(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167851
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】物品のリンス方法及び物品のリンス装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/04 20060101AFI20241127BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20241127BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B08B3/04 B
B08B3/12 D
B08B3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084218
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000107734
【氏名又は名称】スピードファムクリーンシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 伸次郎
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA47
3B201AB13
3B201AB24
3B201AB44
3B201BB02
3B201BB03
3B201BB22
3B201BB62
3B201BB82
3B201BB83
3B201BB92
3B201BB95
3B201CB15
3B201CC01
3B201CC12
3B201CD11
3B201CD42
3B201CD43
(57)【要約】
【課題】物品をリンス液に浸漬してリンスする際、物品表面に形成された凹部内の液置換を促進し、リンス性能を向上できる物品のリンス方法を提供すること。
【解決手段】表面に凹部101が形成された物品100のリンス方法において、洗浄済みの物品100を70℃の第1リンス液Rαに浸漬して浸漬リンスを実施する第1リンス工程(ステップS8)と、浸漬リンスを実施した後、浸漬リンス済みの物品100を、70℃よりも低い常温の第2リンス液Rβに浸漬した状態で、槽内圧力を大気圧よりも低く、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施する第2リンス工程(ステップS10)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部が形成された物品のリンス方法において、
洗浄済みの物品を第1温度の第1リンス液に浸漬して浸漬リンスを実施する第1リンス工程と、
前記浸漬リンスを実施した後、浸漬リンス済みの前記物品を、前記第1温度よりも低い第2温度の第2リンス液に浸漬した状態で、槽内圧力を大気圧よりも低く、前記第2リンス液に浸漬された前記物品の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施する第2リンス工程と、
を備えることを特徴とする物品のリンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載された物品のリンス方法において、
前記第1温度と前記第2温度との温度差は、前記物品に形成された凹部内に入り込んだリンス液の収縮率に基づいて設定される
ことを特徴とする物品のリンス方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された物品のリンス方法において、
前記物品を前記第2リンス液に浸漬した後、所定時間、前記槽内圧力を維持し、前記所定時間経過後、前記槽内圧力の減圧を開始する
ことを特徴とする物品のリンス方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された物品のリンス方法において、
前記減圧リンスを実施した後、減圧リンス済みの前記物品を、前記第2温度よりも高温の第3温度の第3リンス液に浸漬し、前記物品の温度を上昇させる浸漬リンスを実施するプレ乾燥工程を備える
ことを特徴とする物品のリンス方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載された物品のリンス方法において、
前記浸漬リンスを実施する前、前記第1温度よりも低温の第4温度の第4リンス液に前記物品を浸漬した状態で、槽内圧力を大気圧よりも低く、前記第4リンス液に浸漬された前記物品の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施するプレリンス工程を備える
ことを特徴とする物品のリンス方法。
【請求項6】
表面に凹部が形成された物品のリンス装置において、
第1温度の第1リンス液を貯留する第1のリンス槽と、
前記第1温度よりも低温の第2温度の第2リンス液を貯留すると共に、密閉可能な第2のリンス槽と、
前記第2のリンス槽の槽内圧力を、大気圧よりも低く、前記第2リンス液に浸漬された物品の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧機と、
を備えたことを特徴とする物品のリンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品のリンス方法及び物品のリンス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機械部品等の物品に付着した汚れを、有機溶剤や蒸留水等の洗浄液を用いて洗浄する物品の洗浄方法として、物品を洗浄液に浸漬して加温した後、減圧雰囲気下で低温の洗浄液に浸漬し、洗浄液を物品の表面で突沸させる物品の洗浄方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、物品を浸漬した洗浄液の温度を一旦上昇させた後に温度を低下させ、さらにその後洗浄液を沸騰させる物品の洗浄方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、純水の沸点以上に加温された物品を常温の純水に浸漬することで物品の表面で突沸現象を生じさせ、物品の表面に気泡を発生させる物品の洗浄方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-326971号公報
【特許文献2】特開平1-115124号公報
【特許文献3】特開平2-130827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の物品の洗浄方法では洗浄液を突沸或いは沸騰させるが、洗浄液が突沸や沸騰することで、物品に形成された凹部の内側にも気泡を生じる。しかしながら、物品に形成された凹部が水平方向よりも下方を向いている場合、突沸等によって生じた気泡が凹部から排出されず、凹部内に充満する。このため、凹部に洗浄液が入り込む余地が無くなり、凹部内の洗浄液の入れ替え(液置換)が進まず、洗浄効果が低下するおそれがある。そこで、洗浄液に物品を浸漬する際、物品に形成された凹部を上方或いは水平方向に開口させる必要がある。
【0005】
また、洗浄後に物品の表面に残留する付着物や洗浄溶媒を濯ぎ落すリンス処理においても、リンス液を突沸させた場合には、洗浄液を突沸させたときと同様の問題が生じ得る。
【0006】
