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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167837
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】役物部材、改修方法及び施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 4/02 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
E04H4/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084192
(22)【出願日】2023-05-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名 「日本リベットルーフ防水工事業協同組合 令和4年度第23回JRC関東支部技術研修会」 開催日 令和4年10月19日 開催場所 東京都千代田区飯田橋3-10-8 ホテルメトロポリタンエドモント
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】太田 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】角 泰徳
(57)【要約】
【課題】役物部材と防水下地との間に水が浸入しにくく、防水シートの張り替え作業を効率化する役物部材を提供する。
【解決手段】防水下地に防水シートが敷設される防水構造に適用されて一部が防水シートの開口部から露出する状態で防水下地に固定される役物部材3であって、防水シートから露出する露出部位52、Hを備え、防水下地に固定される本体部材5と、本体部材5における防水シートと対向する対向面に露出部位52、Hを囲む状態で交換可能に固定される板状部材6と、を備え、板状部材6における本体部材5と対向する第1面6bは、本体部材5に対して水密に固定されており、板状部材6における第1面6bと反対側の第2面6cは、防水シートに対して接着可能である、役物部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に防水シートが敷設される防水構造に適用されて一部が前記防水シートの開口部から露出する状態で前記防水下地に固定される役物部材であって、
前記防水シートから露出する露出部位を備え、前記防水下地に固定される本体部材と、
前記本体部材における前記防水シートと対向する対向面に前記露出部位を囲む状態で交換可能に固定される板状部材と、を備え、
前記板状部材における前記本体部材と対向する第1面は、前記本体部材に対して水密に固定されており、
前記板状部材における前記第1面と反対側の第2面は、前記防水シートに対して接着可能である、役物部材。
【請求項2】
前記本体部材は、前記露出部位を囲むと共に前記板状部材によって覆われる板状部位を備える請求項1に記載の役物部材。
【請求項3】
前記本体部材と前記板状部材との間に配置され、前記第1面と前記本体部材との間に水が浸入するのを防ぐシール部材を更に備える請求項1に記載の役物部材。
【請求項4】
前記露出部位は、水が通流する通流口である請求項1に記載の役物部材。
【請求項5】
前記露出部位は、コースロープが引っ掛けられるコースロープフックである請求項1に記載の役物部材。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の前記役物部材が適用されている前記防水構造を改修する改修方法であって、
既設の前記防水シートを除去する工程と、
前記本体部材から前記板状部材を取り外す工程と、
新たな板状部材を前記本体部材に固定する工程と、
新たな防水シートを前記防水下地に敷設すると共に前記板状部材の前記第2面に前記防水シートを接着する工程と、を含む改修方法。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項に記載の前記役物部材を適用して前記防水構造を施工する施工方法であって、
前記役物部材の前記本体部材を前記防水下地に固定する工程と、
前記防水シートを前記防水下地に敷設すると共に前記板状部材の前記第2面に前記防水シートを接着する工程と、を含む施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、役物部材、改修方法及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プール底面や屋上の床部等において、コンクリート下地にあけられた穴から立設する役物部としてのパイプと、パイプとコンクリート下地との接合部を覆い、かつ、合成樹脂製の防水シートが融着される防水シート固定具と、が開示されている。
