(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167849
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両用シートのシートクッション
(51)【国際特許分類】
B60N 2/02 20060101AFI20241127BHJP
B60N 2/62 20060101ALI20241127BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B60N2/02
B60N2/62
A47C7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084213
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 大助
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084BA00
3B087BD15
(57)【要約】
【課題】座面長が大きくなったときに着座者の大腿を安定した状態でサポートできる車両用シートのシートクッションを得る。
【解決手段】フレーム部材36と、フレーム部材に対して、初期位置と前端位置との間をシート前後方向に相対的に移動可能なスライド部材60、67と、スライド部材に固定され、着座者の大腿の直下に位置する平板状部を有する大腿保護部材と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部材と、
前記フレーム部材に対して、初期位置と前端位置との間をシート前後方向に相対的に移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材に固定され、着座者の大腿の直下に位置する平板状部を有する大腿保護部材と、
を備える車両用シートのシートクッション。
【請求項2】
前記フレーム部材が、前縁部に後方に向かって凹む凹部が形成され、且つ、平面視でU字形のパンフレームを備え、
前記大腿保護部材が、平面視において前記凹部内に位置し、
前記パンフレームとの上面と前記大腿保護部材の上面とが同一平面上に位置する請求項1に記載の車両用シートのシートクッション。
【請求項3】
前記大腿保護部材よりシート前後方向の前方に位置し且つ前記着座者の下腿の直後に位置するように、前記スライド部材にシート左右方向に延びる回転軸回りに回転可能に支持された下腿保護部材と、
前記フレーム部材に形成された、シート左右方向に見たときに円弧形状をなす円弧溝と、
前記下腿保護部材に設けられ、前記円弧溝に移動可能に挿入され、前記スライド部材が前記初期位置と前記前端位置との間を移動するときに前記円弧溝の内部を移動するピンと、
を備える請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートクッション。
【請求項4】
前記スライド部材が前記初期位置に位置するとき、前記下腿保護部材のシート上下方向の中央部と前記回転軸のシート上下方向の位置が同じであり、且つ、前記ピンが前記回転軸よりシート上下方向の上方に位置し、
前記スライド部材が前記前端位置に位置するとき、前記ピンが前記回転軸よりシート上下方向の下方に位置する請求項3に記載の車両用シートのシートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートが開示されている。この車両用シートのシートクッションは、フレーム部材と、フレーム部材に対して初期位置と前端位置との間をシート前後方向に相対的に移動可能なスライド部材と、スライド部材に接続された下腿保護部材と、を備える。下腿保護部材は、スライド部材の前端部よりシート前後方向の前方に位置し、且つ、車両用シートに着座した着座者の下腿の直後に位置する。
【0003】
このシートクッションに設けられた駆動装置の駆動力によってスライド部材が初期位置から前端位置側へスライドすると、シートクッションの座面長が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のシートクッションは、スライド部材が前端位置に位置するときに、着座者の大腿を安定した状態でサポートするのが難しい。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、座面長が大きくなったときに着座者の大腿を安定した状態でサポートできる車両用シートのシートクッションを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートのシートクッションは、フレーム部材と、前記フレーム部材に対して、初期位置と前端位置との間をシート前後方向に相対的に移動可能なスライド部材と、前記スライド部材に固定され、着座者の大腿の直下に位置する平板状部を有する大腿保護部材と、を備える。