一方、一般的に、機械部品等の物品の表面には様々な方向に開口した多くの凹部が形成されている。そのため、物品に形成された全ての凹部を同時に上方或いは水平方向に開口させた状態で洗浄液やリンス液に浸漬することは難しく、全ての凹部を上方或いは水平方向に開口させるためには、物品の姿勢を変えて液中に複数回浸漬させたり、浸漬させたまま液中で物品の姿勢を変えたりする必要がある。そのため、手間や時間がかかる上、十分な洗浄或いはリンスを行うことができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、物品をリンス液に浸漬してリンスする際、物品表面に形成された凹部内の液置換を促進し、リンス性能を向上できる物品のリンス方法及び物品のリンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、表面に凹部が形成された物品のリンス方法において、洗浄済みの前記物品を第1温度の第1リンス液に浸漬して浸漬リンスを実施する第1リンス工程と、前記浸漬リンスを実施した後、浸漬リンス済みの前記物品を、前記第1温度よりも低い第2温度の第2リンス液に浸漬した状態で、槽内圧力を大気圧よりも低く、前記第2リンス液に浸漬された前記物品の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施する第2リンス工程と、を備える構成とした。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明は、表面に凹部が形成された物品のリンス装置において、第1温度の第1リンス液を貯留する第1のリンス槽と、前記第1温度よりも低温の第2温度の第2リンス液を貯留すると共に、密閉可能な第2のリンス槽と、前記第2のリンス槽の槽内圧力を、大気圧よりも低く、前記第2リンス液に浸漬された前記物品の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧機と、を備えた構成とした。
【発明の効果】
【0010】
これにより、本発明の物品のリンス方法及び物品のリンス装置は、物品をリンス液に浸漬してリンスする際、物品表面に形成された凹部内の液置換を促進し、リンス性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の洗浄システム装置を示す全体構成図である。
【
図2】実施例1の洗浄システム装置による物品処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3A】第1リンス液への浸漬直後の凹部内のリンス液を示す説明図である。
【
図3B】第1リンス液への浸漬途中の凹部内のリンス液を示す説明図である。
【
図3C】第1リンス液への浸漬終盤の凹部内のリンス液を示す説明図である。
【
図4A】第2リンス液への浸漬直後の凹部内のリンス液を示す説明図である。
【
図4B】第2リンス液への浸漬途中の凹部内のリンス液を示す説明図である。
【
図4C】第2リンス液への浸漬終盤の凹部内のリンス液を示す説明図である。
【
図5A】リンス液が突沸したときの気泡状態を示す説明図である。
【
図5B】リンス液が突沸したときの気泡状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の物品のリンス方法及び物品のリンス装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0013】
図1に示された実施例1の洗浄システム装置1は、物品100を洗浄する洗浄処理と、洗浄済みの物品100の表面に残留した汚れを含む付着物や洗浄溶媒を濯ぎ落すリンス(すすぎ)処理と、洗浄溶媒等が濯ぎ落された物品100を乾燥する乾燥処理とを順に行う装置である。また、実施例1の洗浄システム装置1によって洗浄処理、リンス処理、乾燥処理が順に施される物品100は、例えば表面に油や金属粉等の汚れが付着した金型、金属容器、ブラケット等の機械部品等である。このような物品100は、様々な方向に開口した穴や隙間のような凹部101が表面に形成されていることが一般的である。
【0014】
実施例1の洗浄システム装置1は、
図1に示されたように、洗浄槽11と、クイックダンプリンス槽21と、複数(実施例1では四つ)の浸漬槽31~34と、乾燥槽40と、洗浄用減圧機12と、複数(実施例1では二つ)の減圧機35、36と、複数(実施例1では三つ)のリザーブ槽37、38、39と、を備えている。実施例1の洗浄システム装置1では、洗浄槽11及び洗浄用減圧機12によって物品100の洗浄装置が構成され、洗浄処理が行われる。また、実施例1の洗浄システム装置1では、クイックダンプリンス槽21と、複数の浸漬槽31~34と、複数の減圧機35、36と、複数のリザーブ槽37~39とによって物品100のリンス装置Xが構成され、リンス処理が行われる。さらに、実施例1の洗浄システム装置1では、乾燥槽40によって物品100の乾燥装置が構成され、乾燥処理が行われる。
【0015】
また、実施例1の洗浄システム装置1は、物品100を搬送するためのローラコンベア50及びハンドリング装置60を備えている。
【0016】
ローラコンベア50は、物品100の搬送方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数のローラ51を有し、各ローラ51が回転して物品100を搬送する。なお、ローラコンベア50は、図示しない電動モータ等によってローラ51を自動的に回転させて物品100を搬送するものでもよいし、各ローラ51がベアリングを介して単に回転可能に支持され、作業者がローラ51の上で物品100を滑らせることで物品100を搬送するものであってもよい。
【0017】
また、ローラコンベア50は、搬送方向の上流側に配置された第1コンベア52と、搬送方向の下流側に配置された第2コンベア53と、から構成されている。第1コンベア52は、物品100を洗浄槽11に搬入するために用いられる。また、第2コンベア53は、乾燥槽40から物品100を搬出するために用いられる。そして、実施例1の洗浄システム装置1では、第1コンベア52と第2コンベア53との間に、搬送方向に沿って洗浄槽11と、クイックダンプリンス槽21と、複数の浸漬槽31~34と、乾燥槽40とが順に配置されている。
【0018】
ハンドリング装置60は、第1コンベア52から洗浄槽11への物品100の移動と、各槽間での物品100の移動と、乾燥槽40から第2コンベア53への物品100の移動とに用いられる。実施例1のハンドリング装置60は、物品100の搬送方向に沿って延びたレール61と、レール61に摺動可能に取り付けられたブラケットハンド62とを有している。実施例1のハンドリング装置60では、物品100を把持したブラケットハンド62がレール61を摺動することで物品100を搬送する。
【0019】
レール61は、ローラコンベア50と、洗浄槽11と、クイックダンプリンス槽21と、複数の浸漬槽31~34と、乾燥槽40との上方に配置され、水平方向に延びている。
【0020】
ブラケットハンド62は、物品100を着脱可能に把持するチャック部を有しており、レール61から吊り下げられて上下動する。ブラケットハンド62は、図示しない電動モータによって自動的に移動してもよいし、作業者が引っ張ることで移動して物品100を搬送するものであってもよい。なお、電動モータによるブラケットハンド62の移動速度は、任意に設定可能である。
【0021】
洗浄槽11は、第1コンベア52の搬送終端部に隣接して配置されている。洗浄槽11は、洗浄液Sを貯留した水槽である。なお、洗浄液Sは、重量パーセント濃度が1%の洗浄溶媒を含む温水(ここでは40℃)である。
【0022】
