(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167844
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型モータおよびドローン
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241127BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20241127BHJP
B64U 50/23 20230101ALI20241127BHJP
B64U 20/94 20230101ALI20241127BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20241127BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K21/24 M
B64U50/23
B64U20/94
B64U50/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084202
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】源 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
【テーマコード(参考)】
5H609
5H621
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609BB12
5H609BB19
5H609PP05
5H609PP06
5H609QQ04
5H609QQ13
5H609RR27
5H609RR35
5H621BB02
5H621BB10
5H621GA04
5H621GA13
5H621JK11
5H621JK13
(57)【要約】
【課題】ステータを適切に冷却することができるアキシャルギャップ型モータおよびこれを備えたドローンを提供する。
【解決手段】アキシャルギャップ型モータは、ステータと、回転の軸方向でステータに対向するロータとを備える。ステータは、回転の周方向に沿って設けられた側壁を有する環状のステータケースと、ステータケース内に収容され、周方向に配置された複数のコイルユニットと、側壁と、複数のコイルユニットとの間の領域により構成される周方向の冷媒の流路と、流路の一部に設けられ、冷媒の流通を規制する規制部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、回転の軸方向で前記ステータに対向するロータと、を備えるアキシャルギャップ型モータであって、
前記ステータは、
前記回転の周方向に沿って設けられた側壁を有する環状のステータケースと、
前記ステータケース内に収容され、前記周方向に配置された複数のコイルユニットと、
前記側壁と、前記複数のコイルユニットとの間の領域により構成される前記周方向の冷媒の流路と、
前記流路の一部に設けられ、前記冷媒の流通を規制する規制部と、を有する
アキシャルギャップ型モータ。
【請求項2】
前記側壁は、同心状に設けられた、前記ステータケースの内周壁および外周壁の少なくとも一方であり、
前記規制部は、前記内周壁および前記外周壁の少なくとも一方から突出する1以上の突起部である
請求項1に記載のアキシャルギャップ型モータ。
【請求項3】
前記突起部は、前記コイルユニットに対向する位置に、2以上のコイルユニットごとに等角度ピッチで複数配置される
請求項2に記載のアキシャルギャップ型モータ。
【請求項4】
前記突起部は、
前記外周壁に設けられ、前記複数のコイルユニットのうち第1群のコイルユニットに対向する位置に配置された複数の第1突起部と、
前記内周壁に設けられ、前記複数のコイルユニットのうち前記第1群とは異なる第2群のコイルユニットに対向する位置に配置された複数の第2突起部と、により構成される
請求項3に記載のアキシャルギャップ型モータ。
【請求項5】
前記ステータケースは、前記冷媒の供給口および排出口をさらに有し、
前記排出口より前記供給口に近い位置に配置される前記突起部の数より、前記供給口より前記排出口に近い位置に配置される前記突起部の数が多い
請求項2から4のうちいずれか1項に記載のアキシャルギャップ型モータ。
【請求項6】
ステータと、回転の軸方向で前記ステータに対向するロータと、を有するアキシャルギャップ型モータと、前記アキシャルギャップ型モータにより駆動される回転翼とを備えるドローンであって、
前記ステータは、
前記回転の周方向に沿って設けられた側壁を有する環状のステータケースと、
前記ステータケース内に収容され、前記周方向に配置された複数のコイルユニットと、
前記側壁と、前記複数のコイルユニットとの間の領域により構成される前記周方向の冷媒の流路と、
前記流路の一部に設けられ、前記冷媒の流通を規制する規制部と、を有する
ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型モータ、およびこれを備えたドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアギャップを介して回転軸方向にステータおよびロータを対向配置したアキシャルギャップ型モータが知られている。このようなアキシャルギャップ型モータにおいては、ステータの発熱が問題となる。そこで、例えば特許文献1には、ステータ本体を収容するケース(センターケース)に、冷却液の供給用および排出用の2つポートを設け、外部の循環ポンプにより当該ケース内に冷却液を流通させることで、ステータを放熱する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アキシャルギャップ型モータでは、電気機械的特性の向上を目的として、ステータコアにコイルが装着されて構成されるコイルユニットの設置数を増やして多極化を図る場合がある。コイルユニットの数を増やすほど、隣接するコイルユニット間の距離が小さくなる。冷却液等の冷媒をステータに供給してステータを冷却する場合において、隣接するコイルユニット間の距離が小さいほど、コイルユニット間における流路抵抗が大きくなり、コイルユニット間への冷媒の流入が困難となる。すなわち、コイルユニットの数が増えるほど、何も対策をしない場合、ステータを適切に冷却できないおそれがある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、ステータを適切に冷却することができるアキシャルギャップ型モータおよびこれを備えたドローンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るアキシャルギャップ型モータは、ステータと、回転の軸方向で前記ステータに対向するロータとを備える。前記ステータは、前記回転の周方向に沿って設けられた側壁を有する環状のステータケースと、前記ステータケース内に収容され、前記周方向に配置された複数のコイルユニットと、前記側壁と、前記複数のコイルユニットとの間の領域により構成される前記周方向の冷媒の流路と、前記流路の一部に設けられ、前記冷媒の流通を規制する規制部と、を有する。
【0007】
上記の一態様のアキシャルギャップ型モータにおいて、前記側壁は、同心状に設けられた、前記ステータケースの内周壁および外周壁の少なくとも一方であってもよい。また、前記規制部は、前記内周壁および前記外周壁の少なくとも一方から突出する1以上の突起部であってもよい。
【0008】
上記の一態様のアキシャルギャップ型モータにおいて、前記突起部は、前記コイルユニットに対向する位置に、2以上のコイルユニットごとに等角度ピッチで複数配置されてもよい。
【0009】
上記の一態様のアキシャルギャップ型モータにおいて、前記突起部は、前記外周壁に設けられ、前記複数のコイルユニットのうち第1群のコイルユニットに対向する位置に配置された複数の第1突起部と、前記内周壁に設けられ、前記複数のコイルユニットのうち第1群とは異なる第2群のコイルユニットに対向する位置に配置された複数の第2突起部と、により構成されてもよい。
【0010】
上記の一態様のアキシャルギャップ型モータにおいて、前記ステータケースは、前記冷媒の供給口および排出口をさらに有し、前記排出口より前記供給口に近い位置に配置される前記突起部の数より、前記供給口より前記排出口に近い位置に配置される前記突起部の数が多くてもよい。
【0011】
本発明の他の一態様に係るドローンは、上記のアキシャルギャップ型モータにより駆動される回転翼を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、アキシャルギャップ型モータのステータを適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るアキシャルギャップ型モータの、中心軸に平行な面で切断した断面図である。
【
図2】
図1に示すモータのステータケースの内部を示す平面図である。
【
図3】
図1に示すモータのステータケース内の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図4】第2実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータケースの内部を示す平面図であって、冷媒の流れを示す図である。
【
図5】第3実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータケースの内部を示す平面図であって、冷媒の流れを示す図である。
【
図6】特許文献1および各実施形態の冷却構造において、モータが作動する時のコイルの最大温度および圧力損失の一例を示す表である。
【