【0003】
この防水シート固定具は、パイプの外周面を覆う管形状の管部分と、管部分の一端に形成され、コンクリート下地に沿って延びるフランジ部分と、を備えている。防水シート固定具の管部分はパイプの外周面に対して溶剤によって溶着されている。また、防水シート固定具のフランジ部分の表面には防水シートが熱風ガンによって融着されている。さらに、フランジ部分の表面において、防水シートの端部にはシーリング剤が充填されている。これにより、防水シート固定具によって、パイプとコンクリート下地との接合部から防水シートとコンクリート下地との間に水が浸入しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-96783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、防水下地に載置された防水シートは、経年による水密性の低下を避けるため、定期的に張り替えられる。
【0006】
特許文献1に記載の防水シート固定具は、パイプとコンクリート下地との接合部を防水するために、防水シート固定具の管部分がパイプと溶着されると共に、防水シート固定具のフランジ部分に防水シートが溶着されている。このため、防水シートを張り替える際に、パイプから防水シート固定具及び防水シートを取り外すのに非常に手間がかかる。
【0007】
したがって、パイプが経年劣化していない場合でも、防水シートを張り替える際に、防水シートだけでなくパイプを交換する必要がある。特に、パイプがコンクリート下地に埋設されている場合は、パイプを交換する際にコンクリート下地を斫る作業が必要となるため、防水シートの張り替え作業に多くの手間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、防水シートと防水下地との間に水が浸入しにくく、防水シートの張り替え作業を効率化する役物部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する手段として、本発明の役物部材は、防水下地に防水シートが敷設される防水構造に適用されて一部が前記防水シートの開口部から露出する状態で前記防水下地に固定される役物部材であって、前記防水シートから露出する露出部位を備え、前記防水下地に固定される本体部材と、前記本体部材における前記防水シートと対向する対向面に前記露出部位を囲む状態で交換可能に固定される板状部材と、を備え、前記板状部材における前記本体部材と対向する第1面は、前記本体部材に対して水密に固定されており、前記板状部材における前記第1面と反対側の第2面は、前記防水シートに対して接着可能であることを特徴とする。
【0010】
板状部材が本体部材に対して交換可能に固定である場合、役物部材の一部が防水シートの開口部から露出する状態で防水下地に固定されることで、水が防水シートの開口部から本体部材と板状部材との間を通って、防水シートと防水下地との間に水が浸入することがある。本構成によれば、露出部位を囲む状態で設けられる板状部材が、本体部材に対して水密に固定されると共に、本体部材に対して交換可能に固定されるので、本体部材と板状部材との間に水が浸入しにくくなると共に、板状部材を本体部材から取り外すことで、役物部材から防水シートを除去することができるので、防水シートの張り替え作業を効率化できる。
【0011】
本発明において、前記本体部材は、前記露出部位を囲むと共に前記板状部材によって覆われる板状部位を備えると好適である。
【0012】
本構成によれば、板状部位によって、本体部材における板状部材と対向する面に凹凸がある構成と比較して、板状部材の第一面と本体部材の板状部との間に隙間が生じにくいので、板状部材が前記本体部材に対して水密に固定されやすくなる。これにより、本体部材と板状部材との間に水が浸入しにくくなる。
【0013】
本発明において、前記本体部材と前記板状部材との間に配置され、前記第1面と前記本体部材との間に水が浸入するのを防ぐシール部材を更に備えると好適である。
【0014】
板状部材と本体部材との間に隙間が生じた場合、水が本体部材と板状部材との間を通って、防水シートと防水下地との間に浸入する場合がある。本構成によれば、本体部材と板状部材との間に隙間が生じた場合でも、シール部材によって、本体部材と板状部材との間の隙間が埋められるので、防水下地まで水が浸入することを防ぐことができる。