【0008】
請求項1に記載の車両用シートのシートクッションは、フレーム部材に対して、初期位置と前端位置との間をシート前後方向に相対的に移動可能なスライド部材を備える。そのためスライド部材が初期位置から前端位置へ移動すると、シートクッションの座面長が大きくなる。さらにシートクッションは、スライド部材に固定され、着座者の大腿の直下に位置する平板状部を有する大腿保護部材を備える。従って、請求項1に記載の車両用シートのシートクッションは、座面長が大きくなったときに着座者の大腿を安定した状態でサポートできる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートのシートクッションは、請求項1に記載の車両用シートのシートクッションにおいて、前記フレーム部材が、前縁部に後方に向かって凹む凹部が形成され、且つ、平面視でU字形のパンフレームを備え、前記大腿保護部材が、平面視において前記凹部内に位置し、前記パンフレームとの上面と前記大腿保護部材の上面とが同一平面上に位置する。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートのシートクッションのフレーム部材は、前縁部に後方に向かって凹む凹部が形成された、平面視U字形のパンフレームを備える。さらに大腿保護部材が平面視において前記凹部内に位置し、パンフレームとの上面と大腿保護部材の上面とが同一平面上に位置する。従って、請求項2に記載の車両用シートのシートクッションは、スライド部材の位置に拘わらず、パンフレームと大腿保護部材によって着座者の大腿を安定した状態でサポートできる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートのシートクッションは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートクッションにおいて、前記大腿保護部材よりシート前後方向の前方に位置し且つ前記着座者の下腿の直後に位置するように、前記スライド部材にシート左右方向に延びる回転軸回りに回転可能に支持された下腿保護部材と、前記フレーム部材に形成された、シート左右方向に見たときに円弧形状をなす円弧溝と、前記下腿保護部材に設けられ、前記円弧溝に移動可能に挿入され、前記スライド部材が前記初期位置と前記前端位置との間を移動するときに前記円弧溝の内部を移動するピンと、を備える。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートのシートクッションは、下腿保護部材によって着座者の下腿をサポートできる。さらに円弧溝の形状を設計変更することによって下腿保護部材の回転軌跡を容易に変化させられる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートのシートクッションは、請求項3に記載の車両用シートのシートクッションにおいて、前記スライド部材が前記初期位置に位置するとき、前記下腿保護部材のシート上下方向の中央部と前記回転軸のシート上下方向の位置が同じであり、且つ、前記ピンが前記回転軸よりシート上下方向の上方に位置し、前記スライド部材が前記前端位置に位置するとき、前記ピンが前記回転軸よりシート上下方向の下方に位置する。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートのシートクッションのスライド部材が初期位置と前端位置との間を移動するとき、下腿保護部材の中央部より下方に位置する部位及び中央部より上方に位置する部位が回転軸まわりに回転する。そのため請求項4に記載の車両用シートのシートクッションの下腿保護部材は、着座者の下腿の上下方向の広い範囲をサポートできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートのシートクッションは、座面長が大きくなったときに着座者の大腿を安定した状態でサポートできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートクッションを備える車両用シートの前方から見たときの表皮材を省略して示す斜視図である。
【
図2】シートクッションの上方から見たときの分解斜視図である。
【
図3】シートクッションの下方から見たときの分解斜視図である。
【
図4】スライドユニット及び下腿保護部材の上方から見たときの分解斜視図である。
【
図5】スライドユニットの上方から見たときの斜視図である。
【
図6】大腿保護部材が初期位置にあるときの表皮材、第1クッション部材及び第2クッション部材を省略して示すシートクッションの斜視図である。
【
図7】大腿保護部材が初期位置にあるときのシートクッションの縦断側面図である。
【
図8】大腿保護部材が初期位置にあるときの表皮材、第1クッション部材及び第2クッション部材を省略して示すシートクッションの平面図である。
【