図7】各実施形態に係るモータが適用され得るドローンの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺および数等を異ならせる場合がある。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るモータを示す図であり、ロータ40の回転の中心軸Jを通りその中心軸Jに平行な面で切断した断面図である。モータ10は、アキシャルギャップ型モータの一例である。モータ10は、シャフト15、ロータ40、ステータ50、フレーム12および13を有する。以下では、中心軸Jに平行な方向を軸方向と言う。
【0016】
フレーム12は、ステータ50の軸方向の一方側を覆うように配置される。フレーム13は、ステータ50の軸方向の他方側を覆うように配置される。フレーム12および13は、ステータ50の後述するステータケース51に固定される。
【0017】
ステータ50は、シャフト15の外周側に同心状に配置され、軸方向において、ロータ40の後述する一対のロータ本体部48の間に位置する筒状体である。ステータ50は、一対のロータ本体部48に固定された複数の磁石42(後述)とわずかなギャップを隔てて配置されている。
【0018】
フレーム12は軸方向に貫通する貫通孔12aを有する。フレーム13は軸方向に貫通する貫通孔13aを有する。貫通孔12aおよび13aには軸受19がそれぞれ設けられている。これら軸受19により、シャフト15がフレーム12および13に回転可能に支持される。
【0019】
ステータ50は、複数のコイルユニット30と、これらコイルユニット30を収容するステータケース51とを有する。ステータケース51は、例えば軸方向の一方側が開口した有底円筒形状の本体52と、この本体52の開口を塞ぐ蓋体53とを含む。蓋体53は例えば円板形状である。ステータケース51は、軸方向に貫通する貫通穴部51aを有し、シャフト15はこの貫通穴部51aを貫通して設けられる。
【0020】
図2は、ステータケース51の内部を示す平面図である。この
図2は、ステータケース51の本体52から蓋体53が取り外された状態における、軸方向の一方側から見たステータ50を示している。
図2においてA-A’線断面図が、
図1におけるステータ50の断面図に相当する。
【0021】
ステータケース51は、環状(例えば円環状)に構成されており、周方向に沿って設けられた内側の側壁である内周壁54と、それと同心状の外側の側壁である外周壁56とを有する。なお、本体52の開口端面には、内周壁54および外周壁56において周方向に複数のボルト穴54bおよび56bがそれぞれ設けられ、不図示のボルトにより本体52に蓋体53が固定される。
【0022】
コイルユニット30は、ステータコア300と、ステータコア300に巻回されたコイル310とを有する。ステータコア300は軸方向から見て例えば台形状でなり、複数の電磁鋼板を積層して形成される。コイル310の巻回方向は、軸方向と交差する方向(水平方向)である。複数のコイルユニット30は、中心軸Jを中心としてロータ40の回転の周方向に環状に配置されている。コイルユニット30は、例えば10°ごとに配置されて合計36個設けられているが、その数はこれより多くてもよいし、少なくてもよい。
【0023】
ロータ40は、シャフト15に固定された円筒状のボス部41と、ボス部41から径方向に広がるように設けられた一対の円板状のロータ本体部48と、それらロータ本体部48に固定された複数の磁石42とを有している。各磁石42は環状に配置されている。各磁石42は、例えばフェライト磁石や希土類磁石などの永久磁石で構成されている。磁石42の数は、コイルユニット30の数に対応する。
【0024】
なお、
図1に示す例では、ステータコア300の軸方向の両端面が、磁石42に対面するようにステータケース51から露出している。しかし、ステータケース51から露出しないような設計であってもよい。
【0025】
以上のように構成されたモータ10は、コイル310の電流制御によりステータ50の磁界を順番に切り替えることで、ロータ40の磁界に対する吸引力または反発力がステータ50に発生する。これにより、シャフト15およびロータ40が回転駆動する。
【0026】
なお、本実施形態において、例えば三相交流による駆動の場合、36個のコイルユニット30のうち、12個のコイルユニット30(例えば6組の、等角度ピッチで配置される、隣接する2つのコイルユニット30)ごとに同相で駆動される。
【0027】
ステータケース51は、冷媒の供給口58および排出口59を有する。冷媒としては典型的には冷却オイルが用いられる。供給口58および排出口59は、中心軸Jを中心として周方向に180°離れた位置に配置されている。供給口58および排出口59には、不図示の循環ポンプおよび配管が接続され得る。この循環ポンプの作動によって、冷媒が供給口58からステータケース51内に流入し、ステータケース51内を通る間にステータ50の熱を受け、排出口59から流出する。排出口59から流出した冷媒が循環ポンプにより再び供給口58へ戻るまでの間に、受けた熱は外部に放出される。
【0028】