【0015】
本発明において、前記露出部位は、水が通流する通流口であると好適である。
【0016】
本構成によれば、本発明を通流口金具に適用できるため、板状部材を本体部材から取り外すことで、通流口金具から防水シートを除去することができる。これにより、防水シートの張り替え作業を効率化できる。
【0017】
本発明において、前記露出部位は、コースロープが引っ掛けられるコースロープフックであると好適である。
【0018】
本構成によれば、本発明をコースロープフック金具に適用できるため、板状部材を本体部材から取り外すことで、コースロープフック金具から防水シートを除去することができる。これにより、防水シートの張り替え作業を効率化できる。
【0019】
本発明の改修方法は、請求項1から5の何れか1項に記載の前記役物部材が適用されている前記防水構造を改修する改修方法であって、既設の前記防水シートを除去する工程と、前記本体部材から前記板状部材を取り外す工程と、新たな板状部材を前記本体部材に固定する工程と、新たな防水シートを前記防水下地に敷設すると共に前記板状部材の前記第2面に前記防水シートを接着する工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、露出部位を囲む状態で設けられる板状部材が、本体部材に対して水密に固定されると共に、本体部材に対して交換可能に固定されるので、本体部材と板状部材との間に水が浸入しにくくなると共に、板状部材を本体部材から取り外すことで、役物部材から防水シートを除去することができるので、防水構造の改修を効率化できる。
【0021】
本発明の施工方法は、請求項1から5の何れか1項に記載の前記役物部材を適用して前記防水構造を施工する施工方法であって、前記役物部材の前記本体部材を前記防水下地に固定する工程と、前記防水シートを前記防水下地に敷設すると共に前記板状部材の前記第2面に前記防水シートを接着する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
本構成によれば、露出部位を囲む状態で設けられる板状部材が、本体部材に対して水密に固定されると共に、本体部材に対して交換可能に固定されるので、本体部材と板状部材との間に水が浸入しにくくなると共に、板状部材を本体部材から取り外すことで、役物部材から防水シートを除去することができるので、改修を行い易い防水構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】役物部材の一例を示す分解斜視図である。
図2】役物部材の一例を示す横断面図である。
図3】役物部材の一例を示す正面図である。
図4】役物部材の施工方法を示すフローチャートである。
図5】役物部材の改修方法を示す横断面図である。
図6】役物部材の改修方法を示す横断面図である。
図7】役物部材の改修方法を示すフローチャートである。
図8】役物部材の別の一例を示す横断面図である。
図9】役物部材の別の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る役物部材の一例である循環口金具、この循環口金具が適用される改修方法及び施工方法について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図面における矢印Fの方向を「前側」、矢印Bの方向を「後側」、矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」とする。
【0025】
本発明に係る役物部材は、防水構造に適用される。ここで防水構造とは、防水下地に防水シートが敷設されることで防水処理がされている構造である。本実施形態において、防水下地は、コンクリート製であると共に水を貯水するプール水槽1の表面部位である。これに限らず、防水下地は、水道水などを貯水する貯水槽の表面部位でもよい。また、プール水槽1は他の材質でも良く、例えば、鋼製、アルミ製、ステンレス製等であってもよい。
【0026】
図1に示すように、役物部材3は、防水下地に固定される本体部材5と、本体部材5における防水シートと対向する対向面に交換可能に固定される板状部材6と、本体部材5と板状部材6との間に配置されるシール部材7と、を備える。板状部材6及びシール部材7は、本体部材5にネジ部材9によって交換可能に固定される。
【0027】