図9】大腿保護部材が前端位置にあるときの表皮材、第1クッション部材及び第2クッション部材を省略して示すシートクッションの斜視図である。
【
図10】大腿保護部材が前端位置にあるときの
図7と同様の縦断側面図である。
【
図11】大腿保護部材が前端位置にあるときの
図8と同様の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッションについて説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前後方向(シート前後方向)の前方向を示し、矢印UPは車両上下方向(シート上下方向)の上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(シート左右方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向(車両幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示す。
【0018】
図1に示されたように車両10の車室の床面12には車両用シート15が設けられている。床面12に左右一対のスライドレール12Aが設けられ、各スライドレール12Aのアッパレールに左右一対の支持部材12Bがそれぞれ固定されている。車両用シート15は、支持部材12Bに固定されたシートクッション16と、シートクッション16の後端部にリクライニング機構(図示省略)を介して回転可能に接続されたシートバック17と、シートバック17の上端部に設けられたヘッドレスト18と、を有する。
【0019】
図2に示されたようにシートクッション16は、左右一対のサイドフレーム21と、左右のサイドフレーム21の後端部どうしを接続するリアフレーム23と、を備える。左右のサイドフレーム21の前部の上面には取付用パイプ22の前後両端部がそれぞれ固定されている。
【0020】
シートクッション16は、
図4、
図5、
図6及び
図8に示されたスライドユニット27を備える。スライドユニット27は、パンフレーム30、支持部材(フレーム部材)36、側方支持部44、レール支持部材50、ブラケット54、スライドレール(スライド部材)60、動力伝達部材(スライド部材)64、支持部材(スライド部材)67、アクチュエータユニット68、回転出力軸70、出力ギヤ72、回転軸73、ピニオン74、中央スライド部材(スライド部材)76及びパイプ材81を備える。
【0021】
左右のサイドフレーム21に連結部材(図示省略)が固定されており、この連結部材に金属製且つ平面形状が略U字形のパンフレーム30が固定されている。パンフレーム30の後端部を除いた部位の上面31は平面によって構成されている。パンフレーム30は、その後端部の直前に位置する部位を構成する左右方向に延びる後部30aと、後部30aの左右両端部から前方に延びる一対の側部30bと、を有する。パンフレーム30の前縁部には後方に向かって延びる凹部32が設けられている。
【0022】
金属製の支持部材36は、基部38、後端被支持部40及び左右一対の側方被支持部42を有する。基部38は平板状であり、その平面形状は略長方形である。支持部材36の後端部を構成する後端被支持部40と、支持部材36の左右両端部を構成する左右の側方被支持部42は、いずれも平板状であり、後端被支持部40が左右の側方被支持部42より上方に位置する。後端被支持部40及び側方被支持部42は基部38と平行である。
図6及び
図8に示されたように、後端被支持部40の下面がパンフレーム30の後部30aの上面に固定され、且つ、左右の側方被支持部42の上面が対応する側部30bの下面に固定されている。
【0023】
図4及び
図5に示されたように、左右の側方被支持部42の下面には、左右一対の側方支持部44の上端部が固定されている。金属製である側方支持部44の前縁部にはパイプ受入用凹部45が形成されている。さらに側方支持部44には円弧溝46が形成されている。
【0024】
図4及び
図5に示されたように、基部38の上面には左右一対の前後方向に延びるレール支持部材50が載せられている。レール支持部材50は中空の筒状部材であり、レール支持部材50の内部には前後方向に延びるスライド溝52が設けられている。さらにレール支持部材50の上面には、スライド溝52と連通し且つ前後方向に延びる上部溝53が設けられている。さらに
図5に示されたように基部38の上面には、4個のブラケット54が固定されている。左右一対のブラケット54が各レール支持部材50を基部38に固定する。さらに基部38の上面には、左右のレール支持部材50の間に位置する前後方向に延びるガイド突起56が設けられている。
【0025】
左右のレール支持部材50のスライド溝52及び上部溝53には、金属製のスライドレール60が挿入されている。スライドレール60は、スライド溝52にスライド可能に挿入された平板状のスライド部61と、スライド部61の上面から上方に突出し且つ上部溝53及び左右のブラケット54の隙間を上方に通り抜けると、を備える。スライドレール60は基部38及びレール支持部材50に対して、