図2に示すように、各コイルユニット30は、ステータケース51の径方向に所定の距離w1をおいて外周壁56と対向するように配置されている。より詳細には、距離w1は、径方向において、外周壁56の内周面56aからコイルユニット30の外周部30a(コイル310の外周部)までの距離である。また、各コイルユニット30は、ステータケース51の径方向に所定の距離w2をおいて内周壁54と対向するように配置されている。より詳細には、距離w2は、径方向において、内周壁54の内周面54a(中心軸Jから見て内周壁54の外周面)からコイルユニット30の内周部30b(コイル310の内周部)までの距離である。
【0029】
このように、外周壁56とコイルユニット30との間の領域によって、幅w1を有する周方向の冷媒の流路である第1流路511が構成される。また、内周壁54とコイルユニット30との間の領域によって、幅w2を有する周方向の冷媒の流路である第2流路512が構成される。本実施形態ではw1>w2として設定されているが、w1=w2であってもよいし、w2>w1であってもよい。また、ステータケース51は、第1流路511と第2流路512とを連通する流路である第3流路513を有する。第3流路513は、隣接するコイルユニット30間(隣接するコイル310間)の領域に相当する。第3流路513の幅w3の設定については、例えばw2≧w3とされる。
【0030】
ステータケース51は、外周壁56および内周壁54からそれぞれ突出する1以上の突起部55を有する。より詳細には、ステータケース51は、外周壁56から中心軸Jに向けて突出する複数の第1突起部551を有し、また、内周壁54から外周側に向けて径方向に突出する複数の第2突起部552を有する。
【0031】
第1突起部551は、コイルユニット30に対向する位置に、2つのコイルユニット30ごとに等角度ピッチ(本実施形態では20°ピッチ)で配置される。これら第1突起部551は、第1流路511の一部に設けられた、冷媒の流通を規制する規制部として機能し、また、その流れの方向を変える機能を有する。
【0032】
第2突起部552は、コイルユニット30に対向する位置に、2つのコイルユニット30ごとに等角度ピッチ(本実施形態では20°ピッチ)で配置される。これら第2突起部552は、第2流路512の一部に設けられた、冷媒の流通を規制する規制部として機能し、また、その流れの方向を変える機能を有する。
【0033】
第1突起部551が対向するコイルユニット30と、第2突起部552が対向するコイルユニット30とは異なる。第1突起部551が対向する複数のコイルユニット30は第1群のコイルユニットの一例である。第2突起部552が対向する複数のコイルユニット30は第2群のコイルユニットの一例である。
【0034】
図1に示すように、第1突起部551は、ステータケース51の本体52の底面から蓋体53まで軸方向に延設されている。第2突起部552も同様に、本体52の底面から蓋体53まで軸方向に延設されている。このような形態に限らず、第1突起部551と本体52の底面との間に隙間が形成されるように、および/または、第1突起部551と蓋体53との間に隙間が形成されるように、第1突起部551の軸方向の長さが設定されてもよい。第2突起部552についても同様である。当該隙間は、例えばw3に近い値か、またはそれより狭く設定される。
【0035】
また本実施形態では、第1突起部551とコイルユニット30の外周部30aとが接触しているが、接触せずに、わずかな隙間が空いていてもよい。同様に、本実施形態では、第2突起部552とコイルユニット30の内周部30bとが接触しているが、接触せずに、わずかな隙間が設けられていてもよい。当該隙間は、例えばw3より狭く設定される。
【0036】
突起部55の材質は、ステータケース51の材質(例えば金属)と同一であってもよいし、あるいは樹脂やゴムであってもよい。
【0037】
図3は、ステータケース51内の冷媒の流れを説明するための図である。冷媒の流れの方向を太い白矢印で示しており、その流れを見やすくするために、コイルユニット30を一点鎖線で描いている。
【0038】
供給口58を介してステータケース51内に流入した冷媒は、第1流路511を周方向に流れる。そしてその流れは第1突起部551で規制され、冷媒はコイルユニット30間に流入し、内周壁54に向かって第3流路513を流れる。第3流路513から流出した冷媒は、第2流路512を周方向に流れる。そしてその流れは第2突起部552で規制され、冷媒はコイルユニット30間に流入し、外周壁56に向かって第3流路513を流れる。第3流路513から流出した冷媒は、再び第1流路511を周方向に沿って流れる。冷媒は、以上の動作を繰り返し、排出口59を介してステータケース51の外部へ排出される。
【0039】
以上のように、第1流路511および第2流路512に、第1突起部551および第2突起部552がそれぞれ所定の角度ピッチで設けられる構成によって、隣接するコイルユニット30間に十分な量の冷媒を流通させることができる。これにより、電気機械的特性の向上を目的としてコイルユニット30を増やす場合であっても、狭い間隔で配置されたコイルユニット30を効果的かつ効率的に冷却することができる。結果として、ステータ50を適切に冷却することができる。