防水下地に敷設される防水シートは、板状部材6の表面に接着される。ここで、防水シートが本体部材5の表面に接着されている場合、防水シートを張り替える際に、既存の防水シートが完全に除去されずに残っていると新しい防水シートが本体部材5に接着しにくくなる。このため、本体部材5の表面から既設の防水シートを完全に除去する必要がある。本実施形態によれば、板状部材6を本体部材5に固定しているネジ部材9のネジ頭を露出させれば、板状部材6を本体部材5から取り外すことができる。つまり、防水シートを張り替える際に、防水シートを板状部材6から完全に除去する必要がないので、防水シートが本体部材5の表面に接着される構成と比較して、防水シートの張り替え作業を効率化できる。
【0028】
図2図3に示すように、防水下地Gには、防水シート2が敷設される。防水シート2は、役物部材3と防水下地Gとの間の隙間を覆っている。また、防水シート2は役物部材3の一部を覆っている。換言すると、役物部材3は、役物部材3の一部が防水シート2の開口部2aから露出する状態で、防水下地Gに固定される。具体的には、役物部材3は、プール水槽1が有する孔1aに設けられる。
【0029】
役物部材3は、プール水槽1の孔1aに設けられることで、防水下地Gと面一となる。これに限らず、役物部材3は他の形態で設置されてもよい。例えば、役物部材3は、孔1aに設けられずに、防水下地Gに固定されてもよい。この場合、役物部材3は防水下地Gと面一とならない。
【0030】
プール水槽1は枡状である。具体的には、プール水槽1はプール水槽1の底に位置する面状の底部(図示なし)と、底部から立設すると共に底部の周囲を囲う複数の縦壁部(図示なし)と、を有する。縦壁部は面状であり、役物部材3が設けられる孔1aを有する。
【0031】
〔防水シート〕
図2図3に示すように、防水シート2は、水を通さないように樹脂材料を含有するシート状の部材である。具体的には、防水シート2は、塩化ビニル系防水シートである。これに限らず、樹脂材料は他の樹脂でもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等でもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。また、防水シート2はゴム製のシート状部材であってもよい。
【0032】
本実施形態において、「水」は減菌のための塩素減菌剤を含んでいる。これに限らず、「水」は雨水や水道水などでもよく、温水や温泉水などでもよい。
【0033】
防水シート2は、固定部材(図示なし)を介して底部に固定される。また、防水シート2は、接着剤によって縦壁部に固定される。このため、防水シート2と防水下地Gとの間には、接着剤による接着層が存在する。
【0034】
固定部材は、L字状の金具である。これに限らず、固定部材はどんな形態でもよい。例えば、固定部材は平板状でもよい。固定部材は、底部にアンカー固定される。また、防水シート2は固定部材の表面に、熱による融着または溶剤による溶着により固定される。
【0035】
〔本体部材〕
図1図2図3に示すように、本体部材5は、水が通流する貫通孔Hを有する。換言すると、貫通孔Hは、水が通流する通流口である。具体的には、貫通孔Hは、循環ろ過装置によってろ過された水が通流する循環水吐出口である。これに限らず、貫通孔Hは、循環水吸引口、給水口または排水口等でもよい。本体部材5の貫通孔Hが防水シート2の開口部2aと連通することで、本体部材5の貫通孔H内部を通流した水がプール水槽1に排出される。貫通孔Hは、防水シート2の開口部2aから露出する。換言すると、防水シート2は、貫通孔Hの周囲を覆っている。
【0036】
本体部材5は、前側に位置する部分が広がる漏斗形状である。具体的には、本体部材5は、前側に位置する部分が前側ほど広がる形状であり、後側に位置する部分が筒状である。
【0037】
本体部材5は、ステンレス製である。これに限らず、本体部材5は他の形態でもよい。例えば、本体部材5はその他の金属で形成されていてもよく、樹脂製でもよい。また、本体部材5は、金属の表面を塩化ビニルで被覆したものでもよい。
【0038】
プール水槽1の孔1aには、水が通流するための配管8が埋設されている。本体部材5は配管8と接続される。具体的には、本体部材5の後側において、貫通孔Hの内側面に雌ネジ部位5aを有しており、雌ネジ部位5aが配管8の外周面の雄ネジ部位8aに係合する。これに限らず、本体部材5と配管8とは溶剤や接着剤等によって固定されてもよい。
【0039】
本体部材5は、貫通孔H(露出部位の一例)を囲むと共に板状部材6によって覆われる板状部位51と、開口部2aから露出する目皿52(露出部位の一例)と、を備える。つまり、特許請求の範囲に記載された「露出部位」は、本実施形態における貫通孔H及び目皿52に相当する。露出部位は、本体部材5のうち、前側からみて防水シート2または板状部材6によって覆われない部位である。換言すると、露出部位は、本体部材5のうち、プール水槽1の水にさらされる部位である。