実施例1の洗浄槽11は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部11aを有している。洗浄槽11の開口部11aは、蓋部材11eによって開閉可能に密封される。そして、開口部11aが蓋部材11eで密封されることで、洗浄槽11は密閉される。すなわち、洗浄槽11は、密閉可能な密閉槽である。
【0023】
そして、洗浄槽11の蓋部材11eには、洗浄用減圧機12が設けられている。洗浄用減圧機12は、洗浄槽11内の空気を吸引し、減圧(真空引き)する。
【0024】
さらに、洗浄槽11の内部には、超音波発生器11dが設けられている。超音波発生器11dは、筐体内に設けられた振動子を有し、振動子が超音波発振器からの電気信号に基づいて振動して超音波を発生する装置である。超音波発生器11dは、洗浄槽11の底面に取り付けられ、洗浄槽11に搬入されて洗浄液Sに浸漬された物品100に対し、下方から超音波を照射する。
【0025】
クイックダンプリンス槽21は、洗浄槽11に隣接して配置され、洗浄槽11よりも物品100の搬送方向の下流側に位置している。クイックダンプリンス槽21は、リンス液Rを貯留して、クイックダンプリンスを行うための槽である。ここで、「クイックダンプリンス」とは、リンス液Rが満たされた槽(クイックダンプリンス槽21)に物品100を搬入して一定時間リンス液Rに浸漬し、一定時間が経過した後、物品100に向けてシャワー機構21cからリンス液Rを噴射しながら排水口21bを開放して一気に急速排水するリンス方法である。
【0026】
すなわち、クイックダンプリンス槽21は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部21aを有し、底面には急速排水可能な大口径の排水口21bが形成されている。また、クイックダンプリンス槽21の内部には、シャワー機構21c及び超音波発生器21dが設けられている。なお、排水口21bは、バルブによって開閉され、開放されることでクイックダンプリンス槽21に貯留されたリンス液Rが一気に排水される。
【0027】
シャワー機構21cは、クイックダンプリンス槽21の内側上部に配置され、クイックダンプリンス槽21に搬入された物品100に対し、上方からリンス液Rを噴射する。シャワー機構21cは、複数のシャワーヘッド部を有しており、物品100に対して多方向からリンス液Rを噴射することが可能である。
【0028】
クイックダンプリンス槽21の内部に設けられた超音波発生器21dは、洗浄槽11の内部に設けられた超音波発生器11dと同様の構成を有している。超音波発生器21dは、クイックダンプリンス槽21の底面に取り付けられ、クイックダンプリンス槽21に搬入されてリンス液Rに浸漬された物品100に対し、下方から超音波を照射する。
【0029】
そして、クイックダンプリンス槽21の槽内及びシャワー機構21cには、第1リザーブ槽37に貯留されたリンス液Rが供給される。なお、クイックダンプリンス槽21には、槽内に貯留されたリンス液Rを加温する加温器等が設けられていない。そのため、クイックダンプリンス槽21に貯留されたリンス液R及びシャワー機構21cから噴射されるリンス液Rの温度は、成り行き温度(何も調整していない温度)となる。そして、クイックダンプリンス槽21から排水されたリンス液Rは、廃棄される。
【0030】
複数の浸漬槽31~34は、いずれもリンス液Rを貯留可能な水槽であり、ここでは、第1浸漬槽31、第2浸漬槽32、第3浸漬槽33、第4浸漬槽34の四つの槽によって構成されている。
【0031】
第1浸漬槽31は、クイックダンプリンス槽21に隣接して配置され、クイックダンプリンス槽21よりも物品100の搬送方向の下流側に位置している。第1浸漬槽31は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部31aを有している。第1浸漬槽31の開口部31aは、蓋部材31eによって開閉可能に密封される。そして、開口部31aが蓋部材31eで密封されることで、第1浸漬槽31は密閉される。
【0032】
また、第1浸漬槽31には、第2リザーブ槽38から常温のリンス液Rが供給される。なお、第1浸漬槽31には、槽内に貯留されたリンス液Rを加温する加温器等が設けられていない。そのため、第1浸漬槽31に貯留されたリンス液Rの温度は常温となる。そして、第1浸漬槽31から排水された常温のリンス液Rは、第1リザーブ槽37に貯留される。なお、「常温」は、20℃±5℃程度の温度を意味する。以下では、第1浸漬槽31に貯留された常温のリンス液Rを「第4リンス液Rδ」という。
【0033】
そして、第1浸漬槽31の蓋部材31eには、複数の減圧機のうちの一つである第1減圧機35が設けられている。第1減圧機35は、第1浸漬槽31内の空気を吸引し、槽内圧力を減圧(真空引き)する。
【0034】
さらに、第1浸漬槽31の内部には、超音波発生器31dが設けられている。第1浸漬槽31の内部に設けられた超音波発生器31dは、洗浄槽11の内部に設けられた超音波発生器11dと同様の構成を有している。超音波発生器31dは、第1浸漬槽31の底面に取り付けられ、第1浸漬槽31に搬入された物品100に対し、下方から超音波を照射する。
【0035】
第2浸漬槽32は、第1浸漬槽31に隣接して配置され、第1浸漬槽31よりも物品100の搬送方向の下流側に位置している。第2浸漬槽32は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部32aを有し、内部に超音波発生器32dが設けられている。
【0036】
第2浸漬槽32の開口部32aには、蓋部材が取り付けられておらず、常時開放している。また、第2浸漬槽32の内部に設けられた超音波発生器32dは、洗浄槽11の内部に設けられた超音波発生器11dと同様の構成を有している。超音波発生器32dは、第2浸漬槽32の底面に取り付けられ、第2浸漬槽32に搬入されてリンス液Rに浸漬された物品100に対し、下方から超音波を照射する。
【0037】
さらに、第2浸漬槽32には、槽内に貯留されたリンス液Rを加温する加温器32fが設けられている。第2浸漬槽32に貯留されたリンス液Rは、加温器32fによって所定の温度(実施例1では70℃)に加温される。以下では、第2浸漬槽32に貯留された70℃のリンス液Rを「第1リンス液Rα」という。
【0038】
ここで、加温器32fによる第1リンス液Rαの加温目標温度(実施例1では70℃)は、第2浸漬槽32に貯留された第1リンス液Rαの温度と、搬送方向の下流側に隣接する第3浸漬槽33に貯留された第2リンス液Rβの温度との温度差に応じて決められる。また、この「温度差」は、物品100に形成された凹部101に入り込んだリンス液Rの収縮率に基づいて設定される。
【0039】
すなわち、実施例1では、後述するように第2リンス液Rβは常温(20℃±5℃)であり、第2リンス液Rβの方が、第2浸漬槽32内の第1リンス液Rαよりも温度が低い。そのため、第1リンス液Rαに浸漬された物品100を第3浸漬槽33に搬送し、第3浸漬槽33に貯留された第2リンス液Rβに物品100を浸漬したときに、物品100に形成された凹部101に入り込んだリンス液Rは収縮する。
【0040】
ここで、実施例1のリンス液Rは、60℃から20℃に変化したときは収縮率が約1.5%であり、80℃から40℃に変化したときは収縮率が約2.0%になる。そのため、例えば、凹部101内に入り込んだリンス液Rの収縮率の目標値を1.5%以上に設定し、第2リンス液Rβが常温である場合、第1リンス液Rαの温度と、第2リンス液Rβの温度との温度差は40℃以上必要になる。そのため、実施例1では必要な温度差を例えば50℃に設定し、加温器32fによる加温目標温度を70℃に設定する。この結果、実施例1では、第2浸漬槽32に貯留された第1リンス液Rαは、加温器32fによって70℃に加温される。