図5~
図7に示された初期位置と、
図9~
図11に示された初期位置より前方の前端位置と、間をスライド可能である。
【0026】
図5に示されたように、基部38の上面には、略直方体形状の金属製の動力伝達部材64が載せられている。動力伝達部材64には前後方向に延びるガイド溝65が形成されている。ガイド溝65の前後長はガイド突起56より長く、ガイド突起56がガイド溝65に相対移動可能に挿入されている。さらに動力伝達部材64の右側面にはラック溝66が形成されている。さらに
図2に示されたように、動力伝達部材64の上面には動力伝達部材64と同じ平面形状の支持部材67が固定されている。
【0027】
図3に示されたように基部38の下面にはアクチュエータユニット68が固定されている。
図2、
図4、
図5に示されたように、アクチュエータユニット68は、電動モータ69と、電動モータ69の回転出力軸(図示省略)が発生する駆動力によって自身の軸線まわりに回転する回転出力軸70と、を備える。
図5に示されたように、回転出力軸70の軸線は基部38に直交する方向であり、基部38に形成された貫通孔(図示省略)を回転出力軸70が上方に貫通している。回転出力軸70の上端部には出力ギヤ72が固定されている。さらに基部38の上面に回転可能に支持された回転軸73にピニオン74が固定されている。ピニオン74は出力ギヤ72及びラック溝66と噛み合っている。電動モータ69の回転出力軸は正逆両方向に回転可能である。シートクッション16に設けられた操作スイッチ(図示省略)が初期位置から前進操作位置へ移動させられると、バッテリ(図示省略)の電力が電動モータ69に供給され、電動モータ69の回転出力軸が正方向に回転する。これにより出力ギヤ72及びピニオン74が一方向に回転し、動力伝達部材64及び支持部材67が基部38及びガイド突起56に対して前方へスライドする。一方、操作スイッチが初期位置から後退操作位置へ移動させられると、バッテリの電力が電動モータ69に供給され、電動モータ69の回転出力軸が逆方向に回転する。これにより出力ギヤ72及びピニオン74が他方向に回転し、動力伝達部材64及び支持部材67が基部38及びガイド突起56に対して後方へスライドする。操作スイッチが初期位置にあるとき、バッテリの電力は電動モータ69に供給されない。
図2に示されたように、基部38の上面には回転出力軸70、出力ギヤ72、回転軸73及びピニオン74の上面を覆うカバー部材75が設けられている。
【0028】
図6に示されたように、平面視において金属製の中央スライド部材76がパンフレーム30の凹部32内に位置する。中央スライド部材76は、平板状の基板部(大腿保護部材)77と、基板部77の左右両側部の前端部から下方に延びる一対の脚部78と、を備える。脚部78の下端面には側面視略半円状の凹部79が形成されている。基板部77の下面の3か所が、左右のスライドレール60のガイド突条62の上端面及び支持部材67の上端面に固定されている。即ち、中央スライド部材76は、左右のスライドレール60、動力伝達部材64及び支持部材67と一緒に、初期位置と前端位置との間を前後方向に移動する。
【0029】
図2に示された金属製のパイプ材81は、左右方向に延び且つ互いに同軸をなす左右一対の回転軸82を有する。左右の脚部78の凹部79に左右の回転軸82の上部が嵌合しており、回転軸82が脚部78に固定されている。
【0030】
中央スライド部材76の上面には基板部77とほぼ同一の平面形状を有する平板状の大腿保護部材83の下面が固定されている。大腿保護部材83は金属製の板材である。即ち、パイプ材81及び大腿保護部材83は、スライドレール60、動力伝達部材64及び中央スライド部材76と一緒に初期位置と前端位置との間を前後方向に移動する。さらにパイプ材81が初期位置に位置するとき、
図5に示されたようにパイプ材81の左右の回転軸82が対応する側方支持部(フレーム部材)44のパイプ受入用凹部45に位置する。また大腿保護部材83が初期位置に位置するとき、
図6及び
図8に示されたように、平面視においてパンフレーム30の左右の側部30bの前端と、大腿保護部材83の前端の前後方向位置が略一致する。さらに大腿保護部材83が初期位置と前端位置との間の何れの位置にある場合も、パンフレーム30の上面31と、大腿保護部材83の上面が実質的に同一平面上に位置する。
【0031】
図6及び