【0040】
〔板状部位〕
図1図2図3に示すように、板状部位51は、本体部材5の前側の端部に設けられる鍔状の部材である。板状部位51は板状であり、前側からみて円環状である。板状部位51において、板状部材6と対向する対向面は、凹凸のない平坦形状である。板状部位51は、前側からみて貫通孔H及び目皿52の周りに位置しており、貫通孔H及び目皿52を囲んでいる。
【0041】
図3において、一点鎖線で示されるC1は、板状部位51の外縁部に沿った曲線でなす円を示す仮想線である。また、一点鎖線で示されるC2は、板状部位51の内縁部に沿った曲線でなす円を示す仮想線である。前側からみて、円C1の半径は、円C2の半径の2倍よりも大きい。つまり、円環状に構成された板状部位51の内縁部から外縁部までの距離Lは、円C2の半径よりも大きい。
【0042】
板状部位51は、板状部材6と対向する面に複数のネジ孔51aを有する。前側からみて、隣接するネジ孔51aが板状部位51の内縁部側または外縁部側に位置ずれした状態で、複数のネジ孔51aが円周方向に並んでいる。
【0043】
〔目皿〕
図1図2図3に示すように、目皿52は、貫通孔Hから排出される水の量を調整する部材である。目皿52は、板状の取付片52aを介して本体部材5に固定されている。複数の取付片52aは、貫通孔Hの内側面から内側に突出している。複数の取付片52aは、前側からみて、円周方向に等間隔に配置されている。目皿52は、防水下地Gと面一となる。
【0044】
〔板状部材〕
図1図2図3に示すように、板状部材6は、板状部位51と同形状であり、同じ大きさである。具体的には、板状部材6は、板状であり、前側からみて円環状である。板状部材6は樹脂で構成されている。具体的には、板状部材6はポリ塩化ビニルで構成され、防水機能を有する。板状部材6は、貫通孔H及び目皿52を囲む状態で本体部材5における防水シート2と対向する対向面に交換可能に固定されている。板状部材6は、前側からみて貫通孔H及び目皿52の周りに位置している。
【0045】
板状部材6は、本体部材5の貫通孔Hと連通する開口部6aと、板状部材6における本体部材5と対向する第1面6bと、板状部材6における第1面6b反対側の第2面6cと、を有する。第2面6cは、板状部材6の表面側に位置する。
【0046】
板状部材6は、複数のネジ挿通孔6dを有する。ネジ挿通孔6dは、板状部位51のネジ孔51aと連通する。板状部材6は、ネジ部材9によって、本体部材5に固定される。板状部材6は、ネジ部材9の着脱によって本体部材5に交換可能に固定されている。前側からみて、板状部材6は、板状部位51の全体を覆っている。
【0047】
第1面6bは、本体部材5における板状部位51と対向している。第1面6bは、凹凸のない平坦形状である。板状の板状部材6と、板状の板状部位51が固定されることで、板状部材6と板状部位51との間に隙間が生じにくい。これにより、第1面6bは、本体部材5に対して水密に固定される。換言すると、板状部材6の第1面6bと本体部材5との間に水が浸入しにくくなる。
【0048】
第2面6cは、防水シート2に対して接着可能である。具体的には、第2面6cは、防水シート2に対して、熱により融着または溶剤により溶着される。防水シート2の開口部2aは、前側からみて、板状部材6の開口部6aよりも外側に位置する。
【0049】
〔シール部材〕
図2図3に示すように、シール部材7は、板状部位51と同形状であり、同じ大きさである。具体的には、板状部材6は、前側からみて円環状である。シール部材7は、合成ゴム製のガスケットである。シール部材7は、前側からみて貫通孔H及び目皿52の周りに位置しており、貫通孔H及び目皿52を囲んでいる。
【0050】
シール部材7は、板状部材6の第1面6b全体を覆った状態で板状部位51に固定される。シール部材7は、本体部材5の貫通孔Hと連通する開口部7aを有する。
【0051】
シール部材7は、複数のネジ挿通孔7bを有する。ネジ挿通孔7bは、板状部位51のネジ孔51a及び板状部材6のネジ挿通孔6dと連通する。シール部材7はネジ部材9によって、本体部材5に固定される。シール部材7は、ネジ部材9の着脱によって本体部材5に交換可能に固定されている。
【0052】
次に、役物部材3を適用して防水構造を施工する施工方法について、図2図3図4に基づいて説明する。なお、下記に記載する工程は矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数の工程が同時に行われてもよい。