【0040】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るモータのステータケース51の内部を示す平面図であって、冷媒の流れを示す図である。これ以降の説明において、上記第1実施形態に係るモータ10と同様の要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化し、主に異なる点を説明する。また以降では、説明の便宜上、ステータケース51の周方向の角度について、供給口58から時計回りの角度を正、反時計回りの角度を負とする。そして、供給口58およびの角度位置を±0°、排出口59の角度位置を±180°とする。
【0041】
本実施形態では、第1流路511および第2流路512において、上流領域S1(0°~±90°の領域)における突起部55の数より、下流領域S2(±90°~±180°の領域)における突起部55の数の方が多い。具体的には、上流領域S1では、下流領域S2に近い位置(例えば下流領域S2の直前の位置)に、2つの第2突起部552が設けられるのみである。そして下流領域S2では、第1実施形態と同様に、20°ピッチで交互のコイルユニット30に対応して第1突起部551および第2突起部552がそれぞれ設けられる。本実施形態は、排出口59より供給口58に近い位置に配置される突起部55の数より、供給口58より排出口59に近い位置に配置される突起部55の数が多い形態の一例である。
【0042】
上流領域S1においては、供給口58を介してステータケース51内に流入した冷媒は、第1流路511を流れる。その流れは、供給口58からほぼ±90°の位置において第1突起部551で規制され、第3流路513に流入する。また、供給口58を介してステータケース51内に流入した冷媒は、供給口58付近に位置する第3流路513を流れ、そして第2流路512を流れる。その第2流路512における流れは、供給口58からほぼ±90°の位置において第2突起部552で規制され、その付近に位置する第3流路513を通り、第1流路511の流れに合流する。下流領域S2の冷媒の流れは、第1実施形態と同様である。
【0043】
以上のように、本実施形態では、突起部55の数が、上記第1実施形態におけるそれらの数より少ない。したがって、本実施形態に係るモータ10の動作時の温度上昇幅は、第1実施形態のそれに比べ大きくなるものの、冷媒流の圧力損失を大幅に低減することができる。ステータケース51内を冷媒が流通する間、冷媒が徐々に受熱量が増え、排出口59に近いほど冷媒の温度は高くなる傾向がある。本実施形態では、主に下流領域S2に突起部55を設けることにより、高温になりやすい下流領域S2の冷却効果を高めることができる。
【0044】
本実施形態では、上流領域S1にはほとんど突起部55が設けられない構成とした。しかし、下流領域S2より少ない数であれば、上流領域S1にも、第1突起部551および/または第2突起部552が設けられる構成であってもよい。あるいは、第1突起部551および/または第2突起部552の設置の角度ピッチが、供給口58から排出口59にかけて徐々に小さくなる構成であってもよい。
【0045】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係るモータのステータケース51の内部を示す平面図であって、冷媒の流れを示す図である。本実施形態では、第1流路511において、供給口58から±30°、±90°、および±150°の位置にそれぞれ第1突起部551が設けられている。すなわち、第1流路511にのみ突起部55が等角度ピッチで設けられる。
【0046】
供給口58を介してステータケース51内に流入した冷媒は、第1流路511および第3流路513を流れる。第3流路513から流出した冷媒は第2流路512を流れる。第1流路511の流れは±30°の位置にある第1突起部551で規制される。第2流路512を流れる冷媒は、±30°の位置を過ぎると、第3流路513にも流入し外周に向けて流れ、第1流路511に流出する。そして、第1流路511を流れる冷媒は、±90°の位置にある第1突起部551で規制される。±90°の位置にある第1突起部551の直前の付近では、冷媒は第1流路511から第3流路513を介して第2流路512へ流れ、第2流路512を流れる冷媒と合流する。冷媒は以上のような動作を繰り返し、排出口59を介して外部へ排出される。
【0047】
以上のように、本実施形態では、第1および第2実施形態に比べ突起部55の数が少なく、かつ、等角度ピッチで偏りなく第1突起部551が配置される。したがって、圧力損失を低減できるとともに、コイルユニット30全体を均一に冷却することができる。
【0048】
[先行文献と各実施形態の圧力損失の比較]
図6は、特許文献1および上記第1~3第各実施形態の冷却構造において、モータが作動する時のコイルの最大温度および圧力損失の一例を示す表である。なお、コイルの最大温度は周辺温度や冷媒の初期温度により変化し得るものであり、圧力損失も、冷媒種類やステータ50の各要素の寸法の設計等によって変動する。したがって、表に示す値は相対的な値としての評価をすべきである。