図9に示されたように、中央スライド部材76及び大腿保護部材83の前方には、金属製の下腿保護部材85が設けられている。下腿保護部材85は、下腿サポート部86と、下腿サポート部86の左右両端部に接続された側部87と、を有する。下腿サポート部86の断面形状(側面形状)は略円弧形である。左右の側部87の前端部には回転中心孔85aが形成されており、左右の側部87の後端部には挿入孔85bが形成されている。左右の回転中心孔85aにパイプ材81の左右の回転軸82が、相対回転可能に挿入されている。換言すると、左右の側部87が回転軸82に回転可能に支持されている。さらに左右の挿入孔85bに挿入され且つ固定されたガイドピン(ピン)88が、対応する側方支持部44の円弧溝46に移動可能に挿入されている。パイプ材81が初期位置に位置するとき、
図6及び
図7に示されたように回転軸82全体の上下方向位置は下腿保護部材85の上下方向の中央部と同じ上下方向位置にある。なお本明細書において「下腿保護部材85の上下方向の中央部」とは、パイプ材81が初期位置に位置するときの中央部の上端から下腿保護部材85の上端までの上下方向の距離をL1、中央部の下端から下腿保護部材85の下端までの上下方向の距離をL2、下腿保護部材85全体の上下寸法をL3と定義する場合に、L1/L3及びL2/L3が0.2以上且つ0.4以下となる領域のことである。さらにパイプ材81が初期位置に位置するとき、
図5に示されたように、左右のガイドピン88が、対応する円弧溝46の後端部に位置し且つ回転軸82より上方に位置する。このときの下腿保護部材85のパイプ材81の回転軸82を中心とする回転位置が初期位置である。一方、パイプ材81が前端位置に位置するとき、
図10に示されたように、左右のガイドピン88が対応する円弧溝46の前端部に位置し且つ回転軸82より下方に位置する。このときの下腿保護部材85の回転軸82を中心とする回転位置が跳ね上げ位置である。
【0032】
図1及び
図2に示された第1クッション部材90はポリウレタンフォームによって構成された一体成形品である。第1クッション部材90の平面形状は略U字形である。即ち、第1クッション部材90は、その後部を構成する後部構成部91と、後部構成部91の左右両端部から前方に延びる一対の側部構成部92と、を備える。
図3に示されたように、後部構成部91の下部の後面には左右方向に延びる取付溝91aが設けられており、側部構成部92の下面には前後方向に延びる取付溝92aが設けられている。後部構成部91の取付溝91aにリアフレーム23が挿入される。さらに左右の側部構成部92の取付溝92aに、対応する取付用パイプ22及びサイドフレーム21の上部が挿入される。第1クッション部材90はこのようにしてサイドフレーム21(取付用パイプ22)及びリアフレーム23に装着される。
【0033】
図3及び
図8に示されたように、左右のサイドフレーム21と、リアフレーム23と、スライドユニット27の後端部との間には平面形状が略長方形をなす後部空間28が形成されている。
【0034】
図1~
図3に示された第2クッション部材94はポリウレタンフォームによって構成された一体成形品である。第2クッション部材94は、平面形状が前後方向に長い長方形である大腿支持部95と、第2クッション部材94の前端部を構成する下腿サポート部96と、大腿支持部95の前端部と下腿サポート部96の上端部とを回転可能に接続する回転接続部94aと、を備える。
図2、
図3及び
図7に示されたように、回転接続部94aは、左右方向に延びる複数の溝94a1を備える。下腿サポート部96は、各溝94a1を変形させながら、大腿支持部95に対して前後方向に回転可能である。
【0035】
図3に示されたように、大腿支持部95の下面の前部には固定面95aが設けられている。さらに大腿支持部95の下面の後部には、固定面95aよりも下方に位置する下方突出部95bが設けられている。下方突出部95bが後部空間28に位置する状態で、第2クッション部材94の固定面95aがパンフレーム30の上面に固定される。このようにして第2クッション部材94をパンフレーム30に固定すると、
図7に示されたように、大腿支持部95がスライドユニット27の上面を覆い、且つ、下腿サポート部96の後面が下腿保護部材85の下腿サポート部86の前面に固定される。
【0036】
図示は省略されているが、左右のサイドフレーム21、第1クッション部材90及び第2クッション部材94の表面には、弾性材料によって構成された袋状の表皮材が着脱可能に被せられている。
【0037】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
まず
図1及び
図5~
図8に示されたように、スライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が初期位置にある場合を想定する。このとき
図6に示されたように、平面視においてパンフレーム30の凹部32の殆どが大腿保護部材83によって塞がれる。そのためスライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が初期位置にあるとき、パンフレーム30及び大腿保護部材83が着座者PS(
図7参照)の大腿PS1の直下に位置する。従って、パンフレーム30及び大腿保護部材83によって大腿PS1が安定した状態でサポートされる。さらに