【0053】
[1-1]役物部材3の本体部材5をプール水槽1に固定する工程(ステップS01)
本体部材5を配管8に接続して、コンクリートをプール水槽1の型枠に流し込むことで本体部材5をプール水槽1に埋設する。これに限らず、本体部材5を、防水下地Gにアンカー固定してもよく、本体部材5を、防水下地Gに溶着してもよい。また、本体部材5をプール水槽1に空けられた孔1aに嵌め込んでもよい。
【0054】
[1-2]本体部材5に板状部材6を固定する工程(ステップS02)
本体部材5を板状部材6及びシール部材7で覆う。次に、ネジ部材9によって、板状部材6及びシール部材7を本体部材5に係合する。以上の工程によって、板状部材6及びシール部材7を本体部材5に固定する。これに限らず、予め板状部材6及びシール部材7が本体部材5に固定されていてもよい。
【0055】
[1-3]防水シート2をプール水槽1に敷設すると共に板状部材6の第2面6cに防水シート2を接着する工程(ステップS03)
防水シート2を防水下地Gに敷設する。また、貫通孔H及び目皿52が防水シート2の開口部2aから露出するように、防水シート2を板状部材6の第2面6cに敷設する。次に防水シート2を板状部材6の第2面6cに対して、熱による融着または溶剤による溶着により接着する。
【0056】
前側からみて、防水シート2は、板状部材6の全てのネジ挿通孔6dを覆っている。ここで、水は塩素減菌剤を含んでいるので、役物部材3が金属製である場合は、水がネジ挿通孔6dを通って板状部位51のネジ孔51aに浸入すると、経年によって板状部位51の一部が腐食する場合がある。本実施形態の役物部材3は、防水シート2によって、板状部材6の全てのネジ挿通孔6dが覆われるので、役物部材3が腐食しにくくなる。
【0057】
[1-4]防水シート2と役物部材3との間にシーリング材Sを充填する工程(ステップS04)
防水シート2の開口部2aと板状部材6の第2面6cとの間にシーリング材Sを充填する。
【0058】
ここで、役物部材3が板状部材6を備えておらず、シーリング材Sが開口部2aと板状部位51との間に充填される場合、防水シート2の張り替え作業の際に、板状部位51からシーリング材Sを完全に除去する必要がある。このとき、金属製のヘラなどで板状部位51からシーリング材Sを削り取ると、板状部位51の表面を傷つけてしまう場合がある。本実施形態において、板状部材6は本体部材5に交換可能に固定されているので、板状部材6を交換することで、板状部位51の表面を傷つけずにシーリング材Sを簡単に除去することができる。
【0059】
次に、役物部材3が適用されている防水構造を改修する改修方法について、図5図6図7に基づいて説明する。なお、下記に記載する工程は矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数の工程が同時に行われてもよい。
【0060】
[2-1]既設の防水シート2を除去する工程(ステップS11)
図5に示すように、役物部材3の外縁部に沿って既設の防水シート2を切り取る。既設の防水シート2は、プール水槽1の縦壁部に接着剤によって接着されている場合は、既設の防水シート2の残りの部分はそのまま残置しておく。
【0061】
[2-2]本体部材5から板状部材6を取り外す工程(ステップS12)
図5に示すように、ネジ部材9のネジ頭を露出させるために、既設の防水シート2を板状部材6から除去する。このとき、シーリング材S及び既設の防水シート2の一部は、板状部材6の第2面6cに残っていてもよい。次に、ネジ部材9を外して、既設の板状部材6及び既設のシール部材7を本体部材5から取り外す。本体部材5は、そのまま残置しておく。以上の工程によって、既設の防水シート2を本体部材5から除去する。
【0062】
[2-3]新たな板状部材6を本体部材5に固定する工程(ステップS13)
図6に示すように、新たな板状部材6で本体部材5の板状部位51を覆う。新たな板状部材6は、既設の板状部材6よりも厚みが大きい。ここで、残置されている既存の防水シート2に新たな防水シート2を重ねて敷設する場合、新たな板状部材6が既設の板状部材6と同じ厚みだと、既存の防水シート2の厚み分だけ防水下地Gと役物部材3の表面との間に段差が生じてしまう。プール水槽1においては、防水構造の表面に凹凸がないことが好ましい。本実施形態において、新たな板状部材6は、既設の板状部材6よりも既存の防水シート2の厚み分だけ厚みが大きいので、プール水槽1と役物部材3との間に段差が生じない。
【0063】
次に、ネジ部材9によって、板状部材6及びシール部材7を本体部材5に係合する。以上の工程によって、板状部材6及びシール部材7を交換する。