【0041】
なお、リンス液Rの収縮率とは、物品100を第1リンス液Rαから第2リンス液Rβに移動させたときの、凹部101内のリンス液Rの体積の変化率である。また、収縮率の目標値は任意に設定可能である。また、設定された収縮率の目標値が同じであっても、リンス液Rの成分や温度が異なる場合、必要な温度差は変わる。
【0042】
そして、第2浸漬槽32には、第3リザーブ槽39からリンス液Rが供給される。また、第2浸漬槽32から排水された高温(約70℃)のリンス液Rは、第1リザーブ槽37に貯留される。
【0043】
第3浸漬槽33は、第2浸漬槽32に隣接して配置され、第2浸漬槽32よりも物品100の搬送方向の下流側に位置している。第3浸漬槽33は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部33aを有している。第3浸漬槽33の開口部33aは、蓋部材33eによって開閉可能に密封される。そして、開口部33aが蓋部材33eで密封されることで、第3浸漬槽33は密閉される。
【0044】
また、第3浸漬槽33には、第1純水供給源W1から未使用のリンス液Rとして常温の純水が供給される。なお、第3浸漬槽33に供給される未使用のリンス液R(純水)は、図示しない熱交換器等を用いて予め常温に温度調整されていてもよい。また、第3浸漬槽33には、槽内に貯留されたリンス液Rを加温する加温器等が設けられていない。そのため、第3浸漬槽33に貯留されたリンス液Rの温度は常温となる。そして、第3浸漬槽33から排水された常温のリンス液Rは、第2リザーブ槽38に貯留される。以下では、第3浸漬槽33に貯留された常温のリンス液Rを「第2リンス液Rβ」という。
【0045】
また、第3浸漬槽33の蓋部材33eには、複数の減圧機のうちの一つである第2減圧機36が設けられている。第2減圧機36は、第3浸漬槽33内の空気を吸引して減圧(真空引き)する。
【0046】
さらに、第3浸漬槽33の内部には、超音波発生器33dが設けられている。第3浸漬槽33の内部に設けられた超音波発生器33dは、洗浄槽11の内部に設けられた超音波発生器11dと同様の構成を有している。超音波発生器33dは、第3浸漬槽33の底面に取り付けられ、第3浸漬槽33に搬入された物品100に対し、下方から超音波を照射する。
【0047】
第4浸漬槽34は、第3浸漬槽33に隣接して配置され、第3浸漬槽33よりも物品100の搬送方向の下流側に位置している。第4浸漬槽34は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部34aを有し、内部に超音波発生器34dが設けられている。
【0048】
第4浸漬槽34の開口部34aには、蓋部材が取り付けられておらず、常時開放している。また、第4浸漬槽34の内部に設けられた超音波発生器34dは、洗浄槽11の内部に設けられた超音波発生器11dと同様の構成を有している。超音波発生器34dは、第4浸漬槽34の底面に取り付けられ、第4浸漬槽34に搬入されてリンス液Rに浸漬された物品100に対し、下方から超音波を照射する。
【0049】
さらに、第4浸漬槽34には、槽内に貯留されたリンス液Rを加温する加温器34fが設けられている。第4浸漬槽34に貯留されたリンス液Rは、加温器34fによって所定の温度(実施例1では70℃)に加温される。なお、第4浸漬槽34に設けられた加温器34fによる加温目標温度は、例えば第2浸漬槽32に設けられた加温器32fによる加温目標温度と同様の方法で決められる。以下では、第4浸漬槽34に貯留された70℃のリンス液Rを「第3リンス液Rγ」という。
【0050】
そして、第4浸漬槽34には、第2純水供給源W2から未使用のリンス液Rとして常温の純水が供給される。なお、第4浸漬槽34に供給されるリンス液R(純水)は、予め70℃程度に加温されていてもよい。また、第4浸漬槽34から排水された高温(約70℃)のリンス液Rは、第3リザーブ槽39に貯留される。
【0051】
複数のリザーブ槽37、38、39は、いずれもリンス液Rを貯留可能な水槽であり、ここでは、第1リザーブ槽37、第2リザーブ槽38、第3リザーブ槽39の三つの槽によって構成されている。
【0052】
第1リザーブ槽37は、第1浸漬槽31から排水された第4リンス液Rδ及び第2浸漬槽32から排水された第1リンス液Rαを一時的に貯留する。第1リザーブ槽37に貯留されたリンス液Rは、クイックダンプリンス槽21の槽内及びシャワー機構21cに供給される。ここで、第1浸漬槽31から排水されたリンス液Rは常温である。一方、第2浸漬槽32から排水されたリンス液Rは高温(約70℃)である。そのため、第1リザーブ槽37の内部で、常温と高温のリンス液Rが混ざりあい、クイックダンプリンス槽21に供給されるリンス液Rの温度は成り行き温度となる。
【0053】
第2リザーブ槽38は、第3浸漬槽33から排水された第2リンス液Rβを一時的に貯留する。第2リザーブ槽38に貯留されたリンス液Rは、第1浸漬槽31に供給される。ここで、第3浸漬槽33から排水されたリンス液Rは常温である。そのため、第1浸漬槽31に供給されるリンス液Rの温度は常温となる。
【0054】
第3リザーブ槽39は、第4浸漬槽34から排水された第3リンス液Rγを一時的に貯留する。第3リザーブ槽39に貯留されたリンス液Rは、第2浸漬槽32に供給される。ここで、第4浸漬槽34から排水されたリンス液Rは高温(約70℃)であるが、第3リザーブ槽39にはリンス液Rを加温する加温器等が設けられていない。そのため、第2浸漬槽32に供給されるリンス液Rの温度は成り行き温度となる。
【0055】
乾燥槽40は、物品100を収納可能な容積を有する筐体である。乾燥槽40は、第4浸漬槽34に隣接して配置され、第4浸漬槽34よりも物品100の搬送方向の下流側に位置している。乾燥槽40は、上部に物品100を出し入れ可能な開口部41aを有し、底面に温風吹出口42が形成されている。乾燥槽40の開口部41aは、蓋部材41eによって開閉可能に密封される。そして、開口部41aが蓋部材41eで密封されることで、乾燥槽40は密閉される。
【0056】
そして、乾燥槽40の内部には、温風吹出口42を介して、図示しない温風ブロアから温風(例えば約100℃の空気)が導入される。また、乾燥槽40の蓋部材41eには、開閉可能な排気口43が形成されており、乾燥槽40内の空気は、排気口43を介して外部に排出される。
【0057】
以下、実施例1の洗浄システム装置1による物品の処理について、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
ステップS1では、ハンドリング装置60は、第1コンベア52によって搬送された洗浄前の物品100をブラケットハンド62によって把持し、洗浄槽11に物品100を搬入する。このとき、洗浄槽11には、予め洗浄液Sが貯留されている。そのため、物品100は、洗浄液Sに浸漬される。
【0059】