【0049】
第1実施形態では、ステータケース51の全周に突起部55が設けられる。これにより、第2および第3実施形態に比べ圧力損失は高くなるが、冷媒がすべてのコイルユニット30間を流れ、コイルユニット30全体を均一に冷却できるため、モータ10の出力密度が向上する
【0050】
第2実施形態では、コイル310の温度上昇幅は、第1実施形態のそれに比べ大きくなるものの、冷媒流の圧力損失を大幅に低減することができる。すなわち、圧力損失の増加を抑えつつ、高温になりやすい下流領域S2の冷却効果を高めることができる。
【0051】
第3実施形態では、第1および第2実施形態に比べ圧力損失を低減でき、コイルユニット30全体を均一に冷却できる。
【0052】
[ドローンの実施形態]
図7は、上記各実施形態に係るモータ10が適用され得るドローンの構成例を示す図である。
図7に示すドローン100は、一般的にマルチコプターと称される無人航空機であって、遠隔操作または自動操縦により飛行可能である。
【0053】
ドローン100は、制御部やバッテリー等を内蔵した本体部90と、それぞれ本体部90に取り付けられた4組の駆動部20を有する。本体部90は、例えばカメラ91を内蔵していてもよい。駆動部20は、例えば、平面視において90°ずつ間隔をあけて本体部90の四方に配置される。駆動部20の構成はいずれも共通であるので、以下の説明では代表して1つの駆動部20の構成を説明し、他の駆動部との重複説明はいずれも省略する。
【0054】
駆動部20は、回転翼21と、アーム部22と、上記各実施形態のうちいずれか1つのモータ10と、脚部24と、リブ部25とを備えている。回転翼21は、固定ピッチのプロペラであり、モータ10の駆動により回転して揚力(鉛直方向上向きの推力)を生じさせる。また、回転翼21は、モータ10の回転速度の制御で揚力を調整することができる。
【0055】
アーム部22は、本体部90から水平方向に延びている。アーム部22の一端は本体部90に接続され、アーム部22の他端側にはモータ10が取り付けられている。
【0056】
また、モータ10の下側には、脚部24が取り付けられている。脚部24は、アーム部22に対して直交して上下方向に延びており、ドローン100が接地しているときには地面と接触してドローン100を支持する。また、アーム部22と脚部24には、斜め方向に延びるリブ部25が接続されている。
【0057】
[その他の実施形態]
上記各実施形態では、供給口58および排出口59は外周壁56に設けられる構成であったが、例えばステータケース51の本体52の底壁、あるいは蓋体53に設けられていてもよい。また、供給口58および排出口59は相対的に180°離れて設けられたが、例えば相対的に150°~180°離れて配置されていればよい。また、供給口58が2つ以上、および/または、排出口59が2つ以上設けられていてもよい。
【0058】
上記第1流路511の幅w1、第2流路512の幅w2について、例えばw2≧w1の場合に、第2流路512にのみ複数の突起部55(第2突起部552)が設けられていてもよい。その場合、第2突起部552は、2以上のコイルユニット30ごとに周方向に当角度ピッチで配置されてもよいし、第2突起部552の設置の角度ピッチが、供給口58から排出口59にかけて徐々に小さくなる構成であってもよい。
【0059】
上記第3実施形態において、第2流路512に少なくとも1つの第2突起部552が設けられていてもよい。
【0060】
上記各実施形態では、第1突起部551または第2突起部552は複数設けられた。しかし、例えば、第1突起部551が1つのみ、または、第2突起部552が1つのみ設けられる構成であってもよい。
【0061】
上記各実施形態では、突起部55の形状は直方体状であった。しかしその形状は限定されない。例えば、その直方体を構成する少なくとも一辺が曲線であってもよい。あるいは、
図2のように軸方向から見て、例えば第1突起部の形状が、その中心軸J側から径方向外側にかけて徐々に幅(径方向に直交する方向の幅)が広くなるような三角形状または台形状であってもよい。第2突起部の形状も同様に、その径方向外側から中心軸J側にかけて徐々に幅(径方向に直交する方向の幅)が広くなるような三角形状または台形状であってもよい。その場合、それら突起部の三角形や台形を構成する少なくとも一辺が曲線状であってもよい。また、
図1のように軸方向に直交する方向で見て、突起部の形状は、矩形状ではなく、三角形や台形、あるいは、他の形状であってもよい。
【0062】
以上、説明したすべての実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
【0063】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10…モータ、21…回転翼、30…コイルユニット、40…ロータ、50…ステータ、54…内周壁、56…外周壁、55…突起部、100…ドローン、511…第1流路、512…第2流路、551…第1突起部、552…第2突起部