【0064】
[2-4]新たな防水シート2をプール水槽1に敷設すると共に板状部材6の第2面6cに防水シート2を接着する工程(ステップS14)
図6に示すように、残置された既存の防水シート2に重ねて、新たな防水シート2を防水下地Gに敷設する。また、貫通孔H及び目皿52が新たな防水シート2の開口部2aから露出するように、防水シート2を板状部材6の第2面6cに敷設する。次に、防水シート2を板状部材6の第2面6cに対して、熱による融着または溶剤による溶着により接着する。
【0065】
[2-5]防水シート2と役物部材3との間にシーリング材Sを充填する工程(ステップS15)
図6に示すように、防水シート2の開口部2aと板状部材6の第2面6cとの間にシーリング材Sを充填する。
【0066】
以上の工程によって、防水構造の改修を行う。これにより、役物部材3の本体部材5を交換せずに再使用できるので、防水シート2の張り替え作業の効率が向上する。
【0067】
また、プール水槽1に埋設された本体部材5を取り外す場合、コンクリート製の防水下地Gを斫る作業が必要となり、騒音や振動が発生する。本実施形態において、防水構造の改修の際に、本体部材5をプール水槽1から取り外すことなく再使用できるので、騒音や振動の発生を抑えながら、効率よく防水シート2の張り替え作業を実施できる。
【0068】
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限られない。例えば、以下の別実施形態のように構成しても良い。以下に説明する別実施形態では、実施形態と同じ構成には、実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0069】
〔1〕上述の実施形態では、防水下地Gは、プール水槽1の表面部位である。これに限らず、防水下地Gは他の形態でもよい。例えば、防水下地Gは、ベランダやバルコニー、屋上などの表面部位でもよい。この場合、役物部材3は排水される雨水などが通流するドレンである。
【0070】
〔2〕上述の実施形態では、プール水槽1は、枡状である。これに限らず、プール水槽1は、他の形態でもよい。例えば、プール水槽1は、平面視で縦壁部が湾曲しており、底部が楕円状であってもよい。
【0071】
〔3〕上述の実施形態では、プール水槽1の縦壁部は孔1aを有しており、役物部材3は、縦壁部に設けられている。これに限らず、役物部材3は、循環ろ過装置によってろ過される水を吸引する吸引口に設けられる吸引口金具でもよい。この場合、プール水槽1の底部は孔1aを有しており、役物部材3は、プール水槽1の底部に設けられる。
【0072】
〔4〕上述の実施形態では、本体部材5は、前側ほど広がる漏斗形状である。これに限らず、本体部材5は、筒状であってもよい。また、本体部材5は、板状部位51を備えていなくてもよい。
【0073】
〔5〕役物部材3は、他の形態でもよい。例えば、図8図9に示すように、役物部材3は、コースロープが引っ掛けられるコースロープフック10を有するコースロープフック金具でもよい。この場合、本体部材5は、凹部11を有する箱状の部材であり、凹部11及びコースロープフック10が防水シート2の開口部2aから露出してもよい。
【0074】
本実施形態において、板状部位51、板状部材6及びシール部材7は、前側からみて凹部11及びコースロープフック10の周りに位置しており、凹部11及びコースロープフック10を囲んでいる。
【0075】
本実施形態において、本体部材5は、プール水槽1に埋設される鉄筋に溶接される。コースロープフック10は凹部11の内部に位置する。コースロープフック10は、凹部11の上部を規定する部材と凹部11の下部を規定する部材とに亘って形成された棒状の部材である。
【0076】
また、本体部材5は、板状の部材であり、凹部11を有していなくてもよい。この場合、コースロープフック10は、本体部材5の表面から突出すると共に、先端が円弧状のフックでもよい。
【0077】
図8図9に示すように、本実施形態において、前側からみて、板状部位51は、長方形状である。複数のネジ孔51aは、前側からみて、コースロープフック10を囲んで等間隔に並んでいる。特許請求の範囲に記載された「露出部位」は、本実施形態における凹部11及びコースロープフック10に相当する。
【0078】
〔6〕役物部材3は、利用者が昇り降りするラダーハンドルと、プール水槽1の底部または縦壁部と、の接続部分に設けられる部材でもよい。本実施形態において、本体部材5は凹部を有する円筒状の部材である。ラダーハンドルが本体部材5の凹部に挿入されることで、ラダーハンドルを支持可能である。特許請求の範囲に記載された「露出部位」は、本実施形態における本体部材5の凹部に相当する。