ステップS2では、ステップS1での洗浄槽11への物品100の搬入に続き、洗浄システム装置1は、物品100を洗浄する。ここで、物品100の洗浄では、まず、物品100が搬入された洗浄槽11の開口部11aが蓋部材11eによって密封され、洗浄槽11が密閉される。次に、洗浄用減圧機12によって洗浄槽11内の空気が吸引され、洗浄槽11の内部が大気圧よりも低い圧力に減圧される。また、洗浄槽11の減圧と同時に、超音波発生器11dが駆動し、洗浄液S内の物品100に対して下方から超音波が照射される。なお、ステップS2において、物品100の洗浄液Sに浸漬する時間(洗浄時間)は任意に設定可能である。また、洗浄用減圧機12は、洗浄槽11の槽内圧力を、大気圧よりも低く、洗浄液Sに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧より高い圧力に減圧する。ここで、洗浄液Sに浸漬された物品100の表面温度は、洗浄液Sの温度とほぼ同程度である。そのため、洗浄用減圧機12は、洗浄槽11の槽内圧力を、大気圧よりも低く、洗浄液Sの温度の蒸気圧よりも高い圧力に設定してもよい。
【0060】
また、物品100の表面温度は、例えば物品100の表面に温度計(熱電対等)を取り付け、温度計ごと物品100を洗浄液S等の液中に浸漬することで測定される。物品100の表面温度は、物品100の大きさや厚み等に応じて変動する。また、非接触温度計等を用いて物品100の表面温度を測定してもよい。
【0061】
また、「洗浄液Sに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧」とは、洗浄液Sに浸漬された物品100の表面で洗浄液Sに突沸現象が生じる最低圧力である。洗浄槽11の槽内圧力が洗浄液Sに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧より高い圧力になることで、物品100の表面で突沸現象が生じることを抑制できる。
【0062】
ステップS3では、ステップS2での物品100の洗浄に続き、ハンドリング装置60は、洗浄槽11からクイックダンプリンス槽21へと物品100を搬送する。すなわち、ハンドリング装置60は、まず、洗浄槽11内の物品100をブラケットハンド62によって把持し、物品100を洗浄槽11から引き上げる。次に、ハンドリング装置60は、ブラケットハンド62をクイックダンプリンス槽21の上方に移動させ、クイックダンプリンス槽21に洗浄済みの物品100を搬入する。このとき、クイックダンプリンス槽21には、予め第1リザーブ槽37から供給された成り行き温度のリンス液Rが貯留されている。そのため、物品100は、成り行き温度のリンス液Rに浸漬される。
【0063】
ステップS4では、ステップS3での物品100の搬送に続き、洗浄システム装置1は、クイックダンプリンス槽21においてクイックダンプリンスを実施する。なお、超音波発生器21dは、クイックダンプリンス槽21内のリンス液Rに物品100が浸漬されている間に駆動し、クイックダンプリンス槽21内の物品100に対して下方から超音波を照射する。ステップS4において、物品100をリンス液Rに浸漬する時間や、物品100にリンス液Rを噴射する時間及び噴射量は、任意に設定可能である。
【0064】
ステップS5では、ステップS4でのクイックダンプリンスの実施に続き、ハンドリング装置60は、クイックダンプリンス槽21から第1浸漬槽31へと物品100を搬送する。すなわち、ハンドリング装置60は、まず、クイックダンプリンス槽21内の物品100をブラケットハンド62によって把持し、物品100をクイックダンプリンス槽21から引き上げる。次に、ハンドリング装置60は、ブラケットハンド62を第1浸漬槽31の上方に移動させ、第1浸漬槽31にクイックダンプリンス済みの物品100を搬入する。このとき、第1浸漬槽31には、予め第2リザーブ槽38から供給された常温のリンス液Rが貯留されている。
【0065】
ステップS6では、ステップS5での物品100の搬送に続き、洗浄システム装置1は、第1浸漬槽31において減圧リンスを実施する。ここで、「減圧リンス」とは、リンス液Rが満たされた槽(ここでは第1浸漬槽31)に物品100を搬入し、物品100をリンス液Rに浸漬した状態で、槽内を密閉してから槽内圧力を大気圧よりも低い圧力に減圧するリンス方法である。
【0066】
実施例1では、第1浸漬槽31に貯留された第4リンス液Rδは常温であり、物品100は常温の第4リンス液Rδに浸漬される。また、第1減圧機35は、第1浸漬槽31の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第4リンス液Rδに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する。なお、第4リンス液Rδに浸漬された物品100の表面温度は、第4リンス液Rδの温度(常温)とほぼ同程度である。そのため、第1減圧機35は、第1浸漬槽31の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第4リンス液Rδの温度の蒸気圧よりも高い圧力に設定してもよい。また、第1浸漬槽31の槽内圧力が、第4リンス液Rδに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力にされることで、物品100の表面で突沸現象が生じることはない。
【0067】
さらに、超音波発生器31dは、第1浸漬槽31内の第4リンス液Rδに物品100が浸漬されている間に駆動し、第1浸漬槽31内の物品100に対して下方から超音波を照射する。なお、ステップS6において、物品100を第4リンス液Rδに浸漬した状態で減圧する時間は任意に設定可能である。
【0068】
ステップS7では、ステップS6での減圧リンスの実施に続き、ハンドリング装置60は、第1浸漬槽31から第2浸漬槽32へと物品100を搬送する。すなわち、ハンドリング装置60は、まず、第1浸漬槽31内の物品100をブラケットハンド62によって把持し、物品100を第1浸漬槽31から引き上げる。次に、ハンドリング装置60は、ブラケットハンド62を第2浸漬槽32の上方に移動させ、第2浸漬槽32に減圧リンス済みの物品100を搬入する。このとき、第2浸漬槽32には、予め第4浸漬槽34から排出され、加温器32fによって70℃に加温された第1リンス液Rαが貯留されている。
【0069】
ステップS8では、ステップS7での物品100の搬送に続き、洗浄システム装置1は、第2浸漬槽32において浸漬リンスを実施する。ここで、「浸漬リンス」とは、リンス液Rが満たされた槽(ここでは第2浸漬槽32)に物品100を搬入し、物品100を一定時間リンス液Rに浸漬するリンス方法である。
【0070】
実施例1では、第2浸漬槽32に供給されたリンス液Rは、加温器32fによって70℃に加温されており、物品100は70℃の第1リンス液Rαに浸漬される。また、超音波発生器32dは、第1リンス液Rαに物品100が浸漬されている間に駆動し、第2浸漬槽32内の物品100に対して下方から超音波を照射する。なお、ステップS8において、物品100を第1リンス液Rαに浸漬する時間は任意に設定可能である。また、物品100は、70℃の第1リンス液Rαに浸漬されることで、物品100自体が約70℃に熱せられる。
【0071】
ステップS9では、ステップS8での浸漬リンスの実施に続き、ハンドリング装置60は、第2浸漬槽32から第3浸漬槽33へと物品100を搬送する。すなわち、ハンドリング装置60は、まず、第2浸漬槽32内の物品100をブラケットハンド62によって把持し、物品100を第2浸漬槽32から引き上げる。次に、ハンドリング装置60は、ブラケットハンド62を第3浸漬槽33の上方に移動させ、第3浸漬槽33に浸漬リンス済みの物品100を搬入する。このとき、第3浸漬槽33には、予め第1純水供給源W1から供給された常温の第2リンス液Rβが貯留されている。
【0072】
