、部は重量部を意味する。
<製造例1>
モノオール(1;エマルミン180、セチルアルコール及びオレイルアルコールを主成分とする高級アルコールのエチレンオキシド付加体、式(3)におけるmは18、三洋化成工業株式会社、「エマルミン」は同社の登録商標である。)1020部(1モル部)及びカルボン酸(1;無水マレイン酸、ナカライテスク株式会社)98部(1モル部)を撹拌しながら120℃まで昇温し、同温度にて4時間撹拌を続け、分散剤(D1)を得た。
【0046】
<製造例2>
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(2;エマルミン240、セチルアルコール及びオレイルアルコールを主成分とする高級アルコールのエチレンオキシド付加体、式(3)におけるmは24、三洋化成工業株式会社、「エマルミン」は同社の登録商標である。)1250部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D2)を得た。
【0047】
<製造例3>
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(3;ブラウノンEL-1521、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加体、式(3)におけるmは21、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)1110部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D3)を得た。
【0048】
<製造例4>
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(4;ブラウノンCH-320L、セチルアルコールのエチレンオキシド付加体、式(3)におけるmは20、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)1120部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D4)を得た。
【0049】
<製造例5>
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(5;ブラウノンSR-720、ステアリルアルコールのエチレンオキシド付加体、式(3)におけるmは20、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)1150部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D5)を得た。
【0050】
<製造例6>
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(6;ブラウノンEN-1520A、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加体、式(3)におけるmは20、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)1150部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D6)を得た。
【0051】
<製造例7>
耐圧反応容器に、カルコール8688{n-ステアリルアルコール、花王株式会社、「カルコール」は同社の登録商標である。}267部(1モル部)及び水酸化カリウム0.07部を投入し、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.2MPaになるまで加圧し0.1MPaになるまで排出する操作を3回繰り返した後(以下、この窒素を用いる処理を「窒素置換」と略する。)、減圧下(-0.1MPa)、攪拌しながら内容物を130℃に昇温し、内容物を撹拌しながら、プロピレンオキシド(PO)232部(4モル部)、エチレンオキシド(EO)880部(20モル部)を4時間かけて滴下し、さらに同温度にて2時間攪拌を続け、モノオール(7;ステアリルアルコールのプロピレンオキシド/エチレンオキシドランダム付加体、式(3)におけるmは24)を得た。
【0052】
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(7)1380部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D7)を得た。
【0053】
<製造例8>
耐圧反応容器に、カルコール8688{n-ステアリルアルコール、花王株式会社、「カルコール」は同社の登録商標である。}267部(1モル部)及び水酸化カリウム0.07部を投入し、窒素置換した後、減圧下(-0.1MPa)、攪拌しながら内容物を130℃に昇温し、内容物を撹拌しながら、プロピレンオキシド(PO)116部(2モル部)、エチレンオキシド(EO)176部(4モル部)を2時間かけて滴下し、同温度にて2時間攪拌を続けた後、エチレンオキシド(EO)440部(10モル部)を3時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間撹拌を続け、モノオール(8;ステアリルアルコールのプロピレンオキシド/エチレンオキシド(ランダム)・エチレンオキシド(ブロック)付加体、式(3)におけるmは16)を得た。
【0054】