【0079】
〔7〕上述の実施形態では、板状部材6は、板状であり、ネジ部材9によって本体部材5に交換可能に固定されている。これに限らず、板状部材6は他の形態でもよい。例えば、板状部材6は、通常よりも粘着力が低く本体部材5に対して着脱可能な両面テープによって交換可能に固定されてもよい。
【0080】
また、板状部材6は、板状部材6の外縁部から後側に折り返す折返し部位を有しており、折返し部位が板状部位51の外側面を覆っていてもよい。
【0081】
さらに、板状部材6は、折返し部位において、板状部位51の外側面に対向する面に雌ネジ部位を有しており、この雌ネジ部位が、本体部材5の外側面に設けられた雄ネジ部位に係合されることで、板状部材6が本体部材5に交換可能に固定されてもよい。
【0082】
〔8〕上述の実施形態では、板状部材6は、板状部位51と同形状であり、同じ大きさである。これに限らず、板状部材6は、板状部位51とは異なる大きさでもよい。例えば、板状部材6は、板状部位51よりも小さくてもよい。また、板状部材6は、板状部位51よりも大きくてもよい。また、板状部材6は、板状部位51と異なる形状でもよい。
【0083】
〔9〕板状部材6は、ポリ塩化ビニルで構成されている。これに限らず、例えば、板状部材6は、金属の表面を塩化ビニルで被覆した部材でもよい。
【0084】
〔10〕上述の実施形態では、役物部材3は、本体部材5と板状部材6との間にシール部材7を備える。これに限らず、役物部材3は、シール部材7を備えていなくてもよい。
【0085】
〔11〕上述の実施形態では、シール部材7は、板状部位51と同形状であり、同じ大きさである。これに限らず、シール部材7は、板状部位51とは異なる大きさでもよい。例えば、シール部材7は、板状部位51よりも小さくてもよい。また、シール部材7は、板状部位51よりも大きくてもよい。また、シール部材7は、板状部位51と異なる形状でもよい。
【0086】
〔12〕上述の実施形態では、防水シート2は、接着剤によって縦壁部に接着される。これに限らず、防水シート2は、固定部材によって縦壁部に固定されてもよい。
【0087】
本実施形態において、ステップS11において、ネジ部材9のネジ頭が露出するように防水シート2を切り取る。次に、ネジ部材9を外して、既設の板状部材6を本体部材5から取り外す。また、防水シート2を固定している固定部材を縦壁部から取り外す。これにより、役物部材3の外縁部に沿って既設の防水シート2を切り取らずに、既設の防水シート2を除去してもよい。この場合、既設の防水シート2の残りの部分は残置しない。
【0088】
〔13〕上述の実施形態では、本体部材5は、防水下地Gよりも後側に位置する。これに限らず、本体部材5は他の形態でもよい。例えば、本体部材5は、プール水槽1から突出する管状部材でもよい。本実施形態において、板状部位51は、本体部材5の前後中間部分からプール水槽1に沿って延びる鍔状の部材である。特許請求の範囲に記載された「露出部位」は、本実施形態における本体部材5のうちプール水槽1の表面よりも突出する部分に相当する。
【0089】
〔14〕また、本体部材5が目皿52を備えていなくてもよい。この場合、特許請求の範囲に記載された「露出部位」は、本実施形態における貫通孔Hに相当する。
【0090】
〔15〕上述の実施形態では、前側からみて、板状部位51は円環状である。これに限らず、板状部位51は別の形態でもよい。例えば、板状部位51は、複数の板状部位51が互いに隙間を空けた状態で貫通孔H及び目皿52の周りに設けられてもよい。
【0091】
〔16〕上述の実施形態において、シール部材7は、板状部材6とは別体である。これに限らず、シール部材7は、板状部材6と一体に構成されていてもよい。
【0092】
〔17〕上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、役物部材、改修方法及び施工方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 :プール水槽
2 :防水シート
2a :開口部
3 :役物部材
5 :本体部材
51 :板状部位
52 :目皿(露出部位)
6 :板状部材
6b :第1面
6c :第2面
7 :シール部材
10 :コースロープフック(露出部位)
11 :凹部(露出部位)
G :防水下地
H :貫通孔(露出部位)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9