ステップS10では、ステップS9での物品100の搬送に続き、洗浄システム装置1は、第3浸漬槽33において減圧リンスを実施する。このとき、第3浸漬槽33に貯留された第2リンス液Rβは常温であり、物品100は常温の第2リンス液Rβに浸漬される。そして、第2減圧機36は、第3浸漬槽33の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する。
【0073】
さらに、超音波発生器33dは、第3浸漬槽33内の第2リンス液Rβに物品100が浸漬されている間に駆動し、第3浸漬槽33内の物品100に対して下方から超音波を照射する。なお、ステップS10において、物品100を第2リンス液Rβに浸漬した状態で減圧する時間は任意に設定可能である。
【0074】
しかも、実施例1の第2減圧機36は、物品100が第2浸漬槽32から第3浸漬槽33に搬送され、第2リンス液Rβに浸漬された後、所定時間(例えば1分間)第3浸漬槽33の槽内圧力を減圧せずに大気圧に維持する。そして、第2減圧機36は、所定時間が経過した後、第3浸漬槽33の槽内圧力の減圧を開始する。
【0075】
ステップS11では、ステップS10での減圧リンスの実施に続き、ハンドリング装置60は、第3浸漬槽33から第4浸漬槽34へと物品100を搬送する。すなわち、ハンドリング装置60は、まず、第3浸漬槽33内の物品100をブラケットハンド62によって把持し、物品100を第3浸漬槽33から引き上げる。次に、ハンドリング装置60は、ブラケットハンド62を第4浸漬槽34の上方に移動させ、第4浸漬槽34に減圧リンス済みの物品100を搬入する。このとき、第4浸漬槽34には、予め第2純水供給源W2から供給され、加温器34fによって70℃に加温された第3リンス液Rγが貯留されている。
【0076】
ステップS12では、ステップS11での物品100の搬送に続き、洗浄システム装置1は、第4浸漬槽34において浸漬リンスを実施し、ステップS13へ進む。このとき、第3リンス液Rγは、加温器34fによって70℃に加温されている。そのため、物品100は、70℃の第3リンス液Rγに浸漬される。また、超音波発生器34dは、第3リンス液Rγに物品100が浸漬されている間に駆動し、第4浸漬槽34内の物品100に対して下方から超音波を照射する。なお、ステップS12において、物品100を第3リンス液Rγに浸漬する時間は任意に設定可能である。
【0077】
ステップS13では、ステップS12での浸漬リンスの実施に続き、ハンドリング装置60は、第4浸漬槽34から乾燥槽40へと物品100を搬送する。すなわち、ハンドリング装置60は、まず、第4浸漬槽34内の物品100をブラケットハンド62によって把持し、物品100を第4浸漬槽34から引き上げる。次に、ハンドリング装置60は、ブラケットハンド62を乾燥槽40の上方に移動させ、乾燥槽40に浸漬リンス済みの物品100を搬入する。
【0078】
ステップS14では、ステップS13での物品100の搬送に続き、洗浄システム装置1は、物品100を乾燥する。ここで、物品100の乾燥では、まず、物品100が搬入された乾燥槽40の開口部41aが蓋部材41eによって密封され、乾燥槽40が密閉される。次に、図示しない温風ブロアから温風吹出口42を介して乾燥槽40内に温風(例えば約100℃の空気)が導入される。乾燥槽40内に導入された空気は、排気口43を介して外部に排出される。なお、ステップS14において、乾燥槽40内に温風を導入する時間(乾燥時間)は任意に設定可能である。
【0079】
ステップS15では、ステップS14での物品100の乾燥に続き、ハンドリング装置60は、乾燥槽40内の乾燥済みの物品100を、ブラケットハンド62によって把持し、乾燥槽40から引き上げて第2コンベア53上に搬送する。これにより、実施例1の洗浄システム装置1による物品100の洗浄処理とリンス処理と乾燥処理は終了する。
【0080】
以下、実施例1の洗浄システム装置1におけるリンス装置Xの作用を説明する。
【0081】
実施例1では、第2浸漬槽32に貯留された第1リンス液Rαは、加温器32fによって70℃(第1温度)に加温される。また、第3浸漬槽33に貯留された第2リンス液Rβは、常温(20℃±5℃、第2温度)である。
【0082】
そして、実施例1のリンス装置Xは、洗浄済みの物品100を、第2浸漬槽32に貯留された70℃の第1リンス液Rαに浸漬し、浸漬リンスを実施する(ステップS8)。さらに、実施例1のリンス装置Xは、浸漬リンスを実施した後、浸漬リンス済みの物品100を、第3浸漬槽33に貯留された常温の第2リンス液Rβに浸漬した状態で、第3浸漬槽33の槽内圧力を減圧する減圧リンスを実施する(ステップS10)。また、減圧リンス時、第2減圧機36は、第3浸漬槽33の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する。
【0083】
すなわち、実施例1のリンス方法は、洗浄済みの物品100を70℃(第1温度)の第1リンス液Rαに浸漬して浸漬リンスを実施する第1リンス工程(ステップS8)と、浸漬リンスを実施した後、浸漬リンス済みの物品100を70℃(第1温度)よりも低い常温(第2温度)の第2リンス液Rβに浸漬した状態で、第3浸漬槽33の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施する第2リンス工程(ステップS10)と、を備えている。
【0084】
また、実施例1のリンス装置Xは、は、70℃(第1温度)の第1リンス液Rαを貯留する第2浸漬槽32(第1のリンス槽)と、70℃よりも低い常温(第2温度)の第2リンス液Rβを貯留すると共に、密閉可能な第3浸漬槽33(第2のリンス槽)と、第3浸漬槽33の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する第2減圧機36と、を備えている。
【0085】
ここで、第2浸漬槽32に貯留された第1リンス液Rαが70℃に加温されていることから、第1リンス液Rαに物品100が浸漬されると、物品100は第1リンス液Rαによって熱せられ、物品100自体の温度が上昇し、物品100の表面温度は第1リンス液Rαと同程度(約70℃)になる。そして、物品100の温度が上昇することで、
図3Aに示されたように、第1リンス液Rαへの浸漬前に物品100の表面に形成された凹部101にすでに入り込んでいた洗浄溶媒が含まれたリンス液R1(
図3A~
図3Cにおいてドットを付して示す。また、
図3A~
図3Cでは、凹部101内のリンス液R1は、温度が低いほど濃いドットを付し、温度が高いほど薄いドットを付して示されている。)の温度も上昇する。さらに、
図3Bに示されたように、凹部101内のリンス液R1は、時間の経過と共に次第に体積が膨張し、比重が小さくなっていく。その後、
図3Cに示されたように、凹部101の内部で膨張したリンス液R1は、凹部101の外へと押し出される。
【0086】
このように、実施例1のリンス方法では、70℃の第1リンス液Rαによって物品100の浸漬リンスを実施することで、物品100の温度を上昇させると共に、物品100に形成された凹部101に入り込んだリンス液R1を膨張させることができる。
【0087】
そして、浸漬リンス後、第3浸漬槽33に貯留された第2リンス液Rβに物品100が浸漬された状態で、槽内圧力が減圧される減圧リンスが実施されるが、第2リンス液Rβの温度は、第1リンス液Rαよりも低温の常温である。そのため、物品100自体の温度は、常温の第2リンス液Rβによって徐々に冷却される。
【0088】
ここで、
図4Aに示されたように、物品100が第3浸漬槽33に搬入された直後では、物品100の表面に形成された凹部101に入り込んだリンス液R1(
図4A及び
図4Bにおいてドットを付して示す。また、
図4A~