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(8)1000部(1モル部)」に変更したこと及び「カルボン酸(1)98部(1モル部)」を「カルボン酸(2;無水こはく酸、ナカライテスク株式会社)100部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、分散剤(D8)を得た。
【0055】
<製造例9>
耐圧反応容器に、カルコール8688{n-ステアリルアルコール、花王株式会社、「カルコール」は同社の登録商標である。}267部(1モル部)及び水酸化カリウム0.07部を投入し、窒素置換した後、減圧下(-0.1MPa)、攪拌しながら内容物を130℃に昇温し、内容物を撹拌しながら、プロピレンオキシド(PO)232部(4モル部)、2時間かけて滴下し、同温度にて1時間攪拌を続け、エチレンオキシド(EO)704部(16モル部)を4時間かけて滴下し、同温度にて2時間攪拌を続け、モノオール(9;ステアリルアルコールのプロピレンオキシド・エチレンオキシドブロック付加体、式(3)におけるmは20)を得た。
【0056】
「モノオール(1)1020部(1モル部)」を「モノオール(9)1200部(1モル部)」に変更したこと及び「カルボン酸(1)98部(1モル部)」を「カルボン酸(2)100部(1モル部)」に変更したこと以外、製造例1同様にして、分散剤(D9)を得た。
【0057】
<比較製造例1>
特許文献1(特開2011-105808号公報)に記載された実施例1に準拠して、比較用の分散剤(H1:アクリル酸重合体のアンモニウム塩の40重量%水溶液)を調整した。
【0058】
<比較製造例2>
特許文献2(特開2017-115131号公報)に記載された実施例1に準拠して、比較用の分散剤(H2;アクリル酸-マレイン酸共重合体の塩の40重量%水溶液)を調製した。
【0059】
<実施例1~9>
イオン交換水29g部及び製造例1~9で調製した分散剤(D1)~(D9)のいずれか1g、酸化チタン(タイペークR-820、石原産業株式会社)70g、ジルコニアビーズ200g{直径1mm}を入れ、ペイントコンディショナー{1400-0H、RED DEVIL社}にて3時間撹拌して、本発明の焼成用酸化チタンスラリー(1)~(9)を調製した。
【0060】
<比較例1~3>
「イオン交換水29g」を「イオン交換水27.5g」、「製造例1~9で調製した分散剤(D1)~(D9)のいずれか1g」を「比較製造例1~2で調製した分散剤(H1)~(H2)のいずれか2.5g又はイオン交換水2.5g(分散剤を含まない)」に変更したこと以外、実施例1~9と同様にして、比較用の焼成用酸化チタンスラリー(HS1)~(HS3)を調製した。
【0061】
<実施例10~18>
イオン交換水89g部及び製造例1~9で調製した分散剤(D1)~(D9)のいずれか1g、酸化チタン(AEROXIDE TiO P25、Evonik社)10g、ジルコニアビーズ300g{直径1mm}を入れ、ペイントコンディショナー{1400-0H、RED DEVIL社}にて8時間撹拌して、本発明の焼成用酸化チタンスラリー(10)~(18)を調製した。
【0062】
<比較例4~6>
「イオン交換水89g」を「イオン交換水87.5g」、「製造例1~9で調製した分散剤(D1)~(D9)のいずれか1g」を「比較製造例1~2で調製した分散剤(H1)~(H2)のいずれか2.5g又は水2.5g(分散剤を含まない)」に変更したこと以外、実施例10~18と同様にして、比較用の焼成用酸化チタンスラリー(HS4)~(HS6)を調製した。
【0063】
<評価1>
焼成用酸化チタンスラリー(1)~(9)及び(HS1)~(HS3)のそれぞれに含まれる分散質の体積平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA‐950V2、株式会社堀場製作所)を用いて測定し、下表に示した。体積平均粒子径の値が小さいほど分散性に優れていることを意味する。
【0064】
焼成用酸化チタンスラリー(10)~(18)及び(HS4)~(HS6)のそれぞれに含まれる分散質の体積平均粒子径を動的光散乱測定器(nanoParticaSZ-100、株式会社堀場製作所)を用いて測定し、下表に示した。体積平均粒子径の値が小さいほど分散性に優れていることを意味する。
【0065】
【表1】
【0066】
<評価2>熱分解性
実施例及び比較例で調製した焼成用酸化チタンスラリーを焼成した場合、加熱減量の差が小さいため、以下のように分散剤の加熱減量について評価した。
【0067】
評価試料{分散剤(D1)~(D9)並びに比較用の分散剤(H1)及び(H2)のいずれか}を示差熱・熱重量同時測定装置{NEXTA STA200、株式会社日立ハイテク、「NEXTA」は同社の登録商標である}を用いて、加熱減量を測定し、加熱減量が95重量%を超えたとき(加熱前の重量の5重量%未満になったとき)の温度(℃)を読み取り、10℃未満を四捨五入して下表に示した。この値が小さい程、熱分解性に優れることを意味する。
【0068】
測定条件:
リファレンス:α―アルミナ
気体流量 :空気100mL/分
昇温速度 :100℃30分保持後、10℃/分で昇温し、600℃で10分保持
【0069】
【表2】
【0070】
本発明のスラリー(焼成用酸化チタンスラリー)は、比較用のスラリーと同等の分散性を示したのにもかかわらず、低い温度で短時間に加熱分解できた。すなわち、本発明のスラリーは効率的に(すなわち、より低い温度で短時間に)焼結体を得ることができる。