図7に示されたように、着座者PSの下腿PS2が下腿保護部材85によってサポートされる。
【0039】
この状態において着座者PSが操作スイッチを初期位置から前進操作位置へ移動させると、電動モータ69の回転出力軸が正方向に回転し、動力伝達部材64が基部38及びガイド突起56に対して前方へスライドする。そのためスライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が初期位置から前方へ移動する。そのため、パイプ材81の左右の回転軸82が対応する側方支持部44のパイプ受入用凹部45から前方へ脱出する。
【0040】
さらにパイプ材81が初期位置から前方へ移動すると、
図6及び
図7に示された初期位置に位置していた下腿保護部材85が、左側から車両用シート15を見たときに時計方向に回転する。そしてスライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が前端位置まで移動すると、
図9及び
図10に示されたように下腿保護部材85が跳ね上げ位置まで回転する。
【0041】
一方、着座者PSが操作スイッチを後退操作位置へ移動させると、電動モータ69の回転出力軸が逆方向に回転し、動力伝達部材64が基部38及びガイド突起56に対して後方へスライドする。そのためスライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が初期位置側へ移動する。
【0042】
図7及び
図8と
図10及び
図11とを比較することにより明らかなように、スライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が初期位置から前端位置側へ移動すると、シートクッション16の平面視における前後長である座面長が大きくなる。さらに
図10、
図11から明らかなように、大腿保護部材83が初期位置より前端位置側に位置する場合も、パンフレーム30及び大腿保護部材83が着座者PSの大腿PS1の直下に位置する。従って、この場合もパンフレーム30及び大腿保護部材83によって大腿PS1が安定した状態でサポートされる。
【0043】
さらにスライドレール60、動力伝達部材64、中央スライド部材76、パイプ材81及び大腿保護部材83が初期位置から前端位置側へ移動するのに伴って、
図10に示されたように、下腿保護部材85が初期位置から跳ね上げ位置側へ回転する。即ち、シートクッション16の座面長が大きくなるのに伴って位置が変化する下腿PS2に対して下腿保護部材85が追従する。そのため、大腿保護部材83が初期位置から前端位置へ移動しても、着座者PSの下腿PS2が下腿保護部材85によってサポートされる。
【0044】
さらに大腿保護部材83が初期位置と前端位置との間の何れの位置にある場合も、パンフレーム30の上面31と、大腿保護部材83の上面が実質的に同一平面上に位置する。従って、パンフレーム30の上面31と大腿保護部材83の上面が実質的に同一平面上に位置しない場合と比べて、本実施形態のパンフレーム30及び大腿保護部材83による大腿PS1のサポート状態がより安定し易い。
【0045】
さらに側方支持部44の円弧溝46の形状を設計変更することによって下腿保護部材85の回転軌跡を容易に変化させられる。
【0046】
さらに回転軸82全体の上下方向位置が下腿保護部材85の上下方向の中央部と同じ上下方向位置にある。さらにパイプ材81が初期位置に位置するときガイドピン88が回転軸82より上方に位置し、且つ、パイプ材81が前端位置に位置するときガイドピン88が回転軸82より下方に位置する。そのためスライドレール60が初期位置と前端位置との間を移動するとき、下腿保護部材85(下腿サポート部86)の中央部より下方に位置する部位及び中央部より上方に位置する部位が回転軸82まわりに回転する。そのため下腿保護部材85(下腿サポート部86)は下腿PS2の上下方向の広い範囲をサポートできる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
例えば、シートクッション16から大腿保護部材83を省略することにより、中央スライド部材76の基板部77を大腿保護部材として利用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
15 車両用シート
16 シートクッション
30 パンフレーム
32 凹部
36 支持部材(フレーム部材)
44 側方支持部(フレーム部材)
46 円弧溝
60 スライドレール(スライド部材)
64 動力伝達部材(スライド部材)
67 支持部材(スライド部材)
76 中央スライド部材(スライド部材)
77 基板部(大腿保護部材)
82 回転軸
83 大腿保護部材
85 下腿保護部材
88 ガイドピン(ピン)
PS 着座者
PS1 大腿
PS2 下腿