図4Bでは、凹部101内のリンス液R1は、温度が低いほど濃いドットを付し、温度が高いほど薄いドットを付して示されている。)は、第3浸漬槽33に貯留された第2リンス液Rβよりも高温であり、比重が小さく軽い。そのため、凹部101に入り込んだリンス液R1は、凹部101の外に流出しやすい状態になっている。
【0089】
そして、時間の経過と共に物品100が冷却されていくと、
図4Bに示されたように、凹部101に入り込んだリンス液R1は、次第に温度が低下し、体積が収縮していく。なお、このときのリンス液R1の収縮率に基づいて、第1リンス液Rαと第2リンス液Rβの温度差(実施例1では50℃)が決められる。
【0090】
そして、凹部101に入り込んだリンス液R1の体積が収縮した分、凹部101には隙間が生じるため、第3浸漬槽33内の第2リンス液Rβが凹部101に入り込んでいく。これにより、凹部101内のリンス液Rの入れ替え(液置換)が促され、最終的には、
図4Cに示されたように、凹部101内に第2リンス液Rβが充満し、凹部101の内側面に付着した付着物や洗浄溶媒が濯ぎ落される。
【0091】
このように、実施例1のリンス方法では、物品100を浸漬するリンス液Rの温度の違いに伴うリンス液Rの膨張と収縮を利用して凹部101内の液置換を促進する。このため、凹部101の開口が上方や水平方向以外の方向、つまり下方を向いていても凹部101内の液置換を促すことができる。この結果、実施例1のリンス方法は、物品100の表面に様々な方向に向いて開口した凹部101が形成された場合であっても、リンス液Rの中で物品100の姿勢を変えることなく凹部101内の液置換を促進し、容易にリンスを行うことができる。さらに、実施例1のリンス方法では、液置換の不十分な凹部101が生じず、リンス性能の向上を図ることができる。
【0092】
また、実施例1のリンス方法では、減圧リンスを実施する際、第3浸漬槽33の槽内圧力が、大気圧よりも低く、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧される。ここで、「第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧」とは、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面で第2リンス液Rβに突沸現象が生じる最低圧力である。そのため、実施例1のリンス方法は、第3浸漬槽33の減圧時、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧することで、第3浸漬槽33内の物品100の表面で突沸現象が生じることを防止できる。これにより、実施例1のリンス方法は、突沸によって第2リンス液Rβに新たに気泡が発生することを抑制できる。
【0093】
なお、物品100は、第1リンス液Rαに浸漬されたことで約70℃に熱せられており、常温の第2リンス液Rβに浸漬されても、表面温度がすぐに第2リンス液Rβの温度と同程度になるわけではない。第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度は、約70℃から徐々に低下していくため、第2リンス液Rβへの浸漬開始からしばらくの間は、第2リンス液Rβの温度(常温)よりも高い温度(40℃~50℃)程度と考えられる。つまり、第2リンス液Rβの温度と、物品100の表面温度との間に差が生じる。そのため、実施例1のリンス方法は、第2リンス液Rβに浸漬された物品100の表面温度を目安にして第3浸漬槽33の槽内圧力を制御することで、物品100の表面での突沸現象の発生を適切に抑制することができる。
【0094】
また、浸漬槽30内のリンス液Rが突沸して気泡が新たに発生した場合、
図5Aに示されたように、物品100に形成された凹部101に気泡Kが溜る。そして、
図5Bに示されたように凹部101の内部に気泡Kが充満してしまうと、リンス液Rが凹部101に入り込む余地がなくなる。この場合、凹部101の内側面がリンス液Rと接触しなくなり、凹部101内での液置換が進まず、リンス性が低下してしまう可能性がある。実施例1のリンス装置Xは、突沸による新たな気泡の発生を抑制できるので、リンス性の低下を抑えることができる。
【0095】
また、浸漬槽30内のリンス液Rが突沸した場合には、リンス液Rの液面で気泡が破裂した際に、リンス液Rが飛び散り、蓋部材にリンス液Rの飛沫が付着する。そして、蓋部材に付着したリンス液Rが再び槽内に滴ることで、蓋部材の内側に付着した汚れが槽内に混入するおそれがある。これに対し、実施例1のリンス装置Xでは、第3浸漬槽33内の第2リンス液Rβの突沸を抑制することで、蓋部材33eに付着した汚れの第2リンス液Rβへの混入を防止することができる。
【0096】
さらに、実施例1のリンス方法では、第3浸漬槽33の槽内圧力が、大気圧よりも低い圧力に減圧されることで、凹部101内に既に存在する気泡は膨張し、凹部101から排出される。すなわち、実施例1のリンス方法は、物品100に形成された凹部101の中の気泡を取り除いて第2リンス液Rβを脱気できる。
【0097】
そして、実施例1のリンス方法では、第2リンス液Rβを脱気できるため、第2リンス液Rβ中の溶存気体を減らし、超音波の伝達とキャビテーションの発生を阻害するような大きな気泡を低減させることができる。この結果、実施例1のリンス方法は、キャビテーションによる洗浄効果を得やすくさせ、超音波発生器33dから照射する超音波の威力を強めることができる。
【0098】
このように、実施例1のリンス方法及びリンス装置Xは、物品100をリンス液Rに浸漬して物品100の表面に残留する付着物や洗浄溶媒をリンスする際、物品100の表面に形成された凹部101内の液置換を促進し、リンス性能を向上させることができる。
【0099】
また、実施例1のリンス装置Xでは、第1リンス液Rαの温度(70℃)と、第2リンス液Rβの温度(常温)との温度差(50℃)は、物品100に形成された凹部101内に入り込んだリンス液R1の収縮率に基づいて設定される。
【0100】
このため、実施例1のリンス装置Xは、物品100を第3浸漬槽33に搬送し、第2リンス液Rβに浸漬させた際、
図4Bに示されたように、凹部101内のリンス液R1を十分に収縮させることができる。これにより、実施例1のリンス装置Xは、第2リンス液Rβが凹部101に入り込む余地を生じさせ、凹部101内の液置換を促進し、リンス性能の向上を図ることができる。
【0101】
また、実施例1の第2減圧機36は、物品100が、第3浸漬槽33内の第2リンス液Rβに浸漬された後、所定時間(実施例1では一分間)、第3浸漬槽33の槽内圧力を維持する。そして、所定時間経過後、槽内圧力の減圧を開始する。
【0102】
このため、実施例1のリンス装置Xは、物品100が第2リンス液Rβに浸漬された直後に、第2リンス液Rβよりも高温の凹部101内のリンス液R1を、凹部101の外に流出させてから、第3浸漬槽33の減圧を開始することができる。これにより、実施例1のリンス装置Xは、凹部101内のリンス液R1が収縮したときに生じる凹部101内の隙間を大きくすることができ、液置換をさらに促進させることができる。
【0103】
なお、第2減圧機36による減圧の待機時間(物品100が第2リンス液Rβに浸漬されてから減圧開始までの時間)は、凹部101内のリンス液R1の収縮率に応じて任意に設定可能である。
【0104】
また、実施例1では、第4浸漬槽34に貯留された第3リンス液Rγは、加温器34fによって70℃(第3温度)に加温される。そして、実施例1のリンス装置Xは、ステップS10における減圧リンスの実施の後、減圧リンス済みの物品100を、第4浸漬槽34に貯留された70℃の第3リンス液Rγに浸漬し、浸漬リンスを実施する(ステップS12)。ここで、物品100は、第3リンス液Rγに浸漬されることで、物品100自体の温度が上昇する。
【0105】
すなわち、実施例1のリンス方法は、ステップS10の減圧リンスを実施した後、減圧リンス済みの物品100を、常温(第2温度)よりも高温の70℃(第3温度)の第3リンス液Rγに浸漬し、物品100の温度を上昇させる浸漬リンスを実施するプレ乾燥工程(ステップS12)を備えている。
【0106】
これにより、実施例1のリンス装置Xでは、ステップS12における浸漬リンスの実施後、物品100を乾燥槽40に搬送し、物品100の乾燥を行う際、物品100の温度を高くしておくことができる。これにより、実施例1のリンス装置Xは、物品100に付着したリンス液Rを速やかに乾燥させることができる。
【0107】
また、実施例1では、第1浸漬槽31に貯留された第4リンス液Rδは、常温(20℃±5℃、第4温度)である。そして、実施例1のリンス装置Xは、ステップS8における浸漬リンスの実施の前、洗浄済みの物品100を、第1浸漬槽31に貯留された常温の第4リンス液Rδに浸漬した状態で、第1浸漬槽31の槽内圧力を減圧する減圧リンスを実施する(ステップS6)。また、減圧リンス時、第1減圧機35は、第1浸漬槽31の槽内圧力を、大気圧よりも低く、第4リンス液Rδに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する。
【0108】
すなわち、実施例1のリンス方法は、ステップS8の浸漬リンスを実施する前、70℃(第1温度)よりも低温の常温(第4温度)の第4リンス液Rδに物品100を浸漬した状態で、第1浸漬槽31の槽内圧力を大気圧よりも低く、第4リンス液Rδに浸漬された物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施するプレリンス工程(ステップS6)を備えている。
【0109】
これにより、実施例1のリンス装置Xでは、物品100を70℃の第1リンス液Rαに浸漬する浸漬リンスを行う前に、予め常温での減圧リンスを行うことができる。このため、実施例1のリンス装置Xは、物品100に形成された凹部101内の気泡を膨張させ、凹部101から排出させ、凹部101内にリンス液Rを充満させておくことができる。また、実施例1のリンス装置Xは、第1浸漬槽31内で物品100の表面に突沸現象が生じることを防止でき、凹部101内での不要な気泡の発生を抑制することができる。そして、凹部101内に不要な気泡の存在をなくすことで、凹部101内の液置換の促進を図ることができる。
【0110】
以上、本発明の物品のリンス方法及び物品のリンス装置を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0111】
実施例1の洗浄システム装置1では、開口部31aが蓋部材31eによって密閉可能な第1浸漬槽31よりも物品100の搬送方向の下流側に隣接して、加温器32fが設けられた第2浸漬槽32が配置されている。また、第2浸漬槽32よりも物品100の搬送方向の下流側に隣接して、開口部33aが蓋部材33eによって密閉可能な第3浸漬槽33が配置されている。また、第3浸漬槽33よりも物品100の搬送方向の下流側に隣接して、加温器34fが設けられた第4浸漬槽34が配置されている。
【0112】
しかしながら、第1浸漬槽31~第4浸漬槽34の並び順については、実施例1に限らない。
【0113】
例えば、クイックダンプリンス槽21から乾燥槽40に向かって、加温器32fが設けられた第2浸漬槽32と、開口部31aが蓋部材31eによって密閉可能な第1浸漬槽31と、加温器34fが設けられた第4浸漬槽34と、開口部33aが蓋部材33eによって密閉可能な第3浸漬槽33と、が物品100の搬送方向に沿って配置されてもよい。
【0114】
この場合、物品100のクイックダンプリンスが実施された後、70℃の第1リンス液Rαを貯留した第2浸漬槽32にて浸漬リンスが実施され(第1リンス工程)、浸漬リンスの実施後に、常温の第4リンス液Rδを貯留した第1浸漬槽31にて減圧リンスが実施(第2リンス工程)される。さらに、減圧リンスの実施後に、70℃の第3リンス液Rγを貯留した第4浸漬槽34にて浸漬リンスが実施され(第1リンス工程)、浸漬リンスの実施後に、常温の第2リンス液Bβを貯留した第3浸漬槽33にて減圧リンスが実施(第2リンス工程)される。
【0115】
これにより、70℃のリンス液Rに浸漬して浸漬リンスを実施する第1リンス工程と、常温のリンス液Rに浸漬した状態で槽内圧力を大気圧よりも低く、常温のリンス液Rに浸漬した物品100の表面温度の蒸気圧よりも高い圧力に減圧する減圧リンスを実施する第2リンス工程とを、二回繰り返して行うことができる。このため、リンス性能をさらに向上させることができる。
【0116】
また、実施例1の洗浄システム装置1は、第1浸漬槽31~第4浸漬槽34の四つの槽によって複数の浸漬槽31~34が構成される例が示された。しかしながら、リンス装置Xは、少なくとも70℃の第1リンス液Rαを貯留する第1のリンス槽(第2浸漬槽32)と、常温の第2リンス液Rβを貯留すると共に密封可能な第2のリンス槽(第3浸漬槽33)とを備えていればよく、二つや三つ、或いは五つ以上の槽によって浸漬槽が構成されていてもよい。
【0117】
すなわち、例えば、複数の浸漬槽が、第2浸漬槽32と第3浸漬槽33のみで構成される場合では、第1リンス工程と第2リンス工程のみが順に行われる。また、複数の浸漬槽が、第2浸漬槽32と第3浸漬槽33と第4浸漬槽34によって構成される場合では、第1リンス工程と第2リンス工程とプレ乾燥工程が順に行われる。さらに、複数の浸漬槽が、第1浸漬槽31と第2浸漬槽32と第3浸漬槽33によって構成される場合では、プレリンス工程と第1リンス工程と第2リンス工程が順に行われる。
【0118】
さらに、例えば、浸漬槽内の第1リンス液Rαを速やかに排水した後、第2リンス液Rβを速やかに投入可能にすることで、第1リンス工程の浸漬リンスと、第2リンス工程の減圧リンスとが、同一(一つ)の浸漬槽によって行われてもよい。つまり、リンス装置Xは、第1リンス液Rαを貯留する浸漬槽(第1のリンス槽)と第2リンス液Rβを貯留する浸漬槽(第2のリンス槽)とが、必ずしも異なっていなくてもよい。
【0119】
また、実施例1では、第1リンス液Rα及び第3リンス液Rγが70℃であり、第2リンス液Rβ及び第4リンス液Rδが常温(20℃±5℃)である。しかしながら、これらの第1~第4リンス液Rα~Rδの温度差に応じて、それぞれの温度は任意に設定可能である。
【0120】
また、実施例1の洗浄システム装置1では、洗浄槽11とクイックダンプリンス槽21と複数の浸漬槽31~34のそれぞれに超音波発生器11d、21d、31d~34dが設けられ、各槽に搬入された物品100に対し、下方から超音波を照射する例が示された。しかしながら、超音波発生器11d、21d、31d~34dは、必ずしも設けられていなくてもよい。また、各超音波発生器11d、21d、31d~34dの設置位置や設置数、出力周波数等は、それぞれ任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 洗浄システム装置
31 第1浸漬槽
31e 蓋部材
32 第2浸漬槽(第1のリンス槽)
32f 加温器
33 第3浸漬槽(第2のリンス槽)
33e 蓋部材
34 第4浸漬槽
34f 加温器
35 第1減圧機
36 第2減圧機(減圧機)
100 物品
101 凹部